説明

ガスハイドレート製造装置における脱水方法とその装置

【課題】 ガスハイドレート製造装置におけるガスハイドレートの脱水効率を向上させる方法とその装置を提供する。
【解決手段】 脱水装置Aの筒状本体1の下方にガスハイドレートスラリーsを導入する供給口8と、筒状本体1が多孔質の壁4に形成された脱水部2と、この筒状本体1の上部に脱水部2で脱水されたガスハイドレート半乾燥体hを移送するスクリューフィーダ10が設けられて形成されており、この脱水部2の外側に排水タンク室5が閉止状態で形成され、さらにこの排水タンク室5と前記仕上げ装置27のガス循環ブロワ31の管路32との間が連通管7により連通されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天熱ガス等の原料ガスと水とを水和反応させてガスハイドレートスラリーを生成し、このガスハイドレートスラリーの水分を排水する脱水工程によりガスハイドレート半乾燥体を生成し、更にこの半乾燥体を原料ガス噴流する流動化工程によりガスと反応させてガスハイドレート乾燥体を生成する一連の工程において、効率的にガスハイドレートスラリーの水分を排水してガスハイドレート乾燥体を効率的に生成する方法を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に天然ガスを輸送する際は、多くの場合、液化天然ガス(LNG)の状態で行われている。このLNGは、単位体積当たりの容積減少率が、天然ガスの元の体積の1/600と大きいので天然ガスの輸送に適している。しかし、LNGの状態を保持し続けるためには極低温(−162℃)が必要であり、そのために莫大な冷凍エネルギーが必要である。
【0003】
近時、天然ガスを天然ガス水和物(天然ガスハイドレート:NGH)として天然ガスを輸送する方法が提案されている。このNGHは、単位体積当たりの容積減少率が天然ガスの元の体積の1/170とLNGに比べて小さい。しかし、NGHが分解する際に発生する解凍潜熱でNGHの表面に氷のカバーが形成されて分解が抑制される温度(−20〜−10℃)に保持するだけで、大気圧下で安定的に貯蔵できる特徴(自己保存効果)を有しており、LNGのように極低温に保持する必要がなく、しかも、ガスタンクのような大型の貯蔵設備が不要であるなどの保存上の利点もある。
【0004】
工業的なガスハイドレートの製造方法の一例を説明すると、高圧(例えば、5.3MPa、5℃)に保持された一次反応装置内において反応装置内に溜められている水と天然ガスとを接触させてスラリー状のガスハンドレートを生成する方法がある。この方法により得られるガスハイドレートは、通常、多量の水(NGHの含有率が20〜30%、含水率80〜70重量%)が含まれるスラリー状で生成される。このガスハイドレートはスラリーであり、NGHの含有率が低いことから、その貯蔵や輸送は、多量の水を貯蔵したり輸送するのと同様であるのでガスの輸送や貯蔵手段としては、非常に効率が悪い。
【0005】
そこで、ガスハイドレートスラリーを脱水装置で脱水して含水率を40〜50重量%に低めたガスハイドレート半乾燥体を生成し、この半乾燥状態のガスハイドレートを流動層型の二次反応装置に供給し、その下方より噴出する原料ガスによって流動層を形成しながら含水率5%以下の粉末状のガスハイドレート乾燥体にしている。
【0006】
ところで、前記仕上げ装置に、十分に脱水されないガスハイドレート半乾燥体が供給されると、天然ガス噴流による流動状態が形成され難くなり、乾燥した微粉末状のガスハイドレートの生成に長時間を必要とする。その上に得られらガスハイドレート乾燥体の含有水分量や粒径等が不均一になる。
【0007】
この脱水工程における脱水方法の例としては、横型のスクリュープレス型脱水装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2003−105362号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記特許文献1に記載された横型のスクリュープレス型脱水装置は、メッシュ加工した内壁と、この内壁の外側にあって外殻を構成する筒体との二重構造になっており、内壁内に設置したスクリュー軸によってガスハイドレートを強制的に押込みながら前進させることによって内壁に加工されたメッシュから排水するように構成したものである。従って、ガスハイドレートを脱水する過程においてこれが圧密化されてスクリューの表面に付着するので、スクリュー軸の負荷が増大し、高トルクで駆動する必要があった。
【0009】
そこで、本発明者は前記脱水装置の問題を解決するために、円筒体を使用し、中間部の脱水する部分を多孔質に形成した竪型の脱水装置を使用し、この円筒体の内部にガスハイドレートスラリーをスラリーポンプの圧力で押込み、上方に逐次移動させながら自然に水を排水する脱水装置について検討した。この脱水装置の上部から水が絞られた半乾燥状態のガスハイドレートが吐出され、次の二次生成工程に移送するようになっている。
【0010】
前記のようにして二次生成工程に移送されたガスハイドレート半乾燥体に原料ガスを接触させて目的とする粉末状のガスハイドレートの含有率を増加させた乾燥体を製造するのである。ところで、この乾燥体の生産量を上げるために、前記竪型脱水装置のガスハイドレートスラリーの供給量を増加させると、円筒体の内部にスラリーが滞留する時間が短くなり、その結果、目的とする脱水率に至らないものが二次生成工程に移送されることになり、粉末状のガスハイドレート乾燥体の生成性が悪くなるという問題があった。
【0011】
処理量を増やしても十分な脱水性能を与えるために、円筒体の長さを長くして脱水部分を延長した改善を行うと、この場合は円筒体の高さが高くなって大型化し、それと共にガスハイドレートスラリーが円筒体の内面と摺接する面積が増加する。その結果、ガスハイドレートスラリーの摺接抵抗が増加し、移送が不安定となり、更に脱水率が低下するという問題があった。
【0012】
本発明は、前記の問題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、ガスハイドレート製造装置におけるガスハイドレートの脱水効率を向上させる方法とその装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成するための本発明に係るガスハイドレートの脱水方法は、原料ガスgと水wとを水和反応させてガスハイドレートスラリーsを生成するガスハイドレート生成工程と、前記ガスハイドレートスラリーsより水を分離してガスハイドレート半乾燥体hを生成する脱水工程と、更にこのガスハイドレート半乾燥体hを原料ガスgの上昇流によって流動化させながらガスgと反応させてガスハイドレート乾燥体nを生成する仕上げ工程と、からなるガスハイドレートの製造方法において、
前記脱水工程に使用する装置は、筒状本体1の下方より前記ガスハイドレートスラリーsが供給され、この筒状本体1中間部に形成された排水部2を経由して上方から前記仕上げ工程に移送されるようになっており、前記排水部2は、前記筒状本体1の一部が多孔質の壁4で形成され、その外側に排水タンク室5が閉止状態で形成されており、前記仕上げ工程において原料ガスgを循環させる管路32に形成された減圧発生部3の減圧を前記排水タンク室5に作用させるように連通したことを特徴としている。
【0014】
また、本発明に係るガスハイドレートの脱水装置Aは、原料ガスgと水wとを水和反応させてガスハイドレートスラリーsを生成するガスハイドレート生成装置20と、前記ガスハイドレートスラリーsより水wを分離してガスハイドレート半乾燥体hを生成する脱水装置Aと、さらにこのガスハイドレート半乾燥体hをガス循環ブロワ31によって流動化させながらガスハイドレート乾燥体nを生成する仕上げ装置27と、からなるガスハイドレートの製造装置において、前記仕上げ装置27のガス循環路32にエゼクタ14を配置し、このエゼクタ14の吸引口14aと前記排水タンク室5との間を、連通管7により連通したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るガスハイドレートの脱水方法は、筒状本体を持つ脱水装置の前記本体の中間部を多孔壁で脱水部を形成し、その外周に設けた排水タンクに、流動層型の二次生成装置のガス循環路において発生した減圧を作用させ、脱水部の多孔壁面の外側に減圧を発生させるために、脱水中にガスハイドレートスラリーに含有されている水分は吸引、排水されることになるので、大量のガスハイドレートスラリーを脱水処理することができる。
【0016】
その結果、二次生成工程、即ち、仕上げ工程である流動層反応装置における反応時間を短縮でき、生産量が向上する。
【0017】
また、本発明に係るガスハイドレートの脱水方法は、筒状本体を持つ脱水装置と流動層を使用する生成装置を持つ既設の設備にも適用できるので、装置を安価に改造して乾燥したガスハイドレートの生産性を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は本発明に係るガスハイドレートスラリーの脱水装置Aを使用する一連のガスハイドレートの製造装置の概略図である。
【0019】
ガスハイドレート製造装置は、ガスハイドレートの生成圧力である5.3MPaに耐える耐圧容器21で構成されたガスハイドレートスラリー生成装置20(一次生成装置)と、円筒状あるいは他の断面形状の本体を持つ脱水装置Aと、流動層型の仕上げ装置27(二次生成装置)とから構成されている。
【0020】
前記ガスハイドレートスラリー生成装置20において、耐圧容器21に充填された水wの中に天然ガスgがノズル22より細かい泡状に分散して供給され、両者を水和反応させて水w中にガスハイドレートスラリーsが生成され、生成されたスラリーsはスラリーポンプ12によって脱水装置Aの供給口8に押し込まれるようになっている。
【0021】
脱水装置Aは、筒状本体1の中間部に多孔質壁4とその外周に配置された排水タンク室5で構成された脱水部2が形成され、その筒状本体1の下端に形成された供給口8から供給されるスラリーsは、脱水部2を通過する間に水分が吸出される。そして、筒状本体1の上端より半乾燥体hをスクリューコンベア型の移送装置10で仕上げ装置27へ移送するようになっている。
【0022】
ガスハイドレートの最終反応工程を行う仕上げ装置27は、前記生成圧力に耐える耐圧容器からなる円筒状の本体29と、その底部に配置された循環ガス噴出ノズル28と、このノズル28の上部に配置されたガスハイドレート排出用のスクリューコンベア型の排出装置30から構成されている。そして前記本体29の上部より配管32を経由してガスを抜出してブロワー31で加圧して前記循環ガス噴出ノズル28へ供給するように循環路33が形成されている。
【0023】
さらに、前記循環路33を構成するブロワー31の吐出側にエゼクタ14からなる減圧発生部3が形成されている。そして、このエゼクタ14の吸引口14aと前記脱水装置Aの筒状本体1の外周に設けられている排水タンク室5との間が連結管7によって連結され、前記循環路33を循環する天然ガスgの流れを駆動源とするエゼクタ14で発生した減圧を排水タンク室5内に作用させるように構成されている。
【0024】
前記排水タンク室5内には網状の水分分離壁11が形成され、その内部に前記連結管7の一端が連結され、更にこの連結管7には減圧の程度を調整するためのバルブ15が設けられている。
【0025】
次に、本発明のガスハイドレートスラリーsの脱水装置Aの作用について説明する。
前記ガスハイドレートスラリー生成装置20に充填された水wの中に天然ガスgをノズル22より微細な泡状で噴出すると両者が水和反応して水w中にガスハイドレートスラリーsが生成される。このガスハイドレートスラリーsは含水率50〜70重量%程度のガスハイドレート含有率の低いものであり、これは、スラリーポンプ12を介して脱水装置Aの筒状本体1供給口8へ供給される。
【0026】
本発明を構成する脱水装置Aの排水タンク室5には「減圧」を作用させて脱水能力を高めることが要件であるが、この脱水能力を高めるための減圧作用は、前記仕上げ装置27のガス循環路33を構成するエゼクタ14により得られ、そのヘッド圧は2000〜2500mmAq程度である。一方、脱水装置Aの脱水部2の排水タンク室5内は100〜200mmAq程度の負圧で十分である。
【0027】
なお、この実施例においては循環路33のガスgの循環を安定化させるために、循環ガスgをバイパスさせるバイパス路32aにエゼクタ14が設けられているが、このエゼクタ14を循環路33に直接配置してもよい。
【0028】
この脱水装置Aの円筒状本体1の下端の供給口8に供給されたスラリーsは、この円筒状本体1内に積み上げられた状態となり、このスラリーsの自重と筒状本体1の壁面との摺接抵抗力の作用で圧縮されながら水分が染み出す。そして、前記排水タンク室5は負圧に保持されているので、脱水部2を形成している多孔質壁4から強制的にスラリーs中の水分が吸出されて、ガスハイドレート半乾燥体h(含水率30〜50重量%)となる。
【0029】
次に、仕上げ装置27に供給されたこの半乾燥体hは、円筒状の本体29の下方のノズル28より噴出される天然ガスgにより撹乱され、本体29内で分散・流動化して流動層fを形成しながら天然ガスgと水和反応して粉末状の乾燥体n(含水率5重量%以下、ガスハイドレートの含有率95〜98%)となり、図示しない次工程にスクリューコンベア型の排出装置30により移送される。
【0030】
以上詳述したように、本発明に係るガスハイドレートの脱水装置Aは、仕上げ装置27のガス循環路33で減圧を発生させ、この減圧を脱水装置Aの排水タンク室5に作用させ、その減圧作用によってガスハイドレートスラリーs層から水分を強制的に吸出し、排水させるので、従来の自然脱水(重力脱水)に比較して急速かつ高脱水率で脱水することができる。
【0031】
本発明における脱水装置Aの排水タンク室5には減圧力を作用させて急速脱水を行っているので、短い脱水区間で脱水できるので円筒状本体1を大型化する必要がない上に、装置を大型化することなくガスハイドレートの製造量を増加することができる。
【0032】
また、従来の自然脱水に比較して本発明の脱水装置Aの排水タンク室5に減圧を作用させる強制的な吸引脱水作用により、高度に脱水したガスハイドレート半乾燥体hとすることができ、その結果、仕上げ工程における流動層の形成が極めて容易となり、従って、この仕上げ工程における反応時間を短縮でき、ガスハイドレート製造装置全体を効率的に運転でき、良質のガスハイドレート乾燥体nを高効率で生産することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係る脱水装置を適用したガスハイドレート製造装置の概略構成図である。
【符号の説明】
【0034】
g 原料ガス w 水
s ガスハイドレートスラリー h ガスハイドレート半乾燥体
n ガスハイドレート乾燥体 A 脱水装置
1 筒状本体 3 減圧発生部
4 多孔質の壁 5 排水タンク室
7 連通管 8 供給口
9 導出部 11 水分分離壁
12 スラリーポンプ 14 エゼクタ
20 ガスハイドレートスラリー生成装置 27 仕上げ装置
31 ガス循環ブロワ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料ガスと水とを水和反応させてガスハイドレートスラリーを生成するガスハイドレート生成工程と、前記ガスハイドレートスラリーより水を分離してガスハイドレート半乾燥体を生成する脱水工程と、更にこのガスハイドレート半乾燥体を原料ガスの上昇流によって流動化させながらガスと反応させてガスハイドレート乾燥体を生成する仕上げ工程と、からなるガスハイドレートの製造方法において、
前記脱水工程に使用する装置は、筒状本体の下方より前記ガスハイドレートスラリーが供給され、この筒状本体中間部に形成された排水部を経由して上方から前記仕上げ工程に移送されるようになっており、前記排水部は、前記筒状本体の一部が多孔質の壁で形成され、その外側に排水タンク室が閉止状態で形成されており、
前記仕上げ工程において原料ガスを循環させる管路に形成された減圧発生部の減圧を前記排水タンク室に作用させるように連通したことを特徴とするガスハイドレートの製造方法における脱水方法。
【請求項2】
原料ガスと水とを水和反応させてガスハイドレートスラリーを生成するガスハイドレート生成装置と、前記ガスハイドレートスラリーより水を分離してガスハイドレート半乾燥体を生成する脱水装置と、さらにこのガスハイドレート半乾燥体をガス循環ブロワによって流動化させながらガスハイドレート乾燥体を生成する仕上げ装置と、からなるガスハイドレートの製造装置において、
前記仕上げ装置のガス循環路にエゼクタを配置し、このエゼクタの減圧部と前記排水タンク室との間を、連通管により連通したことを特徴とするガスハイドレートの製造装置における脱水装置。

【図1】
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【公開番号】特開2007−238659(P2007−238659A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−59168(P2006−59168)
【出願日】平成18年3月6日(2006.3.6)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【Fターム(参考)】