説明

ガス吸収装置用規則充填物

【課題】 ガス吸収装置用規則充填物のぬれ性及び剛性を向上させることを目的とする。
【解決手段】
板状体のプレートを複数枚並列させて組み立ててなり、前記プレート本体には突出する複数の筒体からなる液受け部と、表裏両面に貫通する複数の透孔又は表裏両面に突出する複数の突出部からなる液分散部と、プレート本体の下面を凹凸上に形成してなる液渡し部から構成されることを特徴とする。前記プレート本体の表裏両面のうち少なくともいずれか一方の面に複数の小溝を水平方向に設けて形成した凹凸面による気液接触部を設けることが好ましい。前記板状体のプレートの左右両端部に、一方側の面に突出する突片と他方側の面に突出する溝とからなる連結部を形成し、複数枚並列させて各連結部の突片を隣接する溝に嵌めて組み立てるようにすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、排ガスを液体中に吸収させるために気液接触装置に充填される気液接触用の規則充填物に関する。さらに、詳しくは排ガスと液体の接触面積を増大させるとともに、ぬれ性を向上させることにより効率的なガス吸収を実現し、耐久性に優れたガス吸収装置用規則充填物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、火力発電所や化学プラント等では、アンモニアやハロゲン化水素、二酸化炭素等の排ガスを吸収回収するために、円筒状や矩形状の吸収塔に充填物を充填した気液接触装置が用いられている。気液接触装置は、上方から流下する液体と下方から上昇する排ガスとを充填物を介して接触させることにより、二酸化炭素等の特定の成分を液体に吸収させて回収するものである。これら気液接触装置は、大量の上昇する排ガスと上方から流下する液体とを短時間で処理する必要があり、充填される気液接触用充填物は、充填物表面において排ガスと液体とを効率よく接触させることが望まれる。
【0003】
充填物表面において排ガスと液体が効率よく接触するには、充填物の総表面積が大きく、液体ができるだけぬれ広がり、液体が流下する速度が遅く表面に留まっている時間が長いほど好ましい。液体がぬれ広がって表面に留まっている時間が長いほどぬれ性が良好であるという。ぬれ性が良好であれば、充填物表面での気液の接触が長くなり、それだけ排ガスの吸収効率が向上することになる。
【0004】
このような気液接触装置に用いられる気液接触用の充填物としては、排ガスの送り込み圧力を小さくするために、規則充填物が用いられる。気液接触装置は、積層された充填物の間を流下する液体と上昇する排ガスが移動する間に、規則充填物の表面において液体と排ガスが十分に接触することによって、排ガス中の特定の成分を吸収した液体を回収するように構成されている。
【0005】
このような気液接触用の充填物として、例えば、多数の孔を有し、塔軸に対して傾斜した波形状の流路を有する薄板材を、前記流路が交差するように配置し、前記薄板材に高さの異なる2種類の凸部を多数設けた充填物が提案されている。また、多数の孔と凸部とが配置され、塔軸に対して傾斜した波形状の流路を有する薄板材を、前記流路が交差するように配置され、前記凸部が所定の間隔を設けた複数の列を形成し、前記孔を前記凸部と凸部との間に位置するようにした充填物が提案されている。前者の構造に関しては、特開平8−168670号公報に記載されており、後者の構造に関しては、特許3319174号公報に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8―168670号公報
【特許文献2】特許3319174号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記公報に記載されている充填物は、波形状に形成した流路が、液体と排ガスとを半径方向において分散・混合する構造となっており、分散性において必ずしも十分なものではなかった。また、薄板材に高さが異なる2種類の凸部を多数設けた特開平8―168670号公報記載の充填物は、横方向の分散性は向上するものの、液膜を形成し排ガスと接触させるという点では満足できるものではなかった。
【0008】
また、孔を凸部と凸部との間に位置するように形成した特許3319174号公報記載の充填物は、傾斜した流路が液体と排ガスの分散性において問題があると共に、孔と凸部は塔軸方向においては直線状に配列されているために分散性において十分とはいえなかった。さらに、上記公報記載の充填物は、いずれも吸収塔に充填する際に上段の充填物と下段の充填物の上下面を当接して組み立てるために、薄板材においては強度において問題があった。
【0009】
この発明はかかる現況に鑑みてなされたもので、液体及び排ガスの分散性を向上させて効率的な気液接触を図ると共に、高強度なガス吸収装置用充填物を提供することを目的とする。また、この発明は、充填物の材質としてポリプロピレン組成物を用いることによって高強度で耐薬品性に優れているとともに、ぬれ性を向上させたガス吸収装置用規則充填物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は上記目的を達成するために次のような構成とした。即ち、この発明に係る規則充填物は、
板状体のプレートを複数枚並列させて組み立ててなり、前記プレート本体には突出する複数の筒体からなる液受け部と、表裏両面に貫通する複数の透孔又は表裏両面に突出する複数の突出部からなる液分散部と、プレート本体の下面を凹凸上に形成してなる液渡し部から構成されることを特徴とする。また、板状体のプレートを複数枚並列させて組み立ててなり、前記プレート本体には突出する複数の筒体からなる液受け部と、表裏両面に貫通する複数の透孔又は表裏両面に突出する複数の突出部からなる液分散部と、表裏両面のうち少なくともいずれか一方の面に複数の小溝を水平方向に設けて形成した凹凸面による気液接触部と、プレート本体の下面を凹凸上に形成してなる液渡し部から構成されるガス吸収用規則充填物としてもよい。
前記板状体のプレートの左右両端部に、一方側の面に突出する突片と他方側の面に突出する溝とからなる連結部を形成することが好ましい。前記プレート本体に突出する複数の筒体からなる液受部が中空状であり、表裏いずれか一方を雄側、他方側を雌側として複数枚並列させ、前記各連結部の突片を隣接する溝に嵌め合いして組み立てるようにすることができる。
【0011】
前記プレート本体に突出する複数の筒体からなる液受部が円筒状筒体であり、下列は上列に対して半ピッチずらして2列に配列することができる。また、液受部を構成する複数の円筒状筒体は、3列の配列とし、上列、中列、下列が1/3ピッチずらして3列に配列することが好ましい。そして、上記板状体のプレートを複数板並列させて組み立てるときは、複数枚の板状体のプレートの末端に板状体の凸プレート及び凹プレートを配置し、横断面が正方形になるように配置することが好ましい。前記プレートの左右両側端部の連結部の適宜の位置に係合部が設けられており、前記係合部は、連結部の一方側の溝を形成する外側壁に溝内に貫通するように設けた透孔と、連結部の一方側を形成する突片に形成した突起とからなる構成とすることができる。
【0012】
前記板状体のプレートは、材質がポリプロピレン樹脂組成物、またはセルロースパウダーとポリプロピレン樹脂組成物の混合物とすることができる。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、液体の分散性を向上させて効率的な気液接触を図ることができ、組み立てが簡単で吸収性能に優れたガス吸収装置用規則充填物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】規則充填物の平面図である。
【図2】規則充填物を構成する中プレートの実施形態を示す一部を省略した正面図である。
【図3】同じく平面図である。
【図4】同じく側面図である。
【図5】図1A−A線における縦断面図である。
【図6】図2B−B線における一部を省略した拡大横断面図である。
【図7】微小溝を示す部分拡大正面図である。
【図8】同じく、微小溝を示す部分拡大断面図である。
【図9】係合部を示す拡大断面斜視図である。
【図10】係合部の透孔部分を示す拡大断面斜視図である。
【図11】規則充填物を構成する凸プレートの側面図である。
【図12】同じく凸プレートを図1のA−A線に相当する部分で切断した縦断面図である。
【図13】同じく凸プレートを図2のB−B線に相当する部分で切断した横断断面図である。
【図14】規則充填物を構成する凹プレートの側面図である。
【図15】同じく凹プレートを図1のA−A線に相当する部分で切断した縦断面図である。
【図16】同じく凹プレートを図2のB−B線に相当する部分で切断した縦断面図である。
【図17】規則充填物として中プレート、凸プレート及び凹プレートを組み立てた状態の一部を省略した横断面図である。
【図18】充填物を積層した状態の上下段を示す説明図である。
【図19】第2実施形態の中プレートの一部を省略した正面図である。
【図20】同じく図19のD−D線における縦断面図である。
【図21】第2実施形態の凸プレートの図19のD−D線に相当する部分で切断した縦断面図である。
【図22】第2実施形態の凹プレートの図19のD−D線に相当する部分で切断した縦断面図である。
【図23】セルロース量と物性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本願に係る規則充填物を図面に基づいて説明する。図1は、第1実施形態における一部を省略した規則充填物を示す。規則充填物1は、板状体の中プレート2、同じく板状体の凸プレート3及び板状体の凹プレート4によって構成される。中プレート2は、垂直に多数立設され平行に組み立てられるものであり、凸プレート3及び凹プレート4は、前記組み立てられた中プレート2の両側面に取り付けられるものである。中プレート2、凸プレート3及び凹プレート4を組み立てたとき、全体として平面において正方形状に組み立てられる。
【0016】
図1〜図6に基づいて、中プレート2を説明すると、中プレート2は、プレート本体5に液受部6、液分散部7、気液接触部8、液渡し部9を順次下方に向けて形成し、プレート本体5の両側端にプレート本体5を垂直に並列した状態で組み立てられるように連結部10が設けられている。以下に、各構成について詳述する。
【0017】
前記液受部6は、中空状筒体13を一定の間隔を空けて水平に配列してなり、図2に示す実施形態では、上下二列に配列されており、下段の中空状筒体13は上段の中空状筒体13と中空状筒体13との間に位置するように半ピッチずれて形成されている。前記中空状筒体13は、図3及び図6に明らかなように、プレート本体5の表裏に突出しており、一方を開口させて雌部14とし、反対側を先端部分に小径部を形成した雄部15としている。前記雌部14が突出されている側を表面とすると、雄部15は裏面に突出することになり、中プレート2を組み立てたとき、中空状筒体13の前記雄部15の小径部が隣接する雌部14に嵌合することになる。
【0018】
前記中空状筒体13の水平方向の間隔寸法は、特に限定されないが中空状筒体13の直径寸法より僅かに狭い寸法とすることが好ましい。下段における中空状筒体13の列においては、上記の通り半ピッチずれて配列されている。また、中空状筒体13の上段と下段の垂直方向における間隔は、適宜選択することができるが、中空状筒体13の直径寸法より狭い寸法とすることが好ましい。
【0019】
図示する実施形態では、中空状筒体13の列は2列に配列したが、これに限定されるものではなく、2列以上の複数列とすることができ、あるいは1列であってもよい。例えば、中空状筒体13を3列に配列した場合には、上列、中列、下列が1/3ピッチずらして配列することが好ましい。2列配列より3列配列とする方が、液受部のガスの断面通過流路が大きくなり、ガス流速を下げることができるため圧力損失が低くなる。いわゆる、落下液のフラッディングが抑制されることになる。
【0020】
上記構成の液受部6においては、上方から流下してきた液体が中空状筒体13の上段の列群で分散され、さらに下段の列群で分散されて流下することになる。中プレート2においては、表裏において同時に同様な液体の分散による流下が行われることになる。尚、プレート本体5の肉厚、中空状筒体13の外径及び突出寸法は適宜決定することができるが、例えば、肉厚を1.0〜3mm、中空状筒体13の外径を4〜12mm、好ましくは6〜10mmとし、突出寸法を2〜6mm、好ましくは3〜4mmとすることができる。
【0021】
次に、液分散部7について説明する。液分散部7は、透孔16を一定の間隔で水平方向に複数列配列することによって形成されている。透孔16は、表裏に貫通しており、表面から裏面へ、あるいは裏面から表面への液体の分流を促し、液体の分散を一層促進する。透孔16の水平方向及び垂直方向の間隔は、透孔16の直径と同じ寸法とすることができ、水平方向において上下の透孔16は互いに半ピッチずらして形成されている。透孔16の水平方向の列数は、実施形態では6列に形成されているが、複数列であれば特に限定されない。
【0022】
液受部6から流下してきた液体は、液分散部7の透孔16によって表裏いずれにも分流が行われて分散が促進され、気液接触界面が増加し効率的な気液接触が行われる。前記透孔16の大きさは、液体の性質等によって適宜決定すればよい。例えば、透孔16の直径を3〜7mm、好ましくは4〜6mmとすることができる。透孔16の多少の間隔のズレや列のズレは許容される。
【0023】
次いで、液分散部7の下方の気液接触部8について説明する。気液接触部8は、水平方向に設けた小溝17による凹凸面18によって形成されている。前記小溝17は、プレート本体5の左右両端に渡って形成されており、前記液受部6、液分散部7及び後述する液渡し部9を含むプレート本体5の表裏の全面に形成されている。図2では、小溝17を横線によって部分的に示してある。図7は小溝を形成した一部を拡大した部分表面図であり、図8は一部を拡大した部分断面図である。
【0024】
前記小溝17は、流下する液体を保持しながら水平方向に拡散させて全体として液膜を形成するものであって、例えば、溝幅W及び溝深さHを0.2〜0.5mm、溝間隔Pを0.3〜0.7mmとすることができる。小溝17の断面形状は、角型,U字状、V字状等いずれの形状であってもよい。前記小溝17は、上述したようにプレート本体5の表裏全面に形成されているから、液受部6や液分散部7においても小溝17による凹凸面18が形成されている。従って、流下する液体は、分散を繰り返しながらも凹凸面18の部分では液膜を形成しており、気液接触が効率的に行われる。
【0025】
上記第1実施形態では、液受部6、液分散部7、及び気液接触部8は、上下に分けて2ヶ所に形成されており、上方の液受部6、液分散部7、及び気液接触部8と下方の液受部6A、液分散部7B、及び気液接触部8Bは全く同一に形成されている。尚、液受部6Aの中空状筒体の大きさ、液分散部7Aの透孔16の大きさ、及び気液接触部8Aの溝の大きさは、全て同じ大きさでなくともよい。また、液受部6A、液分散部7A、及び気液接触部8Aの水平方向における列の数も、必ずしも上下において同一でなくともよい。
【0026】
次に、液渡し部9について説明すると、液渡し部9は、気液接触部8Aの液体を均等に分散させながら下段の中プレート2へ流下させるもので、凹部19と凸部20によって凹凸状に形成されている。凸部20のピッチは、中プレート2を垂直に並列させて連結したときの間隔と同じであって、上段の充填物を載せて90度回転させたとき凸部20aが下段の中プレート2の上面に当接される。
【0027】
凸部20の部分は、積み重ねたとき下段の中プレート2の上面に当接し、液体を分散しながら流下させる。なお、凸部20は図示する実施形態では、積み重ねたとき下段の中プレートの上面に安定して当接するように先端を水平面に形成されているが、湾曲していても尖っていてもよい。
【0028】
さらに、プレート本体5の両側端に設けた連結部10の構成について説明する。連結部10は、プレート本体5の左右両側端に対称に形成されている。従って、右側端の連結部10について説明し、左側端の同一構成については同一符号を付して説明は省略する。連結部10は、プレート本体5の一方側の面、図示する例では表面側に突出する溝22と、プレート本体5の一方側の面、図示する例では裏面側に突出する突片23とからなる。
【0029】
前記溝22は、平行する内側壁22aと外側壁22bによって形成されており、外側壁22bの内面は開口部に向かって僅かに外側に傾斜している。外側壁22bの内面を外側に傾斜させることによって、後述する突起を容易に係止させることができる。突片23は、前記溝22に嵌合する大きさに形成されており、中プレート2を組み立てて中空状筒体13の雄部15の小径部を隣接する雌部14に嵌合させたとき、前記溝22と突片23とが嵌合するように形成されている。
【0030】
前記連結部10の上下端部と中間部には、前記連結部10の連結状態を保持するための係合部25が設けられている。前記係合部25は、図9及び図10に示すように、前記溝22を形成する外側壁22bに溝内に貫通するように穿設した透孔26と、突片23の前記透孔26に対応する部分の外面に形成した突起27とからなる。前記透孔26は、図2では外側壁22bの内面にスリットとして現れている。前記突起27は、突片23を溝22に嵌合させたときに溝の内側から透孔26に差し込まれて係止する。
【0031】
また、突起27は、係止面を除く外面が僅かに内側に湾曲して形成されている。このように、突起27の先端部外面を内側への湾曲面とすることによって、溝22への嵌合が容易になると共に、透孔26に確実に差し込まれることになる。尚、突起27の先端部外面を内側への湾曲面とすることなく平面であってもよく、逆に外側への湾曲面としてもよい。また、嵌合部25は、小幅の複数の透孔と小幅の複数の突起とによって構成してもよい。
【0032】
次に、図11〜図13に基づいて、凸プレート3について説明する。凸プレート3は、中プレート2の雌部14と溝22に嵌合するように、液受部6Bを中プレート2における中空状筒体13の雄部15と連結部10の突片23と同一の構成とした。即ち、凸プレート3は、液受部6Bと連結部10Aを中プレート2の裏面側の構成と同一の形状としたもので、プレート本体5Aの裏面側に液受部6Bを円形状雄部15Aによって形成し、連結部10Aを突片23Aによって形成した。
【0033】
円形状雄部15Aは、図13に示すように、中心部を凹部とすると共に、先端部外周面に段部を設けて小径部とすることによって形成してなり、前記小径部が中プレート2の中空状筒体13の一方側に形成した雌部14に嵌合する。前記雄部15Aの配列は、中プレート2の中空状筒体13の雌部14と同じであることは勿論である。連結部10Aを形成する突片23Aは、中プレート2の連結部10を形成する突片23と同じであり、突起27が形成される位置及び形状も同じである。
【0034】
凸プレート3の表面側の両側端縁部に、断面略半円形状の突起30が上下端に亘って突設されている。前記突起30は、凸プレート3の両側端縁部を補強する。尚、凸プレート3と中プレート2との違いは、上記のように、液受部6を雄部15Aのみとし、連結部10Aを突片23Aと突起30により形成する点だけであり、他の構成は中プレート2と同じである。従って、液分散部7、気液接触部8、及び液渡し部9は、プレート本体5Aの表裏両面に形成されている。これらの説明については省略する。
【0035】
凹プレート4については、図14〜図16に図示されている。凹プレート4は、凸プレート3とは反対に、液受部6Dと連結部10Bを中プレート2の表面側の構成としたものである。即ち、プレート本体5Bの表面側に液受部6Dを円形状雌部14Aによって形成し、連結部10Bを溝22Aによって形成した。凹プレート4は、中プレート2の雄部15と突片23と嵌合するように、液受部6Dを中プレート2における中空状筒体13の円形状雌部14と連結部10の溝22と同一の構成とした。
【0036】
円形状雌部14Aは、図16に示すように、中心部を中プレート2の雄部15が嵌合するように凹部とすることによって形成されている。前記円形状雌部14Aの配列は、中プレート2の中空状筒体13の雄部15と同じであることは勿論である。連結部10Bを形成する溝22Aは、中プレート2の連結部10を形成する溝22と同じであり、透孔26aが形成される位置及び形状も同じである。
【0037】
凹プレート4の裏面側の両側端縁部に、断面略半円形状の突起30aが上下端に亘って突設されている。前記突起30aは、凹プレート4の両側端縁部を補強する。尚、凹プレート4と中プレート2との違いは、上記のように、液受部6を円形状雌部14Aのみとし、連結部10Bを溝22Aと突起30aによって形成する点だけであり、他の構成は中プレート2と同じである。従って、液分散部7、気液接触部8、及び液渡し部9は、プレート本体5Bの表裏両面に形成されている。これらの説明については省略する。
【0038】
次に、規則充填物1を構成する中プレート2、凸プレート3及び凹プレート4の使用方法について説明する。規則充填物1を組み立てるには、先ず中プレート2を並列させて中空状筒部13の雌部14と雄部15を嵌合させると共に、連結部10における溝22と突片23を嵌合させる。雌部14と雄部15とが嵌合することによって、プレート本体5同士の間に所定の間隔が設けられる。また、溝22に突片23が嵌合したときに、連結部10の係合部25においては、外側壁22bに設けた透孔26に突片23に設けた突起27が係止するので、連結部10の連結状態は確実に保持される。
【0039】
中プレート2を所定数連結して組み立てた後、表裏それぞれの面に凸プレート3と凹プレート4を連結する。凸プレート3は、中プレート2の表面側に嵌合される。即ち、凸プレート3の雄部15Aを中プレート2の雌部14に嵌合させると共に、凸プレート3の突片23Aを中プレート2の溝22に嵌合させ、さらに係合部25では、凸プレート3の突片23に突設した突起27を中プレート2の溝22を構成する外側壁22bの透孔26に係止させる。このように、液受部6と連結部10の嵌合によって、凸プレート3と中プレート2とは確実に連結される。
【0040】
次いで、凹プレート4を中プレート2の雄部15側に連結する。凹プレート4は、複数連結して組み立てた中プレート2の裏面側に嵌合される。即ち、凹プレート4の雌部14Aに中プレート2の雄部15を嵌合させると共に、凹プレート4の溝22Aに中プレート2の突片23を嵌合させ、同時に係合部25では、中プレート2の突片23に突設した突起27を凹プレート4の溝22を構成する外側壁22bの透孔26aに係止させる。このように、液受部6と連結部10の嵌合によって、凹プレート4と中プレート2とは確実に連結される。
【0041】
上述のように、中プレート2、凸プレート3及び凹プレート4による規則充填物1の大きさは、平面において正方形状に組み立てることができる(図1及び図17参照)。また、規則充填物1として組み立てる大きさは特に限定されないが、段積みをするためにはプレート本体の幅(長さ)寸法の半分、或いは倍数とすることが好ましい。
【0042】
また、上記規則充填物1を気液接触装置に充填する際には、前記規則充填物1を水平に並べると共に、上下に積み重ねられる。上下に段積みすると、図18に示すように、下段規則充填物の中プレート2、凸プレート3及び凹プレート4の各上端面が、90度回転させて積み重ねた上段の中プレート2の液渡し部9の凸部20に当接する。流下してきた液体は、凸部20から下段の各プレートに受け渡されて行く。
【0043】
次に、図19以下に示す第2実施形態について説明する。第2実施形態に係る規則充填物31は、第1実施形態に係る規則充填物1と同様に、中プレート32、凸プレート33及び凹プレート34から構成される。前記中プレート32は第1実施形態の中プレート2に対応しており、前記凸プレート33は第1実施形態の凸プレート3に対応しており、前記凹プレート34は第1実施形態の凹プレート4に対応している。規則充填物31が規則充填物1と異なる点は、中プレート32、凸プレート33及び凹プレート34のいずれにおいても液分散部37の部分のみである。従って、同一構成については、同一符号を付してその説明は省略する。
【0044】
尚、第2実施形態における下方の第2液受部6Fは、間隔を空けた2つの中空状筒体13によって構成されている。上方の第1液受部6が中空状筒体13を水平方向に二列に配設している構成は、第1実施形態と同じであり、中空状筒体13が雌部14と雄部15によって形成されている構成も第1実施形態と同様である。
【0045】
第2実施形態が第1実施形態と大きく異なる点は、液分散部37,37Aの構成である。液分散部37は、上面を突出した湾曲面に形成した突出部38を複数配設してなる。突出部38は、所定の間隔で水平方向に複数列配設してなるとともに、上下方向において重ならないようにずらして配列されている。図示する実施形態では、上段の突出部38の左端が、下段の突出部38の中央部に位置するように配設されている。前記突出部38は、中プレート32の表裏両面に同様に配設されている。
【0046】
上記液分散部37では、上方から流下してきた液体は、突出部38において一部の液体は突出部38の上面を水平方向に分散され、残りの液体は突出部38を乗り越えて流下する。流下する液体は、突出部38では、上面を水平方向へ流れ、一部は乗り越えることによって分散が繰り返される。そして、液分散部37Aにおいても、突出部38は小溝17の中に浮島のように配設されているから、小溝17の部分でもさらに分散が促進される。
【0047】
前記規則充填物31を構成する凸プレート33は、第1実施形態の凸プレート3の構成に対応し、中プレート32の表側面に連結されるもので、図21に示すように、間隔を設けた2つの雄部15Aによる液受部と突出部38による液分散部は裏側面にのみ設けられている。従って、第1液受部6B、第2液受部6Fにおいては雄部15Aのみが形成され、また連結部10Aが突片23Aと突起30によって構成されており、他の構成は凸プレート3と同様である。
【0048】
また、凹プレート34は、第1実施形態の凹プレート4に対応し、中プレート32の裏側面に連結されるもので、間隔を設けた2つの雌部15Aによる第2液受部6Gと液分散部37,37Aを構成する突出部38は表側面にのみ設けられている(図23参照)。従って、第1液受部6D、第2液受部6Gにおいては雌部14Aのみが形成され、また連結部10Bが溝22Aと突起30aによって構成されており、他の構成は凹プレート4と同様である。
【0049】
上記第2実施形態の規則充填物31の使用方法は、第1実施形態の規則充填物1と同様であるからその説明は省略する。上記実施形態のように、プレート本体に液受部、液分散部、気液接触部及び液渡し部の構成によって、流下する液体は分散が促進されて液膜を形成し、効率的な気液接触が行われる。
【0050】
第1実施形態及び第2実施形態の使用方法について、いずれも複数並列させた中プレートの両側の末端に凹プレート及び凸プレートを配置する組み立てについて説明したが、いずれの実施形態においても凹プレート及び凸プレートを省略することができる。単に、凹プレート及び凸プレートを省略してもよいが、凹プレート及び凸プレートを省略した場合には、複数配列した中プレートの組合せ形状を他の適宜なプレートにより保持するようにしてもよい。
【0051】
次に、充填物用組成物として耐久性に優れたポリプロピレン樹脂組成物について提案する。この発明に係るポリプロピレン樹脂組成物は、耐久性に優れた規則充填物とするために、ポリプロピレン樹脂組成物に対してセルロースパウダーを1〜60wt%混合してなる。前記セルロースパウダーは、植物繊維であれば特に限定されないが、高度に精製して微細化した天然木材セルロースであることが好ましい。セルロースパウダーの平均粒子径は、3〜710μmとし、好ましくは6〜50μmとする。
【0052】
ポリプロピレン樹脂組成物は、比重が小さく成形が容易な上、強度が高く薬品に強い特色を有しており、セルロースパウダーを混合することによって高い耐久性を得ることができる。以下に、ポリプロピレン樹脂組成物にセルロースパウダーを混合することによって耐久性が向上することを実施例によって説明する。
【実施例1】
【0053】
<セルロースパウダーを混合した場合の物性>
まず、ポリプロピレン樹脂組成物にセルロースパウダーを混合した場合の物性について試験した。以下に試験例について説明する。ポリプロピレン樹脂組成物には、日本ポリプロ株式会社製のノバテックPPMH4(商品名)を使用し、セルロースパウダーには、日本製紙ケミカル株式会社製のKCフロックW-100GK(商品名)(表においてはセルロースBと表示する)を使用し、10wt%混合した。
【0054】
<セルロースパウダーの混合と引張降伏強さ、破壊伸び及び引張弾性率>
次に、ポリプロピレン樹脂組成物単独の場合とポリプロピレン樹脂組成物にセルロースパウダーを混合した場合の引張降伏強さ、破壊伸び及び引張弾性率物性について試験した。
【0055】
以下に試験例について説明する。ポリプロピレン樹脂組成物には、日本ポリプロ株式会社製のノバテックPPMH4(商品名)を使用し、セルロースパウダーには、上記物性の試験で用いたものと同じ日本製紙ケミカル株式会社製のKCフロックW−100GK(商品名)(セルロースB)を使用し、混合量を変更した。
【0056】
試験片の形状は、射出成形品のダンベル状5号形であって、115mm×25mm×肉厚2.0mmの大きさである。試験方法は、上記試料を用いた引張試験によった。試験機には、RTFシリーズの引張試験機を用いた。先ず試験条件として、引っ張り速度:20mm/min、試験温度:24℃(室温)及び80℃で乾熱し、試験湿度:51%で行った。試験結果を表1に示す。
【0057】
【表1】

【0058】
また、上記試験結果を図23に示す。図23(a)は、セルロース量と引張降伏強さを示すグラフであり、図23(b)は、セルロース量と破壊伸びを示すグラフであり、図23(c)は、セルロース量と引張弾性率を示すグラフであり、図23(d)は、試験片のセルロース量と80℃に乾熱した場合の物性保持率を示したグラフである。
【0059】
上記表1及び図23から、引張降伏強さにおいては、試験温度が試験片を24℃(室温)の場合と試験片を80℃に乾熱した場合を比較すると、引張降伏強さ(MPa)は、PP(ポリプロピレン樹脂組成物)のみでは21%程度ダウンするが、セルロースパウダーを混合したものは、13〜18%ダウンとなり耐熱性が向上する傾向が見られる。即ち、PPのみの場合には100%から79%にダウンするが、セルロース5%混合PPでは100%から82%にダウン、セルロース10%混合PPでは100%から85%にダウン、セルロース15%混合PPでは100%から87%にダウンするに止まっている。
【0060】
また、破壊伸び(%GL)においては、試験温度が試験片を24℃(室温)の場合と試験片を80℃に乾熱した場合を比較すると、破壊伸び(%GL)は、PP(ポリプロピレン樹脂組成物)のみでは5倍程度伸びてしまうが、セルロースパウダーを混合したものは、1〜2倍程度の伸びとなり、セルロースを混合することで熱影響を受けない傾向が見られる。即ち、PPのみの場合には4.94倍伸びるが、セルロース5%混合PPでは2.0倍の伸び、セルロース10%混合PPでは1.07倍の伸び、セルロース15%混合PPでは0.95倍の伸びに止まっている。
【0061】
引張弾性率(MPa)においては、試験温度が試験片を24℃(室温)とした場合には、PPのみと比較するとセルロースを混合することで引張弾性率が1.03〜1.17倍程度向上する傾向が見られる。即ち、セルロース5%混合PPでは1.03倍、セルロース10%混合PPでは1.05倍、セルロース15%混合PPでは1.17倍とそれぞれセルロースを混合したことにより弾性率が向上する傾向にある。
【0062】
また、試験温度が試験片を80℃に乾熱した場合の引張弾性率(MPa)は、PPのみと比較するとセルロースを混合することで引張弾性率が1.33〜1.38倍程度向上する傾向が見られる。試験片が24℃(室温)での結果より高温(80℃乾熱)の方が引張弾性率は優れる結果となった。即ち、セルロース5%混合PPでは1.33倍、セルロース10%混合PPでは1.34倍、セルロース15%混合PPでは1.38倍とそれぞれセルロースを混合したことにより弾性率が向上する傾向にある。上記結果から、PPのみの場合に比較してセルロースを混合した場合には、高温時での方がより弾性率に差が出る結果となった。
【符号の説明】
【0063】
1:規則充填物
2:中プレート
3:凸プレート
4:凹プレート
5:プレート本体
6:液受部
6F:第2液受部
7:液分散部
8:気液接触部
9:液渡し部
10:連結部
13:中空状筒体
14:雌部
15:雄部
16:透孔
17:小溝
18:凹凸面
19:凹部
20:凸部
22:溝
22a:内側壁
22b:外側壁
23:突片
25:係合部
26:透孔
27:突起
31:規則充填物
32:中プレート
33:凸プレート
34:凹プレート
37:液分散部
38:突出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状体のプレートを複数枚並列させて組み立ててなり、前記プレート本体には突出する複数の筒体からなる液受け部と、表裏両面に貫通する複数の透孔又は表裏両面に突出する複数の突出部からなる液分散部と、プレート本体の下面を凹凸上に形成してなる液渡し部から構成されることを特徴とするガス吸収用規則充填物。
【請求項2】
板状体のプレートを複数枚並列させて組み立ててなり、前記プレート本体には突出する複数の筒体からなる液受け部と、表裏両面に貫通する複数の透孔又は表裏両面に突出する複数の突出部からなる液分散部と、表裏両面のうち少なくともいずれか一方の面に複数の小溝を水平方向に設けて形成した凹凸面による気液接触部と、プレート本体の下面を凹凸上に形成してなる液渡し部から構成されることを特徴とするガス吸収用規則充填物。
【請求項3】
板状体のプレートの左右両端部に、一方側の面に突出する突片と他方側の面に突出する溝とからなる連結部が形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のガス吸収用規則充填物。
【請求項4】
プレート本体に突出する複数の筒体からなる液受部が中空状であり、表裏いずれか一方を雄側、他方側を雌側として、複数枚並列させて各連結部の突片を隣接する溝に嵌め合いして組み立てることを特徴とする請求項1〜請求項3に記載のガス吸収用規則充填物。
【請求項5】
プレート本体に突出する複数の筒体からなる液受部が円筒状筒体であり、下列は上列に対して半ピッチずらして2列に配列されていることを特徴とする請求項1〜請求項4に記載のガス吸収用規則充填物。
【請求項6】
プレート本体に突出する複数の筒体からなる液受部が円筒状筒体であり、3列の配列とし、上列、中列、下列が1/3ピッチずらして3列に配列されていることを特徴とする請求項1〜請求項4に記載のガス吸収用規則充填物。
【請求項7】
複数枚の板状体のプレートの末端に板状体の凸プレート及び凹プレートを配置し、横断面が正方形になるように配置することを特徴とする請求項1〜請求項6に記載のガス吸収用規則充填物。
【請求項8】
プレートの左右両側端部の連結部の適宜の位置に係合部が設けられており、前記係合部は、連結部の一方側の溝を形成する外側壁に溝内に貫通するように設けた透孔と、連結部の一方側を形成する突片に形成した突起とからなることを特徴とする請求項1〜請求項7記載のガス吸収用規則充填物。
【請求項9】
材質がポリプロピレンであることを特徴とする請求項1〜請求項8記載のガス吸収用規則充填物。
【請求項10】
材質がセルロースパウダーとポリプロピレンの混合物であることを特徴とする請求項1〜請求項8記載のガス吸収用規則充填物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2013−56313(P2013−56313A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−197128(P2011−197128)
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【出願人】(000155229)株式会社明治ゴム化成 (63)
【Fターム(参考)】