説明

ガイド・ワイヤを使用した血管閉塞の再疎通装置および使用方法

【課題】 再疎通のためにカテーテルにガイド・ワイヤを取り付けるまたは結合するか、または血管内の閉塞に通路を開けるための取付機構および方法が提供される。
【解決手段】 取付機構は、ガイド・ワイヤをカテーテルに結合するためにガイド・ワイヤに対して摩擦力を生成し、この設計により、再疎通手順の間に、より強い力がガイド・ワイヤで使用されることを可能にする。本発明はまた、能動カテーテルと併用した取付機能の使用を包含し、この能動カテーテルは、閉塞を貫通する目的でガイド・ワイヤに適用され得る増加された力に振動運動を、好ましくは軸振動運動を追加するために、カテーテルの遠端部をまたはカテーテルの遠端部内の構成要素を振動させるための振動発生手段を有する。本発明の方法は、カテーテルにガイド・ワイヤを取り付ける方法、および部分または完全閉塞を有する血管の治療方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガイド・ワイヤを使用して経皮的冠動脈インターベンション(「PCI」)の間に血管の完全閉塞を貫通させるためにサポート・カテーテルまたは能動カテーテル内でガイド・ワイヤを使用することに関する。特に、この装置は、閉塞を貫通するためにガイド・ワイヤの遠端部を使用するために、ガイド・ワイヤに適用され得る軸力を強化し、またはPCI装置の遠位端のガイド・ワイヤに振動エネルギーを伝達するための機構を提供する。
【背景技術】
【0002】
医学は、長い間、動脈のルーメンの狭窄(狭小化(narrowing)または閉塞(obstruction))を伴う病状のための効果的な治療方法を求めてきた。一般に閉塞として知られているこの状態は、アテローム性動脈硬化症を患う患者に起こるものであり、このアテローム性動脈硬化症は、動脈内への線維、脂肪、または石灰化組織の蓄積によって特徴づけられ、さもなければアテロームまたはプラークとして知られる。閉塞は、部分的または完全なものであり、柔らかく柔軟かまたは硬く石灰化され得る。閉塞は、大動脈、冠状動脈または頸動脈、および末梢動脈を含む動脈系の非常に多様な場所で起こり得る。閉塞の結果、高血圧、虚血、狭心症、心筋梗塞、脳卒中、および死をももたらし得る。
【0003】
低侵襲的処置は、動脈閉塞の好ましい治療である。これらの手順では、カテーテル(長く高可撓性のチューブ状装置)は、鼠径部、上腕、大腿、または首にできた小さい動脈穿刺を通して主幹動脈に導入される。カテーテルは、狭窄の場所に前進されかつ進められる。非常に多様な装置が狭窄動脈を治療するために開発されてきたが、これらの装置はカテーテルの遠端部に配され、これによって移送される。例の手順は、経皮的冠動脈形成術(PTCA)、方向性冠動脈粥腫切除術(DCA)、およびステント留置術を含む。
【0004】
完全閉塞では、バルーン/ステント・カテーテルが血管のターゲット狭窄セグメントに配置されるようにするために、閉塞を通して通路が最初に開けられなければならない。閉塞形態は複雑で、患者ごとに異なるので、これらの閉塞を開けるための共通の方法および装置の成功は限定的で、長期の治療を必要とし、患者に副作用を与える可能性がある。このような副作用には、血管壁の穿孔、高放射線量、または血管造影剤の広範な使用による腎臓への損傷が含まれる。
【0005】
狭窄もしくは閉塞は、コレステロールなどの軟らかな脂肪性物質から、これより硬い線維性物質、そして硬い石灰化物質まで、多様な物質でできている。一般的に、閉塞の両端(近位および遠位のキャップ)は、より硬い石灰化物質を備える。より硬い物質は貫通するのがより困難で大量のエネルギーを必要とし、より軟らかい物質はより少量のエネルギーを必要とする。従って、閉塞を開くことは、特に石灰化が存在する場合には、カテーテルまたはガイド・ワイヤの遠端部への比較的広範なエネルギー移動を必要とする。
【0006】

【0007】
治療場所に達するために、このようなカテーテルは、むしろ長くなければならず(約90〜150cm以上)、従って、遠端部に達するためには大量のエネルギーが最初に伝達されなければならない。同時に、大きく蛇行した血管を通して進むのに十分に可撓性であるためには、カテーテルは、合理的に細くなければならない。長い長さと小さい直径が組み合わされて、ワイヤの破損が高エネルギーパルスからのストレスと摩耗による一般的な問題になる。硬い閉塞を貫通するのに十分硬いガイド・ワイヤには、その不撓性および真直ぐな先端によって、蛇行血管を通してのナビゲーションが困難になり、血管穿孔のリスクが高まるという不利な点がある。大きく蛇行した血管に対応するのに十分に可撓性である剛性物質には、プッシング・ソースの近位置が原因である座屈の問題がある。座屈の結果、横方向力への移動と、剛性物質を収納するルーメンに対する摩擦とによるエネルギー損失が起こる。すべてのこのような装置は、40〜70%の範囲の限定的成功率を提供する。
【0008】
閉塞は、異なる密度および硬度の多様な物質を備える。従って、再疎通装置で使用されるエネルギーの性質は、特定の閉塞に適合すべきであり、貫通は、動脈壁の穿孔または健康な組織への損傷を防ぐために制御されるべきである。さらに、エネルギーがカテーテルの近端部で発生するので、伝導性ワイヤを損傷させることなく、かつ装置の可撓性を犠牲にすることなく、閉塞の貫通をもたらすのに十分なレベルで閉塞の近くにある装置の遠端部に到達することができなければならない。上述のように、現在の装置は、装置の遠端部に移動されるエネルギーの量が不十分であること、または移送されるエネルギーのタイプと閉塞のタイプとのミスマッチという難点があり、結果として時に過剰な力が適用され、よってルーメン壁の損傷のリスク、または穿孔のリスクさえも高まる。従って、再疎通装置に適切なエネルギーを移動することができるシステムまたは装置の必要性がある。
【0009】
ガイド・ワイヤは、血管を通して多様なカテーテルを誘導する、血管内のナビゲーションのために、および血管の部分または完全閉塞の再疎通などの特定の適用のために使用される。介入心臓学および放射線学(末梢および心臓血管)で幅広く使用されるガイド・ワイヤは、一般に、多様な直径(例えば、0.014インチ、0.018インチ、0.035インチ)を有する。これらの小さい直径は、このような目的のためにガイド・ワイヤの先端に適用かつ伝達され得る力を制限し(硬いワイヤの場合は一般的には数グラムから約15グラム)、また障害物を通してガイド・ワイヤを能動的に方向づけるのに(例えば血管閉塞を横断するために)利用できる制御を制限する。
【0010】
従って、部分または完全閉塞を貫通するために、より大きい力がガイド・ワイヤの遠端部に適用されることを可能にするガイド・ワイヤを備える、血管閉塞を貫通するための装置、並びにガイド・ワイヤで血管内の障害物または蛇行した要素をトラバースすることを支援する装置が必要とされる。また、カテーテルの近端部から遠端部へのエネルギー伝達の問題を回避し、かつ血管閉塞を貫通するための構造としての硬いガイド・ワイヤの有用性を改良するガイド・ワイヤを備える、血管閉塞を貫通するための装置の技術が必要とされる。
【発明の概要】
【0011】
本発明の目的は、ガイド・ワイヤの遠位端を使用して血管閉塞を貫通するために適用され得る力を強化するために、カテーテルにガイド・ワイヤを可逆的に取り付けるまたは結合することができる、血管閉塞を貫通するための装置を提供することである。本発明のさらなる目的は、血管閉塞を貫通するためのガイド・ワイヤの制御を向上させるために、ガイド・ワイヤに適用される摩擦力を使用してカテーテルにガイド・ワイヤを結合することである。
【0012】
本発明は、血管閉塞を貫通するための装置に関し、この装置は、ガイド・ワイヤと、好ましくはカテーテルの遠端部で、かつ好ましくは遠位振動の間に、カテーテルにガイド・ワイヤを取り付けるまたは結合するための機構とを有する。ガイド・ワイヤは、広い意味ではカテーテルの移動によって、そして特定の意味ではこの原理を使用する取付機構の特定の実施形態によって生じる、ガイド・ワイヤとガイド・ワイヤ取付ルーメンとの間の摩擦力によってカテーテルに取り付けられる。カテーテルは、受動カテーテルまたは能動カテーテルであり得る。「受動カテーテル」とは、現在の硬いワイヤの再疎通手順のために使用され得る標準的な血管内カテーテルを意味する。「能動カテーテル」とは、閉塞を貫通するためにカテーテルの遠端部で振動を発生させるための機構を有するカテーテルを意味する。本発明に従って受動カテーテルにガイド・ワイヤを結合することは、血管閉塞を貫通するためのガイド・ワイヤに適用され得る軸力を大きく強化するために、ガイド・ワイヤの遠端部を押すまたは引っ張るために、本質的にガイド・ワイヤよりもよい押込到達性(pushability)を有するカテーテルの使用を可能にする。さらに、本発明の取付機構が能動カテーテルと共に使用される場合、カテーテル内で生じる振動運動は、ガイド・ワイヤの閉塞貫通能力をさらに向上させるために、増加された軸力と共にガイド・ワイヤに伝達され得る。取付ルーメンは、ガイドルーメンの一部であってよく、またはガイド・ワイヤがその中を通過する特別に設計されたルーメンであってもよい。
【0013】
本発明のガイド・ワイヤ取付機構は、取付機構が配されたカテーテルの部分の移動に基づいて、例えば加速力によって、カテーテルの部分の移動の特定の方向によって、またはガイド・ワイヤがその中を通過する特別に設計されたルーメンの移動によって、カテーテルにガイド・ワイヤを取り付ける。この運動または加速は、カテーテルにガイド・ワイヤを結合する、ガイド・ワイヤの周りの取付ルーメンの壁によって、ガイド・ワイヤに対して摩擦力を生み出す。摩擦力は、ピストンによって、または取付ルーメンに対して折り曲げられるガイド・ワイヤによって取付ルーメンの壁に対して押し上げられているガイド・ワイヤによってもたらされる。結合において力が制限されており、かつ振動力が無い場合またはカテーテル・キャップの移動が無い場合に、力が減少するので、オペレータは、標準的な方法でもガイド・ワイヤを使用することができる。
【0014】
本発明の利点は、可逆的な、すなわち力特有の方法でカテーテルにガイド・ワイヤを取り付けることによって、特にガイド・ワイヤの取付がカテーテルの遠端部にある場合、ガイド・ワイヤを使用して閉塞に対して適用され得る力が、取付機構なしで硬いガイド・ワイヤと標準的なカテーテルを使用して可能である力よりも大きくなり得ることである。さらに、ガイド・ワイヤがカテーテルにロックされ得るため、閉塞貫通の間のガイド・ワイヤ先端に対する制御が改良される。さらに、カテーテルの遠位端で振動を発生させる装置と共に使用される場合、本発明の取付機構は、閉塞を貫通するためにガイド・ワイヤに適用され得る増加された力に加えて、振動運動がガイド・ワイヤに伝達されることを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1Aおよび図1Bは、加速ピストンを備える本発明の装置の実施形態の操作を示す。図1Aは、前方向加速の場合のガイド・ワイヤのロックを破断図で示す。図1Bは、後方向加速の場合のガイド・ワイヤのロックを破断図で示す。
【図2】図2は、ばねピストンがガイド・ワイヤの一方向の移動に基づいたガイド・ワイヤの取付を、他の方向よりも容易にする(favor)位置づけ得る本発明の装置の一実施形態を横断面で示す。
【図3】図3は、取付ルーメンが、ガイド・ワイヤを曲げるとともに、カテーテルにガイド・ワイヤを効果的に取り付けるために、ある力で十分な摩擦を発生させるために、カーブを有するガイド・ワイヤ取付機構の一実施形態を横断面で示す。
【図4】図4は、振動発生手段を備える能動カテーテルと共に使用される図3の実施形態を横断面で示す。
【図5A】図5Aは、取付ルーメンが高摩擦可撓性ポリマーを含む摩擦面を有する、ガイド・ワイヤ取付機構の実施形態を横断面で示す。図5Aは、取付ルーメンがカテーテル・キャップの長手方向軸と平行である一実施形態を示す。
【図5B】図5Bは、取付ルーメンが高摩擦可撓性ポリマーを含む摩擦面を有する、ガイド・ワイヤ取付機構の実施形態を横断面で示す。図5Bは、取付ルーメンがカテーテル・キャップの長手方向軸に対して傾斜して設定される実施形態を示す。
【図6A】図6Aは、取付ルーメンが可撓チューブを含む摩擦面を有する、ガイド・ワイヤ取付機構の一実施形態を横断面で示す。図6Aは、取付ルーメンがカテーテル・キャップの長手方向軸と平行である一実施形態を示す。
【図6B】図6Bは、取付ルーメンが可撓チューブを含む摩擦面を有する、ガイド・ワイヤ取付機構の一実施形態を横断面で示す。図6Bは、取付ルーメンがカテーテル・キャップの長手方向軸に対して傾斜して設定される一実施形態を示す。 図7 図7A〜図7Cは、ばね要素の弛緩状態(図7B)と比較して圧縮(図7A)および伸張(図7C)の場合の図6Aの実施形態の取付ルーメン直径の変化を横断面で示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、改良されたガイド・ワイヤを用いて、血管内の部分または完全閉塞を再疎通する装置および方法を提供する。本発明の装置はまた、他の身体のルーメンから閉塞を除去することに適用可能であり得る。特に、本発明の装置は、近端部および遠端部と、ガイド・ワイヤと、ガイド・ワイヤ取付機構とを有するカテーテルを備える。いくつかの実施形態では、装置はさらに、振動発生部材を備え得るもので、前記振動発生部材は、前記ガイド・ワイヤ・ロック機構および振動発生部材に操作可能に取り付けられた外部振動エネルギー源を介して前記ガイド・ワイヤに操作可能に接続される。
【0017】
本発明のガイド・ワイヤ取付機構は、カテーテルの定義された部分内の取付ルーメンに対してガイド・ワイヤ上で摩擦力を発生させる。摩擦力は、取付機構を含むガイド・ワイヤの部分がガイド・ワイヤに対して移動する時に発生され、これはガイド・ワイヤとの接触を引き起こし、そして取付ルーメンの壁と接触する。よって、取付は力に依存する。カテーテルにガイド・ワイヤを力依存の取付またはクランプすることはまた、以下で部分取付というが、これは、ガイド・ワイヤが、カテーテル内で自由に移動し得るか、またはカテーテルのその部分の移動に依存してカテーテルに取り付けられ得ることを意味する。例えば、オペレータは、カテーテル内でガイド・ワイヤを自由に引っ張るまたは押し得るが、一方、同時にガイド・ワイヤは、ある力の制限(例えば約0.01〜1ニュートン力)で、本発明の取付機構を介してカテーテルに取り付けられ、カテーテルと共に移動することができる。取付機構は、カテーテルの遠位端から少し離れたカテーテルの定義された部分内に位置し得るが、好ましくは、ガイド・ワイヤのサポートを改良するためのカテーテルの遠位領域(例えばカテーテルの遠位端から1〜20mm)内に、例えばカテーテル・キャップ内にある(これがより効率的な配置であるため)。
【0018】
一実施形態では、ガイド・ワイヤは、加速器ピストンを備えるカテーテル・キャップの構造がガイド・ワイヤに対して加速する時に生じる摩擦力によって、カテーテルに取り付けられ得る。カテーテル・キャップの前方向加速によって、ピストンは、取付ルーメンの壁に対してガイド・ワイヤを押し当てることによってガイド・ワイヤと嵌合させ、よってガイド・ワイヤをカテーテルにクランプする。逆方向のカテーテル・キャップの加速によって、他のピストンは、取付ルーメンの壁に対してガイド・ワイヤを押し当てることによってガイド・ワイヤと嵌合させる。
【0019】
他の実施形態では、ガイド・ワイヤは、カテーテルに対して一方向のガイド・ワイヤの移動によって生じる摩擦力によって、カテーテルに取り付けられ得る。本実施形態では、ばねによるピストンは、ガイド・ワイヤに対して押すが、ガイド・ワイヤが反対方向に動かされるよりも、より容易に例えば遠位方向に押され得る(または近位方向に引っ張られる)角度で押す。
【0020】
さらに他の実施形態では、ガイド・ワイヤは、特別に設計されたルーメンを通過する時に、ガイド・ワイヤに対して生じる摩擦力によってカテーテルに取り付けられ得る。この実施形態は、ルーメン壁が曲げられたガイド・ワイヤに対して与える摩擦力を利用するという利点がある。
【0021】
さらに他の実施形態では、ガイド・ワイヤは、カテーテル・キャップの取付ルーメンを通過する時に、少なくとも部分的にガイド・ワイヤに対する高摩擦面によって生じる摩擦力によってカテーテルに取り付けられる。
【0022】
さらなる実施形態では、ガイド・ワイヤは、カテーテル・キャップ・ルーメンを通過する時に、ガイド・ワイヤに対する摩擦力によってカテーテルに取り付けられ得るものであり、ここで摩擦力は、カテーテル・キャップが振動される時に、少なくとも部分的に取付ルーメンの直径の変化によって生じる。
【0023】
上述の実施形態、並びに本発明のガイド・ワイヤ取付機構の他の実施形態、移送方法、異なる設計およびバリエーションは、添付の図を参照して下記で解説かつ説明する。図面は、本発明の例示的な理解として、そして本発明の特定の実施形態の概略図を示すために提供されることに留意されたい。当業者は、本発明の範囲内に等しい他の類似の実施例を容易に認識するであろう。図面は、添付の請求項に定義される本発明の範囲を制限することを意図するものではない。
【0024】
ガイド・ワイヤ取付の手段の一実施形態は、図1Aおよび図1Bで示される。本実施形態では、カテーテルの一部は、シリンダ113a、113bを備える加速ピストン110a、110b、または取付ルーメンの壁に向かってガイド・ワイヤを押すためにガイド・ワイヤ取付ルーメン135に向かってスロット111a、111bを通して自由に移動することができるボール114a、114bを含む。ピストンは、ピストンの角度に基づいて、前方向(すなわち、カテーテルの遠位端121に向かって遠位)または後方向(すなわち、近位)のいずれかの好ましい方向に移動するように設計され得る。図1Aおよび図1Bで示される実施形態では、矢印で示されるように、加速ピストン110aのための好ましい方向は、遠位であり、加速ピストン110bのための好ましい方向は、近位である。加速ピストン110a、110bを含むカテーテルの部分は、カテーテルに沿ったいずれの場所でもよいが、好ましくは、カテーテル・キャップ125のカテーテルの遠端部(図示されない)にある。図1Aで示されるように、加速ピストン110aは、シリンダ113a(またはボール114a、図示されない)が、カテーテル・キャップ125の前方の(遠位の)加速(矢印で示される)の場合にガイド・ワイヤ130に向かって取付ルーメン135にスライドし得るスロット111aを備え得るものであり、カテーテル・キャップ125にガイド・ワイヤ130を結合する摩擦力を発生させる。遠位加速の間、好ましい近位方向の反応を有する加速ピストン110bのシリンダ113b(またはボール114b、図示されない)は、ガイド・ワイヤ130から離れてスロット111bに残る。同様に、図1Bに示されるように、加速ピストン110bは、ボール114b(またはシリンダ113b、図示されない)がカテーテル・キャップ125の後方向(近位)加速(矢印で示される)の場合に、ガイド・ワイヤ130に向かって取付ルーメン135にスライドし得るスロット111bを備え得るものであり、カテーテル・キャップ125にガイド・ワイヤ130を結合する摩擦力を発生させる。近位加速の間に、好ましい遠位方向の反応を有する加速ピストン110aのボール114a(またはシリンダ113a、図示されない)は、ガイド・ワイヤ130から離れてスロット111aに残る。図1Aおよび図1Bで示される実施形態は、2つの加速ピストン110a、110bを示すが、カテーテル・キャップ125は、ガイド・ワイヤ130に対してより堅固に保持するのために、3つ以上の加速ピストンを備え得る。あるいは、カテーテル・キャップは、蝶の形をした1つの加速ピストン(図示されない)を備え得るものであり、これは、いずれの方向でもカテーテル・キャップを加速する場合に、ガイド・ワイヤをロックするために取付ルーメンを回転し得る。
【0025】
図2で示されるガイド・ワイヤ取付機構の他の実施形態では、カテーテルの一部分は、取付ルーメン235に対する摩擦力によってカテーテル(図示されない)にガイド・ワイヤ230を取り付けるためのばねピストン212を備える。好ましくは、カテーテルのこの部分は、図2で示されるように、カテーテルの遠端部にあるカテーテル・キャップ225であるが、その部分は、カテーテルのどこにあってもよい。ばねピストン212は、ばね217を備えるピストンであり、ガイド・ワイヤ230に対して定圧を提供するが、ガイド・ワイヤ230が反対の(好ましくない)方向に移動する場合と比べて、ガイド・ワイヤ230がカテーテルに対して好ましい方向に移動する場合、ガイド・ワイヤ230を取付ルーメン235の壁に対してよりしっかりと押し付け得る。取付ルーメン235は、図2で示されるように、真直ぐであり得るが、代替の実施形態では、例えば図3でルーメン336として示されるように、カーブを備え得る。図1〜図4で示され、本明細書で説明される取付機構の要素の組み合わせは、当該技術分野の技術範囲内であり、かつ本発明よって包含される。
【0026】
好ましい方向に増加された圧力は、ばねピストン212の位置およびその接触領域215の形によってもたらされ得る。よって、図2で示される実施形態では、ばねピストン212は、ガイド・ワイヤ230がカテーテルに対して後方(近位)の移動よりも前方(遠位)の移動を容易に可能にするように設計される。なぜならば、ばねピストン212およびその接触領域215が、カテーテルの遠位端221に向かって角度が付されるからである。カテーテルに対してガイド・ワイヤ230の後方の移動を容易にする実施形態は、本実施形態の同じ形のピストン接触領域215を使用して、反対方向にばねピストン212の角度をつけることによって達成され得る。いくつかの実施形態では、ガイド・ワイヤ230の方向に中立的効果を有することが望ましく、その場合、ばねピストン212は、ガイド・ワイヤ230および取付ルーメン235の長手方向軸に対して直角の方向に置かれ得る。ばねピストン212のばね217は、ガイド・ワイヤ230に対するばねピストン212の接触領域215による定圧を維持するために、コイルばね、板ばね、膜などを含む任意のタイプのばねであってもよい。本実施形態では、ガイド・ワイヤ230は、取付ルーメン235の壁に対する摩擦によって生じる力まで、カテーテル・キャップ225に取り付けられる。ピストン接触領域215とガイド・ワイヤ230の間の表面およびガイド・ワイヤ230と取付ルーメン235の間の表面は、手順の必要性に応じて、低摩擦係数または高摩擦係数のいずれかを有するように設計することができる。
【0027】
図3で示されるガイド・ワイヤ取付機構のさらに他の実施形態では、ガイド・ワイヤ330を保持するための摩擦は、湾曲経路を有する取付ルーメン(以下、湾曲取付ルーメン336という)によって生じる。本実施形態では、カテーテルの一部分は、カテーテルにガイド・ワイヤ330を取り付けるためにガイド・ワイヤに対する摩擦力を発生させるために(上記のように)、ガイド・ワイヤを曲げるための湾曲取付ルーメン335を備える。好ましくは、カテーテルのこの部分は、カテーテルの遠位端321にあるカテーテル・キャップ325である。本実施形態には、2つのモードがある。第一モードでは、カテーテル・キャップ325は静的であり、オペレータは、カテーテルを通してガイド・ワイヤ330を意のままに押すかまたは引っ張り得る。ガイド・ワイヤ330に対する摩擦は、標準的な真直ぐの取付ルーメンを有するカテーテルにおいてよりもわずかに高い。第二モード(カテーテル・キャップ325が加速する)では、ガイド・ワイヤ330と湾曲取付ルーメン336の間で摩擦が生じ、それによって、ガイド・ワイヤ330はカテーテル・キャップ325に、従ってカテーテルに取り付けられる。特に、オペレータによるかまたは能動カテーテル(図示されない)の振動によるかを問わず、カテーテル・キャップ325が移動する時に、ガイド・ワイヤ330は、湾曲取付ルーメン336の壁によってガイド・ワイヤ330に対して生じる摩擦力によってカテーテル・キャップ325にクランプされ、ガイド・ワイヤ330は、カテーテル・キャップ325と共に移動する。
【0028】
図1〜図3に示されるガイド・ワイヤ取付手段の実施形態は、標準的なカテーテルと共に使用され得るものであり、これは、カテーテルが軸方向に動かされる時に、ガイド・ワイヤとカテーテル・キャップの結合を引き起こす。しかし、実施形態はまた、能動カテーテルと併用しても有益であり、この場合、カテーテルの遠端部で振動を発生させるために、エネルギーがカテーテルの近端部から入力される。特に、従来技術の追加の限界(特にカテーテルの近端部から遠端部への機械的エネルギー伝達の損失)を克服するために、本発明の装置は、カテーテルの遠端部で振動を発生させるための振動発生手段(特に、カテーテルの遠端部で振動部材の軸振動を発生させるための振動発生手段)を有する能動カテーテルと併用すると特に有益である。
【0029】
よって、本発明のガイド・ワイヤ取付機構は、硬いガイド・ワイヤ貫通手順のために使用される標準的な血管内カテーテルである標準的な受動カテーテルと共に使用され得る。あるいは、本発明の取付機構は、血管閉塞を貫通するためのカテーテルの遠端部に振動発生手段を有するカテーテル、特にカテーテルの遠端部に振動エネルギーを効率的に伝達するために設計された振動システムを有する能動カテーテルなどの、能動カテーテルと共に使用され得る。留意すべき点は、能動カテーテルと共に使用される場合、本発明と併用して使用されるガイド・ワイヤ貫通手順は、能動カテーテルの振動部材および閉塞衝突要素と交互に実施され得るということであり、なぜなら、ガイド・ワイヤが通常このような能動カテーテルの操作の間にカテーテル内に引っ張られるからである。あるいは、振動発生手段が、ガイド・ワイヤ取付機構を含むカテーテルのセクションを振動させることによって、カテーテルにガイド・ワイヤを結合し、かつガイド・ワイヤを振動させ得るように、能動カテーテルは設計され得る。ガイド・ワイヤが閉塞へのハンマーとして機能する場合、好ましくは、カテーテル・キャップを越えて約0.1mm〜約5mm延びる。
【0030】
本発明は、本出願と同一日に出願された「血管閉塞の再疎通のための装置および使用方法」という名称の米国仮出願第61/302,669号に基づく、同時係属米国出願第 号(再疎通)に詳細が記載されているように、引張部材とばね要素の組み合わせを備える能動カテーテルで特に有益である。引張部材とばね要素の装置は、押力または引張力と押力の組み合わせよりも、引張力によって振動可能部材を振動させる振動力を発生させ、押力を使用するPCI装置よりも血管の時々蛇行する湾曲などの予測不可能な形状の影響をあまり受けない。特に、同時係属米国出願第 号(再疎通)の装置は、ばね要素、引張部材、振動可能部材(すべてカテーテルに収納されている)、および引張部材に操作可能に接続された外部振動エネルギー源を備える。装置の遠位端にあるのは振動可能部材であり、これは例えば、キャップに似たカテーテル・キャップ、または機械的衝突力を強化し、かつ貫通を改良するような形作られたキャップであり得る。振動可能部材は、引張部材の引張力およびばね要素からの復元力に応じて振動する。振動可能部材の振動(oscillation)または振動(vibration)は、閉塞の貫通を引き起こすことができる。特に、振動エネルギー源は、ばね要素を介して振動可能部材を振動させるために、引張部材を繰り返し引っ張りかつ解放するようになされる。引張部材は、ばね要素を近位方向に同時に圧縮し、従ってエネルギーを振動可能部材に伝達することができる。ばね要素は、蓄積エネルギーを運動エネルギーに局所的に変換することができる(引張部材張力の解放時に)、よって、遠位方向に振動可能部材を動かす。運動エネルギーの加速は、無荷重(静止)位置を越えてばね要素の遠端部を伸張させるようにばね要素の伸張をもたらし、よって、振動可能部材をさらに遠位に押す。閉塞を有する血管では、閉塞に衝突するために、運動エネルギーが振動可能部材から伝達される。よって、カテーテルの遠位端に位置する振動可能部材は、身体のルーメン内の閉塞を貫通するために十分な周波数および振幅で振動させられる。カテーテルは、本発明と共に使用される場合、造影剤を注入し、または穴あけ領域から閉塞デブリを除去するために、引張部材を収容するためのルーメン、および本発明のガイド・ワイヤおよびガイド・ワイヤ取付機構を収容するためのルーメン、並びにステアリング、運動測定要素のためなどの他の要素を有する従来の介入医療カテーテルであり得る。
【0031】
本発明はまた、「完全閉塞の再疎通の方法および装置」という名称の同時係属米国出願第2009/0292296A1号で詳細に説明される水圧ルーメンを備える能動カテーテルで特に有益である。水圧機構は、遠位要素を伸張および収縮するために水圧パルスをカテーテルの遠端部に転送し、これによって、エネルギー伝達の最小限の損失でカテーテルの遠端部で振動可能部材を振動させる。要するに、米国出願第2009/0292296A1号で説明される振動発生手段は、振動部材を振動させるためにカテーテルの遠端部で振動力を発生させるための水圧カテーテルの少なくとも1つの水圧ルーメンに、エネルギーパルス、好ましくは、水圧波またはパルスを入力するために、振動エネルギー源に操作可能に接続されたカテーテル・ヘッドおよび少なくとも1つの水圧ルーメンを備える水圧カテーテルを含む。水圧ルーメンは、身体のルーメン内の閉塞を貫通するためにその振動可能部材を振動させるために、エネルギーをその遠位端の振動可能部材に効率的に伝達することができる。水圧ルーメンは、液体、好ましくは、生物学的に適合する液体を含み、かつ近端部および遠端部を有する密閉構造である。水圧ルーメンは、好ましくは、近位要素、遠位要素、および遠位要素に近位要素を接続する水圧チューブを備える。
【0032】
さらに米国第2009/0292296A1号を参照すると、振動エネルギー源は、カテーテルの外部にあるが、カテーテルに(特に水圧カテーテルの水圧ルーメンに)操作可能に接続される。好ましくは、振動エネルギー源は、少なくとも1つの周波数および少なくとも1つの振幅を備える少なくとも1つの水圧波を、好ましくは水圧ルーメンの近位要素を介して水圧ルーメンに発生させることができる。近位要素は、好ましくは近位方向に機械的に圧縮または揺動されることによって水圧チューブを通して水圧波の開始をもたらし得る。水圧チューブは、水圧波を遠位要素に伝達する。遠位要素は、振動可能部材であってよく、または振動可能部材の振動を引き起こし得るものであり、その振動は水圧波によって駆動される。遠位要素は、その中に液体を押し込み、よってこれを拡張させ、次に圧力を除去し、よってそれを「跳ね返させる」ことによって、振動(vibrate)または振動(oscillate)させられ得る。遠位要素は、例えばアクティブベローズ、弾性膜、または伸張性のあるまたはコンプライアントな物質に密閉して覆われたばねであり得る。カテーテル・ヘッド(水圧カテーテルの最遠位の領域である)は、遠位要素を備える。近位および遠位要素は、伸張および収縮させられ得るが、水圧チューブはそうではない。カテーテルのヘッド内では、水圧ルーメンの遠位要素は、水圧波と協働して、血管閉塞を貫通するために有益な振動力を発生させる。
【0033】
さらに米国第2009/0292296A1号を参照すると、カテーテルのヘッドは、3つの機能部品、すなわち、振動可能部材と、復元力構成要素と、閉塞衝突要素とを備える。振動可能部材は、水圧波から遠位に向けられた力と、復元力構成要素の近位に向けられた力とに反応して振動する。振動可能部材の振動運動は、閉塞衝突要素に伝達され、これは、閉塞の貫通をもたらす。これらの3つの機能部品は、1つ以上の構造を備え得る。例えば、水圧ルーメンの遠位要素は、3つの機能すべてを果たす構造であり得る。水圧ルーメンの遠位要素は、振動エネルギーおよび復元力を、振動可能部材および閉塞影響要素である他の構造に伝達し得る。または水圧ルーメンの遠位要素から離れた構造(または構造の組み合わせ)は、すべての3つの機能部品を備え得る。好ましくは、3つの機能部品は、水圧ルーメンの遠位要素に組み込まれる。
【0034】
本発明は、ガイド・ワイヤを振動させることを含む水圧カテーテルの実施形態と共に使用することは推奨されない。いずれの場合でも、本発明のガイド・ワイヤを取り付けるために使用される摩擦力は、力が完全に受動的で装置に内在的であり、ガイド・ワイヤまたはカテーテルの移動の機能として作用する米国第2009/0292296A1号のガイド・ワイヤ・アンカーとは著しく異なることに留意すべきである。一方、米国第2009/0292296A1号のガイド・ワイヤ・アンカー機構は、振動力の実施の間にガイド・ワイヤを安定させるために、拡張バルーンにポンプで入れられた拡張媒体などの外部に適用される力に依存する。実際、これら2つの機構は入れ替えることはできない。
【0035】
同時係属米国出願第 号(再疎通)と米国第2009/0292296A1号の両方について、振動エネルギー源は、カテーテルの外部であるが、振動発生部材に操作可能に接続されている。振動エネルギー源は、少なくとも1つの周波数および少なくとも1つの振幅を備える少なくとも1つの振動エネルギーパルスを発生させることができる任意のエネルギー源であり得る。振動エネルギー源は、例えば、モータ、シェーカー、圧電モータ、またはアクチュエータであり得る。
【0036】
ガイド・ワイヤ取付機構は、図4で示されるような振動発生手段を有する能動カテーテル(例えば、同時係属米国出願第 号(再疎通)で記載されている引張部材とばね要素)、または遠位のベローズなどを備える米国公開出願第2009/0292296A1号に記載される水圧システムと共に使用され得る。ばね状の構造ではないが、カテーテルの遠端部で振動(好ましくは軸方向振動)を発生させる要素もまた、図4で示されるこの組み合わせ実施形態の範囲内である。よって、例えば、米国第2009/0292296A1号で説明される弾性膜、または当該技術分野で説明されるピエゾモータ、または同等の振動発生手段は、本発明の意義の範囲内の振動発生手段の等しく企図される構成要素である。このような組み合わせの一例は、図4で示され、これは図3で示されるガイド・ワイヤ取付機構が、振動発生手段を備える能動カテーテルと共に使用され得る様子を示す。特に、図4は、カテーテル・キャップ425の湾曲取付ルーメン436を介して、軸方向振動をガイド・ワイヤ430に与えるために、振動発生手段の例示的なばね450の遠端部に取り付けられた図3に示される湾曲取付ルーメン436実施形態を備えるカテーテル・キャップ425の略断面図である。図4の図示を明確にするために、振動発生手段は、ばね450として示され、これはカテーテル・キャップ425がそれによって軸方向に振動され得る手段を示す。ガイド・ワイヤ取付機構の他の組み合わせ(図1および図2で示される組み合わせなど)、および能動カテーテル(振動発生手段を有する)は、摩擦を発生させるための移動をもたらす振動カテーテル・キャップの原理が同じであるので、本発明の範囲内である。
【0037】
図5Aおよび図5Bで示される実施形態では、カテーテル・キャップ525内の高摩擦面540は、カテーテル・キャップ525がガイド・ワイヤ530に対して移動する際に、ガイド・ワイヤ530に対して摩擦を提供する。図5Aで示される実施形態では、カテーテル・キャップ525は、カテーテル・キャップ525の長手方向軸と平行に位置し、かつガイド・ワイヤ530の直径よりもわずかに大きい直径を有する真直ぐな取付ルーメン535を有する。図5Bは、カテーテル・キャップ525が傾斜したまたは角度が付された取付ルーメン537を有する点においてのみ、図5Aの実施形態と異なる、類似の実施形態を示す。図5Bの取付ルーメン537は、カテーテル・キャップ525の長手方向軸に対して傾斜して設定される。取付ルーメン535、537は、高摩擦可撓性のポリマー物質を含む高摩擦面540を有する。高摩擦面540は、取付ルーメン535、537自体の表面であり得、この場合、カテーテル・キャップ525は、比較的高摩擦の材料から製造され、または高摩擦面540は、取付ルーメン535、537上のコーティングであってもよい。高摩擦面540のための適切な材料は、例えば、ポリエーテルブロックアミド(例えば、PEBAX)またはポリエチレンなどの低デュロメーター熱可塑性ポリマーを含む。カテーテル・キャップ525は、金属、プラスチック、または他の生体適合物質から製造され得る。
【0038】
好ましくは、同時係属米国出願第 号(再疎通)(本出願と同一日に出願された)に記載されている引張部材とばね要素などのように、カテーテル・キャップ525は、振動発生手段を有する能動カテーテルと共に使用される。よって、図5Aおよび図5Bに示されるように、カテーテル・キャップ525は、圧縮ばね550の遠端部に取り付けられ得る。圧縮ばね550の近端部は、カテーテル220に取り付けられ得る。図5Aおよび図5Bに示されるように、カテーテル・キャップ525は、圧縮ばね550を通して延びている近位部526をオプションで有し得るものであり、これは、圧縮ばね550に対する軸アライメントを提供する。カテーテル・キャップ525のルーメンの最近位部分は、オペレータによってガイド・ワイヤ・ルーメン531とカテーテル・キャップ525の間で押される時に、ガイド・ワイヤ530を方向づけるように漏斗状の形527を形成するように広がり得る。ガイド・ワイヤ・ルーメン531の最遠位部分は、同様に広がり532得る。
【0039】
ガイド・ワイヤ取付機構の他の実施形態では、カテーテル・キャップ625の取付ルーメン635は、図6Aおよび図6Bに示されるように、可撓チューブ641を含み得る。可撓チューブ641は、カテーテル・キャップ625がガイド・ワイヤ630に対して移動する時に、ガイド・ワイヤ630に対して摩擦力を発生させるために高摩擦面を提供し得る。可撓チューブ641は、好ましくは、長手方向に可撓性であり、およびその軸に沿って伸縮可能である。長手方向に可撓性であるとは、可撓チューブ641が長手方向軸に沿って曲がり得ることを意味する。可撓チューブ641のための適切な材料は、例えば、約25のデュロメーターを有する、PEBAXなどのポリエーテルブロックアミド、ペレセン80Aなどのポリエチレン、または類似の材料を含む。
【0040】
図6Aで示される実施形態では、カテーテル・キャップ625は、カテーテル・キャップ625の長手方向軸と平行に位置し、かつガイド・ワイヤ630の直径よりわずかに大きい直径を有する真直ぐな取付ルーメン635を有する。図6Bは、類似の実施形態を示し、カテーテル・キャップ625が傾斜したまたは角度が付された取付ルーメン637を有するという点だけが図6Aの実施形態と異なる。取付ルーメン637は、カテーテル・キャップ625の長手方向軸に対してわずかに傾斜して設定される。図5Bおよび図6Bの実施形態の傾斜したまたは角度が付された取付ルーメンは、2つの目的を果たし得る。第一に、角度が付された取付ルーメン537、637は、オペレータがカテーテルをより強く押し込む時に、ガイド・ワイヤ530、630に対する摩擦力に貢献し得る。例えば、運動の方向とガイド・ワイヤの間の角度は、ガイド・ワイヤ 530、630に対する横方向の摩擦力を発生させ得るものであり、ガイド・ワイヤをカテーテル・キャップと共に振動させる。第二に、角度が付された取付ルーメン537、637は、ガイド・ワイヤを操作することを支援し得る。例えば、カテーテルは、閉塞を貫通するために使用される場合、ガイド・ワイヤを特定の方向に向けるために回転され得る。
【0041】
好ましくは、同時係属米国出願第 号(再疎通)(本出願と同一日に出願された)に記載されている引張部材とばね要素などのように、図6Aおよび図6Bの実施形態のカテーテル・キャップ625は、振動発生手段を有する能動カテーテルと共に使用される。よって、図6Aおよび図6Bで示されるように、 カテーテル・キャップ625は、圧縮ばね550の遠端部に取り付けられ得る。圧縮ばね550の近端部は、カテーテル220に取り付けられ得る。図6Aおよび図6Bで示されるように、カテーテル・キャップ625は、圧縮ばね650を通して延びている近位部626をオプションとして有し得るものであり、これは、圧縮ばね650に対する軸アラインメントを提供する。可撓チューブ641は、その遠端部642でカテーテル・キャップ625の遠位端に取り付けられ得るものであり、取付ルーメン635、637を通して延び、その近端部でカテーテルの一部分に取り付けられ得る。図6Aおよび図6Bの実施形態で示されるように、可撓チューブ641は、カテーテル・キャップ625の近位部626を越えて延在し、かつその近端部でガイド・ワイヤ・ルーメン631の遠端部に取り付けられ得る。可撓チューブ641が図6Aおよび図6Bに示されるように能動カテーテルで使用される場合、ガイド・ワイヤ630に対して摩擦を提供するのに加えて、可撓チューブ641は、圧縮ばね650または他の振動発生手段が収縮または伸張するにつれてその内径を変化させ得るものであり、よって、取付ルーメン直径、およびガイド・ワイヤ630が摩擦面と出会う可能性を効果的に変化させる。
【0042】
可撓チューブ641の内径は、圧縮ばねが圧縮または伸張する際に変化する。特に、圧縮ばね650が圧縮状態にある時に、可撓チューブ641は、内側にしわがよりおよびガイド・ワイヤ630との接触が増すことによって、より小さい内径を有し、よって、ガイド・ワイヤ630に対して発生する摩擦を増やす。圧縮ばね650が圧縮された時の可撓チューブ641のしわ(または内側のつぶれ)は、可撓チューブ641がカテーテル・キャップ625の内壁によって外側から跳ね返るために起こり得る。圧縮ばね650の伸張は、可撓チューブ641を拡張し、また、より小さい内径を提供するため、ガイド・ワイヤ630に対して発生する摩擦を増やす。これと比較して、圧縮ばね650が弛緩状態にある時に、圧縮ばね650は、可撓チューブ641が収縮または伸張した時よりも、ガイド・ワイヤ630に対してより少ない摩擦を提供する。
【0043】
よって、本発明の装置は、以下を備え得る。血管閉塞を貫通するための装置であって、カテーテルと、ガイド・ワイヤと、前記カテーテルの一部分の内部に配されたガイド・ワイヤ取付機構とを備え、前記カテーテルに前記ガイド・ワイヤを結合するために、前記ガイド・ワイヤに対して前記カテーテルの前記部分が移動した際に、前記ガイド・ワイヤ取付機構は、前記ガイド・ワイヤに対して摩擦力を発生させることができる。一実施形態では、前記カテーテルの前記部分は、前記カテーテルの遠端部に配されたカテーテル・キャップである。一実施形態では、前記取付機構は、取付ルーメンと、2つ以上の加速ピストンとを備える。他の実施形態では、前記取付機構は、取付ルーメンと、ばねピストンとを備える。さらに他の実施形態では、前記取付機構は、湾曲取付ルーメンを備える。さらに他の実施形態では、前記取付機構は、可撓性ポリマーを備える高摩擦面を有する取付ルーメンを備える。本実施形態の一態様では、取付ルーメンは、前記カテーテル・キャップの長手方向軸に対して傾斜して設定される。さらに他の実施形態では、前記取付機構は、可撓チューブを有する取付ルーメンを備え、前記可撓チューブは、弛緩状態と比べて収縮時のより小さい直径および伸張時のより大きい直径を有する。本実施形態の一態様では、取付ルーメンは、前記カテーテル・キャップの長手方向軸に対して傾斜して設定される。
【0044】
一実施形態では、装置はさらに、振動発生部材(前記振動発生部材は、前記ガイド・ワイヤ取付機構を介して前記ガイド・ワイヤに操作可能に接続される)と、前記振動発生部材に操作可能に接続される振動エネルギー源とをさらに備え得るものであり、前記振動エネルギー源は、前記振動発生部材を介して前記カテーテルの遠端部で少なくとも一振動を発生させるようになされている。本実施形態の一態様では、前記振動発生部材は、ばね要素および引張部材と、水圧ルーメンおよび遠位のベローズと、水圧ルーメンおよび弾性膜と、ピエゾモータとから成るグループから選択される。
【0045】
装置は、さらに、特にターゲット閉塞の近くに多数の分岐がある場合に使用するために、閉塞を通したナビゲーションを支援するためのステアリング装置を備え得る。カテーテルは、装置またはデバイスの視覚化を支援する、および/またはデブリ、例えば吸引によって穴あけデブリを除去するための、追加の外部または内部の構成要素との使用に適合し得る。
【0046】
好ましくは、カテーテルは、ガイド・ワイヤのための1つ以上のルーメン、および振動発生部材の操作のための1つ以上のルーメンを有する。カテーテルはまた、ステアリングワイヤまたは他の機構、視覚化のための造影剤、IVUS(血管内超音波法)、遠位運動振幅および力を測定するための要素、閉塞からのデブリの除去などの他の特徴のために多様なルーメンを含み得る。
【0047】
本発明はさらに、血管の再疎通において使用するためにカテーテルにガイド・ワイヤを取り付ける方法を包含する。血管閉塞を貫通する際に使用するためにカテーテルにガイド・ワイヤを結合する方法は、取付機構および当該取付機構に通されたガイド・ワイヤを有するカテーテルを提供することと、前記カテーテルに前記ガイド・ワイヤを結合するのに十分な摩擦力を前記ガイド・ワイヤ上に発生させるために、前記ガイド・ワイヤに対して前記取付機構を移動することとを備え得る。一実施形態では、前記取付機構は、取付ルーメンと、2つ以上の加速ピストンとを備え、前記移動ステップは、前記ガイド・ワイヤに対して前記取付機構を加速させることを含む。他の実施形態では、前記取付機構は、取付ルーメンおよびばねピストンを備え、前記ばねピストンは、力の方向に前記ガイド・ワイヤの自由移動を容易にする形状を有し、前記移動ステップは、前記ガイド・ワイヤの自由移動に好ましくない方向および力で前記取付機構を移動することを含む。さらに他の実施形態では、前記取付機構は湾曲取付ルーメンを備え、前記移動ステップは、前記湾曲取付ルーメンの壁面から前記ガイド・ワイヤに対して摩擦を発生させるために前記取付機構を移動することを含む。一実施形態では、提供ステップはさらに、振動発生手段を提供することを含み得る、方法は、前記振動発生手段を介して振動力を発生させることをさらに含み、前記移動ステップは、前記摩擦の少なくとも一部分を発生させるために前記振動力を使用することを含む。
【0048】
本発明はさらに、血管閉塞の治療方法を包含する。方法は、閉塞を有する血管に、取付機構および当該取付機構に通されたガイド・ワイヤを有するカテーテルを挿入することと、前記ガイド・ワイヤ上で摩擦力を発生させるために、前記ガイド・ワイヤに対して前記取付機構を移動することによって、前記カテーテルに前記ガイド・ワイヤを結合させることと、前記結合されたガイド・ワイヤを使用して前記閉塞を貫通することとを備え得る。一実施形態では、前記カテーテルはさらに、振動発生手段を含み、前記方法は、前記振動発生手段を介して振動力を発生させることをさらに含み、前記結合ステップは、前記摩擦の少なくとも一部分を発生させるために前記振動力を使用することを含む。この実施形態の一態様では、前記振動力は、前記血管閉塞を貫通することができる振動部材を振動させ、前記貫通ステップは、前記結合されたガイド・ワイヤと交互に前記振動力を使用することを含む。方法はさらに、前記カテーテルに対する前記ガイド・ワイヤの位置を周期的に調整することを含み得るものであり、よって、前記ガイド・ワイヤは、定義された量だけ前記カテーテルの遠位端から延在する。前記定義された量は、約1mm〜20mmの間、または約5mm〜15mmの間、または約5mm〜10mmの間、または0.1mm〜約5mmの間であり得る。
【0049】
実施形態によって本明細書において特に示され説明された内容について、本発明の精神または範囲から逸することなく、多くの変更、追加、修正、及びその他の適用がなし得ることが、当業者によって理解されるであろう。従って、以下の請求項によって定義される本発明の範囲は、すべての予測可能な変更、追加、修正又は適用を含むことが意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管閉塞を貫通するための装置であって、
カテーテルと、
ガイド・ワイヤと、
前記カテーテルの一部分の内部に配されたガイド・ワイヤ取付機構と、
を備え、
前記カテーテルに前記ガイド・ワイヤを結合するために、前記ガイド・ワイヤに対して前記カテーテルの前記一部分が移動した際に、前記ガイド・ワイヤ取付機構は、前記ガイド・ワイヤに対して摩擦力を発生させる、装置。
【請求項2】
前記カテーテルの前記一部分が、前記カテーテルの遠端部に配されたカテーテル・キャップである、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記取付機構が、取付ルーメンと、2つ以上の加速ピストンとを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記取付機構が、取付ルーメンと、ばねピストンとを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記取付機構が、湾曲取付ルーメンを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記取付機構が、可撓性の高摩擦ポリマーを含む高摩擦面を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記取付機構が、遠端部で前記カテーテル・キャップの遠位端に取り付けられるとともに、近端部で前記カテーテルの一部に取り付けられた可撓チューブを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記ガイド・ワイヤ取付機構を介して前記ガイド・ワイヤに操作可能に接続された振動発生部材と、
前記振動発生部材に操作可能に接続された振動エネルギー源と、
をさらに備える装置であって、
前記振動エネルギー源は、前記振動発生部材を介して前記カテーテルの遠端部で少なくとも一振動を発生させるようになされた、請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記振動発生部材は、ばね要素および引張部材と、水圧ルーメンおよび遠位のベローズと、水圧ルーメンおよび弾性膜と、ピエゾモータとから成るグループから選択される、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
血管閉塞を貫通する際に使用するためにカテーテルにガイド・ワイヤを結合する方法であって、
取付機構および当該取付機構に通されたガイド・ワイヤを有するカテーテルを提供することと、
前記カテーテルに前記ガイド・ワイヤを結合するのに十分な摩擦力を前記ガイド・ワイヤ上に発生させるために、前記ガイド・ワイヤに対して前記取付機構を移動させることと、
を含む、方法。
【請求項11】
前記取付機構は、取付ルーメンと、2つ以上の加速ピストンとを備え、前記移動ステップは、前記ガイド・ワイヤに対して前記取付機構を加速させることを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記取付機構が、取付ルーメンと、ばねピストンとを備え、前記ばねピストンは、力の方向に前記ガイド・ワイヤの自由移動を容易にする形状を有し、前記移動ステップは、前記ガイド・ワイヤの自由移動に好ましくない方向および力で前記取付機構を移動することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記取付機構は、湾曲取付ルーメンを備え、前記移動ステップは、前記湾曲取付ルーメンの壁面から前記ガイド・ワイヤに対して摩擦を発生させるために前記取付機構を移動することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記提供ステップが、振動発生手段を提供することを含み、前記方法が、前記振動発生手段を介して振動力を発生させることをさらに含み、前記移動ステップは、前記摩擦の少なくとも一部を発生させるために前記振動力を使用することを含む、請求項10ないし請求項13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
血管閉塞を治療する方法であって、
閉塞を有する血管に、取付機構および当該取付機構に通されたガイド・ワイヤを有するカテーテルを挿入することと、
前記ガイド・ワイヤ上に摩擦力を発生させるために、前記ガイド・ワイヤに対して前記取付機構を移動することによって前記カテーテルに前記ガイド・ワイヤを結合することと、
前記結合されたガイド・ワイヤを使用して前記閉塞を貫通することと、
を含む、方法。
【請求項16】
前記カテーテルは、振動発生手段をさらに含み、前記方法は、前記振動発生手段を介して振動力を発生させることをさらに含み、前記結合ステップは、前記摩擦の少なくとも一部を発生させるために前記振動力を使用することを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記振動力は、前記血管閉塞を貫通することができる振動部材を振動させ、前記貫通ステップは、前記結合されたガイド・ワイヤと交互に前記振動力を使用することを含む、請求項16に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【公表番号】特表2013−518690(P2013−518690A)
【公表日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−552486(P2012−552486)
【出願日】平成23年2月8日(2011.2.8)
【国際出願番号】PCT/IB2011/000384
【国際公開番号】WO2011/098910
【国際公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【出願人】(510048211)オシロン リミテッド (2)
【Fターム(参考)】