説明

カール形成化粧料

【課題】紫外線曝露により発生するフリーラジカルへの優れた消去能(即ち、理・美容施術上での良好な抗酸化力向上効果)を有し、必要によって優れたカール保持力、良好なコンディションをも併せ持つ性能を発揮することのできるカール形成化粧料を提供する。
【解決手段】本発明のカール形成化粧料は、少なくともセリシンまたは溶液中において加熱処理を施したセリシンを配合したものであり、必要によって更に(a)平均分子量25000〜35000の加水分解ケラチンと平均分子量400〜30000の蛋白質組成物、(b)シリル化加水分解蛋白質、(c)スサビノリまたは加水分解スサビノリ、(d)モミジ抽出液、(e)ケフィラン等を配合することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪を巻き髪スタイルに形成するためのカール形成化粧料に関するものであり、特に(1)紫外線曝露により発生するフリーラジカルの消去力や、(2)形成されたカールの保持力、等の特性を向上させるために使用されるカール形成化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
2003年頃から流行し始めた巻き髪スタイルは、依然として若い女性達に人気のヘアスタイルである。この巻き髪スタイルの人気は、10代から20代の女性だけに留まらず、30代や40代の女性からも高い支持を受けており、市場にも定着している。こうしたヘアスタイルは、巻き髪用(丸型)の加熱式ヘアアイロン(以下、単に「アイロン」と略称することがある)やホットカーラを用いてスタイリングする方法が採用され、主に熱を利用して毛髪にカールを形成させている(例えば、非特許文献1)。
【0003】
こうした方法によって巻き髪スタイルを形成させる場合には、毛髪に水を塗布し、アイロン操作をし易く、つまり巻き髪状にクセ付けし易くしてから、アイロン等で熱処理して毛髪にカールを付与する手法が一般的であった。しかしながら、こうした方法では、形成されたカールの保持力が極めて弱く、カールを長時間保持することが困難であり、早期にカールがとれてしまうという問題があった。
【0004】
こうしたことから、セット性の向上を目指して、アクリル酸系やメタクリル酸系の樹脂系化合物をアルコールに溶解した化粧料(カール形成化粧料)が汎用されつつある(例えば、非特許文献2)。しかしながら、樹脂系化合物をアルコールに溶解した化粧料では、水を使用したときよりもセット力は向上するものの、セット後のスタイルが数時間しか保持できないという問題が依然として残っている。しかも、こうした化粧料を用いた場合には、毛髪がギシギシした感触で悪いコンディションになるという問題もある。
【0005】
これらの問題を解決するべく、平均分子量が25000〜35000の加水分解ケラチン、および羊毛またはヒト毛髪から分離・精製されるゲル濾過カラムクロマトグラフィによる平均分子量測定値が11000の蛋白質および9700の蛋白質を含有する分子量8000〜12000の蛋白質組成物を配合した化粧料も開発されている(例えば、特許文献1)。
【0006】
この化粧料を用いれば、巻き髪スタイルを形成したときに、カールが形成させた状態が長時間持続できると共に、ダメージを受けたヒト毛髪の損傷を修復・回復させ、必要によってゴワツキ感やバリバリ感などを極力軽減できる。しかしながら、この化粧料は、紫外線の影響に関して一切言及しておらず、フリーラジカルによる毛髪損傷を抑制することができないという若干の問題を有している。昨今、巻き髪スタイルを楽しむ女性は、非常に活発であり、帽子を被ることなく屋外での時間を楽しむ可能性が高く、これまでの頭髪化粧料よりも優れた紫外線防止効果(フリーラジカル消去能)が望まれている。
【0007】
巻き髪スタイルを形成する方法としては、毛髪へ塗布する化粧料類以外にも「巻き髪ブラシ」というものも開発されている(例えば、特許文献2)。これを用いると、アイロンやホットカーラ等を使用しなくてもすむという利点はあるものの、常に同じ形の巻き髪になることや、直ぐに巻き髪が取れてしまう点で完成度が非常に低いものである。
【0008】
シルクの構成物であるフィブロインやセリシン等の蛋白質を加熱することによる手法に関しては既に報告されている(例えば、特許文献3、特許文献4)。このうち特許文献3では、絹フィブロインの高熱処理に関して記載されているが、高熱処理したフィブロインでは保湿感が不十分である。また、特許文献4で示されているセリシンの加水分解物については、工程の中にアルカリ処理を含んでいるため、製造上の簡便性が悪く、分子量が広範囲に分布していることも鑑み、効率よく毛髪内部へ浸透しにくいものと考えられていた。
【0009】
ところで、スサビノリやその分解物(加水分解物)は、主に食品に使用されており、経口投与することで、血圧降下作用等をもたらすことは知られている。例えば特許文献5には、紅藻類アマノリ属に属する海藻に、ビブリオ属に属する微生物の産生する多糖類分解酵素を作用させて、スサビノリが海藻の分解物として得られること、およびこの分解物を添加した食用組成物について開示されている。
【0010】
また、特許文献6には、スサビノリの分解方法についても提案されている。この方法では、スサビノリを50℃前後で12時間以上ペプシン分解することが提案されており、得られた分解物(ペプチド混合物)はアンジオテンシン変換酵素阻害活性を有し、且つ特定のアミノ酸配列を持つことが示されている。このようにして得られたスサビノリ分解物についても、経口投与することにより、血圧降下作用や血漿コレステロール低下作用等を有することが確認されている。しかしながら、スサビノリやその分解物をカール形成化粧料へ添加した例はなく、その効果も知られていない。
【0011】
一方、ケフィランは、ユーラシア大陸のコーカサス地方で食されている複合発酵乳(ケフィア)から抽出される多糖類として知られている。こうしたケフィランに関しては、皮膚、頭皮および頭髪に使用することで保湿感が増すことが提案されている(例えば、特許文献7)。しかしながら、ケフィランによるスベリ感[特に、ヘアアイロンを用いた際の毛髪のスベリ感と処理後の毛髪のスベリ感(以下、単に「スベリ感」と呼ぶことがある)]等の向上に関しては、一切言及されていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】「JJ」2月号 別冊付録、『JJヘアグランプリ2008』、2008年発行 光文社発刊
【非特許文献2】「CLASSY」4月号 別冊付録、『春に生まれ変わる!ヘアカタログ』、2004年発行 光文社発刊
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特許第4012220号公報 特許請求の範囲等
【特許文献2】特開2007−307344号公報 特許請求の範囲等
【特許文献3】特開平08−27186号公報 特許請求の範囲等
【特許文献4】特許第4112291号公報 特許請求の範囲等
【特許文献5】特開平06−225724号公報 特許請求の範囲等
【特許文献6】特許第3272621号公報 特許請求の範囲等
【特許文献7】特許第2911199号公報 特許請求の範囲等
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
蛋白質組成物を含有する化粧料で巻き髪スタイルを形成することが有用であることは既に提案されており(特許文献1)、非常に有効な知見ではあるが、紫外線曝露時に発生するフリーラジカルへの対応のみが不十分であった。また巻き髪ブラシのような装置だけでは(特許文献2)、カールの保持力が明らかに弱かったため、実用的な技術とは言い難い。
【0015】
更に、熱処理した絹フィブロインによる手法については知られているが(特許文献3)、カール形成を維持すための効果としては十分なものとはいえなかった。
【0016】
一方、特許文献4のように、セリシンの抗酸化力向上効果に関しては既に一部で知られているが、高分子量の蛋白質組成物を含有することから、毛髪へ効果的に作用しがたいものと考えられており、理・美容施術上での効果向上は期待できないものと思われている。
【0017】
即ち、これまでに提案されている技術では、優れたカール保持力、良好なコンディション、理・美容施術上での抗酸化力向上効果を併せ持った特性のカール形成化粧料は実現されていないのが実情である。
【0018】
特に、理・美容施術を行なう理・美容室では、顧客に対して、理・美容施術上での効果の向上を速やかに認識してもらうことが、来店頻度の増加につながるため、非常に有益であると考えられている。つまり、理・美容施術の段階で、しっかりとその効果の向上が認識できるようなカール形成化粧料の実現が望まれている。
【0019】
本発明はこうした状況下でなされたものであり、その目的は、紫外線曝露により発生するフリーラジカルへの優れた消去能(即ち、理・美容施術上での良好な抗酸化力向上効果)を有し、必要によって優れたカール保持力、良好なコンディションをも併せ持つ性能を発揮することのできるカール形成化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記目的を達成することのできた本発明のカール形成化粧料とは、少なくともセリシンまたは溶液中において加熱処理を施したセリシンを配合したものである点に要旨を有するものである。
【0021】
本発明のカール形成化粧料においては、前記溶液中で加熱処理したセリシンの配合量は、カール形成化粧料全体に占める割合で0.005〜1.1質量%であることが好ましい。これによって、巻き髪スタイル形成時に毛髪への抗酸化力の付与効果と良好なコンディションを併せ持つ性能を発揮することができる。
【0022】
本発明のカール形成化粧料においては、必要によって、(a)平均分子量25000〜35000の加水分解ケラチンと平均分子量400〜30000の蛋白質組成物を含有すること、(b)その配合比を5:1〜1.5:1(平均分子量25000〜35000の加水分解ケラチン:平均分子量400〜30000の蛋白質組成物)とすること、(c)前記加水分解ケラチンと前記蛋白質組成物の合計がカール形成化粧料全体に占める割合で0.03〜6質量%の割合で配合すること、等の要件を満足することが好ましく、こうした要件を満足させることによって、良好なカール形成保持力と毛髪補修効果を発揮させることができる。
【0023】
また、本発明のカール形成化粧料には、シリル化加水分解蛋白質を配合することもでき、その配合量は、カール形成化粧料全体に占める割合で0.05〜0.15質量%であることが望ましく、こうした要件を満足させることによってカール形成保持力と毛髪補修効果を更に高めることができる。
【0024】
更には、毛髪へのツヤ感やスベリ感を向上させるという観点から、本発明のカール形成化粧料には、スサビノリまたは加水分解スサビノリ、モミジ抽出液、ケフィラン等を配合することも有用である。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、少なくともセリシンまたは溶液中において加熱処理を施したセリシンを配合することによって、優れた抗酸化力向上効果が発揮されると共に、必要によって平均分子量25000〜35000の加水分解ケラチンと平均分子量400〜30000の蛋白質組成物、更にはシリル化加水分解蛋白質を配合することによって、カール形成保持力と毛髪補修効果を向上させ、場合によっては、スサビノリまたは加水分解スサビノリ、モミジ抽出液、ケフィラン等を配合することによって、手触り感やツヤ感、スベリ感の向上が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】実施例4の実験No.10における毛髪表面性状を示す図面代用電子顕微鏡写真である。
【図2】実施例4の実験No.11における毛髪表面性状を示す図面代用電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明者らは、上記の課題を解決するために、様々な角度から検討を加えた。その結果、セリシンまたは溶液中において加熱処理を施したセリシン(以下、これらを総括して「セリシン」と呼ぶことがある)を含有するカール形成化粧料を毛髪へ塗布して使用することにより、優れた「抗酸化力」が付与できることを見出し、本発明を完成した。
【0028】
セリシンは、生繭からシルクを製造する際に得られる副産物であり、シルク生産時には廃棄されていたが、現在ではその保湿感等により有効利用され始めている原料である。セリシンは、特殊な加圧器具により加工する技術は報告されているが、産業上簡易的な手法により加工される技術は未だ開発されていなかった。また、理・美容施術中での抗酸化力向上効果に着目した技術は、未だ見出されていない。
【0029】
この様なセリシンについて、本発明者らが検討したところによれば、市販されているセリシン溶液を用い、化粧品の製造段階における加温工程(溶液中で加熱処理する工程)と、理・美容施術中での抗酸化力を向上させる方法を発見した。特に、理・美容施術では、ドライヤーやヘアアイロンを用いることがあり、これらの使用で大きく抗酸化力が向上することが判明したのである。
【0030】
尚、「溶液中において加熱処理を施したセリシン」とは、水やブチレングリコール等の溶液でセリシンを常圧若しくは加圧下で70〜90℃程度の温度で加熱処理したものであり、こうした処理を施すことによって、セリシンが低分子化し、毛髪へ浸透しやすくなったものと考えられる。加熱処理前のセリシンの良好な分子量の範囲は5500〜40000であり、加熱処理によって、分子量が5500〜40000以下になっているものと考えられる。
【0031】
上記のような効果を有効に発揮させるためには、溶液中において加熱処理を施したセリシンを使用する場合で、0.005質量%以上(カール形成化粧料全体に占める割合)配合させることが好ましい。しかしながら、セリシンの配合量が過剰になると、ベタ付いてしまうため、1.1質量%以下(カール形成化粧料全体に占める割合)とすることが好ましい。
【0032】
溶液中において加熱処理を施したセリシン中には完全に分解できていないセリシンを含むことから、適宜、適切な量を配合すれば良い。尚、セリシンはそのままでは、溶液中において加熱処理を施したセリシンに比較し、その効果は若干劣るものとなるが、その後のアイロン等などの加熱処理によって、同等の効果を発揮するものとなる。
【0033】
本発明のカール形成化粧料には、必要によって、更に平均分子量25000〜35000の加水分解ケラチンと平均分子量400〜30000の蛋白質組成物を含有させることも有用である。この平均分子量25000〜35000の加水分解ケラチンと平均分子量400〜30000の蛋白質組成物は、毛髪のカール形成保持力と毛髪補修効果を向上させるために有効である。
【0034】
上記加水分解ケラチンは、毛髪にカールを付与するとともにカールを形成した毛髪の強度を低下させないという効果を発揮するものである。こうした効果を発揮させるためには、使用する加水分解ケラチンの平均分子量も特定の範囲のものとすることが重要である。この平均分子量が25000未満では、所望のカール形成保持力を発揮させることができない。また、平均分子量が35000を超えると、天然のケラチン蛋白質に近いものとなり、「加水分解ケラチン」を使用するという効果が発揮されない。
【0035】
使用する加水分解ケラチンの種類は、平均分子量の特定を除いて特に特定するものではない。例えば、厚生労働省の化粧品種別配合成分規格に収載されている「加水分解ケラチン末」や「加水分解ケラチン液」を用いても良いし、或いは、市販の精製高分子α−ケラトース(結晶性ケラチン)やγ−ケラトース(非結晶性ケラチン)を用いても良い。
【0036】
平均分子量が400〜30000の蛋白質組成物は、毛髪にカールを付与するとともにカールを形成した毛髪の強度を低下させないという効果を発揮するものである。このような蛋白質組成物は、損傷している毛髪に対して効果的に浸透することができる分子量という観点から、平均分子量が400〜30000であることが好ましい。平均分子量が30000よりも高くなると、浸透しにくくなり、400未満では洗髪時に流出し易くなる。更に、蛋白質組成物の平均分子量は8000〜12000であることがより好ましい。具体的には、ケラチン、コラーゲン等の蛋白質組成物を挙げることができる。こうした蛋白質組成物は、頭髪用医薬部外品および化粧品用原料として市販されているものを用いることができる。例えば、平均分子量として約10000のものが(株)成和化成から「プロモイスWK−GB」の商品名で上市されている。
【0037】
上記の効果をバランス良く発揮させるためには、前記加水分解ケラチンと前記蛋白質組成物の配合比が、5:1〜1.5:1(質量割合)であることが好ましい。この範囲内であれば、毛髪のカール形成保持力と毛髪補修効果を同時に向上させることができる。更に、上記のような効果を有効に発揮するためには、この前記加水分解ケラチンと前記蛋白質組成物の総量(合計配合量)が0.03質量%以上(カール形成化粧料全体に占める割合)配合させることが好ましい。しかしながら、この総量が過剰になると、毛髪に蛋白質特有の臭いが付着し、且つ、ベタツキ感が生じるため、6質量%以下とすることが好ましい。
【0038】
本発明のカール形成化粧料には、必要によって、更にシリル化加水分解蛋白質を配合することも好ましい。それにより、毛髪の補修力がより高まるものとなる。上記のようなシリル化加水分解蛋白質を配合するときの含有量(配合量)は、カール形成化粧料全体に占める割合で、0.05〜0.15質量%程度であることが好ましい。この割合が、0.05質量%未満になるとシリル化加水分解蛋白質を配合した効果が発揮されず、0.15質量%を超えると却ってカール形成保持力が低下することになる。
【0039】
尚、本発明のカール形成化粧料で用いることのできるシリル化加水分解蛋白質は、代表的には下記の化学式で示されるものが挙げられるが(式中nは正の整数、Rはアミノ酸側鎖を夫々示す)、こうしたシリル化加水分解蛋白質としては、絹由来、羊毛由来、小麦由来、大豆由来、トウモロコシ由来、ジャガイモ由来、ゴマ由来等、様々なものがあり、本発明のカール形成化粧料ではそのいずれも使用できる。
【0040】
【化1】

【0041】
本発明のカール形成化粧料には、必要によって(a)スサビノリまたは加水分解スサビノリ、(b)モミジ抽出液、(c)ケフィランを配合することも有効であり、これによって毛髪の手触り感、ツヤ感、スベリ感等の向上が可能になる。
【0042】
上記スサビノリやその加水分解物は、これまで主に食品に使用されており、経口投与することで、血圧降下作用や血漿コレステロール低下作用等を有することが知られている(前記特許文献5)。しかしながら、スサビノリやその加水分解物(加水分解スサビノリ)をカール形成化粧料に使用した例はなく、その効果は知られていなかった。本発明者らが検討したところによれば、このようなスサビノリまたは加水分解スサビノリを配合したカール形成化粧料を毛髪へ塗布して使用することにより、優れた「ツヤ感」を付与できることが判明したのである。
【0043】
上記のような効果を有効に発揮させるためには、加水分解スサビノリを使用する場合で、0.0015質量%以上(カール形成化粧料全体に占める割合)配合させることが好ましい。しかしながら、加水分解スサビノリの配合量が過剰になると、毛髪に塗布したときにベタツキ感が生じ、また蛋白質特有の臭いが目立ってしまうため、0.3質量%以下(カール形成化粧料全体に占める割合)とすることが好ましい。
【0044】
尚、スサビノリは、有効成分の含有量が不明であり、加水分解スサビノリ中にも完全に分解できていないスサビノリを含むことから、スサビノリを使用するときの適切な配合量も不明であるため、上記基準に即して適宜、適切な量を配合すれば良い。
【0045】
モミジ抽出液(モミジエキス)は、毛髪のスベリ感を向上させるために有効である。こうした効果を発揮させるためには、モミジ抽出液の配合割合は、カール形成化粧料全体に占める割合で0.00005質量%以上とすることが好ましい。しかしながら、モミジ抽出液の配合割合が過剰になると、毛髪に塗布したときに毛髪がベタ付き、カール形成保持力が却って低下するので、0.1質量%以下(カール形成化粧料全体に占める割合)とすることが好ましい。
【0046】
ケフィランは、上記モミジ抽出液と同様に、毛髪のスベリ感を向上させるために有効である。こうした効果を発揮させるためには、ケフィランの配合割合は、カール形成化粧料全体に占める割合で0.0001質量%以上とすることが好ましい。しかしながら、ケフィランの配合割合が過剰になると、毛髪に塗布したときに毛髪がベタ付き、カール形成保持力が却って低下するので、0.2質量%以下(カール形成化粧料全体に占める割合)とすることが好ましい。
【0047】
本発明のカール形成化粧料には、上記成分の他、必要によってリン脂質コポリマーおよび/または高重合シリコーンを配合することも推奨される。これらの物質は、毛髪に対してコンディショニング効果を向上させる作用を発揮し、これらの物質を配合することによって、カール形成後の毛髪に静電気が帯電することを抑制すると共に、ゴワツキ感やバリバリ感が出ることを防止し、毛髪表面のスベリ感を著しく向上させることができる。これらの物質を配合するときには、カール形成化粧料全体に対する割合(含有量)でリン脂質コポリマーを0.8質量%以下、高重合シリコーンを25質量%以下とすることが好ましい。
【0048】
本発明のカール形成化粧料は、セリシンまたは溶液中において加熱処理したセリシンを必須成分として含み、必要によって、加水分解ケラチン、蛋白質組成物、シリル化加水分解蛋白質、スサビノリまたは加水分解スサビノリ、モミジ抽出液、ケフィラン等を配合したものであるが、その他、カール形成化粧料に含まれる通常の添加剤を含むものであっても良い。こうした添加剤としては、保湿剤類、蛋白質(上記した蛋白質を除く)および蛋白質加水分解物、高級アルコール類、シリコーン類、非イオン界面活性剤類、高分子類、カチオン性化合物類、防腐剤類、pH調整剤・酸・アルカリ類、溶剤類等を配合することができる。
【0049】
これらの添加剤を例示すると、保湿剤類としては、1,3−ブチレングリコ−ル、グリセリン、ジグリセリン、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール等の多価アルコール類が挙げられる。
【0050】
蛋白質および蛋白質加水分解物として、小麦、大豆、ゴマ、ミルク、酵母、卵黄、パール、エンドウ、コメ、シルク由来、およびケラチン、ゼラチン、コラーゲン、エラスチン、カゼイン、ペプチド類およびその誘導体、アルギニン、セリン、グリシン、グルタミン酸、トリメチルグリシン等のアミノ酸類等が挙げられる。
【0051】
高級アルコール類としては、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ミリスチルアルコール、オレイルアルコール、セトステアリルアルコール等の直鎖アルコール類、モノステアリルグリセリンエーテル(バチルアルコール)、2−デシルテトラデシノール、ラノリンアルコール、コレステロール、フィトステロール、ヘキシルドデカノール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール等の分枝鎖アルコール等が挙げられる。
【0052】
シリコーン類としては、ジメチコン、シクロメチコン(ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン)、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン、シリコーン樹脂、シリコーンゴム、アミノ変性ポリシロキサン、カチオン変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等が挙げられる。
【0053】
非イオン界面活性剤類としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、脂肪酸アルカノールアミド、多価アルコール脂肪酸部分エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、アルキルジメチルアミンオキサイド、ポリオキシエチレンヒマシ油等が挙げられる。
【0054】
高分子類としては、グアーガム、キサンタンガム、カラギーナン、アルギン酸、デンプン誘導体、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシビニルポリマー、メドウフォーム油脂肪酸ジメチコンコポリオール、アクリル酸・メタクリル酸エステル共重合体、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリル酸ジエチル硫酸塩、N,N−ジメチルアクリルアミド・ジメタクリル酸塩、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体、ポリビニルアルコール、アクリル樹脂アルカノールアミン液等が挙げられる。
【0055】
カチオン性化合物としては、カチオン化セルロース誘導体、カチオン化デンプン、カチオン化グアーガム、ジアリル4級アンモニウムの重合体または共重合体、4級化ポリビニルピロリドン誘導体等が挙げられる。
【0056】
防腐剤類としては、p−ヒドロキシ安息香酸エステル類、安息香酸塩類、フェノキシエタノール、四級アンモニウム塩類等が挙げられる。
【0057】
pH調整剤・酸・アルカリ類としては、リン酸、リンゴ酸、酒石酸、炭酸、フマル酸、クエン酸、乳酸、グリコール酸、コハク酸、塩酸、硫酸、硝酸若しくはそれらの塩類、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、リン酸水素二ナトリウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、アルギニン、アンモニア水、アミノメチルプロパノール若しくはそれらの塩類等が挙げられる。
【0058】
本発明のカール形成化粧料を溶解する溶剤類としては、水やエタノールが一般的であるが、これらの他にも、2−プロパノール等の低級アルコール類等を使用することができる。
【0059】
本発明のカール形成化粧料は、日常的に毛髪をカールスタイルに形成するために用いることができ、その剤型は液状が最も良いが、ミスト状、クリーム状、ゲル状、泡状、エアゾール状など種々のタイプが可能で、特に限定されるものではない。また、本発明のカール形成化粧料を用いて毛髪にスタイルを形成させるには、毛髪にカール形成化粧料を塗布し、アイロンやホットカーラ等でスタイルをセットすれば良い。
【実施例】
【0060】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0061】
[実施例1]
(セリシン溶液の抗酸化力向上効果の検討)
この実施例で用いたセリシン溶液は、頭髪用医薬部外品および化粧品用原料として市販されているものとして、一丸ファルコス(株)製の「シルクゲンGソルブルS」(商品名:純分5.5%含有、平均分子量15000)である。
【0062】
上記セリシン溶液を用い、下記表1に示す実験No.2〜5の方法により、抗酸化力の向上効果を検討した。尚、実験No.2〜5は、夫々下記の加熱処理1〜4の工程を含んでいる。
【0063】
加熱処理1…常圧下(0.1MPa)で80℃の熱を1時間加えた。
加熱処理2…耐熱瓶(メディウム瓶)にセリシン溶液を入れ、オートクレーブを用い、
加熱処理を行なった(0.2MPa、121℃、20分間)。
加熱処理3…密閉式高温高圧瓶にセリシン溶液を入れ、オートクレーブを用い、加熱処
理を行なった(0.6MPa、160℃、20分間)。
加熱処理4…密閉式高温高圧瓶にセリシン溶液を入れ、オートクレーブを用い、加熱処
理を行なった(1.5MPa、200℃、20分間)。
【0064】
実験No.1に関しては、加熱処理を行なわずに、下記のDPPH消去力(抗酸化力)の測定を行なった。上記4種類の加熱処理を含む実験No.2〜5の加熱処理を行い、夫々について下記のDPPH消去能(抗酸化力)の測定を行なった。
【0065】
(抗酸化力の測定:DPPH−VIS法)
DPPH(1,1−ジフェニル−2−ピクリルヒドラジル)は、それ自体が安定な紫色(520nm付近に最大吸収をもつ)のラジカル物質であり、抗酸化物質(水素供与体)が存在すると、水素を奪って非ラジカル体(淡黄色)に変化し、紫色が次第に退色する。その退色度合いを分光光度計で測定し、ラジカル消去能を評価する方法がDPPH−VIS法である。DPPH−VIS法は、スーパーオキシド消去能(活性酸素消去能)と高い相関関係(r=0.9867)が認められる。
・A:各試料(実験No.1〜5で得られた各セリシン溶液)2mL(ミリリットル)と150μM・DPPHエタノール溶液2mLを混合し、30分反応後の吸光度を測定した(測定波長:520nm)。
・B:各試料(実験No.1〜5で得られた各セリシン溶液)2mLと溶媒であるエタノール2mLを混合し、30分反応後の吸光度を測定した(測定波長:520nm)。
・C:150μM・DPPHエタノール溶液2mLと超純水2mLを混合し、30分反応後の吸光度を測定した(測定波長:520nm)。
【0066】
吸光度の測定には、分光光度計「UV−2550」(商品名:株式会社島津製作所製)を用いた。そして下記(1)式によって、DPPHに対するラジカル消去力を求めた。
DPPH消去力={C−(A−B)}/C×100 …(1)
但し、A:各試料溶液の吸光度
B:各試料溶液のブランクの吸光度
C:コントロール溶液の吸光度
【0067】
実験No.1(セリシン溶液)のDPPH消去力の実測値を100に換算し、各試料との比較を行なった。つまり、セリシン溶液のみのDPPH消去力をE(実測値)として、下記(2)式により各実験(試料)におけるDPPH消去力を算出した。
各試料のDPPH消去力={C−(A−B)}/C×100/E×100…(2)
【0068】
(DPPH消去力の評価基準)
◎:120以上
○:110以上、120未満
△:100以上、110未満
×:100未満
【0069】
(加熱処理工程における簡便性の評価)
下記表1に示した「加熱処理工程の簡便性」とは、化粧品の製造レベルにおいて、応用できるかどうかを示している。設備投資の必要性も判断材料に下記の基準で評価したものである。
【0070】
(簡便性の評価基準)
○:生産設備への投資が必要なく、工程も簡易であり、非常に簡便性が良い。
×:生産設備への投資等が必要であり、また、各工程の処理が複雑で、非常に簡便性が悪い。
【0071】
これらの結果を、下記表1に示す。
【0072】
【表1】

【0073】
この結果から、次のように考察できる。セリシン溶液に各種加熱処理を加えることによって、抗酸化力が向上することが分かる(実験No.2〜5)。但し、実際の化粧品の製造現場を考慮すると、オートクレーブを用いた高温高圧下での加熱処理を含む工程では、いずれも簡便性に欠けることになる(実験No.3〜5)。従って、セリシン溶液の抗酸化力向上効果と、製造工程の簡便性の両者を考慮すると、上記「加熱処理1」(実験No.2)が最も現実的であるため、以下の検討には、実験No.2で得られたセリシン溶液を用いた。
【0074】
[実施例2]
(毛髪への抗酸化力付与効果の検討)
実施例1で得られた実験No.2のセリシン溶液(以下、「試料A」とする)を毛髪に塗布し、抗酸化力向上の検討を行なった。化学的処理(ヘアカラー処理やパーマネントウェーブ処理等)を施していない毛髪0.2gに試料A:0.2gを塗布し、下記表2の実験No.6〜9に示す工程を実施した。また、実験No.6〜9に示す室温乾燥および加熱処理5、6の概要を以下に示す。
【0075】
室温乾燥…室温(20℃)で24時間放置
加熱処理5…ドライヤー(約80℃の温風)を用い、3分間処理
加熱処理6…加熱式ヘアアイロン(約180℃)を用い、0.2gの毛髪全体を15秒間処理
【0076】
上記の加熱処理を含む工程(下記表2)を実施し、DPPH消去力を下記の方法によって測定した。
【0077】
(DPPH−VIS法:毛髪を測定する場合)
実験No.6〜9で得られた各毛髪を以下の工程により測定した。
・G:各処理毛髪と150μM・DPPHエタノール溶液2mLを混合し、30分反応後の吸光度を測定した(測定波長:520nm)。
・H:各処理毛髪と溶媒であるエタノール2mLを混合し、30分反応後の吸光度を測定した(測定波長:520nm)。
・C:150μM・DPPHエタノール溶液2mLと超純水2mLを混合し、30分反応後の吸光度を測定した(測定波長:520nm)。
このとき吸光度の測定には、分光光度計「UV−2550」(商品名:株式会社 島津製作所製)を用いた。
【0078】
下記(3)式より、DPPHに対するラジカル消去力を求めた。
DPPH消去力={C−(G−H)}/C×100 …(3)
但し、G:各試料溶液の吸光度
H:各試料溶液のブランクの吸光度
C:コントロール溶液の吸光度
【0079】
実験No.1のDPPH消去力の実測値を100に換算し、各試料との比較を行なった。つまり、セリシン溶液のみのDPPH消去力をE(実測値)として、下記(4)式により各実験(試料)におけるDPPH消去力を算出した。DPPH消去力の評価基準は上記と同じである。
各試料のDPPH消去力={C−(G−H)}/C×100/E×100…(4)
【0080】
これらの結果を、下記表2に示す。尚、未処理毛の抗酸化力(DPPH消去力)は70であった。
【0081】
【表2】

【0082】
この結果から、次のように考察できる。加熱処理を施したセリシン溶液を毛髪に塗布して使用することによって、毛髪に抗酸化力を付与できることが分かる(実験No.6)。また、ドライヤーや巻き髪用加熱式アイロンで熱処理を加えることによって、更に抗酸化力が高くなることが分かる(実験No.7〜9)。但し、ドライヤーのみの処理だけでなく、巻き髪用加熱式アイロンを用いる方が、抗酸化力付与効果が高くなることが分かる。こうした効果は、繰り返して処理を行なうことが効果的であることが分かる(実験No.9)。
【0083】
上記の結果は、実験No.8や実験No.9のような工程(理・美容室で施術可能)であっても、十分な抗酸化力の向上が認められることを示すものである。即ち、これまでは特殊な工程でしか期待できなかった抗酸化力向上の手段が、従来よりも簡便な方法により実現できることを示している。
【0084】
[実施例3]
(ブリーチ処理毛の作製)
化学的処理を全く受けていない毛髪に下記のブリーチ処理を施して処理毛を作製し、その毛髪について、下記表3に示すカール形成化粧料(処方例1〜7)を用いて処理したときの毛髪の抗酸化力および毛髪のコンディションを評価した。
【0085】
下記表3において、試料Bは平均分子量が30000の加水分解ケラチン[10質量%含有物:「プロティキュート Uアルファ」 一丸ファルコス(株)製]であり、試料Cは平均分子量が10000の蛋白質組成物[20質量%含有物:「プロモイスWK−GB」 (株)成和化成製]である。
【0086】
(ブリーチ処理)
トーナーブリーチパウダーEX(粉末ブリーチ剤:中野製薬株式会社製)とキャラデコオキサイドEX06(過酸化水素系酸化剤:中野製薬株式会社製)を1:3(質量比)となるように混合したブリーチ剤を、毛髪に質量比1:1の割合で塗布し、30℃、30分間の条件で処理した後、10質量%のSDS溶液(ドデシル硫酸ナトリウム溶液)によって洗浄し、その後、乾燥した。この工程を3回実施した試料を以下の実験に用いた。
【0087】
(DPPH−VIS法:毛髪を測定する場合)
下記表3に示す処方例1〜7の各試料0.2gを上記ブリーチ処理毛0.2gに塗布し、ドライヤーで乾燥後に実施例2と同様に毛髪の抗酸化力(DPPH消去力)を評価した。
【0088】
(コンディションの官能評価方法)
上記ブリーチ処理毛0.2gに、下記表3に示した各試料(処方例1〜7)を0.2g塗布し、ドライヤーで乾燥後に毛髪表面のコンディション(サラサラ感)を評価した。その際、毛髪表面のコンディション(サラサラ感)を、専門のパネラー10名で以下の3段階(評価点:1〜3点)で官能評価し、その合計を求め下記の評価基準で評価した。その結果を下記表3に併記する。
3点…処理前と比較し、明らかにサラサラ感が良くなった。
2点…処理前と比較し、少しサラサラ感が良くなった。
1点…処理前と比較し、サラサラ感は変らなかった。
【0089】
[コンディションの評価基準]
◎:26〜30点
○:21〜25点
△:16〜20点
×:10〜15点
【0090】
この結果より、試料Aを0.1〜20.0質量%(純分換算:0.0055〜1.1質量%)で配合したカール形成化粧料を用いた場合には、毛髪への抗酸化力付与効果が大きくなり、且つ良好なコンディションを付与できることが分かる。また、試料Aの配合量が少なくなると、毛髪への抗酸化力付与効果が小さくなり(処方例1)、逆に多過ぎるとベタツキ感が生じてしまうことが分かる(処方例7)。
【0091】
【表3】

【0092】
[実施例4]
(紫外線曝露によるダメージ抑制効果)
化学処理を施していない毛髪(未処理毛)を用いて、下記表4に示す各工程(実験No.10、11)の試験を実施し、毛髪表面のキューティクルの浮き上がり度の測定を行なった。この際、UVB(紫外線のB波)を照射するために、東光電気(株)製の「デルマレイ−200」(商品名)を用いた。
【0093】
(キューティクル浮き上がり度の測定)
キューティクルの浮き上がりは、毛髪の損傷を識別する上で、非常に重要な確認方法である。実験No.10と実験No.11のキューティクルの浮き上がり度を測定する際、未処理毛もコントロールとして、その毛髪表面を確認した。この3種の毛髪表面をSEM(走査型電子顕微鏡)により専門のパネラーによって下記表5に示す基準によって評価した(20箇所)。キューティクルの浮き上がり度は、上記評価の平均値により算出した。尚、未処理毛におけるキューティクルの浮き上がり度は、0.50であった。
【0094】
【表4】

【0095】
【表5】

【0096】
その結果、実験No.11の処理は、ほとんど未処理毛と変わらないぐらいの評価であった。これら実験No.10と実験No.11の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を、図1、2(図面代用電子顕微鏡写真)に夫々示す。この結果から、明らかなように、試料Aを配合した処方例2を使用することによって、紫外線によるダメージを抑制できることが分かる。
【0097】
[実施例5]
実施例3と同様にしてブリーチ処理した各毛髪について、下記表6〜10に示したカール形成化粧料(処方例2、8〜29)を用いて処理したときの毛髪のカール形成保持力について、下記の各方法によって評価した。また、下記表6、8〜10に示したカール形成化粧料(処方例2、8〜10、15〜29)については、処理したときの毛髪の破断強度について下記の方法によって測定した。
【0098】
(カール形成保持力の評価)
上記ブリーチ処理毛0.2gに対し、表6〜10に示したカール形成化粧料(処方例2、8〜29)を塗布し(0.2g)、ドライヤーにて乾燥後、加熱式ヘアアイロン(インディペンデントスチーム:ブラウン社製)を用いて熱処理し、カールを形成した。このときのアイロンの表面温度は120℃であり、5秒間熱処理した。その後、室温(20℃)で24時間放置した後(湿度:60%)、その自然長を比較することによってカール形成保持力について評価した(その長さが長くなるほど、カール形成保持力が低くなる)。その結果を、下記表6〜10に併記する。
【0099】
各処方例のカール形成化粧料を用いてカール形成した直後の長さ(自然長)を100%とし、24時間放置後の各処理毛の長さを数値化して示している。
【0100】
[カール形成保持力の評価基準]
◎:自然長が100%以上、106%未満
○:自然長が106以上、110%未満
△:自然長が110以上、116%未満
×:自然長が116%以上
【0101】
(破断強度測定用毛髪の作製)
上記ブリーチ処理毛0.2gに対し、下記表6、8〜10に示したカール形成化粧料(処方例2、8〜10、15〜29)を塗布し(0.2g)、ドライヤーにて乾燥後、加熱式ヘアアイロン(インディペンデントスチーム:ブラウン社製)を用いて熱処理し、カールを形成した。その後、シャンプー処理(10%SDS溶液:ドデシル硫酸ナトリウム溶液)による付着物の除去を行い乾燥した。こうした一連の手順を一工程として3回(三工程)の処理を行った毛髪について、破断強度を測定した。このときの破断強度測定方法は下記の通りである。
【0102】
(破断強度測定方法)
上記処理を施した毛髪を任意に選び、「毛髪直径計測システム」(カトーテック株式会社製)により毛髪の直径[長径(mm)および短径(mm)]を計測し、横断面積(mm2)を下記(5)式より求めた。次に、卓上型材料試験機「テンシロン STA−1150」(株式会社オリエンテックス製)を用い、上記試料毛髪の水中における引張り破断値(cN)の測定を行った。その後、横断面積(mm2)当りの引張り破断値(cN)を算出することによって、破断強度(cN/mm2)を求めた(n=20)。このときの評価基準は下記の通りである。その結果を、下記表6、8〜10に併記する。
横断面積(mm2)=(π/4)×長径(mm)×短径(mm)…(5)
【0103】
[毛髪の破断強度の評価基準]
◎:破断強度が0.98×104cN/mm2以上
○:破断強度が0.96×104cN/mm2以上、0.98×104cN/mm2未満
△:破断強度が0.94×104cN/mm2以上、0.96×104cN/mm2未満
×:破断強度が0.94×104cN/mm2未満
【0104】
【表6】

【0105】
【表7】

【0106】
【表8】

【0107】
【表9】

【0108】
【表10】

【0109】
これらの結果から、次のように考察できる。表6の結果は、試料B(加水分解ケラチン)と試料C(蛋白質組成物)の配合効果について確認したものであるが、これらの成分の所定量を配合することによって、カール形成保持力および毛髪破断強度が向上することが分かる。
【0110】
表7の結果は、蛋白質の分子量の異なるものを用い、その効果について確認したものであるが、分子量400〜30000の蛋白質組成物を配合することによって、カール形成保持力が優れたものとなることが分かる(処方例2、12、13)。
【0111】
表8の結果は、試料B(加水分解ケラチン)と試料C(蛋白質組成物)の配合割合を変えたときの効果について確認したものであるが、試料B:試料Cを5:1〜1.5:1(質量割合)の範囲で配合したときに、カール形成保持力が高く、且つ破断強度が高くなっていることが分かる(処方例2、16〜19)。
【0112】
表9の結果は、試料B(加水分解ケラチン)と試料C(蛋白質組成物)の合計量を変えたときの効果について確認したものであるが、試料Bと試料Cの合計を0.03〜6質量%の範囲としたときに、カール形成保持力が高く、且つ破断強度が高くなっていることが分かる(処方例2、22〜24)。
【0113】
表10の結果は、シリル化加水分解蛋白質の配合効果について確認したものであるが、シリル化加水分解蛋白質を0.05〜0.15質量%の範囲で配合したときに、カール形成保持力が高く、且つ破断強度が高くなっていることが分かる(処方例2、27、28)。
【0114】
[実施例6]
実施例3と同様にしてブリーチ処理した各毛髪について、下記表11に示したカール形成化粧料(処方例2、30〜34)を用いて処理したときの毛髪のツヤ感およびスベリ感について、下記の各方法によって評価した。
【0115】
(ツヤ感の官能評価方法)
ブリーチ処理毛0.2gに対し、下記表11に示した各試料(処方例2、30〜34)0.2gを塗布した。毛髪をドライヤーで乾燥させた後、加熱式のヒートアイロンでクセ付けを行なった。それらの毛髪表面のツヤ感を専門のパネラー10名で以下の3段階(評価点:1〜3点)で官能評価し、その合計を求め下記の評価基準で評価した。その結果を表11に併記する。
3点…処理前と比較し、明らかにツヤ感が出た。
2点…処理前と比較し、少しツヤ感が出た。
1点…処理前と比較し、ツヤ感が出なかった。
【0116】
[ツヤ感の評価基準]
◎:26〜30点
○:21〜25点
△:16〜20点
×:10〜15点
【0117】
(スベリ感の官能評価方法)
ブリーチ処理毛0.2gに対し、下記表11に示した各試料(処方例2、30〜34)0.2gを塗布した。毛髪をドライヤーで乾燥させた後、加熱式のヒートアイロンでクセ付けを行なった。その際の毛髪表面のスベリ感を専門のパネラー10名で以下の3段階(評価点:1〜3点)で官能評価し、その合計を求め下記の評価基準で評価した。その結果を表11に併記した。
3点…処理前と比較し、明らかにスベリ感が良くなった。
2点…処理前と比較し、少しスベリ感が良くなった。
1点…処理前と比較し、スベリ感が良くならなかった。
【0118】
[スベリ感の評価基準]
◎:26〜30点
○:21〜25点
△:16〜20点
×:10〜15点
【0119】
【表11】

【0120】
この結果から明らかなように、加水分解スサビノリを配合すると、毛髪のツヤ感が向上し、モミジ抽出液やケフィランを配合することによって、スベリ感が向上していることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともセリシンまたは溶液中において加熱処理を施したセリシンを配合したものであることを特徴とするカール形成化粧料。
【請求項2】
前記溶液中において加熱処理を施したセリシンの配合量が、カール形成化粧料全体に占める割合で0.005〜1.1質量%である請求項1に記載のカール形成化粧料。
【請求項3】
平均分子量25000〜35000の加水分解ケラチンと平均分子量400〜30000の蛋白質組成物を配合したものである請求項1または2に記載のカール形成化粧料。
【請求項4】
前記平均分子量25000〜35000の加水分解ケラチンと前記平均分子量400〜30000の蛋白質組成物の配合比が、5:1〜1.5:1(質量割合)である請求項3に記載のカール形成化粧料。
【請求項5】
前記平均分子量25000〜35000の加水分解ケラチンと前記平均分子量400〜30000の蛋白質組成物の合計配合量が、カール形成化粧料全体に占める割合で0.03〜6質量%である請求項3または4に記載のカール形成化粧料。
【請求項6】
シリル化加水分解蛋白質を配合したものである請求項1〜5のいずれかに記載のカール形成化粧料。
【請求項7】
前記シリル化加水分解蛋白質の配合量が、カール形成化粧料全体に占める割合で0.05〜0.15質量%である請求項6に記載のカール形成化粧料。
【請求項8】
スサビノリまたは加水分解スサビノリを配合したものである請求項1〜7のいずれかに記載のカール形成化粧料。
【請求項9】
モミジ抽出液を配合したものである請求項1〜8のいずれかに記載のカール形成化粧料。
【請求項10】
ケフィランを配合したものである請求項1〜9のいずれかに記載のカール形成化粧料。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−215539(P2010−215539A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−61803(P2009−61803)
【出願日】平成21年3月13日(2009.3.13)
【出願人】(000213482)中野製薬株式会社 (57)
【Fターム(参考)】