説明

ガスバリア性積層体の製造方法

【課題】水蒸気や酸素に対するバリア性の高いガスバリア性積層体の製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明のガスバリア性積層体の製造方法は、基材に、セルロースのカルボキシル基含有量が0.1〜3mmol/gの微細セルロース繊維を含む、第1液を塗布する第1塗布工程と、前記基材における前記第1液の被塗布部に、前記セルロース繊維並びに層状無機化合物、架橋剤、無機金属塩及び有機金属塩からなる群から選択される1種以上を含む、第2液を塗布する第2塗布工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノサイズの繊維径をもった微細セルロース繊維を含有するガスバリア性積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境に対する負荷の少ない技術が脚光を浴びるようになり、かかる技術背景の下、天然に多量に存在するバイオマスであるセルロース繊維を使った材料が注目され、これに関して種々の改良技術が提案されている。例えば本出願人は先に、平均繊維径が200nm以下のセルロース繊維を含み、該セルロース繊維を構成するセルロースのカルボキシル基含有量が0.1〜2mmol/gであるガスバリア用材料を提案した(特許文献1参照)。
【0003】
また、これまで知られているガスバリア性フィルムとして、層状無機化合物を添加したものが知られている。例えば特許文献2には、樹脂基材フィルムの片面にポリビニルアルコール系重合体組成物を積層したガスバリア性フィルムが提案されている。このポリビニルアルコール系重合体組成物には、モンモリロナイト等の無機膨潤性層状化合物が含まれている。また特許文献3には、ポリ乳酸系又はポリエステル系の生分解性樹脂基材の片面に、ウロン酸残基を持つ多糖類からなる被膜を形成した生分解性ガスバリア材が提案されている。この被膜中にはモンモリロナイト等の層状無機化合物が含まれている。
【0004】
ところで、特許文献1〜3に記載のガスバリア用材料には、フィルム等の基材の一面にガスバリア性被膜を有している形態があり、斯かる形態のガスバリア用材料は、基材にガスバリア性被膜形成用の塗料を塗布して得られる。塗料の塗布方法としては、グラビアコート法、リバースコート法、ロールコート法、バーコート法、スプレーコート法、エアナイフコート法等、種々の方法があり、塗料を重ね塗り(重層塗布)する方法も種々提案されている。例えば特許文献4には、2種以上の塗布液を支持体上に同時に重ね塗りするために、塗布装置における各塗布液を塗り付ける各ドクダーエッジのエッジ面を、それぞれ該支持体側に湾曲して構成することが記載されている。また特許文献5には、2層の重層塗布において、支持体上に予め塗布した第1塗布液の余剰分を、該支持体を裏面側から支持するバックアップローラと該バックアップローラと対向するドクターブレードとの間隙設定により掻き落とした後、該第1塗布液からなる層上に第2塗布液を塗布することが記載されている。
【0005】
また、特許文献6には、支持体上に第1塗布液を塗布し、該第1塗布液を乾燥させて下層を形成した後、該下層上に第2塗布液を塗布して上層を形成する、いわゆるウェット・オン・ドライ方式の塗布方法に関する改良技術が記載されている。特許文献6に記載の技術は、特許文献4及び5に記載の如き、いわゆるウェット・オン・ウェット方式の塗布方法〔支持体上に下層となる第1塗布液を塗布し、直後に(該下層が湿潤状態のうちに)、該下層上に第2塗布液を塗布して上層を形成する塗布方法〕の問題点(塗布状態の不安定)を解決することを目的としたものである。尚、特許文献4〜6に記載の塗布方法は、何れも主として、磁性塗布液を用いた写真感光材料や磁気記録媒体の製造に適用されるもので、膜厚分布の均一化や塗布ムラの防止等を主たる目的としたものであり、特許文献4〜6には、ナノサイズの繊維径をもった微細セルロース繊維を含有する塗料やガスバリア材については何等記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−57552号公報
【特許文献2】特開2001−121659号公報
【特許文献3】特開2008−49606号公報
【特許文献4】特開昭63−88080号公報
【特許文献5】特開平2−174965号公報
【特許文献6】特開2005−111306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、ナノサイズの繊維径をもった微細セルロース繊維を含有するガスバリア材の改良にあり、特に高湿度雰囲気中での酸素バリア性の改良にある。
【0008】
本発明は、基材に、セルロースのカルボキシル基含有量が0.1〜3mmol/gの微細セルロース繊維を含む、第1液を塗布する第1塗布工程と、前記基材における前記第1液の被塗布部に、層状無機化合物、架橋剤、無機金属塩及び有機金属塩からなる群から選択される1種以上を含む、第2液を塗布する第2塗布工程とを有する、ガスバリア性積層体の製造方法を提供することにより、前記課題を解決したものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、各種のガス、例えば酸素、水蒸気、二酸化炭素、一酸化炭素、窒素、窒素酸化物、水素、アルゴンガス等に対するバリア性の高いガスバリア性積層体、特に、高湿度雰囲気中での酸素バリア性が高いガスバリア性積層体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明のガスバリア性積層体の製造方法の実施に用い得る塗布装置の一例を示す概略図である。
【図2】図2は、本発明のガスバリア性積層体の製造方法の実施に用い得る塗布装置の他の例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のガスバリア性積層体の製造方法では、基材に第1液及び第2液を順次塗布してガスバリア性被膜を形成し、基材上にガスバリア性被膜を有するガスバリア性積層体を製造する。以下、本発明で用いる第1液及び第2液について説明する。
【0012】
本発明で用いる第1液は、「セルロースのカルボキシル基含有量が0.1〜3mmol/gの微細セルロース繊維」(以下、単に、微細セルロース繊維ともいう)を必須成分として含有している。
【0013】
微細セルロース繊維は、平均繊維径が200nm以下のものであることが好ましく、より好ましくは1〜200nm、更に好ましくは1〜100nm、一層好ましくは1〜50nmのものである。平均繊維径が200nmを超えるセルロース繊維を用いると、セルロース繊維間の空隙が大きくなり、良好なガスバリア性が得られなくなってしまう。平均繊維径は以下の方法によって測定される。
【0014】
<平均繊維径の測定方法>
固形分濃度で0.001質量%の測定対象のセルロース繊維(微細セルロース繊維)の水分散液を調製する。この分散液を、マイカ(雲母)上に滴下して乾燥したものを観察試料とする。原子間力顕微鏡(NanoNaVi IIe, SPA400,エスアイアイナノテクノロジー(株)製、プローブは同社製のSI−DF40Alを使用)を用いて、観察試料中のセルロース繊維の繊維高さを測定する。セルロース繊維が確認できる顕微鏡画像において、セルロース繊維を5本以上抽出し、それらの繊維高さから平均繊維径を算出する。
【0015】
本発明で用いる微細セルロース繊維は、後述する天然セルロース繊維をミクロフィブリルと呼ばれる構造単位まで微細化したものである。ミクロフィブリルの形状は原料によって様々であるが、多くの天然セルロース繊維においては、セルロース分子鎖が数十本集まって結晶化した矩形の断面構造を有する。例えば高等植物の細胞壁中のミクロフィブリルは、セルロース分子鎖が6本×6本集まった正方形の断面構造である。したがって、原子間力顕微鏡像で得られる微細セルロース繊維の高さを便宜的に繊維径として用いた。
【0016】
微細セルロース繊維は、微細であることに加え、これを構成するセルロースのカルボキシル基含有量によっても特徴づけられる。具体的には、カルボキシル基含有量は0.1〜3mmol/gであり、好ましくは0.4〜2mmol/g、更に好ましくは0.6〜1.8mmol/gであり、一層好ましくは0.6〜1.6mmol/gである。
【0017】
カルボキシル基含有量が0.1mmol/g未満であると、セルロース繊維の微細化処理を行っても、その平均繊維径が200nm以下にならない。つまり、カルボキシル基含有量は、平均繊維径200nm以下という微小な繊維径のセルロース繊維を安定的に得る上で重要な要素である。天然セルロースの生合成の過程においては、通常、ミクロフィブリルと呼ばれるナノファイバーがまず形成され、これらが多束化して高次な固体構造を構築しているところ、本発明で用いる微細セルロース繊維は、後述するように、これを原理的に利用して得られるものであり、天然由来のセルロース固体原料においてミクロフィブリル間の強い凝集力の原動となっている表面間の水素結合を弱めるために、その一部を酸化し、カルボキシル基に変換することによって得られる。したがって、セルロースに存在するカルボキシル基の量の総和(カルボキシル基含有量)が多いほうが、より微小な繊維径として安定に存在することができる。また水中においては、電気的な反発力が生じることにより、ミクロフィブリルが凝集を維持せずにばらばらになろうとする傾向が高まり、ナノファイバーの分散安定性がより増大する。カルボキシル基含有量は、以下の方法によって測定される。
【0018】
<カルボキシル基含有量の測定方法>
乾燥質量0.5gの測定対象のセルロース繊維(微細セルロース繊維)を100mlビーカーにとり、イオン交換水を加えて全体で55mlとし、そこに0.01M塩化ナトリウム水溶液5mlを加えて分散液を調製し、セルロース繊維が十分に分散するまで該分散液を攪拌する。この分散液に0.1M塩酸を加えてpHを2.5〜3に調整する。自動滴定装置(AUT−50、東亜ディーケーケー(株)製)を用い、0.05M水酸化ナトリウム水溶液を待ち時間60秒の条件で該分散液に滴下する。1分ごとの電導度及びpHの値を測定し、pH11程度になるまで測定を続け、電導度曲線を得る。この電導度曲線から、水酸化ナトリウム滴定量を求め、次式にしたがいセルロース繊維のカルボキシル基含有量を算出する。
カルボキシル基含有量(mmol/g)=水酸化ナトリウム滴定量(ml)×水酸化ナトリウム水溶液濃度(0.05M)/セルロース繊維の質量(0.5g)
【0019】
微細セルロース繊維は、その長さに特に制限はない。繊維長を平均アスペクト比(繊維長/繊維径)で表すと、好ましくは10〜1000、更に好ましくは10〜500、一層好ましくは100〜350である。平均アスペクト比は以下の方法によって測定される。
【0020】
<平均アスペクト比の測定方法>
測定対象のセルロース繊維(微細セルロース繊維)に水を加えて調製した分散液(セルロース繊維の濃度0.005〜0.04質量%)の粘度から算出する。分散液の粘度は、レオメーター(MCR、DG42(二重円筒)、PHYSICA社製)を用いて20℃で測定する。分散液のセルロース繊維の質量濃度と分散液の水に対する比粘度との関係から、以下の式(1)を用いてセルロース繊維のアスペクト比を逆算し、これを平均アスペクト比とする。式(1)は、The Theory of Polymer Dynamics,M.DOI and D.F.EDWARDS,CLARENDON PRESS・OXFORD,1986,p312に記載の剛直棒状分子の粘度式(8.138)と、Lb2×ρ=M/NAの関係〔式中、Lは繊維長、bは繊維幅(セルロース繊維断面は正方形とする)、ρはセルロース繊維の濃度(kg/m3)、Mは分子量、NAはアボガドロ数を表す〕から導出される。尚、粘度式(8.138)において、剛直棒状分子=セルロース繊維とした。また、式(1)中、ηSPは比粘度、πは円周率、lnは自然対数、Pはアスペクト比(L/b)、γ=0.8、ρSは分散媒の密度(kg/m3)、ρ0はセルロース結晶の密度(kg/m3)、Cはセルロースの質量濃度(C=ρ/ρS)を表す。
【0021】
【数1】

【0022】
微細セルロース繊維は、例えば天然セルロース繊維を酸化して反応物繊維を得る酸化反応工程、及び該反応物繊維を微細化処理する微細化工程を含む製造方法により得ることができる。酸化反応工程では、先ず、水中に天然セルロース繊維を分散させたスラリーを調製する。スラリーは、原料となる天然セルロース繊維(絶対乾燥基準)に対して約10〜1000倍量(質量基準)の水を加え、ミキサー等で処理することにより得られる。天然セルロース繊維としては、例えば、針葉樹系パルプ、広葉樹系パルプ等の木材パルプ;コットンリンター、コットンリントのような綿系パルプ;麦わらパルプ、バガスパルプ等の非木材系パルプ;バクテリアセルロース等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。天然セルロース繊維は、叩解等の表面積を高める処理が施されていても良い。
【0023】
次に、N−オキシル化合物を酸化触媒として用い、水中において天然セルロース繊維を酸化処理して反応物繊維を得る。N−オキシル化合物としては、例えば2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジン−N−オキシル(TEMPO)、4−アセトアミド−TEMPO、4−カルボキシ−TEMPO、4−フォスフォノオキシ−TEMPO等を用いることができる。N−オキシル化合物の添加は触媒量で十分であり、通常、原料として用いた天然セルロース繊維(絶対乾燥基準)に対して0.1〜10質量%となる範囲である。
【0024】
天然セルロース繊維の酸化処理においては、酸化剤(例えば、次亜ハロゲン酸又はその塩、亜ハロゲン酸又はその塩、過ハロゲン酸又はその塩、過酸化水素、過有機酸等)と、共酸化剤(例えば、臭化ナトリウム等の臭化アルカリ金属)とを併用する。酸化剤としては、特に、次亜塩素酸ナトリウムや次亜臭素酸ナトリウム等のアルカリ金属次亜ハロゲン酸塩が好ましい。酸化剤の使用量は、通常、原料として用いた天然セルロース繊維(絶対乾燥基準)に対して約1〜100質量%となる範囲である。また、共酸化剤の使用量は、通常、原料として用いた天然セルロース繊維(絶対乾燥基準)に対して約1〜30質量%となる範囲である。
【0025】
天然セルロース繊維の酸化処理においては、酸化反応を効率良く進行させる観点から、反応液(前記スラリー)のpHが9〜12の範囲に維持されることが望ましい。また、酸化処理の温度(前記スラリーの温度)は、1〜50℃において任意であるが、室温で反応可能であり、特に温度制御は必要としない。反応時間は1〜240分間が望ましい。
【0026】
酸化反応工程後、微細化工程前に精製工程を実施し、未反応の酸化剤や各種副生成物等の、前記スラリー中に含まれる反応物繊維及び水以外の不純物を除去する。反応物繊維は通常、この段階ではナノファイバー単位までばらばらに分散していないため、精製工程では、例えば水洗とろ過を繰り返す精製法を行うことができる。その際に用いる精製装置は特に制限されない。こうして得られた精製処理された反応物繊維は、通常、適量の水を含浸させた状態で次工程(微細化工程)に送られるが、必要に応じ、乾燥処理した繊維状や粉末状としても良い。
【0027】
微細化工程では、精製工程を経た反応物繊維を水等の溶媒中に分散させ微細化処理を施す。この微細化工程を経ることにより、平均繊維径及び平均アスペクト比がそれぞれ前記範囲にある微細セルロース繊維が得られる。
【0028】
微細化処理において、分散媒としての溶媒は通常は水が好ましいが、水以外にも目的に応じて水に可溶な有機溶媒(アルコール類、エーテル類、ケトン類等)を使用しても良く、これらの混合物も好適に使用できる。微細化処理で使用する分散機としては、例えば、離解機、叩解機、低圧ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、グラインダー、カッターミル、ボールミル、ジェットミル、短軸押出機、二軸押出機、超音波攪拌機、家庭用ジューサーミキサー等が挙げられる。微細化処理における反応物繊維の固形分濃度は50質量%以下が好ましい。
【0029】
微細化工程後に得られる微細セルロース繊維は、必要に応じ、固形分濃度を調整した懸濁液状の形態(目視的に無色透明又は不透明な液)、あるいは乾燥処理した粉末状の形態(但し、セルロース繊維が凝集した粉末状であり、セルロース粒子を意味するものではない)とすることができる。懸濁液状にする場合、分散媒として水のみを使用しても良く、あるいは水と他の有機溶媒(例えば、エタノール等のアルコール類)や界面活性剤、酸、塩基等との混合溶媒を使用しても良い。
【0030】
以上の通りの天然セルロース繊維の酸化処理及び微細化処理によって、セルロース構成単位のC6位の水酸基がアルデヒド基を経由してカルボキシル基へと選択的に酸化され、カルボキシル基含有量が0.1〜3mmol/gのセルロースからなる、平均繊維径200nm以下の微細化された高結晶性セルロース繊維を得ることができる。この高結晶性セルロース繊維は、セルロースI型結晶構造を有している。これは、本発明で用いる微細セルロース繊維が、I型結晶構造を有する天然由来のセルロース固体原料が表面酸化され微細化された繊維であることを意味する。即ち、天然セルロース繊維は、その生合成の過程において生産されるミクロフィブリルと呼ばれる微細な繊維が多束化して高次な固体構造を構築しているところ、そのミクロフィブリル間の強い凝集力(表面間の水素結合)を、前記の酸化処理によるアルデヒド基あるいはカルボキシル基の導入によって弱め、更に前記の微細化処理を経ることで、微細セルロース繊維が得られる。そして、酸化処理の条件を調整することで、カルボキシル基含有量を所定の範囲内にて増減させて極性を変化させることができ、またカルボキシル基の静電反発や微細化処理によって、セルロース繊維の平均繊維径、平均繊維長、平均アスペクト比等を制御することができる。
【0031】
本発明で用いる第1液には、前述した微細セルロース繊維に加えて、1)層状無機化合物及び2)架橋剤からなる群から選択される1種以上を含有させることができる。前記1)及び2)の成分は、ガスバリア性積層体のガスバリア性を高める目的で使用される。以下、前記1)及び2)の各成分について説明する。
【0032】
本発明で用いる層状無機化合物としては、層状の構造を有する結晶性の無機化合物を用いることができる。無機化合物の具体例としては、カオリナイト族、スメクタイト族、マイカ族等に代表される粘土鉱物を挙げることができる。カオリナイト族の粘土鉱物としては、例えばカオリナイトが挙げられる。スメクタイト族の粘土鉱物としては、例えばモンモリロナイト、ベントナイト、サポナイト、ヘクトライト、パイデライト、スティブンサイト、ノントロナイトが挙げられる。マイカ族の粘土鉱物としては、例えばバーミキュライト、ハロイサイト、テトラシリシックマイカが挙げられる。また、層状複水酸化物であるハイドロタルサイト等を用いることもできる。
【0033】
層状無機化合物として粘土鉱物以外のものを用いることも可能である。そのような化合物としては、例えば層状の構造を有する、チタン酸塩、ニオブ酸塩、マンガン酸塩、リン酸塩、酸化スズ、酸化コバルト、酸化銅、酸化鉄、酸化ニッケル、酸化白金、酸化ルテニウム、酸化ロジウム等の金属酸化物、あるいはこれらの成分元素の複合酸化物等が挙げられる。またグラファイトを用いることもできる。
【0034】
以上の各種の層状無機化合物は、天然のものでも良く、あるいは合成されたものでも良い。これら各種の層状無機化合物は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。特に、前記の層状無機化合物のうち、モンモリロナイト、テトラシリシックマイカは、水蒸気バリア性又は高湿度雰囲気中での酸素バリア性が特に高いことから好適に用いられる。
【0035】
層状無機化合物は、その平均粒径が、好ましくは0.01〜10μmであり、更に好ましくは0.1〜60μmであり、一層好ましくは0.1〜4μmである。この範囲の平均粒径を有する層状無機化合物を用いることで、ガスバリア性積層体における層状無機化合物の分散性を良好にすることができ、ひいてはガスバリア性積層体のガスバリア性を一層高めることができる。平均粒径は次の方法で測定される。まず、層状無機化合物をイオン交換水で0.05質量%に希釈する。レーザー回折式粒度分布計(SALD−300V、解析ソフトWingSALD−300V、島津製作所製)を用いて粒度分布を測定する。粒度分布の平均値を算出し、これを平均粒径として定義する。尚、屈折率は、モンモリロナイト、マイカ、テトラシリシックマイカ、タルク、サポナイト、酸化マグネシウムを1.6とし、チタン酸塩を2.6とする。
【0036】
本発明で用いる架橋剤としては、反応性官能基を有する架橋剤が好ましく用いられ、特に、反応性官能基を1分子中に2つ以上含む化合物が好ましい。反応性官能基としては、例えば、エポキシ基、アルデヒド基、アミノ基、カルボキシル基、イソシアネート基、ヒドラジド基、オキサゾリン基、アルコキシド基、メチロール基、シラノール基、水酸基等が挙げられる。架橋剤は、その1分子中にこれらの反応性官能基の2種以上を含んでいても良い。
【0037】
架橋剤としては、分子量が小さいものの方が好ましく、例えば、分子量が500以下のものが好ましく、250以下のものがより好ましい。特に、後述するように、第2液に架橋剤を含有させる場合には、先に基材上に塗布されて形成された第1液によるガスバリア性被膜に、第2液中の架橋剤を浸透させ易くする観点から、架橋剤としては分子量が小さいもの、とりわけ前記範囲にあるものが好ましい。
【0038】
好ましい架橋剤としては、アジピン酸ジヒドラジド(分子量174)、グリオキサール(分子量58)、ブタンテトラカルボン酸(分子量234)、クエン酸(分子量192)を挙げることができる。
【0039】
本発明で用いる第1液は、前述した成分を液媒体に分散させて得られる。第1液において用いられる液媒体としては、水が好ましく、それ以外にも水に可溶な有機溶媒(アルコール類、エーテル類、ケトン類等)と水との混合溶媒を用いることができる。
【0040】
第1液における微細セルロース繊維の濃度は0.05〜30質量%、特に0.5〜5質量%であることが好ましい。第1液における微細セルロース繊維の濃度を前記範囲とすることで、第1液の粘度が塗布に適したものとなる。第1液の粘度は、例えば10〜5000mPa・sであることが好ましい。
【0041】
また、第1液に層状無機化合物を含有させる場合、第1液中における層状無機化合物と微細セルロース繊維との質量比(層状無機化合物/微細セルロース繊維)は、好ましくは0.01〜100であり、更に好ましくは0.01〜10である。
また、第1液に架橋剤を含有させる場合、第1液中における架橋剤と微細セルロース繊維との質量比(架橋剤/微細セルロース繊維)は、好ましくは0.001〜0.5であり、更に好ましくは0.005〜0.3である。
第1液における前記各成分の対微細セルロース繊維量を前記範囲とすることで、ガスバリア性被膜(本発明の実施によって基材上に形成される層)の透明性を維持しつつ、ガスバリア性を向上させることができる。
【0042】
また、本発明で用いる第2液は、1)層状無機化合物、2)架橋剤、3)無機金属塩及び4)有機金属塩からなる群から選択される1種以上を必須成分として含有している。前記1)〜4)の成分は、ガスバリア性積層体のガスバリア性を高める目的で使用される。これら各成分のうち、前記1)及び2)については、それぞれ前述した通りであり、以下、前記3)及び4)の各成分について説明する。
【0043】
本発明で用いる無機金属塩としては、無機酸と金属とを含む無機塩基の塩で、1価金属を含む無機金属塩及び多価金属を含む無機金属塩から選ばれるものを挙げることができる。1価金属を含む無機金属塩としては、ナトリウム、カリウム、リチウム、銀等のハロゲン酸塩(塩化物等)、炭酸塩、硫酸塩、リン酸塩等が挙げられる。多価金属を含む無機金属塩としては、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、銅、金、アルミ等のハロゲン酸塩(塩化物等)、炭酸塩、硫酸塩、リン酸塩等が挙げられる。
【0044】
好ましい無機金属塩としては、塩化ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウムを挙げることができる。
【0045】
本発明で用いる有機金属塩としては、有機酸と金属とを含む有機塩基の塩で、1価金属を含む有機金属塩及び多価金属を含む有機金属塩から選ばれるものを挙げることができる。1価金属を含む有機金属塩としては、ナトリウム、カリウム、リチウム、銀等の酢酸塩、クエン酸塩等が挙げられる。多価金属を含む有機金属塩としては、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、銅、金、アルミ等の酢酸塩、クエン酸塩等が挙げられる。
【0046】
好ましい有機金属塩としては、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、酢酸マグネシウムを挙げることができる。
【0047】
第2液に層状無機化合物を含有させる場合、第2液中における層状無機化合物と第1液及び第2液中における微細セルロース繊維との質量比(層状無機化合物/微細セルロース繊維)は、好ましくは0.01〜100であり、更に好ましくは0.01〜10である。ここで、「第1液及び第2液中における微細セルロース繊維の質量」とは、第1液中における微細セルロース繊維の質量と第2液中における微細セルロース繊維の質量との総和を意味し、第2液中に微細セルロース繊維が含まれていない場合、該総和は、第1液中における微細セルロース繊維の質量に等しい。
また、第2液に架橋剤を含有させる場合、第2液中における架橋剤と第1液及び第2液中における微細セルロース繊維との質量比(架橋剤/微細セルロース繊維)は、好ましくは0.001〜0.5であり、更に好ましくは0.005〜0.3である。
また、第2液に無機金属塩を含有させる場合、第2液中における無機金属塩の量は、第1液及び第2液中における微細セルロース繊維を構成するセルロースのカルボキシル基1モルに対して、好ましくは0.5〜50モル、更に好ましくは10〜50モルである。
また、第2液に有機金属塩を含有させる場合、第2液中における有機金属塩の量は、第1液及び第2液中における微細セルロース繊維を構成するセルロースのカルボキシル基1モルに対して、好ましくは0.5〜50モル、更に好ましくは0.5〜15モルである。
【0048】
本発明で用いる第1液と第2液とは、互いに組成が異なっていても良く、同じであっても良い。例えば第2液は、前記1)〜4)の成分の1種以上に加えて更に微細セルロース繊維を含有していても良い。
【0049】
好ましい第1液としては、微細セルロース繊維、層状無機化合物及び液媒体としての水を含むものが挙げられる。
好ましい第2液としては、架橋剤、無機金属塩及び有機金属塩からなる群から選択される1種以上並びに液媒体としての水を含むものが挙げられる。
【0050】
本発明のガスバリア性積層体の製造方法は、基材の一面に、第1液を塗布する第1塗布工程と、該基材における第1液の被塗布部に、第2液を塗布する第2塗布工程とを有する。本発明で用いる基材は、前述した第1液及び第2液が塗布可能なものであれば良く、例えば、所望形状及び大きさのフィルム、シート、織布、不織布等の薄状物、各種形状及び大きさの箱やボトル等の立体容器等の成形体を用いることができる。これらの成形体は、紙、板紙、プラスチック、金属(多数の穴の開いたものや金網状のもので、主として補強材として使用されるもの)又はこれらの複合体等からなるものを用いることができ、それらの中でも、紙、板紙等の植物由来材料、生分解性プラスチック等の生分解性材料又はバイオマス由来材料にすることが好ましい。基材となる成形体は、同一又は異なる材料(例えば接着性や濡れ性向上剤)の組み合わせからなる多層構造にすることもできる。
【0051】
基材(成形体)となるプラスチックは、用途に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ナイロン6、66、6/10、6/12等のポリアミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、脂肪族ポリエステル、ポリ乳酸(PLA)、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート等のポリエステル、セルロース等のセロハン、三酢酸セルロース(TAC)等から選ばれる1又は2以上を用いることができる。基材の厚みは特に制限されるものではなく、用途に応じた強度が得られるように適宜選択すれば良く、例えば、1〜1000μmの範囲にすることができる。また、基材(成形体)としては、塗布する液に対する濡れ性を改善する為に、適宜コロナ放電処理等の表面処理を行ったものを用いることができる。
【0052】
第1液及び第2液の基材への塗布方法としては、公知の塗布方式を利用することができ、例えば、ロールコート方式、ダイコート方式、スライドコート方式、バーコート方式、スプレーコート方式等を利用することができる。本発明のガスバリア性積層体の製造方法においては、所定の塗布手段(第1の塗布装置)により第1液を塗布した後、別の塗布手段(第2の塗布装置)により第2液を塗布しても良く、あるいは2種以上の塗布液を塗布可能な塗布ヘッドを備えた塗布装置を用いて第1液及び第2液を順次塗布しても良い。
【0053】
また、本発明のガスバリア性積層体の製造方法においては、第1塗布工程の実施後、A)基材における第1液の被塗布部が湿潤状態のうちに第2塗布工程を実施する、いわゆるウェット・オン・ウェット方式の塗布方法を用いても良く、あるいはB)基材における第1液の被塗布部を乾燥させた後に第2塗布工程を実施する、いわゆるウェット・オン・ドライ方式の塗布方法を用いても良い。これらのうち、特にウェット・オン・ドライ方式の塗布方法は、ガスバリア性(特に酸素バリア性)に特に優れ、且つ均一な厚みのガスバリア性被膜を有するガスバリア性積層体が得られるため、本発明で好ましく用いられる。
【0054】
図1には、本発明のガスバリア性積層体の製造方法をウェット・オン・ウェット方式の塗布方法を用いて実施する態様の一例が示されている。図1に示す塗布装置は、可撓性基材10の裏面10b側を保持するバックアップロール1と、バックアップロール1にヘッド先端が対向するように配置された塗布ヘッド2Aとを備えている。塗布ヘッド2Aは、2種の塗布液を塗布可能な塗布ヘッドであり、基材10の走行方向Aの上流側から下流側に所定間隔を置いて配置された2つのスロット21,22を備えている。第1液F1は、連続的に且つ一定の流量で送液可能な定量ポンプ等の定量送液手段(図示せず)により、液供給口(図示せず)を経て液溜め部23に供給され、スロット21から吐出される。また、第2液F2は、同様の経路を経て液溜め部24に供給され、スロット22から吐出される。
【0055】
図1に示す塗布装置を用いてガスバリア性積層体を連続的に製造する方法、即ち、ウェット・オン・ウェット方式の塗布方法を用いた本発明のガスバリア性積層体の製造方法の一実施態様について説明する。先ず、基材10をバックアップロール1に巻き付くようにして図中A方向に走行させ、走行中の基材10の表面10aに、スロット21から吐出された第1液F1を塗布する。続いて、基材10の表面10aにおける第1液F1の被塗布部(塗膜)30が湿潤状態のうちに(乾燥する前に)、該被塗布部30に、スロット22から吐出された第2液F2を塗布する。こうして、基材10の表面10a上に、第1液F1及び第2液F2を順次塗布してなる塗膜31が形成される。尚、図1では、説明容易の観点から、塗膜31を2層構造として記載しているが、実際の塗膜31は2層構造とは限らず、通常は単層構造である。
【0056】
こうして基材10の表面10a上に形成された塗膜31を自然乾燥又は加熱強制乾燥することで、塗膜31はガスバリア性被膜となり、これにより目的とする、基材上にガスバリア性被膜が形成されたガスバリア性積層体が得られる。塗膜31は、自然乾燥させるよりも加熱強制乾燥させる方が、得られるガスバリア性積層体(ガスバリア性被膜)のガスバリア性、特に高湿度雰囲気中での酸素バリア性が向上する。加熱強制乾燥させる場合、40〜300℃、特に60〜200℃で塗膜31を加熱することが好ましい。加熱の手段としては、例えば電気乾燥炉(自然対流式又は強制対流式)、熱風循環式の乾燥炉、遠赤外線による加熱と熱風循環を併用した乾燥炉、加熱しながら減圧できる減圧乾燥炉を用いた方法等を採用することができる。加熱時間は、塗膜31の乾燥状態に応じ適宜設定すればよい。
【0057】
また図2には、本発明のガスバリア性積層体の製造方法をウェット・オン・ドライ方式の塗布方法を用いて実施する態様の一例が示されている。尚、図2に示す実施態様については、前述した図1に示す実施態様と異なる構成部分を主として説明し、同様の構成部分は同一の符号を付して説明を省略する。特に説明しない構成部分は、図1に示す実施態様についての説明が適宜適用される。図2に示す塗布装置における塗布ヘッド2Bは、1種の塗布液を塗布可能な塗布ヘッドであり、第2液F2を吐出する1つのスロット21を備えている。
【0058】
図2に示す塗布装置を用いてガスバリア性積層体を連続的に製造する方法、即ち、ウェット・オン・ドライ方式の塗布方法を用いた本発明のガスバリア性積層体の製造方法の一実施態様について説明する。先ず、基材10の表面10aに、図示しない塗布装置により予め第1液F1を塗布・乾燥して、乾燥状態の被塗布部(ガスバリア性被膜)32を形成する。第1液F1の塗布・乾燥は、前述した図1に示す実施態様における塗布液の塗布・乾燥と同様の方法で実施することができる。そして、この基材10を、ガスバリア性被膜32が塗布ヘッド2Bと対向するように且つバックアップロール1に巻き付くようにして図中A方向に走行させ、走行中の基材10のガスバリア性被膜32に、スロット21から吐出された第2液F2を塗布する。こうして、基材10の表面10a上に、第1液F1及び第2液F2を順次塗布してなるガスバリア性被膜33が形成される。尚、図2では、説明容易の観点から、ガスバリア性被膜33を2層構造として記載しているが、実際の被膜33は2層構造とは限らず、通常は単層構造である。その後、必要に応じ、ガスバリア性被膜33を自然乾燥又は加熱強制乾燥することにより、目的とする、基材上にガスバリア性被膜が形成されたガスバリア性積層体が得られる。
【0059】
尚、本発明のガスバリア性積層体の製造方法をウェット・オン・ウェット方式の塗布方法を用いて実施する場合、図1に示す如き、2種以上の塗布液を塗布可能な塗布ヘッドを用いる方法のみならず、図2に示す如き、1種の塗布液を塗布可能な塗布ヘッドを2つ用いる方法を利用しても良い。例えば、塗布装置を用いて基材上に第1液を塗布して塗膜を形成し、直後に(該塗膜が湿潤状態のうちに)、該塗布装置と同じ又は異なる塗布装置を用いて該塗膜上に第2液を塗布しても良い。
【0060】
本発明の実施によって得られるガスバリア性積層体は、基材の一面上に、第1液及び第2液を順次塗布してなるガスバリア性被膜が形成されたものであり、該ガスバリア性被膜には、少なくとも微細セルロール繊維が含有されている。該ガスバリア性被膜の膜厚は、ガスバリア性積層体の用途等に応じて適宜設定することができ、通常20〜5000nmの範囲で設定される。ガスバリア性被膜の膜厚の調整は、第1液及び第2液の塗布速度(基材の走行速度)や第1液及び第2液の流量(塗布装置における塗布ヘッドへの液の供給速度)等を調整することによって実施できる。
【0061】
ところで、前述したように、層状無機化合物のガスバリア性被膜への添加は、ガスバリア性積層体(ガスバリア性被膜)のガスバリア性の向上に有効ではあるが、層状無機化合物の添加量が多くなると、ガスバリア性被膜の透明性が低下する傾向がある。本発明者らは、ガスバリア性被膜のガスバリア性及び透明性について種々検討したところ、層状無機化合物を第1液及び/又は第2液に含有させつつ、層状無機化合物を含有する塗布液(第1液、第2液)の塗膜を薄くすることにより、ガスバリア性に優れ透明性の高いガスバリア性被膜が得られることを知見した。斯かる知見に基づきガスバリア性と透明性とを高レベルで両立させる観点から、第1液に層状無機化合物を含有させた場合、第1液を塗布して得られる塗膜の膜厚は、好ましくは10〜4000nm、更に好ましくは100〜3000nmであり、第2液に層状無機化合物を含有させた場合、第2液を塗布して得られる塗膜の膜厚は、好ましくは10〜4000nm、更に好ましくは100〜3000nmである。ガスバリア性被膜(第1液、第2液の塗膜)の膜厚(乾燥塗膜の膜厚)は、塗布液の組成や塗布条件等を用いて後述する方法により算出される。また、第1液を塗布して得られる塗膜の膜厚と第2液を塗布して得られる塗膜の膜厚との比(第2液を塗布して得られる塗膜の膜厚/第1液を塗布して得られる塗膜の膜厚)は、好ましくは0.01〜1、更に好ましくは0.1〜0.5である。
【0062】
ガスバリア性被膜の透明性は、曇り度(ヘーズ)によって評価することができる。曇り度(%)は、JIS−K7136:2000(ISO 14782)に準じて測定され、測定装置として日本電色工業(株)のヘーズメーター(NDH5000)を用いることができる。尚、後述する実施例及び比較例に係るガスバリア性被膜の曇り度は、前記方法に従い23℃、湿度50%RHで評価対象の被膜の曇り度を3回測定し、それらの平均を算出することによって得られたものである。曇り度(ヘーズ)の値が小さいほど、被膜の透明性が高いと評価できる。
【0063】
本発明の実施によって得られるガスバリア性積層体は、各種のガス、例えば大気中に含まれるガスである酸素、水蒸気、窒素、二酸化炭素等に対するバリア性の高いものである。具体的には、50%RHにおける酸素透過度が、好ましくは0.01〜20(×10-5 cm3/m2・day・Pa)、更に好ましくは0.01〜5(×10-5cm3/m2・day・Pa)という低レベルのものである。また、水蒸気透過度が5〜24(g/m2・day)、好ましくは5〜22(g/m2・day)という低レベルのものである。酸素透過度及び水蒸気透過度は次の方法で測定される。
【0064】
(1)酸素透過度(cm3/(m2・day・Pa))
JIS K−7126−2 付属書A(等圧法)の測定法に準拠して、酸素透過率測定装置OX−TRAN2/21(型式ML&SL、MODERN CONTROL社製)を用い測定した。測定環境は、温度23℃で一定とし、湿度は50%RH、70%RHでそれぞれ評価した。例えば「50%RHにおける酸素透過度」は、23℃、湿度50%RHの酸素ガス、23℃、湿度50%の窒素ガス(キャリアガス)の環境下で測定を行ったものである。
(2)水蒸気透過度(g/(m2・day))
JIS Z208に基づき、カップ法を用いて、40℃、90%RHの環境下の条件で測定した。
尚、酸素透過度及び水蒸気透過度はガスバリア性積層体を製造後、23℃、50%RHの環境下で24時間以上馴化したものを測定した。
【0065】
また、前記方法により測定されたガスバリア性積層体の酸素透過度を用いて、該ガスバリア性積層体を構成するガスバリア性被膜の酸素透過度を求めることができる。基材上にガスバリア性被膜が形成された構成のガスバリア性積層体において、各成分の酸素透過度は、以下の式の関係となることが知られている。下記式中、Cはガスバリア性積層体の酸素透過度、A1は基材の酸素透過度、A2はガスバリア性被膜の酸素透過度であり、単位は何れも(cm3/(m2・day・Pa))である。下記式にA1及び前記方法により測定されたCを代入し、ガスバリア性皮膜の酸素透過度A2を求める。基材の酸素透過度A1は、前記方法(Cの測定方法)に準じて測定することができる。
1/C=(1/A1)+(1/A2)
【0066】
本発明の実施によって得られるガスバリア性積層体は、前記の酸素、水蒸気等の複数のガスに対して遮断性を有するものだけでなく、ある特定のガスに対してのみ遮断性を有するものであってよい。例えば水蒸気バリア性は有さないが、酸素バリア性を有するガスバリア性積層体は、酸素の透過を選択的に阻害するバリア材として用いることができる。バリア性の対象となるガスは用途によって適宜選択される。
【0067】
本発明の実施によって得られるガスバリア性積層体は、その高いガスバリア性を利用して、例えば、食品、化粧品、医薬、医療器材、機械部品、電子機器及び衣料等の包装材料等の用途に好適に用いられる。
【実施例】
【0068】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。特に断らない限り、「%」は「質量%」を意味する。
【0069】
〔実施例1〕
(1)微細セルロース繊維の製造
針葉樹の漂白クラフトパルプ(製造会社:フレッチャー チャレンジ カナダ、商品名 「Machenzie」、CSF650ml)を天然繊維として用いた。TEMPOとしては、市販品(製造会社:ALDRICH、Free radical、98%)を用いた。次亜塩素酸ナトリウムとしては、市販品(製造会社:和光純薬工業(株) Cl:5%)を用いた。臭化ナトリウムとしては、市販品(製造会社:和光純薬工業(株))を用いた。先ず、針葉樹の漂白クラフトパルプ繊維100gを9900gのイオン交換水で十分に攪拌した後、パルプ質量100gに対し、TEMPO1.25%、臭化ナトリウム12.5%、次亜塩素酸ナトリウム28.4%をこの順で添加した。pHスタッドを用い、0.5M水酸化ナトリウムを滴下してpHを10.5に保持し、酸化反応を行った。酸化を120分行った後に滴下を停止し、酸化パルプを得た。イオン交換水を用いて酸化パルプを十分に洗浄し、次いで脱水処理を行った。その後、固形分濃度2.5%の酸化パルプ4160gとイオン交換水4000gをホモミキサー(特殊機化工業(株)製)によって回転数3000rpmで5分間攪拌した。その後マイルダー(太平洋機工(株)製)で流量9000g/分、回転数15000rpmで処理し、105μmのフィルターに1回通した。更にその後、アルティマイザー((株)スギノマシン)に流量600g/分、圧力245MPaで7回通す処理を行った。その操作によって繊維の微細化処理を行い、微細セルロース繊維の懸濁液を得た。懸濁液の固形分濃度は1.3%であった。この微細セルロース繊維の平均繊維径は3.1nm、平均アスペクト比は240、カルボキシル基含有量は1.2mmol/gであった。
【0070】
(2)ガスバリア性積層体の製造
マイカ(層状無機化合物、固形分濃度6%、製品名:NTS‐5、トピー工業(株)製)分散液97.5gと前記の微細セルロース繊維の懸濁液(固形分濃度1.3%)900gとを混合し、ホモミキサー(特殊機化工業(株)製)によって回転数3000rpmで5分間攪拌し、混合分散液(第1液)を得た。この混合分散液の固形分濃度は1.8%であった。
また、別途、グリオキサール(架橋剤、和光純薬工業(株)製)とイオン交換水を混合し、マグネチックスターラーで5分間攪拌し、1%の架橋剤分散液1(第2液)を得た。
そして、ウェット・オン・ウェット方式の塗布方法を用いて、基材(ポリエチレンテレフタラート、厚み25μm、50%RH及び70%RHにおける酸素透過度50×10-5cm3/(m2・day・Pa))上に第1液及び第2液を順次塗布した。即ち、ダイコート方式の塗布装置を用いて基材の一面上に前記混合分散液(第1液)を塗布して塗膜を形成し、直後に(該塗膜が湿潤状態のうちに)、スライドコート方式の塗布装置を用いて該塗膜上に第2液を塗布し、更に熱風循環式の乾燥炉を用いて該塗膜を加熱強制乾燥し、ガスバリア性被膜を得た。この時の塗布速度は1m/分、第1液の流量は11.3cc/分、第2液の流量は2.3cc/分であった。また、乾燥条件は第1段100℃・1分、第2段120℃・1分とした。このようにして目的とするガスバリア性積層体を得た。
【0071】
〔実施例2〕
第2液として架橋剤分散液1に代えて下記に示す無機金属塩分散液を用い且つ第2液の流量を0.83cc/分とした以外は実施例1と同様にしてガスバリア性積層体を得た。
無機金属塩分散液:硫酸マグネシウムとイオン交換水を混合し、マグネチックスターラーで24時間攪拌し、1mol/lの無機金属塩分散液(第2液)を得た。
【0072】
〔実施例3〕
ウェット・オン・ドライ方式の塗布方法を用い、第1液の塗布速度を3m/分、第1液の流量を39.6cc/分とし、且つ第2液の流量を2.8cc/分とした以外は実施例1と同様にしてガスバリア性積層体を得た。即ち、ダイコート方式の塗布装置を用いて基材の一面上に前記混合分散液(第1液)を塗布して塗膜を形成し、熱風循環式の乾燥炉を用いて該塗膜を加熱強制乾燥させて被膜を形成した後、スライドコート方式の塗布装置を用いて該被膜上に第2液を塗布し、更に熱風循環式の乾燥炉を用いて該被膜を加熱強制乾燥して、ガスバリア性被膜を有するガスバリア性積層体を得た。
【0073】
〔実施例4〕
第2液として架橋剤分散液1に代えて実施例2で用いた無機金属塩分散液を用い且つ第2液の流量を1.5cc/分とした以外は実施例3と同様にしてガスバリア性積層体を得た。
【0074】
〔実施例5〕
第2液として架橋剤分散液1に代えて下記に示す架橋剤分散液2を用い且つ第2液の流量を4.0cc/分とした以外は実施例3と同様にしてガスバリア性積層体を得た。
架橋剤分散液2:クエン酸(和光純薬工業(株)製)とイオン交換水を混合し、マグネチックスターラーで5分間攪拌し、1%の架橋剤分散液2(第2液)を得た。
【0075】
〔実施例6〕
第2液として架橋剤分散液1に代えて下記に示す架橋剤分散液3を用い且つ第2液の流量を2.3cc/分とした以外は実施例3と同様にしてガスバリア性積層体を得た。
架橋剤分散液3:ADH(アジピン酸ジヒドラジド、大塚化学(株)製)とイオン交換水を混合し、マグネチックスターラーで5分間攪拌し、1%の架橋剤分散液3(第2液)を得た。
【0076】
〔実施例7〕
第2液として架橋剤分散液1に代えて下記に示す架橋剤分散液4を用い且つ第2液の流量を2.3cc/分とした以外は実施例3と同様にしてガスバリア性積層体を得た。
架橋剤分散液4:ブタンテトラカルボン酸(和光純薬工業(株)製)とイオン交換水を混合し、マグネチックスターラーで5分間攪拌し、1%の架橋剤分散液3(第2液)を得た。
【0077】
〔実施例8〕
第1液として微細セルロース繊維とマイカとの混合分散液に代えて微細セルロース繊維の1.0%水分散液を用い且つ第1液の流量を38.5cc/分とし、更に第2液の流量を2.3cc/分とした以外は実施例3と同様にして、ガスバリア性被膜を有するガスバリア性積層体を得た。
【0078】
〔実施例9〕
実施例3において、第1液の塗布速度を1m/分、第1液の流量を12.4cc/分として所定の膜厚の下層を形成し、第2液として架橋剤分散液1に代えて混合分散液〔微細セルロース繊維とマイカ(微細セルロース繊維に対して30%)との混合分散液(固形分1.7%)〕を用い、且つ第2液の塗布速度を1m/分、第2液の流量を12.4cc/分としてダイコート方式の塗布装置を用いて前記下層上に第2液を塗布して所定の膜厚の上層を形成した以外は実施例3と同様にして、ガスバリア性被膜を有するガスバリア性積層体を得た。
【0079】
〔実施例10〕
実施例9において、第1液として微細セルロース繊維に代えて混合分散液〔微細セルロース繊維の1.3%水分散液と架橋剤(微細セルロース繊維に対して10%)〕を用い、第1液の塗布速度を3m/分、第1液の流量を36.2cc/分として所定の膜厚の下層を形成し、第2液として架橋剤分散液1に代えて混合分散液〔微細セルロース繊維とマイカ(微細セルロース繊維に対して50%)と架橋剤(微細セルロース繊維に対して10%)の混合分散液(固形分2.08%)〕を用い、且つ第2液の塗布速度を1m/分、第2液の流量を2.3cc/分として、前記下層上に所定の膜厚の上層を形成した以外は実施例9と同様にして、ガスバリア性被膜を有するガスバリア性積層体を得た。
【0080】
〔実施例11〕
実施例10において、第1液の塗布速度を3m/分、第1液の流量を36.2cc/分として所定の膜厚の下層を形成し、且つ第2液の塗布速度を1m/分、第2液の流量を6.8cc/分として、前記下層上に所定の膜厚の上層を形成した以外は実施例10と同様にして、ガスバリア性被膜を有するガスバリア性積層体を得た。
【0081】
〔比較例1〕
第1液の塗布速度を1m/分、第1液の流量を24.9cc/分とし、且つ第2液を塗布しなかった以外は実施例8と同様にして、ガスバリア性被膜を有するガスバリア性積層体を得た。
【0082】
〔評価〕
実施例及び比較例で得られたガスバリア性積層体について、下記方法に従って、基材上に形成されたガスバリア性被膜(乾燥塗膜)の膜厚を算出すると共に、前記方法に従って、ガスバリア性積層体の酸素透過度(C)、ガスバリア性被膜の酸素透過度(A2)、水蒸気透過度、曇り度(ヘーズ)をそれぞれ測定した。酸素透過度の測定環境は、温度は23℃で一定とし、湿度は50%RH、70%RHでそれぞれ測定した。それらの結果を下記表2に示す。下記表1には、第1液及び第2液の組成等を示す。
【0083】
<乾燥塗膜の膜厚の算出方法>
基材上に塗布する塗布液について、該塗布液を塗布し乾燥させて得られる乾燥塗膜の膜厚を、該塗布液の組成や塗布条件等を用いて算出する。具体的には、下記A)〜G)を順次算出する。下記D)、E)及びF)における塗布液成分xは、例えば微細セルロース繊維、層状無機化合物、架橋剤である。塗布液を複数回に分けて塗布する場合(第1液、第2液を順次塗布する場合)、各回毎に塗布液の乾燥塗膜の膜厚を算出し、算出された各塗膜の膜厚の総和を目的とする乾燥塗膜の膜厚(ガスバリア性被膜の膜厚)とする。
A)単位塗布長さ当たりの塗布液の塗布量G[cc/m]
B)単位塗布長さ当たりの塗布液の重量G´[g/m]
C)単位塗布長さ当たりの塗膜の重量m[g/m]
D)単位塗布長さ当たりの塗布液成分xの層の塗膜重量mx[g/m]
E)単位塗布長さ当たりの塗布液成分xの層の体積Vx[g/m]
F)乾燥状態の塗布液成分xの層の膜厚ddx[nm]
G)塗布液の乾燥塗膜の膜厚ddry[nm]
【0084】
以下に、実施例1を例にとり、ガスバリア性被膜(乾燥塗膜)の膜厚の算出方法を具体的に説明する。実施例1において、第1液の組成、塗布条件等は次の通りである。第1液の固形分比率c=1.8[%]、微細セルロース繊維(第1液成分)の添加割合cc=1/1.5、層状無機化合物(第1液成分)の添加割合cm=0.5/1.5、微細セルロース繊維の密度ρc=1.5[g/cm3]、層状無機化合物の密度ρm=3[g/cm3]、第1液の流量Q=11.3[cc/分]、第1液の塗布速度(ライン速度)v=1[m/分]、第1液の塗布幅b=20[cm]。
【0085】
実施例1の第1液について、前記A)〜G)を順次算出する。
前記A)に関し、単位塗布長さ当たりの塗布液の塗布量G[cc/m]、塗布液の流量Q[cc/分]、塗布速度(ライン速度)v[m/分]には次式の関係がある。G=Q÷v よって、単位塗布長さ当たりの第1液の塗布量G=11.3[cc/分]÷1[m/分]=11.3[cc/m]。
前記B)に関し、第1液の成分は約98質量%が水なので第1液の比重を1(1cc≒1g)とすると、単位塗布長さ当たりの第1液の重量G´=G×1=11.3[g/m]。
前記C)に関し、単位塗布長さ当たりの第1液の塗膜の重量m=G´×c=11.3[g/m]×1.8%=0.2034[g/m]。
前記D)及びE)については、第1液の各成分について、単位塗布長さ当たりの塗膜重量mx、体積Vxを順次算出する。第1液成分の1つである微細セルロース繊維に着目すると、単位塗布長さ当たりのセルロース繊維層の塗膜重量mc=m×cc=0.2034[g/m]×(1/1.5)=0.1356[g/m]。従って、単位塗布長さ当たりのセルロース繊維層の体積Vr=mc÷ρc=0.1356[g/m]÷1.5[g/cm3]=0.0904[cm3/m]。また、第1液成分の他の1つである層状無機化合物に着目すると、微細セルロース繊維と同様の計算により、単位塗布長さ当たりの層状無機化合物層の体積Vm=mm÷ρm=m×cm÷ρm=0.2034[cm3/m]×(0.5/1.5)÷3[g/cm3]=0.0226[cm3/m]。
前記F)に関し、第1液の塗布長さをNとすると、乾燥状態のセルロース繊維層の膜厚ddc=Vc×N÷(b×N/100)=0.0904[cm3/m]÷20[cm]÷100=0.0000452[cm]=452[nm]、乾燥状態の層状無機化合物層の膜厚ddm=Vm×N÷(b×N/100)=0.0226[cm3/m]÷20[cm]÷100=0.0000113[cm]=113[nm]。
前記G)に関し、第1液の乾燥塗膜の膜厚ddry-1=ddc+ddm=452[nm]+113[nm]=565[nm]。
【0086】
また、実施例1において、第2液の組成、塗布条件等は次の通りである。第2液の固形分比率c=1[%]、架橋剤(第2液成分)の密度ρn=1.27[g/cm3]、第2液の流量Q=2.3[cc/分]、第2液の塗布速度(ライン速度)v=1[m/分]、第2液の塗布幅b=20[cm]。
【0087】
実施例1の第2液について、第1液と同様にして前記A)〜G)を順次算出する。
前記A)に関し、単位塗布長さ当たりの第2液の塗布量G=2.3[cc/分]÷1[m/分]=2.3[cc/m]。
前記B)に関し、第2液の成分は約99質量%が水なので第2液の比重を1(1cc≒1g)とすると、単位塗布長さ当たりの第2液の重量G´=G×1=2.3[g/m]。
前記C)に関し、単位塗布長さ当たりの第2液の塗膜の重量m=G´×c=2.3[g/m]×1%=0.023[g/m]。
前記D)及びE)に関し、第2液成分である架橋剤に着目すると、単位塗布長さ当たりの架橋剤の層の体積Vn=mn÷ρn=0.023[g/m]÷1.27[g/cm3]=0.0181[cm3/m]。
前記F)に関し、第2液の塗布長さをNとすると、乾燥状態の架橋剤の層の膜厚ddn=Vn×N÷(b×N/100)=0.0181[cm3/m]÷20[cm]÷100=0.00000905[cm]=90.5[nm]。
前記G)に関し、第2液成分は架橋剤のみであるので、第2液の乾燥塗膜の膜厚ddry-2=ddn=90.5[nm]≒91[nm]。
【0088】
以上より、実施例1の乾燥塗膜の膜厚(ガスバリア性被膜の膜厚)=ddry-1+ddry-2=565[nm]+91[nm]=656[nm]。他の実施例及び比較例の膜厚についても実施例1と同様に算出した。
【0089】
【表1】

【0090】
【表2】

【0091】
表2に示す結果から明らかなように、実施例1〜11のガスバリア性積層体の酸素透過度(C)及びそのガスバリア性被膜の酸素透過度(A2)は、何れも比較例1のガスバリア性積層体よりも低く、湿度50%RHの湿度環境下でも高い酸素バリア性を有している。更に、実施例8以外の実施例では、湿度70%RHの湿度環境下でも高い酸素バリア性を有している。また、水蒸気透過度についても、実施例と比較例とで酸素透過度と同様の結果となり、実施例1〜11が高い水蒸気バリア性を有していることがわかる。以上のことから、微細セルロース繊維を含む第1液の塗布後に、重ねて、層状無機化合物、架橋剤、無機金属塩及び有機金属塩からなる群から選択される1種以上を含む、第2液を塗布することが、酸素バリア性や水蒸気バリア性の向上に有効であることがわかる。また、例えば実施例10と実施例11とは、層状無機化合物を含有する第2液の塗膜の膜厚のみが互いに相違するところ、該膜厚が相対的に小さい実施例10の方が、該膜厚が相対的に大きい実施例11よりも曇り度(ヘーズ)が小さく透明性が高い結果となった。このことから、層状無機化合物を含有する塗布液のある程度塗膜を薄くすることは、ガスバリア性と透明性との両立を図る上で有効であることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材に、セルロースのカルボキシル基含有量が0.1〜3mmol/gの微細セルロース繊維を含む、第1液を塗布する第1塗布工程と、
前記基材における前記第1液の被塗布部に、層状無機化合物、架橋剤、無機金属塩及び有機金属塩からなる群から選択される1種以上を含む、第2液を塗布する第2塗布工程とを有する、ガスバリア性積層体の製造方法。
【請求項2】
前記第1液が、層状無機化合物及び架橋剤からなる群から選択される1種以上を含む、請求項1記載のガスバリア性積層体の製造方法。
【請求項3】
前記第1液の被塗布部が湿潤状態のうちに、前記第2塗布工程を実施する、請求項1又は2記載のガスバリア性積層体の製造方法。
【請求項4】
前記第1液の被塗布部を乾燥させた後、前記第2塗布工程を実施する、請求項1又は2記載のガスバリア性積層体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−224545(P2011−224545A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−48539(P2011−48539)
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成19年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「ナノテク・先端部材実用化研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】