説明

ガスセンサ

【課題】突起部が設けられた通気部にてフィルタ部材を覆うように栓部材に配置させるにあたり、リード線が損傷することを防止するガスセンサを提供する。
【解決手段】グロメット9の大気連通孔91を覆う保護部34を備えるガスセンサ1において、保護部34から後端側に向かって突出し、大気連通孔91の開口よりも小さい開口を有する突出部35をグロメット9の後端面99よりも先端側に配置する。これにより、リード線18を配線するときにリード線18が突出部35のエッジに引っかかることがない。その結果、リード線18が損傷することを防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被測定ガスを測定する検出素子を主体金具や外筒の内部に保持しつつ、その外筒の内部と外部との通気性を確保するための通気構造を有するガスセンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ジルコニア等のセラミックスからなる固体電解質体を用い、内燃機関の排出する排気ガス中の特定ガス成分(例えば酸素など)の濃度を検出する検出素子を備えたガスセンサが知られている。例えば、酸素濃度を検出する酸素センサの検出素子は、排気ガス中に晒される検出電極と、基準ガス(通常は大気)中に晒される基準電極とが一対となって固体電解質体を挟むようにその表面上に形成されている。この検出素子は、固体電解質体に隔てられた2つの雰囲気間、すなわち排気ガスと基準ガスとの間における酸素分圧の差に応じて排気ガス中の酸素濃度の検出を行うものである。
【0003】
このような酸素センサは、検出素子を保持するための主体金具や、検出素子の周囲を覆う外筒を有しており、さらに外筒の後端側には、外筒内を閉塞するための栓部材(グロメット)が組み付けられている。そして、この栓部材には、リード線(センサ出力リード線およびヒータリード線)を挿通させるリード線挿通孔の他に、外筒の内部と外部との間の通気性を確保して検出素子の基準電極側に基準ガスを導入するための大気連通孔(貫通孔)が設けられている。さらに、栓部材の大気連通孔には、外筒内に大気を導入しつつ(通気性)、水滴等を進入させない(防水性)ためのフィルタ部材が設けられている。
【0004】
さらに、特許文献1や特許文献2のように、栓部材の大気連通孔を外筒の後方側(外部側)から覆いフィルタ部材を保護する保護部材が設けられているガスセンサも知られている。保護部材を設けることにより、フィルタ部材が外部に直接露出されることを防止でき、草木との接触や飛石等の衝突による外部からの衝撃をフィルタ部材が受けてフィルタ部材に破損が生じることを防止している。この保護部材は、大気連通孔よりも小さい開口を有した通気部や、フィルタ部材が視認できないようにフィルタ部材を覆うとともに、栓部材との間隙から大気連通孔に通気する被覆部が、腕部を介して外筒に結合された構成を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−292459号公報
【特許文献2】特開2008−292460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、これら特許文献のようなガスセンサの保護部材のうち、通気部に軸線方向に貫通する複数の小さい開口を設けた保護部材(特許文献2の図14参照)では、1つ1つの開口が小さすぎるため、目詰まりを生じさせることがある。
【0007】
一方、通気部に、後端側(外側)に向かってドーム状に突出する開口付きの突出部(特許文献1の図3、5、特許文献2の図12参照)を設け、突出部の開口と大気連通孔とを連通させた保護部材であれば、目詰まりが生じにくく、かつ、良好な通気性を確保することができる。しかしながら、この突出部を形成した保護部材を、フィルタ部材を覆うように栓部材に配置させるにあたり、栓部材の後端面によりも突出部が後端側(外側)より突き出す仕様では、リード線を配線するときにリード線が突出部のエッジに引っかかり、リード線が損傷してしまう虞がある。
【0008】
そこで、本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、突起部が設けられた通気部にてフィルタ部材を覆うように栓部材に配置させるにあたり、リード線が損傷することを防止するガスセンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のガスセンサは、軸線方向に延びると共に、自身の先端側に被検出ガスを検出するための検出部を有する検出素子と、該検出部を自身の先端から突出させつつ、前記検出素子の径方向周囲を取り囲む主体金具と、前記主体金具の後端側に配置され、自身の先端部が前記主体金具に固定される筒状の外筒と、該外筒の内側に配置される栓部材であって、前記検出素子の検出信号を取り出すためのリード線が挿通されるリード線挿通孔、及び、通気性と防水性を有するフィルタ部材を介在させて前記外筒の内部と外部との大気連通を可能とする大気連通孔が、それぞれ軸線方向に延びるように形成された栓部材と、を備えたガスセンサにおいて、
前記軸線方向後端側から前記栓部材の前記大気連通孔を覆うことで前記フィルタ部材を保護する保護部であって、前記大気連通孔の開口よりも小さい開口を有し、後端側に向かって突出する突出部を備える保護部が、外筒に結合されており、前記突出部は、前記栓部材の後端面よりも先端側に配置されることを特徴とする。
【0010】
このように、本発明のガスセンサは、突出部が、栓部材の後端面よりも先端側に配置されている。つまり、突出部が、栓部材内に配置されているので、リード線を配線するときにリード線が突出部のエッジに引っかかることがない。その結果、リード線が損傷することを防止できる。
【0011】
また、突出部が、栓部材内に配置されているので、飛石が突出部に衝突しにくくなり、突出部に形成された開口の通気性を良好に維持できるとともに、保護部が変形することによりフィルタ部材が外部に露出され、草木との接触や飛石等の衝突による外部からの衝撃をフィルタ部材が受けてフィルタ部材に破損が生じることを防止できる。
【0012】
なお、突出部は、保護部から後端側に向かって突出し、前記大気連通孔の開口よりも小さい開口を有する構成であればよく、具体的には、ドーム状に突出する形状や、保護部に2本の切り込みを入れると共に、その間の部位を後端側に向かって押し込んだ形状等であればよい。
また、保護部の硬度は、フィルタ部材の硬度よりも硬いことが好ましい。これにより、フィルタ部材が破損することをより確実に防止できる。
【0013】
さらに、本発明のガスセンサは、前記保護部から径方向に延びる腕部を有し、前記腕部及び前記保護部は、前記外筒と一部材にて形成されてなる構成に適用することが好ましい。このように、腕部、保護部及び外筒を一部材にて形成することで、部品点数を減らすことができる。
【0014】
また、本発明のガスセンサは、前記栓部材が、前記外筒を径方向内側に加締めることで、前記栓部材が前記外筒内に保持される構成に適用することが好ましい。このように、外筒を径方向内側に加締めることで栓部材が外筒内に保持される構成では、栓部材に加締めによる応力が加わり、栓部材がガスセンサの後端側に膨らむ。よって、この栓部材が後端側に膨らむことを利用することで、突出部を栓部材の後端面よりも先端側に容易に配置することができる。その結果、リード線が損傷することを容易に防止できる。
【0015】
さらに、本発明のガスセンサは、前記保護部から径方向に延びる腕部と、該腕部に接続し、前記外筒の周囲を覆う筒状部と、を有する保護部材を備え、前記筒状部が前記外筒に機械接合されて前記保護部材と前記外筒とが結合されていることが好ましい。このように、複雑な形状を有する保護部、腕部及び筒状部を外筒とは別部材の保護部材として準備することができ、容易に腕部及び保護部が外筒と結合する構成を得ることができる。
【0016】
なお、保護部材の筒状部と外筒とを機械接合する構成としては、筒状部の内径を外筒の外径よりも径小とし、外筒に筒状部を圧入する構成や、筒状部に軸線方向に沿って数箇所スリットを設けておき、筒状部が弾性変形することにより外筒に係合する構成等が挙げられる。
【0017】
さらに、本発明のガスセンサは、前記栓部材が、自身の後端面側にて前記大気連通孔を起点に前記リード線挿通孔を避けて径方向外側に向かって延びると共に、前記栓部材の先端側に向かって切り欠く溝部を有し、前記腕部の少なくとも一部が前記栓部材の前記溝部内に配置されていることが好ましい。
【0018】
この溝部は、もともと栓部材が外部から被水したときに、水捌けを補助し、大気連通孔の通気性能を低下させないために栓部材に設けられているが、この溝部内に腕部を配置することで、飛石が腕部に衝突しにくくなる。これにより、腕部が変形することにより保護部が移動してフィルタ部材が外部に露出されることを防止できる。その結果、草木との接触や飛石等の衝突による外部からの衝撃をフィルタ部材が受けてフィルタ部材に破損が生じることをより防止できる。
【0019】
さらに、腕部を栓部材の溝部内に配置できるため、保護部や腕部がガスセンサの周方向に回転することを防止でき、リード線が保護部や腕部に接触し、損傷することを防止できる。
【0020】
なお、溝部内の一部に腕部を配置していれば、保護部や腕部がガスセンサの周方向に回転することや、飛石が腕部に衝突し、腕部が変形することを防止できるが、溝部内全体に亘って腕部を配置すれば、保護部や腕部がガスセンサの周方向に回転することや、飛石が腕部に衝突し、腕部が変形することをより防止できる。
【0021】
さらに、本発明のガスセンサは、前記溝部が、前記栓部材の後端面側にて前記大気連通孔を起点に前記リード線挿通孔を避けて径方向外側に向かって複数延びており、前記腕部が、前記栓部材の前記溝部内に複数配置されることが好ましい。腕部を複数有することで、1つの腕部に捻りが加わった場合でも、他の腕部により捻りを緩和するので、保護部が栓部材の大気連通孔を外筒の外部側から確実に覆うことができる。そして腕部を複数有する場合に、栓部材に複数設けられた溝部内に腕部のそれぞれが配置されることで、保護部や腕部がガスセンサの周方向に回転することを確実に防止でき、リード線が保護部や腕部に接触し、損傷することを確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第1の実施形態のガスセンサ1の構造を示す縦断面図である。
【図2】組み付け前のグロメット9の斜視図である。
【図3】ガスセンサ1を軸線O方向後端側(図1における上側)から見た図である。
【図4】組み付け前の外筒3の斜視図である。
【図5】取付治具400の斜視図である。
【図6】取付治具400を取付方向の前方から(図5における矢印C方向に)見た図である。
【図7】取付治具400を取付方向の後方から(図5における矢印D方向に)見た図である。
【図8】図5(または図6)の2点鎖線で示す屈曲線E−Eにおいて矢視方向から見た取付治具400の屈曲断面図である。
【図9】保持工程を示す図である。
【図10】リード線保持工程を示す図である。
【図11】配置工程を示す図である。
【図12】ずらし工程を示す図である。
【図13】第2の実施形態のガスセンサ200の構造を示す縦断面図である。
【図14】第2の実施形態の保護部材100の斜視図である。
【図15】ガスセンサ200を軸線O方向後端側(図13における上側)から見た図である。
【図16】図15の1点鎖線で示す屈曲線A−Aにおいて矢視方向から見たガスセンサ1の後端側の部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を具体化したガスセンサの一実施の形態について、図面を参照して説明する。まず、第1の実施形態として、ガスセンサ1を例に、その構造について図1〜図4を参照して説明する。なお、図1に示すガスセンサ1は自動車等の内燃機関のエンジンから排出される排気ガスの排気管(図示外)に取り付けられて使用されるものである。以下では、ガスセンサ1の軸線O方向において、排気管内に挿入される検出素子6の先端に向かう側(閉じている側であり図中下側)を先端側とし、これと反対方向に向かう側(図中上側)を後端側として説明するものとする。
【0024】
図1に示すガスセンサ1は、排気管内を流通する排気ガス中の酸素の濃度を検出するためのセンサであり、細長で先が閉じられた筒状の検出素子6を主体金具5や外筒3、プロテクタ4内に保持した構造を有する。ガスセンサ1からは、この検出素子6の出力する信号を取り出したり、検出素子6に併設されるヒータ7への通電を行ったりするためのリード線18が引き出されている。各リード線18は、ガスセンサ1とは離れた位置に設けられる図示外のセンサ制御装置あるいは自動車の電子制御装置(ECU)に電気的に接続されている。
【0025】
ガスセンサ1の検出素子6は、ジルコニアからなる固体電解質体61を有底筒状に形成したものであり、固体電解質体61の内面には、PtまたはPt合金からなる基準電極62がそのほぼ全面を覆うように多孔質状に形成されている。また、固体電解質体61の外面にも、基準電極62と同様に、PtまたはPt合金からなる検出電極63が多孔質状に形成されている。検出素子6の先端側(閉じている側)は検出部64として構成され、外面の検出電極63が排気管(図示外)内を流通する排気ガス中に晒される。図示しないが、この検出電極63は耐熱性セラミックスよりなる多孔質状の電極保護層により被覆されており、排気ガスによる被毒から保護されている。また、検出素子6の軸線O方向の略中間位置には、径方向外側に向かって突出する鍔状のフランジ部65が設けられている。そして、検出素子6の筒孔内には、固体電解質体61を加熱して活性化させるための棒状のヒータ7が挿入されている。
【0026】
検出素子6は、自身の径方向周囲を筒状の主体金具5に取り囲まれた状態で、その主体金具5の筒孔55内に保持されている。主体金具5はSUS430等のステンレス鋼からなる筒状の部材であり、先端側に、排気管の取付部(図示外)に螺合する雄ねじ部52が形成されている。雄ねじ部52よりも先端側には、その外周に後述するプロテクタ4が係合される先端係合部56が形成されている。検出素子6の検出部64は、この先端係合部56よりも先端側に突出している。
【0027】
主体金具5の雄ねじ部52の後端側には径方向に拡径された工具係合部53が形成されており、ガスセンサ1を排気管の取付部(図示外)に取り付ける際に使用される取り付け工具が係合される。この工具係合部53と雄ねじ部52との間の部位には、排気管の取付部を介したガス抜けを防止するための環状のガスケット11が嵌挿されている。そして主体金具5の後端側には、自身の筒孔55内で保持する検出素子6を加締め固定するための加締部57が設けられている。検出素子6の後端部66は、この加締部57よりも後端側に突出している。そして、工具係合部53と加締部57との間には、その外周に、後述する外筒3の先端部31が係合される後端係合部58が形成されている。
【0028】
次に、主体金具5の筒孔55内の先端側にはその内周を径方向内側に向けて突出させた段部59が設けられており、この段部59に、金属製のパッキン12を介し、アルミナからなる筒状の支持部材13が係止されている。支持部材13の内周も段状に形成されており、その段状の部位に配置される金属製のパッキン14を介し、検出素子6のフランジ部65が支持部材13により支持されている。さらに筒孔55内には、支持部材13の後端側に滑石粉末からなる充填部材15が充填され、その充填部材15を支持部材13との間で挟むように、充填部材15の後端側にアルミナ製で筒状のスリーブ16が配置されている。
【0029】
スリーブ16の後端側には環状のリング17が配置されており、主体金具5の加締部57を径方向内側に加締めることで、リング17を介し、スリーブ16が充填部材15に対して押しつけられている。この加締部57の加締めを通じ、充填部材15が、主体金具5の段部59に係止された支持部材13に向けて検出素子6のフランジ部65を押圧するよう主体金具5の筒孔55内に圧縮充填されると供に、筒孔55の内周面と検出素子6の外周面との間の間隙が気密に埋められている。このように、検出素子6は、主体金具5の加締部57と段部59との間において挟持された各部材を介し、主体金具5の筒孔55内で保持されている。
【0030】
次に、主体金具5の先端係合部56には、その先端係合部56から軸線O方向の先端側に向け突出された検出素子6の検出部64を覆うプロテクタ4が、溶接によって組み付けられている。プロテクタ4は、ガスセンサ1が排気管(図示外)に取り付けられた際に排気管内に突き出される検出素子6の検出部64を、排気ガス中に含まれる水滴や異物等の衝突から保護するものである。プロテクタ4は、有底筒状をなし、開放された側の周縁部が先端係合部56に接合される外側プロテクタ41と、その外側プロテクタ41の内部に固定された有底筒状の内側プロテクタ45とからなる2重構造をなすように構成されている。外側プロテクタ41および内側プロテクタ45の外周壁には内部に排気ガスを導入し、検出素子6の検出部64へと導くための導入口42がそれぞれ開口されている(内側プロテクタ45のガス導入口は図示せず。)。また、外側プロテクタ41および内側プロテクタ45の底壁には、内部に入り込んだ水滴や排気ガスを排出するための排出口43,48がそれぞれ開口されている。
【0031】
また、検出素子6の後端部66よりも軸線O方向の後端側には、絶縁性セラミックスからなる筒状のセパレータ8が配置されている。セパレータ8は、4つの接続端子19(図1ではそのうちの3つの接続端子19を示している。)をそれぞれ独立に収容する収容部82を有する。収容部82はセパレータ8を軸線O方向に貫通しており、セパレータ8の先端側と後端側との間において通気可能に構成されている。各接続端子19は、検出素子6の基準電極62、検出電極63、およびヒータ7の有する発熱抵抗体に通電するため後端側にて露出された一対の電極71(図1ではそのうちの一方の電極71を示している。)に、それぞれ電気的に接続されるものである。セパレータ8は、各接続端子19を分離した状態で収容し、接続端子19同士の接触を防止している。各接続端子19には4本のリード線18の芯線がそれぞれ加締め接合されており(図1ではそのうちの2本のリード線18を示している。)、各リード線18は、後述するグロメット9を介してガスセンサ1の外部に引き出されている。また、セパレータ8の外周面には、径方向外側に突出するフランジ部81が設けられており、そのフランジ部81よりも先端側の外周面に、略円筒状の保持金具85が嵌挿されている。
【0032】
また、セパレータ8の後端側には、フッ素系ゴムからなるグロメット9が配置されている。図2に示すように、グロメット9は、軸線O方向を高さ方向とする略円柱状に形成された部材であり、軸線O方向に貫通する大気連通孔91および4つのリード線挿通孔92を有する。大気連通孔91は、グロメット9の径方向中央に形成され、リード線挿通孔92は、大気連通孔91よりも外周側にて大気連通孔91を取り巻くように、周方向に等間隔となる位置にそれぞれ形成されている。大気連通孔91は、図1に示すように、さらにセパレータ8の収容部82を介して、ガスセンサ1内(後述する外筒3内)に大気を導入するために設けられたものである。外筒3内では、検出素子6が、後端部66を突き出した形態で主体金具5に保持されているが、その検出素子6の有底筒内に形成された基準電極62が、大気に晒されるように構成されている。そして図3に示すように、4つのリード線挿通孔92には、前述した4本のリード線18が、それぞれ独立に挿通される。なお、グロメット9が特許請求の範囲における「栓部材」に相当する。
【0033】
また、図2、図3に示すように、グロメット9がガスセンサ1へ組み付けられた際に後端側を向く後端面99には、大気連通孔91の形成位置を起点とし、外周側へ向けて径方向に沿って溝状に延びる4つの溝部93が形成されている。この溝部93は、グロメット9の先端側に向かって切り欠いており、底面94及び底面94と後端面99とを接続する2つの側面95にて形成されている。各溝部93は、後端面99上に開口する4つのリード線挿通孔92の位置を避けるように、それぞれ隣り合う2つのリード線挿通孔92間を通して配置されている。よって、後端面99は、溝部93によって4つの区画に分割されている。
【0034】
図1に示すように、グロメット9の大気連通孔91内には、フィルタ部材87およびその留め金具88が挿入されている。フィルタ部材87は、例えばPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素樹脂から形成されたミクロンサイズの網目構造を有する薄膜状のフィルタであり、水滴等は通さず大気は連通可能に構成されたものである。また、留め金具88は筒状に形成された部材であり、自身の外周と大気連通孔91の内周との間にフィルタ部材87を挟み、グロメット9に固定する。上記したグロメット9の溝部93は、フィルタ部材87を通過できなかった水滴等がフィルタ部材87上で溜まらないように、外周側へ導く流路を形成するものである。そのため、フィルタ部材87の後端が溝部93の底面94よりも後端側に配置されていることが好ましい。なお、溝部93は、径方向外側から中央側へ向かうにつれ軸線O方向先端側から後端側へ向かう、傾斜を有していてもよい。
【0035】
次に、主体金具5の後端側には、軸線O方向に延びる筒状の外筒3が組み付けられている。図4に示すように、外筒3は、SUS304等のステンレス鋼を軸線O方向に沿って延びる筒状に形成し、さらに略中央より先端側(図4において下側)に位置する先端部31を大径に形成したものである。先端部31の内径は、先端部31を主体金具5の後端係合部58(図1参照)に係合させるため、後端係合部58の外径より大きく形成されている。また、図3,図4に示すように、外筒3の後端側に位置する後端部38の後端は径方向内向きに折り曲げられて連結部32を形成しており、連結部32の周方向の4箇所から、軸線Oへ向けて延びる板状をなす4本の腕部33が突出されている。
【0036】
そして、各腕部33は、円形板状の保護部34の外周にそれぞれ接続されている。保護部34は、図2に示す、グロメット9の大気連通孔91とほぼ同じ大きさの外径を有し、図1,図3に示すように、厚み方向を軸線O方向に合わせ、大気連通孔91に蓋をする配置となるように、腕部33に支えられている。また、図4に示すように、保護部34には後端側に向かって突出する突出部35が設けられている。この突出部35に設けられた開口は、大気連通孔91の開口(大きさ)よりも小さく形成(図1参照)されており、大気連通孔91内への飛石等の進入が防止されている。そして、突出部35の開口を通じ、外部と大気連通孔91内との通気(つまり外筒3の内部と外部との通気)が確保されている。このように保護部34を設けることで、大気連通孔91内に配置されたフィルタ部材87を、草木との接触や飛石等の衝突など、外部からの衝撃から保護し、破損を防止することができる。
【0037】
このような構造を有する外筒3は、図1に示すように、軸線O方向に連ねて配置された検出素子6の後端部66、セパレータ8およびグロメット9の各側面を、周方向に取り囲んだ状態で、主体金具5の後端側に配置される。外筒3の先端部31は、主体金具5の後端係合部58の外周に嵌められ、外周側から径方向内向きに加締められる。さらに先端部31の外周を一周してレーザ溶接が施されることで、外筒3が主体金具5に固定されている。
【0038】
また、セパレータ8のフランジ部81よりも先端側の部分の位置に対応する外筒3の側面は、外周を一周して径方向内向きに加締められている。この位置には保持金具85が配置されており、保持金具85は、自身の内部にセパレータ8を保持した状態で、外筒3内に加締め保持される。また、セパレータ8のフランジ部81よりも後端側の部分の位置に対応する外筒3の側面も、周方向の複数箇所において、径方向内向きに加締められている。この部分の加締めはフランジ部81の後端に接する位置に行われ、この加締め部分と保持金具85とでフランジ部81が挟まれて、セパレータ8の軸線O方向への移動が規制されている。
【0039】
そして、外筒3が主体金具5に固定されると、図1に示すように、外筒3に設けられた突出部35は、グロメット9の後端面99よりも先端側に配置されることになる。つまり、突出部35が、グロメット9内に配置されていることになる。これにより、リード線18を配線するときにリード線18が突出部35のエッジに引っかかることがない。その結果、リード線18が損傷することを防止できる。
【0040】
また、突出部35が、グロメット9内に配置されているので、飛石が突出部35に衝突しにくくなり、突出部35に形成された開口の通気性を良好に維持できるとともに、保護部34が変形することによりフィルタ部材87が外部に露出され、草木との接触や飛石等の衝突による外部からの衝撃をフィルタ部材87が受けてフィルタ部材に破損が生じることを防止できる。
【0041】
さらに、腕部33と保護部34が外筒3と一部材にて形成されているので、部品点数を減らすことができる。
【0042】
また、図1に示すように、外筒3の後端部38内に配置されたグロメット9の外周を取り囲む外筒3の後端部38が、外周側から径方向内向きに加締められており、グロメット9が外筒3に固定されている。このように、外筒3を径方向内側に加締めることでグロメット9が外筒3内に保持される構成では、グロメット9に加締めによる応力が加わり、グロメット9がガスセンサ1の後端側に膨らむ。よって、このグロメット9が後端側に膨らむことを利用することで、突出部35をグロメット9の後端面99よりも先端側に容易に配置することができる。その結果、リード線18が損傷することを容易に防止できる。
【0043】
また、腕部33は、図1に示すように、セパレータ8の後端側に配置されるグロメット9と外筒3の後端部38内に配置されるとともに、4区画に分割されたグロメット9の後端面99は、4本の腕部33間を抜けて、外筒3から後端側に突出し、腕部33は図3に示すように、溝部93内に配置される。このように、腕部33を溝部93に配置することで、飛石が腕部33に衝突しにくくなる。これにより、腕部33が変形することにより保護部34が移動してフィルタ部材87が外部に露出されることを防止できる。その結果、草木との接触や飛石等の衝突による外部からの衝撃をフィルタ部材87が受けてフィルタ部材87に破損が生じることをより防止できる。
【0044】
さらに、腕部33をグロメット9の溝部93内に配置できるため、保護部34や腕部33がガスセンサ1の周方向に回転することを防止でき、リード線18が保護部34や腕部33に接触し、損傷することを防止できる。
【0045】
なお、図1に示すように、腕部33を溝部93の底面94と間隙T1を設けて配置している。これにより、グロメット9が排気管や排気ガス等から受ける熱によって熱膨張し、ガスセンサ1の後端側に膨らんだとしても、グロメット9の溝部93が腕部33に引っかかることが無い。その結果、グロメット9における溝部93と他の部位(例えば、後端面99を形成する4箇所の部位)との膨張割合に差が生じにくく、グロメット9の溝部93にクラック(亀裂)が生じることを抑制できる。
【0046】
さらに、腕部33を複数有することで、1つの腕部33に捻りが加わった場合でも、他の腕部33により捻りを緩和するので、保護部34がグロメット9の大気連通孔91を外筒3の後端側から確実に覆うことができる。そして腕部33を複数有する場合に、グロメット9に複数設けられた溝部93内に腕部33のそれぞれが配置されることで、保護部34や腕部33がガスセンサ1の周方向に回転することを確実に防止でき、リード線18が保護部34や腕部33に接触し、損傷することを確実に防止できる。
【0047】
次に、ガスセンサ1の製造方法の一例を、以下の手順に説明する。
まず、ガスセンサ1製造する際に用いられる取付治具400の構造について、図5〜図8を参照して説明する。図5は、取付治具400の斜視図である。図6は、取付治具400を取付方向の前方から(図5における矢印C方向に)見た図である。図7は、取付治具400を取付方向の後方から(図5における矢印D方向に)見た図である。図8は、図5(または図6)の2点鎖線で示す屈曲線E−Eにおいて矢視方向から見た取付治具400の屈曲断面図である。
【0048】
図5に示す取付治具400は、ガスセンサ1(図1参照)を組み立てる際に、外筒3を配置するための治具であり、例えばニトリルゴム(NBR)から作製され、取付方向に沿った中心軸P(図中1点鎖線で示す。)を有する円柱形状をなしている。図5〜図8に示すように、取付治具400は、取付方向の後方側にて拡径され段状をなす基部420を有し、その基部420から取付方向前方側へ向けて突出するように、保持部410が形成されている。この保持部410は、外筒3を取付治具400自身と一体に保持するための部位であり、具体的に、外筒3の保護部34と腕部33と後端部38とに囲まれてなる間隙(図4参照)に挿入可能な突出部411が、周方向に4つ並んで配置された構成をなす。外筒3を保持する際には、中心軸Pの周方向にて隣り合う2つの突出部411の側面412間に、腕部33がそれぞれ挿入される。
【0049】
また、各突出部411の中心軸P側を向く内面413は、中心軸Pを囲み保護部34が挿入される通路を形成する。その際に保護部34が負荷を受けるように、通路の内径は保護部34の外周の大きさよりもやや小さく形成されている。そして図8に示すように、保持部410の基部420側の根元付近において、内面413の形成する通路は拡径されており、保護部34がこの位置に移動すれば、保護部34は各内面413より受ける負荷から解放される。このとき、保護部34と基部420との接触を防止するため、基部420には、突出部411の内面413が形成する通路に連続する凹部状の収容部421が形成されている。さらに突出部411の外面414は、外筒3の後端部38との間に間隙を有する位置に形成されている。ところで、保持部410の突出部411はそれぞれ基部420から突出する形態であるが、後述するガスセンサ1の製造過程において、外筒保持部410の取付方向の先端面415がグロメット9の後端面99に当接した際、外筒3がグロメット9の溝部93の底面94に当接しないように、突出部411の基部420からの突出長さが調整されている。つまり、取付治具400に外筒3を保持した際に、突出部411の先端面415は、少なくとも腕部33の位置よりも、取付方向前方に配置される。
【0050】
また、図5〜図8に示すように、取付治具400の外周面には、中心軸Pに沿って保持部410の取付方向先端面から基部420の取付方向後端面へ貫く溝状をなす4本のリード線保持部430が形成されている。リード線保持部430は、保持部410の中心軸Pに対する各突出部411の断面において中央の位置に設けられた、円形状の断面を有する底部壁面431と、底部壁面431の内径(断面の直径)より細幅にて対向する側部壁面432とから構成される。底部壁面431の内径はガスセンサ1のリード線18(図1参照)の外径と略同径に形成されている。このリード線保持部430にリード線18が挿入された際に、リード線18は底部壁面431内に配置されるが、側部壁面432がリード線18の外径よりも細幅となるのでリード線18の抜け防止として機能する。また、外筒保持部410の取付方向の先端面415がグロメット9の後端面99に当接した際に、グロメット9のリード線挿通孔92と取付治具400の底部壁面431とが連結されるように、中心軸Pと直交する断面における4つの底部壁面431の中心軸Pに対する配置関係が、グロメット9の軸線Oと直交する断面における4つのリード線挿通孔92の軸線Oに対する配置関係と略一致するように構成されている。また、基部420の外径は、各突出部411の外面414の外径よりも大きく形成されている。このため、基部420におけるリード線保持部430の溝の深さは保持部410における溝の深さよりも深く、側部壁面432によるリード線18の抜け防止は、基部420側にて、より確実になされる。
【0051】
次に、この取付治具400を用い、ガスセンサ1を製造する方法について、図9〜図12を参照して説明する。図9は、保持工程を示す図である。図10は、リード線保持工程を示す図である。図11は、配置工程を示す図である。図12は、ずらし工程を示す図である。なお、図9〜図12のガスセンサ1や取付治具400の断面図は、図3において点線で示す屈曲線Zにて矢視方向からみた場合を例にして示したものである。以下では外筒3をグロメット9に取り付ける過程を中心に説明するが、ガスセンサ1のその他の部位の製造過程については公知であるため省略あるいは簡略化して説明する。
【0052】
図1に示す、ガスセンサ1の主体金具5は、SUS430等のステンレス鋼からなる棒状の鋼材に鍛造加工を施し、次いで切削加工を施して、工具係合部53や後端係合部58、雄ねじ部52、筒孔55等の形状を成形した後、雄ねじ部52にねじ山を転造して作製される。また、検出素子6は、有底筒状に形成した固体電解質体61の表面上に、例えばメッキにより基準電極62や検出電極63を形成し、さらに検出電極63の表面上を覆って電極保護層を形成してから焼成することにより、作製される。そして、別過程で作製したプロテクタ4を溶接により主体金具5に接合し、その主体金具5の筒孔55内に検出素子6を加締め保持することにより、ガスセンサ1の先端側の組立中間体が作製される。
【0053】
一方、導電性の板材から作製した4つの接続端子19のそれぞれにリード線18の芯線を加締めて接合し、そのうちの2つの接続端子19をヒータ7の電極71に接続する。これら接続端子19とヒータ7をセパレータ8内に収容すると共に、リード線18をセパレータ8及びグロメット9に挿通する。なお、グロメット9の大気連通孔91内には、フィルタ部材87およびその留め金具88が挿入されている。
【0054】
[保持工程]
次に、図9に示すように、グロメット9のリード線挿通孔92から引き出された4本のリード線18を、外筒3の保護部34と腕部33と後端部38とに囲まれてなる間隙(図4参照)のそれぞれに、腕部33や保護部34には接触しないように挿通させる。この状態で取付治具400の取付方向前方側を外筒3に向け、中心軸Pを外筒3の軸線Oに揃え、外筒の保護部34と腕部33と後端部38とに囲まれてなる間隙のそれぞれに、保持部410の各突出部411を挿入する。つまり、中心軸Pに対する周方向にて隣り合う各突出部411の側面412間に、腕部33を通し、4つの突出部411の中心軸P側を向くそれぞれの内面413間に、保護部34を配置させる。これにより、取付治具400と外筒3とが互いに位置決めされる。そして、取付治具400をそのまま軸線Oに沿って取付方向に移動させ、外筒3の保護部34を取付治具400の収容部421内に収容すると、内面413が保護部34の抜け防止として機能し(図10参照)、外筒3は取付治具400に一体に保持される。
【0055】
[リード線保持工程]
次に、図10に示すように、4本のリード線18を、それぞれが配置されている間隙に挿入された取付治具400の突出部411に設けられているリード線保持部430の側部壁面432間に挿入し、底部壁面431に配置する。各リード線18は、自身の外径より細幅の側部壁面432が抜け防止として機能し、それぞれが配置された底部壁面431内にて保持される。従って、リード線18は、突出部411に周囲を囲われて、外筒3の保護部34、腕部33および後端部38との接触から保護される。
【0056】
[配置工程]
前述したように、取付治具400はNBRからなるため、リード線保持部430の底部壁面431でリード線18を保持しつつも、リード線18に対し滑り性を有する。図11に示すように、取付治具400に一体に保持された外筒3をリード線18の延伸方向にスライド移動させると、取付治具400および外筒3はリード線18に案内されて、グロメット9の後端側に達する。取付治具400によって外筒3とリード線18とが接触しないように互いの位置関係が位置決めされるので、このスライド移動の際に外筒3でリード線18を擦ったり損傷させたりする虞がない。
【0057】
取付治具400および外筒3がグロメット9の後端側に達したとき、突出部411の基部420からの突出長さの規定に従い、外筒3の腕部33がグロメット9の溝部93の底面94に接触するよりも先に、取付治具400の先端面415がグロメット9の後端面99に当接する。このとき、リード線18に案内されて、取付治具400のリード線保持部430の底部壁面431がグロメット9のリード線挿通孔92に連結する配置となる。これにより、グロメット9に対し取付治具400が位置決めされるため、各突出部411の側面412間は、グロメット9の各溝部93に連結する配置となり、内面413の形成する通路は、グロメット9の大気連通孔91に連結する配置となる。
【0058】
[ずらし工程]
そして図12に示すように、外筒3を軸線Oに沿って取付方向に押圧する。外筒3の保護部34は、取付治具400の突出部411の内面413に案内されて、グロメット9の大気連通孔91へ向かい、腕部33は、各突出部411の側面412間に案内されて、グロメット9の各溝部93へ向かう。そして、腕部33は、それぞれグロメット9の溝部93内に収容され、保護部34は、フィルタ部材87の後端側にて大気連通孔91の内周を軸線O方向に延ばした領域に配置されて、大気連通孔91を塞ぐ。このとき、セパレータ8のフランジ部81が外筒3に係合することで、腕部33が溝部93の底面94に当接することなく、腕部33は、溝部93の底面94と間隙Sを設けて配置されることとなる。なお、間隙Sは間隙T1よりも大きな距離を有している。これは、後工程にあるグロメット9が外筒3により加締め固定されることで、グロメット9が後端側に膨らむことを考慮している。
【0059】
このように、外筒3が溝部93の底面94に接触するよりも先に取付治具400がグロメット9に接触し、腕部33や保護部34をそれぞれ溝部93や大気連通孔91に案内する経路を形成した上で、外筒3がグロメット9へ係合される。このとき、保護部34とフィルタ部材87を離間させつつ、外筒3の腕部33をグロメット9の溝部93内に配置するように外筒3を押圧する。これにより、図12にように、フィルタ部材87をグロメット9に組付けた際に、フィルタ部材87を溝部93よりも後方側に露出させて配置する形態であっても、外筒3をグロメット9に外嵌する際に、外筒3の保護部34がグロメット9に接触することを抑制でき、フィルタ部材87に破損が生じることを抑制できる。
また、腕部33が溝部93の底面94を押圧しながらセパレータ8とグロメット9と外筒3とを組み付けることがないので、グロメット9の溝部93が腕部33により収縮し、グロメット9における溝部93と他の部位(例えば、後端向き面99を形成する4箇所の部位)との収縮割合に差が生じ、グロメット9の溝部93にクラック(亀裂)が生じることを抑制できる。
【0060】
その後の製造過程で取付治具400が取り除かれ、外筒3とセパレータ8との間に保持金具85が挿入されて、外筒3を加締めることで外筒3にセパレータ8が保持される。さらに、外筒3の後端部38を加締め、グロメット9を外筒3に固定すると共に、外筒3の先端部31を主体金具5の後端係合部58に係合し、先端部31の周囲を加締めると共に、レーザ溶接を施して、ガスセンサ1が完成する。
【0061】
次に、本発明に係るガスセンサの第2の実施形態として、ガスセンサ200をその一例に、図13〜図16を参照しながら説明する。図13は、第2の実施形態のガスセンサ200の構造を示す縦断面図である。図14は、第2の実施形態の保護部材100の斜視図である。図15は、ガスセンサ200を軸線O方向後端側(図1における上側)から見た図である。図16は、図15の1点鎖線で示す屈曲線A−Aにおいて矢視方向から見たガスセンサ200の後端側の部分拡大断面図である。
【0062】
なお、第2の実施形態のガスセンサ200は、第1の実施形態のガスセンサ1の外筒3に保護部34、腕部33が形成されたものではなく、図14に示すように、保護部110、腕部120が設けられた保護部材100を外筒103に機械接合されたものである。なお、ガスセンサ200を構成する部品のうち、外筒103、保護部材100以外の部品はガスセンサ1のものと同一のものが用いられている。従ってここでは外筒103、保護部材100について説明し、その他の部位については説明を省略もしくは簡略化する。
【0063】
図13に示すように、主体金具5の後端係合部58には、SUS304等のステンレス鋼からなる筒状の外筒103の先端部131が係合されている。この先端部131は外周側から加締められ、更に外周を一周してレーザ溶接が施されて、後端係合部58に接合されている。外筒103は、軸線O方向に沿って後端側へ向けて延びており、検出素子6の後端部66やそれよりも後端側に配置されるセパレータ8の外周を径方向に取り囲んでいる。セパレータ8の配置位置に相当する外筒103の外周面は径方向に加締められており、これにより、保持金具85が、自身の内部にセパレータ8を保持しつつ、外筒103の内側にて加締め保持されている。
【0064】
また、外筒103の後端側の開口132には、フッ素系ゴムからなるグロメット9が嵌合されている。このグロメット9は、外筒103の後端部138が外周側から径方向内側に加締められることで、外筒103に固定されている。なお、加締めによって形成された加締部135は、外筒103の外周面において径方向に凹んだ状態で周方向に一周する溝状をなしている。
【0065】
次に、外筒103の後端側には、グロメット9の大気連通孔91を覆い、草木との接触や飛石等の衝突など、外部からの衝撃からフィルタ部材87を保護して破損を防止するための保護部材100が組み付けられている。保護部材100は、SUS等のステンレス鋼の板材にプレス加工等を施し、図14に示すように、キャップ状に形成したものである。
【0066】
保護部材100は、金属板を円形板状に加工した保護部110を有しており、その保護部110には、金属板を底面側(図14における下側)から厚み方向に押し込むように陥没させ、金属板を貫通する開口116が形成された2つの陥没部115が設けられている。この保護部110の周縁には、径方向外側へ向けて四方に延びる板状をなす4本の腕部120が形成されている。
【0067】
また、各腕部120の保護部110とは反対側の端部は、円環状の連結部140によって、それぞれが周方向に連結されている。そして連結部140の外周側の周縁は、保護部110の厚み方向に延びており、筒状をなす筒状部150が形成されている。筒状部150の内径は外筒103の後端部138の外径よりもやや大きく形成され、厚み方向の長さは、外筒103の後端から加締部135よりもさらに先端側に延びる大きさに形成されている。また、筒状部150には、厚み方向先端側が筒状部150に接続し、厚み方向後端側が内向きに押し込まれたコの字状の切欠部155が設けられている。切欠部155は、筒状部150の周方向に略等間隔となる6箇所に設けられている(6箇所とするのは一例であり、1箇所以上設ければ足りる。)。また、筒状部150の厚み方向先端側には、筒状部150を押し込んで内向きに突出させた突起部158が設けられている。突状部158は、切欠部155とは重ならず、周方向で略等間隔となる3箇所に設けられている(図3ではそのうちの2箇所を示している。)。なお、突状部158の形成箇所を3箇所とするのは一例であるが、保護部材100を外筒103に取り付けた際のぐらつきを抑制する観点から、突状部158は3箇所以上設けることが好ましい。
【0068】
このような構成の保護部材100は、図15、図16に示すように、筒状部150を厚み方向先端側から外筒103の後端部138に被せ、フィルタ部材87の後端側にて大気連通孔91の後方側に保護部110を配置させ、この保護部110で大気連通孔91を塞ぐようにして、ガスセンサ200への取り付けが行われる。このとき、保護部材100の腕部120は、それぞれグロメット9の溝部93内に配置され、さらに、筒状部150は、外筒103の後端部138の外周面を取り囲むように配置される。筒状部150の突状部158は、外筒103の外周面のうち、加締部135の形成されていない部位の外周面に当接し、この突状部158によって、筒状部150が外筒103に対し径方向に位置決めされる。また、筒状部150の切欠部155のそれぞれが、外筒103の加締部135により形成された溝状の凹部内の壁面に当接する。
【0069】
さらに、保護部材100は、外筒103の後端側に筒状部150を外側から嵌め込み、加締部135に切欠部155を係止させる。このとき、保護部材100の切欠部155はバネ性を有するため、外筒103の加締部135に対し付勢力をもって係合を維持することができる。さらに、突状部158により筒状部150の径方向の位置決めがなされるため、保護部材100は、外筒103の後端側においてぐらつくことなく確実な機械接合をなすことができる。これにより、大気連通孔91内に配置されるフィルタ部材87の後端側にて大気連通孔91の後方向に配置される保護部110は、草木との接触や飛石等の衝突など、外部からの衝撃を受けても、これら衝撃に対するフィルタ部材87の保護を維持することができ、フィルタ部材87の破損を確実に防止することができる。一方で、この保護部110で大気連通孔91を塞ぐものの、保護部110の陥没部115に設けられた開口116によって、保護部110を介した大気連通孔91内の通気性が確保できる。
【0070】
そして、保護部材100が外筒3に固定されると、図16に示すように、保護部材100に設けられた陥没部115は、グロメット9の後端面99よりも先端側に配置されることになる。つまり、陥没部115が、グロメット9内に配置されていることになる。これにより、リード線18を配線するときにリード線18が陥没部115のエッジに引っかかることがない。その結果、リード線18が損傷することを防止できる。
【0071】
また、陥没部115が、グロメット9内に配置されているので、飛石が陥没部115に衝突しにくくなり、陥没部115に形成された開口116の通気性を良好に維持できるとともに、保護部110が変形することによりフィルタ部材87が外部に露出され、草木との接触や飛石等の衝突による外部からの衝撃をフィルタ部材87が受けてフィルタ部材に破損が生じることを防止できる。
【0072】
さらに、複雑な形状を有する保護部110、腕部120及び筒状部150を外筒103とは別部材の保護部材100として準備することで、容易に腕部120及び保護部110が外筒103と結合する構成を得ることができる。
【0073】
また、腕部120は、図13に示すように、セパレータ8の後端側に配置されるグロメット9と外筒103の後端部138内に配置されるとともに、4区画に分割されたグロメット9の後端面99は、4本の腕部120間を抜けて、外筒103から後端側に突出し、腕部120は図15に示すように、溝部93内に配置される。このように、腕部120を溝部93内に配置することで、飛石が腕部120に衝突しにくくなる。これにより、腕部120が変形することにより保護部110が移動してフィルタ部材87が外部に露出されることを防止できる。その結果、草木との接触や飛石等の衝突による外部からの衝撃をフィルタ部材87が受けてフィルタ部材87に破損が生じることをより防止できる。
【0074】
さらに、腕部120をグロメット9の溝部93内に配置できるため、保護部110や腕部120がガスセンサ200の周方向に回転することを防止でき、リード線18が保護部110や腕部120に接触し、損傷することを防止できる。
【0075】
さらに、図16に示すように、腕部120を溝部93の底面94と間隙T2を設けて配置している。これにより、グロメット9が排気管や排気ガス等から受ける熱によって熱膨張し、ガスセンサ200の後端側に膨らんだとしても、グロメット9の溝部93が腕部120に引っかかることが無い。その結果、グロメット9における溝部93と他の部位(例えば、後端面99を形成する4箇所の部位)との膨張割合に差が生じにくく、グロメット9の溝部93にクラック(亀裂)が生じることを抑制できる。
【0076】
さらに、腕部120を複数有することで、1つの腕部120に捻りが加わった場合でも、他の腕部120により捻りを緩和するので、保護部110がグロメット9の大気連通孔91を外筒103の後端側から確実に覆うことができる。そして腕部120を複数有する場合に、グロメット9に複数設けられた溝部93内に腕部120のそれぞれが配置されることで、保護部110や腕部120がガスセンサ200の周方向に回転することを確実に防止でき、リード線18が保護部110や腕部120に接触し、損傷することを確実に防止できる。
【0077】
次に、ガスセンサ200の製造方法の一例を、以下の手順に説明する。
なお、第2の実施形態のガスセンサ200の製造方法は、第1の実施形態のガスセンサ1の製造方法と同様に取付治具400を用いて行われるが、第1の実施形態のように外筒103を取付治具400で保持するのではなく、取付治具400に保護部材100を保持させて行われるものである。以下、第1の実施形態のガスセンサ1の製造方法と同様の製造方法については、説明を省略もしくは簡略化する。
【0078】
まず、主体金具5に検出素子6を保持させると共に、プロテクタ4を溶接により接合した組立中間体が作製される。
一方、導電性の板材から作製した4つの接続端子19のそれぞれにリード線18の芯線を加締めて接合し、そのうちの2つの接続端子19をヒータ7の電極71に接続する。これら接続端子19とヒータ7をセパレータ8内に収容すると共に、リード線18をセパレータ8及びグロメット9に挿通する。そして、リード線18が挿通されたセパレータ8及びグロメット9を外筒103内に配置する。
その後、外筒103とセパレータ8との間に保持金具85を挿入して、外筒103を加締めることで外筒103にセパレータ8が保持される。さらに、外筒103の後端部138を加締め、グロメット9を外筒103に固定すると共に、外筒103の先端部131を主体金具5の後端係合部58に係合し、先端部131の周囲を加締めると共に、レーザ溶接を施す。
【0079】
次に、保持工程、リード線保持工程、配置工程、ずらし工程を順に行う。なお、第1の実施形態のガスセンサ1の製造方法では、保持工程では、取付部材400を外筒3に一体に保持させ、配置工程では、取付部材400が一体となった外筒3をグロメット9の後端側に達するように配置し、ずらし工程では、外筒3を軸線Oに沿って取付方向に押圧した。
これに対して、第2の実施形態のガスセンサ200の製造方法では、保持工程では、取付部材400を保護部材100に一体に保持させ、配置工程では、取付部材400が一体となった保護部材100をグロメット9の後端側に達するように配置し、ずらし工程では、保護部材100を軸線Oに沿って取付方向に押圧している。
そして、ガスセンサ200が完成する。
【0080】
尚、上記実施形態に示される構成は例示であり、各種の変更が可能であることは言うまでもない。
【0081】
また、第1、第2の実施形態では、保護部34、110を支える腕部33、120の数を4本又は2本としたが、1本の腕部で保護部を支えてもよい。もちろん、腕部は3本でも5本でも、それ以上の本数を設けてもよい。また、グロメット9の溝部93の数も、腕部の数に応じて増減させてもよいし、あるいは溝部93の数が腕部の本数よりも多くてもよい。
【0082】
また、第2の実施形態では、保護部材100を外筒103に機械接合としたが、これに限らず、外筒103の加締め部135にあわせて保護部材100を加締めることにより、保護部材100を外筒103に保持させても良い。
【0083】
また、第1、第2の実施形態のガスセンサ1、200では、検出素子6が有底筒状にて構成されていたが、これに限らず、板状の検出素子であっても良い。
【符号の説明】
【0084】
1、200・・・・・・・ガスセンサ
18・・・・・・・・・・リード線
3、103・・・・・・・外筒
33、120・・・・・・腕部
34、110・・・・・・保護部
35・・・・・・・・・・突出部
4・・・・・・・・・・・プロテクタ
5・・・・・・・・・・・主体金具
6・・・・・・・・・・・検出素子
8・・・・・・・・・・・セパレータ
81・・・・・・・・・・フランジ部
9・・・・・・・・・・・グロメット
91・・・・・・・・・・大気連通孔
92・・・・・・・・・・リード線挿通孔
93・・・・・・・・・・溝部
94・・・・・・・・・・底面
95・・・・・・・・・・側面
100・・・・・・・・・保護部材
115・・・・・・・・・陥没部
400・・・・・・・・・取付部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向に延びると共に、自身の先端側に被検出ガスを検出するための検出部を有する検出素子と、
該検出部を自身の先端から突出させつつ、前記検出素子の径方向周囲を取り囲む主体金具と、
前記主体金具の後端側に配置され、自身の先端部が前記主体金具に固定される筒状の外筒と、
該外筒の内側に配置される栓部材であって、前記検出素子の検出信号を取り出すためのリード線が挿通されるリード線挿通孔、及び、通気性と防水性を有するフィルタ部材を介在させて前記外筒の内部と外部との大気連通を可能とする大気連通孔が、それぞれ軸線方向に延びるように形成された栓部材と、
を備えたガスセンサにおいて、
前記軸線方向後端側から前記栓部材の前記大気連通孔を覆うことで前記フィルタ部材を保護する保護部であって、前記大気連通孔の開口よりも小さい開口を有し、後端側に向かって突出する突出部を備える保護部が、外筒に結合されており、
前記突出部は、前記栓部材の後端面よりも先端側に配置されることを特徴とするガスセンサ。
【請求項2】
前記保護部から径方向に延びる腕部を有し、
前記腕部及び前記保護部は、前記外筒と一部材にて形成されてなることを特徴とする請求項1記載のガスセンサ。
【請求項3】
前記栓部材は、前記外筒を径方向内側に加締めることで、前記栓部材が前記外筒内に保持されることを特徴とする請求項2記載のガスセンサ。
【請求項4】
前記保護部から径方向に延びる腕部と、該腕部に接続し、前記外筒の周囲を覆う筒状部と、を有する保護部材を備え、前記筒状部が前記外筒に機械接合されて前記保護部材と前記外筒とが結合されていることを特徴とする請求項1記載のガスセンサ。
【請求項5】
前記栓部材は、自身の後端面側にて前記大気連通孔を起点に前記リード線挿通孔を避けて径方向外側に向かって延びると共に、前記栓部材の先端側に向かって切り欠く溝部を有し、
前記腕部の少なくとも一部が前記栓部材の前記溝部内に配置されている請求項2乃至4のいずれか一項に記載のガスセンサ。
【請求項6】
前記溝部は、前記栓部材の後端面側にて前記大気連通孔を起点に前記リード線挿通孔を避けて径方向外側に向かって複数延びており、
前記腕部は、前記栓部材の前記溝部内に複数配置される請求項5記載のガスセンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−215094(P2011−215094A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−85762(P2010−85762)
【出願日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【Fターム(参考)】