説明

ガスケットの取付構造

【課題】ガスケットのシール性の低下を抑制できるガスケットの取付構造を提供すること。
【解決手段】複数の分岐部10を持つインテークマニホールド1と、各分岐部10の外周側にそれぞれ取り付けられる複数のガスケット本体部20と隣接するガスケット本体部20同士を連結する連結部50とを持つガスケット2と、の取付構造において、ガスケット本体部20を収容する本体収容部30と連結部50を収容する連結収容部40とをインテークマニホールド1に形成し、外側リブ70および内側リブ80を本体収容部30に収容し、連結収容部40のなかで少なくとも本体収容部30に隣接する部分の溝幅を、外側リブ70および内側リブ80を含むガスケット本体部20の厚さc以下にする。ガスケット本体部20が連結収容部40に入り込み難くなり、シール性の低下を抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インテークマニホールドとシリンダブロックとの隙間をガスケットによってシールするための、ガスケットの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のインテークマニホールドは、スロットルボデーとシリンダヘッドとを接続し、空気と燃料との混合気をシリンダに供給する部材である。インテークマニホールドにおけるシリンダヘッド側の端部は、複数のシリンダヘッドに接続するため、複数の分岐部に分岐している。インテークマニホールドとシリンダヘッドとの間には、両者を気密にシールするためのガスケットが介在する。ガスケットは、ゴムなどの弾性材料からなり、一般には、各分岐部の外周側にそれぞれ取り付けられる。
【0003】
ところで、インテークマニホールドの各分岐部にそれぞれガスケットを取り付ける作業や、数多くのガスケットを管理する作業は非常に煩雑である。このため、複数のガスケットを一体化して一つの部材として取り扱う技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1に紹介されているガスケットの取付構造におけるガスケットは、環状をなす複数のガスケット本体部を持つ。各ガスケット本体部は非同軸的に配列している。また、各ガスケット本体部は連結部によって連結され一体化されている。インテークマニホールドは、各分岐部の外周側にそれぞれ形成されている複数の本体収容部と、隣接する本体収容部同士を連結する複数の連結収容部と、を持つ。ガスケット本体部の軸方向の一端部が本体収容部に収容され、連結部が連結収容部に収容されることで、ガスケットはインテークマニホールドに取り付けられる。このとき、ガスケット本体部の軸方向の他端部は本体収容部の外部に突出している。したがって、インテークマニホールドとシリンダブロックとが取り付けられると、ガスケット本体部の軸方向の他端部がシリンダブロックに圧接し、インテークマニホールドとシリンダブロックとの隙間をシールする。
【0005】
しかしこの種のガスケットの取付構造では、長期間使用するとガスケットのシール性が低下する問題がある。このため、ガスケットのシール性の低下を抑制し得るガスケットの取付構造の開発が求められている。
【特許文献1】特開2000−46193号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
インテークマニホールドとシリンダブロックとの間に介在するガスケットは、燃料蒸気に曝されるとともに比較的高温の環境で使用される。このためガスケットを長期間使用すると、燃料膨潤、熱膨張、材料劣化などして、ガスケットが変形する場合がある。
【0007】
本発明の発明者らは、ガスケットのなかでシール性の低下が生じる部位を特定するために、ガスケットの取付構造を強制的にガス漏れさせて、ガス漏れが発生する様子を観察した。詳しくは、透明樹脂製のインテークマニホールドを製作し、このインテークマニホールド取り付けたガスケットを劣化させ、このインテークマニホールドに過大な流量(0.1〜0.5MPa)で色つきの水を流通させた。
【0008】
その結果、ガスケット本体部と連結部との継ぎ目部分が連結収容部に入り込むと、液漏れが発生することを見出した。これは、この継ぎ目部分が連結収容部に入り込むことで、シリンダブロックに対するガスケットの面圧が低下し、ガスケットのシール性が低下するためだと考えられた。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、ガスケットのシール性の低下を抑制し得るガスケットの取付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するガスケットの取付構造は、樹脂材料からなり、筒状をなす複数の分岐部を持つインテークマニホールドと、弾性材料からなり、環状をなし各分岐部の外周側にそれぞれ取り付けられる複数のガスケット本体部と、隣接するガスケット本体部同士を連結する連結部と、を持つガスケットと、の取付構造であって、インテークマニホールドは、環溝状をなし分岐部の外周側に形成され対応するガスケット本体部の軸方向の一端部を収容する複数の本体収容部と、溝状をなし隣接する本体収容部同士を連結し対応する連結部の少なくとも一部を収容する連結収容部と、を持ち、ガスケット本体部は、環状をなす基部と、基部の外周面から基部の径方向外側に突起する少なくとも一つの外側リブと、基部の内周面から基部の径方向内側に突起する少なくとも一つの内側リブと、を持ち、外側リブおよび内側リブは、本体収容部に収容され、連結収容部のなかで少なくとも本体収容部に隣接する部分の溝幅は、外側リブおよび内側リブを含むガスケット本体部の厚さ以下であることを特徴とする。
【0011】
本発明のガスケットの取付構造は、下記の(1)〜(2)の一方を備えるのが好ましい。(1)〜(2)の両方を備えるのがより好ましい。
【0012】
(1)上記外側リブは、上記連結部に隣接する位置にまで延びている。
【0013】
(2)上記ガスケット本体部は、複数の上記外側リブを持ち、複数の上記外側リブは、上記ガスケット本体部の軸方向に離間して配置されている。
【発明の効果】
【0014】
本発明のガスケットの取付構造によると、連結収容部のなかで少なくとも本体収容部に隣接する部分の溝幅(以下、連結収容部の境界溝幅と呼ぶ)を、外側リブおよび内側リブを含むガスケット本体部の厚さ以下にすることで、ガスケット本体部が連結収容部に入り込み難くなる。このため、ガスケットのシール性の低下を抑制できる。
【0015】
また、ガスケット本体部に外側リブと内側リブとを設けることで、ガスケット本体部の径方向内側および外側への倒れ込みを抑制できる。このことによっても、ガスケット本体部が連結収容部に入り込み難くなる。また、ガスケット本体部の倒れ込みを抑制することで、ガスケット本体部によって分岐部の外周側全体を信頼性高くシールできる。このことによっても、本発明のガスケットの取付構造は、ガスケットのシール性の低下を抑制できる。
【0016】
上記(1)を備える本発明のガスケットの取付構造は、ガスケット本体部が連結収容部に入り込む際に、外側リブが連結収容部の溝壁に干渉する。このため、ガスケット本体部がより一層連結収容部に入り込み難くなり、ガスケットのシール性の低下を抑制できる。
【0017】
上記(2)を備える本発明のガスケットの取付構造は、ガスケット本体部が連結収容部により一層入り込み難くなるため、ガス漏れをさらに信頼性高く抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明のガスケットの取付構造を例を挙げて説明する。
【0019】
(実施例1)
実施例1のガスケットの取付構造は、上記(1)〜(2)を備える。実施例1のガスケットの取付構造を図略のシリンダブロック側から見た様子を模式的に表す上面図を図1に示す。実施例1のガスケットの取付構造におけるインテークマニホールドをシリンダブロック側から見た様子を模式的に表す上面図を図2に示す。実施例1のガスケットの取付構造におけるガスケットを模式的に表す上面図を図3に示す。図1の要部拡大図を図4に示す。実施例1のガスケットの取付構造を図1中A−A位置で切断した様子を模式的に表す断面図を図5に示す。以下、上、下とは図5に示す上、下を指し、軸方向とは図5に示す上下方向を指す。
【0020】
実施例1のガスケットの取付構造は、図2に示すインテークマニホールド1と、図3に示すガスケット2と、を持つ。
【0021】
図2に示す様に、インテークマニホールド1は、4つの分岐部10(第1分岐部11、第2分岐部12、第3分岐部13、第4分岐部14)と、各分岐部10のシリンダブロック側の端部を連結するフランジ部15とを持つ。インテークマニホールド1は樹脂材料の一種であるポリアミド系樹脂からなる。第1分岐部11〜第4分岐部14は、それぞれ、略楕円筒状をなし、非同軸的に配列している。詳しくは、各分岐部10は第1分岐部11、第2分岐部12、第3分岐部13、第4分岐部14の順に配列し、隣接する分岐部10同士は離間している。
【0022】
フランジ部15には、4つの本体収容部30(第1本体収容部31、第2本体収容部32、第3本体収容部33、第4本体収容部34)と、5つの連結収容部40(第1連結収容部41、第2連結収容部42、第3連結収容部43、第4連結収容部44、第5連結収容部45)とが形成されている。第1本体収容部31〜第4本体収容部34は略同形の楕円環溝状をなす。第1本体収容部31は第1分岐部11の外周側に形成され、第1分岐部11を取り囲んでいる。第2本体収容部32は第2分岐部12の外周側に形成され、第2分岐部12を取り囲んでいる。第3本体収容部33は第3分岐部13の外周側に形成され、第3分岐部13を取り囲んでいる。第4本体収容部34は第4分岐部14の外周側に形成され、第4分岐部14を取り囲んでいる。
【0023】
第1連結収容部41〜第5連結収容部45はそれぞれ溝状をなす。第1連結収容部41は第1本体収容部31と第2本体収容部32とを連結している。第2連結収容部42は第2本体収容部32と第3本体収容部33とを連結している。第3連結収容部43は第3本体収容部33と第4本体収容部34とを連結している。第4連結収容部44の一端部は第1本体収容部31に連結しており、他端部は何れの本体収容部30にも連結していない。第5連結収容部45の一端部は第4本体収容部34に連結しており、他端部は何れの本体収容部30にも連結していない。
【0024】
第1本体収容部31〜第4本体収容部34の溝幅は(図4中幅a)約3.5mmである。第1連結収容部41〜第3連結収容部43における本体収容部30に隣接する部分の溝幅(すなわち境界溝幅、図4中幅b)は、第1連結収容部41〜第3連結収容部43における他の部分の溝幅よりも小さい。第1連結収容部41〜第3連結収容部43の境界溝幅bは約2.0mmである。
【0025】
図3に示すように、ガスケット2は、4つのガスケット本体部20(第1ガスケット本体部21、第2ガスケット本体部22、第3ガスケット本体部23、第4ガスケット本体部24)と、5つの連結部50(第1連結部51、第2連結部52、第3連結部53、第4連結部54、第5連結部55)とを持つ。ガスケット2は、弾性材料の一種であるH−NBRからなる。
【0026】
第1ガスケット本体部21〜第4ガスケット本体部24は、それぞれ、略楕円環状をなし、非同軸的に配列している。詳しくは、各ガスケット本体部20は、第1ガスケット本体部21、第2ガスケット本体部22、第3ガスケット本体部23、第4ガスケット本体部24の順に配列し、隣接するガスケット本体部20同士は離間している。
【0027】
第1連結部51〜第5連結部55は、略同形の短冊状をなす。第1連結部51は第1ガスケット本体部21と第2ガスケット本体部22とを連結している。第2連結部52は第2ガスケット本体部22と第3ガスケット本体部23とを連結している。第3連結部53は第3ガスケット本体部23と第4ガスケット本体部24とを連結している。第4連結部54の一端部は第1ガスケット本体部21に連結しており、他端部は何れのガスケット本体部20にも連結していない。第5連結部55の一端部は第4ガスケット本体部24に連結しており、他端部は何れのガスケット本体部20にも連結していない。
【0028】
第1ガスケット本体部21〜第4ガスケット本体部24は、それぞれ略同形状である。各ガスケット本体部20は、図5に示すように、基部60と、2つの外側リブ70(第1外側リブ71、第2外側リブ72)と、2つの内側リブ80(第1内側リブ81、第2内側リブ82)とを持つ。
【0029】
基部60は楕円環状をなす。基部60の上端部と下端部とはそれぞれ先細りのリップ状をなす。第1外側リブ71および第2外側リブ72は基部60の外周面から基部60の径方向外側に突起する。第1外側リブ71は第2外側リブ72よりも上側に配置され、第1外側リブ71と第2外側リブ72とは軸方向に離間している。また、第1外側リブ71と第2外側リブ72とは、ガスケット本体部20の軸方向に対象に配置されている。第1外側リブ71および第2外側リブ72は、基部60の外周に沿った楕円弧状をなし、連結部50に隣接する位置にまで延びている。
【0030】
第1内側リブ81および第2内側リブ82は基部60の内周面から基部60の径方向内側に突起する。第1内側リブ81は第2内側リブ82よりも上側に配置され、第1内側リブ81と第2内側リブ82とは軸方向に離間している。また、第内外側リブ70と第2内側リブ82とは、ガスケット本体部20の軸方向に対象に配置されている。第1内側リブ81および第2内側リブ82は、基部60の外周に沿った楕円弧状をなし、基部60の全周に形成されている。
【0031】
図5に示すように、第1外側リブ71と第1内側リブ81との軸方向位置(ガスケット本体部20の軸方向に対する位置)はほぼ同じである。第1外側リブ71と第1内側リブ81との軸方向位置もまたほぼ同じである。基部60の厚さ(図4中幅d)は約2.7mmである。第1外側リブ71および第2外側リブ72の突出高さは約0.4mmである。第1内側リブ81および第2内側リブ82の突出高さは約0.4mmである。各ガスケット本体部20の厚さ、すなわち、第1外側リブ71、第2外側リブ72、第1内側リブ81および第2内側リブ82を含むガスケット本体部20の厚さ(図4中幅c)は、約3.5mmである。
【0032】
実施例1のガスケットの取付構造におけるガスケット2は、図1に示すように、各ガスケット本体部20が各本体収容部30に収容され、各連結部50が各連結収容部40に収容されて、インテークマニホールド1に取り付けられている。
【0033】
詳しくは、第1ガスケット本体部21の下側部分(図5に示す下側、シリンダブロックと逆側の部分)は第1本体収容部31に収容されている。第2ガスケット本体部22の下側部分は第2本体収容部32に収容されている。第3ガスケット本体部23の下側部分は第3本体収容部33に収容されている。第4ガスケット本体部24の下側部分は第4本体収容部34に収容されている。図5に示すように、各ガスケット本体部20における基部60の下端部(リップ状をなす部分)は、それぞれ対応する本体収容部30の底溝壁35に当接している。また、各ガスケット本体部20の第1外側リブ71、第2外側リブ72、第1内側リブ81、および、第2内側リブ82は、それぞれ対応する本体収容部30に収容されている。第1外側リブ71および第2外側リブ72の突出端部は本体収容部30の外周溝壁36に当接し、第1内側リブ81および第2内側リブ82の突出端部は本体収容部30の内周溝壁37に当接している。
【0034】
第1連結部51の下側部分は第1連結収容部41に収容されている。第2連結部52の下側部分は第2連結収容部42に収容されている。第3連結部53の下側部分は第3連結収容部43に収容されている。第4連結部54の下側部分は第4連結収容部44に収容されている。第5連結部55の下側部分は第5連結収容部45に収容されている。
【0035】
実施例1のガスケットの取付構造におけるガスケット2は、従来のガスケット2と同様に、長期間使用するとガスケット本体部20が変形して連結収容部40に入り込もうとする。このときガスケット本体部20は、折り畳み変形しつつ連結収容部40方向に移動する。
【0036】
しかし、実施例1のガスケットの取付構造における各連結収容部40の境界溝幅bは、それぞれ対応する基部60の厚さd以下である。このため、実施例1のガスケットの取付構造におけるガスケット本体部20は、連結収容部40に入り込まない。したがって実施例1のガスケットの取付構造は、長期間使用した場合にもガスケット本体部20がシリンダブロックに十分な面圧および面積で当接する。このため、実施例1のガスケットの取付構造によると、ガスケット2のシール性の低下を抑制できる。
【0037】
また、各ガスケット本体部20の第1外側リブ71および第2外側リブ72は、対応する本体収容部30の外周溝壁36に当接している。このため各ガスケット本体部20は外側方向に倒れ込み難い。同様に、各ガスケット本体部20の第1内側リブ81および第2内側リブ82は、対応する本体収容部30の内周溝壁37に当接している。このため各ガスケット本体部20は内側方向に倒れ込み難い。このため、各ガスケット本体部20とシリンダブロックとの面圧および当接面積を十分に確保でき、ガスケット2のシール性の低下を抑制できる。さらに、ガスケット本体部20の倒れ込みを抑制することで、ガスケット本体部20がより一層連結収容部40に入り込み難くなる。
【0038】
さらに、実施例1のガスケットの取付構造における第1外側リブ71および第2外側リブ72は、連結部50に隣接する位置にまで延びている。このため、ガスケット本体部20が連結収容部40に入り込む際には、外側リブ70が連結収容部40の溝壁に干渉する。したがって、実施例1のガスケットの取付構造におけるガスケット本体部20は、連結収容部40にさらに入り込み難い。
【0039】
さらに、第1外側リブ71、第2外側リブ72、第1内側リブ81および第2内側リブ82は、それぞれ本体収容部30に収容され、本体収容部30の溝壁に当接している。このため、ガスケット本体部20は本体収容部30内に強固に固定され、連結収容部40に入り込み難い。このことによっても、実施例1のガスケットの取付構造によるとガスケット2のシール性の低下を抑制できる。
【0040】
さらに、第1外側リブ71と第2外側リブ72とが軸方向に離間するとともに軸方向に対象に配置され、第1内側リブ81と第2内側リブ82とが軸方向に離間するとともに軸方向に対象に配置されているため、ガスケット本体部20はその軸方向に安定に固定される。このため、ガスケット本体部20は連結収容部40に入り込み難い。
【0041】
実施例1のガスケットの取付構造は、これらの協働によって、ガスケット2のシール性の低下を信頼性高く抑制できる。
【0042】
なお、実施例1のガスケットの取付構造におけるガスケット2はH−NBR(ゴム)製であり、インテークマニホールド1はナイロン(樹脂)製であるが、本発明のガスケットの取付構造におけるガスケット2およびインテークマニホールド1の材料はこれに限定されない。ガスケット2の材料としては、例えばNBR、FVMQ、FKM等を用いても良い。インテークマニホールド1の材料としては、例えばPP、PA、PPA、PPS等を用いても良い。何れの場合にも、弾性材料からなるガスケット2は、インテークマニホールド1とシリンダブロックとの隙間を気密にシールできる。なお、樹脂材料からなるインテークマニホールド1は、ガスケット2を傷つけ難い利点がある。
【0043】
なお、本発明のガスケットの取付構造においては、各外側リブ70と内側リブ80とは、それぞれ軸方向に位置ズレしていても良い。この場合にも、ガスケット本体部20は連結収容部40に入り込み難く、ガスケット2のシール性の低下を抑制できる。
【0044】
(実施例2)
実施例2のガスケットの取付構造は、上記(1)〜(2)を備える。実施例2のガスケットの取付構造は、連結収容部40の境界溝幅b以外は実施例1と同じである。実施例2のガスケットの取付構造における連結収容部40の境界溝幅bは3mmである。
【0045】
(比較例1)
比較例1のガスケットの取付構造は、連結収容部40の境界溝幅b以外は実施例1と同じである。比較例1のガスケットの取付構造における連結収容部40の境界溝幅bは4mmである。
【0046】
(比較例2)
比較例2のガスケットの取付構造は、連結収容部40の境界溝幅b以外は実施例1と同じである。比較例2のガスケットの取付構造における連結収容部40の境界溝幅bは5mmである。
【0047】
(比較例3)
比較例3のガスケットの取付構造は、連結収容部40の境界溝幅b以外は実施例1と同じである。比較例3のガスケットの取付構造における連結収容部40の境界溝幅bは6mmである。
【0048】
(比較例4)
比較例4のガスケットの取付構造は、連結収容部40の境界溝幅b以外は実施例1と同じである。比較例4のガスケットの取付構造における連結収容部40の境界溝幅bは7mmである。
【0049】
(評価試験)
実施例1〜2および比較例1〜4のガスケットの取付構造におけるガスケット2を劣化させた後に、各ガスケットの取付構造を透明樹脂製のシリンダブロック(図略)に取り付け、各ガスケットの取付構造のインテークマニホールド2に高圧のガスを流通させることで、各ガスケットの取付構造がガス漏れするか否かを観察した。この試験の詳細を以下に説明する。
【0050】
なお評価試験においては、連結部50の有無がシール性に及ぼす効果を評価するために、各ガスケットの取付構造におけるガスケット2を第2連結部52と第3ガスケット本体部23との境界で切断し、インテークマニホールド2に取り付けた。
【0051】
(耐久試験1)
(劣化工程)
各ガスケットの取付構造を燃料(ガソリン)に60℃で67時間浸漬した。その後、各ガスケットの取付構造を燃料から引き上げ、80℃で1時間乾燥した。その後、各ガスケットの取付構造を130℃で67時間加熱した。
【0052】
(測定工程)
劣化工程を3回繰り返した後の各ガスケットの取付構造をシリンダブロックに取り付けた。そして、常温下でインテークマニホールド1に試験ガス(空気)を0.1MPa未満で流通させ、各ガスケットの取付構造における第1ガスケット本体部21、第2ガスケット本体部22、第3ガスケット本体部23とシリンダブロックとの間でガス漏れが生じるか否かを目視にて観察した。次いで、ガス漏れが生じなかったガスケットの取付構造に、試験ガスを0.1MPaで流通させ、ガス漏れの有無を目視にて観察した。次いで、ガス漏れが生じなかったガスケットの取付構造に、試験ガスを0.3MPaで流通させ、ガス漏れの有無を目視にて観察した。0.1MPa未満でガス漏れが生じたガスケットの取付構造を×と評価し、0.1MPaでガス漏れが生じたガスケットの取付構造を△と評価し、0.3MPaでガス漏れが生じたガスケットの取付構造を○と評価し、0.3MPaでもガス漏れが生じなかったガスケットの取付構造を◎と評価した。耐久試験1の結果を表1に示す。
【0053】
(耐久試験2)
耐久試験1における劣化工程と同じ工程を4回繰り返した後の各ガスケットの取付構造をシリンダブロックに取り付けた。耐久試験1の測定工程と同じ工程でガス漏れの有無を観察した。耐久試験1と同様に、0.1MPa未満でガス漏れが生じたガスケットの取付構造を×と評価し、0.1MPaでガス漏れが生じたガスケットの取付構造を△と評価し、0.3MPaでガス漏れが生じたガスケットの取付構造を○と評価し、0.3MPaでもガス漏れが生じなかったガスケットの取付構造を◎と評価した。耐久試験2の結果を表1に示す。
【0054】
【表1】

【0055】
表1に示すように、実施例1〜2のガスケットの取付構造は、耐久試験1でガス漏れが生じなかった。この結果から、境界溝幅bをガスケット本体部20の厚さc以下にすることで、ガスケット2のシール性の低下を抑制でき、ガス漏れを信頼性高く抑制できることがわかる。
【0056】
また、実施例1のガスケットの取付構造は、耐久試験2でもガス漏れが生じなかった。この結果から、境界溝幅bを基部60の厚さc以下にすることで、ガスケット2のシール性の低下をさらに信頼性高く抑制でき、ガス漏れをさらに信頼性高く抑制できることがわかる。
【0057】
また、実施例1のガスケットの取付構造は、耐久試験1および耐久試験2において連結部50が破断したが、ガスケット2のシール性には影響がなかった。
【0058】
また、実施例2のガスケットの取付構造は、耐久試験1および耐久試験2において、図6に示すように、外側リブ70の一部が若干連結収容部40に入り込むが、耐久試験1でガス漏れが生じない。この結果から、境界溝幅bをガスケット本体部20の厚さc以下にすることで、ガスケット本体部20を連結収容部40に入り込み難くでき、ガスケット2のシール性の低下を抑制できることがわかる。さらに、図7に示すように、このとき内側リブ80(第1内部リブ81、第2内部リブ82)の突出端部が本体収容部30の内周溝壁37に当接している。このことによっても、ガスケット2のシール性の低下を抑制できる。内部リブ80が内周溝壁37に当接していることで、各ガスケット本体部20は外側方向に倒れ込み難く、各ガスケット本体部20とシリンダブロック9との面圧および当接面積を十分に確保できるためである。
【0059】
また、比較例1〜2のガスケットの取付構造は、耐久試験2において、図8に示すように、外側リブ70の一部およびガスケット本体部20の一部が連結収容部40に入り込んだ。この入り込み量は実施例2のガスケットの取付構造の入り込み量(図6)に比べて大きいため、このとき内側リブ80(第1内部リブ81、第2内部リブ82)の突出端部は本体収容部30の内周溝壁37から僅かに離れる。このため、比較例1〜2のガスケットの取付構造は、実施例1〜2のガスケットの取付構造に比べて、シール性の低下を抑制し難い。しかし、図9に示すように、ガスケット本体部20が僅かに倒れ込むと、内側リブ80(特に第2リブ82)は内周溝壁37に当接するため、ガスケット本体部20はそれ以上倒れ込まない。したがって、比較例1〜2のガスケットによると、シール性の大きな低下を抑制できる。
【0060】
また、比較例3〜4のガスケットの取付構造は、耐久試験1および耐久試験2において、図10に示すように、外側リブ70の一部およびガスケット本体部20の連結収容部40への入り込み量が大きくなり、ガスケット2のシール性が低下する。さらに、図11に示すように、このとき内側リブ80(第1内部リブ81、第2内部リブ82)の突出端部は本体収容部30の内周溝壁37から大きく離れる。このことによっても、ガスケット2のシール性は低下する。内部リブ80が内周溝壁37から大きく離れると、各ガスケット本体部20は外側方向に倒れ込み易くなり、各ガスケット本体部20とシリンダブロック9との面圧および当接面積が低減するためである。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】実施例1のガスケットの取付構造を図略のシリンダブロック側から見た様子を模式的に表す上面図である。
【図2】実施例1のガスケットの取付構造におけるインテークマニホールドをシリンダブロック側から見た様子を模式的に表す上面図である。
【図3】実施例1のガスケットの取付構造におけるガスケットをシリンダブロック側から見た様子を模式的に表す上面図である。
【図4】図1の要部拡大図である。
【図5】実施例1のガスケットの取付構造を図1中A−A位置で切断した様子を模式的に表す断面図である。
【図6】実施例2の取付構造の耐久試験1および耐久試験2における様子を模式的に表す説明図である。
【図7】実施例2のガスケットの取付構造の耐久試験1および耐久試験2における様子を模式的に表す説明図である。
【図8】比較例1〜2のガスケットの取付構造の耐久試験2における様子を模式的に表す説明図である。
【図9】比較例1〜2のガスケットの取付構造の耐久試験2における様子を模式的に表す説明図である。
【図10】比較例3〜4のガスケットの取付構造の耐久試験1および耐久試験2における様子を模式的に表す説明図である。
【図11】比較例3〜4のガスケットの取付構造の耐久試験1および耐久試験2における様子を模式的に表す説明図である。
【符号の説明】
【0062】
1:インテークマニホールド 2:ガスケット
10、11〜14:分岐部
30、31〜34:本体収容部
40、41〜45:連結収容部
20、21〜24:ガスケット本体部
50、51〜55:連結部
60:基部
70、71、72:外側リブ
80、81、82:内側リブ
b:境界溝幅 c:ガスケット本体部の厚さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂材料からなり、筒状をなす複数の分岐部を持つインテークマニホールドと、
弾性材料からなり、環状をなし各該分岐部の外周側にそれぞれ取り付けられる複数のガスケット本体部と、隣接する該ガスケット本体部同士を連結する連結部と、を持つガスケットと、の取付構造であって、
該インテークマニホールドは、環溝状をなし該分岐部の外周側に形成され対応する該ガスケット本体部の軸方向の一端部を収容する複数の本体収容部と、溝状をなし隣接する該本体収容部同士を連結し対応する該連結部の少なくとも一部を収容する連結収容部と、を持ち、
該ガスケット本体部は、環状をなす基部と、該基部の外周面から該基部の径方向外側に突起する少なくとも一つの外側リブと、該基部の内周面から該基部の径方向内側に突起する少なくとも一つの内側リブと、を持ち、
該外側リブおよび該内側リブは、該本体収容部に収容され、
該連結収容部のなかで少なくとも該本体収容部に隣接する部分の溝幅は、該外側リブおよび該内側リブを含む該ガスケット本体部の厚さ以下であることを特徴とするガスケットの取付構造。
【請求項2】
前記外側リブは、前記連結部に隣接する位置にまで延びている請求項1に記載のガスケットの取付構造。
【請求項3】
前記ガスケット本体部は、複数の前記外側リブを持ち、
複数の前記外側リブは、前記ガスケット本体部の軸方向に離間して配置されいる請求項1または請求項2に記載のガスケットの取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−209687(P2009−209687A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−50377(P2008−50377)
【出願日】平成20年2月29日(2008.2.29)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】