説明

ガス圧接用環体

【課題】本発明はガス圧接作業が安全に行われると共に接合強度が安定でき、且つ、製造コストが安く出来るガス圧接用環体を提供することを目的とする。
【解決手段】接合する2本の鋼材Wの端面wと略同形状で且つ鋼材Wと略同材で環本体1を形成すると共に、該環本体1にガス抜き手段2を設けた構造とする。また前記環本体1としては、コイルスプリング状に形成した材料から略1周分を切断して作ると共に環の合せ箇所にスキ間が設けられたガス抜き手段2を具備させると良い。又、前記環本体1の断面形状として、円形,四角形,菱形の内の1つとし、更に前記ガス抜き手段2として、切れ目21,穴22,切欠溝23の内の1つとするのが良い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建築現場や土木現場等で利用される丸や条等の鉄筋,レ−ルなどの2本の鋼材をガス圧接する際に用いるものであり、特には特願2001−194204(特許第3629224号)などで用いるガス圧接用環体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、2本の丸や条などの鋼材を対向させてガス圧接する際に、接合する端面間に、該端面と略同形状で且つ鋼材と略同材で環状に形成した環体を挟み込んで使用する発想は、本発明者が特願2001−194204で提案したところである。
【0003】
しかしながら特願2001−194204は、接合面を合成樹脂雰囲気に包むための合成樹脂製シ−トが環体の内部に入れられているため、合成樹脂がガス化した密閉な空間部は押圧される際に、内部の空気が適宜に押出されて抜け、その空間部の密着を完了させているが、中にはこの時に大きな音を発生させると共に環体の一部が欠けて飛び出す場合もあった。従って、ガス圧接作業中に危険を伴う恐れがあると共に良好な接合面が得られない場合があると言う問題点があった。
【特許文献1】特願2001−194204号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明はガス圧接作業が安全に行われると共に接合強度が安定出来るガス圧接用環体を提供することを目的とする。
【0005】
本発明の他の目的は、製造コストが安く出来るガス圧接用環体を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題点を解決するために成されたものであり、つまり、対向する2本の鋼材の端面と略同形状で且つ鋼材と略同材で環本体を形成すると共に、該環本体にガス抜き手段を設けた構造とする。また前記環本体としては、コイルスプリング状に形成した材料から略1周分を切断して作ると共に環の合せ箇所にスキ間を設けたガス抜き手段と成すと良い。又、前記環本体の断面形状として、円形,四角形,菱形の内の1つとするのが好ましく、更に前記ガス抜き手段として、切れ目,穴,切欠溝の内の1つとするのが良い。
【発明の効果】
【0007】
請求項1のように鋼材(W)の端面(w)と略同形状で且つその鋼材(W)と略同材で環本体(1)を形成すると共に該環本体(1)にガス抜き手段(2)を設け、これをガス圧接する際、接合する2本の鋼材(W)の端面(w)間に環本体(1)を挟み込むと共に合成樹脂製シ−トなどを具備し、初期加熱後、接合面を合成樹脂雰囲気に包むための合成樹脂製シ−トなどがガス化した空間部を押圧させる際に、内部の空気がガス抜き手段(2)によって適宜に且つ確実に押出されて抜け、その空間部の密着を確実に完了させることができるものとなる。このため、従来の如き空間部を押圧して密着する際に大きな音を発生させる恐れがなくなると共に環本体(1)の一部が欠けて飛び出す恐れもなくなり、ガス圧接作業が安全に行われ、且つ、接合強度を安定させることが可能となる。
【0008】
請求項2のように環本体(1)が、コイルスプリング状に形成した材料から略1周分を切断して作られると共に環の合せ箇所にスキ間(s)を設けてガス抜き手段(2)が具備されるものとすることにより、製造コストを安価にすることが出来るものとなると共にガス抜き手段(2)が極めて簡単に設けることが出来るものとなる。
【0009】
請求項3に示すように環本体(1)の断面形状を円形に形成すると、端面(w)と接触する部分が曲面であるため、平面に比べて端面(w)との密着が早くなり、空間部の密閉を早めることにより、外部からの酸素の浸入を最小限に押えることが可能となり、接合結果が良好なものとなる。また断面形状を四角形に形成させると、筒状の材料を鉄筋などの鋼材(W)の外形に合せたものを所定厚さに切断するだけで容易に環本体(1)が得られるものとなる。更に断面形状を菱形に形成させると、その両側の周縁が円形よりも更に早く溶けて空間部を確保出来るので、外周から空気が殆ど流れ込む恐れがなくなり、且つ合成樹脂がガス化されることにより、圧接に有利なガスを充満することができ、良好な接合面の形成が可能となるのである。
【0010】
請求項4に示すようにガス抜き手段(2)を切れ目(21)とすることにより、ガス化した空間部が押圧されて密着する際に、その内部の空気が切れ目(21)から適宜に押出されて確実に抜け、前記空間部の密着を確実に完了させることができるものとなると共に、切れ目(21)を簡単に且つ正確に設けることが可能なものとなる。またガス抜き手段(2)を穴(22)や切欠溝(23)とすることにより、切れ目(21)と同様に、ガス化した空間部が押圧されて密着する際に、その内部の空気が切れ目(21)から適宜に押出されて確実に抜け、前記空間部の密着を確実に完了させることができるものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1、図2は本発明の実施形態を示す図であり、この図に基づいて説明する。(1)は断面形状が円形であり、対向させてガス圧接する2本の鋼材(W)の端面(w)の外形と略同形状で且つ前記鋼材(W)と略同材で環状に形成させた環本体であり、該環本体(1)の太さは、鋼材(W)の大きさに対応して変わるが、一般に2mm〜5mmとするのが良い。また環本体(1)の断面形状としては円形以外に、図4に示す四角形や菱形としても良い。尚、前記環本体(1)の断面形状としては三角形としても良い。(2)は環本体(1)に設けたガス抜き手段であり、該ガス抜き手段(2)には、切れ目(21)や穴(22)或いは切欠溝(23)を設けると良い(図3、図4参照)。また前記切欠溝(23)として、図3(c)のようなV溝や(d)のようなコの字状の溝を設けても良い。
【0012】
次に本発明品を製作する場合、特に鉄筋の鋼材(W)に用いるために、本発明品を製作する場合について説明する。先ず鋼材(W)の大きさに対応する線径の鉄線材を用意し、前記鋼材(W)の外形と略同じ大きさにコイルスプリング状に巻回して形成させる。このコイルスプリング状にしたものから略1周分を切断し、それを平らにして図1、図2のようにする。この時、環の合せ箇所にスキ間(s)を設けてガス抜き手段(2)とするが、この時のスキ間(s)としては、0.2mm〜1.5mmの範囲とするのが良い。特に0.3mm前後とするのが好ましい。又、前記環本体(1)がレールなどの複雑な形状の鋼材(W)に使用されるために、本発明品を製作する場合には、レールなどの鋼材(W)を焼なまして、その鋼材(W)の周縁を残して内部を削除した後、所定厚さに切断して製作するか、或いは専用の型を作って製作しても良い。この時、環本体(1)に切れ目(21)を設け、又は穴(22)を穿設させ、或いは切欠溝(23)を設けてガス抜き手段(2)も具備させておく。
【0013】
次に本発明品の取付け方法を図4に基づいて説明する。先ず始めに(a)の場合は、特願2008−259430で使用する環体保持部材が用いられて本発明品を取付けた状態を示し、特願2008−259430と同様に環体保持部材の中に本発明品を入れ、対向する2本の鋼材(W)の端面(w)間に挟み込んで取付ければ良い。(b)〜(d)の場合は、特願2001−194204と同様にして、本発明品を対向する2本の鋼材(W)の端面(w)間に挟み込むと共に本発明品の内部に合成樹脂製シートを入れて取付ければ良い。
【0014】
次に本発明の作用を図5に基づいて説明する。特願2001−194204や特願2008−259430に於いて、初期加熱時、環本体(1)の外周縁が溶けて端面(w)同士の外周と密着し、且つ、その前に合成樹脂が燃焼しガス化されて、閉鎖された空間部にガスが図5(a),(b)のように充満されることにより、端面(w)の酸化物組成を阻止すると共に、その後、空間部を押圧して内部の空気が押出される際、本発明品を使用すれば、空間部が押圧される際に、ガスが図5(a),(b)の点線矢印のように適宜に抜けることで、空間部のガスは中に溜って爆発的に噴出することなく、(c)の如く密着を完了させることができるものとなる。このため、従来発生する恐れがあった大きな音の発生や環本体(1)の一部が欠けて飛び出すこともないものとなる。従って、本発明品を用いればガス圧接作業が安全に行われると共に接合強度が安定出来るものとなるのである。
【産業上の利用可能性】
【0015】
本発明品はガス圧接だけでなく、高周波誘導加熱方式でも充分に対応することが可能なものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態を示す正面図である。
【図2】図1の平面図である。
【図3】本実施形態のガス抜き手段を示す説明図である。
【図4】本発明品の取付け状態を示す説明図である。
【図5】本発明の作用を示す説明図である。
【符号の説明】
【0017】
1 環本体
2 ガス抜き手段
21 切れ目
22 穴
23 切欠溝
W 鋼材
w 端面
s スキ間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2本の鋼材(W)を対向させてガス圧接する際に、接合する端面(w)間に挟み込んで使用されるものであって、前記端面(w)と略同形状で且つ前記鋼材(W)と略同材で環本体(1)を形成すると共に該環本体(1)にガス抜き手段(2)を設けたことを特徴とするガス圧接用環体。
【請求項2】
前記環本体(1)が、コイルスプリング状に形成した材料から略1周分を切断して作られると共に環の合せ箇所にスキ間(s)を設けて前記ガス抜き手段(2)が具備された請求項1記載のガス圧接用環体。
【請求項3】
前記環本体(1)の断面形状が、円形,四角形,菱形の内の1つである請求項1又は2記載のガス圧接用環体。
【請求項4】
前記ガス抜き手段(2)が、切れ目(21),穴(22),切欠溝(23)の内の1つである請求項1記載のガス圧接用環体。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−89104(P2010−89104A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−259640(P2008−259640)
【出願日】平成20年10月6日(2008.10.6)
【出願人】(394024983)東海ガス圧接株式会社 (12)
【出願人】(596171384)株式会社 徳武製作所 (14)
【Fターム(参考)】