説明

カーボンナノチューブ(CNT)/電界放出デバイス(FED)ディスプレイ用発光材料

約4〜10kVで作動されるカーボンナノチューブ(CNT)/電界放出デバイス(FED)ディスプレイ用RGB蛍光体システム。当該RGB蛍光体システムは、CNT/FEDディスプレイのスクリーンの内面上に形成される。当該RGB蛍光体システムは、ZnS:Cu,Al(緑色蛍光体)、ZnS:Ag,Cl(青色蛍光体)、及び、YS:Eu+3(赤色蛍光体)を含む。緑色、青色、及び赤色の蛍光体それぞれに対する平均粒度は、約3〜4ミクロンであることが望ましい。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンナノチューブ(CNT)/電界放出デバイス(FED)ディスプレイに関し、特に、カーボンナノチューブ(CNT)/電界放出デバイス(FED)ディスプレイのための発光材料に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブ(CNT)/電界放出デバイス(FED)ディスプレイは、一般に、カソード、金属ゲート、絶縁スペーサー、及び蛍光スクリーンを含み、カソードはCNTエミッターをその上に有している。金属ゲートは、カソードと蛍光スクリーンとの間に置かれる。蛍光スクリーンは、ディスプレイのフェースプレートの内部表面上に置かれる。金属ゲートは、CNTエミッターから生じる電子ビームをディスプレイのスクリーン上の適切な発色型蛍光体(color−emitting phosphor)に向けるよう機能する。
【0003】
スクリーンは、発光スクリーンであり得る。発光スクリーンは、一般に、スクリーン上に形成される3つの異なる発色型蛍光体(例えば、緑、青、及び赤)のアレイを含む。発色型蛍光体のそれぞれは、マトリクスラインにより互いから引き離されている。マトリクスラインは、一般に、黒くて不活性な吸光物質から形成される。
【0004】
優れた色彩明度及び色域レベルを有するディスプレイを得るために、CNT/FEDは、約4〜10kVで作動されるべきである。4kV未満で作動するCNT/FEDディスプレイは、明度という観点から見ると競争力がなく、発色型蛍光体の電子励起表面反応によりさらなる質的低下をこうむる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、約4〜10kVで作動された場合に優れた色彩明度及び色域レベルを有するCNT/FEDディスプレイのための蛍光体システムが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、約4〜10kVで作動されるカーボンナノチューブ(CNT)/電界放出デバイス(FED)ディスプレイ用RGB蛍光体システムに関する。当該RGB蛍光体システムは、CNT/FEDディスプレイのスクリーンの内面上に形成される。当該RGB蛍光体システムは、ZnS:Cu,Al(緑色蛍光体)、ZnS:Ag,Cl(青色蛍光体)、及び、YS:Eu+3(赤色蛍光体)を含む。緑色、青色、及び赤色の蛍光体それぞれに対する平均粒度は、約3〜4ミクロンであることが望ましい。
【0007】
本発明は、次に、添付の図面に関連してより詳細に記述される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1の断面図に示されているように、CNT/FEDディスプレイのスクリーン10は、表示面18及び内面15を含んでいる。三色発光蛍光体システム22は、スクリーン10の内面に適用される。スクリーン10には、三つ組で配置された、赤色発光、緑色発光、及び、青色発光それぞれの蛍光体ピクセルR、G、及びBからなる多数のスクリーン要素が含まれており、各三つ組は、3色それぞれの蛍光体パッドを含んでいる。R、G、及びBの蛍光体パッドは、電子ビームが生じる面に対して通常垂直の方向に延びている。図1に示されている吸光マトリクス23は、蛍光体パッドそれぞれを互いから引き離している。
【0009】
RGB蛍光体システムは、CNT/FEDディスプレイのスクリーン10の内面上に形成される。RGB蛍光体システムは、ZnS:Cu,Al(緑色蛍光体)、ZnS:Ag,Cl(青色蛍光体)、及び、YS:Eu+3(赤色蛍光体)を含む。このRGB蛍光体システムは、約4〜10kVで作動されるカーボンナノチューブ(CNT)/電界放出デバイス(FED)ディスプレイに適している。
【0010】
緑色、青色、及び赤色の蛍光体それぞれに対する平均粒度は、約3〜4ミクロンであることが望ましい。そのような粒度は、平坦化層にとって最小限の重複及び優れた充填密度で、吸光マトリクス23における蛍光体の開口部を充填するのに適している。この粒度範囲内の蛍光体は、6〜9ミクロンの粒度を有する標準陰極線管(CRT)材料の>95%の性能を有している。3ミクロン未満の平均粒度を有するRGB蛍光体システムは、減少した性能を示す。
【0011】
スクリーン10は、図2において概略的に表された工程段階に従い製造される。当技術分野では既知であるように、初めに、苛性アルカリ溶液で洗浄して、水中ですすぎ、緩衝フッ化水素酸でエッチングし、さらに、再度水ですすぐことによって、参照番号300により示されているようにスクリーン10は洗浄される。
【0012】
次に、好ましくは当技術分野では周知の様式で湿式マトリクス法(wet matrix process)を使用することによって、参照番号302により示されているようにスクリーン10の内面15に吸光マトリクス23が与えられる。
【0013】
吸光マトリクス23は、スクリーン12の内部の表示面15上に均等に与えられる。長方形の開口部が吸光マトリクス23内に形成され、その開口部は、一般に、約0.7mmという大きさを有している。図3Aを参照すると、吸光マトリクス23は三組の領域:緑色の領域40、青色の領域42、及び赤色の領域44を画定している。
【0014】
図2において参照番号304により示されているように、少なくとも1つの色蛍光体(例えば、緑、青、赤)が、吸光マトリクス23により画定された三組の領域のうち1または複数に形成される。図3Bを参照すると、前記少なくとも1つの色蛍光体は、第一に感光層46をスクリーン10の内面15上に堆積することにより形成することができる。感光材料の層46は、例えば、二クロム酸ナトリウムの水溶液、及び、ポリビニルアルコール(PVA)等のポリマーを含むことができる。スクリーン10上にポリマーと二クロム酸塩の水溶液をスピンコーティングすることにより、感光材料の層46をスクリーン10上に形成することができる。感光材料の層46の厚さは、約0.5マイクロメートルから約2.0マイクロメートルという範囲内にあることが望ましい。
【0015】
感光材料の層46は、約10センチポアズ(cps)から約25cpsという範囲内の粘度を有しているべきである。感光材料の層46は、約6重量%から約12重量%という範囲内で二クロム酸ナトリウム、及び、約88重量%から約94重量%という範囲内でポリマー(例えば、PVA)を含むことができる。
【0016】
感光材料の層46がフェースプレートパネル12の内面上に堆積された後、感光材料の層46の一部を、例えば化学線を用いて照射して、第1及び第2の組の領域40、42における感光材料の層46の感光材料を架橋することができる。第1及び第2の組の領域40、42における感光材料の層46内の感光材料を架橋することにより、そのような領域における感光材料が硬化する。
【0017】
図3Cを参照すると、第3組の領域44における照射をうけた感光材料の層46のうち硬化していない部分が、例えば脱イオン水を用いて展開される。展開中、第3組の領域44における照射をうけた感光材料の層46のうち硬化していない部分は除去される。
【0018】
照射をうけた感光材料の層46のうち硬化していない部分が除去された後、第1の色蛍光体層60が、第3組の領域44におけるスクリーン10の内面15上、並びに、第1及び第2の領域40、42における硬化した感光材料上に適用される。第1の色蛍光体層60は、ZnS:Cu,Al(緑色蛍光体)、ZnS:Ag,Cl(青色蛍光体)、及び、YS:Eu+3(赤色蛍光体)のうちの1つであり得る。
【0019】
第1の色蛍光体層60が、スクリーン10の内面15上に適用された後、スクリーン10は加熱される。スクリーン10は、約50℃から約100℃という温度まで加熱して、次に、約40℃の温度まで冷却することができる。その後、図3Dに示されているように、色蛍光体層60を有している硬化した感光材料は除去される。
【0020】
次に、図3A〜3Dを参考にした上記の第1の色蛍光体層の形成工程を繰り返して、第2組の領域42において第2の色蛍光体、又は、第1組の領域40において第3の色蛍光体を形成することができる。
【0021】
本発明の教えを組み込んだ例証的なカーボンナノチューブ(CNT)/電界放出ディスプレイ(FED)用発光スクリーンが、本明細書において詳細に示され記述されてきたけれども、当業者は、依然としてこれらの教えを組み込んだ、多数の他の変更された実施形態を容易に考案することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】発光スクリーン組立体を示した、CNT/FEDディスプレイのスクリーンの断面図である。
【図2】図1のスクリーン組立体における製造工程の流れ図を含んだブロック図である。
【図3A】発光スクリーン組立体の形成中におけるスクリーンの内面の図を描いている。
【図3B】発光スクリーン組立体の形成中におけるスクリーンの内面の図を描いている。
【図3C】発光スクリーン組立体の形成中におけるスクリーンの内面の図を描いている。
【図3D】発光スクリーン組立体の形成中におけるスクリーンの内面の図を描いている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数組の領域を画定するパターン化された吸光マトリクスを表面上に有するスクリーン;及び、
前記複数組の領域に配置された三色蛍光体システムであって、該三色蛍光体システムにおける蛍光体材料の平均粒度が約3乃至4ミクロンである、システム;
を含むディスプレイ。
【請求項2】
前記三色蛍光体システムのうち1つの蛍光体がZnS:Cu,Alである、請求項1に記載のディスプレイ。
【請求項3】
前記三色蛍光体システムのうち1つの蛍光体がZnS:Ag,Clである、請求項1に記載のディスプレイ。
【請求項4】
前記三色蛍光体システムのうち1つの蛍光体がYS:Eu+3である、請求項1に記載のディスプレイ。
【請求項5】
約4乃至10kVで作動される、請求項1に記載のディスプレイ。
【請求項6】
複数組の領域を画定するパターン化された吸光マトリクスを表面上に有するスクリーン;及び、
前記複数組の領域に配置された三色蛍光体システムであって、該三色蛍光体システムにおける蛍光体材料の平均粒度が約3乃至4ミクロンである、システム;
を含む、カーボンナノチューブ/電界放出デバイスディスプレイの発光スクリーン組立体。
【請求項7】
前記三色蛍光体システムのうち1つの蛍光体がZnS:Cu,Alである、請求項6に記載の発光スクリーン組立体。
【請求項8】
前記三色蛍光体システムのうち1つの蛍光体がZnS:Ag,Clである、請求項6に記載の発光スクリーン組立体。
【請求項9】
前記三色蛍光体システムのうち1つの蛍光体がYS:Eu+3である、請求項6に記載の発光スクリーン組立体。
【請求項10】
前記ディスプレイが約4乃至10kVで作動される、請求項6に記載の発光スクリーン組立体。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【公表番号】特表2009−541933(P2009−541933A)
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−516472(P2009−516472)
【出願日】平成18年6月23日(2006.6.23)
【国際出願番号】PCT/US2006/024812
【国際公開番号】WO2008/002288
【国際公開日】平成20年1月3日(2008.1.3)
【出願人】(501263810)トムソン ライセンシング (2,848)
【氏名又は名称原語表記】Thomson Licensing 
【住所又は居所原語表記】46 Quai A. Le Gallo, F−92100 Boulogne−Billancourt, France
【Fターム(参考)】