説明

ガス処理装置

【課題】異常放電の発生を抑えつつ、ガス処理能力の低下を補いながらガス処理を継続し、未処理のガスが残らないようにする。
【解決手段】異常放電検知部16Aおよび16Bを設ける。制御部17は、異常放電検知部16Aからガス処理ユニットGU1での異常放電を知らせる検知信号S1Aを受けて、ガス処理ユニットGU2での異常放電が発生していないことを確認のうえ、ガス処理ユニットGU1への高電圧V1の電圧値を下げ、ガス処理ユニットGU2への高電圧V2の電圧値を上げる。異常放電検知部16Bからガス処理ユニットGU2での異常放電を知らせる検知信号S1Bを受けて、ガス処理ユニットGU1での異常放電が発生していないことを確認のうえ、ガス処理ユニットGU1への高電圧V1の電圧値を上げ、ガス処理ユニットGU2への高電圧V2の電圧値を下げる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、処理対象ガスに含まれる有害ガスを浄化するガス処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、排気ガス中で高電圧放電を行ってプラズマ状態を作ることで、排気ガスに含まれる有害ガスの浄化を行う技術が知られている。近年、この技術は、脱臭を目的として、工場の排気を浄化する浄化装置や室内の空気を浄化する空気清浄機に応用されつつある。
【0003】
熱的に非平衡な状態、つまり気体の温度やイオン温度に比べ、電子温度が非常に高い状態のプラズマ(非平衡プラズマ(以下、単にプラズマと言う))は、電子衝突でつくられるイオンやラジカルが常温では起こらない化学反応を促進させるので、有害ガスを効率的に除去あるいは分解することが可能な媒体として有害ガス処理において有用であると考えられている。実用化で肝心なことは、処理時のエネルギーの効率の向上と、プラズマで処理した後に完全に安全な生成物質へと変換されることである。
【0004】
一般に、大気圧でのプラズマは気体放電や電子ビームなどによって生成される。現在において、適用が考えられているものに、窒素酸化物(NOx)、硫黄酸化物(SOx)、フロン、CO2 ,揮発性有機溶剤(VOC)などがある。中でもNOxは車の排ガスなどに含まれているので早急な実用化が必要となっている。
【0005】
NOx除去における放電プラズマ(気体放電によって生成されたプラズマ)内の現象は、電子衝突によって1次的に生成されたイオンやラジカルが最初の反応を起こし、その後の反応を通してN2 ,H2 O,NH4 NO3 などの各粒子に変換されて行くものと考えられている。
【0006】
また、有害ガスを例えばアセトアルデヒドやホルムアルデヒドとした場合、この有害ガスをプラズマを通すことによって、CO2 とH2 Oに変換される。この場合、副生成物として、オゾン(O3 )が発生する。
【0007】
図6に放電プラズマを利用した従来のガス処理装置の要部を例示する(例えば、特許文献1参照)。同図において、1は処理対象ガス(有害ガスを含む空気)GSが流れるダクト(通風路)であり、ダクト1内には、ダクト1の入口から出口へ向かう方向に沿って放電電極2とグランド電極3とが交互に配置され、これら電極2,3間にセルと呼ばれる多数の貫通孔4aを有するハニカム構造体4が配設されている。貫通孔4aはハニカム構造体4に蜂の巣状に設けられている。5は高電圧電源である。なお、ハニカム構造体4はセラミックス等の絶縁体で形成されており、特許文献2にもその使用例がある。
【0008】
放電電極2は、金属製メッシュ、極細ワイヤ、または針状体等で形成されている。各放電電極2は、導線6によって高電圧電源5の+極に接続されている。グランド電極3は、金属性メッシュ等で形成されている。各グランド電極3は、導線7によって高電圧電源5の−極に接続されている。
【0009】
このガス処理装置では、処理対象ガスGSをダクト1に流し、放電電極2とグランド電極3との間に高電圧電源5からの高電圧(数kV〜数10kV)を印加する。これにより、各ハニカム構造体4の貫通孔4a内にプラズマが発生し、このプラズマ中に生成されるイオンやラジカルによって、処理対象ガスGSに含まれる有害ガスが無害な物質に分解される。
【0010】
しかしながら、このような構成のガス処理装置では、次のような問題点を有する。
(1)多数のハニカム構造体4を有するが、ばらつきなく均一なプラズマを発生させる技術が確立されておらず、ハニカム構造体4の性能にばらつきが出てしまう。例えば、同じハニカム構造体4同士でもインピータンス値が異なることがあり、また1つのハニカム構造体4内でも例えばその上下でインピーダンス値が異なるというようなこともあり、全体として均一なプラズマが発生せず、ガス処理能力が不安定となる。また、貫通孔4aだけでのプラズマ発生なので、プラズマの発生量が少なく、ガス処理能力が低い。
【0011】
(2)ハニカム構造体4は吸湿すると低インピーダンスに、乾燥すると高インピーダンスになる特性を持っており、ハニカム構造体4が低インピーダンスになると、流れる電流が増大し放電電極2とグランド電極3との間に印加される高電圧値が低下し、ハニカム構造体4が高インピーダンスになると、流れる電流が減少し放電電極2とグランド電極3との間に印加される高電圧値が上昇する。このような高電圧値の変化に対し、所望のプラズマの発生量を確保し得る高電圧値を得ることのできる高電圧電源5は、その設計に要する工数も含めて非常に高価となる。
(3)ハニカム構造体4のそれぞれに対して放電電極2とグランド電極3を設けているため、部品点数が多く、構造も複雑となり、高価となる。
【0012】
そこで、本出願人は、上述した従来のガス処理装置の問題点を解決するものとして、図7に示すような構造のガス処理装置を提案した(特許文献3参照)。このガス処理装置では、ダクト1の入口から出口への処理対象ガスGSの通過方向に沿って、多数の貫通孔(丸孔)4aを有する複数のハニカム構造体4を間隔を設けて配置している。この例では、ハニカム構造体4−1と4−2との間に間隔G1を設けて、ハニカム構造体4−3と4−4との間に間隔G2を設けて、ハニカム構造体4−1〜4−4をダクト1内に配置している。
【0013】
なお、ハニカム構造体4−1と4−2とは第1のハニカム構造体群4Aを構成し、この第1のハニカム構造体群4Aの両端に位置するハニカム構造体4−1および4−2の外側に、第1の電極として電極8が配置され、第2の電極として電極9が配置されている。また、ハニカム構造体4−3と4−4とは第2のハニカム構造体群4Bを構成し、この第2のハニカム構造体群4Bの両端に位置するハニカム構造体4−3および4−4の外側に、第1の電極として電極9が配置され、第2の電極として電極10が配置されている。電極8〜10は処理対象ガスGSが通過するように金属製メッシュとされている。
【0014】
第1のハニカム構造体群4Aにおいて、第1の電極8と第2の電極9との間に導線11,12を介して高電圧電源(高電圧源)5−1からの高電圧を印加することにより、また、第2のハニカム構造体群4Bにおいて、第1の電極9と第2の電極10との間に導線12,13を介して高電圧電源(高電圧源)5−2からの高電圧を印加することにより、ハニカム構造体4の貫通孔4aおよびハニカム構造体4間の空間14(14−1,14−2)にプラズマが発生し、このプラズマ中に生成されるイオンやラジカルによって、処理対象ガスGSに含まれる有害ガスが無害な物質に分解される。
【0015】
このガス処理装置において、処理対象ガスGS中の水分(湿度)に着目すると、処理対象ガスGSは上流側のハニカム構造体4から下流側のハニカム構造体4に向かって流れて行く過程で、各ハニカム構造体4で発生したプラズマ放電によって処理を受けるが、処理を受ける度に処理対象ガスGS中に含まれる水分が消費されるので、処理対象ガスGSは上流側から下流側にかけて湿度が低下した状態となる。また、ハニカム構造体4の内部のでプラズマの発生状態は処理対象ガスGS中の水分が多いほど活発に行われ、水分が少なくなると抑制される特性がある。
【0016】
ここで、処理対象ガスGS中の水分が多すぎると、プラズマが過剰に発生し、異常放電を起こすことがある。異常放電を起こすと、ハニカム構造体4自身がダメージを受け、損傷することになる。そこで、異常放電の発生を検知して、高電圧の印加を遮断するようにした構成が特許文献4や5に示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2000−140562号公報
【特許文献2】特開2001−276561号公報
【特許文献3】特開2008−194670号公報
【特許文献4】特開2008−245739号公報
【特許文献5】特開平9−99254号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
特許文献4や5に示された構成を図7に示したガス処理装置に適用した場合、第1のハニカム構造体群4A側を第1のガス処理ユニットGU1とし、第2のハニカム構造体群4B側を第2のガス処理ユニットGU2とし、第1のガス処理ユニットGU1および第2のガス処理ユニットGU2での異常放電の発生をそれぞれ検知するようにし、異常放電の発生を検知したガス処理ユニットについてのみ、高電圧の印加を遮断するというような構成となる。
【0019】
しかしながら、この場合、異常放電の発生を検知したガス処理ユニットでのガス処理を止めたまま、残されたガス処理ユニットでガス処理を継続することになるが、全体としてのガス処理能力が低下し、十分に処理が行えず、未処理のガスが残ってしまうという問題が生じる。
【0020】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、異常放電の発生を抑えつつ、ガス処理能力の低下を補いながらガス処理を継続し、未処理のガスが残らないようにすることが可能なガス処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
このような目的を達成するために本発明は、ガス処理ユニット毎に異常放電が発生したことを検知する異常放電検知手段と、異常放電検知手段によって異常放電の発生が検知された場合、その異常放電の発生が検知されたガス処理ユニットのガス処理能力を下げ、異常放電の発生が検知されていないガス処理ユニットのガス処理能力を上げるガス処理能力制御手段とを設けたものである。
【0022】
なお、本発明において、異常放電検知手段に代えて、処理対象ガスの通過方向の最上流に設置されたガス処理ユニットの異常放電の発生のみを検知する最上流ユニット異常放電検知手段を設け、ガス処理能力制御手段に代えて、最上流ユニット異常放電検知手段によって異常放電の発生が検知された場合、最上流に設置されたガス処理ユニットのガス処理能力を下げ、他のガス処理ユニットのガス処理能力を上げるガス処理能力制御手段を設けるようにしてもよい。
【0023】
また、本発明において、ガス処理能力を下げるという定義には、ガス処理能力をゼロ(プラズマの発生量をゼロ)とすることも含まれる。また、ガス処理能力を上げる/下げる方法として、印加する高電圧の電圧値を上げる/下げる、印加する高電圧の周波数を上げる/下げる、印加する高電圧の時間を長くする/短くする等の方法が考えられる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、異常放電の発生が検知された場合、その異常放電の発生が検知されたガス処理ユニットのガス処理能力を下げ、異常放電の発生が検知されていないガス処理ユニットのガス処理能力を上げるようにしたので、異常放電の発生を抑えつつ、ガス処理能力の低下を補いながらガス処理を継続し、未処理のガスが残らないようにすることが可能となる。
【0025】
また、本発明によれば、最上流に設置されたガス処理ユニットの異常放電の発生が検知された場合、最上流に設置されたガス処理ユニットのガス処理能力を下げ、他のガス処理ユニットのガス処理能力を上げるようにしたので、最上流に設置されたガス処理ユニットの異常放電を監視するのみという簡略化した構成で、異常放電の発生を抑えつつ、ガス処理能力の低下を補いながらガス処理を継続し、未処理のガスが残らないようにすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係るガス処理装置の一実施の形態(実施の形態1)の要部を示す図である。
【図2】このガス処理装置における異常放電検知部の要部の構成を示す図である。
【図3】本発明に係るガス処理装置の他の実施の形態(実施の形態2)の要部を示す図である。
【図4】実施の形態1において最上流のガス処理ユニットでの異常放電を監視するのみとした場合の構成を示す図である。
【図5】実施の形態2において最上流のガス処理ユニットでの異常放電を監視するのみとした場合の構成を示す図である。
【図6】放電プラズマを利用した従来のガス処理装置の要部を例示する図である。
【図7】特許文献3に示されたガス処理装置の要部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0028】
〔実施の形態1〕
図1はこの発明に係るガス処理装置の一実施の形態(実施の形態1)の要部を示す図である。同図において、図7と同一符号は図7を参照して説明した構成要素と同一或いは同等構成要素を示し、その説明は省略する。
【0029】
この実施の形態においても、図7に示したガス処理装置と同様に、処理対象ガスGSの通過方向(ダクト1の入口から出口への方向)に方向に沿って、第1のガス処理ユニットGU1と第2のガス処理ユニットGU2をダクト1内に配置している。
【0030】
但し、この実施の形態では、第1のガス処理ユニットGU1の電極8と9との間に高電圧印加部15Aを介して高電圧V1を、第1のガス処理ユニットGU2の電極9と10との間に高電圧印加部15Bを介して高電圧V2を印加するようにしている。
【0031】
また、高電圧印加部15Aに対して、その電圧供給端子T1とT2との間、すなわち第1のガス処理ユニットGU1の電極8と9との間にガス処理ユニットGU1での異常放電の発生を検知する異常放電検知部16Aを設け、この異常放電検知部16Aにおける異常放電の検知結果を検知信号S1Aとして制御部17へ送るようにしている。
【0032】
また、高電圧印加部15Bに対して、その電圧供給端子T1とT2との間、すなわち第2のガス処理ユニットGU2の電極9と10との間にガス処理ユニットGU2での異常放電の発生を検知する異常放電検知部16Bを設け、この異常放電検知部16Bにおける異常放電の検知結果を検知信号S1Bとして制御部17へ送るようにしている。
【0033】
制御部17は、プロセッサや記憶装置からなるハードウェアと、これらのハードウェアと協働して各種機能を実現させるプログラムとによって実現され、本実施の形態特有の機能としてガス処理ユニットGU1およびGU2への高電圧V1およびV2の電圧値の制御機能を有している。制御部17からのガス処理ユニットGU1およびGU2への高電圧の電圧値の制御指令はS2A,S2Bとして高電圧印加部15A,15Bへ与えられる。
【0034】
図2に異常放電検知部16(16A,16B)の要部の構成を示す。異常放電検知部16は、直流カット回路16−1と、放電周波数検出回路16−2と、整流平滑回路16−3と、レベル判定回路16−4とを備えている。直流カット回路16−1は、高電圧印加部15(15A,15B)の電圧供給端子T1とT2との間に生じる高電圧、すなわちガス処理ユニットGU(GU1,GU2)の電極間に印加される高電圧を取り込み、この高電圧に含まれる直流分をカットして出力する。放電周波数検出回路16−2は、直流カット回路16−1が出力する直流分がカットされた電圧より、所定周波数以上の電圧をガス処理ユニットGUの電極間の放電により発生した雑音電圧として取り出す。整流平滑回路16−3は、放電周波数検出回路16−2より取り出された雑音電圧を整流して平滑する。レベル判定回路16−4は、整流平滑回路16−3によって整流平滑化された雑音電圧の大きさを判定し、その雑音電圧の大きさが所定値を超えた場合に異常放電の発生を示す検知信号S1(S1A,S1B)を出力する。
【0035】
なお、この実施の形態において、電極9はガス処理ユニットGU1の第2の電極とガス処理ユニットGU2の第1の電極とを兼ねた共通電極とされているが、ガス処理ユニットGU1の第2の電極とガス処理ユニットGU2の第1の電極とを独立した電極とするようにしてもよい。
【0036】
〔ガス処理ユニットGU1で異常放電が発生した場合〕
このガス処理装置において、ガス処理ユニットGU1で異常放電が発生すると、異常放電検知部16Aが異常放電の発生を示す検知信号S1Aを制御部17へ送る。
【0037】
制御部17は、異常放電検知部16Aからガス処理ユニットGU1での異常放電の発生を示す検知信号S1Aが送られてくると、ガス処理ユニットGU2での異常放電の発生の有無を確認する。すなわち、異常放電検知部16Bからの検知信号S1Bをチェックし、検知信号S1Bが生じていなければガス処理ユニットGU2では異常放電が発生していないと判断する。
【0038】
ガス処理ユニットGU2で異常放電が発生していなければ、制御部17は、高電圧印加部15Aへガス処理ユニットGU1への高電圧V1の電圧値を下げる指令S2Aを送り、高電圧印加部15Bへガス処理ユニットGU2への高電圧V2の電圧値を上げる指令S2Bを送る。
【0039】
これにより、ガス処理ユニットGU1のガス処理能力が下げられ、ガス処理ユニットGU1での異常放電の発生が抑制される。また、ガス処理ユニットGU2のガス処理能力が上げられ、ガス処理ユニットGU1でのガス処理能力の低下が補われる。
【0040】
〔ガス処理ユニットGU2で異常放電が発生した場合〕
このガス処理装置において、ガス処理ユニットGU2で異常放電が発生すると、異常放電検知部16Bが異常放電の発生を示す検知信号S1Bを制御部17へ送る。
【0041】
制御部17は、異常放電検知部16Bからガス処理ユニットGU2での異常放電の発生を示す検知信号S1Bが送られてくると、ガス処理ユニットGU1での異常放電の発生の有無を確認する。すなわち、異常放電検知部16Aからの検知信号S1Aをチェックし、検知信号S1Aが生じていなければガス処理ユニットGU1では異常放電が発生していないと判断する。
【0042】
ガス処理ユニットGU1で異常放電が発生していなければ、制御部17は、高電圧印加部15Bへガス処理ユニットGU2への高電圧V2の電圧値を下げる指令S2Bを送り、高電圧印加部15Aへガス処理ユニットGU1への高電圧V1の電圧値を上げる指令S2Aを送る。
【0043】
これにより、ガス処理ユニットGU2のガス処理能力が下げられ、ガス処理ユニットGU2での異常放電の発生が抑制される。また、ガス処理ユニットGU1のガス処理能力が上げられ、ガス処理ユニットGU2でのガス処理能力の低下が補われる。
【0044】
〔実施の形態2〕
図3はこの発明に係るガス処理装置の他の実施の形態(実施の形態2)の要部を示す図である。この実施の形態でも、実施の形態1と同様に、処理対象ガスGSの通過方向(ダクト1の入口から出口への方向)に方向に沿って、第1のガス処理ユニットGU1と第2のガス処理ユニットGU2をダクト1内に配置している。
【0045】
但し、この実施の形態において、第1のガス処理ユニットGU1および第2のガス処理ユニットGU2は、処理対象ガスGSの通過方向に対し直交する方向に沿って、複数のハニカム構造体4を間隔を設けて配置した構造とされている。
【0046】
第1のガス処理ユニットGU1は、ハニカム構造体4−11〜4−14を備え、ハニカム構造体4−11と4−12との間に間隔G1を設けて、ハニカム構造体4−13と4−14との間に間隔G2を設けて、ダクト1内に配置されている。
【0047】
また、ハニカム構造体4−11〜4−14中、隣り合うハニカム構造体4−11と4−12とを第1のハニカム構造体群4Aとし、この第1のハニカム構造体群4Aの両端に位置するハニカム構造体4−11および4−12の外側に、第1の電極として電極8−1を、第2の電極として電極9−1を配置している。
【0048】
また、ハニカム構造体4−11〜4−14中、隣り合うハニカム構造体4−13と4−14とを第2のハニカム構造体群4Bとし、この第2のハニカム構造体群4Bの両端に位置するハニカム構造体4−13および4−14の外側に、第1の電極として電極9−1を、第2の電極として電極10−1を配置している。
【0049】
この第1のガス処理ユニットGU1において、ハニカム構造体4−11と4−12との間の間隔G1およびハニカム構造体4−13と4−14との間の間隔G2は、処理対象ガスGSの通過方向の上流側から下流側に向かって徐々に狭められている。
【0050】
この例では、ハニカム構造体4−12および4−13の厚さを処理対象ガスGSの通過方向の上流側から下流側に向かって厚くするようにし、これによって形成されるハニカム構造体4−12の傾斜面4−12sをハニカム構造体4−11側に向けて、ハニカム構造体4−13の傾斜面4−13sをハニカム構造体4−14側に向けて、電極9−1の上面および下面にハニカム構造体4−12および4−13を配置することによって、間隔G1およびG2を処理対象ガスGSの通過方向の上流側から下流側に向かって徐々に狭めた形状としている。
【0051】
第2のガス処理ユニットGU2は、ハニカム構造体4−21〜4−24を備え、ハニカム構造体4−21と4−22との間に間隔G3を設けて、ハニカム構造体4−23と4−24との間に間隔G4を設けて、ダクト1内に配置されている。
【0052】
また、ハニカム構造体4−21〜4−24中、隣り合うハニカム構造体4−21と4−22とを第1のハニカム構造体群4Cとし、この第1のハニカム構造体群4Cの両端に位置するハニカム構造体4−21および4−22の外側に、第1の電極として電極8−2を、第2の電極として電極9−2を配置している。
【0053】
また、ハニカム構造体4−21〜4−24中、隣り合うハニカム構造体4−23と4−24とを第2のハニカム構造体群4Dとし、この第2のハニカム構造体群4Dの両端に位置するハニカム構造体4−23および4−24の外側に、第1の電極として電極9−2を、第2の電極として電極10−2を配置している。
【0054】
この第2のガス処理ユニットGU2において、ハニカム構造体4−21と4−22との間の間隔G3およびハニカム構造体4−23と4−24との間の間隔G4は、同一の厚さのハニカム構造体4−21〜4−24を用いることによって等間隔とされている。
【0055】
このガス処理装置では、処理対象ガスGSをダクト1内に流し、第1のガス処理ユニットGU1の電極8−1と9−1との間および電極9−1と10−1との間に、高電圧印加部15Aからの高電圧V1を個別に印加する。また、第2のガス処理ユニットGU2の電極8−2と9−2との間および電極9−2と10−2との間に、高電圧印加部15Bからの高電圧V2を個別に印加する。
【0056】
この実施の形態2においても、実施の形態1と同様、高電圧印加部15Aに対して、第1のガス処理ユニットGU1での異常放電の発生を検知する異常放電検知部16Aを設け、この異常放電検知部16Aにおける異常放電の検知結果を検知信号S1Aとして制御部17へ送るようにする。また、高電圧印加部15Bに対して、第2のガス処理ユニットGU2での異常放電の発生を検知する異常放電検知部16Bを設け、この異常放電検知部16Bにおける異常放電の検知結果を検知信号S1Bとして制御部17へ送るようにする。
【0057】
制御部17は、異常放電検知部16Aからガス処理ユニットGU1での異常放電の発生を示す検知信号S1Aが送られてくると、ガス処理ユニットGU2での異常放電が発生していないことを確認のうえ、高電圧印加部15Aへガス処理ユニットGU1への高電圧V1の電圧値を下げる指令S2Aを送り、高電圧印加部15Bへガス処理ユニットGU2への高電圧V2の電圧値を上げる指令S2Bを送る。
【0058】
これにより、ガス処理ユニットGU1のガス処理能力が下げられ、ガス処理ユニットGU1での異常放電の発生が抑制される。また、ガス処理ユニットGU2のガス処理能力が上げられ、ガス処理ユニットGU1でのガス処理能力の低下が補われる。
【0059】
制御部7は、異常放電検知部16Bからガス処理ユニットGU2での異常放電の発生を示す検知信号S1Bが送られてくると、ガス処理ユニットGU1での異常放電が発生していないことを確認のうえ、高電圧印加部15Bへガス処理ユニットGU2への高電圧V2の電圧値を下げる指令S2Bを送り、高電圧印加部15Aへガス処理ユニットGU1への高電圧V1の電圧値を上げる指令S2Bを送る。
【0060】
これにより、ガス処理ユニットGU2のガス処理能力が下げられ、ガス処理ユニットGU2での異常放電の発生が抑制される。また、ガス処理ユニットGU1のガス処理能力が上げられ、ガス処理ユニットGU2でのガス処理能力の低下が補われる。
【0061】
なお、この実施の形態2では、ガス処理ユニットGU1,GU2において、各ハニカム構造体4が処理対象ガスGSの通過方向に対し直交する方向に沿って間隔を設けて配置されているので、処理対象ガスGSの通過方向に沿って配置される場合よりも、処理対象ガスGSが各ハニカム構造体4の貫通孔4aやハニカム構造体4間の空間14でプラズマに晒される時間が長くなる。これにより、ガス分解が行われる機会が多くなり、ガス処理能力が向上し、高速流におけるガス処理能力の低下を防ぐことが可能となる。
【0062】
また、この実施の形態2では、ガス処理ユニットGU1,GU2において、第1のハニカム構造体群4A,4Cの電極間および第2のハニカム構造体群4B,4Cの電極間に高電圧印加部15A,15Bからの高電圧V1,V2を個別に印加しているので、空間14−1,14−2,14−3,14−4での電位を安定的に高電界状態に保ち、プラズマを安定して発生させることが可能となる。
【0063】
さらに、この実施の形態2では、ガス処理ユニットGU1において、空間14−1,14−2を形成する各ハニカム構造体4間の間隔G1,G2を処理対象ガスGSの通過方向の上流側から下流側に向かって徐々に狭めているので、各ハニカム構造体4間の間隔G1,G2がプラズマの発生条件のよい上流側では広くされ、プラズマの発生条件の悪い下流側では狭くされ、上流側と下流側のプラズマの発生状態がバランスし、ガス処理能力が安定する。
【0064】
なお、上述した実施の形態1,2では、ガス処理ユニットGU1で異常放電が発生した場合、ガス処理ユニットGU1への高電圧V1の電圧値を下げ、ガス処理ユニットGU2への高電圧V2の電圧値を上げ、ガス処理ユニットGU2で異常放電が発生した場合、ガス処理ユニットGU2への高電圧V2の電圧値を下げ、ガス処理ユニットGU1への高電圧V1の電圧値を上げるようにしているが、その電圧値の上げ下げの幅は予め定められた一定値としてもよく、異常放電の発生量に応じて変化させるようにしてもよい。また、異常放電が発生したガス処理ユニットへの高電圧の印加を遮断し、そのガス処理ユニットのガス処理能力をゼロ(プラズマの発生量をゼロ)とするようにしてもよい。
【0065】
また、上述した実施の形態1,2では、印加する高電圧の電圧値の上げ/下げでガス処理ユニットGU1,GU2のガス処理能力を上げ/下げるようにしたが、印加する高電圧の時間の長/短でガス処理ユニットGU1,GU2のガス処理能力を上げ/下げるようにしてもよい。また、印加する高電圧を交流とし、この交流の高電圧の周波数の上げ/下げでガス処理ユニットGU1,GU2のガス処理能力を上げ/下げるようにしてもよい。
【0066】
また、上述した実施の形態1,2では、高電圧印加部15A,15Bに対して異常放電検知部16A,16Bを各個に設け、ガス処理ユニットGU1,GU2での異常放電の発生をそれぞれ検知するようにしたが、図4や図5に示すように、最上流のガス処理ユニットGU1での異常放電の発生を検知するのみの構成としてもよい。
【0067】
この構成において、制御部17は、異常放電検知部16Aからガス処理ユニットGU1での異常放電の発生を示す検知信号S1Aが送られてくると、直ちに、高電圧印加部15Aへガス処理ユニットGU1への高電圧V1の電圧値を下げる指令S2Aを送り、高電圧印加部15Bへガス処理ユニットGU2への高電圧V2の電圧値を上げる指令S2Bを送る。
【0068】
すなわち、異常放電を起こす可能性が高いガス処理ユニットは、処理対象ガスGS内の水分が多い最上流に設置されたガス処理ユニットGU1であるので、このガス処理ユニットGU1での異常放電のみを監視するだけでも、ガス処理能力の低下を補いながらガス処理を継続させることができる。このようにすることによって、ガス処理ユニットGU2での異常放電の監視を省略し、ガス処理装置を簡略化した構成とすることができるようになる。
【0069】
また、上述した実施の形態1,2において、ハニカム構造体4はオゾンを分解する触媒機能を備えたものとしてもよく、処理対象ガスGSの通過方向の下流位置にオゾンを分解する触媒を設けるようにしてもよい。
【0070】
また、上述した実施の形態1,2では、ガス処理ユニットの数を2つとしたが、さらにその数を増やすようにしてもよい。また、実施の形態1において、ガス処理ユニット内のハニカム構造体の数は2つに限られるものではなく、さらにその数を増やしてもよい。また、実施の形態2において、ガス処理ユニット内のハニカム構造体群の数は1つとしてもよく、さらにその数を増やしてもよい。また、ハニカム構造体群内のハニカム構造体の数も2つに限られるものでもない。
【0071】
また、上述した実施の形態1,2において、副生成物としてオゾンを大量に発生させ、オゾン発生器として転用するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明のガス処理装置は、燃料電池等に用いられる水素を効率的に生成する目的で、炭化水素類等から水素含有ガスを生成する、いわゆる改質にも適用することができる。例えばオクタン(ガソリンの平均分子量に比較的近い物質)C818の場合は、本ガス処理装置に供給すると下記(1)式で示される化学反応が促進され、その結果水素ガスを効率よく生成することができる。
818+8H2O+4(O2+4N2)→8CO2+17H2+16N2・・・・(1)
【符号の説明】
【0073】
1…ダクト(通風路)、4(4−1〜4−4、4−11〜4−14、4−21〜4−24)…ハニカム構造体、4a…貫通孔(セル)、4−12s,4−13s…傾斜面、4A〜4D…ハニカム構造体群、8(8−1,8−2),9(9−1,9−2),10(10−1,10−2)…電極、11,12,13…導線、14(14−1〜14−4、14−11〜14−14、14−21〜14−24)…空間、15(15A,15B)…高電圧印加部、16(16A,16B)…異常放電検知部、16−1…直流カット回路、16−2…放電周波数検出回路、16−3…整流平滑回路、16−4…レベル判定回路 、17…制御部、G(G1〜G4)…間隔、GS…処理対象ガス、GU(GU1,GU2)…ガス処理ユニット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通風路に間隔を設けて配置され、前記通風路を流れる処理対象ガスが通過する多数の貫通孔を有する複数のハニカム構造体と、
前記複数のハニカム構造体のうち隣り合う複数のハニカム構造体を1群のハニカム構造体群とし、このハニカム構造体群の両端に位置するハニカム構造体の両端に位置するハニカム構造体の外側に配置された第1および第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に高電圧を印加し前記ハニカム構造体の貫通孔および前記ハニカム構造体間の空間にプラズマを発生させる高電圧源とを備えたガス処理ユニットを前記処理対象ガスの通過方向に沿って複数設置したガス処理装置において、
前記ガス処理ユニット毎に異常放電が発生したことを検知する異常放電検知手段と、
前記異常放電検知手段によって異常放電の発生が検知された場合、その異常放電の発生が検知されたガス処理ユニットのガス処理能力を下げ、異常放電の発生が検知されていないガス処理ユニットのガス処理能力を上げるガス処理能力制御手段と
を備えることを特徴とするガス処理装置。
【請求項2】
通風路の入口から出口への処理対象ガスの通過方向に対し直交する方向に沿って間隔を設けて配置され前記処理対象ガスが通過する多数の貫通孔を有する複数のハニカム構造体と、
前記複数のハニカム構造体のうち隣り合う複数のハニカム構造体を1群のハニカム構造体群とし、これらハニカム構造体群毎にその両端に位置するハニカム構造体の外側に配置された第1および第2の電極と、
前記各ハニカム構造体群の第1の電極と第2の電極との間に個別に高電圧を印加し前記ハニカム構造体の貫通孔および前記ハニカム構造体間の空間にプラズマを発生させる高電圧源とを備えたガス処理ユニットを前記処理対象ガスの通過方向に沿って複数設置したガス処理装置において、
前記ガス処理ユニット毎に異常放電が発生したことを検知する異常放電検知手段と、
前記異常放電検知手段によって異常放電の発生が検知された場合、その異常放電の発生が検知されたガス処理ユニットのガス処理能力を下げ、異常放電の発生が検知されていないガス処理ユニットのガス処理能力を上げるガス処理能力制御手段と
を備えることを特徴とするガス処理装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載されたガス処理装置において、
前記異常放電検知手段に代えて、
前記処理対象ガスの通過方向の最上流に設置されたガス処理ユニットの異常放電の発生のみを検知する最上流ユニット異常放電検知手段を備え、
前記ガス処理能力制御手段に代えて、
前記最上流ユニット異常放電検知手段によって異常放電の発生が検知された場合、前記最上流に設置されたガス処理ユニットのガス処理能力を下げ、他のガス処理ユニットのガス処理能力を上げるガス処理能力制御手段を備える
ことを特徴とするガス処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−206703(P2011−206703A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−77585(P2010−77585)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000006666)株式会社山武 (1,808)
【Fターム(参考)】