説明

ガイドワイヤ

【課題】表面の樹脂被覆部が剥離及びずれの生じ難いガイドワイヤを提供する。
【解決手段】ガイドワイヤ10は、可撓性を有する素線11と、素線の外表面に設けられた螺旋状の溝114と、溝内に設けられ樹脂材料によって形成されたX線造影性を有するアンカー部材12と、アンカー部材及び素線を被覆する樹脂被覆部13と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はガイドワイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、カテーテルを血管、膵管、胆管、尿道等の生体管腔に挿入することによって、診断、検査、治療、手術等の様々な処置が行われており、このような生体管腔を通じた処置においては、目的の部位へカテーテルを案内するためのガイドワイヤが用いられる。
【0003】
ガイドワイヤは、カテーテルの挿入に先立って生体管腔内の目的部位まで挿入されるため、生体管腔内での位置確認が可能なように、一般的にX線造影性を有する。例えば特許文献1や特許文献2に記載のガイドワイヤは、芯材である素線のまわりに金属製のコイルが巻き回され、樹脂被覆部によってこれらが被覆された構成を有し、このコイルによってX線造影性を得ている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−307367号公報
【特許文献2】特開2008−264498号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
造影性を有するガイドワイヤは、位置が確認されつつ生体管腔内の目的部位まで挿入され、その後、カテーテルが、ガイドワイヤに沿って案内される。この際、曲げや捩れが繰り返され、またカテーテルがガイドワイヤの外表面と擦れ、上述のような樹脂被覆部を有するガイドワイヤではそれを剥離させる又はガイドワイヤの芯材と樹脂被覆部が軸方向にずれるような力が作用するが、樹脂被覆部は、ガイドワイヤと生体管腔との接触による生体管腔の損傷を防止したり、カテーテルを円滑に案内したりする等の機能を果たしており、これら樹脂被覆部の様々な機能が十分発揮されるようにするため、樹脂被覆部が剥離及び軸方向へのずれを生じ難いことが好ましい。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、表面の樹脂被覆部が剥離及びずれの生じ難いガイドワイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明のガイドワイヤは、可撓性を有する素線と、当該素線の外表面に設けられた螺旋状の溝と、当該溝内に設けられ樹脂材料によって形成されたX線造影性を有するアンカー部材と、当該アンカー部材及び前記素線を被覆する樹脂被覆部と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
上記のように構成した本発明のガイドワイヤでは、素線表面の溝内にX線造影性を有するアンカー部材が設けられることによってアンカー部材が素線から外れ難くなっており、その上で、アンカー部材が樹脂被覆部と同様に樹脂材料によって形成されることによって樹脂被覆部がアンカー部材と良好に接続しているため、樹脂被覆部が、アンカー部材を介して素線につなぎ止められ、剥離し難い。
【0009】
また、前記アンカー部材が、前記素線の外表面と異なる色を有し、前記樹脂被覆部を介して視認可能であるようにすれば、術者は、内視鏡によってアンカー部材を視認できるため、内視鏡を用いた処置においてアンカー部材の位置を容易に把握できる。
【0010】
また、前記アンカー部材が、前記樹脂被覆部との間に相溶性を有するようにすれば、樹脂被覆部とアンカー部材とがより強く接続するため、樹脂被覆部の剥離がより効果的に防止される。
【0011】
また、前記アンカー部材が、X線造影性フィラーを含む樹脂材料によって形成されるようにすれば、X線造影性が得られるため、X線透視下でガイドワイヤの位置を把握できる。
【0012】
また、前記アンカー部材が、前記溝から突出しているようにすれば、樹脂被覆部とアンカー部材との接触面積が大きくなるため、剥離及びずれがより効果的に防止される。
【0013】
また、前記素線の柔軟性が、基端から先端方向に向かって増加しているようにすれば、ガイドワイヤの操作性が優れるとともに、体内組織を傷付けることを防止することができる。
【0014】
また、前記素線が、長尺状の本体部と、当該本体部から縮径した先端部と、を有し、前記溝が、前記先端部において前記本体部から先端方向に向かって外径が漸減するテーパ部に設けられ、前記樹脂被覆部が、前記アンカー部材及び前記先端部を被覆するようにすれば、テーパ部の周辺部における前記樹脂被覆部と前記芯材との間の軸方向のずれを効果的に防止することができる。
【0015】
また、前記溝のピッチが、前記素線の先端方向に向かって狭まっているようにすれば、ガイドワイヤが先端方向でより柔軟になるためガイドワイヤの操作性及び安全性が優れ、さらに、アンカー部材のピッチが密な先端側の領域とアンカー部材のピッチが疎な基端側の領域とが形成され、生体管腔へのガイドワイヤの挿入の際、各領域の軸方向の長さや領域同士の境の位置を目安として、狭窄部位等の生体管腔内の所定部位の長さや挿入深さの把握が容易となる。
【0016】
また、前記溝の深さが、前記素線の先端方向に向かって深くなっているようにすれば、ガイドワイヤの先端が柔軟になるため、ガイドワイヤの操作性及び安全性が優れる。
【0017】
また、前記素線が、長尺状の本体部と、当該本体部から縮径した先端部と、を有し、前記溝が前記本体部に設けられ、前記樹脂被覆部が、前記アンカー部材及び前記本体部を被覆する基端被覆部と、前記先端部を被覆する先端被覆部と、を有するようにすれば、先端部が柔軟になるためガイドワイヤの操作性が優れ、また、本体部で造影性が得られるため、本体部の位置を把握できる。
【0018】
また、前記先端被覆部が、X線造影性を有するようにすれば、先端部でX線造影性が得られるため、X線透視下において先端部の位置を把握できるとともに、先端被覆部からアンカー部材までの距離が一定であるため、狭窄部位等の生体管腔内の所定部位の長さを測定することができる。
【0019】
また、前記先端被覆部が、前記基端被覆部と一体的に設けられているようにすれば、基端被覆部が先端被覆部をつなぎ止めるため、先端被覆部の剥離及びずれを防止できる。
【0020】
また、前記本体部において前記溝が設けられている部分が、溝が設けられている当該部分から先端方向及び基端方向に伸びる前記本体部の他の部分に比べ、低い剛性を有するようにすれば、ガイドワイヤが溝の設けられた部分が柔軟になるため、内視鏡を用いた処置において、溝の設けられた部分が内視鏡内のチャンネルから引き出されることによって、溝が設けられている部分から先端方向に伸びる部分を柔軟に曲げて目的の方向に向けつつ、溝が設けられている部分から基端方向に伸びる部分を内視鏡内のチャンネルに固定した状態を維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第1実施形態のガイドワイヤの概略構成図である。
【図2】第1実施形態の素線の概略構成図である。
【図3】図1の3−3線に沿ってガイドワイヤの先端を拡大して示す断面図である。
【図4】第2実施形態のガイドワイヤの概略構成図である。
【図5】第2実施形態の素線の概略構成図である。
【図6】内視鏡の先端が十二指腸乳頭に向かい合う位置にある場合にガイドワイヤが内視鏡の保持部によって保持された状態を示す部分拡大図である。
【図7】内視鏡の先端が十二指腸乳頭を見上げる位置にある場合に従来のガイドワイヤが内視鏡の保持部から離隔する様子を示す部分拡大図である。
【図8】内視鏡の先端が十二指腸乳頭を見上げる位置にある場合に第2実施形態のガイドワイヤが内視鏡の保持部によって保持される様子を示す部分拡大図である。
【図9】第3実施形態のガイドワイヤの概略構成図である。
【図10】第3実施形態の素線の概略構成図である。
【図11】第4実施形態のガイドワイヤの概略構成図である。
【図12】第4実施形態の素線の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上、誇張されて実際の比率とは異なる場合がある。
【0023】
<第1実施形態>
図1において概説すると、第1実施形態のガイドワイヤ10は、芯材である可撓性を有する素線11と、素線11まわりに螺旋状に設けられたX線造影性を有するアンカー部材12と、アンカー部材12及び素線11を被覆する樹脂被覆部13と、を有する。ガイドワイヤ10は、膵胆管系の内視鏡検査や内視鏡下手術において、カテーテルをガイドするために用いられる。
【0024】
図2に示すように、素線11は、長尺状の本体部115と、本体部115から縮径した先端部111と、を有する。軸方向に交わる素線11の断面の形状は円形形状である。先端部111は、本体部115から先端方向に向かって外径が漸減するテーパ部113と、テーパ部113から先端方向に直線的に伸びる小径部112と、を有しており、テーパ部113の外表面に螺旋状の溝114を有する。素線11は、例えば、Ni―Ti合金等の超弾性合金、又はステンレス鋼によって形成される。
【0025】
図3に示すように、アンカー部材12は溝114内に設けられ、また、一部が溝114から突出している。アンカー部材12は樹脂材料によって形成される。アンカー部材12を形成する樹脂材料として、公知の樹脂材料を適宜適用できる。例えば、アンカー部材12を形成する樹脂材料として、ポリスルホン、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリレンケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレンサルファイド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリイミドスルホン、ポリアリルスルホン、ポロアリルエーテルスルホン、ポリエステル、ポリエーテルスルホンや、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)等のフッ素系樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種又は2種以上を組み合わせて用いることができ、また、これらの他、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル(不飽和ポリエステル)、ポリイミド、シリコーン樹脂、ポリウレタン等が挙げられ、これらのうちの1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。アンカー部材12を形成する樹脂材料としては、素線11との接続強度が良好で素線11から剥離し難いものが好ましい。
【0026】
また、アンカー部材12を形成する樹脂材料は、X線造影性フィラーを含む。X線造影性フィラーは、例えば、タングステン、金、白金等の金属粉末、硫酸バリウム、炭酸バリウム、酸化ビスマス等の金属酸化物粉末である。
【0027】
また、アンカー部材12を形成する樹脂材料は顔料を含んでおり、アンカー部材12は素線11の外表面と異なる色を有する。樹脂被覆部13は光透過性を有しており、アンカー部材12は樹脂被覆部13を介して視認可能である。
【0028】
アンカー部材12と素線11の外表面との間のコントラストは、視認性の面から高いことが好ましく、一の例として、銀白色(金属色)、灰色、又は黒色の素線11の外表面に対し、アンカー部材12を赤色又は黄色にすることによってコントラストを高められる。また、他の例として、黒、チャコールグレー、こげ茶色、紺色、紫色等の素線11の外表面に対して、アンカー部材12を黄色、黄緑色、オレンジ色等にすることによってコントラストを高められる。顔料は、公知のものを適用でき、有機顔料及び無機顔料のうちのいずれであってもよい。また、顔料を2種以上混合して用いてもよい。
【0029】
樹脂被覆部13は、好ましくはアンカー部材12と相溶性を有する。相溶性とは、「2種類以上の物質が、不都合な分離(滲出、ブルーム)を起こさず、また化学反応も起こさずに均質にまざり合う能力」(1992年5月25日株式会社工業調査会発行「英和 プラスチック工業辞典第5版」第187頁引用)である。
【0030】
樹脂被覆部13とアンカー部材12とは、同一の樹脂を含むことによって互いに相溶性を有することができ、また、同一の基を有する樹脂材料を含むことによって互いに相溶性を有することができる。例えば、樹脂被覆部13とアンカー部材12とは、ポリアミドイミドとポリイミド、ポリエーテルイミドとポリイミド、ポリアミドイミドとポリエーテルイミドのように、「イミド基」を有する樹脂材料を各々含むことによって互いに相溶性を有し、また、ポリスルホンとポリエーテルスルホンのように、「スルホン基」を有する樹脂材料を各々含むことによって互いに相溶性を有することができる。
【0031】
また、樹脂被覆部13は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)等のフッ素系樹脂等を含むことによって、外表面の摩擦低減を図ることができる。樹脂被覆部13は、素線11の全体を被覆している。
【0032】
次に、膵胆管系の内視鏡検査や内視鏡下手術におけるガイドワイヤ10の使用について述べる。
【0033】
膵胆管系の内視鏡検査や内視鏡下手術では、まず、内視鏡が被験者の口から膵胆管の入口である十二指腸乳頭まで挿入され、内視鏡先端の開口部に連通する内視鏡内のチャンネルを通じて、カテーテルが経内視鏡的に膵胆管内へ挿入される。その後、カテーテルを通してガイドワイヤ10が膵胆管内に挿入され、内視鏡の先端から引き出されたガイドワイヤ10の一部が膵胆管内に留置される。
【0034】
ガイドワイヤ10の留置後、カテーテルは内視鏡から引き抜かれ、別のカテーテル(ステント、乳頭切開ナイフ、採石バスケット等)が、ガイドワイヤ10によって案内され、内視鏡を通して膵胆管内へ挿入される。そして処置が完結するまで、ガイドワイヤ10を介した経内視鏡的なカテーテルの挿入及び引き抜きが繰り返される。
【0035】
第1実施形態のガイドワイヤ10の作用効果を述べる。
【0036】
ガイドワイヤ10では、溝114内にアンカー部材12が設けられることによってアンカー部材12が素線11から外れ難くなっており、さらに、アンカー部材12が樹脂被覆部13と同様に樹脂材料によって形成され、例えばアンカー部材12が金属材料によって形成されているような場合に比べ、樹脂被覆部13がアンカー部材12と良好に接続している。このため、樹脂被覆部13が、アンカー部材12を介して素線11につなぎ止められ、剥離又は軸方向のずれを防止することができる。
【0037】
また、アンカー部材12が樹脂材料によって形成されているため、金属材料によって形成される場合に比べ、安価である。また、アンカー部材12が樹脂材料によって形成されているため、金属材料によって形成される場合に比べ、素線11が柔軟となり、ガイドワイヤ10は操作性及び安全性に優れる。
【0038】
また、アンカー部材12が素線11の外表面と異なる色を有するとともに樹脂被覆部13を介して視認可能であり、術者は内視鏡によってアンカー部材12を視認できるため、内視鏡を用いた処置において、アンカー部材12の位置、すなわち先端部111の位置を容易に把握できる。
【0039】
また、アンカー部材12が、樹脂被覆部13との間に相溶性を有し、樹脂被覆部13とアンカー部材12とがより強く接続するため、樹脂被覆部13の剥離及びずれがより効果的に防止される。
【0040】
また、アンカー部材12が、X線造影性フィラーを含む樹脂材料によって形成されており、X線造影性が得られるため、X線透視下でガイドワイヤ10の位置を把握できる。
【0041】
また、アンカー部材12が、溝114から突出しており、樹脂被覆部13とアンカー部材12との接触面積が大きいため、剥離及びずれがより効果的に防止される。
【0042】
また、先端部111は本体部115から縮径しており、素線11の柔軟性が基端から先端方向に向かって増加している。よって、ガイドワイヤ10の操作性及び安全性が優れる。さらに、テーパ部113に溝114が設けられているため、先端部111がより柔軟となり、操作性の更なる向上を図り得る。
【0043】
また、溝114が螺旋状に設けられているため、例えば、素線11の軸まわりに形成された環状の溝が互いに分離して複数設けられるような場合に比べ、素線11が曲げられたときに折れ難い。
【0044】
また、アンカー部材12がX線造影性を有しており、先端部111でX線造影性が得られるため、内視鏡によって視認できないような場合でも、X線造影下で先端部111の位置を把握できる。
【0045】
<第2実施形態>
図4及び図5において概説すると、第2実施形態のガイドワイヤ20では、アンカー部材22及び溝214が、第1実施形態と異なる位置に設けられ、また、樹脂被覆部23の構成が第1実施形態と異なる。
【0046】
ガイドワイヤ20は、芯材である可撓性を有する素線21と、素線21まわりに螺旋状に設けられたX線造影性を有するアンカー部材22と、アンカー部材22及び素線21を被覆する樹脂被覆部23と、を有する。
【0047】
素線21は、長尺状の本体部215と、本体部215から縮径した先端部211と、を有する。先端部211は、本体部215から先端方向に向かって外径が漸減するテーパ部213と、小径部112と、を有する。
【0048】
第2実施形態では、本体部215に螺旋状の溝214が設けられている。溝214は本体部215の端から離隔して設けられ、本体部215において溝214が設けられている部分218は、溝214が設けられている部分218から先端方向及び基端方向に伸びる本体部215の他の部分219に比べ、低い剛性を有する(以下、本体部215において溝214が設けられている部分218を単に柔軟部218と称す。)。
【0049】
アンカー部材22は溝214内に設けられ、また、アンカー部材22の一部は溝214内から半径方向外側に突出する。アンカー部材22は、第1実施形態のアンカー部材12と異なり本体部215に配置されるが、配置以外の例えば材質等の点については、アンカー部材12と同様である。
【0050】
樹脂被覆部23は、アンカー部材22及び本体部215を被覆する基端被覆部232と、先端部211を被覆する先端被覆部231と、を有する。基端被覆部232は、柔軟部218及びその近傍の外周全体を被覆する。また、基端被覆部232は、アンカー部材22の全体を被覆する。先端被覆部231は先端部211の全体を被覆する。先端被覆部231と基端被覆部232とは一体的に設けられている。
【0051】
基端被覆部232は、第1実施形態の樹脂被覆部13を形成する樹脂材料と同様の樹脂材料によって形成される。基端被覆部232は光透過性を有し、アンカー部材22は基端被覆部232を介して視認可能である。また、基端被覆部232は、好ましくはアンカー部材22との間に相溶性を有する。
【0052】
先端被覆部231は、基端被覆部232と同様の樹脂材料によって形成され得る。先端被覆部231は、X線造影性を有し、上で例示したような金属粉末、金属酸化物粉末等のX線造影性フィラーを含む。
【0053】
また、先端被覆部231は、好ましくは基端被覆部232との間に相溶性を有する。第1実施形態において、樹脂被覆部13とアンカー部材12とが相溶性を有する場合と同様、先端被覆部231は、例えば、基端被覆部232を形成する樹脂材料と同一の樹脂材料を含む、又は基端被覆部232を形成する樹脂材料と同一の基を有する樹脂材料を含むことによって、基端被覆部232との間に相溶性を有する。
【0054】
第2実施形態のガイドワイヤ20の作用効果を述べる。
【0055】
第2実施形態のガイドワイヤ20は、第1実施形態と同様、膵胆管系の内視鏡検査や内視鏡下手術において、カテーテルをガイドするために内視鏡内のチャンネルに挿入されて用いられ得る。
【0056】
膵胆管系の内視鏡検査や内視鏡下手術では、ガイドワイヤ20を介した経内視鏡的なカテーテルの挿入及び引き抜きが繰り返されるが、カテーテルの挿入及び引き抜き作業は、通常、術者の他に介助者を数名必要とし、コスト、時間、衛生面に難点があるため、カテーテルの挿入及び引き抜き作業を補助する内視鏡がしばしば用いられる。このような内視鏡は、ガイドワイヤを固定可能な機構を先端に備え、ガイドワイヤを固定することによってカテーテルの交換作業を簡便にする。
【0057】
より具体的には、図6に示すように、チャンネルE1の先に、チャンネルE1に沿う方向に対して側方に逸れるようにガイドワイヤWを曲げる爪状の部材E2が回動自在に設けられており、この爪状の部材E2の先端E4及びチャンネルE1の開口部近傍の部位E3の2箇所で、十二指腸乳頭Pに挿入されたガイドワイヤWが保持される。ここで、ガイドワイヤWは、曲げられた状態から元に戻ろうとする自身の反力によって爪状の部材E2の先端E4及び開口部近傍の部位E3に押し付けられて保持される。
【0058】
しかし、図7に示すように、従来のガイドワイヤWでは、内視鏡Eの先端と十二指腸乳頭Pとが離隔し、内視鏡Eの先端が十二指腸乳頭Pを見上げるような位置で保持されると、内視鏡Eの先端から引き出されたガイドワイヤWが、内視鏡Eの挿入方向と反対方向に引っ張られ、爪状の部材E2の先端E4に接触し難くなる。このため、内視鏡Eの先端と十二指腸乳頭Pとの位置関係によってはガイドワイヤWの固定が困難で、カテーテルの引き抜きに伴ってガイドワイヤWが抜け易い。
【0059】
一方、ガイドワイヤ20は柔軟部218で曲がり易いため、図8に示すように内視鏡Eの先端が十二指腸乳頭Pを見上げるような位置で保持される場合でも、内視鏡Eの先端と十二指腸乳頭Pとの間に柔軟部218が配置されることによって、柔軟部218より先端側が十二指腸乳頭Pに挿入された状態で、先端側と反対の基端側が内視鏡Eの保持位置E3、E4に接するように曲がることができる。従って、内視鏡Eの先端と十二指腸乳頭Pとの位置関係によらず内視鏡Eへのガイドワイヤ20の固定機能が発揮され易い。
【0060】
ガイドワイヤ20の作用効果が分かり易いように図8ではガイドワイヤ20を単に黒い線で表したが、上で述べたように、アンカー部材22は素線21の外表面と異なる色を有するとともに基端被覆部232を通じて視認可能であり、術者は、内視鏡Eの先端に設けられたCCDカメラ(不図示)によって、アンカー部材22、すなわち柔軟部218の位置を容易に把握できる。
【0061】
また、アンカー部材22が造影性を有しており、ガイドワイヤ20の本体部215で造影性が得られるため、例えばアンカー部材22が内視鏡先端のCCDカメラによって視認できない位置にあるような場合でも、本体部215、特に柔軟部218の位置を把握できる。
【0062】
また、先端被覆部231がX線造影性を有し、アンカー部材22との距離が一定に決められているため、X線造影下で狭窄部位等の生体管腔内の所定部位の長さを測定することができる。
【0063】
また、先端被覆部231は、基端被覆部232と一体的に設けられており、基端被覆部232が先端被覆部231をつなぎ止めるため、先端被覆部231の剥離及びずれを防止することができる。
【0064】
また、先端部211は本体部215から縮径しており、素線21の柔軟性が基端から先端方向に向かって増加している。よって、ガイドワイヤ20の操作性及び安全性が優れる。
【0065】
また、ガイドワイヤ20では、溝214内にアンカー部材22が設けられることによってアンカー部材22が素線21から外れ難くなっており、さらに、アンカー部材22が基端被覆部232と同様に樹脂材料によって形成され、例えばアンカー部材22が金属材料によって形成されているような場合に比べ樹脂被覆部23がアンカー部材22と良好に接続している。このため、樹脂被覆部23が、アンカー部材22を介して素線21につなぎ止められ、剥離し難い。
【0066】
また、アンカー部材22が樹脂材料によって形成されているため、金属材料によって形成される場合に比べ、安価である。また、アンカー部材22が樹脂材料によって形成されているため、金属材料によって形成される場合に比べ、素線21が柔軟となり、ガイドワイヤ20は操作性及び安全性に優れる。
【0067】
また、溝214が螺旋状に設けられているため、例えば、素線21の軸まわりに形成された環状の溝が互いに分離して複数設けられるような場合に比べ、素線21が曲げられたときに折れ難い。
【0068】
また、アンカー部材22が基端被覆部232との間に相溶性を有することによって、樹脂被覆部23とアンカー部材22とがより強く接続するため、樹脂被覆部23の剥離及びずれがより効果的に防止される。
【0069】
また、アンカー部材22が、溝214から半径方向外側に突出しており、基端被覆部232とアンカー部材22との接触面積が大きいため、樹脂被覆部23の剥離及びずれがより効果的に防止される。
【0070】
また、アンカー部材22が、X線造影性フィラーを含む樹脂材料によって形成されており、X線造影性が得られるため、X線透視下でガイドワイヤ20の位置を把握できる。
【0071】
<第3実施形態>
図9において概説すると、第3実施形態のガイドワイヤ30は、第1実施形態と異なる形状の先端部311を有する点で、第1実施形態と相違する。
【0072】
図10に示すように、先端部311は、第1実施形態の先端部311のように縮径しておらず、本体部115と略等しい径で、本体部115から軸方向に直線的に伸びており、そして外表面に螺旋状の溝314が設けられている。アンカー部材32は、溝314内に設けられ、その一部は溝314内から突出する。
【0073】
溝314のピッチは、素線31の先端方向に向かって狭まっている。ピッチが素線の先端方向に向かって狭まるとは、複数ピッチ分だけ等ピッチで溝が形成され、さらに先端側で、そのピッチよりも小さいピッチで溝が等ピッチで形成される場合を含むが、本実施形態では、各ピッチが先端方向に向かって小さくなっている。最も基端側での溝のピッチL1は例えば10mmであり、そこから数ピッチ分だけ先端側でのピッチL2は例えば5mmである。
【0074】
素線31は、第1実施形態と異なる形状の先端部311を有するが、その他の点、例えば材質や本体部115の構成等については第1実施形態と同様である。また、アンカー部材32及び樹脂被覆部33は第1実施形態と同様であるので、それらの説明を省略する。
【0075】
第3実施形態のガイドワイヤ30の作用効果を述べる。
【0076】
ガイドワイヤ30では、溝314のピッチが素線31の先端方向に向かって狭まり、素線31の柔軟性が基端から先端方向に向かって増加している。従って、ガイドワイヤ30の操作性及び安全性が優れる。また、ガイドワイヤ30は、第1実施形態と同様の構成を有しており、これらの構成によって、第1実施形態と同様の効果を奏する。
【0077】
<第4実施形態>
図11及び図12に示すように、第4実施形態のガイドワイヤ40は第3実施形態と略同様であり、螺旋状の溝414のピッチが素線41の先端方向に向かって狭まるが、その態様が第3実施形態と異なる。
【0078】
第4実施形態では、複数ピッチ分だけ等ピッチで溝414が設けられ、さらに先端側で、そのピッチよりも小さいピッチで溝414が等ピッチで設けられている。そして、ガイドワイヤ40は、アンカー部材32が相対的に密な先端側の領域416と、アンカー部材32が相対的に疎な基端側の領域417と、を先端部411に有する。
【0079】
このため、ガイドワイヤ40が生体管腔へ挿入された際、各領域416、417の軸方向の長さや領域同士の境の位置を目安として、狭窄部位の長さやガイドワイヤ40の挿入深さ等、生体管腔内部の寸法が分かり易い。また、以上述べた溝414の構成以外については、ガイドワイヤ40は、第3実施形態と同様の構成を有しており、これらの構成によって、第3実施形態と同様の効果を奏する。
【0080】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の範囲内で種々改変できる。
【0081】
例えば、本発明は、膵胆管系の内視鏡検査や内視鏡下手術において用いられるガイドワイヤに限定されず、血管、気管、食道、尿道等の他の生体管腔に挿入されて用いられるガイドワイヤであってもよい。
【0082】
また、上記実施形態では、溝のピッチが先端方向に向かって狭まることによって、素線の柔軟性が基端から先端方向に向かって増加しているが、ピッチが一定で素線の先端方向に向かって溝の深さが深くなることによって、素線の柔軟性が基端から先端方向に向かって増加していてもよい。また、溝のピッチと深さとの両者を変えることによって、基端から先端方向に向かって柔軟性を増加させてもよい。また、第1実施形態及び第2実施形態において、第3実施形態のように先端方向に向かって溝のピッチが狭まっていてもよい。また、本発明は、アンカー部材が溝から突出していない形態を含む。
【符号の説明】
【0083】
10、20、30、40 ガイドワイヤ、
11、21、31、41 素線、
12、22、32 アンカー部材、
13、23、33 樹脂被覆部、
111、211、311、411 先端部、
113、213 テーパ部、
114、214、314、414 螺旋状の溝、
115、215 本体部、
231 先端被覆部、
232 基端被覆部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有する素線と、
当該素線の外表面に設けられた螺旋状の溝と、
当該溝内に設けられ樹脂材料によって形成されたX線造影性を有するアンカー部材と、
当該アンカー部材及び前記素線を被覆する樹脂被覆部と、を有する、ガイドワイヤ。
【請求項2】
前記アンカー部材は、前記素線の外表面と異なる色を有し、前記樹脂被覆部を介して視認可能である、請求項1に記載のガイドワイヤ。
【請求項3】
前記アンカー部材は、前記樹脂被覆部との間に相溶性を有する、請求項1又は請求項2に記載のガイドワイヤ。
【請求項4】
前記アンカー部材は、X線造影性フィラーを含む樹脂材料によって形成される、請求項1〜請求項3のうちのいずれか1つに記載のガイドワイヤ。
【請求項5】
前記アンカー部材は、前記溝から突出している、請求項1〜請求項4のうちのいずれか1つに記載のガイドワイヤ。
【請求項6】
前記素線の柔軟性は、基端から先端方向に向かって増加している、請求項1〜請求項5のうちのいずれか1つに記載のガイドワイヤ。
【請求項7】
前記素線は、長尺状の本体部と、当該本体部から縮径した先端部と、を有し、前記溝は、前記先端部において前記本体部から先端方向に向かって外径が漸減するテーパ部に設けられ、前記樹脂被覆部は、前記アンカー部材及び前記先端部を被覆する、請求項6に記載のガイドワイヤ。
【請求項8】
前記溝のピッチは、前記素線の先端方向に向かって狭まっている、請求項6又は請求項7に記載のガイドワイヤ。
【請求項9】
前記溝の深さは、前記素線の先端方向に向かって深くなっている、請求項6〜請求項8のうちのいずれか1つに記載のガイドワイヤ。
【請求項10】
前記素線は、長尺状の本体部と、当該本体部から縮径した先端部と、を有し、前記溝は前記本体部に設けられ、前記樹脂被覆部は、前記アンカー部材及び前記本体部を被覆する基端被覆部と、前記先端部を被覆する先端被覆部と、を有する、請求項6に記載のガイドワイヤ。
【請求項11】
前記先端被覆部は、X線造影性を有する、請求項10に記載のガイドワイヤ。
【請求項12】
前記先端被覆部は、前記基端被覆部と一体的に設けられる、請求項10又は請求項11に記載のガイドワイヤ。
【請求項13】
前記本体部において前記溝が設けられている部分は、溝が設けられている当該部分から先端方向及び基端方向に伸びる前記本体部の他の部分に比べ、低い剛性を有する、請求項10〜請求項12のうちのいずれか1つに記載のガイドワイヤ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−70980(P2012−70980A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−218701(P2010−218701)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】