説明

ガスバリア性積層体

【課題】 高温高湿度下に長時間保存されても優れたガスバリア性を有するガスバリア性積層体を、従来よりも温和な条件かつ工業的に効率よく生産可能な方法で提供する。
【解決手段】 プラスチック基材(I)に直に、又はアンカーコート層を介して基材上に、ポリアルコール系ポリマー(A)とポリカルボン酸系ポリマー(B)とを含有するガスバリア層形成用塗料(C)から形成されるガスバリア層(II)と、1価の金属化合物(D)および/または2価以上の金属化合物(E)を含有するオーバーコート層形成用塗料(F)から形成されるオーバーコート層(III)と、トップコート層形成用塗料(G)から形成されるトップコート層(IV)とが順次積層されてなるガスバリア性積層体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温高湿度下に長時間保存されても優れたガスバリア性を有するガスバリア性積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミドフィルム、ポリエステルフィルム等の熱可塑性樹脂フィルムは、強度、透明性、成形性に優れていることから、包装材料として幅広い用途に使用されている。しかし、これらの熱可塑性樹脂フィルムは酸素等のガス透過性が大きいので、一般食品、レトルト処理食品、化粧品、医療用品、農薬等の包装に使用した場合、長期間保存する内にフィルムを透過した酸素等のガスにより内容物の変質が生じることがある。
【0003】
そこで、熱可塑性樹脂の表面にポリ塩化ビニリデン(以下PVDCと略記する)のエマルジョン等をコーティングし、ガスバリア性の高いPVDC層を形成せしめた積層フィルムが食品包装等に幅広く使用されてきた。しかし、PVDCは焼却時に酸性ガス等の有機物質を発生するため、近年環境への関心が高まるとともに他材料への移行が強く望まれている。
【0004】
PVDCに代わる材料としてポリビニルアルコール(以下PVAと略記する)は有毒ガスの発生もなく、低湿度雰囲気下でのガスバリア性も高いが、湿度が高くなるにつれて急激にガスバリア性が低下するので、水分を含む食品等の包装には用いることが出来ない場合が多い。
【0005】
PVAの高湿度下でのガスバリア性の低下を改善したポリマーとして、ビニルアルコールとエチレンの共重合体(EVOH)が知られている。しかし、高湿度でのガスバリア性を実用レベルに維持するためにはエチレンの共重合比をある程度高くする必要があり、このようなポリマーは水に難溶となる。
そこで、エチレンの共重合比の高いEVOHを用いてコーティング剤を得るには、有機溶媒または水と有機溶媒の混合溶媒を用いる必要があり、環境問題の観点からも望ましくなく、また有機溶媒の回収工程などを必要とするため、コスト高になるという問題がある。
【0006】
水溶性のポリマーからなる液状組成物をフィルムにコートし、高湿度下でも高いガスバリア性を発現させる方法として、PVAとポリアクリル酸またはポリメタクリル酸の部分中和物とからなる水溶液をフィルムにコートし熱処理することにより、両ポリマーをエステル結合により架橋する方法が提案されている(特許文献1〜7参照)。
しかし、上記公報に提案される方法では、高度なガスバリア性を発現させるためには高温での加熱処理もしくは長時間の加熱処理が必要であり、製造時に多量のエネルギーを要するため環境への負荷が少なくない。
また、高温で熱処理すると、バリア層を構成するPVA等の変色や分解の恐れが生じる他、バリア層を積層しているプラスチックフィルム等の基材に皺が生じるなどの変形が生じ、包装用材料として使用できなくなる。プラスチック基材の劣化を防ぐためには、高温加熱に十分耐え得るような特殊な耐熱性フィルムを基材とする必要があり、汎用性、経済性の点で難がある。
一方、熱処理温度が低いと、非常に長時間処理する必要があり、生産性が低下するという問題点が生じる。
【0007】
また、PVAに架橋構造を導入することで、上記PVAフィルムの問題点を解決するための検討がなされている。しかし、一般的に架橋密度の増加と共にPVAフィルムの酸素ガスバリア性の湿度依存性は小さくなるが、その反面PVAフィルムが本来有している乾燥条件下での酸素ガスバリア性が低下してしまい、結果として高湿度下での良好な酸素ガスバリア性を得ることは非常に困難である。
尚、一般にポリマー分子を架橋することにより耐水性は向上するが、ガスバリア性は酸素等の比較的小さな分子の侵入や拡散を防ぐ性質であり、単にポリマーを架橋してもガスバリア性が得られるとは限らず、たとえば、エポキシ樹脂やフェノール樹脂などの三次元架橋性ポリマーはガスバリア性を有していない。
【0008】
PVAのような水溶性のポリマーを用いながらも高湿度下でも高いガスバリア性を有するガスバリア性積層体を、従来よりも低温もしくは短時間の加熱処理で提る方法が提案されている(特許文献8〜10参照)。
【0009】
特許文献8〜10に記載されるコート剤は、水溶性のポリマーを用いながらも特許文献1〜7に記載されるコート剤よりも低温もしくは短時間の加熱で、高湿度下で従来よりも高いガスバリア性を有するガスバリア性積層体を形成し得る。
しかし、特許文献1〜10に記載される、加熱によって、PVA中の水酸基とポリアクリル酸中もしくはエチレン−マレイン酸共重合体中のCOOHとをエステル化反応させたり、金属架橋構造を導入するという方法では、高湿度下におけるガスバリア性の向上には限界があるといった問題点があった。
【0010】
上記技術を改善する方法として、PVAのような水溶性のポリマーを用いながらも高湿度下でも高いガスバリア性を有するガスバリア性積層体を、従来よりも低温もしくは短時間の加熱処理で、かつさらに高いガスバリア性を得る方法が提案されている(特許文献11〜14参照)。これらの文献にはPVA、およびエチレン−マレイン酸共重合体を特定の金属塩で部分中和した組成物からなる混合物を加熱処理することにより特許文献8〜10に記載されたものよりも優れたガスバリア性塗膜が得られること、そのようにして得られたガスバリア性塗膜を水の存在下、または特定の金属イオンを含有する水の存在下に熱処理することによりさらに優れたガスバリア性塗膜が得られることが記載されている。これらの技術ではPVA中の水酸基とエチレン−マレイン酸共重合体中のCOOHとをエステル化反応させたり、特定の金属イオンにより金属架橋を導入した後、さらに水の存在下で金属架橋構造を強化することによりバリア性を示すことが推測される。水(または特定の金属を含む水)の存在下において熱処理を行う方法として、温水浸漬、温水噴霧、高湿度下での保存、水蒸気加熱などの方法が挙げられており、処理温度90℃以上、処理時間1分以上が好ましいとされている。しかしながらこのような方法では、ガスバリア層が塗工されたフィルムを比較的長時間水と接触させる必要があることから、生産工程の煩雑化、生産性の低下が予想される。さらには処理工程におけるフィルムの熱や吸水による影響が多大となるため、たとえばポリアミドのような吸水性の高いフィルムを基材(I)として用いた場合などには、変形やカールといった品質に対する悪影響が問題であった。
【0011】
以上述べたように、高湿度下におけるガスバリア性のさらなる向上が益々要求されつつある今日、特許文献1〜14に記載される技術だけでは、より高性能、高品質のガスバリア性積層体を、工業的に効率よく得ることは困難であった。また、コート剤中に金属化合物を含有することにより造膜性が悪化し、ヒートシール層とのラミネート構成体を作製した際に、密着力、耐熱性、耐水性の低下を及ぼし、実用性能の点で非常に難があるものであった。
【0012】
【特許文献1】特開平06−220221号公報
【特許文献2】特開平07−102083号公報
【特許文献3】特開平07−205379号公報
【特許文献4】特開平07−266441号公報
【特許文献5】特開平08−041218号公報
【特許文献6】特開平10−237180号公報
【特許文献7】特開2000−000931号公報
【特許文献8】特開2001−323204号公報
【特許文献9】特開2002−020677号公報
【特許文献10】特開2002−241671号公報
【特許文献11】特開2002−282284号公報
【特許文献12】特開2003−105897号公報
【特許文献13】特開2003−289705号公報
【特許文献14】特開2003−334707号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の課題は、高温高湿度下に長時間保存されても優れたガスバリア性を有するガスバリア性積層体を、従来よりも温和な条件かつ工業的に効率よく生産可能な方法で提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、鋭意研究の結果、特定の樹脂組成のガスバリア性塗料をプラスチック基材上に塗布、加熱処理して形成したガスバリア層と、特定の金属化合物を含有するオーバーコート層、およびトップコート層を順次積層することにより、上記課題を解決した積層体が得られることを見出し本発明に到達した。
すなわち、本発明は、プラスチック基材(I)に直に、又はアンカーコート層を介して基材上に、
ポリアルコール系ポリマー(A)とポリカルボン酸系ポリマー(B)とを含有するガスバリア層形成用塗料(C)から形成されるガスバリア層(II)と、
1価の金属化合物(D)および/または2価以上の金属化合物(E)を含有するオーバーコート層形成用塗料(F)から形成されるオーバーコート層(III)と、
トップコート層形成用塗料(G)から形成されるトップコート層(IV)とが順次積層されてなるガスバリア性積層体に関する。
さらに、トップコート層形成用塗料(G)が、水溶液または水分散液であることを特徴とする上記記載のガスバリア性積層体に関する。
さらに、オーバーコート層形成用塗料(F)が、有機溶剤系塗液であることを特徴とする上記いずれか記載のガスバリア性積層体に関する。
さらに、ポリアルコール系ポリマー(A)が、ポリビニルアルコール、エチレンとビニルアルコールとの共重合体、または糖類であることを特徴とする上記いずれか記載のガスバリア性積層体に関する。
さらに、ポリカルボン酸系ポリマー(B)が、オレフィン−マレイン酸共重合体及び/又はポリ(メタ)アクリル酸であることを特徴とする上記いずれか記載のガスバリア性積層体に関する。
さらに、オーバーコート層(III)が、ガラス転移温度が70℃以下のポリエステルポリオールとポリイソシアネートとから形成されることを特徴とする上記いずれか記載のガスバリア性積層体に関する。
さらに、2価以上の金属化合物(E)が、Mgおよび/またはCaの水酸化物、酸化物、炭酸塩のうち一種以上を含有することを特徴とする上記いずれか記載のガスバリア性積層体に関する。
さらに、2価以上の金属化合物(E)が、分散剤(H)を用いて分散されていることを特徴とする上記記載のガスバリア性積層体に関する。
さらに、プラスチック基材(I)に直に、又はアンカーコート層を介して基材上に、
ポリアルコール系ポリマー(A)とポリカルボン酸系ポリマー(B)とを含有するガスバリア層形成用塗料(C)から形成されるガスバリア層(II)と、
1価の金属化合物(D)および/または2価以上の金属化合物(E)を含有するオーバーコート層形成用塗料(F)から形成されるオーバーコート層(III)と、
トップコート層形成用塗料(G)から形成されるトップコート層(IV)とを順次積層することを特徴とするガスバリア性積層体の製造方法に関する。
さらに、上記ガスバリア層積層体のトップコート層(IV)に直に、または印刷層(V)を介してラミネート接着剤層(VI)、ヒートシール層(VII)の順に積層してなる積層物に関する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の積層体により、高温高湿度下に長時間保存されても優れたガスバリア性を有するガスバリア性積層体を、従来よりも温和な条件かつ工業的に効率よく生産可能な方法で提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のガスバリア積層体は、プラスチック基材(I)に直に、又はアンカーコート層を介して基材上に、ポリアルコール系ポリマー(A)とポリカルボン酸系ポリマー(B)とを含有するガスバリア層形成用塗料(C)から形成されるガスバリア層(II)と、1価の金属化合物(D)および/または2価以上の金属化合物(E)を含有するオーバーコート層形成用塗料(F)から形成されるオーバーコート層(III)と、トップコート層形成用塗料(G)から形成されるトップコート層(IV)とが順次積層されてなるガスバリア性積層体である。
【0017】
[プラスチック基材(I)]
ここで用いられるプラスチック基材(I)は、熱成形可能な熱可塑性樹脂から押出成形、射出成形、ブロー成形、延伸ブロー成形或いは絞り成形等の手段で製造された、フィルム状基材の他、ボトル、カップ、トレイ等の各種容器形状を呈する基材であってもよく、フィルム状であることが好ましい。
また、プラスチック基材(I)は、単一の層から構成されるものであってもよいし、あるいは例えば同時溶融押出しや、その他のラミネーションによって複数の層から構成されるものであってもよい。
【0018】
プラスチック基材(I)を構成する熱可塑性樹脂としては、オレフィン系共重合体、ポリエステル、ポリアミド、スチレン系共重合体、塩化ビニル系共重合体、アクリル系共重合体、ポリカーボネート等が挙げられ、オレフィン系共重合体、ポリエステル、ポリアミドが好ましい。
【0019】
オレフィン系共重合体としては、低−、中−或いは高−密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン−共重合体、アイオノマー、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体等が、
ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート、ポリエチレンナフタレート等が、
ポリアミドとしては、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6,10、ナイロン4,6、メタキシリレンアジパミド等が、
スチレン系共重合体としては、ポリスチレン、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン−アクリロニトリル共重合体(ABS樹脂)等が、
塩化ビニル系共重合体としては、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体等が、
アクリル系共重合体としては、ポリメチルメタクリレート、メチルメタクリレート・エチルアクリレート共重合体等が、それぞれ挙げられる。
これらの熱可塑性樹脂は、単独で使用してもよいし、2種以上を混合し使用しても良い。
【0020】
好ましい熱可塑性樹脂としては、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン4,6等のポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート等の芳香族ポリエステル樹脂、ポリ乳酸などの脂肪族ポリエステル樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン樹脂またはそれらの混合物が挙げられる。
【0021】
前記の溶融成形可能な熱可塑性樹脂には、所望に応じて顔料、酸化防止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、防腐剤などの添加剤の1種或いは2種類以上を樹脂100重量部当りに合計量として0.001重量部乃至5.0重量部の範囲内で添加することもできる。
また、本発明のガスバリア性積層体を用いて後述するように包装材を形成する場合、包装材としての強度を確保するために、ガスバリア性積層体を構成するプラスチック基材(I)として、各種補強材入りのものを使用することができる。即ち、ガラス繊維、芳香族ポリアミド繊維、カーボン繊維、パルプ、コットン・リンター等の繊維補強材、或いはカーボンブラック、ホワイトカーボン等の粉末補強材、或いはガラスフレーク、アルミフレーク等のフレーク状補強材の1種類或いは2種類以上を、前記熱可塑性樹脂100重量部当り合計量として2乃至150重量部の量で配合でき、更に増量の目的で、重質乃至軟質の炭酸カルシウム、雲母、滑石、カオリン、石膏、クレイ、硫酸バリウム、アルミナ粉、シリカ粉、炭酸マグネシウム等の1種類或いは2種類以上を前記熱可塑性樹脂100重量部当り合計量として5乃至100重量部の量でそれ自体公知の処方に従って配合しても何ら差支えない。
さらに、ガスバリア性の向上を目指して、鱗片状の無機微粉末、例えば水膨潤性雲母、クレイ等を前記熱可塑性樹脂100重量部当り合計量として5乃至100重量部の量でそれ自体公知の処方に従って配合しても何ら差支えない。
【0022】
[ガスバリア層(II)]
本発明におけるガスバリア層形成用塗料(C)は、ポリアルコール系ポリマー(A)とポリカルボン酸系ポリマー(B)とを含有し、プラスチック基材(I)の表面に塗布した後に熱処理することによって両者がエステル結合によって架橋して緻密な架橋構造を有するガスバリア層を形成する。上記ポリアルコール系ポリマー(A)とポリカルボン酸系ポリマー(B)の配合割合は、OH基とCOOH基のモル比(OH基/COOH基)が0.01〜20となるように含有することが重要であり、0.01〜10となるように含有することが好ましく、0.02〜5となるように含有することがより好ましく、0.04〜2となるように含有することが最も好ましい。
【0023】
また、ポリアルコール系ポリマー(A)とポリカルボン酸系ポリマー(B)を含有するガスバリア層形成用塗料(C)は、作業性の面から、水溶液または水分散液であることが好ましく、水溶液であることがより好ましい。したがって、ポリアルコール系ポリマー(A)は水溶性であることが好ましく、また、ポリカルボン酸系ポリマー(B)も水溶性のものが好ましい。
【0024】
<ポリアルコール系ポリマー(A)>
本発明で使用するポリアルコール系ポリマー(A)は、分子内に2個以上の水酸基を有するアルコール系重合体であり、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、糖類等が挙げられる。
ポリビニルアルコールとエチレン−ビニルアルコール共重合体のケン化度は、好ましくは95モル%以上、さらに好ましくは98モル%以上であり、平均重合度が50〜4000であることが好ましく、200〜3000のものがより好ましい。
【0025】
糖類としては、単糖類、二糖類、オリゴ糖類、及び多糖類が挙げられる。これらの糖類には、糖アルコールや各種置換体・誘導体、サイクロデキストリンのような環状オリゴ糖なども含まれる。これらの糖類は、水に溶解性のものが好ましい。
澱粉類は、前記多糖類に含まれるが、本発明で使用される澱粉類としては小麦澱粉、トウモロコシ澱粉、モチトウモロコシ澱粉、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、米澱粉、甘藷澱粉、サゴ澱粉などの生澱粉(未変性澱粉)のほか、各種の加工澱粉がある。加工澱粉としては、物理的変性澱粉、酵素変性澱粉、化学分解変性澱粉、化学変性澱粉、澱粉類にモノマーをグラフト重合したグラフト澱粉などが挙げられる。これらの澱粉類の中でも、焙焼デキストリン等やそれらの還元性末端をアルコール化した還元澱粉糖化物等の水に可溶性の加工澱粉が好ましい。澱粉類は、含水物であってもよい。また、これらの澱粉類は、それぞれ単独で、或いは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0026】
上記のポリアルコール系ポリマー(A)は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0027】
<ポリカルボン酸系ポリマー(B)>
本発明に用いられるポリカルボン酸系ポリマー(B)はカルボキシル基もしくは酸無水物基及びエチレン性不飽和二重結合を有するモノマー(BM)を重合して成るカルボキシル基もしくは酸無水物基を含有するポリマー(BP)である。モノマー(BM)としては、エチレン性不飽和二重結合としてアクリロイル基もしくはメタクリロイル基(以下、両者を合わせて(メタ)アクリロイル基という)を有するものが好ましい。例えば、(メタ)アクリル酸、2−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノアクリレート、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、無水フマル酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、イタコン酸、無水イタコン酸等が挙げられ、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸が好ましい。
【0028】
モノマー(BM)を重合して成るポリマー(BP)としては、これらモノマー(BM)をそれぞれ単独で重合して成るホモポリマー、モノマー(BM)同士を複数共重合してなるコポリマー、モノマー(BM)を他のモノマーと共重合して成るコポリマーを挙げることができる。本発明においてガスバリア形成用塗料(C)は、ホモポリマーを2種以上、モノマー(BM)同士のコポリマーを2種以上、又はモノマー(BM)と他のモノマーとのコポリマーを2種以上それぞれ含有することもできる。さらにモノマー(BM)を重合して成るポリマー(BP)としては、ホモポリマー及びモノマー(BM)同士のコポリマー、ホモポリマー及びモノマー(BM)と他のモノマーとのコポリマー、モノマー(BM)同士のコポリマー及びモノマー(BM)と他のモノマーとのコポリマー、ホモポリマーを含有することもできる。
【0029】
モノマー(BM)と共重合し得る他のモノマーとしては、カルボキシル基、水酸基を有しないモノマーであって、モノマー(BM)と共重合し得るモノマーを適宜用いることができる。例えば、クロトン酸、(メタ)アクリル酸等の不飽和モノカルボン酸のエステル化物であって水酸基やカルボキシル基を有しないモノマー、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルニトリル、スチレン、スチレンスルホン酸、ビニルトルエン、エチレンなどの炭素数2〜30のα−オレフィン類、アルキルビニルエーテル類、ビニルピロリドン等が挙げられる。
【0030】
本発明においてモノマー(BM)を重合して成るポリマー(BP)の1つとして好適に用いられるオレフィン−マレイン酸共重合体、特にエチレン−マレイン酸共重合体(以下EMAと略記する)は、無水マレイン酸とエチレンとを溶液ラジカル重合などの公知の方法で重合することにより得られるものである。
【0031】
上記オレフィン−マレイン酸共重合体中のマレイン酸単位は、乾燥状態では隣接カルボキシル基が脱水環化した無水マレイン酸構造となりやすく、湿潤時や水溶液中では開環してマレイン酸構造となる。したがって、本発明においては、特記しない限り、マレイン酸単位と無水マレイン単位とを総称してマレイン酸単位という。EMA中のマレイン酸単位は、5モル%以上が好ましく、20モル%以上がより好ましく、30モル%以上がさらに好ましく、35モル%以上が最も好ましい。また、重量平均分子量が1000〜1000000であることが好ましく、3000〜500000であることがより好ましく、7000〜300000であることがさらに好ましく、10000〜200000であることが特に好ましい。
【0032】
上記のポリカルボン酸系ポリマー(B)は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0033】
本発明においては、上記ガスバリア層形成用塗料(C)にポリアルコール系ポリマー(A)とポリカルボン酸系ポリマー(B)との架橋反応を促進させてガスバリア性を向上させるために、架橋剤を添加することもできる。
架橋剤の添加量は、ポリアルコール系ポリマー(A)とポリカルボン酸系ポリマー(B)の合計重量100重量部に対して0.1〜30重量部が好ましく、より好ましくは1〜20重量部である。架橋剤の添加量が0.1重量部未満では、架橋剤を添加しても架橋剤を添加しない場合に比べて顕著な架橋効果を得ることができず、一方、30重量部を超えると、逆に架橋剤がガスバリア性の発現を阻害することがあるので好ましくない。
上記架橋剤としては、自己架橋性を有する架橋剤でもよく、カルボキシル基および/または水酸基と反応する官能基を分子内に複数個有する化合物または多価の配位座を持つ金属錯体等でもよい。このうちイソシアネート化合物、メラミン化合物、尿素化合物、エポキシ化合物、カルボジイミド化合物、ジルコニウム塩化合物等が、優れたガスバリア性を発現させることができることから好ましい。また、これらの架橋剤を組み合わせて使用してもよい。
また、架橋反応を促進させてガスバリア性を向上させるために、酸などの触媒を添加することもできる。上記のように、架橋剤または触媒を添加すると、ポリアルコール系ポリマー(A)とポリカルボン酸系ポリマー(B)との間にエステル結合による架橋反応が促進され、ガスバリア性をより一層向上させることができる。
【0034】
さらに、ガスバリア層形成用塗料(C)には、その特性を大きく損なわない限りにおいて、熱安定剤、酸化防止剤、強化材、顔料、劣化防止剤、耐候剤、難燃剤、可塑剤、離型剤、滑剤などが添加されていてもよい。
上記熱安定剤、酸化防止剤及び劣化防止剤としては、例えばヒンダードフェノール類、リン化合物、ヒンダードアミン類、イオウ化合物、銅化合物、アルカリ金属のハロゲン化物あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0035】
さらに、ガスバリア層形成用塗料(C)にはガスバリア性をより高めるために、その特性を大きく損わない限りにおいて、無機層状化合物を添加することもできる。ここで無機層状化合物とは、単位結晶層が重なって層状構造を形成する無機化合物のことを指す。具体的には、燐酸ジルコニウム(燐酸塩系誘導体型化合物)、カルコゲン化物、リチウムアルミニウム複合水酸化物、グラファイト、粘土鉱物などがあり、特に溶媒中で膨潤、劈開するものが好ましい。
【0036】
上記粘土鉱物の好ましい例としては、モンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、バーミキュライト、フッ素雲母、白雲母、パラゴナイト、金雲母、黒雲母、レピドライト、マーガライト、クリントナイト、アナンダイト、緑泥石、ドンバサイト、スドーアイト、クッケアイト、クリノクロア、シャモサイト、ニマイト、テトラシリリックマイカ、タルク、パイロフィライト、ナクライト、カオリナイト、ハロイサイト、クリソタイル、ナトリウムテニオライト、ザンソフィライト、アンチゴライト、ディッカイト、ハイドロタルサイトなどがあり、膨潤性フッ素雲母又はモンモリロナイトが特に好ましい。
これらの粘土鉱物は、天然に産するものであっても、人工的に合成あるいは変性されたものであってもよく、またそれらをオニウム塩などの有機物で処理したものであってもよい。
【0037】
上記粘土鉱物の中で、膨潤性フッ素雲母系鉱物は白色度の点で最も好ましく、これは次式で示されるもので、容易に合成できるものである。
α(MF)・β(aMgF・bMgO)・γSiO
(式中、Mはナトリウム又はリチウムを表し、α、β、γ、a及びbは各々係数を表し、0.1≦α≦2、2≦β≦3.5、3≦γ≦4、0≦a≦1、0≦b≦1、a+b=1である。)
【0038】
このような膨潤性フッ素雲母系鉱物の製造法としては、例えば、酸化珪素と酸化マグネシウムと各種フッ化物とを混合し、その混合物を電気炉あるいはガス炉中で1400〜1500℃の温度範囲で完全に溶融し、その冷却過程で反応容器内にフッ素雲母系鉱物を結晶成長させる、いわゆる溶融法がある。
【0039】
また、タルクを出発物質として用い、これにアルカリ金属イオンをインターカレーションして膨潤性フッ素雲母系鉱物を得る方法がある(特開平2−149415号公報)。この方法によると、タルクに珪フッ化アルカリあるいはフッ化アルカリを混合し、磁性ルツボ内で約700〜1200℃の温度で短時間加熱処理することによって膨潤性フッ素雲母系鉱物を得ることができる。
この際、タルクと混合する珪フッ化アルカリあるいはフッ化アルカリの量は、混合物全体の10〜35質量%の範囲とすることが好ましく、この範囲を外れる場合には膨潤性フッ素雲母系鉱物の生成収率が低下するので好ましくない。
上記の膨潤性フッ素雲母系鉱物を得るためには、珪フッ化アルカリ又はフッ化アルカリのアルカリ金属は、ナトリウムあるいはリチウムとすることが必要である。これらのアルカリ金属は単独で用いてもよいし、併用してもよい。また、アルカリ金属のうち、カリウムの場合には膨潤性フッ素雲母系鉱物が得られないが、ナトリウムあるいはリチウムと併用し、かつ限定された量であれば膨潤性を調節する目的で用いることも可能である。
【0040】
さらに、膨潤性フッ素雲母系鉱物を製造する工程において、アルミナを少量配合し、生成する膨潤性フッ素雲母系鉱物の膨潤性を調整することも可能である。上記粘土鉱物の中で、モンモリロナイトは、次式で示されるもので、天然に産出するものを精製することにより得ることができる。
Si(Al2−aMg)O10(OH)・nH
(式中、Mはナトリウムのカチオンを表し、aは0.25〜0.60である。また、層間のイオン交換性カチオンと結合している水分子の数は、カチオン種や湿度等の条件に応じて変わりうるので、以下において、式中ではnHOで表す。)
また、モンモリロナイトには次式群で表される、マグネシアンモンモリロナイト、鉄モンモリロナイト、鉄マグネシアンモンモリロナイトの同型イオン置換体も存在し、これらを用いてもよい。
Si(Al1.67−aMg0.5+a)O10(OH)・nH
Si(Fe2−a3+Mg)O10(OH)・nH
Si(Fe1.67−a3+Mg0.5+a)O10(OH)・nH
(式中、Mはナトリウムのカチオンを表し、aは0.25〜0.60である。)
通常モンモリロナイトは、その層間にナトリウムやカルシウム等のイオン交換性カチオンを有するが、その含有比率は産地によって異なる。本発明においては、イオン交換処理等によって層間のイオン交換性カチオンがナトリウムに置換されているものが好ましい。また、水処理により精製したモンモリロナイトを用いることが好ましい。
【0041】
さらに、本発明においては、このような無機層状化合物と上記架橋剤とを併用することもできる。
【0042】
本発明において、ポリアルコール系ポリマー(A)とポリカルボン酸系ポリマー(B)を混合してそれらを含有する水溶液を調製するに際しては、ポリカルボン酸系ポリマー(B)のカルボキシル基に対して0.1〜20当量%のアルカリ化合物を加えることが好ましい。
ポリカルボン酸系ポリマー(B)は、それに含まれるカルボン酸単位が多いとそれ自身の親水性が高いので、アルカリ化合物を添加しなくても水溶液にすることができるが、アルカリ化合物を適正量添加することにより、ガスバリア層形成用塗料(C)を塗布して得られるフィルムのガスバリア性が格段に向上される。
かかるアルカリ化合物としては、ポリカルボン酸系ポリマー(B)中のカルボキシル基を中和できるものであればよく、アルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物、水酸化アンモニウム、有機水酸化アンモニウム化合物等が挙げられる。このうち、アルカリ金属水酸化物が好ましい。さらに、本発明において、ガスバリア層形成用塗料(C)を調製するに際しては、ポリカルボン酸系ポリマー(B)中のカルボキシル基に対して0.1〜20モル%のアルカリ化合物を加えることが好ましい。
【0043】
上記水溶液の調整方法としては、撹拌機を備えた溶解釜等を用いて公知の方法で行えばよい。例えば、ポリアルコール系ポリマー(A)とポリカルボン酸系ポリマー(B)を別々に水溶液とし、使用前に混合して用いる方法が好ましい。この時、上記アルカリ化合物をポリカルボン酸系ポリマー(B)の水溶液に加えておくと、その水溶液の安定性を向上させることができる。
【0044】
また、ポリアルコール系ポリマー(A)とポリカルボン酸系ポリマー(B)を同時に溶解釜中の水に加えてもよいが、アルカリ化合物を最初に水に添加しておく方がポリカルボン酸系ポリマー(B)の溶解性がよい。また、ポリカルボン酸系ポリマー(B)の水に対する溶解性を高める目的や乾燥工程の短縮、水溶液の安定性改善などの目的で、水にアルコールや有機溶媒を少量添加することもできる。
【0045】
ガスバリア層形成用塗料(C)の濃度(=固形分)は、塗装装置や乾燥・加熱装置の仕様によって適宜変更され得るものであるが、あまりに希薄な溶液ではガスバリア性を発現するのに充分な厚みの層をコートすることが困難となり、また、その後の乾燥工程において長時間を要するという問題を生じやすい。他方、塗料の濃度が高すぎると、均一な塗料を得にくく、塗装性に問題を生じ易い。この様な観点から、塗料(C)の濃度(=固形分)は、5〜50%の範囲にすることが好ましい。
【0046】
ガスバリア層形成用塗料(C)からガスバリア層(II)を形成する際には、塗料をプラスチック基材(I)もしくはアンカーコート層上に塗布後直ちに加熱処理を行い、乾燥皮膜の形成と加熱処理を同時に行ってもよいし、又は塗布後ドライヤー等による熱風の吹き付けや赤外線照射等により水分等を蒸発させて乾燥皮膜を形成させた後に、加熱処理を行ってもよい。ガスバリア層(II)の状態やガスバリア性等の物性に特に障害が生じない限り、工程の短縮化等を考慮すると、塗布後直ちに加熱処理を行うことが好ましい。加熱処理方法としては特に限定されず、オーブン等の乾燥雰囲気下で加熱処理を行うことが一般的に考えられるが、例えば熱ロールと接触させて加熱処理を行ってもよい。また基材(I)が延伸フィルムである場合、ガスバリア層形成用塗料(C)からガスバリア層(II)を形成させる際に、延伸された基材(I)に塗料(C)を塗工してもよいし、延伸される前に塗料(C)を塗工して後でフィルムの延伸を行ってもよい。
【0047】
<アンカーコート層>
本発明におけるアンカーコート層は、必要に応じて用いられ、プラスチック基材(I)とガスバリア層(II)との間に位置し、ガスバリア層(II)の密着性向上の役割を主として担う。
アンカーコート層に使用されるコート剤としては、公知のものが特に制限されず使用できる。例えばイソシアネート系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリエチレンイミン系、ポリブタジエン系、ポリオレフィン系、アルキルチタネート系等のアンカーコート剤が挙げられる。これらの中で本発明の効果を勘案すると、イソシアネート系、ポリウレタン系、ポリエステル系のアンカーコート剤が好ましく、イソシアネート化合物、ポリウレタンおよびウレタンプレポリマーの1種または2種以上の混合物および反応生成物、ポリエステル、ポリオールおよびポリエーテルの1種または2種以上とイソシアネートとの混合物および反応生成物、またはこれらの溶液または分散液であることが好ましい。
【0048】
プラスチック基材(I)上に形成するガスバリア層(II)の厚みは、ガスバリア性を充分高めるためには少なくとも0.05μmより厚くすることが望ましい。
【0049】
上記ガスバリア層形成用塗料(C)をプラスチック基材(I)に塗布する方法は特に限定されないが、グラビアロールコーティング、リバースロールコーティング、ワイヤーバーコーティング、エアーナイフコーティング等の通常の方法を用いることができる。
【0050】
上記のいずれの場合においても、ガスバリア層形成用塗料(C)が塗布されたプラスチック基材(I)を100℃以上の加熱雰囲気中で1分間以下の熱処理を施すことによって、ガスバリア層形成用塗料(C)中に含有するポリアルコール系ポリマー(A)とポリカルボン酸系ポリマー(B)とが架橋反応してエステル結合が形成され、それによって水不溶性のガスバリア層(II)が形成される。
【0051】
ポリアルコール系ポリマー(A)とポリカルボン酸系ポリマー(B)との比や、添加成分の含有の有無、そして添加成分を含有する場合にはその含有量等によっても影響を受け得るので、ガスバリア層形成の好ましい加熱処理温度は一概には言えないが、100〜300℃の温度で行うことが好ましく、120〜250℃がより好ましく、140〜240℃がさらに好ましく、160〜220℃が特に好ましい。
熱処理温度が低過ぎると、上記ポリアルコール系ポリマー(A)とポリカルボン酸系ポリマー(B)との架橋反応を充分に進行させることができず、充分なガスバリア性を有するガスバリア層(II)を得ることが困難になることがあり、一方、高過ぎると、被膜などが脆化するおそれなどがあるので好ましくない。
【0052】
また、熱処理時間は5分間以下であることが好ましく、通常1秒間〜5分間、好ましくは3秒間〜2分間、より好ましくは5秒間〜1分間が適用される。熱処理時間が短すぎると、上記架橋反応を充分に進行させることができず、ガスバリア性を有するガスバリア層(II)を得ることが困難になり、一方、長すぎると生産性が低下する。
【0053】
本発明においては、上記のような比較的短時間の熱処理によって、ポリアルコール系ポリマー(A)とポリカルボン酸系ポリマー(B)との間にエステル結合による架橋構造が形成されて、ガスバリア層(II)が得られる。
【0054】
[オーバーコート層(III)]
<オーバーコート形成用塗料(F)>
本発明におけるオーバーコート層(III)は、1価の金属化合物(D)および/または2価以上の金属化合物(E)を含有するオーバーコート層形成用塗料(F)を、ガスバリア層(II)の表面に塗布した後に熱処理することによって形成される樹脂層である。オーバーコート層(III)中の1価の金属化合物(D)および/または2価以上の金属化合物(E)がガスバリア層(II)中のポリアルコール系ポリマー(A)もしくはポリカルボン酸系ポリマー(B)と反応し、架橋構造を形成することによって積層体のガスバリア性を著しく向上させる。なお、1価の金属化合物(D)および/または2価以上の金属化合物(E)とポリアルコール系ポリマー(A)もしくはポリカルボン酸ポリマー(B)との反応によって生じる架橋構造は、イオン結合、共有結合はもちろん配位的な結合であってもよい。1価の金属化合物(D)および/または2価以上の金属化合物(E)を水溶液として塗布した後熱処理する場合に比べて、本発明のごとくこれらの金属化合物を樹脂樹脂層に含有させ、樹脂塗料として塗布した後熱処理する場合の方が、より工業的に効率的でかつ優れたガスバリア性を付与することができる。
【0055】
<1価の金属化合物(D)>
オーバーコート層形成用塗料(F)に含有する1価の金属化合物(D)に用いる金属種としては、Li、Na、K、Rb、Se等が挙げられ、これらのうち金属種はLi、Na、Kが好ましく、特にLiが好ましい。また使用する金属化合物の形態は、金属単体を含み、酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩、硫酸塩等の無機塩、カルボン酸塩、スルホン酸等の有機酸塩が挙げられる。金属化合物の形態は水酸化物、炭酸塩の形態が好ましい。
【0056】
<2価以上の金属化合物(E)>
オーバーコート層形成用塗料(F)に含有する2価以上の金属化合物(E)の金属種としては、Mg、Ca、Zn、Cu、Co、Fe、Ni、Al、Zrなどが挙げられる。これらのうち金属種はMg、Ca、Znが好ましく、特にMg、Caが好ましい。また使用する金属化合物の形態は、金属単体を含み、酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩、硫酸塩等の無機塩、カルボン酸塩、スルホン酸等の有機酸塩が挙げられる。また、金属化合物の形態は酸化物、水酸化物、炭酸塩の形態が好ましい。
【0057】
本発明において、オーバーコート層形成用塗料(F)中の1価の金属化合物(D)および/または2価以上の金属化合物(E)の配合割合は、用いる金属種、化合物の形態、樹脂塗料(F)を構成する樹脂の種類によって大きく異なるが、塗料(F)を構成する樹脂と架橋剤との合計固形分100重量部に対して0.1〜100重量部が好ましく、0.5〜80重量部がより好ましく、0.75〜75重量部がさらに好ましく、1〜65重量部が最も好ましい。金属化合物の配合量が0.1重量部未満であるとガスバリア層(II)中のポリアルコール系ポリマー(A)もしくはポリカルボン酸系ポリマー(B)と反応して形成される架橋構造が少なくなり積層体のガスバリア性が低下する。また100重量部を超えると、オーバーコート層形成用塗料(F)を塗工後、熱処理時に形成されるオーバーコート層(III)の密着性、耐熱性、耐水性が損なわれる。
【0058】
本発明におけるオーバーコート層形成用塗料(F)は、有機溶剤系塗液、水溶液、水分散液のいずれでもよい。ガスバリア性という観点では、金属のイオン化を促進するためにも塗料(F)は水溶液または水分散液であることが好ましい。しかしながら、逆に水への溶解性が比較的高い1価の金属化合物(D)および/または2価以上の金属化合物(E)を用いた場合、オーバーコート層(III)の耐水性を低下させたり、ラミネート接着剤層(VI)とヒートシール層(VII)を設けた際のラミネート強力を低下させる恐れがある。
また、塩基性の1価の金属化合物(D)および/または2価以上の金属化合物(E)を用いた場合、塗料(F)が水溶液または水分散液であると、塗料(F)の安定性やポットライフを低下させたり、ラミネート接着剤層(VI)とヒートシール層(VII)を設けた際のラミネート強力を低下させる恐れがある。
以上のことから、オーバーコート層形成用塗料(F)は有機溶剤系塗液であることが好ましい。ここで、有機溶剤系塗液であるということは、水以外の溶媒が、塗液中の溶剤全体の90重量%以上ということであり、さらに好ましくは、95重量%以上ということである。
このような水以外の溶媒としては、公知の有機溶剤を用いることができ、トルエン、MEK、シクロヘキサノン、ソルベッソ、イソホロン、キシレン、MIBK、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、IPA等が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、公知の有機溶媒を1種類あるいは2種類以上を混合して用いることができる。
【0059】
本発明で使用される1価の金属化合物(D)および/または2価以上の金属化合物(E)は、塗膜形成後の透明性に優れるという観点から、混合の際にできるだけ微粒子状のものを使用するのが好ましく、平均粒子径10μm以下が好ましく、3μm以下がより好ましく、1μm以下がさらに好ましい。また、いかに微粒子状であっても、懸濁液として用いた場合は乾燥時の析出や外観不良を引き起こす可能性があるため、分散剤を併用した微粒子分散体として用いることが好ましい。
【0060】
金属化合物の微粒子分散体とオーバーコート層形成用塗料(F)の混合方法としては、塗料(F)を形成する樹脂と混合後に分散してもよいし、あらかじめ金属化合物を分散機を用いて分散し塗料(F)を形成する樹脂と混合してもよい。
【0061】
分散機としては、特に限定されるものではないが、例えば、ペイントコンディショナー(レッドデビル社製)、ボールミル、サンドミル(シンマルエンタープライゼス社製「ダイノミル」等)、アトライター、パールミル(アイリッヒ社製「DCPミル」等)、コボールミル、バスケットミル、ホモミキサー、ホモジナイザー(エム・テクニック社製「クレアミックス」等)、湿式ジェットミル(ジーナス社製「ジーナスPY」、ナノマイザー社製「ナノマイザー」等)等を用いることができる。コスト、処理能力等を考えた場合、メディア型分散機を使用するのが好ましい。また、メディアとしてはガラスビーズ、ジルコニアビーズ、アルミナビーズ、磁性ビーズ、ステンレスビーズ等を用いることができる。
【0062】
特に、2価以上の金属化合物(E)として有効な、MgまたはCaの酸化物、水酸化物、炭酸塩は、分散剤(H)を用いて分散することにより、オーバーコート層形成用塗料(F)を構成する樹脂と架橋剤との合計固形分100重量部に対して金属化合物を50重量部添加しても、透明な塗膜を形成することができる。
【0063】
<分散剤(H)>
分散剤(H)としては既知のものが使用でき、たとえばビックケミー社製のDisperbykまたはDisperbyk-101、103、107、108、110、111、116、130、140、154、161、162、163、164、165、166、170、171、174、180、181、182、183、184、185、190、191、192、2000、2001またはAnti-Terra-U、203、204またはBYK-P104、P104S、220SまたはLactimon、Lactimon-WSまたはBykumon等、アビシア社製のSOLSPERSE-3000、9000、13240、13650、13940、17000、18000、20000、21000、24000、26000、27000、28000、31845、32000、32500、32600、34750、36600、38500、41000、41090、43000、44000、53095等、エフカケミカルズ社製のEFKA-46、47、48、452、LP4008、4009、LP4010、LP4050、LP4055、400、401、402、403、450、451、453、4540、4550、LP4560、120、150、1501、1502、1503等や(ポリ)グリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、ショ糖脂肪酸エステル、レシチン、大豆多糖類、カロボキシメチルセルロース、アルギン酸ソーダ、アルギン酸プロピレングリコールエステル、加工澱粉、グアーガム、ローストビーンガム、キサンタンガム、ペクチン、カラギーナン、ガティガム、カードラン、タマリンドシードガム、カラヤガム、タラガム、ジェランガム、トラガントガム、アラビアガム、アラビーノガラクタン、アルキルリン酸エステル、ポリカルボン酸塩等が例示されるが、衛生性、分散性、ガスバリア性より(ポリ)グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリカルボン酸塩が好ましく、より好ましくは(ポリ)グリセリン脂肪酸エステルとポリカルボン酸塩である。
【0064】
(ポリ)グリセリン脂肪酸エステルとしては分散性の観点より重合度1から20のが好ましく、12以下がより好ましい。脂肪酸としては好ましくは炭素数10から22の飽和または不飽和脂肪酸であり、その具体例としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ドコサン酸などの飽和脂肪酸、オレイン酸、リノール酸、リノレイン酸、エルカ酸、アラキドン酸などの不飽和脂肪酸などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。(ポリ)グリセリン脂肪酸エステルのHLBとしては水系で用いる場合は5以上が好ましく、より好ましくは7以上である。有機溶媒系で用いる場合は2から15が好ましく、4から13がより好ましい。
【0065】
オーバーコート形成用塗料(F)を構成する樹脂は、公知のウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、メラミン樹脂、アミノ樹脂等種々の樹脂が挙げられる。これらのうち耐水性、耐溶剤性、耐熱性、硬化温度の観点からウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂が好ましく、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂が特に好ましい。
【0066】
上記のオーバーコート形成用塗料(F)を構成するウレタン樹脂については、例えば多官能イソシアネートと水酸基含有化合物との反応により得られるポリマーであり、具体的にはトリレンジイソイアネート、ジフェニルメタンイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート、または、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシレンイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート等の多官能イソシアネートとポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリアクリレートポリオール、ポリカーボネートポリオール等の水酸基含有化合物との反応により得られるウレタン樹脂を使用することが出来る。
【0067】
上記のオーバーコート形成用塗料(F)を構成するポリエステル樹脂については、ポリエステルポリオールが好ましく、多価カルボン酸もしくはそれらのジアルキルエステルまたはそれらの混合物と、グリコール類もしくはそれらの混合物とを反応させて得られるポリエステルポリオールが挙げられる。
多価カルボン酸としては、例えばイソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族多価カルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸,シクロヘキサンジカルボン酸の脂肪族多価カルボン酸が挙げられる。
グリコールとしては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6ーヘキサンジオールなどが挙げられる
【0068】
これらのポリエステルポリオールは、ガラス転移温度(以下、Tgという)が、120℃以下のものが好ましく、100℃以下のものがより好ましく、80℃以下のものがさらに好ましく、70℃以下のものが特に好ましい。また、これらのポリエステルポリオールの数平均分子量は1000〜10万のものが好ましく、3000〜5万のものがより好ましく、1万〜4万のものがさらに好ましい。
【0069】
本発明において、形成されるオーバーコート層(III)の耐水性、耐溶剤性等を向上させるために、塗料(F)に架橋剤を添加することもできる。架橋剤としては、自己架橋性を有する架橋剤でもよく、カルボキシル基および/または水酸基と反応する官能基を分子内に複数個有する化合物または多価の配位座を持つ金属錯体等でもよい。このうちイソシアネート化合物、メラミン化合物、尿素化合物、エポキシ化合物、カルボジイミド化合物が好ましく、特にイソシアネート化合物が好ましい。
具体的にはトリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート、
または、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、キシレンイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート、
上記ポリイソシアネート単量体から誘導されたイソシアヌレート、ビューレット、アロファネート等の多官能ポリイソシアネート化合物、あるいはトリメチロールプロパン、グリセリン等の3官能以上のポリオール化合物との反応により得られる末端イソシアネート基含有の多官能ポリイソシアネート化合物等を挙げることができる。
【0070】
架橋剤の添加量は、塗料(F)を構成する樹脂固形分100重量部に対して0.1〜300重量部が好ましく、5〜100重量部がより好ましく、10〜50重量部がさらに好ましい。架橋剤の添加量が0.1重量部未満では、架橋剤を添加しても架橋剤を添加しない場合に比べて顕著な架橋効果を得ることができず、一方、300重量部を超えると、逆に架橋剤がガスバリア性の発現を阻害することがあるので好ましくない。
【0071】
本発明において、オーバーコート層形成用塗料(F)は、水または有機溶媒を媒体とする溶液または分散液である。上述したように、塗料(F)は、塗液安定性やポットライフ、耐水性の観点から、有機溶剤系塗液であることが好ましい。したがって、上記の塗料(F)を構成する樹脂や架橋剤は、有機溶剤に可溶であることが好ましく、特に、Tgが70℃以下のポリエステルポリオールとポリイソシアネートの組み合わせが、塗工性、生産性や必要物性から好ましい。
【0072】
本発明において、オーバーコート層形成用塗料(F)中に1価の金属化合物(D)および/または2価以上の金属化合物(E)を含有させる方法に特に限定はないが、塗料(F)を構成する樹脂成分が有機溶媒に溶解された溶液状態で金属化合物の微粒子分散体を混合する方法は、金属化合物の分散を比較的均一にする上で好ましい。
【0073】
オーバーコート層形成用塗料(F)には、その特性を大きく損なわない限りにおいて、熱安定剤、酸化防止剤、強化材、顔料、劣化防止剤、耐候剤、難燃剤、可塑剤、離型剤、滑剤などが添加されていてもよい。
上記熱安定剤、酸化防止剤及び劣化防止剤としては、例えばヒンダードフェノール類、リン化合物、ヒンダードアミン類、イオウ化合物、銅化合物、アルカリ金属のハロゲン化物あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0074】
オーバーコート層形成用塗料(F)の濃度(=固形分)は、塗装装置や乾燥・加熱装置の仕様によって適宜変更され得るものであるが、あまりに希薄な溶液ではガスバリア層(II)との反応で、ガスバリア性を発現するのに充分な厚みの層をコートすることが困難となり、また、その後の乾燥工程において長時間を要するという問題を生じやすい。他方、塗料の濃度が高すぎると、均一な塗料を得にくく、塗装性に問題を生じ易い。この様な観点から、塗料(F)の濃度(=固形分)は、5〜50%の範囲にすることが好ましい。
【0075】
オーバーコート層形成用塗料(F)からオーバーコート層(III)を形成する際には、ガスバリア層(II)が塗布後加熱処理されたプラスチック基材(I)に、オーバーコート層形成用塗料(F)を塗布後直ちに加熱処理を行い乾燥皮膜の形成と加熱処理を行ってもよいし、または塗布後ドライヤー等による熱風の吹き付けや赤外線照射等により水分等を蒸発させて乾燥皮膜を形成させた後に、加熱処理を行ってもよい。ガスバリア層(II)およびオーバーコート層(III)の状態やガスバリア性等の物性に特に障害が生じない限り、工程の短縮化等を考慮すると、塗布後直ちに加熱処理を行うことが好ましい。加熱処理方法としては特に限定されず、オーブン等の乾燥雰囲気下で加熱処理を行うことが一般的に考えられるが、例えば熱ロールと接触させて加熱処理を行ってもよい。
【0076】
ガスバリア層(II)上に形成するオーバーコート層(III)の厚みは、ガスバリア層(II)の厚みにもよるが、ガスバリア層(II)との反応で、ガスバリア性を発現するためには少なくとも0.1μmより厚くすることが望ましく、生産性やコストなどを点から0.1〜3μmが好ましく、0.1〜2μmがより好ましく、0.15〜1.5μmが特に好ましい。
【0077】
上記オーバーコート形成用塗料(F)を塗布する方法は特に限定されないが、グラビアロールコーティング、リバースロールコーティング、ワイヤーバーコーティング、エアーナイフコーティング等の通常の方法を用いることができる。
【0078】
1価の金属化合物(D)および/または2価以上の金属化合物(E)とオーバーコート形成用塗料(F)を構成する樹脂の配合割合や、添加成分の含有の有無、そして添加成分を含有する場合にはその含有量等によっても影響を受け得るので、オーバーコート層(III)形成の好ましい加熱処理温度は一概には言えないが、50〜300℃の温度で行うことが好ましく、70〜250℃がより好ましく、100〜200℃が特に好ましい。
熱処理温度が低く過ぎると、塗料(F)を構成する樹脂と架橋剤との熱架橋反応が充分に進行させることが出来ず、充分な密着性、耐水性、耐熱性を得ることが困難となったり、塗料(F)中の1価の金属化合物(D)および/または2価以上の金属化合物(E)と、ガスバリア層(II)のポリアルコール系ポリマー(A)とポリカルボン酸系ポリマー(B)との架橋反応を充分に進行させることができず、充分なガスバリア性を有する積層体を得ることが困難になることがある。一方、高過ぎると、フィルムの収縮によるしわの発生や被膜が脆化するおそれなどがあるので好ましくない。
【0079】
また、熱処理時間は5分間以下であることが好ましく、通常1秒間〜5分間、好ましくは3秒間〜2分間、より好ましくは5秒間〜1分間が適用される。熱処理時間が短すぎると、上記作用を充分に進行させることができず、密着性、耐熱性、耐水性、ガスバリア性を有するフィルムを得ることが困難になり、一方、長すぎると生産性が低下する。
【0080】
[トップコート層(IV)]
<トップコート層形成用塗料(F)>
本発明におけるトップコート層(IV)は、トップコート層形成用塗料(G)を、オーバーコート層(III)の表面に塗布した後に熱処理することによって形成される樹脂層である。
トップコート層形成用塗料(G)の塗布とその後の熱処理によって、オーバーコート層(III)内の1価の金属化合物(D)および/または2価以上の金属化合物(E)の、ガスバリア層(II)中のポリアルコール系ポリマー(A)もしくはポリカルボン酸系ポリマー(B)への反応を促進することができ、ガスバリア性を飛躍的に向上させることができる。
トップコート層形成用塗料(G)は、有機溶剤系塗液、水溶液、水分散液のいずれでもよいが、オーバーコート層(III)に含まれる1価の金属化合物(D)および/または2価以上の金属化合物(E)をイオン化させ、ガスバリア層(II)中のポリアルコール系ポリマー(A)もしくはポリカルボン酸系ポリマー(B)と反応させ、ガスバリア層(II)に金属架橋を導入するためには、トップコート層形成用塗料(G)は、水溶液または水分散液であることが好ましい。
塗工条件によっても異なるので一概には言えないが、水溶液または水分散液のトップコート層形成用塗料(G)を塗布しその後熱処理することによって、酸素ガス透過度を、トップコート層(IV)が無い場合と比較して1/2〜1/4程度にまで小さくし、ガスバリア性を向上することができる。例えば20℃、相対湿度85%RHの条件下で測定した酸素ガス透過度が、トップコート層(IV)無しでは102〜110ml/m・24h・MPa程度だったものが、トップコート層(IV)を設けることによって、50ml/m・24h・MPa以下に、そして良い場合には25ml/m・24h・MPa程度にまで下げることができる。
また、トップコート層(IV)はオーバーコート層(III)保護の役割も有している。
【0081】
トップコート形成用塗料(G)を構成する樹脂は、公知のウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、メラミン樹脂、アミノ樹脂等種々の樹脂が挙げられる。これらのうち耐水性、耐溶剤性、耐熱性、硬化温度の観点からウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂が好ましく、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂が特に好ましい。
【0082】
上記のトップコート形成用塗料(G)を構成するウレタン樹脂については、例えば多官能イソシアネートと水酸基含有化合物との反応により得られるポリマーであり、具体的にはトリレンジイソイアネート、ジフェニルメタンイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート、または、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシレンイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート等の多官能イソシアネートとポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリアクリレートポリオール、ポリカーボネートポリオール等の水酸基含有化合物との反応により得られるウレタン樹脂を使用することが出来る。
【0083】
上記のトップコート形成用塗料(G)を構成するポリエステル樹脂については、ポリエステルポリオールが好ましく、多価カルボン酸もしくはそれらのジアルキルエステルまたはそれらの混合物と、グリコール類もしくはそれらの混合物とを反応させて得られるポリエステルポリオールが挙げられる。
多価カルボン酸としては、例えばイソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族多価カルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸,シクロヘキサンジカルボン酸の脂肪族多価カルボン酸が挙げられる。
グリコールとしては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6ーヘキサンジオールなどが挙げられる。
【0084】
本発明において、形成されるトップコート層(IV)の耐水性、耐溶剤性等を向上させるために、塗料(G)に架橋剤を添加することもできる。架橋剤としては、自己架橋性を有する架橋剤でもよく、カルボキシル基および/または水酸基と反応する官能基を分子内に複数個有する化合物または多価の配位座を持つ金属錯体等でもよい。このうちイソシアネート化合物、メラミン化合物、尿素化合物、エポキシ化合物、カルボジイミド化合物が好ましく、特にイソシアネート化合物が好ましい。
具体的にはトリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート、
または、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、キシレンイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート、
上記ポリイソシアネート単量体から誘導されたイソシアヌレート、ビューレット、アロファネート等の多官能ポリイソシアネート化合物、あるいはトリメチロールプロパン、グリセリン等の3官能以上のポリオール化合物との反応により得られる末端イソシアネート基含有の多官能ポリイソシアネート化合物等を挙げることができる。
【0085】
オーバーコート層形成用塗料(F)には、その特性を大きく損なわない限りにおいて、熱安定剤、酸化防止剤、強化材、顔料、劣化防止剤、耐候剤、難燃剤、可塑剤、離型剤、滑剤などが添加されていてもよい。上記熱安定剤、酸化防止剤及び劣化防止剤としては、例えばヒンダードフェノール類、リン化合物、ヒンダードアミン類、イオウ化合物、銅化合物、アルカリ金属のハロゲン化物あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0086】
トップコート層形成用塗料(G)からトップコート層(IV)を形成する際には、塗料(G)を塗布後直ちに加熱処理を行うことが好ましい。また、工程の短縮化や生産性の向上等を考慮すると、オーバーコート層形成と連続してトップコート層形成を行うことが好ましい。
【0087】
加熱処理方法としては特に限定されず、オーブン等の乾燥雰囲気下で加熱処理を行うことが一般的に考えられるが、例えば熱ロールと接触させて加熱処理を行ってもよい。
トップコート層形成用塗料(G)の濃度(=固形分)は、塗装装置や乾燥・加熱装置の仕様によって適宜変更され得るものであるが、5〜50重量%の範囲にすることが好ましい。
【0088】
トップコート層(IV)の厚みは、少なくとも0.1μmより厚くすることが望ましく、生産性やコストなどを点から0.1〜3μmが好ましく、0.1〜2μmがより好ましく、0.15〜1.5μmが特に好ましい。
【0089】
上記トップコート形成用塗料(G)を塗布する方法は特に限定されないが、グラビアロールコーティング、リバースロールコーティング、ワイヤーバーコーティング、エアーナイフコーティング等の通常の方法を用いることができる。
【0090】
トップコート層(IV)形成の好ましい加熱処理温度は一概には言えないが、50〜300℃の温度で行うことが好ましく、70〜250℃がより好ましく、100〜200℃が特に好ましい。熱処理温度が低く過ぎると、塗料(G)を構成する樹脂と架橋剤との熱架橋反応が充分に進行させることが出来ず、充分な密着性、耐水性、耐熱性を得ることが困難となる。一方、高過ぎると、フィルムの収縮によるしわの発生や被膜が脆化するおそれなどがあるので好ましくない。また、熱処理時間は5分間以下であることが好ましく、通常1秒間〜5分間、好ましくは3秒間〜2分間、より好ましくは5秒間〜1分間が適用される。熱処理時間が短すぎると、上記作用を充分に進行させることができず、密着性、耐熱性、耐水性、ガスバリア性を有するフィルムを得ることが困難になり、一方、長すぎると生産性が低下する。
【0091】
本発明においては、オーバーコート層(III)に含まれる金属化合物がガスバリア層(II)を構成するポリアルコール系ポリマー(A)とポリカルボン酸系ポリマー(B)からなる組成物に有効に作用するためには、層(II)、(III)および(IV)が接触していることが重要であり、プラスチック基材(I)、ガスバリア層(II)、オーバーコート層(III)、トップコート層(IV)は、(I)(II)(III)(IV)の順に積層されていることが必要である。
【0092】
本発明のガスバリア性積層体は、そのトップコート層(IV)上に直に、または印刷層(V)を介してラミネート接着剤層(VI)、さらにその上にヒートシール層(VII)の順に積層して、(I)(II)(III)(IV)(V)(VI)(VII)、または(I)(II)(III)(IV)(VI)(VII)の順に積層された積層物を形成することができる。さらに場合によっては、ガスバリア性積層体とラミネート接着剤層(VI)との間にプライマー層、帯電防止層などの機能性層が形成されていてもよい。またガスバリア性積層体とラミネート接着剤層(VI)との間に密着性を向上させるために、コロナ処理、オゾン処理などの表面処理が施されてもよい。
【0093】
[印刷層(V)]
印刷層(V)は、ウレタン系、アクリル系、ニトロセルロース系、ゴム系、塩化ビニル系等の従来から用いられているインキバインダー樹脂に各種顔料、体質顔料及び可塑剤、乾燥剤、安定剤等の添加剤などが添加されてなるインキにより形成される文字、絵柄等である。印刷層(V)の形成方法としては、例えばオフセット印刷法、グラビア印刷法、シルクスクリーン印刷法等の周知の印刷方式や、ロールコート、ナイフエッジコート、グラビアーコート等の周知の塗布方式を用いることができる。
【0094】
[ラミネート接着剤層(VI)]
ラミネート接着剤層(VI)を形成する際に使用されるコート剤としては、公知のものが使用される。例えば、イソシアネート系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリエチレンイミン系、ポリブタジエン系、ポリオレフィン系、アルキルチタネート系等のコート剤が挙げられる。これらの中で密着性、耐熱性、耐水性などの効果を勘案すると、イソシアネート系、ポリウレタン系、ポリエステル系のコート剤が好ましく、イソシアネート化合物、ポリウレタンおよびウレタンプレポリマーの1種または2種以上の混合物および反応生成物、ポリエステル、ポリオールおよびポリエーテルの1種または2種以上とイソシアネートとの混合物および反応生成物、またはこれらの溶液または分散液であることが好ましい。ラミネート接着剤層(VI)の厚みは、ヒートシール層(VII)との密着性を充分高めるためには少なくとも0.1μmより厚くすることが好ましい。
【0095】
[ヒートシール層(VII)]
ヒートシール層(VI)としては、袋状包装袋などを形成する際に熱接着層として設けられるものであり、熱シール、高周波シールなどが可能な材料が使用される。例えば低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレン、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸塩共重合体、エチレン−アクリレート共重合体などが挙げられる。厚みは目的に応じて決められるが、一般的には15〜200μmである。
【0096】
ラミネート接着剤層(VI)とヒートシール層(VII)の形成法としては、公知の方法が用いられる。例えば、ドライラミネーション法、ウエットラミネーション法、無溶剤ドライラミネーション法、押し出しラミネーション法などのラミネーション法や、二つ以上の樹脂層を同時に押出し積層する共押し出し法、コーターなどで膜を生成するコーティング法などが挙げられるが、密着性、耐熱性、耐水性などを勘案するとドライラミネーション法が好ましい。
【0097】
本発明の積層体または積層物のガスバリア性を高める目的で、積層体または積層物を形成した後に加湿された雰囲気下で処理することもできる。加湿処理により、1価金属化合物(D)および/または2価以上の金属化合物(E)と、ガスバリア層(II)のポリアルコール系ポリマー(A)とポリカルボン酸系ポリマー(B)との作用をより促進することができる。このような加湿処理は高温、高湿度下の雰囲気において積層体または積層物を放置してもよいし、高温の水に直接積層体または積層物を接触させてもよい。加湿処理条件は種々目的により異なるが、高温高湿の雰囲気下で放置する場合は、温度30〜130℃、相対湿度50〜100%が好ましい。高温の水に接触させる場合も、温度30〜130℃程度(100℃以上は加圧下)が好ましい。加湿処理時間は処理条件により異なるが一般に数秒から数百時間の範囲が選ばれる。
【0098】
本発明による積層体または積層物は、ガスバリア性やボイル処理を必要とする様々な分野に適用することができ、特に食品包装用分野に好適なものである。
【実施例】
【0099】
以下に実施例及び比較例を挙げて、本発明について具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。
【0100】
<積層体の酸素ガス透過度>
モコン社製、酸素バリア測定器OX−TRAN 2/20を用い、温度20℃、相対湿度85%RH雰囲気における積層体の酸素ガス透過度を測定した。測定結果から次式により、成形物層(ガスバリア層(II)およびオーバーコート層(III)、トップコート層(IV))の酸素ガス透過度を算出した。
1/Ptotal=1/PI+1/PII+III+IV
但し、
total:測定結果
I:プラスチック基材(I)の酸素透過度
II+III+IV:ガスバリア層(II)およびオーバーコート層(III)トップコート層(IV)から構成される成形物層の酸素ガス透過度
【0101】
<積層体外観>
バリア層上にオーバーコート層、トップコート層を形成して積層体を作成し、40℃3日間エージングした後の積層体外観について目視評価を行った。無色透明なものを5点、白濁が大きいものを1点とする、5点満点方式で採点を行った。
【0102】
<積層物ラミネート強力>
得られた積層物から、長さ100mm×幅15mmの大きさの試験片を作成し、T型剥離試験法により、温度25℃雰囲気下において、剥離速度300mm/分でラミネート強力を測定した。
【0103】
[製造例1]
PVA(クラレ(株)製、ポバール105(ポリビニルケン化度98〜99%、平均重合度約500))を熱水に溶解後、室温に冷却することにより、固形分15%のPVA水溶液を得た。
【0104】
[製造例2]
EMA(重量平均分子量60000)と水酸化ナトリウムを用い、熱水に溶解後、室温に冷却することにより、カルボキシル基の10モル%を水酸化ナトリウムにより中和した、固形分15%のEMA水溶液を調整した。
【0105】
[製造例3]
ポリアクリル酸(数平均分子量200000、25重量%水溶液、東亞合成(株)製、A10H)と水酸化ナトリウムを用い、カルボキシル基の10モル%を水酸化ナトリウムにより中和した、固形分15%のポリアクリル酸(以下、PAAと略する)水溶液を得た。
【0106】
[製造例4]
プルラン((株)林原製、PF−20)を水に溶解し、固形分15%のプルラン水溶液を得た。
【0107】
[製造例5]
ポリエステル(東洋紡(株)バイロンGK130)をトルエン/酢酸エチル/MEK混合溶媒に溶解し、固形分15%のバイロンGK130ポリエステル溶液を得た。
【0108】
[製造例6]
ポリエステル(東洋紡(株)バイロン226)を酢酸エチル/MEK混合溶媒に溶解し、固形分15%のバイロン226ポリエステル溶液を得た。
【0109】
[製造例7]
酸化マグネシウム粉体(平均粒子径3.5μm、結晶子径0.01μm、BET比表面積145m/g)の懸濁トルエン溶液に、酸化マグネシウム100重量部に対して25重量部の分散剤(ポリグリセリン脂肪酸エステル)を加え、撹拌機で撹拌後、ビーズミルを用い分散し、固形分20%の酸化マグネシウムの分散体溶液(1)を得た。
【0110】
[製造例8]
酸化マグネシウム粉体(平均粒子径3.5μm、結晶子径0.01μm、BET比表面積145m/g)の懸濁水溶液に、酸化マグネシウム100重量部に対して35重量部の分散剤(ポリアクリル酸Na中和物)を加え、撹拌機で撹拌後、ビーズミルを用い分散し、固形分20%の酸化マグネシウムの分散体水溶液(2)を得た。
【0111】
[実施例1]
PVAとEMAの重量比(固形分)が30/70になるように、製造例1のPVA水溶液と製造例2のEMA水溶液とを混合し、固形分10%の混合液(=バリア層形成用塗料)を得た。2軸延伸ナイロンフィルム(厚み15μm)上に、上記PVA、EMA混合液をバーコーターNo.4を用いて塗工し、電気オーブンで80℃2分乾燥した後、電気オーブンで180℃2分乾燥及び熱処理を行い、厚さ0.5μmの皮膜を形成し、積層フィルム1を得た。
【0112】
製造例7の酸化マグネシウムの分散体溶液(1)に、製造例5のバイロンGK130ポリエステル溶液と、ポリイソシアネート化合物(東洋インキ製造社製、BX4773)を、酸化マグネシウム/ポリエステル/ポリイソシアネートの重量比が20/83.3/16.7になるように調整し、さらに触媒としてジオクチル錫ラウレート(三共有機合成社製、STANN SNT−1F)1%酢酸エチル溶液、およびトルエンを混合し、固形分10%の混合液(=オーバーコート層形成用塗料)を得た。
【0113】
得られた積層フィルム1上に、上記オーバーコート層形成用塗料をバーコーターNo.4で塗工し、電気オーブンで80℃30秒乾燥及び熱処理を行い、厚さ0.7μmの皮膜を形成し、積層フィルム2を得た。
【0114】
水性ポリウレタン(三井武田ケミカル社製、WS5100、30%水溶液)を調整し、固形分7.5%の混合液(=トップコート層形成用塗料)を得た。
【0115】
得られた積層フィルム2上に、上記トップコート層形成用塗料をバーコーターNo.6で塗工し、電気オーブンで100℃2分乾燥及び熱処理を行い、厚さ0.7μmの皮膜を形成し、40℃3日間エージング処理を行い、(I)(II)(III)(IV)の順に積層されたガスバリア積層体を得た。この積層体の外観を目視評価した結果と酸素ガス透過度を測定した結果を表1に示す。
【0116】
ガスバリア積層体の(IV)上にラミネート接着剤層(VI)を形成(東洋モートン社製、TES4644/TCS4645を乾燥膜厚3μmになるようにドライラミネーターにより塗布して形成)した後、接着剤層(VI)とヒートシール層(VII)(東セロ社製LLDPE−50μm:TUX−FCD)を貼り合わせ、40℃3日間養生し接着剤層(VI)を硬化させ、(I)(II)(III)(IV)(VI)(VII)の順に積層された積層物を得た。この積層物のラミネート強力を測定した結果を表1に示す。
【0117】
[実施例2]
酸化マグネシウムの分散体溶液(1)とバイロンGK130ポリエステル溶液とポリイソシアネートの重量比を、酸化マグネシウム/ポリエステル/ポリイソシアネート=50/83.3/16.7に変更した以外は実施例1と同様にしてガスバリア性積層体および積層物を得た。積層体の外観目視評価と酸素ガス透過度測定、積層物のラミネート強力測定を行った結果を表1に示す。
【0118】
[実施例3]
酸化マグネシウムの分散体溶液(1)を酸化マグネシウム粉末に変更した以外は実施例1と同様にしてガスバリア性積層体および積層物を得た。積層体の外観目視評価と酸素ガス透過度測定、積層物のラミネート強力測定を行った結果を表1に示す。
【0119】
[実施例4]
バリアコート層形成用塗料(C)を構成するポリカルボン酸系ポリマー(B)を製造例3のPAA水溶液に変更した以外は実施例1と同様にしてガスバリア性積層体および積層物を得た。積層体の外観目視評価と酸素ガス透過度測定、積層物のラミネート強力測定を行った結果を表1に示す。
【0120】
[実施例5]
バリアコート層形成用塗料(C)を構成するポリアルコール系ポリマー(A)を製造例4のプルラン水溶液に変更した以外は実施例1と同様にしてガスバリア性積層体および積層物を得た。積層体の外観目視評価と酸素ガス透過度測定、積層物のラミネート強力測定を行った結果を表1に示す。
【0121】
[実施例6]
製造例6のバイロン226ポリエステル溶液と、ポリイソシアネート(住友化学(株)製、スミジュール3300)を、ポリエステル/ポリイソシアネートの重量比が83.3/16.7になるように調整し、さらに触媒としてジオクチル錫ラウレート(三共有機合成社製、STANN SNT−1F)1%酢酸エチル溶液、およびトルエン、酢酸エチル、MEKを混合し、固形分7.5%の混合液(=トップコート層形成用塗料)を得た。
上記トップコート層形成用塗料を用いたことと、トップコート層形成時の乾燥及び熱処理条件を80℃30秒にしたこと以外は実施例1と同様にして、ガスバリア性積層体および積層物を得た。積層体の外観目視評価と酸素ガス透過度測定、積層物のラミネート強力測定を行った結果を表1に示す。
【0122】
[実施例7]
製造例8の酸化マグネシウムの分散体水溶液(2)に、水性ポリウレタン(三井武田ケミカル社製、W635)とポリイソシアネート化合物(日本化薬(株)製、アクアネート100)の水分散溶液を、酸化マグネシウム/ポリウレタン/ポリイソシアネートの重量比が20/83.3/16.7になるように調整し、固形分10%の混合液(=オーバーコート層形成用塗料)を得た。
上記オーバーコート層形成用塗料を用いたことと、オーバーコート層形成時の乾燥及び熱処理条件を120℃2分にしたこと以外は実施例1と同様にして、ガスバリア性積層体および積層物を得た。積層体の外観目視評価と酸素ガス透過度測定、積層物のラミネート強力測定を行った結果を表1に示す。
【0123】
[実施例8]
炭酸カルシウム分散体水溶液(竹原化学工業(株)製、カルミンML)を用いた以外は、実施例7と同様にして、ガスバリア性積層体および積層物を得た。積層体の外観目視評価と酸素ガス透過度測定、積層物のラミネート強力測定を行った結果を表1に示す。
【0124】
[実施例9]
酸化亜鉛分散体水溶液(住友大阪セメント社製、ZW143)を用いた以外は、実施例7と同様にして、ガスバリア性積層体および積層物を得た。積層体の外観目視評価と酸素ガス透過度測定、積層物のラミネート強力測定を行った結果を表1に示す。
【0125】
[実施例10]
炭酸リチウム塩、水性ポリウレタン(第一工業製薬社製、スーパーフレックス460)、ポリイソシアネート化合物(BASF社製、HW−100)を、重量比が15/70/30になるように調整し、塗料樹脂固形分10%の混合液(=オーバーコート層形成用塗料)を得た。
上記オーバーコート層形成用塗料を用いたこと以外は実施例7と同様にして、ガスバリア性積層体および積層物を得た。積層体の外観目視評価と酸素ガス透過度測定、積層物のラミネート強力測定を行った結果を表1に示す。
【0126】
[実施例11]
製造例8の酸化マグネシウムの分散体水溶液(2)、炭酸リチウム塩、水性ポリウレタン(第一工業製薬社製、スーパーフレックス460)、ポリイソシアネート化合物(BASF社製、HW−100)を用い、酸化マグネシウム/炭酸リチウム/ポリウレタン/ポリイソシアネートの重量比が15/5/70/30になるように調整し、塗料樹脂固形分10%の混合液(=オーバーコート層形成用塗料)を得た。
上記オーバーコート層形成用塗料を用いたこと以外は実施例7と同様にして、ガスバリア性積層体および積層物を得た。積層体の外観目視評価と酸素ガス透過度測定、積層物のラミネート強力測定を行った結果を表1に示す。
【0127】
[比較例1]
酸化マグネシウムの分散体溶液(1)とバイロンGK130ポリエステル溶液とポリイソシアネートの重量比を、酸化マグネシウム/ポリエステル/ポリイソシアネート=0/83.3/16.7(酸化マグネシウムを含有しない)に変更した以外は実施例1と同様にしてガスバリア性積層体および積層物を得た。積層体の外観目視評価と酸素ガス透過度測定、積層物のラミネート強力測定を行った結果を表1に示す。
【0128】
[比較例2]
トップコート層を設けないこと以外は実施例1と同様にして、(I)(II)(III)の順に積層されたガスバリア性積層体、および(I)(II)(III)(VI)(VII)の順に積層された積層物を得た。積層体の外観目視評価と酸素ガス透過度測定、積層物のラミネート強力測定を行った結果を表1に示す。
【0129】
[比較例3]
酸化マグネシウムの分散体溶液(1)を酸化マグネシウム粉末に変更した以外は比較例2と同様にして、(I)(II)(III)の順に積層されたガスバリア性積層体、および(I)(II)(III)(VI)(VII)の順に積層された積層物を得た。積層体の外観目視評価と酸素ガス透過度測定、積層物のラミネート強力測定を行った結果を表1に示す。
【0130】
[比較例4]
オーバーコート層およびトップコート層を設けないこと以外は実施例1と同様にして、(I)(II)の順に積層されたガスバリア性積層体(=実施例1の積層フィルム1)、および(I)(II)(VI)(VII)の順に積層された積層物を得た。積層体の外観目視評価と酸素ガス透過度測定、積層物のラミネート強力測定を行った結果を表1に示す。
【0131】
[比較例5]
オーバーコート層を設けないこと以外は実施例1と同様にして、(I)(II)(IV)の順に積層されたガスバリア性積層体、および(I)(II)(IV)(VI)(VII)の順に積層された積層物を得た。積層体の外観目視評価と酸素ガス透過度測定、積層物のラミネート強力測定を行った結果を表1に示す。
【0132】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック基材(I)に直に、又はアンカーコート層を介して基材上に、
ポリアルコール系ポリマー(A)とポリカルボン酸系ポリマー(B)とを含有するガスバリア層形成用塗料(C)から形成されるガスバリア層(II)と、
1価の金属化合物(D)および/または2価以上の金属化合物(E)を含有するオーバーコート層形成用塗料(F)から形成されるオーバーコート層(III)と、
トップコート層形成用塗料(G)から形成されるトップコート層(IV)とが順次積層されてなるガスバリア性積層体。
【請求項2】
トップコート層形成用塗料(G)が、水溶液または水分散液であることを特徴とする請求項1記載のガスバリア性積層体。
【請求項3】
オーバーコート層形成用塗料(F)が、有機溶剤系塗液であることを特徴とする請求項1または2に記載のガスバリア性積層体。
【請求項4】
ポリアルコール系ポリマー(A)が、ポリビニルアルコール、エチレンとビニルアルコールとの共重合体、または糖類であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のガスバリア性積層体。
【請求項5】
ポリカルボン酸系ポリマー(B)が、オレフィン−マレイン酸共重合体及び/又はポリ(メタ)アクリル酸であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のガスバリア性積層体。
【請求項6】
オーバーコート層(III)が、ガラス転移温度が70℃以下のポリエステルポリオールとポリイソシアネートとから形成されることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のガスバリア性積層体。
【請求項7】
2価以上の金属化合物(E)が、Mgおよび/またはCaの、水酸化物、酸化物、炭酸塩のうち一種以上を含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のガスバリア性積層体。
【請求項8】
2価以上の金属化合物(E)が、分散剤(H)を用いて分散されていることを特徴とする請求項7記載のガスバリア性積層体。
【請求項9】
プラスチック基材(I)に直に、又はアンカーコート層を介して基材上に、
ポリアルコール系ポリマー(A)とポリカルボン酸系ポリマー(B)とを含有するガスバリア層形成用塗料(C)から形成されるガスバリア層(II)と、
1価の金属化合物(D)および/または2価以上の金属化合物(E)を含有するオーバーコート層形成用塗料(F)から形成されるオーバーコート層(III)と、
トップコート層形成用塗料(G)から形成されるトップコート層(IV)とを順次積層することを特徴とするガスバリア性積層体の製造方法。
【請求項10】
請求項1記載のガスバリア性積層体のトップコート層(IV)に直に、または印刷層(V)を介してラミネート接着剤層(VI)、ヒートシール層(VII)の順に積層してなる積層物。


【公開番号】特開2007−112115(P2007−112115A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−211067(P2006−211067)
【出願日】平成18年8月2日(2006.8.2)
【出願人】(000004503)ユニチカ株式会社 (1,214)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】