説明

ガイドワイヤ挿入補助具および医療用チューブセット

【課題】 ガイドワイヤを医療用チューブの先端側に形成された中心腔に確実に通すことのできるガイドワイヤ挿入補助具および医療用チューブセットを提供すること。
【解決手段】 医療用チューブセットを、医療用チューブ10と、ガイドワイヤ挿入補助具16と、ガイドワイヤとで構成した。そして、医療用チューブ10を、一つの基端側流路11aを備えた単管部11と、基端側流路11aと同軸的に延びる中心腔14と分岐流路15とからなる複数の先端側流路を備えた複管部12とで構成し、複数の先端側流路をそれぞれ基端側流路11aに連通させた。また、ガイドワイヤ挿入補助具16を、ガイドワイヤを挿通させるガイドワイヤ挿通路16aが内部に形成された筒状体で構成し、ガイドワイヤ挿入補助具16を基端側流路11aに挿入したときに、ガイドワイヤ挿通路16aと複管部12の中心腔14とが連通するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の傷部から排液を排出したり患者の傷部に薬液を供給したりするために用いられる医療用チューブの交換時に、医療用チューブ内にガイドワイヤを挿入するために用いられるガイドワイヤ挿入補助具およびそれを備えた医療用チューブセットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、患者の手術後の傷部に溜まる排液を体外へ排出するために医療用チューブが用いられている。この医療用チューブは、先端側を患者の傷部に留置して、基端側を体外に延ばし、その体外の基端部に吸引器具を接続して使用される。すなわち、吸引器具の吸引力により医療用チューブを介して排液を排出する操作が行われ、所定時間経過して、医療用チューブ内が詰まったり医療用チューブが劣化したりしたときには新たな医療用チューブと交換される。この医療用チューブの交換の際には、医療用チューブ内にガイドワイヤを通し、ガイドワイヤを患者の傷部まで到達させた状態で医療用チューブだけを引き抜き、新たな医療用チューブをガイドワイヤに沿って挿入することが行われる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この医療用チューブ(医療用ドレーンチューブ)は、扁平形状の管状に形成されており、扁平形状の断面の一方端近傍に弧状または直線状の支持壁を設けて、医療用チューブの内腔をドレナージ部とガイドワイヤ孔とに分けている。そして、ドレナージ部は排液を排出するために用いられ、ガイドワイヤ孔は、医療用チューブを交換する際に、ガイドワイヤを通すために用いられる。
【特許文献1】実開平6−70746号公報
【発明の開示】
【0004】
医療用チューブの中には、先端側に、中心腔と、その周囲に配置された複数の分岐流路とが形成され、さらに、複数の分岐流路と外部との間を連通するスリットを形成して、排液の吸引をより効果的に行えるようにしたものもある。このような医療用チューブを交換する場合には、中心腔を、ガイドワイヤを通すための挿通孔として利用する。しかしながら、この場合、医療用チューブの先端側部分は患者の体内に留置されるため、中心腔を確認することができないことがあり、中心腔にガイドワイヤを通すことが難しいという問題がある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、その目的は、ガイドワイヤを医療用チューブの先端側に形成された中心腔に確実に通すことのできるガイドワイヤ挿入補助具および医療用チューブセットを提供することである。
【0006】
前述した目的を達成するため、本発明に係るガイドワイヤ挿入補助具の構成上の特徴は、一つの基端側流路を備えた単管部と、基端側流路と同軸的に延びる中心腔を含む複数の先端側流路を備えた複管部とを含み、複数の先端側流路がそれぞれ基端側流路に連通する医療用チューブに、ガイドワイヤを挿入する際に用いられるガイドワイヤ挿入補助具であって、ガイドワイヤを挿通させるガイドワイヤ挿通路が内部に形成されるとともに、単管部の基端側流路に挿入可能な筒状体からなり、基端側流路に挿入したときに、ガイドワイヤ挿通路と複管部の中心腔とを連通させることにある。
【0007】
本発明に係るガイドワイヤ挿入補助具は、ガイドワイヤを通すためのガイドワイヤ挿通路が内部に形成された筒状体で構成されている。そして、ガイドワイヤ挿入補助具を、医療用チューブにおける単管部の基端側流路に挿入して、その先端部が、基端側流路の奥端に達したときに、ガイドワイヤ挿通路と、医療用チューブにおける複管部の中心腔とが連通するように構成している。したがって、単管部内に挿入されたガイドワイヤ挿入補助具の基端側からガイドワイヤ挿通路にガイドワイヤを挿入していくと、ガイドワイヤの先端部は、ガイドワイヤ挿通路から複管部の中心腔にスムーズに入っていく。
【0008】
また、本発明に係る医療用チューブセットの構成上の特徴は、一つの基端側流路を備えた単管部と、基端側流路と同軸的に延びる中心腔を含む複数の先端側流路を備えた複管部とを含み、複数の先端側流路がそれぞれ基端側流路に連通する医療用チューブと、単管部の基端側流路から複管部の中心腔にかけて挿入されるガイドワイヤと、ガイドワイヤを挿通させるガイドワイヤ挿通路が内部に形成されるとともに、単管部の基端側流路に挿入可能な筒状体からなり、基端側流路に挿入したときに、ガイドワイヤ挿通路と複管部の中心腔とを連通させるガイドワイヤ挿入補助具とを備えたことにある。
【0009】
本発明に係る医療用ガイドセットでは、医療用チューブが、基端側流路を備えた単管部と、基端側流路と同軸的に延びる中心腔を含む複数の先端側流路を備えた複管部とで構成され、ガイドワイヤ挿入補助具が、ガイドワイヤを通すためのガイドワイヤ挿通路が内部に形成された筒状体で構成されている。そして、ガイドワイヤ挿入補助具を、単管部の基端側流路に挿入したときに、ガイドワイヤ挿通路と複管部の中心腔とが連通するように構成されているため、ガイドワイヤをガイドワイヤ挿通路に挿入していくと、ガイドワイヤの先端部は、複管部の中心腔にスムーズに入っていく。
【0010】
このため、ガイドワイヤの挿入ミスが生じることなく、ガイドワイヤを確実に医療用チューブ内に挿入することができる。また、ガイドワイヤを患者の体に残したまま医療用チューブをガイドワイヤ挿入補助具とともに患者の体から抜き取り、新たな医療用チューブの中心腔の先端部にガイドワイヤの基端部を挿入し、その医療用チューブをガイドワイヤに沿って患者の体内に挿入していくことにより新たな医療用チューブを患者の体に取り付けることができる。そして、医療用チューブを患者の体に取り付けたのちにガイドワイヤを抜き取ることにより、新たな医療用チューブを患者の体に留置するための操作が終了する。
【0011】
また、本発明に係る医療用ガイドセットの他の構成上の特徴は、複管部の複数の先端側流路を、中心腔と、中心腔の周囲に配置された複数の分岐流路とで構成し、複数の分岐流路と外部との間を連通するスリットを複管部の長手方向に沿って形成したことにある。
【0012】
この場合、スリットは、すべての分岐流路に対応して設けてもよいし、任意の分岐流路だけに対応して設けてもよい。これによると、医療用チューブにおける複管部の先端部だけでなく、スリットを介して複管部の側部も開口するため排液を吸引する際の吸引口の面積が大きくなる。この結果、医療用チューブを患者の体に留置して排液を吸引する際の処理を効果的に行える。また、医療用チューブを交換する際には、ガイドワイヤは、単管部の先端側流路から複管部の中心腔にかけて挿入されるため、スリットが、すべての分岐流路に対応して設けられていても支障は生じない。
【0013】
また、本発明に係る医療用チューブセットのさらに他の構成上の特徴は、ガイドワイヤ挿入補助具の少なくとも先端部の外径を、基端側流路の直径と略同じにしたことにある。この場合、ガイドワイヤ挿入補助具の先端部の外径だけを、基端側流路の直径と略同じにして、ガイドワイヤ挿入補助具の基端側部分の外径は、それよりも小さくすることが好ましい。ガイドワイヤ挿入補助具の先端部だけの外径を、基端側流路の直径と略同じにすることにより、ガイドワイヤ挿入補助具を医療用チューブの単管部内に挿入する際の摩擦抵抗が小さくなり、ガイドワイヤ挿入補助具の医療用チューブの単管部内への挿入をスムーズに行える。
【0014】
また、本発明に係る医療用チューブセットのさらに他の構成上の特徴は、ガイドワイヤ挿入補助具の先端側部分に、外径が基端側流路の直径と略同じになった凸部と、外径が基端側流路の直径よりも小さくなった凹部とを交互に形成したことにある。これによっても、ガイドワイヤ挿入補助具を医療用チューブの単管部内に挿入する際の摩擦抵抗が小さくなり、ガイドワイヤ挿入補助具の医療用チューブの単管部内への挿入をスムーズに行える。また、凸部と凹部とは1個ずつ形成してもよいし、複数個形成してもよい。
【0015】
また、本発明に係る医療用チューブセットのさらに他の構成上の特徴は、ガイドワイヤ挿入補助具の先端面を滑らかな凸曲面に形成したことにある。この場合の先端面は、開口縁部から外周部にかけての部分で構成される。これによると、ガイドワイヤ挿入補助具を医療用チューブの単管部内に挿入する際の先端面外周部の摩擦抵抗が小さくなり、ガイドワイヤ挿入補助具の医療用チューブの単管部内への挿入をスムーズに行える。また、これによると、ガイドワイヤ挿入補助具におけるガイドワイヤ挿通路の周縁部と複管部の中心腔の周縁部とをより確実に接触させることができる。
【0016】
また、本発明に係る医療用チューブセットのさらに他の構成上の特徴は、ガイドワイヤ挿入補助具の先端の開口縁部に、外径が中心腔の直径よりも小さな環状の突起を前方に向けて形成したことにある。これによると、ガイドワイヤ挿入補助具を、医療用チューブにおける単管部の基端側流路に挿入したときに、突起を中心腔内に位置させることができるため、ガイドワイヤ挿通路と中心腔とを同軸的に連通させることができる。
【0017】
また、本発明に係る医療用チューブセットのさらに他の構成上の特徴は、ガイドワイヤ挿入補助具の外周面における医療用チューブの内周面に接触する部分に、潤滑性の被膜層を形成したことにある。これによると、ガイドワイヤ挿入補助具を医療用チューブの単管部内に挿入する際のガイドワイヤ挿入補助具の外周面と医療用チューブの内周面との間の摩擦抵抗が小さくなるため、ガイドワイヤ挿入補助具の医療用チューブの単管部内への挿入をスムーズに行える。この場合の被膜層としては、無水マレイン酸系の潤滑被膜やポリビニルピロリドン系の潤滑被膜を用いることができる。また、ガイドワイヤ挿入補助具は、ポリウレタンで構成することが好ましい。これによると、被膜層として前記の潤滑被膜を用いたときに、その他の樹脂、例えば、PVCに比べ、被膜層を容易に設けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態に係るガイドワイヤ挿入補助具を備えた医療用チューブセットを図面を用いて説明する。図1は、同実施形態に係る医療用チューブセットが備える医療用チューブ10を示している。この医療用チューブ10は、ポリウレタンからなる管状の成形体で構成されており、基端側部分(図1の左側部分)が単管部11で構成され、先端側部分(図1の右側部分)が複管部12で構成されている。この医療用チューブ10は、全長が70cm程度に設定されており、単管部11は、外径が5mm程度で内径が3mm程度に設定された管状に形成されている。単管部11の内部は、図2に示したように、断面形状が円形の基端側流路11aで構成されている。
【0019】
そして、単管部11の先端に複管部12が連結されている。複管部12は、図3に示したように、外周部12aと、中心管部12bと、隔壁部12cとで構成されている。外周部12aは、円周方向に一定間隔を保って形成された断面形状が円弧状の4個の部分からなり全体形状が略管状になっている。この外周部12aを構成する各部分の円弧に沿った各端部間で、スリット13がそれぞれ構成される。また、中心管部12bは、外周部12aの内部中心に配置された細径の管状体で構成されており、その内部に、中心腔14が軸方向に沿って形成されている。この中心腔14は、単管部11の基端側流路11aと同軸的に延びている。
【0020】
隔壁部12cは、外周部12aを構成する各部分の内面における円周方向の中央部と、その部分に対向する中心管部12bの外周面とを連結する4個の片で構成されている。隔壁部12cを構成する各片はそれぞれ外周部12aと中心管部12bとの間の部分を4個の分岐流路15に区分している。各分岐流路15は、それぞれ対応するスリット13を介して外部に連通している。また、中心腔14と4個の分岐流路15とで、本発明に係る先端側流路が構成され、これらの先端側流路はそれぞれ基端側流路11aに連通している。なお、複管部12の長さは、30cm程度に設定されており、外周部12aの外径、内径(スリット13を形成せず4個の外周部12aの端部をそれぞれ延長して円形にした場合の外径、内径)は、それぞれ単管部11の外径、内径と略同じに設定されている。
【0021】
このように構成された医療用チューブ10は、軟質の熱可塑性樹脂材料を、所定の押出成形用金型(図示せず)を用いて成形することにより得ることができる。この場合の軟質の熱可塑性樹脂材料としては、ポリウレタンを用いることが好ましく、その他、シリコーンやポリ塩化ビニル等を用いることもできる。成形の際には、単管部11と複管部12とをそれぞれ別に成形し、成形された単管部11の先端部と複管部12の後端部とを溶着または接着により連結することにより、医療用チューブ10が得られる。
【0022】
図4は、ガイドワイヤ挿入補助具16を示している。このガイドワイヤ挿入補助具16は、単管部11内に挿入可能な管状体で構成されており、外径が、単管部11の内径(基端側流路11aの直径)と同じかやや小さく設定されている。また、ガイドワイヤ挿入補助具16の中心部には、中心軸に沿って基端から先端に貫通するガイドワイヤ挿通路16aが形成されている。このガイドワイヤ挿通路16aは、ガイドワイヤ(図示せず)を通すことのできる断面形状が円形の貫通孔で構成されており、その直径は、中心腔14の直径(中心管部12bの内径)と略同じに設定されている。
【0023】
また、ガイドワイヤ挿入補助具16の先端面16b(ガイドワイヤ挿通路16aの先端開口の周縁部と外周部との間の部分)は、外周側よりもガイドワイヤ挿通路16a側の方が前方に突出した滑らかな凸面に形成されている。このガイドワイヤ挿入補助具16は、ポリウレタンで構成され、その軸方向の長さは、略50cmに設定されている。また、ガイドワイヤ挿入補助具16の外周面には、無水マレイン酸系の潤滑被膜やポリビニルピロリドン系の潤滑被膜が形成されている。
【0024】
なお、ガイドワイヤ挿入補助具16を構成する材料としては、ステンレス鋼等の金属やポリ塩化ビニル等のプラスチックを用いることもできる。また、ガイドワイヤは、長さが、150cmで、直径が0.035インチ(0.89mm)のステンレスまたはニッケル・チタン合金からなるワイヤで構成され、その表面には、樹脂被膜が形成されている。医療用チューブ10と、ガイドワイヤ挿入補助具16と、ガイドワイヤとで本実施形態に係る医療用チューブセットが構成される。
【0025】
このように構成された医療用チューブセットにおける医療用チューブ10の基端部には穿刺用の針が取付けられる。そして、この医療用チューブセットを用いて、患者の手術後の傷部から排液を排出する際には、まず、切開された患者の傷部の内部側から外部側に針を通して、針とともに医療用チューブ10の単管部11側部分を体外に出し、複管部12およびその近傍部分だけを傷部内に残しておく。つぎに、医療用チューブ10の体外に突出した部分の所定部分を切断することにより所定の長さ分だけ残し、その基端部に、貯留容器を備えた吸引器具(図示せず)を接続する。そして、吸引器具を操作することにより、患者の傷部に生じる排液を除去する。
【0026】
この場合、排液は、中心腔14と各分岐流路15との先端開口および各スリット13から単管部11の基端側流路11aを通過して吸引器具の貯留容器に吸い込まれる。この排液排出操作が所定時間ごとに繰り返し行われ、医療用チューブ10に詰まりが生じたり、医療用チューブ10に劣化が生じたりしたときには、この医療用チューブ10を新たな医療用チューブ10と交換する処理が行われる。医療用チューブ10を交換する場合には、まず、吸引器具が取り外された状態の医療用チューブ10の基端開口から単管部11内にガイドワイヤ挿入補助具16を挿入する。この場合、ガイドワイヤ挿入補助具16の先端面16bが滑らかな凸面状(凸曲面)に形成されているとともに、ガイドワイヤ挿入補助具16の外周面に、潤滑性の被膜層が形成されているため、ガイドワイヤ挿入補助具16は単管部11内にスムーズに入っていく。
【0027】
そして、ガイドワイヤ挿入補助具16の先端面16bが、基端側流路11aの奥端(先端)に達すると、ガイドワイヤ挿入補助具16の先端面16bが、中心管部12bの後端面に当接して、ガイドワイヤ挿通路16aと中心腔14とが直接連通する。この場合、ガイドワイヤ挿入補助具16の先端面16bと、中心管部12bの後端面とは、ガイドワイヤ挿入補助具16と中心管部12bとを同軸にして接面する。この状態で、ガイドワイヤ挿入補助具16の基端開口からガイドワイヤ挿通路16a内にガイドワイヤを挿入していく。そして、ガイドワイヤの先端が中心管部12bの先端に到達すると、ガイドワイヤを患者の体に残したまま、医療用チューブ10を患者の体から引き抜く。
【0028】
つぎに、患者の体に残ったガイドワイヤを交換用の医療用チューブ10の先端側から中心腔14内に入れながら交換用の医療用チューブ10の複管部12を患者の傷部内に挿し込んで留置する操作を行う。この場合、医療用チューブ10をガイドワイヤに沿わせて挿入することができるため、ガイドワイヤ挿入補助具16は不要になる。そして、新しい医療用チューブ10を傷部に留置する操作が終了すると、ガイドワイヤを引き抜いたのちに、前述した吸引器具を用いて排液を排出する操作が行われる。なお、所定期間使用した医療用チューブ10に代えて新しい医療用チューブ10を取り付けるだけでなく、治療や洗浄のために、他の種類のチューブを留置する場合にも同様の操作が行われる。
【0029】
以上のように、本実施形態に係る医療用チューブセットでは、医療用チューブ10が、基端側流路11aを備えた単管部11と、基端側流路11aと同軸的に延びる中心腔14とその周囲に配置された4個の分岐流路15とを備えた複管部12とで構成されている。また、ガイドワイヤ挿入補助具16は、ガイドワイヤを通すためのガイドワイヤ挿通路16aが内部に形成された筒状体で構成されている。そして、ガイドワイヤ挿入補助具16を、単管部11の基端側流路11a内に挿入して、その先端部が、基端側流路11aの奥端に達したときに、ガイドワイヤ挿通路16aと複管部12の中心腔14とが連通するように構成している。
【0030】
したがって、単管部11に挿入されたガイドワイヤ挿入補助具16のガイドワイヤ挿通路16a内にガイドワイヤを挿入していくと、ガイドワイヤの先端部は、複管部12の中心腔14にそのままスムーズに入っていく。このため、ガイドワイヤの挿入ミスがなくなる。また、ガイドワイヤ挿入補助具16の先端面16bが滑らかな凸面状に形成されているため、ガイドワイヤ挿入補助具16を医療用チューブ10の単管部11内に挿入する際の摩擦抵抗が小さくなり、ガイドワイヤ挿入補助具16の単管部11内への挿入をスムーズに行える。さらに、ガイドワイヤ挿入補助具16の外周面に形成された潤滑性の被膜層によっても、ガイドワイヤ挿入補助具16は摩擦抵抗を小さくして単管部11内に入っていくことができる。
【0031】
(第2実施形態)
図5は、本発明の第2実施形態に係る医療用チューブセットが備えるガイドワイヤ挿入補助具26を示している。このガイドワイヤ挿入補助具26では、先端部26aの外径が、前述したガイドワイヤ挿入補助具16の外径と同じに設定され、基端側部分26bの外径が、先端部26aの外径よりも小さくなっている。このガイドワイヤ挿入補助具26のそれ以外の部分の構成は、前述したガイドワイヤ挿入補助具16と同一である。したがって、同一部分に同一符号を記している。また、本実施形態に係る医療用チューブセットにおいても前述した医療用チューブ10とガイドワイヤとが用いられる。
【0032】
このように、ガイドワイヤ挿入補助具26の先端部26aだけの外径を、基端側流路11aの直径と略同じにすることにより、ガイドワイヤ挿入補助具26を単管部11内に挿入する際の摩擦抵抗がさらに小さくなり、ガイドワイヤ挿入補助具26の単管部11内への挿入をスムーズに行える。本実施形態に係る医療用チューブセットのそれ以外の作用効果については、前述した医療用チューブセットの作用効果と同様である。
【0033】
(第3実施形態)
図6は、本発明の第3実施形態に係る医療用チューブセットが備えるガイドワイヤ挿入補助具36を示している。このガイドワイヤ挿入補助具36では、先端部36aの最大外径が、前述したガイドワイヤ挿入補助具26の先端部26aの外径と同じに設定され、基端側部分36bの外径が、基端側部分26bの外径と同じに設定されている。そして、先端部36aの中央側部分には、外径が基端側部分36bの外径と略同じに設定された複数の細径部37が一定間隔で形成されている。この細径部37で、本発明に係る凹部が構成され、先端部36aにおける細径部37以外の部分で、本発明に係る凸部が構成される。このガイドワイヤ挿入補助具36のそれ以外の部分の構成は、前述したガイドワイヤ挿入補助具26と同一である。したがって、同一部分に同一符号を記している。
【0034】
また、本実施形態に係る医療用チューブセットにおいても前述した医療用チューブ10とガイドワイヤとが用いられる。このように、基端側部分36bの外径を小さくするとともに、先端部36aに複数の細径部37を設けることによって、ガイドワイヤ挿入補助具36を医療用チューブ10の単管部11内に挿入する際の摩擦抵抗がさらに小さくなり、ガイドワイヤ挿入補助具36の単管部11内への挿入をスムーズに行える。本実施形態に係る医療用チューブセットのそれ以外の作用効果については、前述した医療用チューブセットの作用効果と同様である。
【0035】
さらに、前述したガイドワイヤ挿入補助具16,26,36の変形例として、先端面16bの開口縁部に、外径が中心腔14の直径よりもやや小さくなった環状の突起を設けてもよい。これによると、ガイドワイヤ挿入補助具16等を、単管部11の基端側流路11aに挿入したときに、突起を中心腔14内に位置させることができるため、ガイドワイヤ挿通路16a等と中心腔14とを同軸的に連通させることができる。
【0036】
また、本発明に係るガイドワイヤ挿入補助具およびそれを備えた医療用チューブセットは、前述した各実施形態に限定するものでなく、本発明の技術範囲内で適宜変更が可能である。例えば、前述した各実施形態では、医療用チューブ10を単管部11と複管部12とを溶着や接着によって接続しているが、この医療用チューブとしては、断面形状を徐々に変化させるようにして一体成形により成形したチューブを用いることもできる。また、前述した各実施形態では、医療用チューブ10の複管部12に、4個の分岐流路15を設けているが、この流路の数は、4個に限らず他の複数にしてもよい。また、前述した各実施形態では、すべての分岐流路15に対応させてスリット13を設けているが、このスリット13の数も1〜3個にしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の第1実施形態で用いられる医療用チューブを示した正面図である。
【図2】図1の2−2断面図である。
【図3】図1の3−3断面図である。
【図4】ガイドワイヤ挿入補助具を示しており、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図5】本発明の第2実施形態で用いられるガイドワイヤ挿入補助具を示した斜視図である。
【図6】本発明の第3実施形態で用いられるガイドワイヤ挿入補助具を示した斜視図である。
【符号の説明】
【0038】
10…医療用チューブ、11…単管部、11a…基端側流路、12…複管部、13…スリット、14…中心腔、15…分岐流路、16,26,36…ガイドワイヤ挿入補助具、16a…ガイドワイヤ挿通路、16b…先端面、26a,36a…先端部、26b,36b…基端側部分、37…細径部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一つの基端側流路を備えた単管部と、前記基端側流路と同軸的に延びる中心腔を含む複数の先端側流路を備えた複管部とを含み、前記複数の先端側流路がそれぞれ前記基端側流路に連通する医療用チューブに、ガイドワイヤを挿入する際に用いられるガイドワイヤ挿入補助具であって、
前記ガイドワイヤを挿通させるガイドワイヤ挿通路が内部に形成されるとともに、前記単管部の基端側流路に挿入可能な筒状体からなり、前記基端側流路に挿入したときに、前記ガイドワイヤ挿通路と前記複管部の中心腔とを連通させることを特徴とするガイドワイヤ挿入補助具。
【請求項2】
一つの基端側流路を備えた単管部と、前記基端側流路と同軸的に延びる中心腔を含む複数の先端側流路を備えた複管部とを含み、前記複数の先端側流路がそれぞれ前記基端側流路に連通する医療用チューブと、
前記単管部の基端側流路から前記複管部の中心腔にかけて挿入されるガイドワイヤと、
前記ガイドワイヤを挿通させるガイドワイヤ挿通路が内部に形成されるとともに、前記単管部の基端側流路に挿入可能な筒状体からなり、前記基端側流路に挿入したときに、前記ガイドワイヤ挿通路と前記複管部の中心腔とを連通させるガイドワイヤ挿入補助具と
を備えたことを特徴とする医療用チューブセット。
【請求項3】
前記複管部の複数の先端側流路を、前記中心腔と、前記中心腔の周囲に配置された複数の分岐流路とで構成し、前記複数の分岐流路と外部との間を連通するスリットを前記複管部の長手方向に沿って形成した請求項2に記載の医療用チューブセット。
【請求項4】
前記ガイドワイヤ挿入補助具の少なくとも先端部の外径を、前記基端側流路の直径と略同じにした請求項2または3に記載の医療用チューブセット。
【請求項5】
前記ガイドワイヤ挿入補助具の先端側部分に、外径が前記基端側流路の直径と略同じになった凸部と、外径が前記基端側流路の直径よりも小さくなった凹部とを交互に形成した請求項2ないし4のうちのいずれか一つに記載の医療用チューブセット。
【請求項6】
前記ガイドワイヤ挿入補助具の先端面を凸曲面に形成した請求項2ないし5のうちのいずれか一つに記載の医療用チューブセット。
【請求項7】
前記ガイドワイヤ挿入補助具の先端の開口縁部に、外径が前記中心腔の直径よりも小さな環状の突起を前方に向けて形成した請求項2ないし6のうちのいずれか一つに記載の医療用チューブセット。
【請求項8】
前記ガイドワイヤ挿入補助具の外周面における前記医療用チューブの内周面に接触する部分に、潤滑性の被膜層を形成した請求項2ないし7のうちのいずれか一つに記載の医療用チューブセット。
【請求項9】
前記ガイドワイヤ挿入補助具をポリウレタンで構成した請求項2ないし8のうちのいずれか一つに記載の医療用チューブセット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−51518(P2010−51518A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−219307(P2008−219307)
【出願日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(000228888)日本シャーウッド株式会社 (170)
【Fターム(参考)】