説明

ガス分析装置

【課題】多重反射セルを備えたガス分析装置においてセル内の鏡面の保守作業の手間を省き、保守コストを削減する。
【解決手段】鏡面を有する薄板製の反射板17、18をセルの対向する内壁面に当接して着脱可能に装着する。薄板製の反射板17、18は低コストで製作できるから、この構成により使い捨てが可能となり、鏡面が汚染、腐食されたときは反射板17、18を新品と交換することで保守の手間を省き保守コストも低減できる。また、薄板製の反射板17、18の両面に鏡面を設けておけば裏返して再度使用できるので、さらなるコスト削減と現場でのすばやい応急措置が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光吸収分析法により気体中の微量成分を計測するガス分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光吸収分析でガス濃度を測定する場合、ランバートベールの法則により感度は光路長に比例するので、高感度を必要とする分析装置ではセルの内部で光を多重反射させることにより光路長を長くする構造が採用される。例えば、特許文献1に示された例は、2枚の平面鏡を平行に配置し、その間で光を幾度も折り返す構成である。
【0003】
図3に、特許文献1と同様の従来一般の多重反射セルの構成例を示す。
同図において、円筒状のセルボディ10の両端は対向する2枚の鏡板11、12で封じられてセルを形成する。セル内はガス入口13からガス出口14へ流れる分析対象ガスで満たされる。鏡板11、12の対向する面(鏡面)は平行に配置され、且つ鏡面加工が施されている。鏡板12には2箇所に光透過窓15、16が開設されており、これを通してセル内に出入りする光が両鏡面の間で複数回折り返すことで長い光路長を得る構造である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−147962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
セルに導入されるガスの種類によっては鏡面が汚染または腐食されることがあるので、保守作業として必要に応じ鏡面の洗浄が行われる。洗浄には手間が掛かり、また、洗浄しても完全に復旧するとは限らないので、最終的には鏡板を交換することが必要となるが、鏡板は精密加工された高価な部材であるから交換のコストが高いことが問題であった。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、多重反射セルを備えたガス分析装置において鏡面の保守作業の手間を省き、保守コストを削減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために、鏡面を有する薄板製の反射板をガスセルの内壁面に当接して着脱可能に装着する。薄板製の反射板は低コストで製作できるから、この構成により使い捨てが可能となり、鏡面が汚染、腐食されたときは反射板を新品と交換することで保守の手間を省き、保守コストも低減できる。また、薄板製の反射板の両面に鏡面を設けておけば裏返して再度使用できるので、さらなるコスト削減と現場でのすばやい応急処置が可能となる。
【発明の効果】
【0007】
本発明は上記のように構成されているので、反射板の使い捨てが可能となり、保守の手間が省けるばかりでなく、保守コストの削減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施例を示す図である。
【図2】本発明の他の実施例を示す図である。
【図3】従来の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1に本発明の一実施例を示す。
同図において、円筒状のセルボディ10の両端が対向する鏡板11、12で封じられてセルを形成し、ガス入口13からガス出口14へ流れる分析対象ガスで満たされるセル内空間で光透過窓15、16を通して出入りする光が複数回折り返すことは前述した従来構成と同様である。なお、光透過窓15、16やその他の各部材間は図示しないOリング等でシールされ、セル内はガス入口13とガス出口14を除いて気密に構成されている。
【0010】
従来と相違する点は、鏡板11、12の対向する内壁面は鏡面を有さず、代わりに両面に鏡面加工された薄板製の反射板17、18がそれぞれ鏡板11、12の対向する内壁面を覆って装着されていることである。この構成により、一方の光透過窓15を通して光源(図示せず)から来る光が導入され、2枚の反射板17、18の鏡面の間を多重反射した後、他方の光透過窓16を通過して光検出器(図示せず)へ導かれ、ここでセル内のガス種や濃度に応じた光の吸収を検出することにより測定が行われる。
なお、反射板18には、光透過窓15、16に対応する位置に孔(図示せず)が開設されているので、光の出入りを妨げることはない。
【0011】
反射板17、18は、それぞれ鏡板11、12に重ねてセルボディ10の端部にネジ19で締着されているので、ネジ19を弛めることで容易に取り外し可能である。
また、反射板17、18は薄板製であって低コストで製作できるから、鏡面が汚染・腐食を受けたときは、洗浄せずに新品と交換することができる。これにより、洗浄等の手間が省け、保守コストの削減が可能となる。
【0012】
さらに本実施例では、反射板17、18は両面に鏡面加工が施されているので、片面の鏡面が汚染・腐食を受けたときは、裏返して再度使用できる。反射板17、18を使い捨てるまでに2回使用できるから、保守コストの削減効果が大きい効果と、現場での修理に迅速に対処が可能となる効果がある。この場合、鏡板11、12の反射板17、18で覆われる面の一部を窪ませて凹部11a、12aを設けてあるので、反射板17、18の使用中でない鏡面が当たってキズや汚れが付くことを防止できる。
【0013】
反射板17、18は、厚さ1mm前後のステンレス等の金属板を材料として電解複合研磨等により鏡面を加工して製作できる。
【0014】
なお、上記は両面に鏡面を有する反射板17、18を用いる例であるが、片面のみに鏡面を設けた場合でも、保守コストの削減効果は幾分劣るものの有用である。また、反射板17、18の片面にのみ鏡面を有する場合でも、凹部11a、12aを設けることは鏡面に不要な力を掛けないという点で効果がある。
さらにまた、本考案は、光がセル内で複数回反射する場合(多重反射)に限らず、1回だけ反射する場合にも適用できる。その場合は、図1における反射板18は不要であり、光源からの光は光透過窓15からセルに入射し、反射板17で1回だけ反射して光透過窓16から光検出器へ至る構成となる。
【0015】
図2は本発明の他の実施例として、光源と光検出器がセルを挟んで反対側に配置された通過型セルに本発明を適用した例を示す。
同図において、光透過窓15、16はそれぞれ鏡板11、12に各1個ずつ設けられる点が図1の構成と相違する。その他、図1と同符号を付した部材は図1と同一の機能を有する。この構成においては、光源(図示せず)からの光は図の右側から光透過窓15を通して入射し、両反射板17、18間で折り返して光透過窓16から左側へ抜け光検出器(図示せず)に達する。
この構成においても、本発明の作用効果は図1の場合に比べて何ら損なわれないことは自明である。
【産業上の利用可能性】
【0016】
本発明は、光吸収分析法により気体中の微量成分を計測するガス分析装置に利用できる。
【符号の説明】
【0017】
10 セルボディ
11 鏡板
11a 凹部
12 鏡板
12a 凹部
13 ガス入口
14 ガス出口
15 光透過窓
16 光透過窓
17 反射板
18 反射板
19 ネジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料ガスが導入されるセルと、光を該セルに入射させる光源と、該セル内の鏡面で反射して前記セルから出射する光の強度を検出する光検出器を備えて成る光吸収分析法によるガス分析装置において、前記セルの内壁面に当接して着脱可能に装着された反射板上に前記鏡面が形成されていることを特徴とするガス分析装置。
【請求項2】
前記反射板は両面に鏡面を有することを特徴とする請求項1記載のガス分析装置。
【請求項3】
装着された前記反射板によって覆われる前記内壁面に凹部を設けたことを特徴とする請求項1または請求項2記載のガス分析装置。
【請求項4】
前記セルが、端部が開放された中空筒状のセルボディと該セルボディの開放端を封止する着脱可能な鏡板とで構成され、前記反射板は前記セルボディの開放端と前記鏡板との間に挟着されることを特徴とする請求項1、請求項2、または請求項3記載のガス分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−220689(P2011−220689A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−86355(P2010−86355)
【出願日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】