カーボンナノチューブの製造方法
【課題】 触媒を付与する工程を必要とせずに、カーボンナノチューブを形成できるようにする。
【解決手段】 真空チャンバ1内に、高周波電源3に接続されたプラズマ発生用コイル2を配置し、該コイル2内に、カーボンナノチューブの形成の触媒となる金属を含有するワイヤ4を挿通支持し、このワイヤ4を通電加熱するとともに、バイアス電源8によって負のバイアス電圧を印加し、原料ガスを供給してプラズマ9を生成し、ワイヤ4に含まれる金属を触媒として該ワイヤ上にカーボンナノチューブを成膜する。
【解決手段】 真空チャンバ1内に、高周波電源3に接続されたプラズマ発生用コイル2を配置し、該コイル2内に、カーボンナノチューブの形成の触媒となる金属を含有するワイヤ4を挿通支持し、このワイヤ4を通電加熱するとともに、バイアス電源8によって負のバイアス電圧を印加し、原料ガスを供給してプラズマ9を生成し、ワイヤ4に含まれる金属を触媒として該ワイヤ上にカーボンナノチューブを成膜する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンナノチューブの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブ は、ディスプレイ、ランプ、ナノデバイス、電子銃等数多くの応用が期待される材料である。
【0003】
このカーボンナノチューブの製造法として、予め触媒を形成した基板を、装置内に配置して加熱するとともに、原料ガスを供給して原料ガスを熱分解し、基板上の触媒を種としてカーボンを成長させる気相成長法がある(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開2002−180252号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、かかる気相成長法では、カーボンナノチューブを成長させるためには、基板等の基材に、予め触媒を形成する工程が必要になるという課題がある。
【0005】
本発明は、基材に、予め触媒を形成することなく、カーボンナノチューブを製造できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明では、上述の目的を達成するために、次のように構成している。
【0007】
すなわち、本発明は、真空チャンバ内に導入された原料ガスをプラズマ化して基材にカーボンナノチューブを形成する方法であって、前記基材を加熱するとともに、該基材にバイアス電圧を印加するものである。
【0008】
ここで、基材とは、カーボンナノチューブを形成する対象をいい、その形状は問わないものであり、例えば、基板やワイヤなどを含むものである。この基材は、カーボンナノチューブの形成の触媒となる触媒金属、例えば、Fe、Ni、Co等を含有する材料、例えば、ステンレスなどからなるのが好ましい。さらに、この基材は、通電加熱されるのが好ましい。
【0009】
バイアス電圧は、負の直流バイアス電圧であるのが好ましい。この負のバイアス電圧は、その絶対値が、100Vより大きい電圧であるのが好ましい。
【0010】
また、真空チャンバ内に、高周波電源が供給されるプラズマ発生用コイルが設けられるとともに、前記基材が、該プラズマ発生用コイル内に配置されるのが好ましい。
【0011】
本発明によると、従来のように、予め基材に触媒金属を付与する工程を必要とせずに、カーボンナノチューブを形成することができる。これは、次のように考えられる。すなわち、基材にバイアス電圧を印加して、基材の表面をスパッタリングするので、触媒金属を含有する基材を用いることにより、該基材の表面から弾き出された触媒金属の微粒子が、基材に引き付けられてその表面に付着し、この付着した触媒金属の微粒子を種として、カーボンナノチューブが形成されると考えられる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、予め触媒を付与する工程を必要とすることなく、カーボンナノチューブを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、添付した図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0014】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施形態に係る製造方法が適用される製造装置の概略構成図である。
【0015】
この製造装置は、真空チャンバ1を備えており、この真空チャンバ1内には、プラズマ発生用コイル2が設置されている。このプラズマ発生用コイル2は、例えば、Cu、Ni、ステンレス、カーボンなどからなり、高周波電源3に接続される。この高周波電源3は、例えば、13.56MHzの高周波電力を供給する。
【0016】
このプラズマ発生用コイル2内には、カーボンナノチューブを形成する基材、この実施の形態では、例えば、直径1mmのワイヤ4が挿通配置される。このワイヤ4は、カーボンナノチューブの形成の触媒となる金属を含有するのが好ましく、例えば、ステンレス、Fe、Niなどからなる。
【0017】
また、このワイヤ4には、加熱用電源5が接続され、例えば、700℃〜800℃程度に通電加熱される。ワイヤ4は、直線状に限らず、コイル状や波状であってもよく、複数のワイヤを撚り合わせたものであってもよい。
【0018】
この真空チャンバ1には、ガス導入部6およびガス排気部7が設けられており、ガス導入部6から炭化水素ガス等の原料ガスおよびキャリアガス、例えば、CH4/H2、CH4/Ar、CH4/O2が導入され、処理後のガスがガス排気部7から排気される。
【0019】
ガス圧力(全圧)は、10Pa〜1000pa程度であるのが好ましい。
【0020】
この実施の形態では、ワイヤ4には、バイアス電源8が接続され、該ワイヤ4には、負の直流バイアス電圧が印加される。
【0021】
この実施の形態の製造装置では、カーボンナノチューブを形成するワイヤに対して、従来のように、予め触媒金属を形成する工程を経ることなく、真空チャンバ1内のプラズマ発生用コイル2内に、ワイヤ4を挿通支持する。
【0022】
次に、このワイヤ4を通電加熱する一方、負のバイアス電圧を印加し、さらに、プラズマ発生用コイル2に、高周波電力を供給するとともに、ガス導入部6から原料ガス等をその流量を制御しながら導入する。
【0023】
プラズマ発生コイル2内には、プラズマ9が発生し、原料ガスが励起され、ワイヤ4上に、カーボンナノチューブが形成される。
【0024】
すなわち、この実施の形態では、予め触媒金属を形成することなく、ワイヤ4上にカーボンナノチューブを形成することができる。
【0025】
これは、ワイヤ4には、負のバイアス電圧が印加されているために、ワイヤ4の表面がスパッタリングされ、スパッタリングされたワイヤ4に含まれている触媒金属の微粒子が、比較的ガス圧力が高いために、ワイヤ4側に引付けられてワイヤ4の表面に付着し、これを触媒としてカーボンナノチューブが成長すると考えられる。
【0026】
次に、成膜条件、特にバイアス電圧を変えた場合に、形成される膜の状態およびその電子放出特性を評価した。
【0027】
電子放出特性は、図2に示すように、真空中で、アノード10との間に、1mmの間隙を介してカーボンナノチューブを成膜したワイヤ4を配置し、該ワイヤ4をカソードとして直流電圧を印加し、5V/μmでの放出電流を計測することにより行った。
【0028】
表1に成膜条件、電子放出特性およびSEM像による膜の状態の評価結果を示す。
【0029】
【表1】
この表1においては、入力は、プラズマ発生用コイル2に供給される高周波電力を、電圧および電流は、ワイヤ4の通電加熱用の電圧および電流を、時間は、成膜時間を、温度は、ワイヤ温度を、圧力は、CH4およびH2の全圧を、電子放出特性は、上述のようにして測定された放出電流を示している。
【0030】
なお、各条件に対応するSEM像を、それぞれ図3〜図10 示す。各図において、(b)は、(a)の一部拡大図である。
【0031】
バイアス電圧を印加しない条件No.1では、カーボンナノウォール(CNW)の小さな成長が見られたが、5V/μmにおける電子放出電流は、認められなかった。
【0032】
条件No.2〜5に示すように、負のバイアス電圧の絶対値を大きくするのに伴って、カーボンナノウォール(CNW)の成長が大きくなり、さらに、グラファイトが成長し、5V/μmにおける電子放出電流の増加が認められた。
【0033】
さらに、条件No.6〜8に示すように、バイアス電圧が、−160Vでは、カーボンナノチューブ(CNT)の成長が認められ、条件NO.7,8では、5V/μmにおける電子放出電流が認められた。
【0034】
負のバイアス電圧は、その絶対値が、100を越える値であるのが好ましい。
【0035】
このように、ワイヤ4に負のバイアス電圧を印加しながらプラズマCVDを行うことにより、予め触媒を形成していないワイヤや基板に、カーボンナノチューブを成膜することができる。
【0036】
なお、カーボンナノチューブを成膜するワイヤ4や基板等の基材が長く、プラズマ発生用コイル2のプラズマ発生領域からはみ出すような場合には、ワイヤ4や基板等の基材を、プラズマ発生用コイル2に対して移動させたり、あるいは、逆に、基材に対してプラズマ発生用コイル2を移動させて基材の全長に亘ってカーボンナノチューブを成膜するようにすればよい。
【0037】
また、図11に示すように、ワイヤ4や基板等の基材が、プラズマ発生用コイル2よりも長い場合には、複数のプラズマ発生用コイル2を、ワイヤ4等の基材の長手方向に沿って並設し、各プラズマ発生用コイル2で発生するプラズマ同士が重なり合うようにして、基材の全体に成膜するようにしてもよい。
【0038】
さらに、図12に示すように、プラズマ発生用コイル2の長手方向の中央部分2aの巻き径を大きくし、両端部分2bの巻き径を小さくしてプラズマを中央部分に効率的に閉じ込めるようにして成膜速度を高めるようにしてもよい。
【0039】
(その他の実施の形態)
本発明は、図13に示す容量結合型あるいは図14に示す誘導結合型のプラズマCVD装置に適用し、基板やワイヤ等の基材11に負のバイアス電圧を印加するとともに、基材11を、ヒータ12等によって間接的に加熱するようにしてよい。
【0040】
また、本発明の他の実施の形態として、バイアス電圧の印加は、カーボンナノチューブの成膜の初期の段階のみ行うようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、各種の用途に用いられるカーボンナノチューブの製造に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の実施形態に係るカーボンナノチューブの製造方法を実施する装置の概略構成図である。
【図2】電子放出特性の評価方法を説明するための図である。
【図3】成膜条件が異なる膜の状態を示すSEM像である。
【図4】成膜条件が異なる膜の状態を示すSEM像である。
【図5】成膜条件が異なる膜の状態を示すSEM像である。
【図6】成膜条件が異なる膜の状態を示すSEM像である。
【図7】成膜条件が異なる膜の状態を示すSEM像である。
【図8】成膜条件が異なる膜の状態を示すSEM像である。
【図9】成膜条件が異なる膜の状態を示すSEM像である。
【図10】成膜条件が異なる膜の状態を示すSEM像である。
【図11】図1のプラズマ発生用コイルの変形例を示す図である。
【図12】図1のプラズマ発生用コイルの他の変形例を示す図である。
【図13】図1の装置の他の例を示す図である。
【図14】図1の装置の更に他の例を示すである。
【符号の説明】
【0043】
1 真空チャンバ 2 プラズマ発生用コイル
3 高周波電源 4 ワイヤ(基材)
5 加熱用電源 8 バイアス電源
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンナノチューブの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブ は、ディスプレイ、ランプ、ナノデバイス、電子銃等数多くの応用が期待される材料である。
【0003】
このカーボンナノチューブの製造法として、予め触媒を形成した基板を、装置内に配置して加熱するとともに、原料ガスを供給して原料ガスを熱分解し、基板上の触媒を種としてカーボンを成長させる気相成長法がある(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開2002−180252号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、かかる気相成長法では、カーボンナノチューブを成長させるためには、基板等の基材に、予め触媒を形成する工程が必要になるという課題がある。
【0005】
本発明は、基材に、予め触媒を形成することなく、カーボンナノチューブを製造できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明では、上述の目的を達成するために、次のように構成している。
【0007】
すなわち、本発明は、真空チャンバ内に導入された原料ガスをプラズマ化して基材にカーボンナノチューブを形成する方法であって、前記基材を加熱するとともに、該基材にバイアス電圧を印加するものである。
【0008】
ここで、基材とは、カーボンナノチューブを形成する対象をいい、その形状は問わないものであり、例えば、基板やワイヤなどを含むものである。この基材は、カーボンナノチューブの形成の触媒となる触媒金属、例えば、Fe、Ni、Co等を含有する材料、例えば、ステンレスなどからなるのが好ましい。さらに、この基材は、通電加熱されるのが好ましい。
【0009】
バイアス電圧は、負の直流バイアス電圧であるのが好ましい。この負のバイアス電圧は、その絶対値が、100Vより大きい電圧であるのが好ましい。
【0010】
また、真空チャンバ内に、高周波電源が供給されるプラズマ発生用コイルが設けられるとともに、前記基材が、該プラズマ発生用コイル内に配置されるのが好ましい。
【0011】
本発明によると、従来のように、予め基材に触媒金属を付与する工程を必要とせずに、カーボンナノチューブを形成することができる。これは、次のように考えられる。すなわち、基材にバイアス電圧を印加して、基材の表面をスパッタリングするので、触媒金属を含有する基材を用いることにより、該基材の表面から弾き出された触媒金属の微粒子が、基材に引き付けられてその表面に付着し、この付着した触媒金属の微粒子を種として、カーボンナノチューブが形成されると考えられる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、予め触媒を付与する工程を必要とすることなく、カーボンナノチューブを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、添付した図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0014】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施形態に係る製造方法が適用される製造装置の概略構成図である。
【0015】
この製造装置は、真空チャンバ1を備えており、この真空チャンバ1内には、プラズマ発生用コイル2が設置されている。このプラズマ発生用コイル2は、例えば、Cu、Ni、ステンレス、カーボンなどからなり、高周波電源3に接続される。この高周波電源3は、例えば、13.56MHzの高周波電力を供給する。
【0016】
このプラズマ発生用コイル2内には、カーボンナノチューブを形成する基材、この実施の形態では、例えば、直径1mmのワイヤ4が挿通配置される。このワイヤ4は、カーボンナノチューブの形成の触媒となる金属を含有するのが好ましく、例えば、ステンレス、Fe、Niなどからなる。
【0017】
また、このワイヤ4には、加熱用電源5が接続され、例えば、700℃〜800℃程度に通電加熱される。ワイヤ4は、直線状に限らず、コイル状や波状であってもよく、複数のワイヤを撚り合わせたものであってもよい。
【0018】
この真空チャンバ1には、ガス導入部6およびガス排気部7が設けられており、ガス導入部6から炭化水素ガス等の原料ガスおよびキャリアガス、例えば、CH4/H2、CH4/Ar、CH4/O2が導入され、処理後のガスがガス排気部7から排気される。
【0019】
ガス圧力(全圧)は、10Pa〜1000pa程度であるのが好ましい。
【0020】
この実施の形態では、ワイヤ4には、バイアス電源8が接続され、該ワイヤ4には、負の直流バイアス電圧が印加される。
【0021】
この実施の形態の製造装置では、カーボンナノチューブを形成するワイヤに対して、従来のように、予め触媒金属を形成する工程を経ることなく、真空チャンバ1内のプラズマ発生用コイル2内に、ワイヤ4を挿通支持する。
【0022】
次に、このワイヤ4を通電加熱する一方、負のバイアス電圧を印加し、さらに、プラズマ発生用コイル2に、高周波電力を供給するとともに、ガス導入部6から原料ガス等をその流量を制御しながら導入する。
【0023】
プラズマ発生コイル2内には、プラズマ9が発生し、原料ガスが励起され、ワイヤ4上に、カーボンナノチューブが形成される。
【0024】
すなわち、この実施の形態では、予め触媒金属を形成することなく、ワイヤ4上にカーボンナノチューブを形成することができる。
【0025】
これは、ワイヤ4には、負のバイアス電圧が印加されているために、ワイヤ4の表面がスパッタリングされ、スパッタリングされたワイヤ4に含まれている触媒金属の微粒子が、比較的ガス圧力が高いために、ワイヤ4側に引付けられてワイヤ4の表面に付着し、これを触媒としてカーボンナノチューブが成長すると考えられる。
【0026】
次に、成膜条件、特にバイアス電圧を変えた場合に、形成される膜の状態およびその電子放出特性を評価した。
【0027】
電子放出特性は、図2に示すように、真空中で、アノード10との間に、1mmの間隙を介してカーボンナノチューブを成膜したワイヤ4を配置し、該ワイヤ4をカソードとして直流電圧を印加し、5V/μmでの放出電流を計測することにより行った。
【0028】
表1に成膜条件、電子放出特性およびSEM像による膜の状態の評価結果を示す。
【0029】
【表1】
この表1においては、入力は、プラズマ発生用コイル2に供給される高周波電力を、電圧および電流は、ワイヤ4の通電加熱用の電圧および電流を、時間は、成膜時間を、温度は、ワイヤ温度を、圧力は、CH4およびH2の全圧を、電子放出特性は、上述のようにして測定された放出電流を示している。
【0030】
なお、各条件に対応するSEM像を、それぞれ図3〜図10 示す。各図において、(b)は、(a)の一部拡大図である。
【0031】
バイアス電圧を印加しない条件No.1では、カーボンナノウォール(CNW)の小さな成長が見られたが、5V/μmにおける電子放出電流は、認められなかった。
【0032】
条件No.2〜5に示すように、負のバイアス電圧の絶対値を大きくするのに伴って、カーボンナノウォール(CNW)の成長が大きくなり、さらに、グラファイトが成長し、5V/μmにおける電子放出電流の増加が認められた。
【0033】
さらに、条件No.6〜8に示すように、バイアス電圧が、−160Vでは、カーボンナノチューブ(CNT)の成長が認められ、条件NO.7,8では、5V/μmにおける電子放出電流が認められた。
【0034】
負のバイアス電圧は、その絶対値が、100を越える値であるのが好ましい。
【0035】
このように、ワイヤ4に負のバイアス電圧を印加しながらプラズマCVDを行うことにより、予め触媒を形成していないワイヤや基板に、カーボンナノチューブを成膜することができる。
【0036】
なお、カーボンナノチューブを成膜するワイヤ4や基板等の基材が長く、プラズマ発生用コイル2のプラズマ発生領域からはみ出すような場合には、ワイヤ4や基板等の基材を、プラズマ発生用コイル2に対して移動させたり、あるいは、逆に、基材に対してプラズマ発生用コイル2を移動させて基材の全長に亘ってカーボンナノチューブを成膜するようにすればよい。
【0037】
また、図11に示すように、ワイヤ4や基板等の基材が、プラズマ発生用コイル2よりも長い場合には、複数のプラズマ発生用コイル2を、ワイヤ4等の基材の長手方向に沿って並設し、各プラズマ発生用コイル2で発生するプラズマ同士が重なり合うようにして、基材の全体に成膜するようにしてもよい。
【0038】
さらに、図12に示すように、プラズマ発生用コイル2の長手方向の中央部分2aの巻き径を大きくし、両端部分2bの巻き径を小さくしてプラズマを中央部分に効率的に閉じ込めるようにして成膜速度を高めるようにしてもよい。
【0039】
(その他の実施の形態)
本発明は、図13に示す容量結合型あるいは図14に示す誘導結合型のプラズマCVD装置に適用し、基板やワイヤ等の基材11に負のバイアス電圧を印加するとともに、基材11を、ヒータ12等によって間接的に加熱するようにしてよい。
【0040】
また、本発明の他の実施の形態として、バイアス電圧の印加は、カーボンナノチューブの成膜の初期の段階のみ行うようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、各種の用途に用いられるカーボンナノチューブの製造に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の実施形態に係るカーボンナノチューブの製造方法を実施する装置の概略構成図である。
【図2】電子放出特性の評価方法を説明するための図である。
【図3】成膜条件が異なる膜の状態を示すSEM像である。
【図4】成膜条件が異なる膜の状態を示すSEM像である。
【図5】成膜条件が異なる膜の状態を示すSEM像である。
【図6】成膜条件が異なる膜の状態を示すSEM像である。
【図7】成膜条件が異なる膜の状態を示すSEM像である。
【図8】成膜条件が異なる膜の状態を示すSEM像である。
【図9】成膜条件が異なる膜の状態を示すSEM像である。
【図10】成膜条件が異なる膜の状態を示すSEM像である。
【図11】図1のプラズマ発生用コイルの変形例を示す図である。
【図12】図1のプラズマ発生用コイルの他の変形例を示す図である。
【図13】図1の装置の他の例を示す図である。
【図14】図1の装置の更に他の例を示すである。
【符号の説明】
【0043】
1 真空チャンバ 2 プラズマ発生用コイル
3 高周波電源 4 ワイヤ(基材)
5 加熱用電源 8 バイアス電源
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空チャンバ内に導入された原料ガスをプラズマ化して基材にカーボンナノチューブを形成する方法であって、
前記基材を加熱するとともに、該基材にバイアス電圧を印加することを特徴とするカーボンナノチューブの製造方法。
【請求項2】
前記バイアス電圧が、負の直流バイアス電圧である請求項1に記載のカーボンナノチューブの製造方法。
【請求項3】
前記基材は、カーボンナノチューブの形成の触媒となる触媒金属を含有する請求項1または2に記載のカーボンナノチューブの製造方法。
【請求項4】
前記基材が、通電加熱される請求項1〜3のいずれか1項に記載のカーボンナノチューブの製造方法。
【請求項5】
前記基材が、ステンレス製のワイヤである請求項4に記載のカーボンナノチューブの製造方法。
【請求項6】
前記真空チャンバ内には、高周波電源が供給されるプラズマ発生用コイルが設けられるとともに、前記基材が、該プラズマ発生用コイル内に配置される請求項1〜5のいずれか1項に記載のカーボンナノチューブの製造方法。
【請求項1】
真空チャンバ内に導入された原料ガスをプラズマ化して基材にカーボンナノチューブを形成する方法であって、
前記基材を加熱するとともに、該基材にバイアス電圧を印加することを特徴とするカーボンナノチューブの製造方法。
【請求項2】
前記バイアス電圧が、負の直流バイアス電圧である請求項1に記載のカーボンナノチューブの製造方法。
【請求項3】
前記基材は、カーボンナノチューブの形成の触媒となる触媒金属を含有する請求項1または2に記載のカーボンナノチューブの製造方法。
【請求項4】
前記基材が、通電加熱される請求項1〜3のいずれか1項に記載のカーボンナノチューブの製造方法。
【請求項5】
前記基材が、ステンレス製のワイヤである請求項4に記載のカーボンナノチューブの製造方法。
【請求項6】
前記真空チャンバ内には、高周波電源が供給されるプラズマ発生用コイルが設けられるとともに、前記基材が、該プラズマ発生用コイル内に配置される請求項1〜5のいずれか1項に記載のカーボンナノチューブの製造方法。
【図1】
【図2】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2006−188382(P2006−188382A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−800(P2005−800)
【出願日】平成17年1月5日(2005.1.5)
【出願人】(504224371)ダイヤライトジャパン株式会社 (105)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年1月5日(2005.1.5)
【出願人】(504224371)ダイヤライトジャパン株式会社 (105)
【Fターム(参考)】
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