説明

ガスワイピング装置

【課題】鋼帯およびガスワイピングノズルを包囲する箱状体を備え、鋼帯へのスプラッシュ付着を抑制可能なガスワイピング装置を得る。
【解決手段】ガスワイピング装置100は、溶融金属11が貯留されているメッキ浴槽10と、メッキ浴槽10上部に載置された箱状体20とを備える。箱状体20は内部に、管状部材25a,25bのそれぞれに帯状体30を挟むように対向して設けられたガスワイピングノズル26a,26bを備える。ガスワイピングノズル26aは、鋼帯30にガスを噴射可能な第1噴射部26aと、ガスワイピングノズル26b方向にガスを噴射可能な第2噴射部26aおよび第3噴射部26aとを有する。ガスワイピングノズル26bは、鋼帯30にガスを噴射可能な第4噴射部26bと、ガスワイピングノズル26aに方向にガスを噴射可能な第5噴射部26bおよび第6噴射部26bとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼帯へのスプラッシュ付着を抑制するガスワイピング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、溶融金属に浸漬された鋼帯にガスを吹き付けて鋼帯に付着したメッキ厚みを制御するガスワイピング装置においては、鋼帯の表面肌の荒れ防止を目的として、シールボックスを設けたものが知られている。
【0003】
この種のガスワイピング装置は、鋼帯およびガスを噴射するガスワイピングノズルをシールボックスにより包囲するとともに、シールボックス内の酸素濃度を規定値内(例えば1%以内)に制御することによって、鋼帯の表面肌の荒れを防止できる。ところが、シールボックスを設けたガスワイピング装置にあっては、シールボックスを設けないものと比較すると、鋼帯へのスプラッシュの付着が顕著なものとなり、その結果、スプラッシュ斑点模様の個数が増加してしまうといった問題があった。
【0004】
そこで、例えば特許文献1に開示されているガスワイピング装置では、帯状体(鋼帯)およびガスワイピングノズルを包囲し、該帯状体の出口部を備えた囲繞体、該囲繞体内にあって、前記ガスワイピングノズルの少なくとも1の下端面に接して配置され、前記帯状体の走行する開口部を残して、該囲繞体を前記ガスワイピングノズルが配置された上部空間と下部空間とに分離、区画する、該帯状体を挟んで対向配置された一対のバッフル板、および、前記囲繞体の下部空間に連通し、吸引、排気手段に接続したワイピングガス排出口を備えることで、鋼帯へのスプラッシュの付着の抑制を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭62−193671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、AlおよびMgがZn中に適量含有されためっき浴を用いた溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板は、他のZn系めっき鋼板と比べて耐食性に優れるので、近年、建材、土木建築、住宅、電機などの産業分野における適用事例が増えている。
【0007】
このような溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板の工業的な製造にあたっては、得られる溶融めっき鋼板が優れた耐食性を有することはもとより、耐食性および表面外観が良好な帯成品を、高い生産性のもとで製造できることが要求される。
【0008】
Zn−Al−Mgの三元平衡状態図上では、Alが約4重量%付近,Mgが約3重量%近傍において、融点が最も低くなる三元共晶点(融点=343℃)が見られる。しかし、この三元共晶点近傍の浴組成を採用した場合に、めっき層の組織中にZn11Mg2系の相(Al/Zn/Zn11Mg2の三元共晶の素地自体、該素地中に〔Al初晶〕が混在してなるZn11Mg2系の相、または/および該素地中に〔Al初晶〕と〔Zn単相〕とが混在してなるZn11Mg2系の相)が局部的に晶出する現象が起きる。この局部的に晶出したZn11Mg2系の相は、Zn2Mg系の相よりも変色しやすく、放置しておくと、この部分が非常に目立った色調となり、溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板の表面外観を著しく悪くする。また、このZn11Mg2系の相が局部的に晶出した場合に、この晶出部分が優先的に腐食される現象も起きる。溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板は、その他のZn系めっき鋼板と比較して、光沢感のある美麗な表面外観を有しているため、微細な斑点模様であっても目立ってしまい、製品価値を著しく低下させてしまう。
【0009】
溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板におけるZn11Mg2系の相の局部的な晶出は、めっき浴の浴温およびめっき後の冷却速度を適正範囲に制御することで防止できる(例えば特開平10−226865)。しかし、本発明者らは、これらの条件を適正範囲に制御している場合であっても、シールボックス内でガスワイピングにより発生したスプラッシュが、めっき金属が未凝固状態であるガスワイピング後の鋼帯に付着することで、Zn11Mg2系の相が晶出し斑点模様が発生すること、およびめっき金属が未凝固状態であるガスワイピング前の鋼帯にスプラッシュが付着した場合には、再溶融するため斑点模様が発生しないことを知見した。
【0010】
ガスワイピング後の鋼帯へのスプラッシュの付着を抑制するには、ガスワイピングノズルのノズル面(互いに対向して配置されるガスワイピングノズルの先端部同士を結ぶ面)よりも上方の鋼帯の通り道に向けてスプラッシュが回り込むことを抑制することが必要である。ノズル面よりも上方の鋼帯の通り道に向けてスプラッシュが回り込むことを抑制するには、好ましくは、シールボックス内において、対向して配置されたガスワイピングノズル間を除く全ての部位をシールすることである。とくに、ガスワイピングノズルの幅方向両端部における一のガスワイピングノズルとこれに対向する他のガスワイピングノズルとの間をいかにシールするかが重要な課題である。
【0011】
ガスワイピングノズルの幅方向両端部における一のガスワイピングノズルとこれに対向する他のガスワイピングノズルとの間をシールする手法として、一のガスワイピングノズルと他のガスワイピングノズルとの間を塞ぐ部材を設ける手法が考えられる。
【0012】
しかしながら、この種のガスワイピング装置では、メッキ厚みを制御する制御方法の一つとして、互いに対向して配置されるガスワイピングノズルのノズル間距離を変更する手法が採られるので、一のガスワイピングノズルと他のガスワイピングノズルとの間を塞ぐ部材を設けることは困難である。また、ガスワイピングノズル周辺は高温故、一のガスワイピングノズルと他のガスワイピングノズルとの間を塞ぐように設けられた部材が変形してしまい、他に悪影響(例えば変形した部材が鋼帯に接触する等)を及ぼす可能性も否定できない。上記特許文献1のガスワイピング装置においても、ガスワイピングノズルの幅方向両端部からノズル面の上方に向けてスプラッシュが回り込んでくるので、この回り込みによる帯状体(鋼帯)へのスプラッシュ付着を抑制することができないのが実情である。
【0013】
そこで、本発明の目的は、ガスワイピングノズルを包囲する箱状体を備えたガスワイピング装置にあって、ガスワイピング後の鋼帯へのスプラッシュ付着を抑制することが可能なガスワイピング装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(1)本発明のガスワイピング装置は、溶融金属メッキ浴から引き上げられる鋼帯を挟んで配置され、前記鋼帯の表面に付着した過剰溶融金属を除去しうる第1ガスワイピングノズルおよび第2ガスワイピングノズルと、前記鋼帯の幅方向に沿って設けられ、前記第1のワイピングノズルに接続されている第1の管状部材と、前記鋼帯の幅方向に沿って設けられ、前記第2のワイピングノズルに接続されている第2の管状部材と、前記第1のガスワイピングノズル、前記第2のガスワイピングノズル、前記第1の管状部材および前記第2の管状部材を包囲する箱状体と、前記第1の管状部材の外壁に一端が固定され、他端が前記箱状体の内壁に固定されている第1の仕切り部材と、前記第2の管状部材の外壁に一端が固定され、他端が前記箱状体の内壁に固定されている第2の仕切り部材と、を備えるガスワイピング装置であって、前記第1のガスワイピングノズルが、前記鋼帯の幅方向全体にガスを噴射可能な第1噴射部と、前記第1噴射部の一方の端部から前記箱状体の幅方向における一方の内壁にいたるまで、前記第2のガスワイピングノズルに向かってガスを噴射可能な第2噴射部と、前記第1噴射部の他方の端部から前記箱状体の幅方向における他方の内壁にいたるまで、前記第2のガスワイピングノズルに向かってガスを噴射可能な第3噴射部と、を含むとともに、前記第2のガスワイピングノズルが、前記鋼帯の幅方向全体にガスを噴射可能な第4噴射部と、前記第4噴射部の一方の端部から前記箱状体の幅方向における一方の内壁にいたるまで、前記第1のガスワイピングノズルに向かってガスを噴射可能な第5噴射部と、前記第4噴射部の他方の端部から前記箱状体の幅方向における他方の内壁にいたるまで、記第1のガスワイピングノズルに向かってガスを噴射可能な第6噴射部と、を含むものである。
【0015】
上記(1)の構成のガスワイピング装置によれば、第1の仕切り部材により第1の管状部材の外壁と箱状体の内壁との間がシールされるとともに、第2の仕切り部材により第2の管状部材の外壁と箱状体の内壁との間がシールされる。すなわち、第1のガスワイピングノズルの先端部と第2のガスワイピングノズルの先端部とを結ぶノズル面よりも上方における鋼帯の通り道に向けて、第1の管状部材と箱状体の内壁との間または第2の管状部材と箱状体の内壁との間からのスプラッシュの回り込みを防止できる。また、第1のガスワイピングノズルおよび第2のガスワイピングノズルの幅方向両端部においても、第1のガスワイピングノズルと第2のガスワイピングノズルとの間から、上記のノズル面よりも上方の鋼帯の通り道に向けてのスプラッシュの回り込みを防止できる。つまり、ノズル面よりも下方において発生したスプラッシュが、互いに対向して配置される第1のガスワイピングノズルおよび第2のガスワイピングノズルのノズル幅を除く領域から、ノズル面よりも上方における鋼帯の通り道に向けて回り込むことを防止することが可能となる。したがって、第1のガスワイピングノズルおよび第2のガスワイピングノズルを包囲する箱状体を設けた場合であっても、第1のガスワイピングノズルおよび第2のガスワイピングノズルによって過剰な溶融金属を除去した後の鋼帯表面に、スプラッシュが付着することを抑制できる。しかも、ガスワイピングノズル周辺は高温であるが、一のガスワイピングノズルと他のガスワイピングノズルとの間を塞ぐように部材を設けた場合のように、例えば変形した部材が鋼帯に接触するといった事態が発生することを防止できる。
【0016】
(2)上記(1)構成のガスワイピング装置において、前記第2噴射部および前記第3噴射部は、当該第2噴射部および第3噴射部から噴射されるガス量が前記第1噴射部から噴射されるガス量よりも少なくなるように構成されているとともに、前記第5噴射部および前記第6噴射部は、当該第5噴射部および第6噴射部から噴射されるガス量が前記第4噴射部から噴射されるガス量よりも少なくなるように構成されていることが好ましい。
【0017】
上記(2)の構成のガスワイピング装置によれば、第2噴射部、第3噴射部、第5噴射部、および、第6噴射部では、鋼帯にガスを噴出するのではなくシールすることを目的としてガスを噴出するので、ガスの噴射量を調節できるようにすることで必要以上にガスを消費することを抑制しつつ、第1のガスワイピングノズルおよび第2のガスワイピングノズルの幅方向両端部においてノズル面よりも上方における鋼帯の通り道に向けて回り込むことを防止することが可能となる。
【0018】
(3)上記(1)または(2)の構成のガスワイピング装置において、前記第1のガスワイピングノズルおよび前記第2のガスワイピングノズルは、互いの距離が所定の範囲内で変更可能となるように、これらのうち少なくともいずれか一方が他方に対して平行移動可能であって、前記第1のガスワイピングノズルと前記第2のガスワイピングノズルとの間の距離に合わせて、前記第2噴射部から噴射されるガスと前記第5噴射部から噴射されるガスとが接触するように、且つ、前記第3噴射部から噴射されるガスと前記第6噴射部から噴射されるガスとが接触するように、ガスの噴射量を調節するガス噴射量調節部を備えていることが好ましい。
【0019】
上記(3)の構成のガスワイピング装置によれば、第1のガスワイピングノズルと第2のガスワイピングノズルとの間が最大距離にあるときであっても、第1のガスワイピングノズルおよび第2のガスワイピングノズルの幅方向両端部において、ガスの消費を抑制しつつ、ノズル面よりも上方における鋼帯の通り道に向けて回り込むことを防止することが可能となる。とくに、第1のガスワイピングノズルおよび第2のガスワイピングノズルのうち少なくともいずれか一方が他方に対して平行移動しうるなかであっても、鋼帯の幅方向両側がガスによってシールされるので、第1のガスワイピングノズルと第2のガスワイピングノズルとのノズル間距離にかかわらず、常に、ノズル面よりも上方における鋼帯の通り道に向けて回り込むことを防止することが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
溶融金属に浸漬された鋼帯にガスを吹き付けて鋼帯に付着しためっき厚みを制御するガスワイピング装置として本発明の装置を用いることで、ガスワイピングノズルの出側へのスプラッシュの回り込みを防ぎ、ガスワイピング後の鋼帯へのスプラッシュ付着を抑制できるため、スプラッシュ付着による表面外観の欠陥を大幅に低減することができる。特に、溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板の場合、めっき金属が未凝固状態であるガスワイピング後の鋼帯にスプラッシュが付着することでZn11Mg2系の相が晶出して斑点模様が発生するという問題があるが、本発明のガスワイピング装置により、斑点模様の発生や耐食性の低下を確実に抑制できるようになる。また、溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板における斑点模様の発生は、めっき金属が未凝固状態であるガスワイピング前の鋼帯においては、スプラッシュが付着しても再溶融し斑点模様が発生しないため、先行技術文献(特開昭62−193671)などのように、ガスワイピングノズルの下方である下部空間にスプラッシュ含有ガスの吸引、排気手段や、誘導するための案内板を設ける必要がない。したがって、本発明のガスワイピング装置は、簡易な構造とすることができ、シールガス使用量が増大することもない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態に係るガスワイピング装置の概略構成図である。
【図2】(a)が図1に示したガスワイピング装置における箱状体の斜視図、(b)が(a)に示した箱状体の内部構造を説明するための斜視図である。
【図3】図1に示したガスワイピング装置における箱状体の透過上視図である。
【図4】図1に示したガスワイピング装置における箱状体の拡大図である。
【図5】本発明の変形例に係るガスワイピング装置におけるガスワイピングノズルの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るガスワイピング装置について説明する。
【0023】
図1に示すように、本実施形態に係るガスワイピング装置100は、溶融金属11が貯留されているメッキ浴槽10の上部に配置されており、メッキ浴槽10上部に載置された箱状体20を備えているものである。
【0024】
メッキ浴槽10の内部には、鋼帯30をメッキ浴槽10の上部へ配送または支持するためのメインローラー12およびサブローラー13a,13bと、鋼帯30を外部(例えば炉)からメッキ浴槽10内へ送入するためのスナウト14と、が設けられている。
【0025】
図2(a)に示すように、箱状体20は、略筒状の本体21と、本体21の幅方向の両端部を閉塞するように設けられた閉塞部22、23と、溶融金属が表面にメッキされた鋼帯30を箱状体20内部から外部へと送出するための送出口24とを有する。箱状体20には、シールカーテン31が設けられている。このシールカーテン31はめっき鋼帯製造時には閉じて気密性を確保し、シールボックス内のドロスを排出する際に開口するものである。
【0026】
また、図1および図2(b)に示すように、ガスワイピング装置100は、箱状体20の内部に、鋼帯30の幅方向に沿って設けられた管状部材25a,25bと、管状部材25a,25bのそれぞれに鋼帯30を挟むように対向して設けられたガスワイピングノズル(第1のガスワイピングノズル26a、第2のガスワイピングノズル26b)と、管状部材25a,25bのそれぞれの外壁に一端が固定され、他端が箱状体20の内壁に固定されている蛇腹状カーテン27a,27bと、を備える。
【0027】
ガスワイピングノズル26aは、箱状体20内部の幅方向の略全域にわたってガスを噴射することができるように所定幅のスリットが形成された噴出口を有するとともに、第1噴射部26a(図3に示す仮想線26aと仮想線26aとの間)と、第2噴射部26a(図3に示す仮想線26aと箱状体22の内壁との間)と、第3噴射部26a(図3に示す仮想線26aと箱状体23の内壁との間)とを有する。
【0028】
第1噴射部26aは、鋼帯30の表面(第1噴射部26aと対向する側の面)に付着した過剰溶融金属を除去する機能を有しており、鋼帯30の幅方向全体に向かってガスを噴射することができるように構成されている。第2噴射部26aは、第1噴射部26aの幅方向における一方の端部から箱状体20の閉塞部22の内壁にいたるまで、ガスワイピングノズル26bに向かってガスを噴射できるように構成されている。第3噴射部26aは、第1噴射部26aの幅方向における他方の端部から箱状体20の閉塞部23の内壁にいたるまで、ガスワイピングノズル26bに向かってガスを噴射できるように構成されている
【0029】
なお、第1噴射部26a、第2噴射部26aおよび第3噴射部26aは、鋼帯30の幅方向の大きさにより決定付けられる部位であり、鋼帯30の幅方向の大きさが変われば、これに応じて、第1噴射部26aと第2噴射部26aと第3噴射部26aとを区切る部位(境界部)も変わる。
【0030】
ガスワイピングノズル26bは、ガスワイピングノズル26aと同様に、箱状体20内部の幅方向の全域にわたってガスを噴射することができる噴出口を有するとともに、第4噴射部26b(図3に示す仮想線26bと仮想線26bとの間)、第5噴射部26b(図3に示す仮想線26bと箱状体22の内壁との間)と、第6噴射部26b(図3に示す仮想線26bと箱状体23の内壁との間)とを有する。
【0031】
第4噴射部26bは、鋼帯30の表面(第4噴射部26bと対向する側の面)に付着した過剰溶融金属を除去する機能を有しており、鋼帯30の幅方向全体にガスを噴射することができるように構成されている。第5噴射部26bは、第4噴射部26bの幅方向における一方の端部から箱状体20の閉塞部22の内壁にいたるまで、ガスワイピングノズル26aに向かってガスを噴射できるように構成されている。第6噴射部26bは、第4噴射部26bの幅方向における他方の端部から箱状体20の閉塞部23の内壁にいたるまで、ガスワイピングノズル26bに向かってガスを噴射できるように構成されている。
【0032】
なお、第4噴射部26b、第5噴射部26bおよび第6噴射部26bは、第1噴射部26a、第2噴射部26aおよび第3噴射部26aと同様に、鋼帯30の幅方向の大きさにより決定付けられる部位であり、鋼帯30の幅方向の大きさが変われば、これに応じて、第4噴射部26bと第5噴射部26bと第6噴射部26bとを区切る部位(境界部)も変わる。
【0033】
ところで、ガスワイピングノズル26aは、管状部材25aの内部と連通しており、外部から上記ガス管(図示せず)を介して管状部材25a内部に送られてきたガスが、ガスワイピングノズル26aの先端(第1噴射部26a、第2噴射部26aおよび第3噴射部26aの先端)から鋼帯30の表面に向けて噴出するように構成されている。同様に、管状部材25bとガスワイピングノズル26bとは連通しており、外部から上記ガス管(図示せず)を介して管状部材25b内部に送られてきたガスが、ガスワイピングノズル26bの先端(第4噴射部26b、第5噴射部26bおよび第6噴射部26bの先端)から鋼帯30の表面に向けて噴出するように構成されている。なお、ガス管が図3紙面の上下左右方向に移動することができるように、閉塞部22,23は蛇腹構造とされている。
【0034】
上記の構成により、仮想線26aと仮想線26bとを結ぶ仮想線(図示せず)と、第2噴射部26aと、第5噴射部26bと、箱状体20の閉塞部22の内壁とによって囲まれる領域(図3の領域A)を、ガスワイピングノズル26aの先端とガスワイピングノズル26bの先端とを結ぶノズル面を境界とした上部と下部との間でシールすることが可能となる。すなわち、この領域Aにおいて、第2噴射部26aは、第1噴射部26aと同じ方向に向けてガスを噴射にするにもかかわらず、鋼帯30の表面に付着した過剰溶融金属を除去する機能を有さず、第5噴射部26bと相俟って、上記のノズル面を境界とした上部と下部との間でシールする機能を有することとなる。
【0035】
同様に、仮想線26aと仮想線26bとを結ぶ仮想線(図示せず)と、第3噴射部26aと、第6噴射部26bと、箱状体20の閉塞部22の内壁とによって囲まれる領域(図3の領域B)を、ガスワイピングノズル26aの先端とガスワイピングノズル26bの先端とを結ぶノズル面を境界とした上部と下部との間でシールすることが可能となる。すなわち、この領域Bにおいて、第3噴射部26aは、第1噴射部26aと同じ方向に向けてガスを噴射にするにもかかわらず、鋼帯30の表面に付着した過剰溶融金属を除去する機能を有さず、第6噴射部26bと相俟って、上記のノズル面を境界とした上部と下部との間でシールする機能を有することとなる。
【0036】
なお、図4の管状部材25a付近に示すように、管状部材25aは図4紙面の上下左右方向に移動することが可能に構成されており、例えば、ガスワイピングノズル26aをガスワイピングノズル26bに対して略平行に移動することが可能な構成となっている。そして、鋼帯30に付着した溶融金属によるメッキ厚みを制御する手法の一つとして、ガスワイピングノズル26aとガスワイピングノズル26bとの間隔が調整される。また、図示していないが、管状部材25bにおいても、管状部材25aと同様に、図4紙面の上下左右方向に移動することが可能な構成となっている。そして、ガスワイピングノズル26aおよびガスワイピングノズル26bの両方または片方を、図4紙面の左右方向に移動させることによって、ガスワイピングノズル26aとガスワイピングノズル26bとの間の距離を、所定の範囲内で変更させることができるようになっている。
【0037】
仕切り部材である蛇腹状カーテン27a,27bは、伸縮自在な耐熱性材料からなるものであり、金属性の部材であってもよいし、不織布のようなものであってもよい。この蛇腹状カーテン27a,27bにより、管状部材25aと箱状体20の内壁(管状部材25a側の内壁)との間、および、管状部材25bと箱状体20の内壁(管状部材25b側の内壁)との間がシールされる。仕切り部材としては、蛇腹状カーテンの他に、例えば、管状部材25の外壁に固定された仕切り板と、箱状体20の内壁に固定された仕切り板とが上下方向に重なるように配置されていてもよい。
【0038】
次に、ガスワイピング装置100の動作について説明する。まず、図1に示したように、鋼帯30が外部からメッキ浴槽10内へスナウト14を介して送入され、メッキ浴槽10内の溶融金属11の液体中に浸漬される。次に、鋼帯30は、メインローラー12およびサブローラー13a,13bを介して箱状体20の内部へ配送される。箱状体20の内部へ配送されてきた鋼帯30は、ガスワイピングノズル26aとガスワイピングノズル26bとの間を通過して、送出口24(図2(a)参照)から箱状体20外部へと送出される。そして、ガスワイピングノズル26aとガスワイピングノズル26bとの間を通過する際に、管状部材25a,25bを介してガスワイピングノズル26a,26bから噴出されるガスによって、鋼帯30表面に付着した過剰分の溶融金属11が除去され、溶融金属11のメッキ層の厚みが所定厚みとなるように調整される。このとき、図4に示したように、箱状体20内部(より詳しくはノズル面よりも下方)においてスプラッシュ40が飛散する。そこで、ノズル面よりも上方の鋼帯30の通り道に向けてスプラッシュが回り込むことを抑制する必要がある。
【0039】
ところが、上述したように、ガスワイピングノズル26aおよびガスワイピングノズル26bは、いずれも、図4の紙面上下左右に移動することから、ガスワイピングノズル26a,26bの幅方向両端部においては、ガスワイピングノズル26aとガスワイピングノズル26bとの間をシールすることは困難である。この点、本実施形態においては、上述したように、ガスワイピングノズル26a,26bの一端側では第2噴射部26aと第5噴射部26bとから噴出させたガスによってシールされ、ガスワイピングノズル26a,26bの他端側では第3噴射部26aと第6噴射部26bとから噴出させたガスによってシールされるので、ガスワイピングノズル26a,26bの両端部から箱状体20内部の上部空間50に向けてのスプラッシュ40の飛散ひいては回り込みを抑制することが可能となる。
【0040】
ところで、ガスワイピングノズル26aとガスワイピングノズル26bとの間をシールする手法としては、ガスワイピングノズル26aとガスワイピングノズル26bとの間を塞ぐ部材を設ける手法も考えられるが、上述のとおり、ガスワイピングノズル26aおよび/またはガスワイピングノズル26bは移動可能となっている。また、ガスワイピングノズル周辺は高温であるために、ガスワイピングノズル26aとガスワイピングノズル26bとの間を塞ぐように設けられた部材が変形してしまい、例えばこのように変形した部材が鋼帯30に接触する等といった悪影響を及ぼす可能性も否定できない。この点、本実施形態に係るガスワイピング装置100では、ガスワイピングノズル26aとガスワイピングノズル26bとの間がいずれの距離であっても(最大距離であっても最小距離であっても)、ガスワイピングノズル26aまたは/およびガスワイピングノズルbの平行移動が阻害されることがない。すなわち、ガスワイピングノズル26a,26bの幅方向両端部は、これらのノズル間距離にかかわらず常にシールされて、ノズル面よりも下方において発生したスプラッシュがノズル面よりも上方の鋼帯30の通り道に向けて回り込むことを抑制することができる。そしてさらには、ガスワイピングノズル26aとガスワイピングノズル26bとの間を塞ぐ部材を設けたときのように、熱により変形した部材が鋼帯30に接触する等といったことを心配する必要もない。
【0041】
また、管状部材25aと箱状体20の内壁(管状部材25a側の内壁)との間、および、管状部材25bと箱状体20の内壁(管状部材25b側の内壁)との間は、いずれも、蛇腹状カーテン27a,27bによって、箱状体20内部の上部空間50にスプラッシュ40が飛散することが抑制される。これにより、ノズル面よりも下方において発生したスプラッシュがノズル面よりも上方の鋼帯30の通り道に向けて回り込むことを抑制することができる。なお、この蛇腹状カーテン27a,27bは、ノズル面よりも上方における鋼帯30の通り道に向けてスプラッシュが回り込むことを防止する観点から、箱状体20の幅方向(鋼帯30の幅方向と同じ)の全域にわたって設けられていることが好ましい。
【0042】
さらに、ガスワイピングノズル26aとガスワイピングノズル26bとの間は、ガス(例えば窒素ガス)が噴出されているので、ノズル面よりも下方において発生したスプラッシュがノズル面よりも上方の鋼帯30の通り道に向けて回り込むことを抑制することができる。
【0043】
<実施例>
溶融Znー6質量%Al−2.9質量%Mg系めっき鋼板を、図2(b)に示すガスワイピング装置を用いて製造した。また、比較例として、図2(b)から噴射部26を除いたガスワイピング装置を用いて、溶融Znー6質量%Al−2.9質量%Mg系めっき鋼板を製造した。これらそれぞれの条件で製造しためっき鋼板について、Zn11Mg2系の相が晶出した斑点模様の単位面積あたりの発生個数の割合を表1に示す。なお、発生個数の割合は、比較例を1としている。この結果、本発明のガスワイピング装置を用いることで、スプラッシュによる斑点模様の発生を大幅に低減できることがわかる。
【0044】
【表1】

【0045】
以上説明したように、本実施形態のガスワイピング装置100によれば、カーテンにより管状部材25aと箱状体20の内壁(管状部材25a側の内壁)との間、および、管状部材25bと箱状体20の内壁(管状部材25b側の内壁)との間がシールされるので、これらの間から、ノズル面よりも上方における鋼帯30の通り道に向けてスプラッシュの回り込みを防止できる。また、幅方向両端部におけるガスワイピングノズル26aとガスワイピングノズル26bとの間からも、ノズル面よりも上方における鋼帯30の通り道に向けてのスプラッシュの回り込みを防止できる。これにより、ノズル面よりも下方において発生したスプラッシュが、互いに対向して配置されるガスワイピングノズル26aおよびガスワイピングノズル26bのノズル幅を除く領域から、ノズル面よりも上方における鋼帯30の通り道に向けて回り込むことを防止することが可能となる。したがって、ガスワイピングノズル26aおよびガスワイピングノズル26bを包囲する箱状体20を設けた場合であっても、ガスワイピングノズル26aおよびガスワイピングノズル26bによって過剰な溶融金属を除去した後の鋼帯30の表面に、スプラッシュが付着することをより抑制でき、スプラッシュ斑点模様の個数の増加を抑制することができる。
【0046】
しかも、ガスワイピングノズル26aとガスワイピングノズル26bとのノズル間距離がいずれであったとしても、ノズル面よりも上方における鋼帯の通り道に向けて回り込むことを防止することが可能となる。とくに、ガスワイピングノズル26aおよび/またはガスワイピングノズル26bの平行移動が阻害されることもない。
【0047】
<変形例>
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。例えば、ガスワイピングノズル26aとガスワイピングノズル26bとの間を最大幅の鋼帯30が通るときであっても当該鋼帯30にガスを噴出しない部位(第2噴射部26a)については、ガスでシールできるだけの量を確保できれば良いので、第1噴射部27aよりも噴出口のスリット幅を小さくすると良い。同様に、第3噴射部26a、第5噴射部26b、および、第6噴射部26bについても(ただし最大幅の鋼帯30が通るときであっても当該鋼帯30にガスを噴出しない部位に限る)、第1噴射部27aや第4噴射部26bよりも噴出口のスリット幅を小さくすると良い。なぜなら、第2噴射部26a、第3噴射部26a、第5噴射部26b、および、第6噴射部26bでは、鋼帯30にガスを噴出するのではなくシールすることを目的としてガスを噴出するので、ガスの噴射量を調節できるようにすることで必要以上にガスを消費することを抑制しつつ、ガスワイピングノズル26a,26bの幅方向両端部においてノズル面よりも上方における鋼帯の通り道に向けて回り込むことを防止することが可能となる。とくに、ガスワイピングノズル26aおよびガスワイピングノズル26bのうち少なくともいずれか一方が他方に対して平行移動しうるなかであっても、鋼帯30の幅方向両端部がガスによってシールされるので、ガスワイピングノズル26aガスワイピングノズル26bとのノズル間距離にかかわらず、常に、ノズル面よりも上方における鋼帯30の通り道に向けて回り込むことを防止することが可能となる。なお、第2噴射部26a、第3噴射部26a、第5噴射部26b、および、第6噴射部26bにおけるガスの流量調整方法としては、例えば可変ギャップノズルを用いることができる。さらに、第2噴射部26a、第3噴射部26a、第5噴射部26b、および、第6噴射部26bから噴出されるガスの流量を調整する方法については、第1噴射部27aや第4噴射部26bよりも噴出口のスリット幅を小さくする手法に限られず、例えば、第2噴射部26a、第3噴射部26a、第5噴射部26b、および、第6噴射部26bの周辺部に傾斜角度の調節が可能な板状部材50を設けて、ガスの噴射量を調節するガス噴射量調節部を構成してもよい(図5参照)。ただし、ガス噴射量調節部は、図5に示したものに限られず、ガスの噴射量を調節できるのであれば、どのようなものであっても構わないことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0048】
10 メッキ浴槽
11 溶融金属
12 メインローラー
13a、13b サブローラー
14 送入口
20 箱状体
21 本体
22、23 閉塞部
24 送出口
25a、25b 管状部材
26a、26b ガスワイピングノズル
26a 第1噴射部
26a 第2噴射部
26a 第3噴射部
26b 第4噴射部
26b 第5噴射部
26b 第6噴射部
27a、27b 蛇腹状カーテン
30 鋼帯
31 シールカーテン
40 スプラッシュ
50 上部空間
100 ガスワイピング装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融金属メッキ浴から引き上げられる鋼帯を挟んで配置され、前記鋼帯の表面に付着した過剰溶融金属を除去しうる第1ガスワイピングノズルおよび第2ガスワイピングノズルと、
前記鋼帯の幅方向に沿って設けられ、前記第1のワイピングノズルに接続されている第1の管状部材と、
前記鋼帯の幅方向に沿って設けられ、前記第2のワイピングノズルに接続されている第2の管状部材と、
前記第1のガスワイピングノズル、前記第2のガスワイピングノズル、前記第1の管状部材および前記第2の管状部材を包囲する箱状体と、
前記第1の管状部材の外壁に一端が固定され、他端が前記箱状体の内壁に固定されている第1の仕切り部材と、
前記第2の管状部材の外壁に一端が固定され、他端が前記箱状体の内壁に固定されている第2の仕切り部材と、
を備えるガスワイピング装置であって、
前記第1のガスワイピングノズルが、
前記鋼帯の幅方向全体にガスを噴射可能な第1噴射部と、
前記第1噴射部の一方の端部から前記箱状体の幅方向における一方の内壁にいたるまで、前記第2のガスワイピングノズルに向かってガスを噴射可能な第2噴射部と、
前記第1噴射部の他方の端部から前記箱状体の幅方向における他方の内壁にいたるまで、前記第2のガスワイピングノズルに向かってガスを噴射可能な第3噴射部と、を含むとともに、
前記第2のガスワイピングノズルが、
前記鋼帯の幅方向全体にガスを噴射可能な第4噴射部と、
前記第4噴射部の一方の端部から前記箱状体の幅方向における一方の内壁にいたるまで、前記第1のガスワイピングノズルに向かってガスを噴射可能な第5噴射部と、
前記第4噴射部の他方の端部から前記箱状体の幅方向における他方の内壁にいたるまで、
前記第1のガスワイピングノズルに向かってガスを噴射可能な第6噴射部と、を含む
ことを特徴とするガスワイピング装置。
【請求項2】
前記第2噴射部および前記第3噴射部は、当該第2噴射部および第3噴射部から噴射されるガス量が前記第1噴射部から噴射されるガス量よりも少なくなるように構成されているとともに、
前記第5噴射部および前記第6噴射部は、当該第5噴射部および第6噴射部から噴射されるガス量が前記第4噴射部から噴射されるガス量よりも少なくなるように構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載のガスワイピング装置。
【請求項3】
前記第1のガスワイピングノズルおよび前記第2のガスワイピングノズルは、互いの距離が所定の範囲内で変更可能となるように、これらのうち少なくともいずれか一方が他方に対して平行移動可能であって、
前記第1のガスワイピングノズルと前記第2のガスワイピングノズルとの間の距離に合わせて、前記第2噴射部から噴射されるガスと前記第5噴射部から噴射されるガスとが接触するように、且つ、前記第3噴射部から噴射されるガスと前記第6噴射部から噴射されるガスとが接触するように、ガスの噴射量を調節するガス噴射量調節部を備える
ことを特徴とする請求項1に記載のガスワイピング装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−107322(P2012−107322A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−226293(P2011−226293)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(000004581)日新製鋼株式会社 (1,178)
【Fターム(参考)】