説明

ガスバリア性フィルム、包装材料、及び包装体

【課題】無機酸化物層を形成したプラスチック基材フィルムとヒートシール性樹脂層との密着性の低下を生じ難くした透明ガスバリア性フィルムを提供する。
【解決手段】透明ガスバリア性フィルム11は、プラスチック基材フィルム111と、前記基材フィルムの一方の主面上に形成され、芳香族カルボン酸基と脂肪族カルボン酸基とを有するポリエステルウレタンを含んだプライマー層112と、前記プライマー層上に気相堆積法によって形成された無機酸化物層113とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスバリア性フィルム、包装材料、及び包装体に係り、特には、透明ガスバリア性フィルム、透明包装材料、及びこの透明包装材料を用いた包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
食品、医薬品及び精密電子部品の包装には、ガスバリア性に優れた包装材料を使用することがある。例えば、高ガスバリア性包装材料で食品を包装した場合には、食品が含む油脂の酸化、その水分含量の変化、及び香味成分の散逸などを防止できる。また、高ガスバリア性包装材料で医薬品を包装した場合には、有効成分の変質及び散逸などを防止でき、高ガスバリア性包装材料で電子部品を包装した場合には、金属の腐食及び絶縁不良等を防止できる。
【0003】
高ガスバリア性包装材料は、ガスバリア層を含んだ多層構造を有している。このガスバリア層としては、例えば、アルミニウム箔などの金属箔、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)層、エチレン−ビニルアルコール共重合体けん化物(EVOH)層、及びメタキシレンジアミンとアジピン酸との重縮合反応により得られるポリアミドであるナイロンMXD6からなる層が使用されている。これら高ガスバリア性包装材料は、比較的高いガスバリア性を示すものの、何らかの欠点を有している。
【0004】
例えば、金属箔を含んだ高ガスバリア性包装材料は、温度及び湿度などの環境の如何に拘らず、優れたガスバリア性を示す。しかしながら、この包装材料を用いて形成した包装体には、内容物を視認できない、廃棄の際に不燃物として扱わなければならない、内容物を入れた後の異物検査に金属探知機を使用できないなどの欠点がある。また、この包装体で内容物を包装してなる包装品は、マイクロ波加熱には不向きである。
【0005】
PVDC層を含んだ高ガスバリア性包装材料は、安価であり、比較的高いガスバリア性を有している。しかしながら、この包装材料は、焼却した際に有害ガスを発生する可能性がある。
【0006】
EVOH層又はナイロンMXD6層を含んだ高ガスバリア性包装材料は、そのガスバリア性の環境依存度が大きい。特に、高温高湿度環境では、ガスバリア性が著しく劣化する。
【0007】
特許文献1及び2には、真空蒸着やスパッタリングなどの気相堆積法により、プラスチック基材フィルム上に、酸化珪素、酸化アルミニウム、又は酸化マグネシウムからなる無機酸化物層を形成してなるガスバリア性フィルムが記載されている。このガスバリア性フィルムは、透明に形成することができると共に、ガスバリア性に優れている。したがって、このガスバリア性フィルムは、高ガスバリア性包装材料として適している。
【0008】
ところで、このガスバリア性フィルムは、単独で使用されることは殆どない。通常、このガスバリア性フィルムには、他のフィルムをラミネートするか、又は、印刷層を形成する。例えば、ガスバリア性フィルムとヒートシール性樹脂層とを、プラスチック基材フィルムとヒートシール性樹脂層との間に無機酸化物層が介在するようにラミネートすることがある。本発明者は、本発明を為すに際し、例えば、このような構造を採用した包装材料は、以下の問題を生じ得ることを見出している。
【0009】
例えば、この包装材料からなる包装体で食品などの内容物を包装し、これにより得られる包装品を煮沸滅菌処理に供すると、水蒸気等の浸透に起因して、包装材料の一部でデラミネーションが発生することがある。この場合、見栄えが悪くなるのに加え、デラミネーションを生じた部分でガスバリア性が低下して、内容物が早期に劣化する。
【0010】
また、この包装材料からなる包装体で精密電子部品を包装し、これにより得られる包装品を高温多湿環境中に長時間放置すると、外部環境からの水蒸気等の浸透に起因して、プラスチック基材フィルムとヒートシール性樹脂層との密着性が大幅に低下することがある。
【0011】
また、この包装材料からなる包装体に香味成分を含有した内容物を収容し、これにより得られる包装品を保存試験に供すると、香味成分の浸透に起因して、プラスチック基材フィルムとヒートシール性樹脂層との密着性が大幅に低下することがある。
【特許文献1】米国特許第3442686号明細書
【特許文献2】特開昭49−041469号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、無機酸化物層を形成したプラスチック基材フィルムとヒートシール性樹脂層との密着性の低下を生じ難くすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1側面によると、プラスチック基材フィルムと、前記基材フィルムの一方の主面上に形成され、芳香族カルボン酸基と脂肪族カルボン酸基とを有するポリエステルウレタンを含んだプライマー層と、前記プライマー層上に気相堆積法によって形成された無機酸化物層とを具備したことを特徴とする透明ガスバリア性フィルムが提供される。
【0014】
本発明の第2側面によると、第1側面に係るガスバリア性フィルムと、前記ガスバリア性フィルムに貼り合わされると共に前記無機酸化物層を間に挟んで前記プラスチック基材フィルムと向き合ったヒートシール性樹脂層とを具備したことを特徴とする透明包装材料が提供される。
【0015】
本発明の第3側面によると、第2側面に係る包装材料を具備したことを特徴とする包装体が提供される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、無機酸化物層を形成したプラスチック基材フィルムとヒートシール性樹脂層との密着性の低下を生じ難くすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の態様について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において、同様又は類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0018】
図1は、本発明の一態様に係る透明包装材料を概略的に示す断面図である。
この透明包装材料10は、透明ガスバリア性フィルム11と、接着剤層12と、ヒートシール性樹脂層13とを含んでいる。
【0019】
透明ガスバリア性フィルム11は、プラスチック基材フィルム111と、プライマー層112と、無機酸化物層113と、ガスバリア性被膜114とを含んでいる。なお、用語「フィルム」と用語「シート」とは厚さに応じて使い分けることがあるが、ここでは、厚さの大小とは無関係に用語「フィルム」を使用している。
【0020】
プラスチック基材フィルム111は、透明フィルムである。プラスチック基材フィルム111の材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、エチレン−ビニルアルコール共重合体、又はセロファンなどを使用することができる。プラスチック基材フィルム111は、帯電防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤などの添加剤及び/又は安定剤を含有していてもよい。
【0021】
プラスチック基材フィルム111は、未延伸フィルム及び延伸フィルムの何れであってもよい。機械的強度及び寸法安定性を考慮した場合には、一軸延伸フィルム及び二軸延伸フィルムなどの延伸フィルム、特には二軸延伸フィルム、を使用することが有利である。例えば、プラスチック基材フィルム111として、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリアミドフィルム、又は二軸延伸ポリプロピレンフィルムを使用してもよい。
【0022】
プラスチック基材フィルム111の厚さに制限はないが、プラスチック基材フィルム111は、基材として十分な強度を達成し得る厚さを有している必要がある。また、プラスチック基材フィルム111が厚い場合、透明包装材料10又は透明ガスバリア性フィルム11の柔軟性が不十分となることがある。プラスチック基材フィルム111の厚さは、例えば6μm乃至200μmの範囲内とし、典型的には9μm乃至100μmの範囲内とする。
【0023】
透明包装材料10又は透明ガスバリア性フィルム11の製造の際、その材料としてのプラスチック基材フィルム111の形状に制限はない。但し、量産性を考慮した場合には、プラスチック基材フィルム111は長尺物であることが有利である。
【0024】
プライマー層112は、プラスチック基材フィルム111の一方の主面上に形成された透明層である。プライマー層112は、無機酸化物層113とプラスチック基材フィルム111との密着性を向上させる。その結果、水蒸気や香味成分等の浸透に起因したプラスチック基材フィルム111とヒートシール性樹脂層13との密着性低下が抑制される。
【0025】
プライマー層112の飛行時間型二次質量イオン分析計(TOF−SIMS)による正及び負の2次イオン質量スペクトル分析結果は、典型的には、芳香族カルボン酸及びポリオール並びにそれらの反応生成物成分、脂肪族カルボン酸成分、及びイソシアネート成分の存在を示す。例えば、このプライマー層112のTOF−SIMSによる正及び負の2次イオン質量スペクトル分析を行ったときに、C74+、C853+、C1094+、C18137+、C742- 及びC752- を含む芳香族カルボン酸及びエチレングリコール並びにそれらの反応生成物成分由来のピーク群と、C672+ 及びC693+ を含む脂肪族カルボン酸成分由来のピーク群と、CNO- 及びC872- を含むイソシアネート由来のピーク群とが検出される。
【0026】
さらに詳しくは、プライマー層112は、芳香族カルボン酸基と脂肪族カルボン酸基とを有するポリエステルウレタンを含んでいる。このプライマー層112は、例えば、プラスチック基材フィルム111上に、芳香族カルボン酸と脂肪族カルボン酸とポリオールとイソシアネートとを用いて調製したコーティング液を塗布し、この塗膜を加熱して乾燥させることにより得られる。
【0027】
このコーティング液は、例えば、以下の方法により調製する。まず、芳香族カルボン酸と脂肪族カルボン酸とポリオールと溶剤とを混合し、重縮合反応を生じさせてポリエステルを含有した分散液を得る。次いで、この分散液にイソシアネートを混合し、ポリエステルとイソシアネートとの付加反応を生じさせる。これにより、ポリエステルウレタンを含有したコーティング液を得る。
【0028】
芳香族カルボン酸としては、芳香族ジカルボン酸などの芳香族ポリカルボン酸を使用することができる。芳香族ジカルボン酸としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、又はそれらの無水物を使用することができる。芳香族ポリカルボン酸は、芳香族ジカルボン酸でなくてもよい。例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸、ベンゼンヘキサカルボン酸などの芳香族ポリカルボン酸を使用してもよい。芳香族ポリカルボン酸は、単独で使用してもよく、複数を混合して使用してもよい。
【0029】
脂肪族カルボン酸としては、脂肪族ジカルボン酸などの脂肪族ポリカルボン酸を使用することができる。脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ペンタン−1,5−ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、又はそれらの無水物を使用することができる。脂肪族ポリカルボン酸は、脂肪族ジカルボン酸でなくてもよい。例えば、脂肪族トリカルボン酸を使用してもよい。脂肪族ポリカルボン酸は、単独で使用してもよく、複数を混合して使用してもよい。
【0030】
ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、エチレングリコール変性ビスフェノールA、グリセリン、トリメチロールエタン、又はトリメチロールプロパンを使用することができる。ポリオールは、単独で使用してもよく、複数を混合して使用してもよい。
【0031】
イソシアネートとしては、ジイソシアネートなどのポリイソシアネートを使用することができる。ジイソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート又はジフェニルメタンジイソシアネートを使用することができる。或いは、これらのトリメチロール変性体、ビウレット体、又はアロファネートを使用してもよい。ポリイソシアネートは、ジイソシアネートでなくてもよい。例えば、トリイソシアネートを使用してもよい。ポリイソシアネートは、単独で使用してもよく、複数を混合して使用してもよい。
【0032】
透明包装材料10に要求される耐熱性の観点から、プライマー層112の軟化点を70℃乃至180℃の範囲内に設定してもよい。また、プラスチック基材フィルム111として長尺物を使用し且つプライマー層112を形成した直後のプラスチック基材フィルム111を巻き取る場合には、プライマー層112はブロッキングを生じないものである必要がある。密着性に関する上記性能に加え、軟化点及びブロッキング等を考慮すると、テレフタル酸及び/又はイソフタル酸と、アジピン酸と、エチレングリコールと、トリレンジイソシアネート及び/又はジフェニルメタンジイソシアネートとを含有したコーティング液を用いてプライマー層112を形成することが有利である。
【0033】
コーティング液は、添加剤をさらに含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、3級アミン、イミダゾール誘導体、カルボン酸の金属化合物、4級アンモニウム塩、及び4級ホスホニウム塩などの硬化促進剤、フェノール系又はホスファイト系の酸化防止剤、レベリング剤、レオロジー調整剤、充填材、又はそれらの混合物を使用することができる。
【0034】
プライマー層112の厚さに制限はないが、薄いプライマー層112を厚さが均一な連続膜として形成することは難しい。また、厚いプライマー層112は柔軟性が低く、透明ガスバリア性フィルム11を屈曲させた場合に亀裂を生じる可能性がある。プライマー層112の厚さは、例えば10nm乃至1000nmの範囲内とし、典型的には20nm乃至400nmの範囲内とする。
【0035】
プライマー層112は、例えば、プラスチック基材フィルム111上に、上述した成分を含有したコーティング液を塗布し、この塗膜を乾燥させることにより得られる。コーティング液の塗布には、例えば、ロールコート法、ナイフエッジコート法、バーコート法、ディップコート法、ダイコート法、又はグラビアコート法を利用することができる。
【0036】
コーティング液の塗布に先立ち、例えば濡れ性及び/又は密着性を改善するために、プラスチック基材フィルム111の被塗布面に前処理を施しておいてもよい。この前処理としては、例えば、コロナ放電処理、低温プラズマ処理、イオンボンバード処理、リアクティブイオンエッチング処理、薬品処理、溶剤処理、又はそれらの組み合わせを挙げることができる。
【0037】
塗膜の乾燥は、例えば、コーティング液を塗布した直後に行なうことができる。或いは、プラスチック基材フィルム111を延伸処理する場合には、延伸処理前のプラスチック基材フィルム111上にコーティング液を塗布し、次いで、プラスチック基材フィルム111を延伸処理し、その後の応力緩和工程における熱処理により塗膜を乾燥させてもよい。この場合、プラスチック基材フィルム111と同一方向に延伸処理されたプライマー層112が得られる。
【0038】
無機酸化物層113は、プライマー層112上に気相堆積法によって形成されたガスバリア性透明層である。無機酸化物層113の材料としては、例えば、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化錫、酸化マグネシウム、又はこれらの混合物を使用することができる。
【0039】
無機酸化物層113の形成には、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、又はプラズマ化学気相堆積法を利用することができる。真空蒸着法を利用する場合、蒸発材料の加熱には、例えば、電子線加熱、抵抗加熱、又は誘導加熱を利用することができる。電子線加熱を利用した場合、蒸発材料の選択の自由度が大きい。蒸着にプラズマアシスト法又はイオンビームアシスト法を利用すると、より緻密な無機酸化物層113を形成することができる。また、蒸着の際に酸素などのガスを吹き込む反応蒸着を利用すると、透明性に優れた無機酸化物層113を形成することができる。
【0040】
無機酸化物層113が薄い場合、無機酸化物層113を厚さが均一な連続膜として形成することは難しく、また、十分なガスバリア性が得られない。厚い無機酸化物層113は柔軟性が低く、透明ガスバリア性フィルム11を撓ませた場合や引っ張った場合に亀裂を生じる可能性がある。また、気相堆積法は、経済的観点で厚膜の形成には適していない。無機酸化物層113の厚さは、例えば1nm乃至500nmの範囲内とする。
【0041】
ガスバリア性被膜114は、無機酸化物層113上に形成された透明層である。ガスバリア性被膜114は、透明樹脂と無機酸化物などの無機物とを含んだ混合物からなる。無機酸化物は、例えば、酸化珪素である。ガスバリア性被膜114は、省略することも可能であるが、ガスバリア性被膜114を設けると、より高いガスバリア性を有する透明包装材料10を得ることができる。
【0042】
ガスバリア性被膜114は、例えば、無機酸化物層113上に、水溶性高分子と1種又は2種以上の金属アルコキシド及び/又はその加水分解生成物と水とを含有したコーティング液を塗布し、この塗膜を加熱して乾燥させることにより得られる。なお、このコーティング液の溶媒としては、例えば、水、又は水とアルコールとの混合液を使用することができる。
【0043】
水溶性高分子としては、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン、デンプン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、又はそれらの混合物を使用することができる。特に、PVAを使用した場合、最もガスバリア性に優れたガスバリア性被膜114を形成することができる。なお、ここでいうPVAは、典型的には、ポリ酢酸ビニルをけん化することにより得られるものである。このPVAとしては、アセチル基が数10%残存している部分けん化PVAからアセチル基が数%しか残存していない完全けん化PVAまで様々なけん化PVAを使用することができる。
【0044】
金属アルコキシドは、一般式M(OR)nで表される化合物である。ここで、Mは、チタン、アルミニウム、及びジルコニウムなどの金属又は珪素を示し、Rは、メチル基及びエチル基などのアルキル基を示している。また、nは、元素Mの価数を示している。
【0045】
金属アルコキシドとしては、例えば、テトラエトキシシラン[Si(OC254]又はトリイソプロポキシアルミニウム[Al(OCH(CH323]を使用することができる。テトラエトキシシラン及びトリイソプロポキシアルミニウムの加水分解生成物は、水を含んだ溶液中で比較的安定に存在することができる。
【0046】
金属アルコキシドとしてアルコキシシランを使用する場合、このアルコキシシランとしては、例えば、Si(OR1)4若しくはR2Si(OR3)3で表される化合物又はそれらの混合物を使用することができる。ここで、R1及びR3はCH3基、C25基及びC24OCH3基などの加水分解性基を示し、R2は有機官能基を示している。
【0047】
なお、金属アルコキシドを加水分解物及び縮合させることにより得られる金属酸化物膜は硬いため、外力や縮合時の体積縮小によるひずみに起因してクラックが生じ易い。それゆえ、クラックなどを生じることなく、この金属酸化物膜を均一な厚さに形成することは非常に困難である。
【0048】
これに対し、高分子と金属アルコキシド及び/又はその加水分解物と水とを含有したコーティング液を用いて形成した膜は、金属酸化物膜と比較して柔軟性が高いため、クラックを発生しがたい。但し、この膜は、微視的には金属酸化物が均一に分散しておらず、高いガスバリア性が得られないことがある。この高分子として、水溶性高分子を使用した場合には、高分子の水酸基と金属アルコキシドの加水分解物の水酸基との強い水素結合を利用して、縮合の際に金属酸化物を高分子中に均一に分散させることができる。それゆえ、金属酸化物膜に近いガスバリア性を達成することができる。したがって、このようなガスバリア性被膜114を無機酸化物層113上に形成すると、それらを単独で使用した場合と比較して、はるかに高いガスバリア性を達成することができる。
【0049】
金属アルコキシドとして、例えば、R2Si(OR3)3で示されるアルコキシシランを使用すると、水が浸入した場合でも膨潤しがたく、耐水性に優れたガスバリア性被膜114を得ることができる。特に、有機官能基R2が、ビニル基、エポキシ基、メタクリルオキシ基、ウレイド基、及びイソシアネート基などの非水溶性官能基である場合、より高い耐水性を達成できる。
【0050】
有機官能基R2が、ビニル基又はメタクリルオキシ基である場合は、製造過程で紫外線又は電子線等の電離放射線の照射を行なう。
【0051】
また、金属アルコキシドの加水分解の反応促進剤として、一般に水と触媒(酸又はアルカリ)とを用いているが、この反応触媒の代わりに、光酸発生剤を使用することもできる。光酸発生剤は、紫外線などの電離放射線を照射することによって酸を発生する化合物であり、金属アルコキシドの加水分解反応は電離放射線を照射することによって初めて開始される。したがってコーティング液中では加水分解が進行せず、時間の経過によって物性が変化する心配がない。
【0052】
光酸発生剤としては、公知の光カチオン開始剤を使用することができる。 光カチオン開始剤としては、例えば、オニウム塩を挙げることができる。このオニウム塩は、光反応し、ルイス酸を放出する化合物である。
【0053】
金属アルコキシドとして一般式Si(OR1)4で表されるテトラアルコキシシランと一般式R2Si(OR3)3で表されるトリアルコキシシランとの2種を使用する場合、これらのアルコキシシランの比は、例えば、Si(OR1)4のSiO2換算質量M1とR2Si(OR3)3のR2Si(OH)3換算質量M2との和に対する換算質量M2の割合M2/(M1+M2)が、1%乃至50%の範囲内となるように設定してもよい。1%より小さくすると耐水性が低くなり、50%を超えると有機官能基R2がガスバリアの孔となり、ガスバリア性が低下する。
【0054】
一般式Si(OR1)4で表されるテトラアルコキシシランと一般式R2Si(OR3)3で表されるトリアルコキシシランとの混合比は、上述の割合M2/(M1+M2)が、5%乃至30%の範囲内となるように設定してもよい。この場合、液体内容物又は水分含有内容物を煮沸殺菌処理又は加圧・加熱殺菌処理し、さらに高温多湿環境中で長期保存するのに十分な耐水性及びハイバリア性を達成することができる。
【0055】
また、水溶性高分子の質量をM3とした場合、比率 M1/(M2/M3)は、例えば、100/100乃至100/30の範囲内に設定してもよい。この場合、長期保存、煮沸殺菌処理、又は加圧・加熱殺菌処理などの際に十分なバリア性が得られるのに加え、柔軟性に優れたガスバリア性被膜5が得られる。それゆえ、包装材として使用するうえで有利である。
【0056】
一般式Si(OR1)4で表されるアルコキシシランのうち、テトラエトキシシランは加水分解生成物が水系の溶媒中で比較的安定に存在しうる。そのため、これを使用した場合、製造条件の制御が比較的容易である。
【0057】
ガスバリア性被膜114を形成するコーティング液の各成分である、一般式Si(OR1)4で表されるアルコキシシランと一般式R2Si(OR3)3で表されるアルコキシシランと水溶性高分子とは、どの順番で混合してもよい。例えば、一般式Si(OR1)4で表されるアルコキシシランと一般式R2Si(OR3)3で表されるアルコキシシランとを別々に加水分解し、その後、水溶性高分子を含んだ溶液中にこれらを添加してもよい。この方法は、シリコン酸化物の分散性や加水分解の効率の点で優れている。
【0058】
ガスバリア性被膜114を形成するためのコーティング液は、添加剤をさらに含有することができる。この添加剤としては、例えば、イソシアネート化合物、シランカップリング剤、分散剤、安定化剤、レオロジー調整剤、又はそれらの混合物を使用することができる。
【0059】
無機酸化物層113上へのコーティング液の塗布には、例えば、ディッピング法、ロールコーティング法、スクリーン印刷法、スプレーコート法、又はグラビア印刷法を利用することができる。
【0060】
ガスバリア性被膜114が薄い場合、ガスバリア性被膜114を厚さが均一な連続膜として形成することは難しく、また、十分なガスバリア性が得られない。厚いガスバリア性被膜114は、亀裂を生じ易い。ガスバリア性被膜114の厚さは、例えば0.01μm乃至50μmの範囲内とする。
【0061】
接着剤層12は、無機酸化物層113を被覆した透明層である。接着剤層12の材料としては、例えば、ポリウレタン、ポリエステルウレタン、ポリエステル、ポリアミド、エポキシ樹脂、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリエチレンイミン、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリオレフィン、変性ポリオレフィン、ポリブタジエン、ワックス、カゼイン、又はそれらの混合物を主成分として含有した、無溶剤型、溶剤型、水性型、又は熱溶融型接着剤を使用することができる。
【0062】
この接着剤の無機酸化物層113上への塗布には、例えば、ダイレクトグラビアコート法、リバースグラビアコート法、キスコート法、ダイコート法、ロールコート法、ディップコート法、ナイフコート法、スプレーコート法、又はフォンテンコート法などを利用することができる。接着剤は、例えば、乾燥状態で塗布量が0.1g/m2乃至8g/m2の範囲内となるように塗布する。
【0063】
ヒートシール性樹脂層13は、接着剤層12を介して透明ガスバリア性フィルム11に貼り合わされた透明層である。ヒートシール性樹脂層13は、プライマー層112と無機酸化物層113とガスバリア性被膜114と接着剤層12とを間に挟んでプラスチック基材フィルム111と向き合っている。
【0064】
ヒートシール性樹脂層13は、ヒートシール性を有している透明樹脂層である。ヒートシール性樹脂層13の材料としては、例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、及び直鎖状低密度ポリエチレンなどのポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリエステル、ポリアミド、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物、ポリカーボネート、ポリアクリロニトリル、ニトロセルロース、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体、これらの金属架橋物、又はポリ乳酸樹脂などの生分解性樹脂を使用することができる。
【0065】
ヒートシール性樹脂層13の厚さは、例えば、透明包装材料10の用途に応じて設定する。通常、ヒートシール性樹脂層13の厚さは、10μm乃至200μmの範囲内とする。
【0066】
ヒートシール性樹脂層13と透明ガスバリア性フィルム11との貼り合わせには、例えば、ドライラミネート法、ノンソルベントラミネート法、又は押出しラミネート法を利用することができる。例えば、押出しラミネート法を利用した場合には、接着剤層12は省略することができる。
【0067】
透明ガスバリア性フィルム11とヒートシール性樹脂層13との間には、接着剤層12以外の層を介在させてもよい。例えば、それらの間に、印刷層及び/又は基材フィルムなどを介在させてもよい。
【0068】
この透明包装材料10は、包装体の少なくとも一部として使用することができる。例えば、この透明包装材料10を用いて袋を形成することができる。或いは、この透明包装材料10を用いて、成型容器の蓋を形成することができる。なお、ヒートシール性樹脂層13は、包装体の内部空間と透明ガスバリア性フィルム11との間に位置させる。
【0069】
この透明包装材料10は、プラスチック基材フィルム111とヒートシール性樹脂層13との密着性に優れている。そのため、例えば、この透明包装材料10で食品などを包装してなる包装品は、煮沸滅菌処理に供したとしても、デラミネーションを生じ難い。また、この透明包装材料10で香味成分を含有した内容物を包装してなる包装品は、長期に保存した場合であっても、プラスチック基材フィルム111とヒートシール性樹脂層13との密着性が大幅に低下することはない。さらに、この透明包装材料10で精密電子部品等を包装してなる包装品は、高温多湿環境中に長時間放置した場合であっても、プラスチック基材フィルム111とヒートシール性樹脂層13との密着性が大幅に低下することはない。それゆえ、内容物の劣化を長期にわたって防止することができる。
【0070】
このように、透明包装材料10は常態強度に優れている。したがって、この透明包装材料10を用いて形成した四方シール袋に内容物として水を充填してなる包装品は、95℃で30分間の煮沸滅菌処理を行った後でも、プラスチック基材フィルム111とヒートシール性樹脂層13との常態ラミネート強度を例えば3.0N/15mm以上に維持する。
【実施例】
【0071】
以下、本発明の実施例を説明する。
<コーティング液Aの調製>
溶媒にテレフタル酸とアジピン酸とエチレングリコールとを混合し、重縮合反応を生じさせた。これにより、数平均分子量が約40000であり、酸価が10mg KOH/gのポリエステル樹脂を含有した分散液を得た。次いで、この分散液にイソホロンジイソシアネートを添加し、ポリエステル樹脂とイソシアネートとの付加反応を生じさせた。この付加反応は、赤外吸収スペクトルからイソシアネート基の吸収ピークが無くなるまで継続した。以上のようにして、酸価が3mg KOH/gであり、軟化点が70℃のポリエステルウレタン樹脂を含有したコーティング液を得た。以下、このコーティング液を、「コーティング液A」と呼ぶ。
【0072】
<コーティング液Bの調製>
溶媒にイソフタル酸とアジピン酸とエチレングリコールとを混合し、重縮合反応を生じさせた。これにより、数平均分子量が約40000であり、酸価が20mg KOH/gのポリエステル樹脂を含有した分散液を得た。次いで、この分散液にトリレンジイソシアネートとジフェニルメタンジイソシアネートとを添加し、ポリエステル樹脂とイソシアネートとの付加反応を生じさせた。この付加反応は、赤外吸収スペクトルからイソシアネート基の吸収ピークが無くなるまで継続した。以上のようにして、酸価が15mg KOH/gであり、軟化点が90℃のポリエステルウレタン樹脂を含有したコーティング液を得た。以下、このコーティング液を、「コーティング液B」と呼ぶ。
【0073】
<コーティング液Cの調製>
溶媒にイソフタル酸とセバシン酸とエチレングリコールとネオペンチルグリコールとを混合し、重縮合反応を生じさせた。これにより、数平均分子量が約20000であり、酸価が50mg KOH/gのポリエステル樹脂を含有した分散液を得た。次いで、この分散液にイソホロンジイソシアネートを添加し、ポリエステル樹脂との付加反応を生じさせた。この付加反応は、赤外吸収スペクトルからイソシアネート基の吸収ピークが無くなるまで継続した。以上のようにして、酸価が6mg KOH/gであり、軟化点が100℃のポリエステルウレタン樹脂を含有したコーティング液を得た。以下、このコーティング液を、「コーティング液C」と呼ぶ。
【0074】
<コーティング液Dの調製>
溶媒にイソフタル酸とアゼライン酸とエチレングリコールと1,6−ヘキサンジオールとを混合し、重縮合反応を生じさせた。これにより、数平均分子量が約10000であり、酸価が100mg KOH/gのポリエステル樹脂を含有した分散液を得た。次いで、この分散液にトリレンジイソシアネートとジフェニルメタンジイソシアネートとを添加し、ポリエステル樹脂との付加反応を生じさせた。この付加反応は、赤外吸収スペクトルからイソシアネート基の吸収ピークが無くなるまで継続した。以上のようにして、酸価が20mg KOH/gであり、軟化点が83℃のポリエステルウレタン樹脂を含有したコーティング液を得た。以下、このコーティング液を、「コーティング液D」と呼ぶ。
【0075】
<コーティング液Eの調製>
溶媒にイソフタル酸とテレフタル酸とエチレングリコールと1,4−ブタンジオールとを混合し、重縮合反応を生じさせた。これにより、数平均分子量が約40000であり、酸価が50mg KOH/gのポリエステル樹脂を含有した分散液を得た。次いで、この分散液にトリレンジイソシアネートとジフェニルメタンジイソシアネートとを添加し、ポリエステル樹脂との付加反応を生じさせた。この付加反応は、赤外吸収スペクトルからイソシアネート基の吸収ピークが無くなるまで継続した。以上のようにして、酸価が20mg KOH/gであり、軟化点が83℃のポリエステルウレタン樹脂を含有したコーティング液を得た。以下、このコーティング液を、「コーティング液E」と呼ぶ。
【0076】
<コーティング液Fの調製>
溶媒にイソフタル酸とアゼライン酸とエチレングリコールと1,6−ヘキサンジオールとを混合し、重縮合反応を生じさせた。以上のようにして、酸価が100mg KOH/gであり、軟化点が75℃のポリエステル樹脂を含有したコーティング液を得た。以下、このコーティング液を、「コーティング液F」と呼ぶ。
以下の表1に、コーティング液A乃至Fの調製に使用した材料を纏める。
【表1】

【0077】
<コーティング液Gの調製>
10gのテトラエトキシシランに0.1Nの塩酸水溶液を89g混合し、この混合液を30分間攪拌してテトラエトキシシランの加水分解を生じさせた。これにより、SiO2換算で3質量%の固形分を含有した溶液を得た。次いで、ポリビニルアルコールを3質量%の濃度で含有した溶液を添加した。ポリビニルアルコールの溶媒としては、水とイソプロピルアルコールとを90:10の質量比で含有した混合液を使用した。以下、このようにして得られたコーティング液を、「コーティング液G」と呼ぶ。
【0078】
<コーティング液Hの調製>
17.9gのテトラエトキシシランと10gのメタノールと72.1gの0.1N塩酸水溶液とを混合し、30分間攪拌して、テトラエトキシシランを加水分解させた。これにより、SiO2換算で5質量%の固形分を含有した加水分解溶液を得た。以下、この加水分解溶液を、「溶液1」とする。
【0079】
PVAを、水とイソプロピルアルコールとを95:5の質量比で含有した混合溶媒で溶解し、固形分濃度が5質量%となるように、PVA水溶液を調製した。以下、このPVA水溶液を、「溶液2」とする。
【0080】
γ―グリシドキシプロピルトリメトキシシランのイソプロピルアルコール溶液に、1N塩酸水溶液を添加した。この際、水とイソプロピルアルコールとの質量比は50:50とした。また、この混合溶液におけるγ―グリシドキシプロピルトリメトキシシランの濃度はR2Si(OH)3換算濃度で5質量%とした。次に、この混合溶液を20分攪拌して、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを加水分解させた。これにより、R2Si(OH)3換算で5質量%の固形分を含有した加水分解溶液を得た。以下、この加水分解溶液を、「溶液3」とする。
【0081】
その後、溶液1と溶液2と溶液3とを、それらの固形分の質量比が、60:30:10となるように混合した。以下、この混合溶液を、「コーティング液H」と呼ぶ。
【0082】
<コーティング液Iの調製>
3-アミノプロピルトリメトキシシランのイソプロピルアルコール溶液に、水を徐々に加えて30分間攪拌し、3-アミノプロピルトリメトキシシランを加水分解させた。3-アミノトリメトキシシランの濃度はR2Si(OH)3換算濃度で5質量%とした。これにより、R2Si(OH)3換算で5質量%の固形分を含有した加水分解溶液を得た。以下、この加水分解溶液を、「溶液4」とする。
【0083】
その後、溶液1と溶液2と溶液4とを、それらの固形分濃度の質量比が60:25:15となるように混合した。以下、この混合液を、「コーティング液I」と呼ぶ。
【0084】
<コーティング液Jの調製>
溶液1と溶液2と溶液3とを、それらの固形分の質量比が30:20:60となるように混合した。以下、この混合液を、「コーティング液J」と呼ぶ。
【0085】
<コーティング液Kの調製>
溶液1と溶液2と溶液3とを、それらの固形分の質量比が80:10:10となるように混合した。以下、この混合液を、「コーティング液K」と呼ぶ。
【0086】
<透明ガスバリア性フィルムA1及び透明包装材料A1の製造>
まず、ナイロン6からなる厚さが150μmのプラスチック基材フィルムを準備した。
【0087】
次に、このプラスチック基材フィルムの一方の主面上に、ロールコート法により、コーティング液Aを塗布した。続いて、プラスチック基材フィルムをその厚さが15μmになるまで縦方向と横方向とに同じ延伸倍率で延伸すると共に、塗膜を乾燥させた。このようにして、プラスチック基材フィルム上に、厚さが40nmのプライマー層を形成した。
【0088】
次いで、電子線加熱方式を利用した真空蒸着装置を用いて、プライマー層上に、酸化アルミニウムからなる厚さが10nmの無機酸化物層を形成した。
【0089】
その後、グラビアコート法により、無機酸化物層上にコーティング液Gを塗布した。続いて、塗膜を乾燥させ、これにより、厚さが0.5μmのガスバリア性被膜を得た。
【0090】
以上のようにして、透明ガスバリア性フィルムを完成した。以下、この透明ガスバリア性フィルムを、「透明ガスバリア性フィルムA1」と呼ぶ。
【0091】
次に、透明ガスバリア性フィルムA1とヒートシール性樹脂層とを、ヒートシール性樹脂層がガスバリア性被膜と向き合うように、ドライラミネーション法により貼り合わせた。ヒートシール性樹脂層としては、厚さが50μmの直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(東セロ社製、TUX−FCS)を使用し、接着剤としては、ポリウレタン系ラミネート用接着剤(三井化学ポリウレタン社製、A616/A65)を使用した。
【0092】
その後、この積層体を、40℃で5日間養生した。以上のようにして、透明包装材料を完成した。以下、この透明包装材料を、「透明包装材料A1」と呼ぶ。
【0093】
<透明ガスバリア性フィルムA2及び透明包装材料A2の製造>
酸化アルミニウムからなる厚さが10nmの無機酸化物層の代わりに酸化珪素からなる厚さが40nmの無機酸化物層を形成したこと以外は、透明ガスバリア性フィルムA1について説明したのと同様の方法により透明ガスバリア性フィルムを製造した。以下、この
透明ガスバリア性フィルムを、「透明ガスバリア性フィルムA2」と呼ぶ。
【0094】
次に、透明ガスバリア性フィルムA1の代わりに透明ガスバリア性フィルムA2を使用したこと以外は、透明包装材料A1について説明したのと同様の方法により透明包装材料を製造した。以下、この透明包装材料を、「透明包装材料A2」と呼ぶ。
【0095】
<透明ガスバリア性フィルムA3及び透明包装材料A3の製造>
酸化アルミニウムからなる厚さが10nmの無機酸化物層の代わりに酸化マグネシウムからなる厚さが20nmの無機酸化物層を形成したこと以外は、透明ガスバリア性フィルムA1について説明したのと同様の方法により透明ガスバリア性フィルムを製造した。以下、この透明ガスバリア性フィルムを、「透明ガスバリア性フィルムA3」と呼ぶ。
【0096】
次に、透明ガスバリア性フィルムA1の代わりに透明ガスバリア性フィルムA3を使用したこと以外は、透明包装材料A1について説明したのと同様の方法により透明包装材料を製造した。以下、この透明包装材料を、「透明包装材料A3」と呼ぶ。
【0097】
<透明ガスバリア性フィルムB1及び透明包装材料B1の製造>
コーティング液Aの代わりにコーティング液Bを使用したこと以外は、透明ガスバリア性フィルムA1について説明したのと同様の方法により透明ガスバリア性フィルムを製造した。以下、この透明ガスバリア性フィルムを、「透明ガスバリア性フィルムB1」と呼ぶ。
【0098】
次に、透明ガスバリア性フィルムA1の代わりに透明ガスバリア性フィルムB1を使用したこと以外は、透明包装材料A1について説明したのと同様の方法により透明包装材料を製造した。以下、この透明包装材料を、「透明包装材料B1」と呼ぶ。
【0099】
<透明ガスバリア性フィルムB2及び透明包装材料B2の製造>
まず、ポリエチレンテレフタレートからなる厚さが150μmのプラスチック基材フィルムを準備した。
【0100】
次に、このプラスチック基材フィルムを、縦方向に延伸した。次いで、このプラスチック基材フィルムの一方の主面上に、ロールコート法により、コーティング液Bを塗布した。続いて、プラスチック基材フィルムを横方向に延伸すると共に、塗膜を乾燥させた。なお、縦方向の延伸倍率と横方向の延伸倍率とは等しくし、これら延伸は、プラスチック基材フィルムの厚さが12μmとなるように行った。このようにして、プラスチック基材フィルム上に、厚さが50nmのプライマー層を形成した。
【0101】
その後、透明ガスバリア性フィルムA1について説明したのと同様の方法により、プライマー層上に、無機酸化物層及びガスバリア性被膜を順次形成した。
【0102】
以上のようにして、透明ガスバリア性フィルムを完成した。以下、この透明ガスバリア性フィルムを、「透明ガスバリア性フィルムB2」と呼ぶ。
【0103】
次に、透明ガスバリア性フィルムA1の代わりに透明ガスバリア性フィルムB2を使用したこと以外は、透明包装材料A1について説明したのと同様の方法により透明包装材料を製造した。以下、この透明包装材料を、「透明包装材料B2」と呼ぶ。
【0104】
<透明ガスバリア性フィルムB3及び透明包装材料B3の製造>
酸化アルミニウムからなる厚さが10nmの無機酸化物層の代わりに酸化珪素からなる厚さが50nmの無機酸化物層を形成したこと以外は、透明ガスバリア性フィルムB2について説明したのと同様の方法により透明ガスバリア性フィルムを製造した。以下、この
透明ガスバリア性フィルムを、「透明ガスバリア性フィルムB3」と呼ぶ。
【0105】
次に、透明ガスバリア性フィルムA1の代わりに透明ガスバリア性フィルムB3を使用したこと以外は、透明包装材料A1について説明したのと同様の方法により透明包装材料を製造した。以下、この透明包装材料を、「透明包装材料B3」と呼ぶ。
【0106】
<透明ガスバリア性フィルムB4及び透明包装材料B4の製造>
まず、ポリプロピレンからなる厚さが150μmのプラスチック基材フィルムを準備した。
【0107】
次に、このプラスチック基材フィルムを、その厚さが20μmになるまで縦方向と横方向とに同じ延伸倍率で延伸した。次いで、このプラスチック基材フィルムの一方の主面上に、ロールコート法により、コーティング液Bを塗布した。続いて、この塗膜を乾燥させた。このようにして、プラスチック基材フィルム上に、厚さが100nmのプライマー層を形成した。
【0108】
その後、透明ガスバリア性フィルムA1について説明したのと同様の方法により、プライマー層上に、無機酸化物層及びガスバリア性被膜を順次形成した。
【0109】
以上のようにして、透明ガスバリア性フィルムを完成した。以下、この透明ガスバリア性フィルムを、「透明ガスバリア性フィルムB4」と呼ぶ。
【0110】
次に、透明ガスバリア性フィルムA1の代わりに透明ガスバリア性フィルムB4を使用したこと以外は、透明包装材料A1について説明したのと同様の方法により透明包装材料を製造した。以下、この透明包装材料を、「透明包装材料B4」と呼ぶ。
【0111】
<透明ガスバリア性フィルムC及び透明包装材料Cの製造>
コーティング液Aの代わりにコーティング液Cを使用したこと以外は、透明ガスバリア性フィルムA1について説明したのと同様の方法により透明ガスバリア性フィルムを製造した。以下、この透明ガスバリア性フィルムを、「透明ガスバリア性フィルムC」と呼ぶ。
【0112】
次に、透明ガスバリア性フィルムA1の代わりに透明ガスバリア性フィルムCを使用したこと以外は、透明包装材料A1について説明したのと同様の方法により透明包装材料を製造した。以下、この透明包装材料を、「透明包装材料C」と呼ぶ。
【0113】
<透明ガスバリア性フィルムD及び透明包装材料Dの製造>
コーティング液Aの代わりにコーティング液Dを使用したこと以外は、透明ガスバリア性フィルムA1について説明したのと同様の方法により透明ガスバリア性フィルムを製造した。以下、この透明ガスバリア性フィルムを、「透明ガスバリア性フィルムD」と呼ぶ。
【0114】
次に、透明ガスバリア性フィルムA1の代わりに透明ガスバリア性フィルムDを使用したこと以外は、透明包装材料A1について説明したのと同様の方法により透明包装材料を製造した。以下、この透明包装材料を、「透明包装材料D」と呼ぶ。
【0115】
<透明ガスバリア性フィルムE1及び透明包装材料E1の製造>
コーティング液Bの代わりにコーティング液Eを使用したこと以外は、透明ガスバリア性フィルムB3について説明したのと同様の方法により透明ガスバリア性フィルムを製造した。以下、この透明ガスバリア性フィルムを、「透明ガスバリア性フィルムE1」と呼ぶ。
【0116】
次に、透明ガスバリア性フィルムA1の代わりに透明ガスバリア性フィルムE1を使用したこと以外は、透明包装材料A1について説明したのと同様の方法により透明包装材料を製造した。以下、この透明包装材料を、「透明包装材料E1」と呼ぶ。
【0117】
<透明ガスバリア性フィルムE2及び透明包装材料E2の製造>
ガスバリア性被膜を得る際に、コーティング液Gの代わりにコーティング液Hを使用したこと以外は、透明ガスバリア性フィルムE1について説明したのと同様の方法により透明ガスバリア性フィルムを製造した。以下、この透明ガスバリア性フィルムを、「透明ガスバリア性フィルムE2」と呼ぶ。
【0118】
次に、透明ガスバリア性フィルムA1の代わりに透明ガスバリア性フィルムE2を使用したこと以外は、透明包装材料A1について説明したのと同様の方法により透明包装材料を製造した。以下、この透明包装材料を、「透明包装材料E2」と呼ぶ。
【0119】
<透明ガスバリア性フィルムE3及び透明包装材料E3の製造>
コーティング液Gを用いて厚さが0.5μmのガスバリア性被膜を形成する代わりに、コーティング液Hを用いて厚さが5.0μmのガスバリア性被膜を形成したこと以外は、透明ガスバリア性フィルムE1について説明したのと同様の方法により透明ガスバリア性フィルムを製造した。以下、この透明ガスバリア性フィルムを、「透明ガスバリア性フィルムE3」と呼ぶ。
【0120】
次に、透明ガスバリア性フィルムA1の代わりに透明ガスバリア性フィルムE3を使用したこと以外は、透明包装材料A1について説明したのと同様の方法により透明包装材料を製造した。以下、この透明包装材料を、「透明包装材料E3」と呼ぶ。
【0121】
<透明ガスバリア性フィルムE4及び透明包装材料E4の製造>
コーティング液Gを用いて厚さが0.5μmのガスバリア性被膜を形成する代わりに、コーティング液Iを用いて厚さが1.0μmのガスバリア性被膜を形成したこと以外は、透明ガスバリア性フィルムE1について説明したのと同様の方法により透明ガスバリア性フィルムを製造した。以下、この透明ガスバリア性フィルムを、「透明ガスバリア性フィルムE4」と呼ぶ。
【0122】
次に、透明ガスバリア性フィルムA1の代わりに透明ガスバリア性フィルムE4を使用したこと以外は、透明包装材料A1について説明したのと同様の方法により透明包装材料を製造した。以下、この透明包装材料を、「透明包装材料E4」と呼ぶ。
【0123】
<透明ガスバリア性フィルムE5及び透明包装材料E5の製造>
コーティング液Gを用いる代わりにコーティング液Jを用いたこと以外は、透明ガスバリア性フィルムE1について説明したのと同様の方法により透明ガスバリア性フィルムを製造した。以下、この透明ガスバリア性フィルムを、「透明ガスバリア性フィルムE5」と呼ぶ。
【0124】
次に、透明ガスバリア性フィルムA1の代わりに透明ガスバリア性フィルムE5を使用したこと以外は、透明包装材料A1について説明したのと同様の方法により透明包装材料を製造した。以下、この透明包装材料を、「透明包装材料E5」と呼ぶ。
【0125】
<透明ガスバリア性フィルムE6及び透明包装材料E6の製造>
コーティング液Gの代わりにコーティング液Kを用いてガスバリア性被膜を形成し、酸化珪素からなる厚さが50nmの無機酸化物層の代わりに酸化アルミニウムからなる厚さが10nmの無機酸化物層を形成したこと以外は、透明ガスバリア性フィルムE1について説明したのと同様の方法により透明ガスバリア性フィルムを製造した。以下、この透明ガスバリア性フィルムを、「透明ガスバリア性フィルムE6」と呼ぶ。
【0126】
次に、透明ガスバリア性フィルムA1の代わりに透明ガスバリア性フィルムE6を使用したこと以外は、透明包装材料A1について説明したのと同様の方法により透明包装材料を製造した。以下、この透明包装材料を、「透明包装材料E6」と呼ぶ。
【0127】
<透明ガスバリア性フィルムF及び透明包装材料Fの製造>
コーティング液Aの代わりにコーティング液Fを使用したこと以外は、透明ガスバリア性フィルムA1について説明したのと同様の方法により透明ガスバリア性フィルムを製造した。以下、この透明ガスバリア性フィルムを、「透明ガスバリア性フィルムF」と呼ぶ。
【0128】
次に、透明ガスバリア性フィルムA1の代わりに透明ガスバリア性フィルムFを使用したこと以外は、透明包装材料A1について説明したのと同様の方法により透明包装材料を製造した。以下、この透明包装材料を、「透明包装材料F」と呼ぶ。
【0129】
<透明ガスバリア性フィルムX及び透明包装材料Xの製造>
プライマー層を形成しなかったこと以外は、透明ガスバリア性フィルムA1について説明したのと同様の方法により透明ガスバリア性フィルムを製造した。以下、この透明ガスバリア性フィルムを、「透明ガスバリア性フィルムX」と呼ぶ。
【0130】
次に、透明ガスバリア性フィルムA1の代わりに透明ガスバリア性フィルムXを使用したこと以外は、透明包装材料A1について説明したのと同様の方法により透明包装材料を製造した。以下、この透明包装材料を、「透明包装材料X」と呼ぶ。
【0131】
以下の表2及び表3に、透明ガスバリア性フィルムA1乃至A3、B1乃至B4、C、D、E1及至E6、F及びXの構成等を纏める。なお、表2及び表3において、「NY6」はナイロン6を示し、「PET」はポリエチレンテレフタレートを示し、「PP」はポリプロピレンを示している。「成膜→縦横延伸」は、プライマー層の塗膜を形成した後に基材フィルムを縦方向及び横方向に延伸したことを示している。「縦延伸→成膜→横延伸」は、基材フィルムを縦方向に延伸し、次いで、プライマー層の塗膜を形成し、その後、基材フィルムを横方向に延伸したことを示している。「縦横延伸→成膜」は、基材フィルムを縦方向及び横方向に延伸した後にプライマー層の塗膜を形成したことを示している。
【表2】

【0132】
【表3】

【0133】
<プライマー層のTOF−SIMS分析>
透明ガスバリア性フィルムA1乃至A3、B1乃至B4、C、D、E1及至E6、及びFの各々のプライマー層について、TOF−SIMSによる分析を行なった。TOF−SIMS分析装置としてはアルバック−ファイ社製TRIFT2を用い、一次イオン:69Ga+、1次イオン加速電圧:15kV、測定面積100μm角、帯電補正用電子銃を用いて実施し、正及び負の2次イオン質量スペクトルにより、プライマー層より検出されるイオン種を分析した。
【0134】
透明ガスバリア性フィルムA1乃至A3、B1乃至B4、C、D、及びE1及至E6の各々のプライマー層は、芳香族カルボン酸及びポリオール並びにそれらの反応生成物成分と、脂肪族カルボン酸成分と、イソシアネート成分とを含有していると判断された。これに対し、透明ガスバリア性フィルムFは、芳香族カルボン酸及びポリオール並びにそれらの反応生成物成分と脂肪族カルボン酸成分とを含有していると判断され、イソシアネート成分は検出されなかった。
【0135】
透明ガスバリア性フィルムA1乃至A3、B1乃至B4、C、D、E1及至E6、及びFの各々のプライマー層について、TOF−SIMSによる正及び負の2次イオン質量スペクトル分析結果から確認された主なピークは、以下の通りであった。
【0136】
(1)芳香族カルボン酸及びエチレングリコール並びにそれらの反応生成物成分由来のピーク群: C74+、C853+、C1094+、C18137+、C742- 及びC752-
(2)脂肪族カルボン酸成分由来のピーク群: C672+ 及びC693+
(3)イソシアネート由来のピーク群: CNO- 及びC872-
<酸素透過度の測定>
透明ガスバリア性フィルムA1乃至A3、B1乃至B4、C、D、E1及至E6、F及びXの各々について、日本工業規格 JIS K7126−1987「プラスチックフィルム及びシートの気体透過度試験方法」で規定されているB法(等圧法)に従って酸素透過度を測定した。この測定は、温度が30℃であり相対湿度が70%の環境中で、Modern Control社製のOxtran2/21を使用して行った。以下の表4及び表5に、測定結果を纏める。
【0137】
<初期ラミネート強度の測定>
透明包装材料A1乃至A3、B1乃至B4、C、D、E1及至E6、F及びXの各々について、日本工業規格 JIS K6854−3:1999「接着剤−はく離接着強さ試験方法−第3部:T形はく離」で規定されている試験方法に従ってラミネート強度を測定した。
【0138】
すなわち、まず、透明包装材料A1乃至A3、B1乃至B4、C、D、E1及至E6、F及びXの各々から、幅が15mmの短冊状の試験片を準備した。次いで、各試験片の一端でヒートシール性樹脂層と透明ガスバリア性フィルムとを互いから剥離し、これらをそれぞれ引張試験機のつかみ具に取り付けた。その後、引張応力を加えて、ヒートシール性樹脂層と透明ガスバリア性フィルムとを互いから剥離させ、剥離長さ(つかみ移動距離)と引張応力との関係を記録した。ここでは、剥離速度は300mm/minとした。そして、最初及び最後の25mmを除いた100mm以上の剥離長さに亘って、力−つかみ移動距離曲線から平均剥離力(N)を求めた。この平均剥離力(N)をラミネート強度とした。
【0139】
以下の表4及び表5に、測定結果を纏める。なお、表4及び表5中の「破断」は、ヒートシール性樹脂層と透明ガスバリア性フィルムとの互いからの剥離を生じる前に破断を生じたことを意味している。
【0140】
<煮沸処理後におけるラミネート強度の測定>
透明包装材料A1乃至A3、B1乃至B4、C、D、E1及至E6、F及びXの各々を用いて、寸法が100mm×150mmの四方シール袋を作成した。各四方シール袋には、150gの水を充填した。次に、これら包装品を95℃で30分間の煮沸処理に供し、その後、上述したのと同様の方法によりラミネート強度を測定した。以下の表4及び表5に、測定結果を纏める。
【0141】
<落下試験>
透明包装材料A1乃至A3、B1乃至B4、C、D、E1及至E6、F及びXを用いて、寸法が100mm×150mmの四方シール袋を10個ずつ作成した。各四方シール袋には、150gの水を充填した。次に、これら包装品の各々を、1.5mの高さから100回落下させた。そして、透明包装材料A1乃至A3、B1乃至B4、C、D、E1及至E6、F及びXの各々について、この落下試験によって破れた袋の数を求めた。以下の表4及び表5に、試験結果を纏める。
【0142】
<食酢保存後におけるラミネート強度の測定>
透明包装材料A1乃至A3、B1乃至B4、C、D、E1及至E6、F及びXの各々を用いて、寸法が100mm×100mmの四方シール袋を作成した。各四方シール袋には、20gの食酢を充填した。次に、これら包装品の各々を、40℃の環境中に1ヶ月放置し、その後、上述したのと同様の方法によりラミネート強度を測定した。
【0143】
以下の表4及び表5に、測定結果を纏める。なお、表4及び表5中の「デラミネーション」は、ラミネート強度を測定する前の段階でデラミネーションを生じていたことを示している。
【表4】

【0144】
【表5】

【0145】
表4及び表5に示すように、透明ガスバリア性フィルムA1乃至A3、B1乃至B4、C、D、E1及至E6、F及びXの何れも、酸素透過度が十分に小さい。また、透明包装材料A1乃至A3、B1乃至B4、C、D、及びE1及至E6は、煮沸処理後及び食酢保存後の何れにおいても、ラミネート強度が十分に大きい。そして、落下試験の結果も、透明包装材料A1乃至A3、B1乃至B4、C、D、及びE1及至E6は、優れた性能を有していることを示している。以上から、透明包装材料A1乃至A3、B1乃至B4、C、D、及びE1及至E6は、例えば、煮沸滅菌処理を要する包装品の包装体や香味成分を含有した内容物を収容する包装体などの用途に特に適していることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0146】
【図1】本発明の一態様に係る透明包装材料を概略的に示す断面図。
【符号の説明】
【0147】
10…透明包装材料、11…透明ガスバリア性フィルム、12…接着剤層、13…ヒートシール性樹脂層、111…プラスチック基材フィルム、112…プライマー層、113…無機酸化物層、114…ガスバリア性被膜。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック基材フィルムと、
前記基材フィルムの一方の主面上に形成され、芳香族カルボン酸基と脂肪族カルボン酸基とを有するポリエステルウレタンを含んだプライマー層と、
前記プライマー層上に気相堆積法によって形成された無機酸化物層とを具備したことを特徴とする透明ガスバリア性フィルム。
【請求項2】
前記プライマー層の飛行時間型二次イオン質量分析計による正及び負の2次イオン質量スペクトル分析結果は、芳香族カルボン酸及びポリオール並びにそれらの反応生成物成分と、脂肪族カルボン酸成分と、イソシアネート成分との存在を示すことを特徴とする請求項1に記載のガスバリア性フィルム。
【請求項3】
前記プライマー層の飛行時間型二次イオン質量分析計による正及び負の2次イオン質量スペクトル分析を行ったときに、C74+、C853+、C1094+、C18137+、C742- 及びC752- を含む芳香族カルボン酸及びエチレングリコール並びにそれらの反応生成物成分由来のピーク群と、C672+ 及びC693+ を含む脂肪族カルボン酸成分由来のピーク群と、CNO- 及びC872- を含むイソシアネート由来のピーク群とが検出されることを特徴とする請求項1又は2に記載のガスバリア性フィルム。
【請求項4】
前記ポリエステルウレタンは、テレフタル酸及び/又はイソフタル酸を含む芳香族カルボン酸とアジピン酸を含む脂肪族カルボン酸とエチレングリコールを含むポリオールとの重縮合反応により得られるポリエステルとトリレンジイソシアネート及び/又はジフェニルメタンジイソシアネートを含むイソシアネートとの付加反応により得られるポリエステルウレタンを含んだことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載のガスバリア性フィルム。
【請求項5】
前記基材フィルムは、ポリエステル、ポリアミド及びポリプロピレンからなる群より選
択される1つを含有した延伸フィルムであることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載のガスバリア性フィルム。
【請求項6】
前記基材フィルムと前記プライマー層とは同一方向に延伸されていることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載のガスバリア性フィルム。
【請求項7】
前記無機酸化物層は、酸化アルミニウム、酸化ケイ素及び酸化マグネシウムからなる群より選ばれる少なくとも1つを含有したことを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載のガスバリア性フィルム。
【請求項8】
前記無機酸化物層上に形成され、透明樹脂と無機物とを含んだ混合物からなるガスバリア性被膜をさらに具備したことを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項に記載のガスバリア性フィルム。
【請求項9】
前記ガスバリア性被膜は、水溶性高分子と金属アルコキシド及び/又はその加水分解生成物と水とを含有した溶液を原料としていることを特徴とする請求項8に記載のガスバリア性フィルム。
【請求項10】
前記ガスバリア性被膜は、水溶性高分子と2種以上の金属アルコキシド及び/又はその加水分解生成物と水とを含有した溶液を原料としていることを特徴とする請求項8に記載のガスバリア性フィルム。
【請求項11】
前記ガスバリア性被膜に含まれた金属アルコキシド又はその加水分解生成物は、テトラアルコキシシラン及びトリアルコキシシラン又はそれらの加水分解生成物であることを特徴とする請求項8に記載のガスバリア性フィルム。
【請求項12】
請求項1乃至11の何れか1項に記載のガスバリア性フィルムと、前記ガスバリア性フィルムに貼り合わされると共に前記無機酸化物層を間に挟んで前記プラスチック基材フィルムと向き合ったヒートシール性樹脂層とを具備したことを特徴とする透明包装材料。
【請求項13】
請求項12に記載の包装材料を具備したことを特徴とする包装体。

【図1】
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【公開番号】特開2008−132761(P2008−132761A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−183647(P2007−183647)
【出願日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】