説明

ガスエンジンのフューエルレール

【課題】トップフィード型のインジェクタを下側から嵌挿して使用するフューエルレールについて、その燃料供給通路内に液体燃料が混入または発生した場合に、液体燃料がインジェクタから噴射されるのを防止する。
【解決手段】燃料供給通路10を有する管状部材の下面側に長手方向所定間隔で複数開口したインジェクタ接続孔13に、トップフィード型のインジェクタ3を各々装着して使用するものであって所定圧力のガス燃料を複数のインジェクタ3を介してガスエンジンの各気筒に均等に分配して供給するフューエルレール1において、ガスエンジンに取り付けられたときに、燃料供給通路10内で最も低い底部よりも所定レベル以上高い位置にインジェクタ3への燃料導入口が開口するものとして、液体燃料が燃料供給通路10内で所定レベルまで溜まった場合でも、液体燃料がそのままインジェクタ3内に流入することを回避する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスエンジンのフューエルレールに関し、殊に、所定圧力に調整されたガス燃料を、長手方向所定間隔で複数配置したインジェクタを介してガスエンジンの各気筒に均等に分配して供給するために用いられるガスエンジンのフューエルレールに関する。
【背景技術】
【0002】
ガスエンジンにLPG(液化石油ガス)等のガス燃料を供給する燃料供給システムにおいて、管状部材からなるフューエルレール(フューエルディリバリパイプ)の長手方向に所定間隔で複数設けたインジェクタ接続孔に、そのインレットチューブ側を嵌合させることによりガス燃料を噴射するインジェクタが装着される。また、各インジェクタの噴射口側は、ガスエンジン側吸気マニホルドのインジェクタ嵌合部に嵌合・固定される。
【0003】
そして、このような燃料供給システムは、例えば特開平10−18915号公報に記載され、図5に示すようにフューエルレール5は、内部に燃料供給通路50を有した管状部材からなり、その下面側に開口するように下方から穿設される複数のインジェクタ接続孔53に、トップフィード型のインジェクタ3が上端側(インレットチューブ31側)を各々嵌挿され、燃料供給通路50の中心軸線にその中心軸線が直交した状態で各々固定されるようになっている。
【0004】
しかしながら、このように、トップフィード型のインジェクタ3が下側から嵌挿されてその中心軸線が燃料供給通路50の中心軸線に直交した状態で装着され、燃料供給通路50内の最も低い底部でインジェクタ3への燃料導入口が連通するような構成のフューエルレール5においては、燃料供給通路50内に少量の液体燃料が混入したり内部の気体燃料が液化したりした場合でも、液体燃料がそのままインジェクタ3のインレットチューブ31の開口部から吸い込まれる。そのため、ガスエンジンに供給する混合気の過濃を生じて運転性能の低下を招きやすくなり、最悪の場合はエンジンストールに陥ってしまうことになる。
【特許文献1】特開平10−18915号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記のような問題点を解決しようとするものであり、トップフィード型のインジェクタを下側から嵌挿して使用するフューエルレールについて、その燃料供給通路内に液体燃料が混入または発生した場合に、液体燃料がインジェクタから噴射されるのを防止できるようにすること課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明は、内部に燃料供給通路を有する管状部材の下面側に長手方向所定間隔で複数開口したインジェクタ接続孔にトップフィード型のインジェクタを各々装着し、前記燃料供給通路に導入した所定圧力のガス燃料を、前記複数のインジェクタを介してガスエンジンの各気筒に均等に分配して供給するガスエンジンのフューエルレールであって、前記ガスエンジンに取り付けられたときに、前記燃料供給通路内の最も低い底部よりも所定レベル以上高い位置に前記インジェクタへの燃料導入口が開口しており、燃料供給通路内に液体燃料が前記燃料供給通路内で前記所定レベルまで溜まった場合に、該液体燃料がそのまま前記インジェクタ内に流入することを回避することを特徴とする。
【0007】
インジェクタへの燃料導入口が燃料供給通路内の最も低い位置で開口する従来例においては、燃料供給通路に僅かな液体燃料が溜まった場合でもそのままインジェクタから噴射されていたのに対し、このように燃料供給通路内の最も低い部分とインジェクタへの燃料導入口との間に所定レベル以上の高低差を設けたことにより、液体燃料が燃料供給通路内で所定レベルまで溜まった場合でも、インジェクタから噴射されるトラブルを防止しやすいものとなる。
【0008】
また、この場合、そのインジェクタへの燃料導入口の開口位置を、少なくとも燃料供給通路内の中間レベルと同等以上の高さとすれば、通常の使用状況において液体燃料が燃料供給通路に流入した場合または内部で液体燃料が発生した場合の殆どにおいて、インジェクタに液体燃料が流入することを有効に回避することができる。
【0009】
さらに、上述したガスエンジンのフューエルレールにおいて、そのインジェクタ接続孔を、燃料供給通路内に所定高さで上向きに突出した周壁の内側に形成したものとし、この周壁の上端がインジェクタ上端の開口部と同等以上の高さとされてインジェクタへの燃料導入口を構成しているものとすれば、液体燃料がインジェクタ内により流入しにくいものとなる。
【0010】
さらにまた、上述したガスエンジンのフューエルレールにおいて、水平方向に直線的に延びた燃料供給通路の幹空間から側方に分岐する枝空間を形成する突出部を、管状部材の長手方向所定間隔で周方向同一側に複数延設したものとし、この突出部の下面側にインジェクタ接続孔が各々開口させ、幹空間の中心軸線に対し枝空間が所定角度傾斜して持ち上げられた状態でエンジンに取り付けられるものとすれば、インジェクタへの燃料導入口と燃料供給通路底部側との高低差を充分に確保しやすい。
【発明の効果】
【0011】
燃料供給通路内の最も低い部分とインジェクタへの燃料導入口との間に所定レベル以上の高低差を設けた本発明によると、その燃料供給通路内に液体燃料が混入または発生した場合でも、液体燃料がインジェクタから噴射されるのを防止することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0013】
図1は、本発明における第1の実施の形態のフューエルレール(フューエルディリバリパイプ)1に、複数のトップフィード型のインジェクタ3を装着した状態を示す部分縦断面図である。フューエルレール1は硬質の管状部材からなり、基端側に図示しないレギュレータから延設された燃料供給配管が接続され、内部に直線的に形成された燃料供給通路10内で、所定圧力に調整されたガス燃料を導入して保持するようになっている。
【0014】
また、管状構造を有するフューエルレール1は、その下面側に長手方向所定間隔で下方から穿設されてなる複数のインジェクタ接続孔13に、各インジェクタ3がインレットチューブ31上端側を上向きにして下側から嵌挿されて、その中心軸線が燃料供給通路10の中心軸線に直交する位置に装着され、燃料供給通路10からインレットチューブ31開口部を経て燃料噴射口32まで連通するようになっている。
【0015】
そして、このフューエルレール1がガスエンジン側(吸気マニホルド)に取り付けられた状態で、インジェクタ3への燃料導入口を構成するインレットチューブ31開口部が、燃料供給通路10内の最も低い部分(底部)よりも所定レベル以上高い位置で開口しており、燃料供給通路10内に導入または発生して溜まった液体燃料が、その高低差によりそのままインジェクタ3内に流入するのを回避可能とすることができる。
【0016】
また、本意実施の形態のフューエルレール1においては、そのインジェクタ接続孔13が、燃料供給通路10の中間レベル(高さ)まで上向きに突出した周壁11の内側に形成されており、インジェクタ3がインレットチューブ31上端面を周壁11の上端面と略一致する位置まで嵌挿されて、インジェクタ3への燃料導入口が燃料供給通路10内の中間レベルと同等以上の高さを確保している。即ち、インレットチューブ31上端面と同等の高さを有する周壁11の上端側も、インジェクタ3への燃料導入口を構成することになるため、燃料供給通路10内に溜まった液体燃料がインジェクタ3内に一層流入しにくい構成となっている。
【0017】
図2は、本実施の形態のフューエルレール1をエンジン側(吸気マニホルド)に取り付けた状態で図1のX−X線に沿う断面の状態を示す部分図である。このように、インジェクタ3が垂直から約45度傾いた状態で取り付けられた場合でも、インジェクタ3への燃料導入口であるインレットチューブ31開口部は、燃料供給通路10内のほぼ中間レベルに位置しており、燃料供給通路10の底部側に溜まった液体燃料がインジェクタ3内に流入しにくい状態を維持している。
【0018】
本実施の形態のフューエルレール1を実際に使用した場合、燃料供給通路10内に気化不充分の液体燃料が流入、または気化燃料が再度液化して液体燃料となった状況において、液体燃料が燃料供給通路10内の中間レベルの高さ直前まで溜まった場合でも、その液体燃料の液面レベルよりも周壁11上端及びインレットチューブ31開口部が高い位置となることから、液体燃料がインジェクタへの燃料導入口まで達しないため、インジェクタ3から液体のまま噴射されることを有効に防止することができる。
【0019】
図3は、本発明における第2の実施の形態のフューエルレール2であって、インジェクタ3を装着した状態を示しており、図3(A)はその部分平面図、図3(B)はその部分正面図を示している。本実施の形態においては、水平方向に延びた燃料供給通路20の幹空間201から、側方に平面視半円状に分岐して延設した枝空間202を形成する突出部25が、管状部材の周方向同一側に所定間隔で複数設けられており、その突出部25の下面側にはインジェクタ接続孔23が各々開口し、燃料供給通路20の幹空間201の中心軸線から所定幅のオフセットを有してインジェクタ3が装着されている。
【0020】
各インジェクタ接続孔23は、前述した第1の実施の形態と同様に燃料供給通路20内の中間レベルと同等の高さを有する周壁21の内側に形成されており、各インジェクタ3がそのインレットチューブ31上端面を周壁21の上端面と一致する位置まで嵌挿されて、インジェクタ3への燃料導入口が燃料供給通路20の中間レベルと同等以上の高さを確保しており、第1の実施の形態と同様の作用・効果を発揮するようになっている。
【0021】
さらに、本実施の形態においては、フューエルレール2をエンジン側(吸気マニホルド)に取り付けた状態で図3(B)のY−Y線に沿う面による断面の状態を表す図4に示すように、を燃料供給通路20の幹空間201側が下となるよう枝空間202を所定角度傾斜した状態で持ち上げて取り付けた場合に、インジェクタ3が幹空間201の中心軸線から側方にオフセット配置されたことにより、インジェクタ3への燃料導入口と液体燃料が溜まる底部側との高低差が、より大きく確保されるようになっている。
【0022】
従って、図4に示すように、インジェクタ3が垂直から約45度傾斜した状態でフューエルレール2が吸気マニホルドに取り付けられた状況において、第1の実施の形態のフューエルレール1で対応可能な液体燃料の量よりも多量の液体燃料が溜まった場合でも、これがインジェクタ3に流入することを容易に回避できるものとなり、インジェクタ3から液体燃料が噴射されるトラブルをより有効に防止できるものとなる。
【0023】
また、本実施の形態のフューエルレール2は、このようにインジェクタ3を傾斜した状態でガスエンジンに取り付ける態様においては、インジェクタ3への燃料導入口の燃料供給通路20内における高さが図3(B)のように高い位置でなくても、インジェクタ3のオフセット配置による高低差で液体燃料の流入防止機能を発揮することができる。
【0024】
尚、上述した第1の実施の形態及び第2の実施の形態に共通して、燃料供給通路に溜まった液体燃料は、ガスエンジン本体からの放射熱又は伝導熱により順次気化されることから、時間の経過とともに液体燃料の貯留量が増加しつづけることはなく、いずれはガス燃料として消費されることは言うまでもない。
【0025】
以上、述べたように、トップフィード型のインジェクタを下側から嵌挿して装着するフューエルレールについて、本発明により、その燃料供給通路内に液体燃料が混入または発生した場合でも、液体燃料がインジェクタから噴射されることが有効に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1の実施の形態を示す部分縦断面図。
【図2】図1のフューエルレールを吸気マニホルドに取り付けた状態における図1のX−X線に沿う面による部分縦断面図。
【図3】(A)は本発明の第2の実施の形態を示す部分平面図、(B)は(A)のフューエルレールの部分正面図。
【図4】図3のフューエルレールを吸気マニホルドに取り付けた状態における図3(B)のY−Y線に沿う面による部分縦断面図。
【図5】従来例を示す部分縦断面図。
【図6】図5のフューエルレールを吸気マニホルドに取り付けた状態における図5のZ−Z線に沿う面による部分縦断面図。
【符号の説明】
【0027】
1,2 フューエルレール、3 インジェクタ、10,20 燃料供給通路、11,21 周壁、13,23 インジェクタ接続孔、25 突出部、31 インレットチューブ、32 噴射口、201 幹空間、202 枝空間


【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に燃料供給通路を有する管状部材の下面側に長手方向所定間隔で複数開口したインジェクタ接続孔にトップフィード型のインジェクタを各々装着し、前記燃料供給通路に導入した所定圧力のガス燃料を、前記複数のインジェクタを介してガスエンジンの各気筒に均等に分配して供給するガスエンジンのフューエルレールであって、前記ガスエンジンに取り付けられたときに、前記燃料供給通路内の最も低い底部よりも所定レベル以上高い位置に前記インジェクタへの燃料導入口が開口しており、燃料供給通路内に液体燃料が前記燃料供給通路内で前記所定レベルまで溜まった場合に、該液体燃料がそのまま前記インジェクタ内に流入することを回避することを特徴とするガスエンジンのフューエルレール。
【請求項2】
前記インジェクタへの燃料導入口の開口位置が、少なくとも前記燃料供給通路内の中間レベルと同等以上の高さであることを特徴とする請求項1に記載したガスエンジンのフューエルレール。
【請求項3】
前記インジェクタ接続孔が、前記燃料供給通路内に所定高さで上向きに突出した周壁の内側に形成され、該周壁の上端が前記インジェクタ上端の開口部と同等以上の高さとされて前記インジェクタへの燃料導入口を構成していることを特徴とする請求項1または2に記載したガスエンジンのフューエルレール。
【請求項4】
前記管状部材内部で水平方向に直線的に延びた前記燃料供給通路の幹空間から側方に分岐する枝空間を形成する突出部が、前記管状部材の長手方向所定間隔で周方向同一側に複数延設され、該突出部の下面側には前記インジェクタ接続孔が各々開口しており、前記幹空間の中心軸線に対し前記枝空間が所定角度傾斜して持ち上げられた状態で前記ガスエンジンに取り付けられることを特徴とする請求項1,2または3に記載したガスエンジンのフューエルレール。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−281212(P2009−281212A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−132634(P2008−132634)
【出願日】平成20年5月21日(2008.5.21)
【出願人】(000153122)株式会社ニッキ (296)
【Fターム(参考)】