ガスハイドレート位置探知用方法及び装置
【課題】ガスハイドレート堆積物を位置探査する改良した技術を提供する。
【解決手段】ガスハイドレートが垂直又はほぼ垂直な岩脈内に蓄積する場合があるという可能性を考慮する電磁探査又は地震探査のいずれかを使用してガスハイドレート堆積物を検知・特性付ける調査パラダイムを提供。ガスハイドレート安定ゾーンの存在、ガスハイドレート安定ゾーンの下側にガスの豊富な供給源が存在する(又は存在した)ことの表示、及びガスの高いフラックスをガスハイドレート安定ゾーン内へ輸送することの可能性表示等の地質学的要因を調査ストラテジーの一部として考慮することが可能である。ウォークアウェイ垂直地震プロファイル技術等の地震技術、又は垂直又はほぼ垂直な岩脈の存在を検知すべく適合された電磁探査を使用してデータを収集することが可能である。1つの例においては、データ処理及び採取技術をハイドレート岩脈を検知すべく適合することが可能である。
【解決手段】ガスハイドレートが垂直又はほぼ垂直な岩脈内に蓄積する場合があるという可能性を考慮する電磁探査又は地震探査のいずれかを使用してガスハイドレート堆積物を検知・特性付ける調査パラダイムを提供。ガスハイドレート安定ゾーンの存在、ガスハイドレート安定ゾーンの下側にガスの豊富な供給源が存在する(又は存在した)ことの表示、及びガスの高いフラックスをガスハイドレート安定ゾーン内へ輸送することの可能性表示等の地質学的要因を調査ストラテジーの一部として考慮することが可能である。ウォークアウェイ垂直地震プロファイル技術等の地震技術、又は垂直又はほぼ垂直な岩脈の存在を検知すべく適合された電磁探査を使用してデータを収集することが可能である。1つの例においては、データ処理及び採取技術をハイドレート岩脈を検知すべく適合することが可能である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスハイドレート堆積物を位置探知するためのシステム及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガスハイドレートは一種のクラスレート(clathrate、即ち格子状)化合物であって、室温及び圧力において通常ガス層にある個々の小さな分子が水分子の固体結晶母体内の場所を占有している。天然ガスハイドレート貯留層においては、ゲスト分子は純粋なメタンか又は天然ガスを有する化合物の混合物である。ガスハイドレート堆積物が形成されるためには、ガスの供給源が必要である。通常メタンを有している天然ガスのシープ即ち染み出た所は世界中多くの場所において一般的である。天然ガスハイドレート堆積物は陸地環境及び海洋環境の両方において見出されている。陸地のハイドレートは極寒地帯における永久凍土の中及びその下側に蓄積している。海洋ガスハイドレートは少なくとも約500メートルの水深における海底下沈澱物内にトラップした状態で見つけられる場合がある。
【0003】
ガスハイドレートは高圧及び減少された温度において形成する。海底の堆積物におけるガスハイドレート安定ゾーンは、図1に示したように、水熱勾配(海底ガスハイドレートの場合)、地熱勾配及びクラスレート層境界に関して温度−深さ(圧力)プロファイル上に描写することが可能である。図1を参照すると、海底環境におけるメタンハイドレート安定性の圧力・温度依存性を示した相線図が示されている。垂直軸上は、海面下側の深さ(メートル)で圧力が表わされている(この変換は10MPa/kmの通常の海洋及び間隙圧勾配を仮定している)。水平軸は摂氏における温度である。海底は点線100で示してある。地熱勾配はライン104として示してあり且つ水熱勾配はライン106として示してある。ハイドレートは、与えられた圧力における温度がその圧力におけるハイドレート遷移温度よりも低い場合に存在する場合がある。ライン102は温度及び圧力の関数としてのハイドレート・ガス層境界を示している。このラインより下の温度及び圧力条件の場合には、メタンはハイドレートの形態で存在する場合がある。このラインより上の温度及び圧力条件の場合には、メタンはガス層で存在する場合がある。ハイドレート層境界の位置は、主に、ガス組成の関数であるが、間隙流体組成(例えば、塩の存在)、間隙寸法、及び、多分、堆積物鉱物学によって制御される場合がある。例えば、水に対して塩化ナトリウムを添加するとライン102を左側へシフトさせる場合があり、一方二酸化炭素、硫化水素及びその他の炭化水素を添加するとライン102を右側へシフトさせる場合がある。
【0004】
ハイドレートは、固体の地球の地熱勾配104が相ライン102を交差する等温線の上側で安定であり、それは、典型的に、海底の数百メートル下側である。これはガスハイドレート安定ゾーン108の基底である。ガスハイドレート安定ゾーン108の上側の境界は、水熱勾配106とハイドレート相境界102との交差による場合がある。水熱及び地熱勾配は地域依存性であり、且つ地理上の位置及び構造的環境と共に著しく異なる場合がある。天然ガスハイドレートは水よりも密度が低いので、ガスハイドレート安定ゾーンの水の領域内には見出されることはない。何故ならば、水の中で形成するハイドレートは表面へ浮遊して分解するからである。然しながら、ハイドレートは、効果的に、海底下堆積物内にトラップされる。
【0005】
ハイドレートは、又、極寒領域における陸地表面下側のある深さの帯域において安定であり、永久凍土安定性の範囲とオーバーラップし且つその下側にある。図2は地球上の極寒環境におけるガスハイドレート安定ゾーン(GHSZ)を提示するガスハイドレート相線図を例示している。ガスハイドレートは、局所的な圧力においてガスハイドレート遷移温度(即ち、ガス形態とハイドレート形態との間の相境界が交差される圧力)より温度が低い場合に存在する。ガスハイドレート相境界はライン110として示してあり、点線112は地熱勾配を示しており、ライン114は淡水・氷相境界を示している。縦軸においては、通常の間隙圧力勾配100bar/km(10MPa/km)を仮定して、圧力が地表面下の深さへ変換されている。地球上のガスハイドレート調査プログラムは、シベリア、カナダ北極圏、アラスカのノーススローブ等の幾つかの区域において成功している。
【0006】
大陸縁辺上及び縁海におけるガスハイドレートの100を超える事象が文書化されており、ガスハイドレートが深海海洋環境において広く存在していることを暗示している。殆どの場合において、ハイドレート堆積物の位置及び地域的範囲は海底擬似反射面(BSR)と呼ばれるガスハイドレートの存在の特有の地震信号から推定される。このBSRは、多くの海洋地震画像において見られるものであり、海底と平行に走行し且つ海底から数百メートルの下側であり、且つガスハイドレート安定ゾーンの基底とほぼ一致する。世界中の種々の部分において見つけられた海底擬似反射面の探査は、海底のガスハイドレート内に蓄積されている有機体炭素の量が非常に大きいものであることを暗示している。広く引用される推定は、天然ガス、石炭及び石油を含む全ての回収可能な及び回収不可能な従来の化石燃料源が存在するのとほぼ2倍の量のガスハイドレートにおける有機体炭素が存在する可能性があることを予測している。更に、海洋ガスハイドレートは、主に大陸棚斜面上に見つけられるものと考えられており、それは、通常、沿岸国の排他的経済圏内にあり且つアメリカ合衆国、日本、インド及びその他における消費者の近くである。
【0007】
然しながら、海底堆積物内に蓄積されているガスハイドレートの実際の量は極めて不確かである。幾つかの主要な掘削キャンペーン(例えば、サウスカロライナ及びオレゴンの沖合い領域において)が行われており、且つ制限された深さのインターバルにおいて2,3の顕著な集中が見つかっているが、ガスハイドレートは掘削された殆どの位置におけるガスハイドレート安定ゾーンにわたって一般的に希薄である。
【0008】
ガスハイドレートに対する地震応答の別の特性はガスハイドレート安定ゾーン内の振幅ブランキングである。「ブランキング」とは、例えば、図3に示したように、地震画像における低振幅反射を有する深さインターバルのことを意味している。図3を参照すると、低振幅反射を有する領域116は海底100と海底擬似反射面118との間に見ることが可能である。地震画像における領域116の出現は振幅ブランキングと呼ばれる。ブランキングを説明するために多様な説明が提案されている。広く支持されている1つの説明は、未固結堆積物の音響速度を増加させるハイドレートは高空隙率(即ち、低速度)層内に形成する蓋然性が最も高く、従って隣りの層との音響コントラストを減少させるものであるとしている。ブランキングは、又、ハイドレート堆積物を育むものと考えられている海洋環境における堆積学的層序の崩壊によって説明されている。別の説明は、フレスネル(Fresnel)ゾーン内の垂直に変位された反射面からの破壊的な干渉が地震反射の振幅を減少させることを暗示している。4番目の説明は、ブランキングを、より深い断層へ接続されている場合のある水路を介して上方へ移動する液体及びガスの存在によるものとしている。これらの説明のうちのいずれもあり得るものであるが、それらのうちのいずれかと調査ストラテジーとの間の結びつきを確立することは困難なものであることが分っている。
【0009】
多数の理論的な研究が海底電磁探査の原理について記載している。然しながら、殆どの場合、このような研究は導電度が深さに関してのみ変化するという一次元地球モデルに基づくものであることを強調している。電磁界研究がバンクーバーの沖合い及びオレゴンの沖合いにおいて行われており、その場合に、地震及び掘削プログラムは、ガスハイドレートが存在するものであることを前もって示していた。然しながら、全てのハイドレート調査に対するデータ処理は、水平方向に層形成された地球を仮定しており、その場合に、電気的導電度は各水平な層内において等方的である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、以上の点に鑑みなされたものであって、上述した如き従来技術の欠点を改良し、ガスハイドレート堆積物を位置探査する改良したシステム及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
水平の横方向に伸びたハイドレートの蓄積の存在を仮定する従来の地震及び電磁ハイドレート調査プログラムは大陸棚斜面上のガスハイドレートの顕著な蓄積を見失っている場合があるということが次第に明らかとなっている。本発明の実施例によれば、少なくとも部分的に特定のハイドレート堆積物蓄積メカニズムに基づく場合のある調査パラダイムを含む方法及びシステムが提供される。海底擬似反射面が豊富なハイドレートの信頼性の指標であることの失敗、及びガスハイドレート安定ゾーンと一致して時々観測される地震振幅ブランキングは、ハイドレートが垂直な又はほぼ垂直なダイク(dike)即ち岩脈内に蓄積する場合があるというモデルと一貫性がある。現場での有機体炭素が制限されており、ハイドレートが形成すると自由な又は溶解しているガスに対しての透過性が減少されること、及び以下に説明するように、高空隙率貯留岩に対してハイドレートが移動により集中することができないことのために、豊富なハイドレートの蓄積をその他のメカニズムが発生させる蓋然性はより低いものと思われる。本調査パラダイムの実施例は、調査ストラテジーを従来の指標についての専らの信頼を超えて拡張し且つ地質学的及び地質工学的な推論を組込むものである。
【0012】
1実施例によれば、以下の要因を考慮し且つ経済的に顕著な量でガスハイドレートを見つけることの蓋然性を増加させることが可能である。
【0013】
1)適切な温度及び圧力条件。特に、ガスハイドレートは、上述した如くに、ガスハイドレート安定ゾーン内においてのみ形成することが可能である。
【0014】
2)ガスの豊富な供給源。以下に説明するように、現場での有機物の微生物分解によってのみ供給される貯留層が実質的なハイドレート堆積物を発生するのに充分なメタンを発生することは不可能であると思われる。従って、ガスのその他の供給源が存在する領域においてハイドレートを探すことがより適切であると思われる。
【0015】
3)発生原因が地殻変動であるか又は下側に存在するガスの蓄積からの間隙圧によって発生されるかに拘わらず、ガスハイドレート安定ゾーンを介してのフォールト(fault)即ち断層又はフラクチャ(fracture)即ち破砕が顕著なハイドレート堆積物と関連している場合がある。以下に説明するように、継続的な又は一時的なガスの流れが一連の平行なハイドレート岩脈を発生する場合がある。この幾何学的形状は、ハイドレート堆積物を検知し及び/又は特性付けるためのシステム及び方法を構築する場合に考慮することが可能である。
【0016】
4)堆積物のタイプもハイドレートを見つけることの蓋然性に影響を与える場合がある。特に、粗粒多孔性堆積物は、それらが従来の石油及びガスの堆積物に対してそうであるように、ハイドレートに対して好ましい貯留層である場合がある。
【0017】
本発明の実施例は、これらの要因を考慮に入れ且つ主に海底擬似反射面に基づく従来の調査プログラムよりも一層正確及び/又は信頼性のあるハイドレート堆積物を見付け出し且つ量を定めるためのシステム及び方法を構築することが可能である。
【0018】
1実施例によれば、ガスハイドレートを検知する方法が提供され、その方法は、垂直地震プロファイル技術を使用してある領域に関する地震データを収集し且つ少なくとも部分的に該地震データに基づいて少なくとも1つのハイドレート岩脈層を特性付けることを包含している。1つの例においては、該少なくとも1つのハイドレート岩脈層を特性付けることは、ハイドレート岩脈のディップ(dip)即ち傾斜及びストライク(strike)即ち走向のうちの少なくとも1つを推定することを包含することが可能である。別の例においては、該地震データの収集は、該領域内の坑井内に少なくとも1個の地震受信器を配備し、該坑井から第一距離離れた第一位置における海底地震供給源を活性化させて該少なくとも1個のハイドレート層上に入射する波を発生し、該少なくとも1個の受信器で該少なくとも1個のハイドレート岩脈層からの反射波エネルギを記録し、該海底地震供給源を該坑井から第二距離離れた第二位置へ移動し、且つ該供給源を活性すること及び反射波エネルギを記録することを繰返し行う、ことを包含することが可能である。別の例においては、該地震データを収集する場合に、該領域内の坑井内に少なくとも1個の地震受信器を配備し、該坑井から第一距離離れた第一位置における海底地震供給源を活性化させて該少なくとも1個のハイドレート岩脈層上に入射する波を発生し、該少なくとも1個の受信器で該少なくとも1個のハイドレート岩脈層からの反射波エネルギを記録し、所定の空間サンプリング分解能を達成するのに充分な量だけ該坑井内において該少なくとも1個の受信器を垂直方向に移動し、且つ該供給源を活性すること及び反射波エネルギを記録することを繰返し行う、ことを包含することが可能である。該受信器は、該供給源を活性化させ且つ反射波エネルギを記録するステップを繰り返す前又はその後に移動させることが可能である。更に、本方法は、該領域に関する地質情報を収集し、且つ少なくとも部分的に該地質情報に基づいて該領域における顕著なハイドレートの存在の蓋然性を決定することが可能である。地質情報を収集することは、例えば、ガスハイドレート安定ゾーンの位置を識別し、該ガスハイドレート安定ゾーン下側にガスの実質的な供給源が存在することを決定し、且つ該ガスハイドレート安定ゾーン下側から該ガスハイドレート安定ゾーン内へ延在する断層又は破砕のうちの少なくとも1つの存在を決定することのいずれか又は全てを包含することが可能である。
【0019】
別の実施例によれば、ガスハイドレートを検知する方法は、電磁探査技術を使用してある領域に関するデータを収集し、且つ少なくとも部分的に該データに基づいて少なくとも1個のハイドレート岩脈層を特性付けることを包含することが可能である。1つの例においては、該データを収集することは、巨視的海底下電気的異方性を検知すべく適合された送信器・受信器システムを使用して該領域の電磁的探査を実施することを包含することが可能である。別の例においては、該電磁的探査を実施することは、アンテナのクロスダイポール・ダイポールアレイを含む送信器・受信器システムを使用して該領域の電磁的探査を実施することを包含することが可能である。別の例においては、該データを収集する場合に、例えば、該領域における最大水平応力の方向を推定し、該最大水平応力の方向に対して平行な第一方向においてその場所にわたり送信器・受信器システムを牽引して第一データを収集し、該第一方向に対して垂直な第二方向においてその場所にわたり該送信器・受信器システムを牽引して第二データを収集し、且つ該第一データと第二データとを比較して表面下における巨視的電気的異方性の存在を検知することを包含することが可能である。更に、本方法は、更に、該領域に関する地質情報を収集し、且つ少なくとも部分的に該地質的情報に基づいて該領域における顕著なハイドレートの存在の蓋然性を決定することを包含することが可能である。地質情報を収集する場合に、例えば、ガスハイドレート安定ゾーンの位置を識別し、該ガスハイドレート安定ゾーン下側のガスの実質的な供給源の存在を決定し、且つ該ガスハイドレート安定ゾーン下側から該ガスハイドレート安定ゾーン内へ延在する断層又は破砕のうちの少なくとも1つの存在を決定することのいずれか又は全てを包含することが可能である。
【0020】
海洋ガスハイドレートを検知するための探査方法の1実施例は、ハイドレート岩脈の蓋然的な存在の地質表示に基づいて調査場所を選択し、該調査場所に関するデータを収集するために地震探査技術又は電磁探査技術のうちの少なくとも1つを使用して該調査場所を探査し、且つハイドレート岩脈の蓋然的な存在を考慮する地球モデルに基づいて該データを処理することを包含することが可能である。該調査場所を選択する場合に、ガスハイドレート安定ゾーン、該ガスハイドレート安定ゾーンの下側に位置しているガスの供給源、及び該ガスハイドレート安定ゾーン内にガスの高いフラックスを運ぶことが可能な少なくとも1個のチャンネルの存在の地質表示に基づいて該調査場所を選択することを包含することが可能である。1つの例においては、該調査場所を探査する場合に、ウォークアウェイ(walk−away)垂直地震プロファイル(vertical seismic profile)技術を使用して該調査場所を探査することを包含することが可能である。別の例においては、該調査場所を探査する場合に、巨視的海底下電気的異方性を検知すべく適合されている送信器・受信器システムを使用して該調査場所の電磁的探査を実施することを包含することが可能である。このような送信器及び受信器は、例えば、アンテナのクロスダイポール・ダイポールアレイを包含することが可能である。代替的に、送信器及び受信器システムは、少なくとも2個の送信器アンテナと少なくとも2個の受信器アンテナとを含む水平電気的ダイポールアンテナのアレイを有することが可能であり、その場合に、該アンテナは横方向電気対と横方向磁気対とを含む少なくとも4個の送信器・受信器対を与えるように配設される。別の例においては、該調査場所を探査する場合に、海底近傍の地震供給源を活性化させることを包含することが可能であり、該地震供給源はストンリー(Stoneley)波及びせん断(shear)波を発生すべく適合されており、且つ該データを処理するステップは、方位角異方性の証拠を検知するために海底に沿って反射されるストンリー波及びせん断波を解析することを包含している。
【0021】
別の実施例によれば、海洋ガスハイドレート堆積物を検知する方法が、実質的なガスハイドレートの蓋然性のある存在の海底擬似反射波存在以外の地質表示に基づいて探査されるべき場所を選択し、且つ海底下の水平導電性異方性の証拠を得るために該場所の電磁探査及び地震探査のうちの少なくとも1つを実施することを包含することが可能である。1つの例においては、本方法は、その場所の応力テンソルを決定することを包含することが可能であり、且つ該電磁探査を実施する場合に、該応力テンソルに基づいて、その場所における表面下における最大水平応力の方向を推定し、第一データを収集するために最大水平応力の方向に平行な第一方向においてその場所にわたり送信器・受信器システムを牽引し、第二データを収集するために第一方向に対して垂直な第二方向においてその場所にわたり該送信器・受信器システムを牽引し、且つ表面下における巨視的電気的異方性の証拠を検知するために該第一データと第二データとを比較することを包含することが可能である。別の例においては、該地震探査を実施する場合に、ウォークアウェイ垂直地震プロファイル技術を使用してその場所を探査することを包含することが可能である。更に、その場所を選択する場合に、海底下のガスハイドレート安定ゾーンの存在、及び該ガスハイドレート安定ゾーンの下側から該ガスハイドレート安定ゾーン内へ延在する断層及び破砕のうちの少なくとも1つの存在に基づいて該場所を選択することを包含することが可能である。
【0022】
別の実施例は、海洋環境においてガスハイドレート岩脈を検知すべく適合されているシステムに関するものである。本システムは、探査場所からデータを収集する形態とされている探査装置、及びガスハイドレート岩脈の存在を考慮する地球モデルに基づいて該探査場所からのデータを解析する形態とされているプロセッサを有することが可能である。1つの例においては、該探査装置は、例えば、送信器アンテナ及び受信器アンテナのクロスダイポールアレイ等の海面下水平導電性異方性の証拠を検知すべく形態とされている電磁探査システムを有することが可能である。別の例においては、該探査装置は、海底近傍に位置されている地震供給源と少なくとも1個の地震受信器とを含む地震探査システムを有することが可能であり、且つ該データは地震反射データである。例えば、該少なくとも1個の地震受信器は、該調査場所内に配設されている穿孔内に位置させることが可能であり、且つ該地震探査システムは、ウォークアウェイ垂直地震プロファイル探査を実施する形態とさせることが可能である。別の例においては、該地球モデルは一連の平行なガスハイドレート岩脈の存在を考慮することが可能であり、且つ該地震探査システムは、該一連の平行なハイドレート岩脈における個々のハイドレート岩脈の幅及び該一連の平行なハイドレート岩脈における個々のハイドレート岩脈間の間隔のうちの少なくとも1つを検知するのに充分な分解能を達成するために選択された周波数において動作する形態とされている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
研究調査が暗示するところによれば、表面下近くにおけるガスハイドレート内にトラップされている炭化水素ガスの全量は巨大である可能性がある。そうであれば、このことは化石燃料の供給源に対し及び世界的な気候変化に対して著しい意味合いを有している。更に、ガスハイドレートは、海底の不安定性に寄与する1つの作用物質であると暗示されており、従ってそれを位置探索し且つ量を定めることが重要である可能性がある。ガスハイドレートは大陸斜面上において豊富であると推測されており、非常に大きな沖合いのガスハイドレート堆積物に対する広範な地震証拠が存在している。従って、有望な領域における掘削キャンペーンが見つけ出したガスハイドレートが非常に僅かであったということは驚きである。今日までの海洋ガスハイドレート調査プログラムの落胆するような結果は、大陸傾斜上のガスハイドレートは期待された程豊富なものではないか、又は従来の調査パラダイムが効果的なものではないかのいずれかであることを暗示している。
【0024】
従来、海洋ガスハイドレート調査見込みは、地震探査により定義されており、海底擬似反射面(BSR)は、ハイドレートの存在の最も信頼性のある指標として理論的にみなされている。然しながら、実際には、BSRは、しばしば、ハイドレートの存在の粗末な予測子であると思われる。例えば、サウスカロライナの沖合いであるブレークリッジ上の掘削場所において、強いBSRに対して掘削した坑井内において殆どハイドレートは見つかっておらず、一方BSRが存在しなかった場所において掘削された坑井においてハイドレートが見つかっている。更に、BSRはガスハイドレート安定ゾーンの基底におけるハイドレートの蓄積により比較的非透過性とされた堆積物下側にトラップされた自由ガスの蓄積により発生されるものと一般的に考えられているが、自由なガスはしばしばBSRにおいて見つけられることはなく、少なくともワイヤーライン検層ツールにより検知可能な量で見つかることはない。BSRの有意性を解釈する場合に、2つの原則を留意すべきである。第一に、強力な地震反射面を発生するために殆どガスが必要とされない場合があり、且つ、第二に、見掛け上連続的な反射面は連続的なガスが飽和した媒体を意味するものではない場合がある。高分解能処理が示したところによれば、低分解能において連続的に現われる場合のある強力なBSRは、実際には、ガスの複数の小さな不連続的なポケットにより発生される場合がある。これらの要因は、ガスハイドレートの存在の指標としてBSRの明らかな不正確性に寄与する場合がある。
【0025】
現在の調査プログラムは、大陸斜面上のガスハイドレートの顕著な蓄積を見失う場合がある。本発明の側面及び実施例によれば、ハイドレート堆積物を検知するための電磁及び/又は地震技術を包含するハイドレート堆積物蓄積のモデルに基づくハイドレート調査パラダイムが提供される。該モデルの1実施例によれば、少なくとも幾つかの貯留層において、ガスハイドレートは垂直又はほぼ垂直なダイク即ち岩脈のアレイ内に蓄積する場合がある。理解すべきことであるが、本明細書において使用される「ダイク(dike)」即ち岩脈という用語は、前から存在する岩石に入り込む貫入として提示され、それは、一般的には、前から存在する層を横断して垂直又はほぼ垂直に切断する平板状の形状である。このモデルが暗示するところによれば、海底擬似反射面は豊富なハイドレートの偽陽性指標である場合があり、且つその不存在は偽陰性指標である場合がある。更に、このモデルは、以下に説明するように、ガスハイドレート安定ゾーンにおいて観察される振幅ブランキングと一貫性がある。このような垂直又はほぼ垂直なハイドレート岩脈は、一般的に使用されている従来の地震採取及び処理方法によって信頼性を持って検知されない場合がある。従って、本発明の側面及び実施例は、ハイドレート層のこのモデルを考慮に入れることが可能であり且つ現在適用されているような調査地球物理学の従来技術を使用して位置探査することが困難であるか又は不可能であるガスハイドレート岩脈を検知することが可能である調査技術を提供するものである。
【0026】
1実施例によれば、複数の平行なハイドレート岩脈からなるアレイを見付け出すべく適合された多数の地震技術が提供される。その他の実施例によれば、ガスハイドレート堆積物を見付け出し且つ特性付けるために電磁(EM)技術を使用することも可能である。ガスハイドレートは氷に類似しており、従って、絶縁体である。それは、通常塩水で飽和されており典型的に1/mの導電度を有している海洋堆積物と強く対比される。その強い導電度の対比及び海底近くの存在はガスハイドレートを海洋EM探査に対するほぼ理想的なターゲットとする場合がある。従って、本発明の幾つかの実施例は、以下に説明するように、ガスハイドレート岩脈を検知すべく適合されたEM探査方法及びシステムに関するものである。特に、このようなEM方法は、更に以下に詳細に説明するように、ハイドレート岩脈のあり得る存在を考慮し且つ水平方向に等方的な地球を仮定するものではない地球モデルに基づくものとすることが可能なデータ処理を含む場合がある。
【0027】
理解すべきことであるが、本発明はその適用において以下の説明において記載され且つ図面に示された構成の詳細及びコンポーネントの配置に制限されるべきものではない。本発明はその他の実施例とすることが可能であり且つ種々の態様で実施することが可能なものであり、本発明は特許請求の範囲において特に記載されない限り個々に提示した例に制限されるものではない。更に、理解すべきことであるが、本明細書において使用する表現及び用語は説明の目的のためであって制限的なものとしてみなすべきものではない。「含む」、「有する」、「持っている」、「含有する」、又は「関与する」という用語の使用及びその本明細書における変形例は、その後にリストされる項目及びその均等物及び付加的な品目を包含することを意味している。
【0028】
経済的な観点からは、生産的潜在力を有するガスハイドレート堆積物をそうではないものから区別することが特に重要である場合がある。ハイドレートからガスを解放することは温度の上昇、圧力の減少、又は阻害剤の使用を必要とし、全体的な貯留層がどのように大きなものであったとしても、ハイドレートが低い濃度である場合にはそのいずれもが実際的なものではない場合がある。より不明確でない調査方法を開発するために、ガスハイドレート堆積物が形成されるメカニズムを理解することが重要である場合がある。適宜の温度及び圧力条件が与えられると、ハイドレート堆積物の量及び分布を制御する主要な要因はガスの入手可能性である場合があり、堆積物の性質は、どのようにしてガスがハイドレートの生産場所へ送られるかに依存する場合がある。ガスは、3つの態様のうちの1つでガスハイドレート安定ゾーンへ供給することが可能であり、即ち、ガスハイドレート安定ゾーンにおけるガスの局所的な生産、堆積物内の間隙空間を介してのガスハイドレート安定ゾーン内へのガスの移動、及び断層又は破砕を介してのガスハイドレート安定ゾーン内へのガスの移動によるものである。
【0029】
メタンの局所的な生産は、有機物質の微生物崩壊によって発生される。ガスハイドレート安定ゾーンにおける有機物から発生したガスは、発生と共に即座にハイドレートを形成する。石油及びガスと異なり、ガスハイドレートは、その安定ゾーン内において形成されると、顕著な濃度を得ることが可能な貯留層へ移動することはない。従って、ガスの外部的な供給源がない場合には、ガスハイドレート濃度は元々その場所にある有機供給物質の存在と相関するものと推測することが可能であり、且つこのような堆積物におけるハイドレートの究極的な濃度は全体的な有機体炭素の濃度により制限される場合がある。3000m未満の水深における海洋堆積物の幾つかの探査は、全堆積物の重量%として表現される最大全有機体炭素濃度は約2%であり、且つ平均全有機体炭素濃度は約0.55%であることを示している。この全有機体炭素のうちの一部のみがメタンへ変換され、従って現場で有機体が発生するメタンの生産が唯一のガスの供給源である堆積物においては、ハイドレート濃度は非常に低いものと推測され、例えば、全堆積物体積の数%を超えるものではないと推測される。このような有機体が発生する堆積物は空間的には広範なものである場合があるが、それらはハイドレートの濃度が低いために経済的に興味のあるものである可能性はない。
【0030】
幾つかの区域においては、ガスの供給源がガスハイドレート安定ゾーンの基底下側に存在している場合がある。そのガスは間隙水内に溶解しているか又はバブル状で自由であるいずれかの場合があり、且つ1つ又はそれ以上の供給源から発生する場合がある。例えば、ガスは微生物活動(有機物から発生)から又は深い石油の高温クラッキング(熱的に発生)から発生する場合がある。ガスは、又、堆積作用から発生する場合があり、前に存在するガスハイドレートを分解させる。このようなガスは堆積間隙を介してガスハイドレート安定ゾーン内へ上方へ移動する場合があり、そこでそれはハイドレートを形成する。然しながら、石油及びガスの場合には可動性のままであり貯留層を介して上方へ移動するものであるのと異なり、ガスハイドレートは不動性であり一度形成されると自由に移動するものではない。更に、下側から上方へ移動する溶解ガスからのハイドレートの蓄積は、間隙を塞ぎ且つその結果透水率を減少させるために自己制限的である場合がある。更に、必ずしも水の流れを阻止するものではない堆積物は、毛細管圧力効果に起因して自由なガスの上方への移動を阻止する場合がある。従って、間隙空間を介しての輸送がガスハイドレート安定ゾーンを介してのガスが移動することが可能な唯一の手段である場合には、利用可能な(例えば、大きな、高濃度の)ガスハイドレート堆積物が形成される可能性はない。
【0031】
上述したように、本発明の幾つかの実施例によれば、少なくとも幾つかの貯留層において、ガスハイドレートは主に垂直な又はほぼ垂直な岩脈として形成される場合があり、その岩脈のストライク即ち走向が最大水平応力の方向と平行なものであることが提案されている。複数のダイク即ち岩脈は平行なものである場合があるが、又は山形に成長する場合があるが、例えば、ハイドレート堆積物が形成する堆積物の性質に依存して必ずしも等しい間隔ではない場合がある。1実施例によれば、ガスハイドレート堆積物は自由なガスの実質的な蓄積が存在する場合のあるその基底下側の区域からガスハイドレート安定ゾーン内へ延在するフォールト即ち断層又はフラクチャ即ち破砕と関連している場合がある。ガスハイドレート安定ゾーン内のこのような断層又は破砕内部のガスがハイドレートとなると、それはゆっくりとチャンネルを充填し、以下に説明するように、ハイドレート岩脈を形成する。
【0032】
地球におけるフォールト即ち断層は滑り面又はゾーンである。断層は、それを横断して層が不連続であるラインとして地震レコード上で容易に認識される。ガスハイドレート安定ゾーン内及びそれを介して延在する連続的な断層は、ガスハイドレート安定ゾーンにわたってガスを分布させるための効率的な経路である場合がある。然しながら、この考え方を受け入れることは、ガス相メタンはガスハイドレート安定ゾーン内の過剰な水と熱力学的平行状態で存在することは不可能であるという知識によって遅延された。それにも拘わらず、海洋ハイドレート蓄積の圧倒的多数が、それを介して溶解又はガス状のメタンが迅速に上方へ移動することが可能な断層系と関連しているものと思われる。例えば、ハイドレートは、黒海における、北アメリカの太平洋岸沖における、メキシコ湾における、及びその他における天然ガスのベント即ち放出及びシープ即ち染み出しと関連している。パッシブマージン(passive margin)即ち非活動的縁辺部上に位置しているブレークリッジ(Blake Ridge)堆積物であっても、海底擬似反射面の下側から海底へ延在する断層と関連している。これらの断層は、ガス相にあり、従って周囲の堆積物とは熱力学的に平衡ではないメタンの輸送に対する効率的な管路を構成する場合がある。
【0033】
顕著な滑り(断層の場合におけるように)と必ずしも関連するものではない引張り破壊は地球における流体経路を開くことである。破壊は、間隙圧が堆積物内の最小形成応力を超える場合に発生することが可能である。破砕面は最小応力の方向に対してほぼ垂直である。ソフトで固結していない堆積物を介しての自由なガスのフラックスが高過ぎるものではない場合には、引張り破壊は過渡的なものであり空間的にコンパクトなものである場合がある。その直径が厚さよりも一層大きな孤立した岩脈としての固結していない泥状の堆積物を介して上方へガスが移動することが暗示されている。岩脈の面は地殻変動応力がない場合には垂直又はほぼ垂直である場合がある。トラップされたガスのポケットに到達すると、これらの岩脈はそのポケットに対してガスを与え且つ消失する場合がある。ガスは従来の炭化水素貯留層に向かって数キロメートル上方へ移動することが知られているが、このように薄いガスの移動性岩脈はガスハイドレート安定ゾーンに入ったすぐ後に固体のハイドレートを形成することが予測される。正に、メタンと、海水と、堆積物の混合物が盛んに混合された海底実験においては、ハイドレートは数分内で形成した。従って、ガスの孤立した移動性岩脈から形成されるハイドレート堆積物はガスハイドレート安定ゾーンの基底近くに集中する蓋然性がある。
【0034】
対照的に、自由なガスのフラックスが実質的なものである場合には、ガスの管路(例えば、フラクチャ)は開いたままであり且つガスハイドレート安定ゾーンを介して顕著な距離ガスが移動することを可能とする場合がある。ハイドレートは破砕又は断層の表面において迅速に形成することが可能であり、チャンネルを硬くさせ液体の水と接触することなしにそれを介してガスが流れることを可能とする。この挙動は、沖積泥土の円筒の底部内にメタンを注入させた実験において観察されており、それはBrewer et al.による文献に記載されている(「遠隔操作探査器からのメタンハイドレート形成の深海洋フィールドテスト(Deep ocean field test of methane hydrite formation from a remotely operated vehicle)」、Geology25、407−410(1997))。これらの実験において、ガスの流れによって堆積物をそれから完全に移動させたチャンネルは次第に固体のハイドレートで充填された。更に、ブレークリッジにおけるガスハイドレート安定ゾーンにおいてはガス移動割れ目が観察された。自由なガスはこれらのハイドレートで固められたチャンネルによって液体の水から分離され且つそのチャンネル(例えば、断層又は破砕)が継続している場合には、ガスハイドレート安定ゾーンを介して実質的な距離にわたり移動することが可能である。
【0035】
地球においては、断層は平面状である可能性があり、ストライク即ち走向は最大水平応力の方向と平衡である。クーロン理論によれば、断層又は破砕のディップ(dip)即ち傾斜は45度+φ/2であり、尚φはハイドレートが存在しない場合の海洋堆積物の摩擦角度であり、典型的に、約25度に等しい場合がある。約60−50度の傾斜角度を有する不連続は浅い海洋堆積物において一般的に観察され、上の形成理論と一貫している。自由なガスの蓄積は、その自由なガスの圧力がその上側に存在する堆積物の強度を越える場合に、その上方の堆積物内に断層を誘起する場合がある。ハイドレートで充填された断層の傾斜及び走向は、堆積物本体における摩擦角度及び最大水平応力の方向によって夫々制御することが可能である。対称性により、これらのハイドレート岩脈は山形の形状(V形状構造)で存在する場合がある。対照的に、ハイドレートで充填された破砕は最小応力及び最大水平応力方向により制御される独特の傾斜及び走向を有する場合がある。このような破砕は山形形状を形成することはない。導管がハイドレートで充填されると、それは堆積物における最も強い特徴となる場合があり且つ再度破砕又は断層が発生する可能性はない。その代わりに、自由なガスは前の自己誘起した破砕又は断層と同じ(又はほぼ同じ)傾斜及び走向を有する別の経路を見つけ出す場合がある。従って、一連の平行なハイドレートで充填された岩脈が海洋環境における豊富なガス供給源上方のガスハイドレート安定ゾーン内において形成する場合がある。
【0036】
図4を参照すると、海面126下側のガスハイドレート安定ゾーン108内に形成された一連の平行なハイドレート岩脈120の一例の線図が例示されている。上に説明したように、自由なガスの供給源がガスハイドレート安定ゾーン108の基底124下側の領域122内に存在する場合がある。ハイドレート岩脈系は、一般的に、地質時代境界を横断する場合がある。然しながら、断層又は破砕が透過障壁下側の粗砂の層を交差する場合に例外が発生する場合がある。この場合には、ガスが水平方向に広がって局所的な層序と一致するハイドレート水平線を発生する場合がある。更に、断層傾斜が最大水平応力の軸に関して対称的である場合にはハイドレートの山形形状が上方に開く場合がある。更に注意すべきことであるが、非常に高いフラックスの質量及びエネルギが平行なハイドレート岩脈系の形成を阻止する場合がある。寧ろ、ガスの経路がガスハイドレート安定ゾーンを介して開いたままとなり、ガスが海底を突き破り且つ海洋へ放出することを可能とする。従って、最も豊富で有用なガスハイドレート堆積物は、ガスのフラックスが高過ぎることも低過ぎることもなく、ガスハイドレート安定ゾーン内に良好にガスを運ぶのに充分に高いものである領域において発生する場合があり、上述した如くに岩脈を形成する。
【0037】
従来の海洋地震探査は海面近くを牽引されるハイドロフォンの供給源及びストリーマーを使用する。この幾何学形状は、水平又はほぼ水平の音響異常を検知するのに最適な場合があり、且つ多くのハイドレート蓄積モデルが一次元(即ち、ハイドレート飽和等の貯留特性は横方向の変化なしで深さの関数である)であるのでハイドレートを見つけだすのに適切なものと一般的にみなされていた。然しながら、従来の海洋地震探査は、急峻に傾斜するハイドレート岩脈が存在する中で使用される場合に重要な制限を有している。第一に、以下に更に説明するように、そのような岩脈から従来の受信器へ反射して戻されるエネルギは殆ど又は全く存在しない場合がある。第二に、速度における大きな横方向変化は従来の地震処理アルゴリズムにより認識されることはない。第三に、地震波面と比較して岩脈の横方向範囲に依存し、且つ岩脈が山形形状に形成するか否かに依存して、擬似反射面が歪まされている場合があり地震探査において容易に解釈することが可能でない場合がある。
【0038】
バルクのガスハイドレートは、約3800m/sの圧縮音速、約1950m/sのせん断音速、及び約920kg/m3の密度を有している。対照的に、固結していない又は軽く固結している高多孔性海洋堆積物は約2000m/sの圧縮速度、及び約2000kg/m3の水飽和密度を有している。岩脈がハイドレートにより固められた堆積物から構成されている場合には、圧縮速度及びせん断速度において2倍したものと同じ程度のものが見られる場合があるが、密度は周囲の水で飽和された堆積物とほぼ同じままである。従って、このような岩脈は水で飽和した堆積物に対し大きな音響インピーダンス対比を示す場合があり、且つ適切な光線経路幾何学形状(後に更に説明する)に対して強い地震反射を発生することが可能であり、そのことは良好な検知可能性を暗示している。一方、堆積物を排除した純粋な(又はほぼ純粋な)ハイドレートから構成される岩脈は隣りの水で飽和した堆積物と強い速度の対比(例えば、約3800m/s対2000m/s)を示す場合があるが、大きな音響インピーダンス対比を示すものではない。何故ならば、純粋なハイドレートの密度は水で飽和した堆積物の密度の約半分である場合があり、従って周囲の水で飽和した堆積物と比較してハイドレートにおける音速のほぼ2倍を補償するからである。その結果、垂直に入射する地震波は強く反射されない場合があるが、より大きな入射角度における波は強く反射される場合がある。
【0039】
本発明の1実施例によれば、1つ又はそれ以上のガスハイドレート岩脈を検知するために地震技術を使用することが可能である。ハイドレート岩脈の前方及び後方からの反射を解明することが可能であるためには、供給源の波長λは岩脈の厚さの4倍を超えるものとすべきものではない。換言すると、岩脈の厚さは地震供給源の動作周波数における4分の1波長とほぼ等しいか又はそれより大きなものとすべきである。説明の便宜上、以下の説明においては1メートルの岩脈厚さを仮定する。然しながら、この例は説明の便宜上のためだけであり制限すべき意図を持ってなされるものでないことを理解すべきである。岩脈は直径において1メートルに近い場合も近くない場合もある多様な厚さを有する場合がある。約4000m/sの岩脈内の速度に対して、約1kHzの供給源周波数は、その岩脈が約4分の1波長の厚さを有していることを意味している。海底下堆積物において、圧縮波の減衰は約0.01及び0.20dB/m/kHzの間で変化し、且つせん断波の減衰は約1及び100dB/m/kHzの間で変化する。従って、2000メートルを伝播する1kHz圧縮波の振幅は約2dB乃至40dBだけ減少される。このような振幅反射は入手可能な装置の検知範囲内であり且つこの寸法の岩脈の検知は実現可能であることを表わしている。然しながら、検知を確実なものとするために、堆積物内の伝搬距離を最小に維持することが重要である場合がある。
【0040】
海洋地震供給源は、従来、水中で爆発され且つ射出されたエネルギは海底において圧縮波及びせん断波へ変換される。送信された圧縮エネルギは水中における約1500m/sから海底堆積物における約2000m/sへの伝搬速度における増加によりデフォーカス即ち焦点がぼかされる。スネルの法則の示すところによれば、90度の頂部角度を有する塩水内の水において放射されるエネルギのみが圧縮エネルギとして海底を浸透することが可能である。スネルの法則が更に暗示するところによれば、垂直線に対して0度と30度との間の角度における供給源から送信されたエネルギは垂直線に対して約0度と45度との間の角度において海底を介して送信され、一方垂直線に対し約30度と45度との間の角度で供給源において射出されたエネルギは45度から90度へ固体角度の残りにわたり海底下を介して広がる。45度を超える伝播角度に対する海底下における波エネルギの強い減衰が存在している。従って、海洋供給源は、通常、全方向性ではなく、その代わりに、そのエネルギの殆どを「浸透塩水」内において、即ちそのエネルギが海底を浸透することが可能な固体角内において送信すべく構成することが可能である。この塩水の外側を送信されるエネルギは望ましいものではない。何故ならば、それは水柱内にトラップされる場合があり且つ信号帯域幅内のノイズ源となる場合があるからである。その結果、海洋供給源から送信される有用なエネルギは、通常、45度よりかなり小さい入射角度に集中される場合がある。
【0041】
図5を参照すると、本発明の1実施例に基づいて、音波でハイドレート岩脈を検知するための反射幾何学形状の1例の線図が例示されている。垂直線に対し角度αで伝搬する光線130(供給源から)が垂直線から角度βで傾斜している面130に到達すると、反射光線132は図5に示したように垂直線に対し角度γ=180゜−(α+2β)で戻って来る。90゜より小さなγの値は光線132が海底へ反射して戻されることを意味する。従って、検知はα>90゜−2βであることを必要とする。上述した如く、ガスハイドレート安定ゾーン内へガスを運ぶことが可能な断層又は破砕の傾斜は、典型的に、45゜+φ/2である場合があり、尚φはハイドレートが存在しない場合の海洋堆積物の摩擦角度であり且つ典型的に約20゜に等しい場合がある。従って、ガスハイドレート岩脈は約55゜の傾斜(水平線からの角度)で形成する場合があり、その場合にβ=35゜である。β=35゜において、γ+α=110゜である。上述したように、岩脈面上に顕著なエネルギを衝突させるために、入射角度はα<45゜とすべきであり、γ>65゜を暗示している。然しながら、γの値が大きければ大きい程、光線132が海底に表われる反射点から一層遠くなる。堆積物を介してのより長い伝搬距離は、吸収及び波動場の広がりの両方に起因してより少ないエネルギが受信器に到達することを意味する。上述したように、信頼性のある検知のためには、堆積物を介しての伝搬距離は、理想的には、最小とすべきである。容易に検知可能な反射波はγ<45゜の方向で伝搬する場合がある。従って、従来の海洋又は海底地震供給源及び受信器の場合には、入射及び反射の望ましい角度は相互に排他的であり、ハイドレート岩脈の検知を困難なもの又は不可能なものとさせる。
【0042】
例えば、ハイドレート調査キャンペーンにおいて使用されている深海牽引型音響/地球物理システム(DTAGS)は、通常、垂直線から約30度未満の角度において海底に入射する音波を検知すべく適合されているが、その幾何学形状はより幅の広い角度の採取アパーチャを可能とするものである。DTAGSはほぼ海底下のターゲットに対して設計されており且つ15Hz及び650Hzの間の周波数における地震測定を行う。然しながら、約50度から約90度の範囲にわたるものと予測されるハイドレート岩脈の傾斜の場合には、牽引される受信器によって記録すべき表面への岩脈から反射して戻されるエネルギは非常に少ない場合があり、検知を見込みのないものとさせる。
【0043】
従来の海底地震探査は海面又はその近傍で牽引即ち曳航される供給源を使用し且つマルチコンポーネントの受信器を海底上に配置するか又は海底内に植え込むものである。この海底システムは海底堆積物のより多くの音弾性特性の推定を可能とするものであるが、そのシステムの採取アパーチャは深海牽引システムにわたり著しく増加されるものではない。このことは、急峻な反射面からの反射を記録する場合と同一の制限が海底地震システムに対しての成り立つことを意味している。
【0044】
上述した個々のハイドレート岩脈を検知することに関連する問題に加えて、複数個の岩脈が存在する場合に更なる問題が発生する場合がある。例えば、平面上のハイドレート反射面の角度分布がランダムであった場合には、散乱が下方へ進む波面の一貫性、従って、ガスハイドレート安定ゾーン内及びその下側の両方の地質時代境界からの反射の一貫性を破壊する場合がある。このことは、急峻に傾斜する岩脈及び水平なハイドレートで飽和された砂の両方が貯留層内に存在する場合に発生する場合がある。
【0045】
堆積物とハイドレート岩脈との間の硬さ及び密度における差に起因して、一連の平行な岩脈は方位角異方性を形成する場合があり、それは海底に沿って屈折されるストンリー波及びせん断波を解析することにより検知することが可能である。これらの波は、岩脈に対して垂直に伝搬している場合には、より小さな実効速度を有するものと予測すべきである。せん断及びストンリー方位角異方性の不存在はハイドレート岩脈が存在することに対する強い負の指標となる場合があるが、このような異方性はその他の原因に起因する場合がある。更に、理解すべきことであるが、ストンリー及び屈折されたせん断等の表面波の低周波数特性、従って低分解能特性に起因して、個々の岩脈の効果ではなく集約的な効果を見ることが可能であるに過ぎない。
【0046】
別の例においては、一連の平行な岩脈は導波路として作用する場合がある。図6を参照すると、平行なハイドレート岩脈120の間を伝播する案内された光線134の幾何学形状の線図が例示されている。ガスハイドレート安定ゾーンを介して通過する案内された光線134等の波面は隣りの岩脈120の表面の間で多数回反射される場合がある。これらの反射に起因して、同一の入射角度を有する案内されることのない波により移動されるよりもより大きな距離移動した後に下方へ向かう波面がガスハイドレート安定ゾーンの下側に表われる場合がある。
【0047】
案内される波に対する移動距離における増加を推定するために、図6に示したように、垂直線から角度βで傾斜した2つの平行な岩脈120及び角度αで入射する堆積物における地震波面について検討する。案内される光線134が上側の岩脈の下側表面(点136)から進行し、下側の岩脈の上側表面で反射し、且つ上側岩脈の下側表面へ戻る場合に、それは図6に示したように、距離2s進行し、その間に垂直距離z進行する。距離sは以下の式(1)から計算することが可能であり且つ距離zは以下の式(2)から計算することが可能である。
【0048】
【数1】
【0049】
【数2】
【0050】
案内される光線134が垂直距離Dにわたり進行する距離は、同じ入射で案内されない光線が同一の垂直距離にわたり進行する距離と比較して、次式で与えられ、
【0051】
【数3】
【0052】
尚、Nは案内される光線が導波路の上側境界から反射される回数である。Nは、
【0053】
【数4】
【0054】
で与えられる。従って、Nを式(3)内に挿入すると、案内される光線に対する進行距離における差異が
【0055】
【数5】
【0056】
垂直入射(α=0)における波及び55゜で傾斜する(β=35゜)岩脈の場合には、Δ/Dは約0.49に等しい。従って、案内される光線は、岩脈120によって水平方向にオフセットされるという部分的な理由により、案内されない光線よりも約1.5倍だけ遠く進行する場合がある。
【0057】
移動距離が増加することに加えて、導波路として作用する岩脈は、又、それらを介して伝搬する音波の垂直速度を減少させる場合がある。垂直距離Dを横断する間に、案内される光線134は距離2s(D/z)移動する。従って、堆積物における案内されない波速度はVuにより与えられる場合には、案内される波速度の垂直成分は、
【0058】
【数6】
【0059】
によって与えられる。垂直入射(α=0)における波及び55゜で傾斜する(β=35゜)岩脈の場合には、案内される波の速度の垂直成分は案内されない波の速度の約67%である場合がある。注意すべきことであるが、これらの結果(距離及び速度の両方における差)は、地震波面の横方向範囲が岩脈間隔よりも著しくより大きい場合には、平行なハイドレート岩脈120の間の距離とは独立的である場合がある。
【0060】
更に、地震波面の横方向範囲が岩脈アレイの横方向範囲よりもより小さい場合には、その波面は岩脈内及びその下側において一貫性を維持する場合があり且つ地質時代境界から一貫性のある反射を与える場合がある。然しながら、その波面はその伝搬時間及び湾曲を岩脈の存在により変更させる場合があるので、より深い反射と関連する二方向経過時間が増加される場合があり、且つ反射はそれらの真の位置から水平方向にオフセットされる場合がある。伝搬角度の狭い範囲の場合には、ハイドレートゾーンの効果は実効的には時間遅延である場合があり、より深い反射面の画像のプッシュダウン(push−down)となる。岩脈のアレイが地震波面の横方向範囲よりもより小さい場合には、案内される波の反射は案内されない波の反射と干渉する場合があり、その結果壊された即ち歪められた地震セクション(seismic section)が発生する。
【0061】
上述したように、ハイドレートで充填された断層の傾斜及び走向は、夫々、摩擦角度及び堆積物本体における最大水平応力方向により制御することが可能である。対称性により、このようなハイドレートで充填された断層は図7に示したような断層の山形形状を形成する場合がある。各グループの平行な岩脈は導波路を形成する場合があり、それは上述した如く、ガスハイドレート安定ゾーン内及びその下側における反射面へそれからのエネルギを伝達させる。堆積物本体は可変的に解明することが可能であり、その結果個々の反射面を横断しての水平方向のオフセット及び振幅及び移動時間の変動が発生する。これらの効果は時折ガスハイドレート安定ゾーンと一貫性があるものとして観察される振幅ブランキングに貢献する場合がある。更に、ガスは岩脈の根元に蓄積する場合があるが、これらのガスポケットは地震レコードにおいて必ずしも海底擬似反射面を発生するものではない。一方、現場での微生物活動によって発生されるもののような広く広がっているが希薄なハイドレート堆積物下側にトラップされる小さな量のガスが強い海底擬似反射面を発生する場合がある。従って、海底擬似反射面の存在は、実質的なハイドレートの蓄積に関して、偽陽性である場合があり、且つその不存在は偽陰性である場合がある。
【0062】
1実施例によれば、ソフトな海洋堆積物における高いコントラストで急峻に傾斜したハイドレート岩脈はそれらを「横から」見ることにより、例えば、垂直な坑井において収集した音響反射データを使用することにより検知することが可能である。このようなデータは、例えば、1個又はそれ以上の海底供給源を具備するウォークアウェイ垂直地震プロファイル(VSP)技術を使用して収集することが可能である。図8を参照すると、受信器138を垂直な坑井140内に配備することが可能な1実施例の1つの例の線図が例示している。地震波を発生することが可能な1個又はそれ以上の地震供給源142を海底100上に位置させることが可能である。1つの例においては、供給源142は岩脈120から反射される波エネルギ(例えば、光線144)が図8に示したように受信器138上に入射することが可能であるように位置決めし且つ形態とすべきである。1個又はそれ以上のプロセッサ(不図示)及びオプションとしてディスプレイ(不図示)を該受信器に結合させて受信信号を処理し且つ受信画像を発生(且つオプションとして表示)させることが可能である。供給源が穿孔140から離れて移動されると、岩脈120上で解明されるスポットが岩脈の勾配の下側に移動する。従って、ハイドレート岩脈120の傾斜と走向を画定するために坑井頭部146から異なるオフセットにおいて幾つかのショットを使用することが望ましい。注意すべきことであるが、少なくとも1つの実施例においては、海底供給源が望ましい。何故ならば、その光線経路は表面の供給源からのものよりも一層拘束されており、従って、マルチパシング(multipathing)からの影響がより少ないからである。更に、海底の供給源は供給源において直接的なせん断波を発生することが可能である。然しながら、理解すべきことが、本発明は海底の供給源の使用を必要とするものではなく多くの供給源のオプションを使用することが可能である。
【0063】
本発明の1実施例は、高分解能イメージングに対する可能性を包含している。1つの例においては、本発明の1実施例に基づく装置は、約0.5乃至1.0m分解能において特徴を分解することが可能な場合がある。従来処理されているVSPは約10乃至50Hzの帯域幅を有する場合がある。陸地バイブレータと、高Q岩石と、特別の処理とによって、250Hz程度に高い帯域幅を達成することが可能である。信号周波数における4分の1波長よりも互いにより離れている構造/特徴を分解することが可能であると一般的に仮定される。約2000m/sの水で飽和した堆積物速度において、1000Hz圧縮波の波長は約20mであり、このような信号は約5m離れた構造/特徴を分解するために使用することが可能であることを意味している。ハイドレート岩脈の間隔はこれよりもより小さいものである場合がある。従って、個々の岩脈を区別することが可能な高分解能イメージングを達成するために、約1kHzにおいて実質的なエネルギを発生することが可能な供給源が望ましい場合がある。上のように水で飽和した堆積物を仮定し、約0.5m離れた構造/特徴を分解するために1kHz信号を使用することが可能である。更に、岩脈の厚さを分解することも望ましい場合がある。約1mの岩脈厚さ及びハイドレートにおける圧縮波速度が約4000m/sであることを仮定し、このことは供給源から1kHz信号を使用して達成することが可能である。
【0064】
最も広く使用されている海洋地震探査供給源はエアガンである。然しながら、ガスハイドレートが見つかる場合のある大きな水深において、エアガンのポートが開いている場合にトラップされた空気の爆発的膨張を発生させるために必要となるような高圧のために海底近くにエアガンを配備することは実現可能なものでない場合がある。本発明の実施例において使用することが可能な供給源の1つの例は2005年5月11日に出願され発明者がSandersであり「海底エネルギ供給源を使用した地震イメージング及びトモグラフィ(Seismic Imaging and Tomography Using Seabed Energy Sources)」という名称の米国特許出願第11/127,014に記載されており、その記載内容を引用により本明細書に取り込む。Sandersの供給源は内側に破裂するガラス球(即ち、大気圧における空気のチャンバが周囲の高圧水の下で崩壊される)を使用しており、任意の水深においての効率的な地震供給源となることが可能である。エアガンエネルギ供給源は、エアガンチャンバ内の高圧空気と周囲の水圧との間の差動的圧力が減少するので、深さに従って益々効率が悪くなる場合がある。対照的に、内部的に大気圧であるガラス球が海洋内に配備される場合に、深さと共に差動的圧力が増加する。海洋は深海ガラス球内破を超えて無限に近い圧力貯留層を提供する。従って、その内破はエアガンの爆発よりも一層速く進行することが可能であり、その結果、そのエネルギ出力は周波数が一層高いものとすることが可能である。Sandersの供給源は、1kHz及びそれを超えて顕著なエネルギを発生することが可能であり、上述した如く高分解能イメージングに対してそれを適切な供給源としている。
【0065】
幾つかの状況において重要な場合のある別の供給源の特性は供給源の内波信号の再現性である。供給源の再現性は一連の繰り返されるショットに対する類似スペクトルによって従来測定されている。類似スペクトルは全エネルギに対する信号エネルギの比を測定する。図9A及び9Bを参照すると、Sandersの供給源の1実施例からの周波数スペクトルが例示されている。図9Aは1.25s(秒)乃至1.35sの結合信号及びノイズ周波数スペクトルを例示しており、且つ図9Bは4.25s乃至4.35sのみのバックグラウンドノイズを示している。これらのスペクトルは、Sandersの供給源が1kHz程度に高い周波数へ延長することが可能な類似性の高い値を有していることを表わしており、この供給源は本発明の実施例に対して適切な選択となる場合があることを暗示している。
【0066】
上述したように、本発明の実施例は、海底堆積物本体内に穿設した垂直の坑井内に位置させることが可能な受信器を使用することが可能である。適切な受信器の1つの例はシュルンベルジェ社のバーサタイルサイズミックイメージャ(VSI)(商標)を包含することが可能である。このVSIは、穿孔内に配備され且つ穿孔壁にクランプさせることが可能な可変数の3コンポーネントジオフォンを有している。然しながら、理解すべきことであるが、本発明はこのVSI受信器の使用に制限されるものではなくその他の受信器を使用することも可能である。最大で1kHzまでの周波数を記録するために0.5msデジタルサンプリングを使用することが可能である。従って、1実施例によれば、標準のVSIは、使用される供給源の周波数に依存して0.5ms又はその他のインターバルにおいてデジタル的にサンプルすることを可能とするように修正することが可能である。更に、収集した受信データの処理は、急峻に傾斜するハイドレート岩脈の見込みのある存在を考慮する地球モデルを使用することが可能であり、且つこのタイプの構造が存在するかも知れないことを注意しながら結果を解釈することが可能である。
【0067】
1実施例においては、VSI又は別の受信器を穿孔に沿って移動させることが可能であり、空間的サンプリングを可能とする。受信器は所望の空間的サンプリング分解能に対応するインターバル即ち間隔で移動させることが可能である。受信器を移動させる回数は個々のジオフォン間のスペーシング即ち間隔に依存する場合がある。例えば、受信器が15m離れているジオフォンを有しており且つ1mの空間的サンプリングが所望される場合には、受信器アレイを各1mの14個の段階で移動させ、適切なスペーシング即ち間隔における受信器アレイの全アパーチャをカバーすることが可能である。各段階において、受信器供給源を活性化させ且つ受信器ジオフォンの各々において波形を記録することが可能である。
【0068】
ハイドレートを検知するための受信技術に加えて又はそれの代替として、本発明の側面はハイドレート堆積物を位置探査し及び/又は特性付けるための電磁感知の使用に向けられている。上述したようにガスハイドレートは絶縁体であり且つ典型的に塩水で飽和されており且つ約1S/mの導電度を有している海洋堆積物と強いコントラストを示すことが可能である。更に、ハイドレートは海底近くに蓄積する場合があり、そのことは海洋電磁探査に対する良好な候補としている。
【0069】
上述したように、ハイドレートを含有するものとして以前に識別されている領域の海洋電磁探査に関し幾つかの従来技術の作業が存在している(例えば、地震又は掘削プログラムから)。ハイドレート地区の幾つかの電磁探査は、図10に示したように、1個又はそれ以上の同一線上(「インライン」)の水平な電気的ダイポール受信器を具備する水平な電気的ダイポール送信器を使用している。送信器148及び受信器150は船舶152によって海底に沿って牽引即ち曳航させることが可能である。送信器148はそのダイポールと平行に海水中及び海底100の下側に水平方向の電流を形成する。そのダイポールと平行な電流に対して最も感度の高い受信器150に到達する二次信号はその周囲の電気的導電度に依存する。その他の探査ではダイポール送信器及びマルチコンポーネント受信器を使用している。測定物理はインラインの形態と類似しているが非共線(例えば、ブロードサイド(broadside))ダイポールは、原理的に、海底下の導電度の異方性に対して敏感である。然しながら、全ての従来のハイドレート探査に対するデータ処理は、水平方向に層形成された地球を仮定しており、その場合に、電気的導電度は各水平な層内に等方性である。このような処理は垂直な又はほぼ垂直なハイドレート岩脈を検知するのに適切なものではない。金属鉱物に対する地球上の鉱床探査に対して適用された孤立した垂直な導電性ボディに関する幾つかの制限的な理論的研究がなされているが、このような研究は海底環境における垂直及びほぼ垂直な抵抗性の岩脈からなるアレイの検知及び特性付けに直接的に関連性のあるものではない。
【0070】
ハイドレートがない海洋堆積物の固有抵抗Rt(0)はアーチーの式(Archie’s law)から以下の如くに推定することが可能であり、
【0071】
【数7】
【0072】
尚、Rwは間隙水の固有抵抗であり、φは層多孔度であり、a及びmは経験的に決定される定数であって、典型的に、a=1及びm=2の値を有している。海洋堆積物の間隙水は、通常、低い固有抵抗(即ち導電性)を有しており、一方ハイドレートは絶縁体である。間隙空間が部分的にガスハイドレートで占有されている場合には、固有抵抗は、
【0073】
【数8】
【0074】
へ変化し、その場合に、ハイドレート飽和(換気空間の堆積部分)はShであり、換気空間の残余は水で充填されているものと仮定し、且つ、通常、n=2である。上述したように、ハイドレートは、時折、例えば、断層又は破砕内に岩脈を形成する場合があり、その場合には全ての(又は殆ど全ての)堆積物が押出される。このような状況においては、ハイドレート岩脈は完全に又はほぼ完全に絶縁性のボディである場合がある。更に、ハイドレート岩脈を貫通しての液体の水の連続的な経路が存在する場合には導電性のチャンネルが存在する場合もある。
【0075】
再度図4を参照すると、一連の平行なハイドレート岩脈120を含むハイドレート貯留層の例の概略図が例示されている。これらのハイドレート岩脈は通常の海洋堆積物に対し実質的な電気的コントラストを提示することが可能である。ある岩脈が、電気を導通させるための連続的な液体経路なしで、固体のハイドレートから構成されている場合には(例えば、上述したような幾つかのハイドレートで充填された断層又は破砕の場合がそうであるように)、それは低周波数電流の流れに対して完全な(又はほぼ完全な)障壁を表わすことが可能である。ハイドレートが堆積物の空隙空間内に成長する場合には、その飽和は1未満である場合があり、且つその岩脈の固有抵抗は上の式(8)により与えることが可能である。ハイドレートが粒子を変位させるが導通経路が連続的のままであると、固有抵抗は中間値を有する可能性がある。上述したように、今日まで行われているハイドレート領域における電磁探査は、横方向に等方的な地球を仮定して処理されている。ハイドレートの急峻に傾斜する岩脈を検知するためには、海底下の巨視的導通異方性に対して敏感な異なる方法を使用することが可能である。1実施例においては、このような海底下の導通異方性を考慮するために特に構成された採取及び処理の両方の方法を使用することが可能である。
【0076】
1実施例によれば、ソフトな海洋堆積物における急峻に傾斜するハイドレート岩脈は以下の手順により検知することが可能である。第一に、その地質学的特性が実質的なハイドレート蓄積の見込みのある場所としているか否かを判別するためにある領域を探査することが可能である。1つの例においては、このような探査は、表面下の環境がガスハイドレートの安定性に対する温度及び圧力条件を満足するものであるか否かを判別するステップを包含することが可能である。該探査は、更に、それから豊富なハイドレートを形成することが可能なガスの豊富な供給源が存在することを判別するステップを含むことが可能である。このことは、当該技術において知られているように、ガスシープ探査を使用することにより、又はガスハイドレートの形成に適切である水深下における大きなガス貯留層を位置探査することにより(例えば、当業者に公知の標準的なガス検知技術を使用して)達成することが可能である。更に、1つの例においては、ガスの高いフラックスをガスの深い供給源からガスハイドレート安定ゾーン内へ運ぶことが可能であることを判別するステップも包含させることが可能である。このことは、例えば、ガスチムニー(gas chimney)の直接的地震検知により、海底上の泥火山又はハイドレート露頭を見つけることにより、又は断層ゾーンの局所的な知識を介して達成することが可能である。オプションとして、地域的な応力テンソルを決定するか又は推定する別のステップを含めることが可能である。地域的な応力は殆ど知られており且つ構造及び地殻変動から推論することが可能である。更に、地層応力を測定するために海底マルチコンポーネント地震データ又は音響ツールを使用することが可能である。応力テンソルの知識は、例えば、その領域におけるハイドレート岩脈のオリエンテーション即ち配向を推定するために使用することが可能であり、それは地震又は電磁検知装置のいずれかをセットアップする場合に使用することが可能である。
【0077】
理解すべきことであるが、上述したステップは上に与えた順番に実施されることを必要とするものではなく、本探査はこの例において説明したもの以外の異なる技術を使用することが可能である。地域的探査の目的は、豊富で集中したガスハイドレートを見つける蓋然性を増加させることが可能な地質学的及び地質力学的特徴をハイドレート検知方法内に組込むことである。従って、本探査は、この目的を達成するために多様なステップ及び技術を使用することが可能である。ある領域がハイドレート調査に対する候補として識別されると、その領域におけるハイドレート堆積物を検知及び/又は特性付けるために地震又は電磁技術を使用することが可能である。例えば、上述したような垂直地震イメージングプロセスを実現することが可能である。代替的に、又は付加的に、以下に更に説明する1つ又はそれ以上の電磁方法を使用することが可能である。
【0078】
1実施例によれば、電磁送信器及び受信器結合システムを識別した興味のある領域にわたって牽引即ち曳航させることが可能である。1つの例においては、該送信器及び受信器システムは、最初に、最大水平応力の方向に平行な方向に牽引させることが可能である。この方向における探査が完了すると、該送信器及び受信器システムは最大水平応力の方向に対して垂直に牽引させることが可能である。この探査期間中における送信器及び受信器システムの位置を決定するためにナビゲーションシステムを使用することが可能である。各方向における該探査から収集されたデータは、次いで、比較し且つ処理してその表面下の巨視的電気的異方性の証拠を検知することが可能である。データのいかなる処理も、あり得る水平方向の異方性、特に、水平方向に等方的な地球を仮定する従来の処理と異なり、抵抗性岩脈のあり得る存在を考慮する地球モデルに基づくことが可能である。理解すべきことであるが、平行及び垂直探査が実施される順番は任意的であり且つ本発明は平行方向探査が最初に完了される場合に制限されるものではない。更に、理解すべきことであるが、全体的な探査は一連のパスで実施することが可能であり、且つそれらのパスは任意の電磁的な順番で行うことが可能である。例えば、送信器及び受信器システムは、最初に1つの方向において(例えば、平行又は垂直のいずれかの方向)全てのパスに対して牽引することが可能であり、又は1つのパスから別のパスへ方向を交互にすることが可能である。更に、注意すべきことであるが、最大水平応力の方向を推定するために応力テンソルの事前知識が有用である場合がある。
【0079】
1実施例においては、上述した手順は、例えば、インラインダイポール・ダイポール送信器及び受信器の対又はアレイを使用して実現することが可能である。本発明の原理に基づいて種々の電磁アンテナが海底探査に対して有用である場合があり、且つ本発明はいずれか1つのタイプのアンテナに制限されるものではない。使用することが可能なアンテナの幾つかの例は、垂直電気的ダイポール(VED)、水平電気的ダイポール(HED)、垂直磁気ダイポール(VMD)、及び水平磁気ダイポール(HMD)を包含している。これらのアンテナタイプの各々、又はそれらの組合わせを海底電磁システムにおける送信器及び/又は受信器のいずれかに対して使用することが可能である。更に、互いのアンテナのオリエンテーション即ち配向状態を変化させることが可能である。例えば、送信器及び受信器HEDの軸は同一線上である必要はなく、更に、平行である必要はない。図11A―Dを参照すると、本発明の実施例に従って使用することが可能なアンテナ形態の幾つかの例が例示されている。図11Aは送信器アンテナ154と受信器アンテナ156との間の方位角関係を例示している。図11Bはラジアル形態を例示しており、図11Cは平行形態を例示しており、図11Dは垂直形態を例示している。電界及び/又は磁界の異なる極性に対して感受性のある送信器及び受信器対は、以下に更に説明するように、海底における導電性異方性を検知する場合に特に有用である場合がある。
【0080】
別の実施例によれば、本来的に異方性に対して感受性のある送信器及び受信器の結合を使用する電磁探査技術を実施することが可能である。1つの例においては、この技術は、2つのパス、即ち最大水平応力の方向に対して平行な1つと垂直な別の1つとのパスを使用し且つこれら2つのパスからのデータを比較して表面下の異方性を検知する上述した例と比較して、興味のある領域にわたり単に1つのパスを使用することが可能である。導電性異方性に対して感受性がある多くの送信器・受信器結合が存在している。1つの例は、クロスダイポール・ダイポールアレイであり、その場合には、送信器は、例えば、HEDであり且つ受信器は互いに90度に配向された一対のHEDとすることが可能である。1実施例においては、受信器対を海底上に配置させ、且つ、例えば、送信器アンテナの極性を進行方向に沿った状態でそれらの上方をダイポール送信器を牽引させることが可能である。1つの例においては、互いに垂直な方向においてそのフィールドにわたり2つのパスを行うことは海底下異方性の推定に関しより良い拘束条件を与える場合がある。
【0081】
電磁特性は、周波数ドメインか又は時間ドメインのいずれかにおいて測定することが可能である。第一の場合において、位相シフト及び減衰を1つの周波数において又は周波数の関数として測定することが可能である。第二の場合において、パルスの発射とその受信との間の時間遅延を、減衰と共に測定することが可能である。原理的には、これらのアプローチはフーリエ変換により数学的に接続されるが、実際には、一方又は他方がより優れたものであることを示す場合がある。海水及び海底を介しての平行伝播において本来的なマルチパス効果は、時間ドメイン情報が、しばしば、解釈するのにより容易であることを暗示しており、且つ海底電磁探査に関する幾つかの従来技術の理論的刊行物は時間ドメインアプローチを好ましいものとしている。然しながら、周波数ドメイン技術も、例えば、深海環境における炭化水素を担持する地層の導電度を決定するために使用される商業用低周波数制御型供給源電磁気系(CSEM)においても使用されている。海底CSEM実現例は、典型的に1Hzにおいて又はそれ以下で動作する供給源を使用しており且つ電磁拡散方程式をインバートさせることにより海底下側数キロメートルまでの地層導電度をマップさせる。ガスハイドレートに関連する調査の深さに対し、CSEM技術を使用することが可能であるが、実質的により高い周波数で動作する供給源を使用することが可能である。ウェーブレット解析のような時間ドメインと周波数ドメインの両方の処理を使用するハイブリッド技術も受信した電磁信号において使用可能なより多くの情報を捕獲するために有用な場合がある。
【0082】
変化する極性を有するアンテナを使用することに加えて、1実施例においては、送信器と受信器との間の距離も可変とすることが可能であり、且つ空間的に分散した送信器及び/又は受信器のアレイを使用することが可能である。このような送信器及び/又は受信器のアレイはスタチックとすることが可能であり、又はアレイの範囲より大きな区域を探査するためにそのアンテナの1つ又はそれ以上を移動可能とすることが可能である。
【0083】
1実施例によれば、電磁(EM)送信器・受信器システムは、比較的長い波長を有する低周波数信号を使用すべく適合させることが可能である。陸地探査において有用なものではなかったかもしれないEM送信器・受信器結合は、海中適用例において有用なものである場合がある。何故ならば、低周波数EM信号は空気を介して最も速く伝搬し、土壌及び海洋堆積物を介してより遅く伝搬し、且つ海水を介して最も遅く伝搬するからである。陸地探査においては、空気信号が最初に到達し、それに続いて地中を介して伝搬したより弱い信号が後に続く。従って、陸上探査地球物理にとって最も興味のある信号は抽出することが比較的困難な場合がある。然しながら、海底においては、その状態は逆転され、堆積物を介して伝搬する望ましい信号は海水を介して伝搬する信号よりもより速く到達する。従って、少なくとも幾つかの実施例においては、海底の特徴をマップするために低周波数EM信号を使用することが望ましい場合がある。
【0084】
1つの例においては、供給源周波数は、少なくとも部分的に堆積物の電磁表皮深さにより支配される。表皮深さは次式、
【0085】
【数9】
【0086】
によって与えられ、尚Δは表皮深さであり、fは周波数であり、σは海底導電度でありそれは約1S/mの典型的な値を有しており、且つμは堆積物の透磁率でありそれは、典型的に、約4π×10-7H/mの値を有している。一般的に、送信器と受信器との間の間隔dを約5表皮深さを超えるものではない(d<5Δ)ように制限することが望ましい場合がある。更に、幾つかの実施例においては、堆積物内への調査深さは送信器と受信器との間の間隔に依存する場合がある。一般的な目安によれば、この調査深さは送信器と受信器との間の間隔の約半分である場合がある。これらのパラメータは送信器・受信器間隔及び動作周波数の両方を選択するために使用することが可能である。
【0087】
上述したように、ハイドレート岩脈の上端は、ハイドレートを担持する断層又は破砕の範囲によって及び海底近くの地球化学によって支配される海底下の距離で終端する場合がある。その岩脈の下端はガスハイドレート安定ゾーンの基底の深さよりもより深いものではなく、典型的に海底の下側約1km未満である。従って、この知識は送信器・受信器間隔のセットアップをガイドすることが可能である。又、式(9)における表皮深さに対しd<5Δの条件を使用して、有用な周波数の推定を次式
【0088】
【数10】
【0089】
によって与えることが可能である。例えば、約100mの所望の送信器・受信器間隔を仮定すると、式(10)は約633Hzの動作周波数を暗示する。然しながら、理解すべきことであるが、送信器と受信器との間の表皮深さの許容可能な数は、例えば、送信器の強度、受信器の感度、海底に関するアレイの幾何学的形状、海底上方のアレイの距離等を含む多くの要因に依存する場合がある。従って、上の計算は周波数の選択を支配するある原理の例示的なものに過ぎず制限的なものであることを意図したものではない。
【0090】
別の実施例によれば、送信器と受信器との間の間隔及び/又は送信器及び受信器の各々に存在するアンテナ要素の数も少なくとも部分的に所望のタイプの検知に基づいて選択することが可能である。例えば、アンテナアレイが岩脈間隔と比較して小さい場合には、個々の岩脈を画像形成することが可能である。アンテナアレイが岩脈間隔と比較して大きい場合には、そのアレイは電気的異方性を検知することが可能であるが、個々の岩脈を画像形成することは不可能である。両方の場合が有用なものであり、且つ1実施例においては、要素の間隔が変化する単一アンテナアレイでもって両方を達成することが可能である。上述したように、アンテナ間隔及び極性の多くの形態が有用な場合があり且つ異なる態様で海底電気的異方性を検知するために異なる実施例において使用することが可能である。全ての実施例に対して共通であり且つ垂直又はほぼ垂直なハイドレート岩脈を検知するために特に重要である1つの特徴は、従来のシステムと異なり、水平(横方向)等方的導電度及び層序がデータ処理のために仮定されることがないということである。
【0091】
図12を参照すると、一連の平行な傾斜するハイドレート岩脈を検知するために使用することが可能な送信器・受信器形態の1つの例が例示されている。この例においては、岩脈120間の間隔がそれらを検知するために使用することが可能なHEDアンテナの長さと比較して小さいものであると仮定することが可能である。この場合には、導電度σを有する媒体上に作用する電界Eが次式の電流を発生する。
【0092】
【数11】
【0093】
絶縁性岩脈近くの電流は岩脈表面に対して平行となる傾向があり、且つその電流の大きさはこの表面上の電界の投影に比例する。この電流は導電度の異方性に関する情報を維持する二次フィールドを発生する。この二次フィールドは受信器により検知することが可能である。
【0094】
この概念の実現例の1つの例は図12において海底を見下ろした平面図で示してある。注意すべきことであるが、ハイドレート岩脈120は海底と交差するものではない場合があるが、ここでは説明の便宜上例示してある。HEDアンテナのアレイが点線のボックス158内に模式的に示してある。1実施例によれば、送信器T1及びT2は交互に活性化させることが可能であり、且つ受信器R1及びR2は両方の送信器からの信号を受信することが可能である。その結果得られる4つのデータセットはT1R1,T1R2,T2R1,T2R2として示してある。トランスバースエレクトリック(TE)対T1及びR1は、運動方向160に対して垂直な共通軸を有している。トランスバースマグネチック(TM)対T2及びR2は運動方向160に対して平行な共通軸を有している。T1R2及びT2R1の組合わせはクロスダイポール(夫々、TX1及びTX2)対である。図12に示したように、運動方向は岩脈120の走向に対して角度αを形成している。
【0095】
1実施例においては、TE分極で1本のライン又は1組のラインを収集することが可能であり、且つTM分極で別のライン又は1組のラインを収集することが可能である。導電性異方性の大きさ及び方向は、TE応答対TM応答をプロットすることにより決定することが可能である。その異方性が実質的なものである場合には、支配的な導電度の方向αは次式で与えることが可能である。
【0096】
【数12】
【0097】
別の実施例においては、グリッドを探査することが可能であり(即ち、4個の送信器・受信器対の全てからデータの幾つかのラインを収集することが可能である)、且つその結果得られるデータを4つのイメージ、即ち1つのTEイメージと、1つのTMイメージと、2つのTXイメージから表面下散乱電位に対し反転させることが可能である。
【0098】
要約すると、ガスハイドレートに対する調査パラダイムについて説明したが、それは少なくとも部分的に特定のハイドレート蓄積モデルに基づいている。特に、ガスハイドレートは垂直又はほぼ垂直な岩脈内に形成する場合があり、その走向は最大水平応力の方向に対して平行であり且つその傾斜はハイドレートが存在しない場合には摩擦角度により、又は貯留層最小水平応力方向のいずれかにより制御される。複数の岩脈は平行である場合があり又は山形形状に形成する場合があるが、等間隔でない場合がある。平行な岩脈は、不均一な間隔であったとしても、上述したように導波路として機能する場合があり、そのことは従来の地震探査結果に歪みを発生する場合がある。更に、従来のEM探査はデータ処理のために海底における等方的な水平方向の導電度を仮定しており、そのことはこのような岩脈地層が存在する場合にEM信号を適切に解釈することを困難なもの又は不可能なものとさせる場合がある。本発明の実施例は、ガスハイドレート岩脈を検知することが可能であり、且つ商業的に有用なハイドレート堆積物を見つけ出すことの蓋然性を改善するために地質学的及び地質力学的理由付けを考慮に入れることが可能な地震及び/又は電磁探査技術に関するものである。1つの例は、上述した如く、岩脈のイメージングを可能とする海底ウォークアウェイ垂直地震プロファイル方法を包含している。別の例は、上述した如く表面下水平異方性を検知すべく適合された海底EM探査技術を包含している。これらの技術は、海洋ガスハイドレート蓄積を検知及び/又は定量化するために別々に又は結合して使用することが可能である。
【0099】
以上、本発明の具体的実施の態様について詳細に説明したが、本発明は、これら具体例にのみ制限されるべきものではなく、本発明の技術的範囲を逸脱することなしに種々の変形が可能であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】海中環境におけるメタンハイドレート安定性の圧力・温度依存性を示した相線図。
【図2】地球の極寒環境におけるガスハイドレート安定ゾーンを定義するガスハイドレート相線図。
【図3】振幅ブランキング及び海底擬似反射面の発生を示した地震イメージの概略図。
【図4】本発明の側面に基づく海洋ガスハイドレート堆積物の1つのタイプの構造の1例を示した概略図。
【図5】本発明の1実施例に基づく音波でガスハイドレート岩脈を検知するための反射幾何学形状の1例を示した概略図。
【図6】本発明の側面に基づいて平行なハイドレート岩脈により発生される導波路効果を例示した概略図。
【図7】本発明の側面に基づいて音波に対する導波路として作用するハイドレート岩脈の山形形状の1例を示した概略図。
【図8】本発明の1実施例に基づいてハイドレート岩脈をイメージングするための採取幾何学形状を例示した概略図。
【図9】(A)は本発明の1実施例において使用することが可能な供給源の1つの例からの周波数スペクトルを示したグラフ図、(B)は(A)と同じ供給源からの別の周波数スペクトルを示したグラフ図。
【図10】1個の送信器と1個又はそれ以上の同一直線上の受信器とを含む従来の海洋電磁探査方法を示した概略図。
【図11】(A)は本発明の1実施例に基づく送信器アンテナと受信器アンテナとの間の方位角関係の1例を例示した概略図、(B)は本発明の1実施例に基づく送信器アンテナと受信器アンテナとの間のラジアル関係の1つの例を示した概略図、(C)は本発明の1実施例に基づく送信器アンテナと受信アンテナとの間の平行な関係の1つの例を示した概略図、(D)は本発明の1実施例に基づく送信器アンテナと受信器アンテナとの間の垂直な関係の1例を示した概略図。
【図12】本発明の別の実施例に基づく電磁探査システムの1例を示した概略図。
【符号の説明】
【0101】
100 海底
108 ガスハイドレート安定ゾーン
120 ハイドレート岩脈
122 フリーガス及び水
124 基底
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスハイドレート堆積物を位置探知するためのシステム及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガスハイドレートは一種のクラスレート(clathrate、即ち格子状)化合物であって、室温及び圧力において通常ガス層にある個々の小さな分子が水分子の固体結晶母体内の場所を占有している。天然ガスハイドレート貯留層においては、ゲスト分子は純粋なメタンか又は天然ガスを有する化合物の混合物である。ガスハイドレート堆積物が形成されるためには、ガスの供給源が必要である。通常メタンを有している天然ガスのシープ即ち染み出た所は世界中多くの場所において一般的である。天然ガスハイドレート堆積物は陸地環境及び海洋環境の両方において見出されている。陸地のハイドレートは極寒地帯における永久凍土の中及びその下側に蓄積している。海洋ガスハイドレートは少なくとも約500メートルの水深における海底下沈澱物内にトラップした状態で見つけられる場合がある。
【0003】
ガスハイドレートは高圧及び減少された温度において形成する。海底の堆積物におけるガスハイドレート安定ゾーンは、図1に示したように、水熱勾配(海底ガスハイドレートの場合)、地熱勾配及びクラスレート層境界に関して温度−深さ(圧力)プロファイル上に描写することが可能である。図1を参照すると、海底環境におけるメタンハイドレート安定性の圧力・温度依存性を示した相線図が示されている。垂直軸上は、海面下側の深さ(メートル)で圧力が表わされている(この変換は10MPa/kmの通常の海洋及び間隙圧勾配を仮定している)。水平軸は摂氏における温度である。海底は点線100で示してある。地熱勾配はライン104として示してあり且つ水熱勾配はライン106として示してある。ハイドレートは、与えられた圧力における温度がその圧力におけるハイドレート遷移温度よりも低い場合に存在する場合がある。ライン102は温度及び圧力の関数としてのハイドレート・ガス層境界を示している。このラインより下の温度及び圧力条件の場合には、メタンはハイドレートの形態で存在する場合がある。このラインより上の温度及び圧力条件の場合には、メタンはガス層で存在する場合がある。ハイドレート層境界の位置は、主に、ガス組成の関数であるが、間隙流体組成(例えば、塩の存在)、間隙寸法、及び、多分、堆積物鉱物学によって制御される場合がある。例えば、水に対して塩化ナトリウムを添加するとライン102を左側へシフトさせる場合があり、一方二酸化炭素、硫化水素及びその他の炭化水素を添加するとライン102を右側へシフトさせる場合がある。
【0004】
ハイドレートは、固体の地球の地熱勾配104が相ライン102を交差する等温線の上側で安定であり、それは、典型的に、海底の数百メートル下側である。これはガスハイドレート安定ゾーン108の基底である。ガスハイドレート安定ゾーン108の上側の境界は、水熱勾配106とハイドレート相境界102との交差による場合がある。水熱及び地熱勾配は地域依存性であり、且つ地理上の位置及び構造的環境と共に著しく異なる場合がある。天然ガスハイドレートは水よりも密度が低いので、ガスハイドレート安定ゾーンの水の領域内には見出されることはない。何故ならば、水の中で形成するハイドレートは表面へ浮遊して分解するからである。然しながら、ハイドレートは、効果的に、海底下堆積物内にトラップされる。
【0005】
ハイドレートは、又、極寒領域における陸地表面下側のある深さの帯域において安定であり、永久凍土安定性の範囲とオーバーラップし且つその下側にある。図2は地球上の極寒環境におけるガスハイドレート安定ゾーン(GHSZ)を提示するガスハイドレート相線図を例示している。ガスハイドレートは、局所的な圧力においてガスハイドレート遷移温度(即ち、ガス形態とハイドレート形態との間の相境界が交差される圧力)より温度が低い場合に存在する。ガスハイドレート相境界はライン110として示してあり、点線112は地熱勾配を示しており、ライン114は淡水・氷相境界を示している。縦軸においては、通常の間隙圧力勾配100bar/km(10MPa/km)を仮定して、圧力が地表面下の深さへ変換されている。地球上のガスハイドレート調査プログラムは、シベリア、カナダ北極圏、アラスカのノーススローブ等の幾つかの区域において成功している。
【0006】
大陸縁辺上及び縁海におけるガスハイドレートの100を超える事象が文書化されており、ガスハイドレートが深海海洋環境において広く存在していることを暗示している。殆どの場合において、ハイドレート堆積物の位置及び地域的範囲は海底擬似反射面(BSR)と呼ばれるガスハイドレートの存在の特有の地震信号から推定される。このBSRは、多くの海洋地震画像において見られるものであり、海底と平行に走行し且つ海底から数百メートルの下側であり、且つガスハイドレート安定ゾーンの基底とほぼ一致する。世界中の種々の部分において見つけられた海底擬似反射面の探査は、海底のガスハイドレート内に蓄積されている有機体炭素の量が非常に大きいものであることを暗示している。広く引用される推定は、天然ガス、石炭及び石油を含む全ての回収可能な及び回収不可能な従来の化石燃料源が存在するのとほぼ2倍の量のガスハイドレートにおける有機体炭素が存在する可能性があることを予測している。更に、海洋ガスハイドレートは、主に大陸棚斜面上に見つけられるものと考えられており、それは、通常、沿岸国の排他的経済圏内にあり且つアメリカ合衆国、日本、インド及びその他における消費者の近くである。
【0007】
然しながら、海底堆積物内に蓄積されているガスハイドレートの実際の量は極めて不確かである。幾つかの主要な掘削キャンペーン(例えば、サウスカロライナ及びオレゴンの沖合い領域において)が行われており、且つ制限された深さのインターバルにおいて2,3の顕著な集中が見つかっているが、ガスハイドレートは掘削された殆どの位置におけるガスハイドレート安定ゾーンにわたって一般的に希薄である。
【0008】
ガスハイドレートに対する地震応答の別の特性はガスハイドレート安定ゾーン内の振幅ブランキングである。「ブランキング」とは、例えば、図3に示したように、地震画像における低振幅反射を有する深さインターバルのことを意味している。図3を参照すると、低振幅反射を有する領域116は海底100と海底擬似反射面118との間に見ることが可能である。地震画像における領域116の出現は振幅ブランキングと呼ばれる。ブランキングを説明するために多様な説明が提案されている。広く支持されている1つの説明は、未固結堆積物の音響速度を増加させるハイドレートは高空隙率(即ち、低速度)層内に形成する蓋然性が最も高く、従って隣りの層との音響コントラストを減少させるものであるとしている。ブランキングは、又、ハイドレート堆積物を育むものと考えられている海洋環境における堆積学的層序の崩壊によって説明されている。別の説明は、フレスネル(Fresnel)ゾーン内の垂直に変位された反射面からの破壊的な干渉が地震反射の振幅を減少させることを暗示している。4番目の説明は、ブランキングを、より深い断層へ接続されている場合のある水路を介して上方へ移動する液体及びガスの存在によるものとしている。これらの説明のうちのいずれもあり得るものであるが、それらのうちのいずれかと調査ストラテジーとの間の結びつきを確立することは困難なものであることが分っている。
【0009】
多数の理論的な研究が海底電磁探査の原理について記載している。然しながら、殆どの場合、このような研究は導電度が深さに関してのみ変化するという一次元地球モデルに基づくものであることを強調している。電磁界研究がバンクーバーの沖合い及びオレゴンの沖合いにおいて行われており、その場合に、地震及び掘削プログラムは、ガスハイドレートが存在するものであることを前もって示していた。然しながら、全てのハイドレート調査に対するデータ処理は、水平方向に層形成された地球を仮定しており、その場合に、電気的導電度は各水平な層内において等方的である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、以上の点に鑑みなされたものであって、上述した如き従来技術の欠点を改良し、ガスハイドレート堆積物を位置探査する改良したシステム及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
水平の横方向に伸びたハイドレートの蓄積の存在を仮定する従来の地震及び電磁ハイドレート調査プログラムは大陸棚斜面上のガスハイドレートの顕著な蓄積を見失っている場合があるということが次第に明らかとなっている。本発明の実施例によれば、少なくとも部分的に特定のハイドレート堆積物蓄積メカニズムに基づく場合のある調査パラダイムを含む方法及びシステムが提供される。海底擬似反射面が豊富なハイドレートの信頼性の指標であることの失敗、及びガスハイドレート安定ゾーンと一致して時々観測される地震振幅ブランキングは、ハイドレートが垂直な又はほぼ垂直なダイク(dike)即ち岩脈内に蓄積する場合があるというモデルと一貫性がある。現場での有機体炭素が制限されており、ハイドレートが形成すると自由な又は溶解しているガスに対しての透過性が減少されること、及び以下に説明するように、高空隙率貯留岩に対してハイドレートが移動により集中することができないことのために、豊富なハイドレートの蓄積をその他のメカニズムが発生させる蓋然性はより低いものと思われる。本調査パラダイムの実施例は、調査ストラテジーを従来の指標についての専らの信頼を超えて拡張し且つ地質学的及び地質工学的な推論を組込むものである。
【0012】
1実施例によれば、以下の要因を考慮し且つ経済的に顕著な量でガスハイドレートを見つけることの蓋然性を増加させることが可能である。
【0013】
1)適切な温度及び圧力条件。特に、ガスハイドレートは、上述した如くに、ガスハイドレート安定ゾーン内においてのみ形成することが可能である。
【0014】
2)ガスの豊富な供給源。以下に説明するように、現場での有機物の微生物分解によってのみ供給される貯留層が実質的なハイドレート堆積物を発生するのに充分なメタンを発生することは不可能であると思われる。従って、ガスのその他の供給源が存在する領域においてハイドレートを探すことがより適切であると思われる。
【0015】
3)発生原因が地殻変動であるか又は下側に存在するガスの蓄積からの間隙圧によって発生されるかに拘わらず、ガスハイドレート安定ゾーンを介してのフォールト(fault)即ち断層又はフラクチャ(fracture)即ち破砕が顕著なハイドレート堆積物と関連している場合がある。以下に説明するように、継続的な又は一時的なガスの流れが一連の平行なハイドレート岩脈を発生する場合がある。この幾何学的形状は、ハイドレート堆積物を検知し及び/又は特性付けるためのシステム及び方法を構築する場合に考慮することが可能である。
【0016】
4)堆積物のタイプもハイドレートを見つけることの蓋然性に影響を与える場合がある。特に、粗粒多孔性堆積物は、それらが従来の石油及びガスの堆積物に対してそうであるように、ハイドレートに対して好ましい貯留層である場合がある。
【0017】
本発明の実施例は、これらの要因を考慮に入れ且つ主に海底擬似反射面に基づく従来の調査プログラムよりも一層正確及び/又は信頼性のあるハイドレート堆積物を見付け出し且つ量を定めるためのシステム及び方法を構築することが可能である。
【0018】
1実施例によれば、ガスハイドレートを検知する方法が提供され、その方法は、垂直地震プロファイル技術を使用してある領域に関する地震データを収集し且つ少なくとも部分的に該地震データに基づいて少なくとも1つのハイドレート岩脈層を特性付けることを包含している。1つの例においては、該少なくとも1つのハイドレート岩脈層を特性付けることは、ハイドレート岩脈のディップ(dip)即ち傾斜及びストライク(strike)即ち走向のうちの少なくとも1つを推定することを包含することが可能である。別の例においては、該地震データの収集は、該領域内の坑井内に少なくとも1個の地震受信器を配備し、該坑井から第一距離離れた第一位置における海底地震供給源を活性化させて該少なくとも1個のハイドレート層上に入射する波を発生し、該少なくとも1個の受信器で該少なくとも1個のハイドレート岩脈層からの反射波エネルギを記録し、該海底地震供給源を該坑井から第二距離離れた第二位置へ移動し、且つ該供給源を活性すること及び反射波エネルギを記録することを繰返し行う、ことを包含することが可能である。別の例においては、該地震データを収集する場合に、該領域内の坑井内に少なくとも1個の地震受信器を配備し、該坑井から第一距離離れた第一位置における海底地震供給源を活性化させて該少なくとも1個のハイドレート岩脈層上に入射する波を発生し、該少なくとも1個の受信器で該少なくとも1個のハイドレート岩脈層からの反射波エネルギを記録し、所定の空間サンプリング分解能を達成するのに充分な量だけ該坑井内において該少なくとも1個の受信器を垂直方向に移動し、且つ該供給源を活性すること及び反射波エネルギを記録することを繰返し行う、ことを包含することが可能である。該受信器は、該供給源を活性化させ且つ反射波エネルギを記録するステップを繰り返す前又はその後に移動させることが可能である。更に、本方法は、該領域に関する地質情報を収集し、且つ少なくとも部分的に該地質情報に基づいて該領域における顕著なハイドレートの存在の蓋然性を決定することが可能である。地質情報を収集することは、例えば、ガスハイドレート安定ゾーンの位置を識別し、該ガスハイドレート安定ゾーン下側にガスの実質的な供給源が存在することを決定し、且つ該ガスハイドレート安定ゾーン下側から該ガスハイドレート安定ゾーン内へ延在する断層又は破砕のうちの少なくとも1つの存在を決定することのいずれか又は全てを包含することが可能である。
【0019】
別の実施例によれば、ガスハイドレートを検知する方法は、電磁探査技術を使用してある領域に関するデータを収集し、且つ少なくとも部分的に該データに基づいて少なくとも1個のハイドレート岩脈層を特性付けることを包含することが可能である。1つの例においては、該データを収集することは、巨視的海底下電気的異方性を検知すべく適合された送信器・受信器システムを使用して該領域の電磁的探査を実施することを包含することが可能である。別の例においては、該電磁的探査を実施することは、アンテナのクロスダイポール・ダイポールアレイを含む送信器・受信器システムを使用して該領域の電磁的探査を実施することを包含することが可能である。別の例においては、該データを収集する場合に、例えば、該領域における最大水平応力の方向を推定し、該最大水平応力の方向に対して平行な第一方向においてその場所にわたり送信器・受信器システムを牽引して第一データを収集し、該第一方向に対して垂直な第二方向においてその場所にわたり該送信器・受信器システムを牽引して第二データを収集し、且つ該第一データと第二データとを比較して表面下における巨視的電気的異方性の存在を検知することを包含することが可能である。更に、本方法は、更に、該領域に関する地質情報を収集し、且つ少なくとも部分的に該地質的情報に基づいて該領域における顕著なハイドレートの存在の蓋然性を決定することを包含することが可能である。地質情報を収集する場合に、例えば、ガスハイドレート安定ゾーンの位置を識別し、該ガスハイドレート安定ゾーン下側のガスの実質的な供給源の存在を決定し、且つ該ガスハイドレート安定ゾーン下側から該ガスハイドレート安定ゾーン内へ延在する断層又は破砕のうちの少なくとも1つの存在を決定することのいずれか又は全てを包含することが可能である。
【0020】
海洋ガスハイドレートを検知するための探査方法の1実施例は、ハイドレート岩脈の蓋然的な存在の地質表示に基づいて調査場所を選択し、該調査場所に関するデータを収集するために地震探査技術又は電磁探査技術のうちの少なくとも1つを使用して該調査場所を探査し、且つハイドレート岩脈の蓋然的な存在を考慮する地球モデルに基づいて該データを処理することを包含することが可能である。該調査場所を選択する場合に、ガスハイドレート安定ゾーン、該ガスハイドレート安定ゾーンの下側に位置しているガスの供給源、及び該ガスハイドレート安定ゾーン内にガスの高いフラックスを運ぶことが可能な少なくとも1個のチャンネルの存在の地質表示に基づいて該調査場所を選択することを包含することが可能である。1つの例においては、該調査場所を探査する場合に、ウォークアウェイ(walk−away)垂直地震プロファイル(vertical seismic profile)技術を使用して該調査場所を探査することを包含することが可能である。別の例においては、該調査場所を探査する場合に、巨視的海底下電気的異方性を検知すべく適合されている送信器・受信器システムを使用して該調査場所の電磁的探査を実施することを包含することが可能である。このような送信器及び受信器は、例えば、アンテナのクロスダイポール・ダイポールアレイを包含することが可能である。代替的に、送信器及び受信器システムは、少なくとも2個の送信器アンテナと少なくとも2個の受信器アンテナとを含む水平電気的ダイポールアンテナのアレイを有することが可能であり、その場合に、該アンテナは横方向電気対と横方向磁気対とを含む少なくとも4個の送信器・受信器対を与えるように配設される。別の例においては、該調査場所を探査する場合に、海底近傍の地震供給源を活性化させることを包含することが可能であり、該地震供給源はストンリー(Stoneley)波及びせん断(shear)波を発生すべく適合されており、且つ該データを処理するステップは、方位角異方性の証拠を検知するために海底に沿って反射されるストンリー波及びせん断波を解析することを包含している。
【0021】
別の実施例によれば、海洋ガスハイドレート堆積物を検知する方法が、実質的なガスハイドレートの蓋然性のある存在の海底擬似反射波存在以外の地質表示に基づいて探査されるべき場所を選択し、且つ海底下の水平導電性異方性の証拠を得るために該場所の電磁探査及び地震探査のうちの少なくとも1つを実施することを包含することが可能である。1つの例においては、本方法は、その場所の応力テンソルを決定することを包含することが可能であり、且つ該電磁探査を実施する場合に、該応力テンソルに基づいて、その場所における表面下における最大水平応力の方向を推定し、第一データを収集するために最大水平応力の方向に平行な第一方向においてその場所にわたり送信器・受信器システムを牽引し、第二データを収集するために第一方向に対して垂直な第二方向においてその場所にわたり該送信器・受信器システムを牽引し、且つ表面下における巨視的電気的異方性の証拠を検知するために該第一データと第二データとを比較することを包含することが可能である。別の例においては、該地震探査を実施する場合に、ウォークアウェイ垂直地震プロファイル技術を使用してその場所を探査することを包含することが可能である。更に、その場所を選択する場合に、海底下のガスハイドレート安定ゾーンの存在、及び該ガスハイドレート安定ゾーンの下側から該ガスハイドレート安定ゾーン内へ延在する断層及び破砕のうちの少なくとも1つの存在に基づいて該場所を選択することを包含することが可能である。
【0022】
別の実施例は、海洋環境においてガスハイドレート岩脈を検知すべく適合されているシステムに関するものである。本システムは、探査場所からデータを収集する形態とされている探査装置、及びガスハイドレート岩脈の存在を考慮する地球モデルに基づいて該探査場所からのデータを解析する形態とされているプロセッサを有することが可能である。1つの例においては、該探査装置は、例えば、送信器アンテナ及び受信器アンテナのクロスダイポールアレイ等の海面下水平導電性異方性の証拠を検知すべく形態とされている電磁探査システムを有することが可能である。別の例においては、該探査装置は、海底近傍に位置されている地震供給源と少なくとも1個の地震受信器とを含む地震探査システムを有することが可能であり、且つ該データは地震反射データである。例えば、該少なくとも1個の地震受信器は、該調査場所内に配設されている穿孔内に位置させることが可能であり、且つ該地震探査システムは、ウォークアウェイ垂直地震プロファイル探査を実施する形態とさせることが可能である。別の例においては、該地球モデルは一連の平行なガスハイドレート岩脈の存在を考慮することが可能であり、且つ該地震探査システムは、該一連の平行なハイドレート岩脈における個々のハイドレート岩脈の幅及び該一連の平行なハイドレート岩脈における個々のハイドレート岩脈間の間隔のうちの少なくとも1つを検知するのに充分な分解能を達成するために選択された周波数において動作する形態とされている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
研究調査が暗示するところによれば、表面下近くにおけるガスハイドレート内にトラップされている炭化水素ガスの全量は巨大である可能性がある。そうであれば、このことは化石燃料の供給源に対し及び世界的な気候変化に対して著しい意味合いを有している。更に、ガスハイドレートは、海底の不安定性に寄与する1つの作用物質であると暗示されており、従ってそれを位置探索し且つ量を定めることが重要である可能性がある。ガスハイドレートは大陸斜面上において豊富であると推測されており、非常に大きな沖合いのガスハイドレート堆積物に対する広範な地震証拠が存在している。従って、有望な領域における掘削キャンペーンが見つけ出したガスハイドレートが非常に僅かであったということは驚きである。今日までの海洋ガスハイドレート調査プログラムの落胆するような結果は、大陸傾斜上のガスハイドレートは期待された程豊富なものではないか、又は従来の調査パラダイムが効果的なものではないかのいずれかであることを暗示している。
【0024】
従来、海洋ガスハイドレート調査見込みは、地震探査により定義されており、海底擬似反射面(BSR)は、ハイドレートの存在の最も信頼性のある指標として理論的にみなされている。然しながら、実際には、BSRは、しばしば、ハイドレートの存在の粗末な予測子であると思われる。例えば、サウスカロライナの沖合いであるブレークリッジ上の掘削場所において、強いBSRに対して掘削した坑井内において殆どハイドレートは見つかっておらず、一方BSRが存在しなかった場所において掘削された坑井においてハイドレートが見つかっている。更に、BSRはガスハイドレート安定ゾーンの基底におけるハイドレートの蓄積により比較的非透過性とされた堆積物下側にトラップされた自由ガスの蓄積により発生されるものと一般的に考えられているが、自由なガスはしばしばBSRにおいて見つけられることはなく、少なくともワイヤーライン検層ツールにより検知可能な量で見つかることはない。BSRの有意性を解釈する場合に、2つの原則を留意すべきである。第一に、強力な地震反射面を発生するために殆どガスが必要とされない場合があり、且つ、第二に、見掛け上連続的な反射面は連続的なガスが飽和した媒体を意味するものではない場合がある。高分解能処理が示したところによれば、低分解能において連続的に現われる場合のある強力なBSRは、実際には、ガスの複数の小さな不連続的なポケットにより発生される場合がある。これらの要因は、ガスハイドレートの存在の指標としてBSRの明らかな不正確性に寄与する場合がある。
【0025】
現在の調査プログラムは、大陸斜面上のガスハイドレートの顕著な蓄積を見失う場合がある。本発明の側面及び実施例によれば、ハイドレート堆積物を検知するための電磁及び/又は地震技術を包含するハイドレート堆積物蓄積のモデルに基づくハイドレート調査パラダイムが提供される。該モデルの1実施例によれば、少なくとも幾つかの貯留層において、ガスハイドレートは垂直又はほぼ垂直なダイク即ち岩脈のアレイ内に蓄積する場合がある。理解すべきことであるが、本明細書において使用される「ダイク(dike)」即ち岩脈という用語は、前から存在する岩石に入り込む貫入として提示され、それは、一般的には、前から存在する層を横断して垂直又はほぼ垂直に切断する平板状の形状である。このモデルが暗示するところによれば、海底擬似反射面は豊富なハイドレートの偽陽性指標である場合があり、且つその不存在は偽陰性指標である場合がある。更に、このモデルは、以下に説明するように、ガスハイドレート安定ゾーンにおいて観察される振幅ブランキングと一貫性がある。このような垂直又はほぼ垂直なハイドレート岩脈は、一般的に使用されている従来の地震採取及び処理方法によって信頼性を持って検知されない場合がある。従って、本発明の側面及び実施例は、ハイドレート層のこのモデルを考慮に入れることが可能であり且つ現在適用されているような調査地球物理学の従来技術を使用して位置探査することが困難であるか又は不可能であるガスハイドレート岩脈を検知することが可能である調査技術を提供するものである。
【0026】
1実施例によれば、複数の平行なハイドレート岩脈からなるアレイを見付け出すべく適合された多数の地震技術が提供される。その他の実施例によれば、ガスハイドレート堆積物を見付け出し且つ特性付けるために電磁(EM)技術を使用することも可能である。ガスハイドレートは氷に類似しており、従って、絶縁体である。それは、通常塩水で飽和されており典型的に1/mの導電度を有している海洋堆積物と強く対比される。その強い導電度の対比及び海底近くの存在はガスハイドレートを海洋EM探査に対するほぼ理想的なターゲットとする場合がある。従って、本発明の幾つかの実施例は、以下に説明するように、ガスハイドレート岩脈を検知すべく適合されたEM探査方法及びシステムに関するものである。特に、このようなEM方法は、更に以下に詳細に説明するように、ハイドレート岩脈のあり得る存在を考慮し且つ水平方向に等方的な地球を仮定するものではない地球モデルに基づくものとすることが可能なデータ処理を含む場合がある。
【0027】
理解すべきことであるが、本発明はその適用において以下の説明において記載され且つ図面に示された構成の詳細及びコンポーネントの配置に制限されるべきものではない。本発明はその他の実施例とすることが可能であり且つ種々の態様で実施することが可能なものであり、本発明は特許請求の範囲において特に記載されない限り個々に提示した例に制限されるものではない。更に、理解すべきことであるが、本明細書において使用する表現及び用語は説明の目的のためであって制限的なものとしてみなすべきものではない。「含む」、「有する」、「持っている」、「含有する」、又は「関与する」という用語の使用及びその本明細書における変形例は、その後にリストされる項目及びその均等物及び付加的な品目を包含することを意味している。
【0028】
経済的な観点からは、生産的潜在力を有するガスハイドレート堆積物をそうではないものから区別することが特に重要である場合がある。ハイドレートからガスを解放することは温度の上昇、圧力の減少、又は阻害剤の使用を必要とし、全体的な貯留層がどのように大きなものであったとしても、ハイドレートが低い濃度である場合にはそのいずれもが実際的なものではない場合がある。より不明確でない調査方法を開発するために、ガスハイドレート堆積物が形成されるメカニズムを理解することが重要である場合がある。適宜の温度及び圧力条件が与えられると、ハイドレート堆積物の量及び分布を制御する主要な要因はガスの入手可能性である場合があり、堆積物の性質は、どのようにしてガスがハイドレートの生産場所へ送られるかに依存する場合がある。ガスは、3つの態様のうちの1つでガスハイドレート安定ゾーンへ供給することが可能であり、即ち、ガスハイドレート安定ゾーンにおけるガスの局所的な生産、堆積物内の間隙空間を介してのガスハイドレート安定ゾーン内へのガスの移動、及び断層又は破砕を介してのガスハイドレート安定ゾーン内へのガスの移動によるものである。
【0029】
メタンの局所的な生産は、有機物質の微生物崩壊によって発生される。ガスハイドレート安定ゾーンにおける有機物から発生したガスは、発生と共に即座にハイドレートを形成する。石油及びガスと異なり、ガスハイドレートは、その安定ゾーン内において形成されると、顕著な濃度を得ることが可能な貯留層へ移動することはない。従って、ガスの外部的な供給源がない場合には、ガスハイドレート濃度は元々その場所にある有機供給物質の存在と相関するものと推測することが可能であり、且つこのような堆積物におけるハイドレートの究極的な濃度は全体的な有機体炭素の濃度により制限される場合がある。3000m未満の水深における海洋堆積物の幾つかの探査は、全堆積物の重量%として表現される最大全有機体炭素濃度は約2%であり、且つ平均全有機体炭素濃度は約0.55%であることを示している。この全有機体炭素のうちの一部のみがメタンへ変換され、従って現場で有機体が発生するメタンの生産が唯一のガスの供給源である堆積物においては、ハイドレート濃度は非常に低いものと推測され、例えば、全堆積物体積の数%を超えるものではないと推測される。このような有機体が発生する堆積物は空間的には広範なものである場合があるが、それらはハイドレートの濃度が低いために経済的に興味のあるものである可能性はない。
【0030】
幾つかの区域においては、ガスの供給源がガスハイドレート安定ゾーンの基底下側に存在している場合がある。そのガスは間隙水内に溶解しているか又はバブル状で自由であるいずれかの場合があり、且つ1つ又はそれ以上の供給源から発生する場合がある。例えば、ガスは微生物活動(有機物から発生)から又は深い石油の高温クラッキング(熱的に発生)から発生する場合がある。ガスは、又、堆積作用から発生する場合があり、前に存在するガスハイドレートを分解させる。このようなガスは堆積間隙を介してガスハイドレート安定ゾーン内へ上方へ移動する場合があり、そこでそれはハイドレートを形成する。然しながら、石油及びガスの場合には可動性のままであり貯留層を介して上方へ移動するものであるのと異なり、ガスハイドレートは不動性であり一度形成されると自由に移動するものではない。更に、下側から上方へ移動する溶解ガスからのハイドレートの蓄積は、間隙を塞ぎ且つその結果透水率を減少させるために自己制限的である場合がある。更に、必ずしも水の流れを阻止するものではない堆積物は、毛細管圧力効果に起因して自由なガスの上方への移動を阻止する場合がある。従って、間隙空間を介しての輸送がガスハイドレート安定ゾーンを介してのガスが移動することが可能な唯一の手段である場合には、利用可能な(例えば、大きな、高濃度の)ガスハイドレート堆積物が形成される可能性はない。
【0031】
上述したように、本発明の幾つかの実施例によれば、少なくとも幾つかの貯留層において、ガスハイドレートは主に垂直な又はほぼ垂直な岩脈として形成される場合があり、その岩脈のストライク即ち走向が最大水平応力の方向と平行なものであることが提案されている。複数のダイク即ち岩脈は平行なものである場合があるが、又は山形に成長する場合があるが、例えば、ハイドレート堆積物が形成する堆積物の性質に依存して必ずしも等しい間隔ではない場合がある。1実施例によれば、ガスハイドレート堆積物は自由なガスの実質的な蓄積が存在する場合のあるその基底下側の区域からガスハイドレート安定ゾーン内へ延在するフォールト即ち断層又はフラクチャ即ち破砕と関連している場合がある。ガスハイドレート安定ゾーン内のこのような断層又は破砕内部のガスがハイドレートとなると、それはゆっくりとチャンネルを充填し、以下に説明するように、ハイドレート岩脈を形成する。
【0032】
地球におけるフォールト即ち断層は滑り面又はゾーンである。断層は、それを横断して層が不連続であるラインとして地震レコード上で容易に認識される。ガスハイドレート安定ゾーン内及びそれを介して延在する連続的な断層は、ガスハイドレート安定ゾーンにわたってガスを分布させるための効率的な経路である場合がある。然しながら、この考え方を受け入れることは、ガス相メタンはガスハイドレート安定ゾーン内の過剰な水と熱力学的平行状態で存在することは不可能であるという知識によって遅延された。それにも拘わらず、海洋ハイドレート蓄積の圧倒的多数が、それを介して溶解又はガス状のメタンが迅速に上方へ移動することが可能な断層系と関連しているものと思われる。例えば、ハイドレートは、黒海における、北アメリカの太平洋岸沖における、メキシコ湾における、及びその他における天然ガスのベント即ち放出及びシープ即ち染み出しと関連している。パッシブマージン(passive margin)即ち非活動的縁辺部上に位置しているブレークリッジ(Blake Ridge)堆積物であっても、海底擬似反射面の下側から海底へ延在する断層と関連している。これらの断層は、ガス相にあり、従って周囲の堆積物とは熱力学的に平衡ではないメタンの輸送に対する効率的な管路を構成する場合がある。
【0033】
顕著な滑り(断層の場合におけるように)と必ずしも関連するものではない引張り破壊は地球における流体経路を開くことである。破壊は、間隙圧が堆積物内の最小形成応力を超える場合に発生することが可能である。破砕面は最小応力の方向に対してほぼ垂直である。ソフトで固結していない堆積物を介しての自由なガスのフラックスが高過ぎるものではない場合には、引張り破壊は過渡的なものであり空間的にコンパクトなものである場合がある。その直径が厚さよりも一層大きな孤立した岩脈としての固結していない泥状の堆積物を介して上方へガスが移動することが暗示されている。岩脈の面は地殻変動応力がない場合には垂直又はほぼ垂直である場合がある。トラップされたガスのポケットに到達すると、これらの岩脈はそのポケットに対してガスを与え且つ消失する場合がある。ガスは従来の炭化水素貯留層に向かって数キロメートル上方へ移動することが知られているが、このように薄いガスの移動性岩脈はガスハイドレート安定ゾーンに入ったすぐ後に固体のハイドレートを形成することが予測される。正に、メタンと、海水と、堆積物の混合物が盛んに混合された海底実験においては、ハイドレートは数分内で形成した。従って、ガスの孤立した移動性岩脈から形成されるハイドレート堆積物はガスハイドレート安定ゾーンの基底近くに集中する蓋然性がある。
【0034】
対照的に、自由なガスのフラックスが実質的なものである場合には、ガスの管路(例えば、フラクチャ)は開いたままであり且つガスハイドレート安定ゾーンを介して顕著な距離ガスが移動することを可能とする場合がある。ハイドレートは破砕又は断層の表面において迅速に形成することが可能であり、チャンネルを硬くさせ液体の水と接触することなしにそれを介してガスが流れることを可能とする。この挙動は、沖積泥土の円筒の底部内にメタンを注入させた実験において観察されており、それはBrewer et al.による文献に記載されている(「遠隔操作探査器からのメタンハイドレート形成の深海洋フィールドテスト(Deep ocean field test of methane hydrite formation from a remotely operated vehicle)」、Geology25、407−410(1997))。これらの実験において、ガスの流れによって堆積物をそれから完全に移動させたチャンネルは次第に固体のハイドレートで充填された。更に、ブレークリッジにおけるガスハイドレート安定ゾーンにおいてはガス移動割れ目が観察された。自由なガスはこれらのハイドレートで固められたチャンネルによって液体の水から分離され且つそのチャンネル(例えば、断層又は破砕)が継続している場合には、ガスハイドレート安定ゾーンを介して実質的な距離にわたり移動することが可能である。
【0035】
地球においては、断層は平面状である可能性があり、ストライク即ち走向は最大水平応力の方向と平衡である。クーロン理論によれば、断層又は破砕のディップ(dip)即ち傾斜は45度+φ/2であり、尚φはハイドレートが存在しない場合の海洋堆積物の摩擦角度であり、典型的に、約25度に等しい場合がある。約60−50度の傾斜角度を有する不連続は浅い海洋堆積物において一般的に観察され、上の形成理論と一貫している。自由なガスの蓄積は、その自由なガスの圧力がその上側に存在する堆積物の強度を越える場合に、その上方の堆積物内に断層を誘起する場合がある。ハイドレートで充填された断層の傾斜及び走向は、堆積物本体における摩擦角度及び最大水平応力の方向によって夫々制御することが可能である。対称性により、これらのハイドレート岩脈は山形の形状(V形状構造)で存在する場合がある。対照的に、ハイドレートで充填された破砕は最小応力及び最大水平応力方向により制御される独特の傾斜及び走向を有する場合がある。このような破砕は山形形状を形成することはない。導管がハイドレートで充填されると、それは堆積物における最も強い特徴となる場合があり且つ再度破砕又は断層が発生する可能性はない。その代わりに、自由なガスは前の自己誘起した破砕又は断層と同じ(又はほぼ同じ)傾斜及び走向を有する別の経路を見つけ出す場合がある。従って、一連の平行なハイドレートで充填された岩脈が海洋環境における豊富なガス供給源上方のガスハイドレート安定ゾーン内において形成する場合がある。
【0036】
図4を参照すると、海面126下側のガスハイドレート安定ゾーン108内に形成された一連の平行なハイドレート岩脈120の一例の線図が例示されている。上に説明したように、自由なガスの供給源がガスハイドレート安定ゾーン108の基底124下側の領域122内に存在する場合がある。ハイドレート岩脈系は、一般的に、地質時代境界を横断する場合がある。然しながら、断層又は破砕が透過障壁下側の粗砂の層を交差する場合に例外が発生する場合がある。この場合には、ガスが水平方向に広がって局所的な層序と一致するハイドレート水平線を発生する場合がある。更に、断層傾斜が最大水平応力の軸に関して対称的である場合にはハイドレートの山形形状が上方に開く場合がある。更に注意すべきことであるが、非常に高いフラックスの質量及びエネルギが平行なハイドレート岩脈系の形成を阻止する場合がある。寧ろ、ガスの経路がガスハイドレート安定ゾーンを介して開いたままとなり、ガスが海底を突き破り且つ海洋へ放出することを可能とする。従って、最も豊富で有用なガスハイドレート堆積物は、ガスのフラックスが高過ぎることも低過ぎることもなく、ガスハイドレート安定ゾーン内に良好にガスを運ぶのに充分に高いものである領域において発生する場合があり、上述した如くに岩脈を形成する。
【0037】
従来の海洋地震探査は海面近くを牽引されるハイドロフォンの供給源及びストリーマーを使用する。この幾何学形状は、水平又はほぼ水平の音響異常を検知するのに最適な場合があり、且つ多くのハイドレート蓄積モデルが一次元(即ち、ハイドレート飽和等の貯留特性は横方向の変化なしで深さの関数である)であるのでハイドレートを見つけだすのに適切なものと一般的にみなされていた。然しながら、従来の海洋地震探査は、急峻に傾斜するハイドレート岩脈が存在する中で使用される場合に重要な制限を有している。第一に、以下に更に説明するように、そのような岩脈から従来の受信器へ反射して戻されるエネルギは殆ど又は全く存在しない場合がある。第二に、速度における大きな横方向変化は従来の地震処理アルゴリズムにより認識されることはない。第三に、地震波面と比較して岩脈の横方向範囲に依存し、且つ岩脈が山形形状に形成するか否かに依存して、擬似反射面が歪まされている場合があり地震探査において容易に解釈することが可能でない場合がある。
【0038】
バルクのガスハイドレートは、約3800m/sの圧縮音速、約1950m/sのせん断音速、及び約920kg/m3の密度を有している。対照的に、固結していない又は軽く固結している高多孔性海洋堆積物は約2000m/sの圧縮速度、及び約2000kg/m3の水飽和密度を有している。岩脈がハイドレートにより固められた堆積物から構成されている場合には、圧縮速度及びせん断速度において2倍したものと同じ程度のものが見られる場合があるが、密度は周囲の水で飽和された堆積物とほぼ同じままである。従って、このような岩脈は水で飽和した堆積物に対し大きな音響インピーダンス対比を示す場合があり、且つ適切な光線経路幾何学形状(後に更に説明する)に対して強い地震反射を発生することが可能であり、そのことは良好な検知可能性を暗示している。一方、堆積物を排除した純粋な(又はほぼ純粋な)ハイドレートから構成される岩脈は隣りの水で飽和した堆積物と強い速度の対比(例えば、約3800m/s対2000m/s)を示す場合があるが、大きな音響インピーダンス対比を示すものではない。何故ならば、純粋なハイドレートの密度は水で飽和した堆積物の密度の約半分である場合があり、従って周囲の水で飽和した堆積物と比較してハイドレートにおける音速のほぼ2倍を補償するからである。その結果、垂直に入射する地震波は強く反射されない場合があるが、より大きな入射角度における波は強く反射される場合がある。
【0039】
本発明の1実施例によれば、1つ又はそれ以上のガスハイドレート岩脈を検知するために地震技術を使用することが可能である。ハイドレート岩脈の前方及び後方からの反射を解明することが可能であるためには、供給源の波長λは岩脈の厚さの4倍を超えるものとすべきものではない。換言すると、岩脈の厚さは地震供給源の動作周波数における4分の1波長とほぼ等しいか又はそれより大きなものとすべきである。説明の便宜上、以下の説明においては1メートルの岩脈厚さを仮定する。然しながら、この例は説明の便宜上のためだけであり制限すべき意図を持ってなされるものでないことを理解すべきである。岩脈は直径において1メートルに近い場合も近くない場合もある多様な厚さを有する場合がある。約4000m/sの岩脈内の速度に対して、約1kHzの供給源周波数は、その岩脈が約4分の1波長の厚さを有していることを意味している。海底下堆積物において、圧縮波の減衰は約0.01及び0.20dB/m/kHzの間で変化し、且つせん断波の減衰は約1及び100dB/m/kHzの間で変化する。従って、2000メートルを伝播する1kHz圧縮波の振幅は約2dB乃至40dBだけ減少される。このような振幅反射は入手可能な装置の検知範囲内であり且つこの寸法の岩脈の検知は実現可能であることを表わしている。然しながら、検知を確実なものとするために、堆積物内の伝搬距離を最小に維持することが重要である場合がある。
【0040】
海洋地震供給源は、従来、水中で爆発され且つ射出されたエネルギは海底において圧縮波及びせん断波へ変換される。送信された圧縮エネルギは水中における約1500m/sから海底堆積物における約2000m/sへの伝搬速度における増加によりデフォーカス即ち焦点がぼかされる。スネルの法則の示すところによれば、90度の頂部角度を有する塩水内の水において放射されるエネルギのみが圧縮エネルギとして海底を浸透することが可能である。スネルの法則が更に暗示するところによれば、垂直線に対して0度と30度との間の角度における供給源から送信されたエネルギは垂直線に対して約0度と45度との間の角度において海底を介して送信され、一方垂直線に対し約30度と45度との間の角度で供給源において射出されたエネルギは45度から90度へ固体角度の残りにわたり海底下を介して広がる。45度を超える伝播角度に対する海底下における波エネルギの強い減衰が存在している。従って、海洋供給源は、通常、全方向性ではなく、その代わりに、そのエネルギの殆どを「浸透塩水」内において、即ちそのエネルギが海底を浸透することが可能な固体角内において送信すべく構成することが可能である。この塩水の外側を送信されるエネルギは望ましいものではない。何故ならば、それは水柱内にトラップされる場合があり且つ信号帯域幅内のノイズ源となる場合があるからである。その結果、海洋供給源から送信される有用なエネルギは、通常、45度よりかなり小さい入射角度に集中される場合がある。
【0041】
図5を参照すると、本発明の1実施例に基づいて、音波でハイドレート岩脈を検知するための反射幾何学形状の1例の線図が例示されている。垂直線に対し角度αで伝搬する光線130(供給源から)が垂直線から角度βで傾斜している面130に到達すると、反射光線132は図5に示したように垂直線に対し角度γ=180゜−(α+2β)で戻って来る。90゜より小さなγの値は光線132が海底へ反射して戻されることを意味する。従って、検知はα>90゜−2βであることを必要とする。上述した如く、ガスハイドレート安定ゾーン内へガスを運ぶことが可能な断層又は破砕の傾斜は、典型的に、45゜+φ/2である場合があり、尚φはハイドレートが存在しない場合の海洋堆積物の摩擦角度であり且つ典型的に約20゜に等しい場合がある。従って、ガスハイドレート岩脈は約55゜の傾斜(水平線からの角度)で形成する場合があり、その場合にβ=35゜である。β=35゜において、γ+α=110゜である。上述したように、岩脈面上に顕著なエネルギを衝突させるために、入射角度はα<45゜とすべきであり、γ>65゜を暗示している。然しながら、γの値が大きければ大きい程、光線132が海底に表われる反射点から一層遠くなる。堆積物を介してのより長い伝搬距離は、吸収及び波動場の広がりの両方に起因してより少ないエネルギが受信器に到達することを意味する。上述したように、信頼性のある検知のためには、堆積物を介しての伝搬距離は、理想的には、最小とすべきである。容易に検知可能な反射波はγ<45゜の方向で伝搬する場合がある。従って、従来の海洋又は海底地震供給源及び受信器の場合には、入射及び反射の望ましい角度は相互に排他的であり、ハイドレート岩脈の検知を困難なもの又は不可能なものとさせる。
【0042】
例えば、ハイドレート調査キャンペーンにおいて使用されている深海牽引型音響/地球物理システム(DTAGS)は、通常、垂直線から約30度未満の角度において海底に入射する音波を検知すべく適合されているが、その幾何学形状はより幅の広い角度の採取アパーチャを可能とするものである。DTAGSはほぼ海底下のターゲットに対して設計されており且つ15Hz及び650Hzの間の周波数における地震測定を行う。然しながら、約50度から約90度の範囲にわたるものと予測されるハイドレート岩脈の傾斜の場合には、牽引される受信器によって記録すべき表面への岩脈から反射して戻されるエネルギは非常に少ない場合があり、検知を見込みのないものとさせる。
【0043】
従来の海底地震探査は海面又はその近傍で牽引即ち曳航される供給源を使用し且つマルチコンポーネントの受信器を海底上に配置するか又は海底内に植え込むものである。この海底システムは海底堆積物のより多くの音弾性特性の推定を可能とするものであるが、そのシステムの採取アパーチャは深海牽引システムにわたり著しく増加されるものではない。このことは、急峻な反射面からの反射を記録する場合と同一の制限が海底地震システムに対しての成り立つことを意味している。
【0044】
上述した個々のハイドレート岩脈を検知することに関連する問題に加えて、複数個の岩脈が存在する場合に更なる問題が発生する場合がある。例えば、平面上のハイドレート反射面の角度分布がランダムであった場合には、散乱が下方へ進む波面の一貫性、従って、ガスハイドレート安定ゾーン内及びその下側の両方の地質時代境界からの反射の一貫性を破壊する場合がある。このことは、急峻に傾斜する岩脈及び水平なハイドレートで飽和された砂の両方が貯留層内に存在する場合に発生する場合がある。
【0045】
堆積物とハイドレート岩脈との間の硬さ及び密度における差に起因して、一連の平行な岩脈は方位角異方性を形成する場合があり、それは海底に沿って屈折されるストンリー波及びせん断波を解析することにより検知することが可能である。これらの波は、岩脈に対して垂直に伝搬している場合には、より小さな実効速度を有するものと予測すべきである。せん断及びストンリー方位角異方性の不存在はハイドレート岩脈が存在することに対する強い負の指標となる場合があるが、このような異方性はその他の原因に起因する場合がある。更に、理解すべきことであるが、ストンリー及び屈折されたせん断等の表面波の低周波数特性、従って低分解能特性に起因して、個々の岩脈の効果ではなく集約的な効果を見ることが可能であるに過ぎない。
【0046】
別の例においては、一連の平行な岩脈は導波路として作用する場合がある。図6を参照すると、平行なハイドレート岩脈120の間を伝播する案内された光線134の幾何学形状の線図が例示されている。ガスハイドレート安定ゾーンを介して通過する案内された光線134等の波面は隣りの岩脈120の表面の間で多数回反射される場合がある。これらの反射に起因して、同一の入射角度を有する案内されることのない波により移動されるよりもより大きな距離移動した後に下方へ向かう波面がガスハイドレート安定ゾーンの下側に表われる場合がある。
【0047】
案内される波に対する移動距離における増加を推定するために、図6に示したように、垂直線から角度βで傾斜した2つの平行な岩脈120及び角度αで入射する堆積物における地震波面について検討する。案内される光線134が上側の岩脈の下側表面(点136)から進行し、下側の岩脈の上側表面で反射し、且つ上側岩脈の下側表面へ戻る場合に、それは図6に示したように、距離2s進行し、その間に垂直距離z進行する。距離sは以下の式(1)から計算することが可能であり且つ距離zは以下の式(2)から計算することが可能である。
【0048】
【数1】
【0049】
【数2】
【0050】
案内される光線134が垂直距離Dにわたり進行する距離は、同じ入射で案内されない光線が同一の垂直距離にわたり進行する距離と比較して、次式で与えられ、
【0051】
【数3】
【0052】
尚、Nは案内される光線が導波路の上側境界から反射される回数である。Nは、
【0053】
【数4】
【0054】
で与えられる。従って、Nを式(3)内に挿入すると、案内される光線に対する進行距離における差異が
【0055】
【数5】
【0056】
垂直入射(α=0)における波及び55゜で傾斜する(β=35゜)岩脈の場合には、Δ/Dは約0.49に等しい。従って、案内される光線は、岩脈120によって水平方向にオフセットされるという部分的な理由により、案内されない光線よりも約1.5倍だけ遠く進行する場合がある。
【0057】
移動距離が増加することに加えて、導波路として作用する岩脈は、又、それらを介して伝搬する音波の垂直速度を減少させる場合がある。垂直距離Dを横断する間に、案内される光線134は距離2s(D/z)移動する。従って、堆積物における案内されない波速度はVuにより与えられる場合には、案内される波速度の垂直成分は、
【0058】
【数6】
【0059】
によって与えられる。垂直入射(α=0)における波及び55゜で傾斜する(β=35゜)岩脈の場合には、案内される波の速度の垂直成分は案内されない波の速度の約67%である場合がある。注意すべきことであるが、これらの結果(距離及び速度の両方における差)は、地震波面の横方向範囲が岩脈間隔よりも著しくより大きい場合には、平行なハイドレート岩脈120の間の距離とは独立的である場合がある。
【0060】
更に、地震波面の横方向範囲が岩脈アレイの横方向範囲よりもより小さい場合には、その波面は岩脈内及びその下側において一貫性を維持する場合があり且つ地質時代境界から一貫性のある反射を与える場合がある。然しながら、その波面はその伝搬時間及び湾曲を岩脈の存在により変更させる場合があるので、より深い反射と関連する二方向経過時間が増加される場合があり、且つ反射はそれらの真の位置から水平方向にオフセットされる場合がある。伝搬角度の狭い範囲の場合には、ハイドレートゾーンの効果は実効的には時間遅延である場合があり、より深い反射面の画像のプッシュダウン(push−down)となる。岩脈のアレイが地震波面の横方向範囲よりもより小さい場合には、案内される波の反射は案内されない波の反射と干渉する場合があり、その結果壊された即ち歪められた地震セクション(seismic section)が発生する。
【0061】
上述したように、ハイドレートで充填された断層の傾斜及び走向は、夫々、摩擦角度及び堆積物本体における最大水平応力方向により制御することが可能である。対称性により、このようなハイドレートで充填された断層は図7に示したような断層の山形形状を形成する場合がある。各グループの平行な岩脈は導波路を形成する場合があり、それは上述した如く、ガスハイドレート安定ゾーン内及びその下側における反射面へそれからのエネルギを伝達させる。堆積物本体は可変的に解明することが可能であり、その結果個々の反射面を横断しての水平方向のオフセット及び振幅及び移動時間の変動が発生する。これらの効果は時折ガスハイドレート安定ゾーンと一貫性があるものとして観察される振幅ブランキングに貢献する場合がある。更に、ガスは岩脈の根元に蓄積する場合があるが、これらのガスポケットは地震レコードにおいて必ずしも海底擬似反射面を発生するものではない。一方、現場での微生物活動によって発生されるもののような広く広がっているが希薄なハイドレート堆積物下側にトラップされる小さな量のガスが強い海底擬似反射面を発生する場合がある。従って、海底擬似反射面の存在は、実質的なハイドレートの蓄積に関して、偽陽性である場合があり、且つその不存在は偽陰性である場合がある。
【0062】
1実施例によれば、ソフトな海洋堆積物における高いコントラストで急峻に傾斜したハイドレート岩脈はそれらを「横から」見ることにより、例えば、垂直な坑井において収集した音響反射データを使用することにより検知することが可能である。このようなデータは、例えば、1個又はそれ以上の海底供給源を具備するウォークアウェイ垂直地震プロファイル(VSP)技術を使用して収集することが可能である。図8を参照すると、受信器138を垂直な坑井140内に配備することが可能な1実施例の1つの例の線図が例示している。地震波を発生することが可能な1個又はそれ以上の地震供給源142を海底100上に位置させることが可能である。1つの例においては、供給源142は岩脈120から反射される波エネルギ(例えば、光線144)が図8に示したように受信器138上に入射することが可能であるように位置決めし且つ形態とすべきである。1個又はそれ以上のプロセッサ(不図示)及びオプションとしてディスプレイ(不図示)を該受信器に結合させて受信信号を処理し且つ受信画像を発生(且つオプションとして表示)させることが可能である。供給源が穿孔140から離れて移動されると、岩脈120上で解明されるスポットが岩脈の勾配の下側に移動する。従って、ハイドレート岩脈120の傾斜と走向を画定するために坑井頭部146から異なるオフセットにおいて幾つかのショットを使用することが望ましい。注意すべきことであるが、少なくとも1つの実施例においては、海底供給源が望ましい。何故ならば、その光線経路は表面の供給源からのものよりも一層拘束されており、従って、マルチパシング(multipathing)からの影響がより少ないからである。更に、海底の供給源は供給源において直接的なせん断波を発生することが可能である。然しながら、理解すべきことが、本発明は海底の供給源の使用を必要とするものではなく多くの供給源のオプションを使用することが可能である。
【0063】
本発明の1実施例は、高分解能イメージングに対する可能性を包含している。1つの例においては、本発明の1実施例に基づく装置は、約0.5乃至1.0m分解能において特徴を分解することが可能な場合がある。従来処理されているVSPは約10乃至50Hzの帯域幅を有する場合がある。陸地バイブレータと、高Q岩石と、特別の処理とによって、250Hz程度に高い帯域幅を達成することが可能である。信号周波数における4分の1波長よりも互いにより離れている構造/特徴を分解することが可能であると一般的に仮定される。約2000m/sの水で飽和した堆積物速度において、1000Hz圧縮波の波長は約20mであり、このような信号は約5m離れた構造/特徴を分解するために使用することが可能であることを意味している。ハイドレート岩脈の間隔はこれよりもより小さいものである場合がある。従って、個々の岩脈を区別することが可能な高分解能イメージングを達成するために、約1kHzにおいて実質的なエネルギを発生することが可能な供給源が望ましい場合がある。上のように水で飽和した堆積物を仮定し、約0.5m離れた構造/特徴を分解するために1kHz信号を使用することが可能である。更に、岩脈の厚さを分解することも望ましい場合がある。約1mの岩脈厚さ及びハイドレートにおける圧縮波速度が約4000m/sであることを仮定し、このことは供給源から1kHz信号を使用して達成することが可能である。
【0064】
最も広く使用されている海洋地震探査供給源はエアガンである。然しながら、ガスハイドレートが見つかる場合のある大きな水深において、エアガンのポートが開いている場合にトラップされた空気の爆発的膨張を発生させるために必要となるような高圧のために海底近くにエアガンを配備することは実現可能なものでない場合がある。本発明の実施例において使用することが可能な供給源の1つの例は2005年5月11日に出願され発明者がSandersであり「海底エネルギ供給源を使用した地震イメージング及びトモグラフィ(Seismic Imaging and Tomography Using Seabed Energy Sources)」という名称の米国特許出願第11/127,014に記載されており、その記載内容を引用により本明細書に取り込む。Sandersの供給源は内側に破裂するガラス球(即ち、大気圧における空気のチャンバが周囲の高圧水の下で崩壊される)を使用しており、任意の水深においての効率的な地震供給源となることが可能である。エアガンエネルギ供給源は、エアガンチャンバ内の高圧空気と周囲の水圧との間の差動的圧力が減少するので、深さに従って益々効率が悪くなる場合がある。対照的に、内部的に大気圧であるガラス球が海洋内に配備される場合に、深さと共に差動的圧力が増加する。海洋は深海ガラス球内破を超えて無限に近い圧力貯留層を提供する。従って、その内破はエアガンの爆発よりも一層速く進行することが可能であり、その結果、そのエネルギ出力は周波数が一層高いものとすることが可能である。Sandersの供給源は、1kHz及びそれを超えて顕著なエネルギを発生することが可能であり、上述した如く高分解能イメージングに対してそれを適切な供給源としている。
【0065】
幾つかの状況において重要な場合のある別の供給源の特性は供給源の内波信号の再現性である。供給源の再現性は一連の繰り返されるショットに対する類似スペクトルによって従来測定されている。類似スペクトルは全エネルギに対する信号エネルギの比を測定する。図9A及び9Bを参照すると、Sandersの供給源の1実施例からの周波数スペクトルが例示されている。図9Aは1.25s(秒)乃至1.35sの結合信号及びノイズ周波数スペクトルを例示しており、且つ図9Bは4.25s乃至4.35sのみのバックグラウンドノイズを示している。これらのスペクトルは、Sandersの供給源が1kHz程度に高い周波数へ延長することが可能な類似性の高い値を有していることを表わしており、この供給源は本発明の実施例に対して適切な選択となる場合があることを暗示している。
【0066】
上述したように、本発明の実施例は、海底堆積物本体内に穿設した垂直の坑井内に位置させることが可能な受信器を使用することが可能である。適切な受信器の1つの例はシュルンベルジェ社のバーサタイルサイズミックイメージャ(VSI)(商標)を包含することが可能である。このVSIは、穿孔内に配備され且つ穿孔壁にクランプさせることが可能な可変数の3コンポーネントジオフォンを有している。然しながら、理解すべきことであるが、本発明はこのVSI受信器の使用に制限されるものではなくその他の受信器を使用することも可能である。最大で1kHzまでの周波数を記録するために0.5msデジタルサンプリングを使用することが可能である。従って、1実施例によれば、標準のVSIは、使用される供給源の周波数に依存して0.5ms又はその他のインターバルにおいてデジタル的にサンプルすることを可能とするように修正することが可能である。更に、収集した受信データの処理は、急峻に傾斜するハイドレート岩脈の見込みのある存在を考慮する地球モデルを使用することが可能であり、且つこのタイプの構造が存在するかも知れないことを注意しながら結果を解釈することが可能である。
【0067】
1実施例においては、VSI又は別の受信器を穿孔に沿って移動させることが可能であり、空間的サンプリングを可能とする。受信器は所望の空間的サンプリング分解能に対応するインターバル即ち間隔で移動させることが可能である。受信器を移動させる回数は個々のジオフォン間のスペーシング即ち間隔に依存する場合がある。例えば、受信器が15m離れているジオフォンを有しており且つ1mの空間的サンプリングが所望される場合には、受信器アレイを各1mの14個の段階で移動させ、適切なスペーシング即ち間隔における受信器アレイの全アパーチャをカバーすることが可能である。各段階において、受信器供給源を活性化させ且つ受信器ジオフォンの各々において波形を記録することが可能である。
【0068】
ハイドレートを検知するための受信技術に加えて又はそれの代替として、本発明の側面はハイドレート堆積物を位置探査し及び/又は特性付けるための電磁感知の使用に向けられている。上述したようにガスハイドレートは絶縁体であり且つ典型的に塩水で飽和されており且つ約1S/mの導電度を有している海洋堆積物と強いコントラストを示すことが可能である。更に、ハイドレートは海底近くに蓄積する場合があり、そのことは海洋電磁探査に対する良好な候補としている。
【0069】
上述したように、ハイドレートを含有するものとして以前に識別されている領域の海洋電磁探査に関し幾つかの従来技術の作業が存在している(例えば、地震又は掘削プログラムから)。ハイドレート地区の幾つかの電磁探査は、図10に示したように、1個又はそれ以上の同一線上(「インライン」)の水平な電気的ダイポール受信器を具備する水平な電気的ダイポール送信器を使用している。送信器148及び受信器150は船舶152によって海底に沿って牽引即ち曳航させることが可能である。送信器148はそのダイポールと平行に海水中及び海底100の下側に水平方向の電流を形成する。そのダイポールと平行な電流に対して最も感度の高い受信器150に到達する二次信号はその周囲の電気的導電度に依存する。その他の探査ではダイポール送信器及びマルチコンポーネント受信器を使用している。測定物理はインラインの形態と類似しているが非共線(例えば、ブロードサイド(broadside))ダイポールは、原理的に、海底下の導電度の異方性に対して敏感である。然しながら、全ての従来のハイドレート探査に対するデータ処理は、水平方向に層形成された地球を仮定しており、その場合に、電気的導電度は各水平な層内に等方性である。このような処理は垂直な又はほぼ垂直なハイドレート岩脈を検知するのに適切なものではない。金属鉱物に対する地球上の鉱床探査に対して適用された孤立した垂直な導電性ボディに関する幾つかの制限的な理論的研究がなされているが、このような研究は海底環境における垂直及びほぼ垂直な抵抗性の岩脈からなるアレイの検知及び特性付けに直接的に関連性のあるものではない。
【0070】
ハイドレートがない海洋堆積物の固有抵抗Rt(0)はアーチーの式(Archie’s law)から以下の如くに推定することが可能であり、
【0071】
【数7】
【0072】
尚、Rwは間隙水の固有抵抗であり、φは層多孔度であり、a及びmは経験的に決定される定数であって、典型的に、a=1及びm=2の値を有している。海洋堆積物の間隙水は、通常、低い固有抵抗(即ち導電性)を有しており、一方ハイドレートは絶縁体である。間隙空間が部分的にガスハイドレートで占有されている場合には、固有抵抗は、
【0073】
【数8】
【0074】
へ変化し、その場合に、ハイドレート飽和(換気空間の堆積部分)はShであり、換気空間の残余は水で充填されているものと仮定し、且つ、通常、n=2である。上述したように、ハイドレートは、時折、例えば、断層又は破砕内に岩脈を形成する場合があり、その場合には全ての(又は殆ど全ての)堆積物が押出される。このような状況においては、ハイドレート岩脈は完全に又はほぼ完全に絶縁性のボディである場合がある。更に、ハイドレート岩脈を貫通しての液体の水の連続的な経路が存在する場合には導電性のチャンネルが存在する場合もある。
【0075】
再度図4を参照すると、一連の平行なハイドレート岩脈120を含むハイドレート貯留層の例の概略図が例示されている。これらのハイドレート岩脈は通常の海洋堆積物に対し実質的な電気的コントラストを提示することが可能である。ある岩脈が、電気を導通させるための連続的な液体経路なしで、固体のハイドレートから構成されている場合には(例えば、上述したような幾つかのハイドレートで充填された断層又は破砕の場合がそうであるように)、それは低周波数電流の流れに対して完全な(又はほぼ完全な)障壁を表わすことが可能である。ハイドレートが堆積物の空隙空間内に成長する場合には、その飽和は1未満である場合があり、且つその岩脈の固有抵抗は上の式(8)により与えることが可能である。ハイドレートが粒子を変位させるが導通経路が連続的のままであると、固有抵抗は中間値を有する可能性がある。上述したように、今日まで行われているハイドレート領域における電磁探査は、横方向に等方的な地球を仮定して処理されている。ハイドレートの急峻に傾斜する岩脈を検知するためには、海底下の巨視的導通異方性に対して敏感な異なる方法を使用することが可能である。1実施例においては、このような海底下の導通異方性を考慮するために特に構成された採取及び処理の両方の方法を使用することが可能である。
【0076】
1実施例によれば、ソフトな海洋堆積物における急峻に傾斜するハイドレート岩脈は以下の手順により検知することが可能である。第一に、その地質学的特性が実質的なハイドレート蓄積の見込みのある場所としているか否かを判別するためにある領域を探査することが可能である。1つの例においては、このような探査は、表面下の環境がガスハイドレートの安定性に対する温度及び圧力条件を満足するものであるか否かを判別するステップを包含することが可能である。該探査は、更に、それから豊富なハイドレートを形成することが可能なガスの豊富な供給源が存在することを判別するステップを含むことが可能である。このことは、当該技術において知られているように、ガスシープ探査を使用することにより、又はガスハイドレートの形成に適切である水深下における大きなガス貯留層を位置探査することにより(例えば、当業者に公知の標準的なガス検知技術を使用して)達成することが可能である。更に、1つの例においては、ガスの高いフラックスをガスの深い供給源からガスハイドレート安定ゾーン内へ運ぶことが可能であることを判別するステップも包含させることが可能である。このことは、例えば、ガスチムニー(gas chimney)の直接的地震検知により、海底上の泥火山又はハイドレート露頭を見つけることにより、又は断層ゾーンの局所的な知識を介して達成することが可能である。オプションとして、地域的な応力テンソルを決定するか又は推定する別のステップを含めることが可能である。地域的な応力は殆ど知られており且つ構造及び地殻変動から推論することが可能である。更に、地層応力を測定するために海底マルチコンポーネント地震データ又は音響ツールを使用することが可能である。応力テンソルの知識は、例えば、その領域におけるハイドレート岩脈のオリエンテーション即ち配向を推定するために使用することが可能であり、それは地震又は電磁検知装置のいずれかをセットアップする場合に使用することが可能である。
【0077】
理解すべきことであるが、上述したステップは上に与えた順番に実施されることを必要とするものではなく、本探査はこの例において説明したもの以外の異なる技術を使用することが可能である。地域的探査の目的は、豊富で集中したガスハイドレートを見つける蓋然性を増加させることが可能な地質学的及び地質力学的特徴をハイドレート検知方法内に組込むことである。従って、本探査は、この目的を達成するために多様なステップ及び技術を使用することが可能である。ある領域がハイドレート調査に対する候補として識別されると、その領域におけるハイドレート堆積物を検知及び/又は特性付けるために地震又は電磁技術を使用することが可能である。例えば、上述したような垂直地震イメージングプロセスを実現することが可能である。代替的に、又は付加的に、以下に更に説明する1つ又はそれ以上の電磁方法を使用することが可能である。
【0078】
1実施例によれば、電磁送信器及び受信器結合システムを識別した興味のある領域にわたって牽引即ち曳航させることが可能である。1つの例においては、該送信器及び受信器システムは、最初に、最大水平応力の方向に平行な方向に牽引させることが可能である。この方向における探査が完了すると、該送信器及び受信器システムは最大水平応力の方向に対して垂直に牽引させることが可能である。この探査期間中における送信器及び受信器システムの位置を決定するためにナビゲーションシステムを使用することが可能である。各方向における該探査から収集されたデータは、次いで、比較し且つ処理してその表面下の巨視的電気的異方性の証拠を検知することが可能である。データのいかなる処理も、あり得る水平方向の異方性、特に、水平方向に等方的な地球を仮定する従来の処理と異なり、抵抗性岩脈のあり得る存在を考慮する地球モデルに基づくことが可能である。理解すべきことであるが、平行及び垂直探査が実施される順番は任意的であり且つ本発明は平行方向探査が最初に完了される場合に制限されるものではない。更に、理解すべきことであるが、全体的な探査は一連のパスで実施することが可能であり、且つそれらのパスは任意の電磁的な順番で行うことが可能である。例えば、送信器及び受信器システムは、最初に1つの方向において(例えば、平行又は垂直のいずれかの方向)全てのパスに対して牽引することが可能であり、又は1つのパスから別のパスへ方向を交互にすることが可能である。更に、注意すべきことであるが、最大水平応力の方向を推定するために応力テンソルの事前知識が有用である場合がある。
【0079】
1実施例においては、上述した手順は、例えば、インラインダイポール・ダイポール送信器及び受信器の対又はアレイを使用して実現することが可能である。本発明の原理に基づいて種々の電磁アンテナが海底探査に対して有用である場合があり、且つ本発明はいずれか1つのタイプのアンテナに制限されるものではない。使用することが可能なアンテナの幾つかの例は、垂直電気的ダイポール(VED)、水平電気的ダイポール(HED)、垂直磁気ダイポール(VMD)、及び水平磁気ダイポール(HMD)を包含している。これらのアンテナタイプの各々、又はそれらの組合わせを海底電磁システムにおける送信器及び/又は受信器のいずれかに対して使用することが可能である。更に、互いのアンテナのオリエンテーション即ち配向状態を変化させることが可能である。例えば、送信器及び受信器HEDの軸は同一線上である必要はなく、更に、平行である必要はない。図11A―Dを参照すると、本発明の実施例に従って使用することが可能なアンテナ形態の幾つかの例が例示されている。図11Aは送信器アンテナ154と受信器アンテナ156との間の方位角関係を例示している。図11Bはラジアル形態を例示しており、図11Cは平行形態を例示しており、図11Dは垂直形態を例示している。電界及び/又は磁界の異なる極性に対して感受性のある送信器及び受信器対は、以下に更に説明するように、海底における導電性異方性を検知する場合に特に有用である場合がある。
【0080】
別の実施例によれば、本来的に異方性に対して感受性のある送信器及び受信器の結合を使用する電磁探査技術を実施することが可能である。1つの例においては、この技術は、2つのパス、即ち最大水平応力の方向に対して平行な1つと垂直な別の1つとのパスを使用し且つこれら2つのパスからのデータを比較して表面下の異方性を検知する上述した例と比較して、興味のある領域にわたり単に1つのパスを使用することが可能である。導電性異方性に対して感受性がある多くの送信器・受信器結合が存在している。1つの例は、クロスダイポール・ダイポールアレイであり、その場合には、送信器は、例えば、HEDであり且つ受信器は互いに90度に配向された一対のHEDとすることが可能である。1実施例においては、受信器対を海底上に配置させ、且つ、例えば、送信器アンテナの極性を進行方向に沿った状態でそれらの上方をダイポール送信器を牽引させることが可能である。1つの例においては、互いに垂直な方向においてそのフィールドにわたり2つのパスを行うことは海底下異方性の推定に関しより良い拘束条件を与える場合がある。
【0081】
電磁特性は、周波数ドメインか又は時間ドメインのいずれかにおいて測定することが可能である。第一の場合において、位相シフト及び減衰を1つの周波数において又は周波数の関数として測定することが可能である。第二の場合において、パルスの発射とその受信との間の時間遅延を、減衰と共に測定することが可能である。原理的には、これらのアプローチはフーリエ変換により数学的に接続されるが、実際には、一方又は他方がより優れたものであることを示す場合がある。海水及び海底を介しての平行伝播において本来的なマルチパス効果は、時間ドメイン情報が、しばしば、解釈するのにより容易であることを暗示しており、且つ海底電磁探査に関する幾つかの従来技術の理論的刊行物は時間ドメインアプローチを好ましいものとしている。然しながら、周波数ドメイン技術も、例えば、深海環境における炭化水素を担持する地層の導電度を決定するために使用される商業用低周波数制御型供給源電磁気系(CSEM)においても使用されている。海底CSEM実現例は、典型的に1Hzにおいて又はそれ以下で動作する供給源を使用しており且つ電磁拡散方程式をインバートさせることにより海底下側数キロメートルまでの地層導電度をマップさせる。ガスハイドレートに関連する調査の深さに対し、CSEM技術を使用することが可能であるが、実質的により高い周波数で動作する供給源を使用することが可能である。ウェーブレット解析のような時間ドメインと周波数ドメインの両方の処理を使用するハイブリッド技術も受信した電磁信号において使用可能なより多くの情報を捕獲するために有用な場合がある。
【0082】
変化する極性を有するアンテナを使用することに加えて、1実施例においては、送信器と受信器との間の距離も可変とすることが可能であり、且つ空間的に分散した送信器及び/又は受信器のアレイを使用することが可能である。このような送信器及び/又は受信器のアレイはスタチックとすることが可能であり、又はアレイの範囲より大きな区域を探査するためにそのアンテナの1つ又はそれ以上を移動可能とすることが可能である。
【0083】
1実施例によれば、電磁(EM)送信器・受信器システムは、比較的長い波長を有する低周波数信号を使用すべく適合させることが可能である。陸地探査において有用なものではなかったかもしれないEM送信器・受信器結合は、海中適用例において有用なものである場合がある。何故ならば、低周波数EM信号は空気を介して最も速く伝搬し、土壌及び海洋堆積物を介してより遅く伝搬し、且つ海水を介して最も遅く伝搬するからである。陸地探査においては、空気信号が最初に到達し、それに続いて地中を介して伝搬したより弱い信号が後に続く。従って、陸上探査地球物理にとって最も興味のある信号は抽出することが比較的困難な場合がある。然しながら、海底においては、その状態は逆転され、堆積物を介して伝搬する望ましい信号は海水を介して伝搬する信号よりもより速く到達する。従って、少なくとも幾つかの実施例においては、海底の特徴をマップするために低周波数EM信号を使用することが望ましい場合がある。
【0084】
1つの例においては、供給源周波数は、少なくとも部分的に堆積物の電磁表皮深さにより支配される。表皮深さは次式、
【0085】
【数9】
【0086】
によって与えられ、尚Δは表皮深さであり、fは周波数であり、σは海底導電度でありそれは約1S/mの典型的な値を有しており、且つμは堆積物の透磁率でありそれは、典型的に、約4π×10-7H/mの値を有している。一般的に、送信器と受信器との間の間隔dを約5表皮深さを超えるものではない(d<5Δ)ように制限することが望ましい場合がある。更に、幾つかの実施例においては、堆積物内への調査深さは送信器と受信器との間の間隔に依存する場合がある。一般的な目安によれば、この調査深さは送信器と受信器との間の間隔の約半分である場合がある。これらのパラメータは送信器・受信器間隔及び動作周波数の両方を選択するために使用することが可能である。
【0087】
上述したように、ハイドレート岩脈の上端は、ハイドレートを担持する断層又は破砕の範囲によって及び海底近くの地球化学によって支配される海底下の距離で終端する場合がある。その岩脈の下端はガスハイドレート安定ゾーンの基底の深さよりもより深いものではなく、典型的に海底の下側約1km未満である。従って、この知識は送信器・受信器間隔のセットアップをガイドすることが可能である。又、式(9)における表皮深さに対しd<5Δの条件を使用して、有用な周波数の推定を次式
【0088】
【数10】
【0089】
によって与えることが可能である。例えば、約100mの所望の送信器・受信器間隔を仮定すると、式(10)は約633Hzの動作周波数を暗示する。然しながら、理解すべきことであるが、送信器と受信器との間の表皮深さの許容可能な数は、例えば、送信器の強度、受信器の感度、海底に関するアレイの幾何学的形状、海底上方のアレイの距離等を含む多くの要因に依存する場合がある。従って、上の計算は周波数の選択を支配するある原理の例示的なものに過ぎず制限的なものであることを意図したものではない。
【0090】
別の実施例によれば、送信器と受信器との間の間隔及び/又は送信器及び受信器の各々に存在するアンテナ要素の数も少なくとも部分的に所望のタイプの検知に基づいて選択することが可能である。例えば、アンテナアレイが岩脈間隔と比較して小さい場合には、個々の岩脈を画像形成することが可能である。アンテナアレイが岩脈間隔と比較して大きい場合には、そのアレイは電気的異方性を検知することが可能であるが、個々の岩脈を画像形成することは不可能である。両方の場合が有用なものであり、且つ1実施例においては、要素の間隔が変化する単一アンテナアレイでもって両方を達成することが可能である。上述したように、アンテナ間隔及び極性の多くの形態が有用な場合があり且つ異なる態様で海底電気的異方性を検知するために異なる実施例において使用することが可能である。全ての実施例に対して共通であり且つ垂直又はほぼ垂直なハイドレート岩脈を検知するために特に重要である1つの特徴は、従来のシステムと異なり、水平(横方向)等方的導電度及び層序がデータ処理のために仮定されることがないということである。
【0091】
図12を参照すると、一連の平行な傾斜するハイドレート岩脈を検知するために使用することが可能な送信器・受信器形態の1つの例が例示されている。この例においては、岩脈120間の間隔がそれらを検知するために使用することが可能なHEDアンテナの長さと比較して小さいものであると仮定することが可能である。この場合には、導電度σを有する媒体上に作用する電界Eが次式の電流を発生する。
【0092】
【数11】
【0093】
絶縁性岩脈近くの電流は岩脈表面に対して平行となる傾向があり、且つその電流の大きさはこの表面上の電界の投影に比例する。この電流は導電度の異方性に関する情報を維持する二次フィールドを発生する。この二次フィールドは受信器により検知することが可能である。
【0094】
この概念の実現例の1つの例は図12において海底を見下ろした平面図で示してある。注意すべきことであるが、ハイドレート岩脈120は海底と交差するものではない場合があるが、ここでは説明の便宜上例示してある。HEDアンテナのアレイが点線のボックス158内に模式的に示してある。1実施例によれば、送信器T1及びT2は交互に活性化させることが可能であり、且つ受信器R1及びR2は両方の送信器からの信号を受信することが可能である。その結果得られる4つのデータセットはT1R1,T1R2,T2R1,T2R2として示してある。トランスバースエレクトリック(TE)対T1及びR1は、運動方向160に対して垂直な共通軸を有している。トランスバースマグネチック(TM)対T2及びR2は運動方向160に対して平行な共通軸を有している。T1R2及びT2R1の組合わせはクロスダイポール(夫々、TX1及びTX2)対である。図12に示したように、運動方向は岩脈120の走向に対して角度αを形成している。
【0095】
1実施例においては、TE分極で1本のライン又は1組のラインを収集することが可能であり、且つTM分極で別のライン又は1組のラインを収集することが可能である。導電性異方性の大きさ及び方向は、TE応答対TM応答をプロットすることにより決定することが可能である。その異方性が実質的なものである場合には、支配的な導電度の方向αは次式で与えることが可能である。
【0096】
【数12】
【0097】
別の実施例においては、グリッドを探査することが可能であり(即ち、4個の送信器・受信器対の全てからデータの幾つかのラインを収集することが可能である)、且つその結果得られるデータを4つのイメージ、即ち1つのTEイメージと、1つのTMイメージと、2つのTXイメージから表面下散乱電位に対し反転させることが可能である。
【0098】
要約すると、ガスハイドレートに対する調査パラダイムについて説明したが、それは少なくとも部分的に特定のハイドレート蓄積モデルに基づいている。特に、ガスハイドレートは垂直又はほぼ垂直な岩脈内に形成する場合があり、その走向は最大水平応力の方向に対して平行であり且つその傾斜はハイドレートが存在しない場合には摩擦角度により、又は貯留層最小水平応力方向のいずれかにより制御される。複数の岩脈は平行である場合があり又は山形形状に形成する場合があるが、等間隔でない場合がある。平行な岩脈は、不均一な間隔であったとしても、上述したように導波路として機能する場合があり、そのことは従来の地震探査結果に歪みを発生する場合がある。更に、従来のEM探査はデータ処理のために海底における等方的な水平方向の導電度を仮定しており、そのことはこのような岩脈地層が存在する場合にEM信号を適切に解釈することを困難なもの又は不可能なものとさせる場合がある。本発明の実施例は、ガスハイドレート岩脈を検知することが可能であり、且つ商業的に有用なハイドレート堆積物を見つけ出すことの蓋然性を改善するために地質学的及び地質力学的理由付けを考慮に入れることが可能な地震及び/又は電磁探査技術に関するものである。1つの例は、上述した如く、岩脈のイメージングを可能とする海底ウォークアウェイ垂直地震プロファイル方法を包含している。別の例は、上述した如く表面下水平異方性を検知すべく適合された海底EM探査技術を包含している。これらの技術は、海洋ガスハイドレート蓄積を検知及び/又は定量化するために別々に又は結合して使用することが可能である。
【0099】
以上、本発明の具体的実施の態様について詳細に説明したが、本発明は、これら具体例にのみ制限されるべきものではなく、本発明の技術的範囲を逸脱することなしに種々の変形が可能であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】海中環境におけるメタンハイドレート安定性の圧力・温度依存性を示した相線図。
【図2】地球の極寒環境におけるガスハイドレート安定ゾーンを定義するガスハイドレート相線図。
【図3】振幅ブランキング及び海底擬似反射面の発生を示した地震イメージの概略図。
【図4】本発明の側面に基づく海洋ガスハイドレート堆積物の1つのタイプの構造の1例を示した概略図。
【図5】本発明の1実施例に基づく音波でガスハイドレート岩脈を検知するための反射幾何学形状の1例を示した概略図。
【図6】本発明の側面に基づいて平行なハイドレート岩脈により発生される導波路効果を例示した概略図。
【図7】本発明の側面に基づいて音波に対する導波路として作用するハイドレート岩脈の山形形状の1例を示した概略図。
【図8】本発明の1実施例に基づいてハイドレート岩脈をイメージングするための採取幾何学形状を例示した概略図。
【図9】(A)は本発明の1実施例において使用することが可能な供給源の1つの例からの周波数スペクトルを示したグラフ図、(B)は(A)と同じ供給源からの別の周波数スペクトルを示したグラフ図。
【図10】1個の送信器と1個又はそれ以上の同一直線上の受信器とを含む従来の海洋電磁探査方法を示した概略図。
【図11】(A)は本発明の1実施例に基づく送信器アンテナと受信器アンテナとの間の方位角関係の1例を例示した概略図、(B)は本発明の1実施例に基づく送信器アンテナと受信器アンテナとの間のラジアル関係の1つの例を示した概略図、(C)は本発明の1実施例に基づく送信器アンテナと受信アンテナとの間の平行な関係の1つの例を示した概略図、(D)は本発明の1実施例に基づく送信器アンテナと受信器アンテナとの間の垂直な関係の1例を示した概略図。
【図12】本発明の別の実施例に基づく電磁探査システムの1例を示した概略図。
【符号の説明】
【0101】
100 海底
108 ガスハイドレート安定ゾーン
120 ハイドレート岩脈
122 フリーガス及び水
124 基底
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスハイドレートを検知する方法において、
垂直地震プロファイル技術を使用して1つの領域に関して地震データを収集し、
少なくとも部分的に該地震データに基づいて少なくとも1つのハイドレート岩脈層を特性付ける、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1において、該少なくとも1つのハイドレート岩脈層を特性付ける場合に、ハイドレート岩脈の傾斜及び走向のうちの少なくとも1つを推定することを包含していることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1において、該地震データを収集する場合に、
該領域内の坑井内に少なくとも1個の地震受信器を配備し、
該坑井から第一距離離れた第一位置において海底地震供給源を活性化させて該少なくとも1つの岩脈層上に入射する波を発生し、
該少なくとも1個の受信器で該少なくとも1つのハイドレート岩脈層からの反射波エネルギを記録し、
該海底地震供給源を該坑井から第二距離離れた第二位置に移動し、
該供給源を活性化させ且つ反射波エネルギを記録することを繰返し行う、
ことを包含していることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1において、該地震データを回収する場合に、
該領域内の坑井内に少なくとも1個の地震受信器を配備し、
該坑井から第一距離離れた第一位置において海底地震供給源を活性化させて該少なくとも1つのハイドレート岩脈層に入射する波を発生し、
該少なくとも1個の受信器で該少なくとも1つのハイドレート岩脈層からの反射波エネルギを記録し、
所定の空間サンプリング分解能を達成するのに充分な量だけ該坑井内において垂直方向に該少なくとも1個の受信器を移動し、
該供給源を活性化させ且つ反射波エネルギを記録することを繰返し行う、
ことを包含していることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項4において、該地震データを収集する場合に、更に、
該海底地震供給源を該坑井から第二距離離れた第二位置へ移動し、
再度該供給源を活性化させ且つ反射波エネルギを記録することを繰返し行う、
ことを包含していることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項5において、該少なくとも1個の受信器を移動することを該海底地震供給源を移動する前に実施することを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1において、更に、
該領域に関する地質情報を収集し、
少なくとも部分的に該地質情報に基づいて該領域における顕著なハイドレートの存在の蓋然性を決定する、
ことを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項7において、該地質情報を収集する場合に、ガスハイドレート安定ゾーンの位置を識別することを包含していることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項8において、該地質情報を収集する場合に、更に、該ガスハイドレート安定ゾーンの下側にガスの実質的な供給源の存在を決定することを包含していることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項8において、該地質情報を収集する場合に、更に、該ガスハイドレート安定ゾーン下側から該ガスハイドレート安定ゾーン内へ延在する断層又は破砕のうちの少なくとも1つの存在を決定することを包含していることを特徴とする方法。
【請求項11】
ガスハイドレートを検知する方法において、
電磁探査技術を使用して1つの領域に関するデータを収集し、
少なくとも部分的に該データに基づいて少なくとも1つのハイドレート岩脈層を特性付ける、
ことを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項11において、該データを収集する場合に、巨視的海底下電気的異方性を検知すべく適合されている送信器及び受信器を使用して該領域の電磁探査を実施することを包含していることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項12において、該電磁探査を実施する場合に、アンテナのクロスダイポール・ダイポールアレイを含む送信器及び受信器を使用して該領域の電磁探査を実施することを包含していることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項11において、該データを収集する場合に、
該領域における最大水平応力の方向を推定し、
該最大水平応力の方向と平行な第一方向においてその場所にわたり送信器・受信器システムを牽引して第一データを収集し、
該第一方向と垂直な第二方向においてその場所にわたり該送信器・受信器システムを牽引して第二データを収集し、
該第一データと第二データとを比較して表面下における巨視的電気的異方性の証拠を検知する、
ことを包含していることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項11において、更に、
該領域に関する地質情報を収集し、
少なくとも部分的に該地質情報に基づいて該領域における顕著なハイドレートの存在の蓋然性を決定する、
ことを包含していることを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項15において、該地質情報を収集する場合に、ガスハイドレート安定ゾーンの位置を識別することを包含していることを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項16において、該地質情報を収集する場合に、更に、該ガスハイドレート安定ゾーンの下側に実質的なガスの供給源の存在を決定することを包含していることを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項16において、該地質情報を収集する場合に、更に、該ガスハイドレート安定ゾーンの下側から該ガスハイドレート安定ゾーン内へ延在する断層又は破砕のうちの少なくとも1つの存在を決定することを包含していることを特徴とする方法。
【請求項19】
海洋ガスハイドレートを検知するための調査方法において、
ハイドレート岩脈の蓋然性のある存在の地質表示に基づいて調査場所を選択し、
該調査場所に関してのデータを収集するために地震探査技術及び電磁探査技術のうちの少なくとも1つを使用して該調査場所を探査し、
該ハイドレート岩脈の蓋然性のある存在を考慮する地球モデルに基づいて該データを処理する、
ことを特徴とする調査方法。
【請求項20】
請求項19において、該調査場所を選択する場合に、ガスハイドレート安定ゾーン、該ガスハイドレート安定ゾーンの下側に位置しているガスの供給源、及び該ガスハイドレート安定ゾーン内にガスの高いフラックスを運ぶことが可能な少なくとも1個のチャンネルの存在の地質表示に基づいて該調査場所を選択することを包含していることを特徴とする調査方法。
【請求項21】
請求項19において、該調査場所を探査する場合に、ウォークアウェイ垂直地震プロファイル技術を使用して該調査場所を探査することを包含していることを特徴とする調査方法。
【請求項22】
請求項19において、該調査場所を探査する場合に、巨視的海底下電気的異方性を検知すべく適合されている送信器・受信器システムを使用して該調査場所の電磁的探査を実施することを包含していることを特徴とする調査方法。
【請求項23】
請求項22において、該調査場所を探査する場合に、アンテナのクロスダイポール・ダイポールアレイを含む送信器・受信器システムを使用して該調査場所の電磁的探査を実施することを包含していることを特徴とする調査方法。
【請求項24】
請求項22において、該調査場所を探査する場合に、少なくとも2個の送信器アンテナと少なくとも2個の受信器アンテナとを含む水平電気的ダイポールアンテナからなるアレイを有する送信器・受信器システムを使用して該調査場所の電磁的探査を実施することを包含しており、且つ該アンテナは横方向電気対と横方向磁気対とを含む少なくとも4個の送信器・受信器対を与えるように配設されていることを特徴とする調査方法。
【請求項25】
請求項19において、該調査場所を探査する場合に、海底近傍の地震供給源を活性化させることを包含しており、該地震供給源はストンリー波及びせん断波を発生すべく適合されており、且つ該データを処理するステップは、方位角異方性の存在を検知するために海底に沿って屈折されるストンリー波及びせん断波を解析することを包含していることを特徴とする方法。
【請求項26】
海洋ガスハイドレート堆積物を検知する方法において、
実質的なガスハイドレートのありそうな存在の底部擬似反射面の存在以外の地質表示に基づいて探査すべき場所を選択し、
海底下水平導電性異方性の証拠を得るために該場所の電磁探査及び地震探査のうちの少なくとも1つを実施する、
ことを特徴とする方法。
【請求項27】
請求項26において、更に、該場所の応力テンソルを決定することを包含していることを特徴とする方法。
【請求項28】
請求項27において、該電磁探査を実施する場合に、
該応力テンソルに基づいて、該場所における表面下における最大水平応力の方向を推定し、
最大水平応力の方向に平行な第一方向において該場所にわたり送信器・受信器システムを牽引して第一データを収集し、
該第一方向に対して垂直な第二方向において該場所にわたり該送信器・受信器システムを牽引して第二データを収集し、
該第一データと第二データとを比較して該表面下における巨視的電気的異方性の証拠を検知する、
ことを包含していることを特徴とする方法。
【請求項29】
請求項26において、該地震探査を実施する場合に、ウォークアウェイ垂直地震プロファイル技術を使用して該場所を探査することを包含していることを特徴とする方法。
【請求項30】
請求項26において、該場所を選択する場合に、海底下ガスハイドレート安定ゾーンの存在、及び該ガスハイドレート安定ゾーン下側から該ガスハイドレート安定ゾーン内へ延在する断層及び破砕のうちの少なくとも1つの存在に基づいて該場所を選択することを包含していることを特徴とする方法。
【請求項31】
海洋環境においてガスハイドレート岩脈を検知すべく適合されているシステムにおいて、
調査場所からデータを収集する形態とされている探査装置、
ガスハイドレート岩脈の存在を考慮する地球モデルに従って該調査場所からのデータを解析する形態とされているプロセッサ、
を有していることを特徴とするシステム。
【請求項32】
請求項31において、該探査装置が、海底下水平導電性異方性の証拠を検知する形態とされている電磁探査システムを有していることを特徴とするシステム。
【請求項33】
請求項32において、該電磁探査システムが送信器及び受信器アンテナのクロスダイポールアレイを包含していることを特徴とするシステム。
【請求項34】
請求項31において、該探査装置が海底近傍に位置されている地震供給源及び少なくとも1個の地震受信器を含む地震探査システムを有しており、且つ該データが地震反射データであることを特徴とするシステム。
【請求項35】
請求項34において、該調査場所内に配置されている穿孔内に少なくとも1個の地震受信器を位置させ、且つ該地震探査システムがウォークアウェイ垂直地震プロファイル探査を実施する形態とされていることを特徴とするシステム。
【請求項36】
請求項34において、該地球モデルが一連の並列的なガスハイドレート岩脈の存在を考慮しており、且つ該地震探査システムが該一連の並列的なハイドレート岩脈における個々のハイドレート岩脈の幅及び該一連の並列なハイドレート岩脈における個々のハイドレート岩脈の間の間隔のうちの少なくとも1つを検知するのに充分な分解能を達成すべく選択されている周波数において動作する形態とされていることを特徴とするシステム。
【請求項1】
ガスハイドレートを検知する方法において、
垂直地震プロファイル技術を使用して1つの領域に関して地震データを収集し、
少なくとも部分的に該地震データに基づいて少なくとも1つのハイドレート岩脈層を特性付ける、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1において、該少なくとも1つのハイドレート岩脈層を特性付ける場合に、ハイドレート岩脈の傾斜及び走向のうちの少なくとも1つを推定することを包含していることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1において、該地震データを収集する場合に、
該領域内の坑井内に少なくとも1個の地震受信器を配備し、
該坑井から第一距離離れた第一位置において海底地震供給源を活性化させて該少なくとも1つの岩脈層上に入射する波を発生し、
該少なくとも1個の受信器で該少なくとも1つのハイドレート岩脈層からの反射波エネルギを記録し、
該海底地震供給源を該坑井から第二距離離れた第二位置に移動し、
該供給源を活性化させ且つ反射波エネルギを記録することを繰返し行う、
ことを包含していることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1において、該地震データを回収する場合に、
該領域内の坑井内に少なくとも1個の地震受信器を配備し、
該坑井から第一距離離れた第一位置において海底地震供給源を活性化させて該少なくとも1つのハイドレート岩脈層に入射する波を発生し、
該少なくとも1個の受信器で該少なくとも1つのハイドレート岩脈層からの反射波エネルギを記録し、
所定の空間サンプリング分解能を達成するのに充分な量だけ該坑井内において垂直方向に該少なくとも1個の受信器を移動し、
該供給源を活性化させ且つ反射波エネルギを記録することを繰返し行う、
ことを包含していることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項4において、該地震データを収集する場合に、更に、
該海底地震供給源を該坑井から第二距離離れた第二位置へ移動し、
再度該供給源を活性化させ且つ反射波エネルギを記録することを繰返し行う、
ことを包含していることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項5において、該少なくとも1個の受信器を移動することを該海底地震供給源を移動する前に実施することを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1において、更に、
該領域に関する地質情報を収集し、
少なくとも部分的に該地質情報に基づいて該領域における顕著なハイドレートの存在の蓋然性を決定する、
ことを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項7において、該地質情報を収集する場合に、ガスハイドレート安定ゾーンの位置を識別することを包含していることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項8において、該地質情報を収集する場合に、更に、該ガスハイドレート安定ゾーンの下側にガスの実質的な供給源の存在を決定することを包含していることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項8において、該地質情報を収集する場合に、更に、該ガスハイドレート安定ゾーン下側から該ガスハイドレート安定ゾーン内へ延在する断層又は破砕のうちの少なくとも1つの存在を決定することを包含していることを特徴とする方法。
【請求項11】
ガスハイドレートを検知する方法において、
電磁探査技術を使用して1つの領域に関するデータを収集し、
少なくとも部分的に該データに基づいて少なくとも1つのハイドレート岩脈層を特性付ける、
ことを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項11において、該データを収集する場合に、巨視的海底下電気的異方性を検知すべく適合されている送信器及び受信器を使用して該領域の電磁探査を実施することを包含していることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項12において、該電磁探査を実施する場合に、アンテナのクロスダイポール・ダイポールアレイを含む送信器及び受信器を使用して該領域の電磁探査を実施することを包含していることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項11において、該データを収集する場合に、
該領域における最大水平応力の方向を推定し、
該最大水平応力の方向と平行な第一方向においてその場所にわたり送信器・受信器システムを牽引して第一データを収集し、
該第一方向と垂直な第二方向においてその場所にわたり該送信器・受信器システムを牽引して第二データを収集し、
該第一データと第二データとを比較して表面下における巨視的電気的異方性の証拠を検知する、
ことを包含していることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項11において、更に、
該領域に関する地質情報を収集し、
少なくとも部分的に該地質情報に基づいて該領域における顕著なハイドレートの存在の蓋然性を決定する、
ことを包含していることを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項15において、該地質情報を収集する場合に、ガスハイドレート安定ゾーンの位置を識別することを包含していることを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項16において、該地質情報を収集する場合に、更に、該ガスハイドレート安定ゾーンの下側に実質的なガスの供給源の存在を決定することを包含していることを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項16において、該地質情報を収集する場合に、更に、該ガスハイドレート安定ゾーンの下側から該ガスハイドレート安定ゾーン内へ延在する断層又は破砕のうちの少なくとも1つの存在を決定することを包含していることを特徴とする方法。
【請求項19】
海洋ガスハイドレートを検知するための調査方法において、
ハイドレート岩脈の蓋然性のある存在の地質表示に基づいて調査場所を選択し、
該調査場所に関してのデータを収集するために地震探査技術及び電磁探査技術のうちの少なくとも1つを使用して該調査場所を探査し、
該ハイドレート岩脈の蓋然性のある存在を考慮する地球モデルに基づいて該データを処理する、
ことを特徴とする調査方法。
【請求項20】
請求項19において、該調査場所を選択する場合に、ガスハイドレート安定ゾーン、該ガスハイドレート安定ゾーンの下側に位置しているガスの供給源、及び該ガスハイドレート安定ゾーン内にガスの高いフラックスを運ぶことが可能な少なくとも1個のチャンネルの存在の地質表示に基づいて該調査場所を選択することを包含していることを特徴とする調査方法。
【請求項21】
請求項19において、該調査場所を探査する場合に、ウォークアウェイ垂直地震プロファイル技術を使用して該調査場所を探査することを包含していることを特徴とする調査方法。
【請求項22】
請求項19において、該調査場所を探査する場合に、巨視的海底下電気的異方性を検知すべく適合されている送信器・受信器システムを使用して該調査場所の電磁的探査を実施することを包含していることを特徴とする調査方法。
【請求項23】
請求項22において、該調査場所を探査する場合に、アンテナのクロスダイポール・ダイポールアレイを含む送信器・受信器システムを使用して該調査場所の電磁的探査を実施することを包含していることを特徴とする調査方法。
【請求項24】
請求項22において、該調査場所を探査する場合に、少なくとも2個の送信器アンテナと少なくとも2個の受信器アンテナとを含む水平電気的ダイポールアンテナからなるアレイを有する送信器・受信器システムを使用して該調査場所の電磁的探査を実施することを包含しており、且つ該アンテナは横方向電気対と横方向磁気対とを含む少なくとも4個の送信器・受信器対を与えるように配設されていることを特徴とする調査方法。
【請求項25】
請求項19において、該調査場所を探査する場合に、海底近傍の地震供給源を活性化させることを包含しており、該地震供給源はストンリー波及びせん断波を発生すべく適合されており、且つ該データを処理するステップは、方位角異方性の存在を検知するために海底に沿って屈折されるストンリー波及びせん断波を解析することを包含していることを特徴とする方法。
【請求項26】
海洋ガスハイドレート堆積物を検知する方法において、
実質的なガスハイドレートのありそうな存在の底部擬似反射面の存在以外の地質表示に基づいて探査すべき場所を選択し、
海底下水平導電性異方性の証拠を得るために該場所の電磁探査及び地震探査のうちの少なくとも1つを実施する、
ことを特徴とする方法。
【請求項27】
請求項26において、更に、該場所の応力テンソルを決定することを包含していることを特徴とする方法。
【請求項28】
請求項27において、該電磁探査を実施する場合に、
該応力テンソルに基づいて、該場所における表面下における最大水平応力の方向を推定し、
最大水平応力の方向に平行な第一方向において該場所にわたり送信器・受信器システムを牽引して第一データを収集し、
該第一方向に対して垂直な第二方向において該場所にわたり該送信器・受信器システムを牽引して第二データを収集し、
該第一データと第二データとを比較して該表面下における巨視的電気的異方性の証拠を検知する、
ことを包含していることを特徴とする方法。
【請求項29】
請求項26において、該地震探査を実施する場合に、ウォークアウェイ垂直地震プロファイル技術を使用して該場所を探査することを包含していることを特徴とする方法。
【請求項30】
請求項26において、該場所を選択する場合に、海底下ガスハイドレート安定ゾーンの存在、及び該ガスハイドレート安定ゾーン下側から該ガスハイドレート安定ゾーン内へ延在する断層及び破砕のうちの少なくとも1つの存在に基づいて該場所を選択することを包含していることを特徴とする方法。
【請求項31】
海洋環境においてガスハイドレート岩脈を検知すべく適合されているシステムにおいて、
調査場所からデータを収集する形態とされている探査装置、
ガスハイドレート岩脈の存在を考慮する地球モデルに従って該調査場所からのデータを解析する形態とされているプロセッサ、
を有していることを特徴とするシステム。
【請求項32】
請求項31において、該探査装置が、海底下水平導電性異方性の証拠を検知する形態とされている電磁探査システムを有していることを特徴とするシステム。
【請求項33】
請求項32において、該電磁探査システムが送信器及び受信器アンテナのクロスダイポールアレイを包含していることを特徴とするシステム。
【請求項34】
請求項31において、該探査装置が海底近傍に位置されている地震供給源及び少なくとも1個の地震受信器を含む地震探査システムを有しており、且つ該データが地震反射データであることを特徴とするシステム。
【請求項35】
請求項34において、該調査場所内に配置されている穿孔内に少なくとも1個の地震受信器を位置させ、且つ該地震探査システムがウォークアウェイ垂直地震プロファイル探査を実施する形態とされていることを特徴とするシステム。
【請求項36】
請求項34において、該地球モデルが一連の並列的なガスハイドレート岩脈の存在を考慮しており、且つ該地震探査システムが該一連の並列的なハイドレート岩脈における個々のハイドレート岩脈の幅及び該一連の並列なハイドレート岩脈における個々のハイドレート岩脈の間の間隔のうちの少なくとも1つを検知するのに充分な分解能を達成すべく選択されている周波数において動作する形態とされていることを特徴とするシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−304100(P2007−304100A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−125620(P2007−125620)
【出願日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【出願人】(500017863)シュルンベルジェ ホールディングス リミテッド (13)
【氏名又は名称原語表記】Schlumberger Holdings Limited
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【出願人】(500017863)シュルンベルジェ ホールディングス リミテッド (13)
【氏名又は名称原語表記】Schlumberger Holdings Limited
【Fターム(参考)】
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