説明

ガスメーターバルブ

【課題】可能な限り簡単な機械的設計でありながら、根本的な条件が大きく変化した場合でも、ガスの流量を高精度で計測することができるガスメーターバルブを提供する。
【解決手段】本発明のガスメーターバルブ(1)は、バルブシート(2)と、最大開位置においてバルブシート(2)から離間している一方、最大閉位置においてバルブシートに対して押し付けられる閉塞部材(3)と、弾性付勢装置(4)と、弾性付勢装置(4)を用いて最大開位置から最大閉位置まで閉方向(6)に閉塞部材(3)の位置を調節するための調節装置(5)と、を備えている。少なくとも閉方向(6)について、調節装置(5)の弾性付勢装置(4)が、閉方向について直列に機械的に連結され、かつ、相互に弾性特性が異なる複数の弾性要素(7a)(7b)を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスメーターバルブに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なガスメーターバルブは、気密のチャンバ等において実施される製造過程に必要とされているいわゆる真空技術において用いられている。ガスメーターバルブには、たとえば、製造またはさらなる処理過程において気体の反応物質の量、または、あるレベルで閉塞されている反応チャンバの保持圧力の正確な計測値を提供することが要求されている。ガスメーターバルブは、一方では非常に高い負圧領域において半永久的な金属密封状態で確実に閉塞され、かつ、他方ではそのような状況下でもガスを高精度で計測する必要がある。その結果、ガスメーターバルブの製造には非常に高い精度が要求される(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第4903938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、当該バルブは温度に対して非常に敏感である。
【0005】
そこで、本発明は、可能な限り簡単な機械的設計でありながら、根本的な条件が大きく変化した場合でも、ガスの流量を高精度で計測することができるガスメーターバルブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、バルブシートと、最大開位置において前記バルブシートから離間している一方、最大閉位置において前記バルブシートに対して押し付けられる閉塞部材と、弾性付勢装置と、前記弾性付勢装置を用いて最大開位置から最大閉位置まで閉方向に前記閉塞部材の位置を調節するための調節装置と、を備えているガスメーターバルブに関する。
【0007】
本発明のガスメーターバルブは、少なくとも前記閉方向について、前記調節装置の前記弾性付勢装置が、前記閉方向について直列に機械的に連結され、かつ、相互に弾性特性が異なる複数の弾性要素を有していることを特徴とする。
【0008】
本発明の基本的な思想は、複数の弾性要素が直接的に機械的に連結されることにより、それぞれの場合に機能するものの相互に異なる弾性特性が、閉塞行程を通じて有効にされることにある。ここで「直接的に機械的に連結される」とは、当該複数の弾性要素が直接的または間接的にお互いに支持されていることを意味する。多くの場合、当該複数の弾性要素は、一方が他方の背後に局所的に配置される。基本的に、閉塞行程のある部分行程に沿って一方の弾性要素のみが有効である、または、その弾性特性のみが当該部分行程に沿って有効であることが好ましい。換言すると、それぞれの部分行程に沿った弾性付勢装置の付勢特性は、基本的に複数の弾性要素のうち1つの弾性要素のみにより決定または左右される。
【0009】
原則的に、先行技術における公知のすべての弾性要素がばね要素としてみなされる。しかし、皿ばね、コイルばねまたはエラストマー要素等の機械的ばね要素が好適な形態で使用される。300℃までの高温耐性を実現するため、ステンレススチール製または高級スチール製のばね要素が用いられることが好ましい。あらゆる場合において、ばね要素のばね特性または弾性特性に再現性があり、かつ、環境、特に温度の影響を可能な限り受けないことが重要である。
【0010】
閉塞行程は、調節装置の行程または変位であって、閉塞部材が閉方向について最大開位置から最大閉位置まで動かされる際にこれを包含する。この場合、閉塞部材により同時に実行される当該変位は、閉塞行程の長さまたは変位高さに対して正確に一致している必要はない。原則として、完全開位置と、閉塞位置がバルブシートに対して完全に当接する第1当接位置との間の閉塞部材の変位は、調節装置の第1部分行程と一致していてもよく、閉塞行程の当該部分行程よりも短い。第1当接位置と最大閉位置との間で、閉塞部材がそれ以上変位し難いまたは決して変位できない位置において、最大閉位置における密封のための所望の圧力抵抗を実現するために弾性変形する。これに一致する調節装置の第2部分行程は、原則として、計測可能、または、第1当接位置および完全閉位置の間に存在するまたは計測不能な程度の閉塞装置の変位よりも実質的に大きい。閉塞部材が完全開位置において、バルブシートから離間する範囲ではあるが完全に上昇することができることに触れておく。調節装置の閉塞行程は、アクチュエータに配置されている調節装置の位置において測定され、または、閉塞行程の計測が弾性要素の弾性特性の影響を受けていないので、調節装置のアクチュエータと弾性付勢装置の第1弾性要素との間の位置において測定される。「第1当接位置」は閉塞部材の最大開位置および最大閉位置の中間位置であって、閉塞部材がバルブシートに最初に完全に当接する際の位置を意味している。最大開位置および第1当接位置の間で、閉塞部材は少なくともバルブシートから離間する範囲で変位する。
【0011】
閉塞装置の位置を調節するための調節装置のさまざまな変形態様が可能である。たとえば、調節装置は手によって操作されてもよい。そのため、調節装置はたとえば回転操作ハンドルをアクチュエータとして有し、計測対象であるガス量がガスメーターバルブのマニュアル操作により調節される。当該態様は、ガス流量のみが比較的頻繁に変更される場合に適している。ガスメーターバルブがより頻繁に調節される必要がある場合、調節装置に電気式、ピエゾ電気式、気圧式または油圧式アクチュエータ等が採用されてもよい。ガスメーターバルブが外側からアクセス困難な場所に配置される場合も同様である。
【0012】
前記調節装置が、前記閉塞部材を前記閉方向に位置調節する場合、閉塞行程に沿って変位可能であり、少なくとも1つの弾性要素が比較的柔軟であり、かつ、前記閉塞部材が前記最大開位置と前記バルブシートに対して完全に当接する第1当接位置との間に位置している場合、前記閉塞行程の第1部分行程において少なくとも優先的に作用するように構成され、少なくとも他の1つの弾性要素が前記少なくとも1つの弾性要素よりも強硬であり、かつ、前記閉塞部材が前記第1当接位置と前記最大閉位置との間に位置している場合、前記閉塞行程の第2部分行程において少なくとも優先的に作用するように構成されていることが好ましい。
【0013】
ガス流量を計測する観点から、前記弾性付勢装置、好ましくは前記少なくとも1つの弾性要素が、前記閉塞部材が前記最大開位置および前記第1当接位置の間に位置している場合、前記第1部分行程に沿って前記閉塞行程1[mm]あたり20[N]、好ましくは25[N]の最大勾配を示す弾性特性を有することが好ましい。
【0014】
バルブシートに対する閉塞部材の押圧力の高精度での測定の観点から、前記弾性付勢装置、好ましくは前記他の少なくとも1つの弾性要素が、前記閉塞部材が前記最大開位置および前記第1当接位置の間に位置している場合、前記第2部分行程に沿って、前記閉塞行程1[mm]あたり100〜1000[N]または200〜800[N]の最大勾配を示す弾性特性を有することが好ましい。
【0015】
測定対象となる当該力は閉塞装置において定められ、閉塞行程または部分行程は前述のように調節装置において測定される。
【0016】
異なる弾性要素が直列に連結されている場合、弾性付勢装置の全体的な弾性特性は、少なくとも優先的に最も弱いまたは最も柔軟な弾性要素による弱い力により定められることが好ましい。より強い弾性要素は、当該弱い力の範囲で実質的に強硬な要素として機能する。当該弱い力におけるその弾性特性は弾性付勢装置の弾性特性にほとんど影響を及ぼさない。強い力においても可能な範囲で定められる弾性特性を保持するため、ある行程からより柔軟な弾性要素が弾性付勢装置の弾性特性に影響しないことが好ましい。閉塞行程のうちある部分行程は、ある弾性要素の影響から外される。少なくとも1つの、好ましくはそれぞれの弾性要素が、調節装置の少なくとも1つの停止部材と相関し、当該停止部材に到達してから閉方向についての閉塞部材の継続的な位置調節は、停止部材が相関する弾性要素による影響を受けない。対応する停止部材に到達したら直ちに、当該停止部材に相関する弾性要素は、閉方向について弾性付勢装置の弾性特性に影響を及ぼさない。停止部材の相互の当接によって弾性要素は短絡または無効化される。ガスメーターバルブの小型化の観点から、弾性要素は相互に同軸に配列されることが好ましい。閉塞行程は一部または全部が直線状に延在していることが好ましい。
【0017】
コイルばねおよび皿ばねのうち一方又は両方が弾性要素として用いられてもよい。弾性要素は金属により構成され、熱的安定性の観点からステンレススチール、防錆スチールまたは高級スチールにより構成されていることが好ましい。
【0018】
少なくとも1つの弾性要素が、閉塞部材が最大開位置とバルブシートに対して完全に当接する第1当接位置との間に位置している場合、閉塞行程の第1部分行程において少なくとも優先的に作用するコイルばねとして構成され、少なくとも他の1つの弾性要素が、閉塞部材が第1当接位置と最大閉位置との間に位置している場合、閉塞行程の第2部分行程において少なくとも優先的に作用する皿ばねとして構成されていることが好ましい。
【0019】
調節装置に対して開方向に作用する反力を定めるため、本発明の一態様によれば、ガスメーターバルブが、閉方向の反対方向に閉塞部材を付勢する開放ばねを備えている。開放ばねはバルブシートの領域に配置されている。開放ばねは、閉塞部材において調節装置に対して反対側に設けられている。開放ばねは閉塞部材に対して直接的に当接していてもよい。開放ばねは、たとえば皿ばねであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態としてのガスメーターバルブの外側からの斜視図。
【図2】最大開位置におけるガスメーターバルブの縦断面図。
【図3】閉塞部材がバルブシートに完全に当接している第1当接位置におけるガスメーターバルブの縦断面図。
【図4】図3のA部分拡大図。
【図5】本発明の一実施形態としてのガスメーターバルブの弾性付勢装置の弾性特性に関する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1に示されている外観斜視図において、まず、ガスメーターバルブ1のハウジング16の存在が認められる。上部分および底部分により構成されている二部構成のハウジング16であってもよい。ハウジング16は、単一部品で構成されていてもよく、または、3つ以上の部品により構成されていてもよい。本実施形態では、ハウジング16はすべての場合において、調節装置5のアクチュエータとして機能する回転操作ハンドル17によって上が塞がれている。回転操作ハンドル17がハウジング16に対して回転されることにより、計測されるガスの量またはガス流量が調節される。目盛18で任意時点での設定状態がわかる。目盛18は、閉塞行程またはこれとは反対の開放行程における調節装置5の位置を示している。ハウジング16はガス流入開口部14およびガス流出開口部15を備えている。ガス量、すなわちガス流入開口部14およびガス流出開口部15の間を流れるガスの流量は、閉塞部材3およびバルブシート2を用いて調節される。しかし、ガスは、開口部15が流入開口部となり、開口部14が流出開口部となるように流れることも可能である。この場合もガス流量は、閉塞部材3およびバルブシート2を用いて調節される。
【0022】
図2は図1のガスメーターバルブの縦断面図を示している。図2に示されている位置において、本実施形態ではダイヤフラムにより構成されている閉塞部材3は、ガスメーターバルブ1が最も解放される、バルブシート2から離間している最大開位置にある。この位置において、ガス流入開口部14を通じて流入したガスは、バルブシート2と閉塞部材3との間隙を通り、ガス流出開口部15から流出する。本実施形態では回転操作ハンドル17が回転されることによりガスメーターバルブ1が調節される。スピンドル19が回転しないように回転操作ハンドル17に取り付けられている。スピンドル19はナット20に係合する。回転操作ハンドル17、ひいてはスピンドル19を回転させることにより、ナット20が閉方向6またはその反対方向に変位する。スピンドル19が回転されているとき、ナット20が同調しないように、ハウジング16の対応する延長孔30に案内され、同時に目盛18を構成するひねり防止部材29が設けられている。本実施形態では、ひねり防止部材29はさらに、調節装置5の端部位置を定義する縦停止部材を構成する。これは、調節装置5の位置が過剰に調節されることに由来する閉塞部材3の損傷を防止する。端部位置を定める縦停止部材は他の形態によっても構成されうる。
【0023】
回転操作ハンドル17、スピンドル19およびナット20は調節装置5の構成要素である。調節装置5は弾性付勢装置4をさらに備え、弾性付勢装置4は閉方向6について装置を臨んだ場合に直列に機械的に連結されている、相互に弾性特性が異なる複数の弾性要素7aおよび7bを備えている。本実施形態では、コイルまたはヘリカルばねが第1弾性要素7aとしてナット20により支持されている。第1弾性要素7aは、すべての弾性要素7aおよび7bの中で最も柔軟性が高い。他の全ての第2弾性要素7bは皿ばねとして構成され、ここでは6つの皿ばね7bが用いられ、厚さが異なることからわかるように相互に異なる弾性特性を有している。ナット20の反対側で、第1弾性要素7aは、第1中間部材21により支持されている。第1中間部材21および第2中間部材23の間で、皿ばねにより構成されている第2弾性要素7bの配列、および、隣接しあう第2弾性要素7aの間に配置されている第3中間部材24が存在する。第1中間部材21および第2中間部材23の最大限可能な間隙は、調節ネジ22によって設定される。弾性要素7aおよび7b最初の緊張力も同様に設定される。本実施形態では、弾性要素7aおよび7bの強硬性はナット20から第2中間部材23に向かって増加している。当該構成は必須ではない。個々の弾性要素7aおよび7bの空間的配列は、ガスメーターバルブ1の機能にとっては2次的な意味しかもたない。
【0024】
スピンドル19の閉塞部材3に近い側の端部および第1中間部材21の対向する端部は一対の停止部材12aを構成する。当該停止部材12aが相互に当接していない状態では、弾性付勢装置4の弾性特性は実質的にまたは少なくとも優先的に、コイルばねまたはヘリカルばねとして構成されている第1弾性要素7aの弾性特性である。これは、閉方向6について閉塞行程8の第1部分行程9に該当する。第1部分行程9は、閉塞部材3が図2の最大開位置および図3の第1当接位置の間の位置に相当する。2つの停止部材12aが当接したとたんに、第1弾性要素7aは停止部材12aにより短絡または無効化されるので、第1弾性要素7aの弾性特性は弾性付勢装置4の弾性特性に影響しなくなる。第1弾性要素7aと当接している停止部材12aが相互に当接した際に閉塞部材3がバルブシート2に対して最初に完全に当接する。しかし、必ずしもこうでなくてもよい。
【0025】
停止部材12aが相互に当接することにより第1弾性要素7aが弾性付勢装置4の弾性特性に影響しなくなったとたんに、弾性付勢装置4の弾性特性は実質的にまたは少なくとも優先的に、次に最も強硬な弾性要素7bにより定められる。本実施形態では、第1弾性要素7aの真下に配置され、最も薄い皿ばね7bが該当する。
【0026】
ガスメーターバルブ1が閉方向6にさらに調節された場合、第1皿ばねまたは第2弾性要素7bに対応する停止部材12bが相互に当接するまで、当該第1皿ばねが弾性付勢装置4の弾性特性を定める。停止部材12bは、対応する第1中間部材21および閉方向6についてこれに続く第3中間部材24のそれぞれの表面又は端部により構成されている。当該停止部材12bが相互に当接した場合、第1皿ばね7bは短絡または無効化される。
【0027】
調節装置5が閉方向6にさらに調節された場合、次に最も強硬な第2皿ばねまたは第2弾性要素7bに対応する停止部材12bが相互に当接するまで、当該第2皿ばねが弾性付勢装置4の弾性特性を定める。これは、弾性付勢装置4の弾性特性が最も強硬な第2弾性要素7b、本実施形態では最も底にある皿ばねにより定まるような最後の第2部分行程10に至るまで同様に継続する。最後の第2部分行程10の端部において、閉塞部材3は最大閉位置に達する。
【0028】
ガスメーターバルブ1は、回転操作ハンドル17が反対方向に回転されることにより開かれる。弾性付勢装置4の弾性特性は、閉方向6の反対方向である開方向に向かって弾性要素7bおよび7aのそれぞれによって順次定められる。閉塞部材3を所定の力でバルブシート2から離間させるため、本実施形態では皿ばねにより構成されている開放ばね13が設けられている。弾性付勢装置4の閉塞動作において、開放動作中と同様に、開放ばね13は弾性付勢装置4に対して所定の弾性特性で反応する。
【0029】
図4は図3のA部分の拡大図であり、本実施形態ではダイヤフラムにより構成されている閉塞部材3は、図3と同様に、閉塞動作中において第1当接位置に達している。図3から、停止部材12bではなく停止部材12aが相互に当接していることがわかる。しかし、前述のように他の構成が採用されうる。
【0030】
図4はバルブシート2の周辺領域を拡大して示している。第2中間部材23は、補償ボール26が搭載されているノッチ31(刻み目)を有している。補償ボール26およびノッチ31および支持カップ27の湾曲凹部32の相互作用により、閉方向6に対して垂直な方向への力成分は消滅する。すなわち、ガイドスリーブ28に設けられている補償ボール26によって、閉方向6及びその反対の開方向の力成分のみが調節装置5から閉塞部材3に対して伝達される。
【0031】
図4から、開放ばね13がバルブシート2の領域に配置されていることがよくわかる。開放ばね13は、調節装置5の反対側において閉塞部材3に対して直接当接している。
【0032】
図5は本実施形態の構成の弾性付勢装置4の弾性特性を表わす線図を示している。閉塞部材3に対して閉方向6に作用する力Fは、調節装置5の閉方向6の行程Xに対して作用する。全閉塞行程8は、第1部分行程9と第2部分行程10とを含んでいる。閉塞行程8又は部分行程9および10は、目盛18により示されている行程、すなわち、本実施形態では回転操作ハンドル17により調節され、かつ、ナット20により計測される調節装置5の行程である。
【0033】
第1部分行程9に沿った弾性付勢装置4の弾性特性は第1弾性要素7aまたはその弾性特性により定められる。閉塞部材3は第1行程の終端で第1当接位置に達する。同時に2つの停止部材12aが相互に当接する。閉方向6についてこれに続く第2部分行程10において、弾性付勢装置4の弾性特性は次に強硬な第2弾性要素7b、すなわち、最も上にある皿ばねにより定められる。これは、図5において弾性特性の勾配11の明らかな増加により示されている。さらなる第2部分行程10に変遷した場合、その次に強硬な第2弾性要素7bがそれぞれの場合に機能し、対応する停止部材12bが相互に当接する。これは、最も強硬な第2弾性要素7bが機能する最後の第2部分行程10の終端に至り、閉塞部材3が最大閉位置に達するまで継続する。さらなる第2部分行程10において閉塞部材3をそれ以上変位させることは困難である。閉塞部材3に作用する圧力のみが高まり、その結果として閉塞部材3が弾性変形する。
【0034】
本発明の発展実施形態において、第1部分行程9は閉塞行程8の80%以上を占め、全体の力Fの約20%のみが第1部分行程9に沿って作用することが好ましい。当該領域におけるばね特性の許容差は小さく、好ましくは±5[N/mm]である。第2部分行程10において、閉塞行程8の20%以下が構成され、その一方で全体の力Fの80%以上が作用することが好ましい。この場合、ばね特性の許容差は比較的大きく、たとえば±50[N/mm]である。閉塞行程8の全長は10〜20[mm]であり、好ましくは14〜18[mm]である。前記実施形態において閉塞行程8は16[mm]である。前記実施形態における閉塞部材3は、調節装置5の第1部分行程9に沿って、好ましくは0.4[mm]の変位量だけ動かされる。閉塞部材3の変位量は多くの場合1[mm]未満の範囲であり、好ましくは0.5[mm]未満の範囲である。第2部分行程10において、前述のとおり、好ましくは閉塞部材3が弾性変形するだけである。閉塞部材3のバルブシート2に対して完全に当接する第1当接位置は第1部分行程9の端部位置に正確に一致している必要はない。当該第1当接位置は端部の前または後で実現されてもよい。調節装置5により閉塞部材3に作用させられるすべての力は、1500〜2000[N]、好ましくは約1800[N]である。
【符号の説明】
【0035】
1‥ガスメーターバルブ、2‥バルブシート、3‥閉塞部材、4‥弾性付勢装置、5‥調節装置、6‥閉方向、7a,7b‥弾性要素、8‥閉塞行程、9‥第1部分行程、10‥第2部分行程、11‥勾配、12a,12b‥停止部材、13‥開放ばね、14‥ガス流入開口部、15‥ガス流出開口部、16‥ハウジング、17‥回転操作ハンドル、18‥目盛、19‥スピンドル、20‥ナット、21‥第1中間部材、22‥調節ネジ、23‥第2中間部材、24‥第3中間部材、25‥ベアリング、26‥補償ボール、27‥支持カップ、28‥ガイドスリーブ、29‥ねじれ防止部材、30‥延長孔、31‥ノッチ、32‥湾曲凹部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルブシート(2)と、最大開位置において前記バルブシート(2)から離間している一方、最大閉位置において前記バルブシートに対して押し付けられる閉塞部材(3)と、弾性付勢装置(4)と、前記弾性付勢装置(4)を用いて最大開位置から最大閉位置まで閉方向(6)に前記閉塞部材(3)の位置を調節するための調節装置(5)と、を備えているガスメーターバルブ(1)であって、
少なくとも前記閉方向(6)について、前記調節装置(5)の前記弾性付勢装置(4)が、前記閉方向について直列に機械的に連結され、かつ、相互に弾性特性が異なる複数の弾性要素(7a)(7b)を有していることを特徴とするガスメーターバルブ。
【請求項2】
請求項1記載のガスメーターバルブ(1)であって、
前記調節装置(5)が、前記閉塞部材(3)を前記閉方向(6)に位置調節する場合、閉塞行程(8)に沿って変位可能であり、
前記複数の弾性要素のうち少なくとも1つの弾性要素(7a)が柔軟であり、かつ、前記閉塞部材(3)が前記最大開位置と前記バルブシート(2)に対して完全に当接する第1当接位置との間に位置している場合、前記閉塞行程(8)の第1部分行程(9)において少なくとも優先的に作用するように構成され、
前記複数の弾性要素のうち少なくとも他の1つの弾性要素(7b)が前記少なくとも1つの弾性要素(7a)よりも強硬であり、かつ、前記閉塞部材(3)が前記第1当接位置と前記最大閉位置との間に位置している場合、前記閉塞行程(8)の第2部分行程(10)において少なくとも優先的に作用するように構成されていることを特徴とするガスメーターバルブ。
【請求項3】
請求項1または2記載のガスメーターバルブであって、
前記調節装置(5)が、前記閉方向(6)について前記閉塞部材(3)を位置調節する際に前記閉塞行程(8)に沿って変位可能であり、前記弾性付勢装置(4)または前記少なくとも1つの弾性要素(7a)が、前記閉塞部材(3)が前記最大開位置および前記第1当接位置の間に位置している場合、前記第1部分行程(9)に沿って前記閉塞行程1[mm]あたり20[N]または25[N]の最大勾配(11)を示す弾性特性を有することを特徴とするガスメーターバルブ。
【請求項4】
請求項1〜3のうちいずれか1つに記載のガスメーターバルブであって、
前記調節装置(5)が、前記閉方向(6)に前記閉塞部材(3)を位置調節する際に前記閉塞行程(8)に沿って変位可能であり、前記弾性付勢装置(4)または前記他の少なくとも1つの弾性要素(7b)が、前記閉塞部材(3)が前記最大開位置および前記第1当接位置の間に位置している場合、前記第2部分行程(10)に沿って、前記閉塞行程1[mm]あたり100〜1000[N]または200〜800[N]の最大勾配(11)を示す弾性特性を有することを特徴とするガスメーターバルブ。
【請求項5】
請求項1〜4のうちいずれか1つに記載のガスメーターバルブであって、
前記複数の弾性要素(7a)(7b)のうち少なくとも1つまたはそれぞれに、前記調節装置(5)の少なくとも1つの停止部材(12a)(12b)が配置され、前記停止部材(12a)(12b)への到達後、前記閉塞部材(3)の前記閉方向(6)へのさらなる位置調節が、当該停止部材(12a)(12b)が配置されている前記弾性要素(7a)(7b)によって影響されないことを特徴とするガスメーターバルブ。
【請求項6】
請求項1〜5のうちいずれか1つに記載のガスメーターバルブであって、
前記弾性要素(7a)(7b)が相互に同軸に配置されていることを特徴とするガスメーターバルブ。
【請求項7】
請求項2〜6のうちいずれか1つに記載のガスメーターバルブであって、
前記閉塞行程(8)の一部または全部が直線状に延在していることを特徴とするガスメーターバルブ。
【請求項8】
請求項1〜7のうちいずれか1つに記載のガスメーターバルブであって、
前記少なくとも1つの弾性要素(7a)がコイルばねであり、これに加えてまたは代えて、前記他の少なくとも1つの弾性要素(7b)が皿ばねであることを特徴とするガスメーターバルブ。
【請求項9】
請求項1〜8のうちいずれか1つに記載のガスメーターバルブであって、
前記調節装置(5)が、前記閉塞部材(3)を前記閉方向(6)に位置決めする場合、閉塞行程(8)に沿って変位可能であり、
前記複数の弾性要素のうち少なくとも1つの弾性要素(7a)が、前記閉塞部材(3)が前記最大開位置と前記第1当接位置との間に位置している場合、前記閉塞行程(8)の第1部分行程(9)において少なくとも優先的に作用するコイルばねとして構成され、
前記複数の弾性要素のうち少なくとも他の1つの弾性要素(7b)が、前記閉塞部材(3)が前記第1当接位置と前記最大閉位置との間に位置している場合、前記閉塞行程(8)の第2部分行程(10)において少なくとも優先的に作用する皿ばねとして構成されていることを特徴とするガスメーターバルブ。
【請求項10】
請求項1〜9のうちいずれか1つに記載のガスメーターバルブであって、
前記バルブシート(2)の領域に配置され、前記閉塞部材(3)を前記閉方向の反対方向に付勢する開放ばね(13)または皿ばねをさらに備えていることを特徴とするガスメーターバルブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−108625(P2013−108625A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−255502(P2012−255502)
【出願日】平成24年11月21日(2012.11.21)
【出願人】(593030945)バット ホールディング アーゲー (31)
【Fターム(参考)】