説明

ガスセンサシステム

【課題】車両に搭載され水素等の被検出ガスを検出するシステムであって、車両の状態に対応して作動し、ガス検出素子の劣化を防止可能なガスセンサシステムを提供する。
【解決手段】燃料電池自動車に搭載され、当該車両に対応して作動し、水素を検出するガスセンサシステム1であって、水素を検出するガス検出素子23と、ガス検出素子23が配置されると共に、水素が取り込まれる第1ガス検出室32及び第2ガス検出室41と、第1ガス検出室32及び第2ガス検出室41を密閉状態に維持可能なバタフライ弁51と、バタフライ弁51を制御し、燃料電池自動車が停止したか否かを判定するECU90と、を備え、燃料電池自動車は停止したと判定された場合、ECU90は、バタフライ弁51により第1ガス検出室32及び第2ガス検出室41を密閉する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスセンサシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
固体高分子型の燃料電池は、固体高分子膜の両側をアノード(燃料極)とカソード(酸素極)で挟み込んでMEA(Membrane Electrode Assembly:膜電極接合体)を形成し、この膜電極接合体を一対のセパレータで挟んでなる単セルを複数積層して一つの燃料電池スタックを構成している。そして、アノードには水素(燃料ガス)が供給され、カソードには空気(酸化剤ガス)が供給され、アノード及びカソードで電極反応が起こり、燃料電池が発電する。
【0003】
このような燃料電池からは未反応の水素(被検出ガス)が排出されるので、燃料電池から排出されたオフガスの流路に水素センサを設けて、この水素センサにより、オフガス中の水素濃度の監視がされている。なお、オフガスには電極反応によって生成した水蒸気(水分)が含まれており、多湿である。
【0004】
しかしながら、水素センサに内蔵され、水素をガス接触燃焼式等によって検出するガス検出素子が、オフガス中の水蒸気に長期間にて曝されると、劣化してしまう。そこで、例えば、被検出ガスの侵入を適宜に遮断する弁体を設け、この弁体を温度によって伸縮する形状記憶合金製のコイルバネで動作させるガスセンサが開示されている(特許文献1参照)。
【0005】
また、前記燃料電池を備える燃料電池システムは、例えば、燃料電池自動車(車両)に搭載される。そして、燃料電池システムの動作、つまり、燃料電池が発電状態又は非発電状態にあるかは、通常、燃料電池自動車の状態(例えば走行中、停止中)に同期する。
【特許文献1】実開平3−40553号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記したように、燃料電池及びそのシステムが燃料電池自動車に搭載される場合、水素センサも搭載されることになる。このように水素センサが燃料電池自動車に搭載される場合、水素センサは燃料電池自動車の状態に連動させることが好ましいと考えられるが、特許文献1には、開示されていない。
【0007】
そこで、本発明は、車両に搭載され水素等の被検出ガスを検出するシステムであって、車両の状態に対応して作動し、ガス検出素子の劣化を防止可能なガスセンサシステムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための手段として、本発明は、車両に搭載され、当該車両の状態(例えば、走行状態、停止状態)に対応して作動し、被検出ガスを検出するガスセンサシステムであって、前記被検出ガスを検出するガス検出素子と、前記ガス検出素子が配置されると共に、被検出ガスが取り込まれるガス検出室と、前記ガス検出室を密閉状態に維持可能なバルブ機構と、前記バルブ機構を制御するバルブ機構制御手段と、前記車両が停止したか否かを判定する停止判定手段と、を備え、前記停止判定手段によって前記車両は停止したと判定された場合、前記バルブ機構制御手段が前記バルブ機構により前記ガス検出室を密閉することを特徴とするガスセンサシステムである。
【0009】
このようなガスセンサシステムによれば、停止判定手段によって車両は停止したと判定された場合、これに対応して、バルブ機構制御手段がバルブ機構によりガス検出室を密閉する。これにより、車両の停止中に、水蒸気(水分)、埃等のガス検出素子を劣化する因子(劣化因子)が、ガス室に侵入することはない。その結果、劣化因子によって、ガス検出素子が劣化することを防止できる。
【0010】
また、前記ガス検出室に掃気ガスを導入し、当該ガス検出室を掃気する掃気手段を備え、前記停止判定手段によって前記車両は停止したと判定された場合、前記掃気手段によって前記ガス検出室を掃気した後、前記バルブ機構制御手段が前記バルブ機構により前記ガス検出室を密閉するガスセンサシステムであることが好ましい。
【0011】
ここで、掃気とは、掃気ガスによって、水蒸気、埃等の劣化因子を、ガス検出室の外部に押し出し、排出することを意味する。そして、掃気ガスとは、このような掃気に使用され、前記劣化因子を含まない、又は含んでも少量であるガスを意味し、例えば、後記する実施形態で説明するように、空気(外気)を使用できる。
【0012】
このようなガスセンサシステムによれば、停止判定手段によって車両は停止したと判定された場合、掃気手段によってガス検出室を掃気した後、バルブ機構制御手段がバルブ機構によりガス検出室を密閉する。すなわち、ガス検出室における劣化因子の量を減らした後に、ガス検出室を密閉するので、密閉後、車両の停止中におけるガス検出素子の劣化をさらに好適に防止することができる。
【0013】
また、前記ガス検出室の湿度を検出する湿度センサと、前記ガス検出室の湿度に基づいて、前記掃気ガスの量を決定する掃気ガス量決定手段と、を備え、前記ガス検出室の湿度が高いほど、前記掃気ガスの量は多くなるガスセンサシステムであることが好ましい。
【0014】
このようなガスセンサシステムによれば、ガス検出室の湿度が高いほど、掃気ガス量決定手段によって掃気ガス量が多くなるように決定される。そして、この決定された量の掃気ガスによってガス検出室が掃気されるので、ガス検出室の湿度を適切に下げることができる。これにより、ガス検出室の密閉後において、水蒸気(水分)によるガス検出素子の劣化を好適に防止できる。
【0015】
また、前記ガス検出室の温度を検出する温度センサを備え、前記掃気手段は、前記ガス検出室の温度が所定温度以下になるまで、掃気を継続するガスセンサシステムであることが好ましい。
【0016】
このようなガスセンサシステムによれば、ガス検出室の温度が、ガス検出素子が熱劣化しないとされる所定温度以下になるまで、掃気が継続されるので、ガス検出室を掃気しつつ、ガス検出室の温度を低下させた後、ガス検出室を密閉することができる。すなわち、ガス検出室が高温のまま密閉されることは防止され、その結果、ガス検出素子の熱劣化を防止することができる。
【0017】
また、前記ガス検出室における被検出ガスの濃度に基づいて、前記掃気ガスの量を決定する掃気ガス量決定手段を備え、前記被検出ガスの濃度が高いほど、前記掃気ガスの量は多くなるガスセンサシステムであることが好ましい。
【0018】
このようなガスセンサシステムによれば、ガス検出室における被検出ガスの濃度が高いほど、掃気ガス量決定手段によって掃気ガス量が多くなるように決定され、この決定された量の掃気ガスによってガス検出室が掃気されるので、ガス検出室における被検出ガスの濃度を適切に下げることができる。これにより、高濃度の被検出ガスによるガス検出素子の劣化を好適に防止することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、車両に搭載され水素等の被検出ガスを検出するシステムであって、車両の状態に対応して作動し、ガス検出素子の劣化を防止可能なガスセンサシステムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
≪第1実施形態≫
以下、本発明の第1実施形態について、図1から図3を参照して説明する。
第1実施形態に係るガスセンサシステム1は、燃料電池システムに組み込まれたシステムであって、燃料電池システムと共に燃料電池自動車(車両)に搭載されている。そして、ガスセンサシステム1は、燃料電池システム(燃料電池自動車)の起動スイッチであるIG61のON/OFF信号(車両の状態)に対応して連動するようになっている。
【0021】
≪ガスセンサシステムの構成≫
ガスセンサシステム1は、固体高分子型の燃料電池(図示しない)から排出されたオフガスが流れるオフガス配管10と、オフガス中の水素濃度を検出する水素センサ20と、水素センサ20の第1ガス検出室32及び第2ガス検出室41(第2ガス検出室41等とする)を密閉するバタフライ弁51と、第2ガス検出室41等に掃気ガスを送り込む掃気手段60と、第2ガス検出室41等の湿度を検出する湿度センサ71と、IG81と、ECU90(Electronic Control Unit、電子制御装置)とを主に備えている。
【0022】
<オブガス配管>
オフガス配管10は、燃料電池の下流に接続されており、オフガスが流れるようになっている。そして、オフガス配管10の上壁には、オフガスの通路となる貫通孔11が形成されている。
なお、燃料電池を構成する固体高分子膜を湿潤状態に確保すべく、燃料電池には加湿された水素や空気が供給されるため、また、燃料電池は発電によって水(水蒸気)を生成するため、オフガスは多湿となっている。因みに、オフガスは、燃料電池のアノードから排出されたアノードオフガス、カソードから排出されたカソードオフガス、これらが混合されたもの、のいずれでもよい。
【0023】
<水素センサ>
水素センサ20は、センサ用の回路がパターニングされた基板21と、基板21を収容したケース22と、基板21に接続すると共にケース22の下面に下方に向かって突設されたガス検出素子23と、ガス検出素子23を収容した素子収容部30と、を主に備えている。
ケース22はボルト(図示しない)によって素子収容部30の後記する第2素子収容部40に固定されており、第2素子収容部40はボルト(図示しない)によってオフガス配管10に固定されている。
【0024】
ガス検出素子23は、後記する第1ガス検出室32に配置されており、第1ガス検出室32に取り込まれたオフガス中の水素濃度C11を検出する素子である。そして、ガス検出素子23は、検出した水素濃度C11に応じて、基板21に電気信号を出力するようになっている。基板21は、CPU、ROM、RAM、各種インタフェイス、電子回路などを含んで構成されており、ガス検出素子23からの電気信号に基づいて水素濃度C11を算出し、ECU90に出力するようになっている。
【0025】
ガス検出素子23の種類及び数は、水素濃度C11の検出方式に応じて決定される。
例えば、水素の検出方式がガス接触燃焼式である場合、ガス検出素子23は検出素子と温度補償素子との対により構成される。そして、水素が各素子に接触し、燃焼した際に発生する熱を利用し、検出素子と温度補償素子と間の電気抵抗差に基づいて水素濃度C11が検出される。
また、水素の検出方式が半導体方式である場合、ガス検出素子23は、検出素子と検知素子との対により構成される。そして、水素が各素子表面の酸素と接触・離脱した際に発生する抵抗値に基づいて、水素濃度C11が検出される。
さらに、水素の検出方式が熱伝導方式である場合、ガス検出素子23(水素の検出部)は水素を加熱するヒータと、温度センサとの対により構成される。そして、水素が他の気体よりも熱伝導が大きいことに基づいて、水素濃度C11が検出される。
【0026】
素子収容部30は、ガス検出素子23を二重に取り囲んで収容するハウジングであって、内側の第1素子収容部31と、外側の第2素子収容部40と、を主に備えている。
【0027】
第1素子収容部31は、ケース22の下面に突設された略有底円筒体であって、その内部に第1ガス検出室32を有している。第1素子収容部31の底壁にはガス流通孔33が形成されており、そして、このガス流通孔33に蓋をするようにフィルタ34が設けられている。フィルタ34は、防爆性を確保しつつ、ガス(気体)の流通を許容するフィルタであり、例えば、撥水フィルタと防爆フィルタとを重ねたものによって構成される。撥水フィルタは、ガスを透過しつつ、ガスに含まれる液体を透過しないフィルタであり、例えば、テトラフルオロエチレン膜から構成される。防爆フィルタは、防爆性を確保するためのフィルタであり、例えば、液体状の水を通すことが可能な程度の金属製のメッシュや多孔質体から構成される。
【0028】
第2素子収容部40は、第1素子収容部31の外側に設けられた略円筒体であって、その内部に、第2ガス検出室41を有している。第2ガス検出室41は、フィルタ34を介して第1ガス検出室32と、貫通孔11を介してオフガス配管と、にそれぞれ連通している。また、第2素子収容部40の周壁には、掃気ガスの通路となる貫通孔42が形成されている。
【0029】
<バタフライ弁>
バタフライ弁51は、図示しないアクチュエータ(例えば、超音波モータ、ソレノイド)によって作動し(矢印A1参照)、第2ガス検出室41等を密閉状態に維持可能な弁体であり、第2素子収容部40内に配置されている。ただし、第2ガス検出室41等を密閉状態に維持可能であれば、バタフライ弁51に限定されず、ゲート弁、ボール弁、グローブ弁等であってもよい。また、前記アクチュエータとして、超音波モータを使用した場合、その無通電状態における静止トルクによって、バタフライ弁51を開位置又は閉位置に維持することができ、電力消費を抑えることができる。
【0030】
そして、前記アクチュエータは、ECU90と接続されており、ECU90の指令に従って作動し、その結果、バタフライ弁51が開閉するようになっている。よって、第1実施形態において、第2ガス検出室41等を密閉状態に維持可能なバルブ機構は、バタフライ弁51と、前記アクチュエータとを備えて構成されている。
また、前記アクチュエータ及び後記するコンプレッサ61等は、燃料電池や、バッテリ(蓄電装置)等を電源としている。
【0031】
<掃気手段>
掃気手段60は、第2ガス検出室41等に掃気ガスを導入し、第2ガス検出室41等を掃気する手段であり、コンプレッサ61と、開閉弁62とを主に備えている。コンプレッサ61は、配管61a、開閉弁62、配管62aを介して、第2素子収容部40の貫通孔42に接続されている。そして、ECU90の指令によって、開閉弁62が開かれ、コンプレッサ61が作動すると外気が取り込まれ、第1ガス検出室32及び第2ガス検出室41等に掃気ガスとして送り込まれるようになっている。
【0032】
なお、開閉弁62は、掃気時のみに、第2ガス検出室41等への掃気ガスの流入を許容するものあるから、これに代えて、例えば逆止弁を設けてもよい。このように逆止弁を使用すれば、ECU90による制御は不要となる。また、コンプレッサ61は、燃料電池に空気を送るコンプレッサを兼用してもよいし、コンプレッサ61に代えて、例えば送風機(ファン)を使用してもよい。
【0033】
<湿度センサ>
湿度センサ71は、第2ガス検出室41に配置されており、第2ガス検出室41等の湿度H11を検出し、ECU90に出力するようになっている。なお、湿度センサ71の位置はこれに限定されず、第1ガス検出室32に設けてもよいし、両者に設けてもよい。
【0034】
<IG>
IG81は、燃料電池自動車及び燃料電池システムの起動スイッチであり、運転席周りに設けられている。また、IG81はECU90と接続されており、ECU90はIG81のON/OFF信号を検知するようになっている。
【0035】
<ECU>
ECU90は、ガスセンサシステム1を含め、燃料電池システム(燃料電池自動車)を電子制御する制御装置であり、CPU、ROM、RAM、各種インタフェイス、電子回路などを含んで構成されている。
そして、ECU90は、IG81のON信号を検知すると、燃料電池に水素と酸素を含む空気とを供給し、燃料電池を発電させ、運転者の要求に応じて、燃料電池自動車を走行させるようになっている。すなわち、ECU90(停止判定手段)は、IG81がOFF信号を検知した場合、燃料電池自動車は停止したと判定する機能を備えている。
【0036】
また、ECU90(バルブ機構制御手段)は、バタフライ弁51、コンプレッサ61、開閉弁62を適宜に制御する機能を備えている。
【0037】
さらに、ECU90(掃気ガス量決定手段)は、燃料電池自動車は停止したと判定した場合、湿度センサ71が検出する湿度H11と、その内部に記憶された図3に示すマップとに基づいて、掃気ガスの総量、コンプレッサ61の作動時間を決定する機能を備えている。
なお、図3に示すマップは、事前試験等によって求められ、湿度H11と掃気ガスの総量(コンプレッサ61の作動時間)との関係を示すグラフであり、湿度H11が高いほど、掃気ガスの総量は多くなり、コンプレッサ61の作動時間は長くなる傾向となっている。ただし、図3に示すマップは、コンプレッサ61を一定の回転速度で作動する場合を例示している。
【0038】
≪ガスセンサシステムの動作≫
次に、ガスセンサシステム1の動作を、図2を主に参照して、ECU90に設定されたプログラム(フローチャート)の流れと共に説明する。なお、図2の初期(スタート)状態において、IG81はON状態にあり、燃料電池システムは作動し(燃料電池は発電)、燃料電池自動車は走行又はアイドリング状態にある。また、初期状態において、バタフライ弁51は開いており、開閉弁62は閉じている。
【0039】
ステップS101において、ECU90は、IG81がOFFされたか否かに基づいて、燃料電池自動車は停止したか否かを判定する。IG81はOFFされ、燃料電池自動車は停止したと判定した場合(S101・Yes)、ECU90の処理はステップS102に進む。一方、IG81はOFFされておらず、燃料電池自動車は停止していないと判定した場合(S101・No)、ステップS101の判定を繰り返す。
なお、IG81がOFFされると、ECU90は、燃料電池への水素、空気の供給を停止し、燃料電池の発電を停止する。これにより、燃料電池から排出されるオフガス中の水素濃度は徐々に低下する。
【0040】
ステップS102において、ECU90は、湿度センサ71を介して、現在における第2ガス検出室41等の湿度H11を検出する。
【0041】
ステップS103において、ECU90は、ステップS102で検出した湿度H11と図3のマップとに基づいて、第2ガス検出室41等に送り込むべき掃気ガスの総量を算出し、決定する。
【0042】
ステップS104において、ECU90は、ステップS103で算出した掃気ガスの総量に基づいて、コンプレッサ61の作動時間を決定する。ここで、第1実施形態では、コンプレッサ61を一定の回転速度で作動させる場合を例示するので、湿度H11が高く、掃気ガスの総量が多いほど、コンプレッサ61の作動時間は長くなる(図3参照)。
ただし、これに限定されず、掃気ガスの総量が多くなると、コンプレッサ61の回転速度を高める構成としてもよい。
【0043】
ステップS105において、ECU90は、バタフライ弁51及び開閉弁62を開き、ステップS105で決定した作動時間にてコンプレッサ61を作動する。これにより、掃気ガスが第2ガス検出室41等に送り込まれ、掃気が実施され、第1ガス検出室32及び第2ガス検出室41の湿度H11が下がる。
そして、前記作動時間の経過後、ECU90は、コンプレッサ61を停止する。
【0044】
第2ガス検出室41等の掃気後であるステップS106において、ECU90は、バタフライ弁51及び開閉弁62を閉じる。これにより、第2ガス検出室41等は密閉状態になる。
そして、ECU90の処理は、エンドに進み、ガスセンサシステム1の動作は終了する。
【0045】
≪ガスセンサシステムの効果≫
このようなガスセンサシステム1によれば、以下の効果を主に得ることができる。
燃料電池自動車(燃料電池システム)が停止され、オフガス中の水素濃度C11が低下し、水素濃度C11を検出する必要がない場合、バタフライ弁51等によって、第1ガス検出室32及び第2ガス検出室41を密閉状態に維持することができる。これにより、燃料電池自動車の停止中に、オフガス、及びこれに同伴する水蒸気、埃等の劣化因子が、第1ガス検出室32及び第2ガス検出室41に侵入しない。よって、燃料電池自動車の停止中に、ガス検出素子23は水蒸気、埃等に曝されず、水蒸気、埃等によるガス検出素子23の劣化は防止される。
【0046】
また、第2ガス検出室41等を密閉する前に、掃気ガスによって、第2ガス検出室41等を掃気し、第2ガス検出室41等の湿度H11を下げるので、水蒸気等の劣化因子の少ない環境下にしてから、第2ガス検出室41等を密閉することができる。これにより、ガス検出素子23の劣化を好適に防止できる。
【0047】
さらに、第2ガス検出室41等に送り込む掃気ガスの総量は、IG81のOFF時における湿度H11に基づいて、適切に決定される。これにより、第2ガス検出室41等を好適に掃気し、その湿度H11を下げることができる。
【0048】
このように、第1実施形態では、バタフライ弁51が開いている初期状態(IG81がON状態)において、IG81がOFFされると、バタフライ弁51が閉じ、燃料電池自動車は停止状態を継続する場合を説明したが、その後、バタフライ弁51が開く場合を説明する。
ECU90は、IG81が実際にONされた場合(ONのポジションに入った場合)や、IG81がその後ONされると予想される場合に、バタフライ弁51を開く。IG81がONされると予想される場合とは、例えば、キーがシリンダに挿入されたことを検知した場合、乗員センサにより車内に乗員の乗車を検知した場合、着座センサにより運転者の着座を検知した場合、運転席側のドアが開かれたことを検知した場合、ドアロックが解錠されたことを検知した場合である。
【0049】
≪第2実施形態≫
次に、本発明の第2実施形態について図4、図5を参照して、第1実施形態と異なる部分を説明する。
【0050】
≪ガスセンサシステムの構成≫
図4に示すように、第2実施形態に係るガスセンサシステム2は、湿度センサ71(図1参照)に代えて、温度センサ72を備えている。温度センサ72は、第2ガス検出室41に配置されており、第2ガス検出室41等の現在の温度T11を検出し、検出した温度T11をECU90に出力するようになっている。なお、温度センサ72は、第1ガス検出室32に設けられてもよい。
【0051】
第2実施形態に係るECU90は、燃料電池自動車が停止した後、掃気を開始し、温度T11が所定温度T0以下となるまで、この掃気を継続する機能を備えている。なお、所定温度T0は、ガス検出素子23が熱劣化しないとされる温度であり、ガス検出素子23の仕様、位置等に依存し、事前試験等によって求められ、ECU90に記憶されている。
【0052】
≪ガスセンサシステムの動作≫
次に、ガスセンサシステム2の動作を、図5を主に参照して説明する。
IG81がOFFされた場合(S101・Yes)に進むステップS201において、ECU90は、バタフライ弁51を開いたまま、開閉弁62を開き、コンプレッサ61を作動する。そうすると、第2ガス検出室41等に掃気ガスが送り込まれ、第2ガス検出室41等の掃気が開始されると共に、掃気ガスによって、第2ガス検出室41等の温度T11が低下し始める。
【0053】
ステップS202において、ECU90は、現在の温度T11が所定温度T0以下であるか否か判定する。温度T11は所定温度T0以下であると判定した場合(S202・Yes)、ECU90の処理はステップS203に進む。一方、温度T11は所定温度T0以下でないと判定した場合(S202・No)、ステップS202の判定を繰り返す。なお、この場合、コンプレッサ61は継続して作動し、掃気は継続される。
【0054】
ステップS203において、ECU90は、コンプレッサ61を停止する。
次いで、ステップS106において、ECU90は、第1実施形態と同様に、バタフライ弁51及び開閉弁62を閉じ、第2ガス検出室41等を密閉状態にする。
【0055】
≪ガスセンサシステムの効果≫
このようなガスセンサシステム2によれば、掃気ガスによって、第2ガス検出室41等の湿度を低下させつつ、その温度T11を低下することができる。つまり、第2ガス検出室41等の温度T11が所定温度T0以下に低下するまで、掃気を継続することができる。
これにより、第2ガス検出室41等が高温のまま密閉されることは防止され、よって、ガス検出素子23の熱劣化を防止することができる。
【0056】
≪第3実施形態≫
次に、本発明の第3実施形態について、図6、図7を参照して、第1、第2実施形態と異なる部分を説明する。
【0057】
≪ガスセンサシステムの動作≫
IG81がOFFされた場合(S101・Yes)に進むステップS301において、ECU90は、ガス検出素子23を介して、第1ガス検出室32の現在の水素濃度C11を検出する。
【0058】
ステップS302において、ECU90(掃気ガス量決定手段)は、ステップS301で検出した水素濃度C11と、図7に示すマップとに基づいて、第2ガス検出室41等に送り込むべき掃気ガスの総量を算出し、決定する。図7に示すマップは、水素濃度C11が高くなると、掃気ガス量が多くなる傾向を有しており、算出される掃気ガス量にて掃気することで、水素濃度C11が低下し、高濃度の水素によってガス検出素子23が劣化しないように設定されている。なお、このマップは、事前試験等によって求められ、ECU90に記憶されている。
【0059】
ステップS303において、ECU90は、ステップ302で算出した掃気ガスの総量に基づいて、コンプレッサ61の作動時間を決定する。なお、コンプレッサ61を一定の回転速度で作動させる場合を例示するので、水素濃度C11が高く、掃気ガスの総量が多いほど、コンプレッサ61の作動時間は長くなる(図7参照)。
【0060】
ステップS304において、ECU90は、バタフライ弁51及び開閉弁62を開き、ステップS303で決定した作動時間にてコンプレッサ61を作動する。これにより、掃気ガスが第2ガス検出室41等に送り込まれ、掃気が実施され、第1ガス検出室32及び第2ガス検出室41等の湿度H11、温度T11、及び水素濃度C11が下がる。
そして、前記作動時間の経過後、ECU90は、コンプレッサ61を停止した後、バタフライ弁51及び開閉弁62を閉じ、第2ガス検出室41等を密閉状態にする。
【0061】
≪ガスセンサシステムの効果≫
このようなガスセンサシステムによれば、掃気ガスによって、第2ガス検出室41等の湿度H11及び温度T11を低下しつつ、水素濃度C11を低下することができる。これにより、第1ガス検出室32及び第2ガス検出室41に高濃度の水素が封入されることは防止され、高濃度の水素によるガス検出素子23の劣化(腐食)を防止することができる。
また、掃気ガスの総量、コンプレッサ61の作動時間はIG81のOFF時の水素濃度C11に基づいて適切に決定されるので、水素濃度C11を適切に下げることができる。
【0062】
以上、本発明の好適な一実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、例えば以下のような変更をすることができる。
前記した実施形態では、被検出ガスが水素である場合を例示したが、これに限定されずその他種類のガスであってもよい。また、ガスセンサシステム1が燃料電池自動車に搭載された場合を説明したが、その他の車両に搭載された構成でもよい。
【0063】
前記した実施形態では、IG81がOFFされた場合に、燃料電池自動車(車両)が停止したと判定される場合を例示したが、その他に例えば、IG81のOFFに遅れて実際に燃料電池の発電が停止する構成の場合、燃料電池の発電が停止したときに、燃料電池自動車が停止したと判定する構成としてもよい。
【0064】
前記した第3実施形態では、ガス検出素子23を介して検出される水素濃度C11に基づいて、掃気ガスの量を決定する場合を例示したが、ガス検出素子23とは別に水素濃度を検出するセンサを設け、このセンサが検出する水素濃度に基づいて、掃気ガス量を決定する構成でもよい。
【0065】
前記した第1実施形態ではIG81のOFF時の湿度H11に基づいて、第3実施形態ではIG81のOFF時の水素濃度C11に基づいて、掃気ガス量、コンプレッサ61の作動時間を決定し、これに従って、コンプレッサ61を作動し掃気する場合を例示したが、その他に例えば、第2実施形態のように、IG81がOFFされた場合に掃気を開始し、湿度H11が所定湿度H0以下に低下するまで、水素濃度C11が所定水素濃度C0以下に低下するまで、掃気を継続する構成としてもよい。所定湿度H0は水分によってガス検出素子23が劣化しない湿度であり、所定水素濃度C0は水素によってガス検出素子23が劣化しない水素濃度である。
【0066】
これとは逆に、第2実施形態では、温度T11が所定温度T0以下に低下するまで掃気を継続する場合を例示したが、その他に例えば、IG81のOFF時の温度T11に基づいて、掃気ガス量、コンプレッサ61の作動時間を決定し、これに従って、コンプレッサ61を作動し掃気する構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】第1実施形態に係るガスセンサシステムの構成を示す図である。
【図2】第1実施形態に係るガスセンサシステムの動作を示すフローチャートである。
【図3】第1実施形態に係る湿度と掃気ガスの量(コンプレッサの作動時間)との関係を示すマップである。
【図4】第2実施形態に係るガスセンサシステムの構成を示す図である。
【図5】第2実施形態に係るガスセンサシステムの動作を示すフローチャートである。
【図6】第3実施形態に係るガスセンサシステムの動作を示すフローチャートである。
【図7】第3実施形態に係る水素濃度と掃気ガスの量(コンプレッサの作動時間)との関係を示すマップである。
【符号の説明】
【0068】
1 ガスセンサシステム
20 水素センサ
23 ガス検出素子
30 素子収容部
32 第1ガス検出室
41 第2ガス検出室
51 バタフライ弁(バルブ機構)
60 掃気手段
61 コンプレッサ
71 湿度センサ
72 温度センサ
90 ECU(バルブ機構制御手段、停止判定手段、掃気ガス量決定手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、当該車両に対応して作動し、被検出ガスを検出するガスセンサシステムであって、
前記被検出ガスを検出するガス検出素子と、
前記ガス検出素子が配置されると共に、被検出ガスが取り込まれるガス検出室と、
前記ガス検出室を密閉状態に維持可能なバルブ機構と、
前記バルブ機構を制御するバルブ機構制御手段と、
前記車両が停止したか否かを判定する停止判定手段と、
を備え、
前記停止判定手段によって前記車両は停止したと判定された場合、前記バルブ機構制御手段が前記バルブ機構により前記ガス検出室を密閉する
ことを特徴とするガスセンサシステム。
【請求項2】
前記ガス検出室に掃気ガスを導入し、当該ガス検出室を掃気する掃気手段を備え、
前記停止判定手段によって前記車両は停止したと判定された場合、前記掃気手段によって前記ガス検出室を掃気した後、前記バルブ機構制御手段が前記バルブ機構により前記ガス検出室を密閉する
ことを特徴とする請求項1に記載のガスセンサシステム。
【請求項3】
前記ガス検出室の湿度を検出する湿度センサと、
前記ガス検出室の湿度に基づいて、前記掃気ガスの量を決定する掃気ガス量決定手段と、
を備え、
前記ガス検出室の湿度が高いほど、前記掃気ガスの量は多くなる
ことを特徴とする請求項2に記載のガスセンサシステム。
【請求項4】
前記ガス検出室の温度を検出する温度センサを備え、
前記掃気手段は、前記ガス検出室の温度が所定温度以下になるまで、掃気を継続する
ことを特徴とする請求項2に記載のガスセンサシステム。
【請求項5】
前記ガス検出室における被検出ガスの濃度に基づいて、前記掃気ガスの量を決定する掃気ガス量決定手段を備え、
前記被検出ガスの濃度が高いほど、前記掃気ガスの量は多くなる
ことを特徴とする請求項2に記載のガスセンサシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−190889(P2008−190889A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−22751(P2007−22751)
【出願日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】