説明

ガス検出器

【課題】検出空間内で被検出ガスが結露することを防ぎ、安定した検出結果を得ることができるガス検出器を提供する。
【解決手段】素子ケース20の外側面と収容ケース40の内側面とから構成され、回路基板41を収容する収容空間59を形成する収容空間形成面58に、検出空間39を形成する素子ケース20を加熱するための発熱体50,51を固着する。発熱体50,51からの生じる熱は、収容空間形成面58を構成する素子ケース20及び収容ケース40に伝導され、検出空間39を形成する素子ケース20の内側面が外部から冷却されることを防ぐことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はガス検出器に関し、詳細には、水素、一酸化炭素、炭化水素系ガス等の各種可燃性ガスの濃度測定や漏洩検知等に用いられるガス検出器に関する。特に、固体高分子型燃料電池ユニットの空気極側の配管に設置される水素ガス漏れ検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球規模の環境悪化が問題視されるなかで、高効率でクリーンな動力源として、燃料電池の研究が盛んに行われている。その中で低温作動、高出力密度の利点により、自動車用や家庭用として固体高分子型燃料電池(PEFC)が期待されている。このような燃料電池には薄膜の固体高分子電解質膜が使用され、電解質膜が破損した場合、燃料極側から燃料ガスが空気極側へ漏れ出し、発電効率の低下を招く。そこで、空気極側の配管に設置され、燃料ガスの漏れを検出するガス検出器が必要になっている。このような可燃性ガス濃度を検出するガス検出器のガスセンサ(ガス検出素子)として、可燃性ガスを燃焼する触媒を含む反応部を備え、可燃性ガスが触媒により燃焼する際に発生する熱量に基づき、可燃性ガスを検出する接触式燃焼式ガスセンサ(ガス検出素子)が知られている。ところが、上述したPEFCは、湿潤環境でなければプロトン伝導性を発現しないことから、燃料電池に流通するガスは高湿に保つ必要がある。また、冷却効率向上や廃熱利用のため、その流通するガスの温度は通常50℃乃至80℃で運転されており、ガス検出器もそのような湿潤な被検出ガス環境に曝されることになる。
【0003】
このようなガス検出器においては、被検出ガスの温度よりもガス検出素子が設置される検出空間内の温度の方が低い場合には、被検出ガスが検出空間内で冷却され、水滴が生じる。また、ガス検出素子の出力は、被検出ガスの温度に依存するため、被検出ガスの温度が変動した場合には、安定した検出結果が得られない。このため、従来のガス検出器ではガス検出素子の近傍に発熱体が設けられ、この発熱体に通電してガス検出素子を加熱することで、結露防止やガス検出素子の出力を安定化していた(例えば特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2004−93473号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に示されるガス検出器では、検出空間内に発熱体を設けているため、発熱体近傍の被検ガスの温度は上昇するものの、検出空間を形成する部材の内側面の温度を上昇させるには効率が悪く、ガス検出器が設置される配管の外部に存在する外気等と被検出ガスの温度差が大きい場合等には、検出空間を形成する部材の内側面の温度が当該外気等により冷却され、被検出ガスの露点以下になってしまうという問題があった。このため、被検出ガスが検出空間を形成する部材の内側面で冷却され、検出空間内に水滴が生じたり、ガス検出素子の出力が不安定になったりする恐れがある。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、検出空間内で被検出ガスが結露することを防ぎ、安定した検出結果を得ることができるガス検出器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、請求項1に係る発明のガス検出器は、被検出ガスを検出するガス検出素子と、前記ガス検出素子を内部に収容するとともに、前記被検出ガスを導入する導入口を備え、前記被検出ガスが導入される検出空間を形成する素子ケースと、前記ガス検出素子と電気的に接続される回路基板を内部に収容するとともに、前記素子ケースの少なくとも一部を内部に配置させる状態で保持する保持部を有する収容ケースと、前記収容ケースの内側面と前記素子ケースの外側面とから構成され、前記回路基板を収容する収容空間を形成する収容空間形成面とを備えるガス検出器であって、前記収容空間形成面に固着され、前記検出空間を形成する前記素子ケースを加熱するための発熱体を備えている。尚、本発明における「検出」とは、被検出ガスに含まれる特定のガスの有無を判定することに限らず、被検出ガスに含まれる特定のガスの濃度を検量することを含む趣旨である。
【0007】
また、請求項2に係る発明のガス検出器は、請求項1に記載の発明の構成に加え、前記発熱体は、前記収容空間形成面を構成する前記素子ケースの外側面に備えられている。
【0008】
また、請求項3に係る発明のガス検出器は、請求項1又は2に記載の発明の構成に加え、前記発熱体は、前記収容空間形成面を構成する前記収容ケースの内側面のうち、前記保持部を有する面に備えられている。
【0009】
また、請求項4に係る発明のガス検出器は、請求項1乃至3のいずれかに記載の発明の構成に加え、前記素子ケースの外側面の少なくとも一部が、前記被検出ガスと接することを特徴とする。
【0010】
また、請求項5に係る発明のガス検出器は、請求項1乃至4のいずれかに記載の発明の構成に加え、前記ガス検出素子は、熱伝導式ガス検出素子又は接触燃焼式ガス検出素子であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明のガス検出器によれば、収容空間形成面に固着された発熱体により、ガス検出器を構成する収容ケースを介して又は直接素子ケースが加熱されるので、検出空間を形成する素子ケースの内側面がガス検出器の外部に存在する外気等により冷却されることを防ぐことができる。したがって、検出空間を形成する素子ケースの内側面が被検出ガスの露点以下となった場合には、ガス検出素子が被水して、感度不良を招くおそれがあるが、本発明によれば検出空間内の被検出ガスが結露することを防止することができる。これにより、触媒層等が被水することによる検出精度の低下を招くことを防止することができる。
【0012】
また、請求項2に係る発明のガス検出器によれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、発熱体が収容空間形成面を構成する素子ケースの外側面に備えられているので、検出空間を形成する素子ケースに発熱体の熱が伝導されやすく、検出空間を形成する素子ケースを効率的に加熱することができる。したがって、検出空間を形成する素子ケースの内側面がガス検出器の外部に存在する外気等により露点以下に冷却されることを防ぐことができる。
【0013】
また、請求項3に係る発明のガス検出器によれば、請求項1又は2に記載の発明の効果に加え、発熱体が収容空間形成面を構成する収容ケースの内側面のうち、素子ケースを保持する保持部を有する面に備えられているので、検出空間を形成する素子ケースに発熱体の熱が伝導されやすく、検出空間内を形成する素子ケースを効率的に加熱することができる。したがって、検出空間を形成する素子ケースの内側面がガス検出器の外部に存在する外気等により露点以下に冷却されることを防ぐことができる。
【0014】
また、請求項4に係る発明のガス検出器によれば、請求項1乃至3のいずれかに記載の発明の効果に加え、素子ケースの外側面の少なくとも一部が、被検出ガスと接するため、素子ケースの被検出ガスと接触する面の面積を大きくすることができる。このため、被検出ガスから素子ケースに伝導される熱量が大きくなるので、検出空間内を形成する素子ケースが被検出ガスにより加熱され、検出空間内の雰囲気温度と、ガス検出器が取り付けられた配管内等の雰囲気温度との温度差を少なくすることができ、さらには被検出ガスが結露することをより確実に防ぐことができる。
【0015】
また、請求項5に係る発明のガス検出器によれば、請求項1乃至4のいずれかに記載の発明の効果に加え、収容空間形成面に固着された発熱体により検出空間を形成する素子ケースを加熱して、検出空間内で被検出ガスが結露することを防いでいるので、ガス検出素子が熱伝導式ガス検出素子又は接触燃焼式ガス検出素子を備えたガス検出器の感度を安定させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係るガス検出器を具体化したガス検出器10の実施形態について図面を参照して説明する。本実施形態として例示するガス検出器10は、接触燃焼式ガス検出素子であるガス検出素子60を備え、被検出ガスに含まれる可燃性ガスの燃焼に伴って電気抵抗値が変化することを利用して可燃性ガスの濃度を検出するガス検出器である。図1は、ガス検出器10が配管200に配設された状態を示す縦断面図である。図1に示すように、このガス検出器10は、例えば、自動車の燃料電池ユニットが備える配管200に搭載され、矢印300の方向に排出される被検出ガス中に含まれる水素を検出する目的等に用いられる。
【0017】
図2は、ガス検出器10の縦断面図である。図2に示すように、ガス検出器10は、被検出ガスを検出するガス検出素子60を収容する素子ケース20と、この素子ケース20を支持すると共に、ガス検出素子と電気的に接続された回路基板41を収容する収容ケース40とから構成される。尚、図2において、上下方向を上下方向、左右方向を左右方向と言う。
【0018】
まず、収容ケース40の構成について図2を参照して説明する。この収容ケース40は、ケース本体42と、ケース本体42の上端部に設けられた開口を覆う蓋であるケース蓋44とから構成されている。そして、収容ケース40は、その内部に、回路基板41,マイコン94及び、本発明の重要な構成要素である発熱体50,51を備えている。以下、収容ケース40を構成する各部材について詳述する。
【0019】
ケース本体42は、上面及び下面に開口を有し、所定の高さを有する容器であり、素子ケース20のつば部38を下面に備える開口にて保持する保持部46と、回路基板41の周縁部を保持する回路基板保持部45とを備えている。また、上面に備える開口には、この開口を塞ぎ、合成樹脂からなるケース蓋44が備えられている。
【0020】
また、ケース本体42は、ケース本体42の下部中央に形成された流路形成部43と、ケース本体42の側部に形成され、外部給電するためのコネクタ55とを備え、これらは一体に樹脂成形されている。この流路形成部43の内部には、図3を参照して後述する被検出ガスを導入及び排出する素子ケース20の導入部35(図3参照)が収納されている。このように、素子ケース20はその一部を収容ケース40内部に配置される状態で保持部46により保持されている。また、この素子ケース20のつば部38と保持部46との間には、被検出ガスの流路と収容ケース40との間をシールするシール部材47が外装されている。尚、流路形成部43は、被検出ガスに直接接する部材であるため、経年的な強度劣化を防ぐために、被検出ガスと接触する部位を耐薬品性の高い樹脂から形成されることが好ましい。また流路形成部43は、ガス検出器10が設置される配管200の外部に存在する外気等により冷却されることを回避するために、熱伝導性の低い樹脂で形成されることが好ましい。
【0021】
コネクタ55は、回路基板41及びマイコン94に電気を供給するためのものであり、ケース本体42の外側面に組み付けられている。このコネクタ55の内部には、ケース本体42の側壁から突出する複数のコネクタピン56,57が設けられている。コネクタピン56,57はそれぞれ、ケース本体42の側壁に埋め込まれた配線(図示せず)を介して回路基板41及びマイコン94に電気的に接続されている。
【0022】
回路基板41は、所定の厚みを有する板状の基板であり、被検出ガス中に含まれる可燃性ガスを検出するためのセンサ出力回路90(図6参照)と、発熱体50,51の温度を制御するための温度制御回路(図示せず)とをそれぞれ備えている。このセンサ出力回路90は、接続端子24乃至28により、ガス検出素子60の電極85,87,88及びグランド電極86,89とそれぞれ電気的に接続されている。また、温度制御回路と発熱体50,51とは、リード線52,53により電気的に接続されている。尚、図示していないが、リード線52,53はそれぞれ2本ずつある。回路基板41に備えられたセンサ出力回路90については、図6を参照して後述する。
【0023】
回路基板41の下面に備えられたマイコン94は、センサ出力回路の出力に基づき、被検出ガス中に含まれる可燃性ガスの濃度を演算するとともに、温度制御回路の出力に基づき、発熱体50,51の発熱量(温度)を制御しているものである。このマイコン94は、少なくとも、これらのセンサ出力演算や発熱体50,51の温度制御を実行するためのプログラムを格納する記憶装置と、この記憶装置に記憶されたプログラムを実行するCPUとを備えている。
【0024】
回路基板41を収容する収容空間59は、収容ケース40の内側面と素子ケース20の外側面とにより囲まれ、回路基板41を収容するための空間であり、充填剤により樹脂モールドされている。収容空間59に充填する充填剤として、熱伝導性の低い樹脂を使用することにより、収容空間59内の保温効果を高めることができる。
【0025】
次に、本発明の重要な構成要素である発熱体50,51について、図2を参照して説明する。発熱体50,51は、収容ケース40を介し又は直接素子ケース20を加熱し、素子ケース20の内側面の温度を露点より高い温度に保つためのものであり、例えば、電子部品等で用いられる抵抗体や、フィルムヒータが用いられる。発熱体50,51は、検出空間39を形成する素子ケース20の内側面を効率的に加熱するために、収容ケース40の内側面と素子ケース20の外側面とから構成され、回路基板41を収容する収容空間59を構成する収容空間形成面58のうち、検出空間39に接触する部材に熱を伝達できる部位に固着されるのが好ましい。したがって、検出空間39に接触する部材である素子ケース20に熱を効率的に伝達できる部位に固着することが好ましく、例えば、収容空間形成面58のうち、素子ケース20の収容空間形成面58や、収容空間形成面58を構成する収容ケースの内側面のうち、素子ケース20に近接した素子ケース20を保持する保持部46を有する面に備えられる。また、発熱体50,51の固定方法は、発熱体の少なくとも一部を収容空間形成面58に密着して固定することが可能な固着方法を採用でき、例えば、ねじ固定や接着固定により固定される。
【0026】
発熱体50,51の発熱量は、検出空間39を形成する素子ケース20の内側面の温度が、被検出ガスの露点より高い温度となるように設定することが好ましい。これにより、被検出ガスが、素子ケース20の内側面にて被検出ガスの露点以下に冷却され、検出空間39内で結露することを防ぐことができる。また通常、被検出ガスが露点より高い温度を有するので、さらに好ましくは、発熱体50,51の温度を、被検出ガスの温度以上に設定することが好ましい。このような温度に設定することにより、被検出ガスが検出空間39を形成する素子ケース20の内側面にて冷却され、被検出ガスの温度が不安定になることを防ぐことができる。このため、被検出ガスの温度の高低に伴うガス検出素子60の温度特性の影響を低減し、被検出ガスに含まれる可燃性ガスをより高い精度で検出することができる。
【0027】
この発熱体50,51は、例えば、公知の一定電圧制御、一定電力制御又は、PWM制御(パルス幅変調制御)により制御される。尚、発熱体50,51のように、複数の発熱体を設けた場合の制御方法は、同一の制御方法を採用してもよいし、互いに異なる制御方法を採用するようにしてもよい。また、発熱体50,51の制御方法を規定したプログラムはマイコン94が備える記憶装置に記憶され、CPUにより実行される。
【0028】
発熱体50,51は、検出空間39と隔てられた収容ケース40内に設けられているので、発熱体が検出空間39内に設置される場合に比べ、次のような利点を有する。
【0029】
まず、ガス検出器10が図1に示す配管200に設置された場合等、ガス検出器10が配管200の外部に存在する外気等により冷却される場合には、ガス検出器10の検出空間39を形成する素子ケース20の内側面の温度が被検出ガスの温度よりも低くなることにより、被検出ガス中の水分が結露する恐れがあるが、本実施形態によれば、ガス検出器10が設置される配管200の外部に近い側から加熱することで、このような事態を回避することが可能である。即ち、素子ケースの外側面は、ガス検出器10の外部の冷気が、収容ケース40又は収容空間59を介して素子ケース20に伝導される部位であるため、当該部位を加熱することにより、検出空間39を形成する素子ケース20の内側面の保温効果を高め、素子ケース20の内側面がガス検出器10及び配管200の外部に存在する外気等により冷却されることを防ぐことができる。このため、被検出ガスが露点より高い温度を有する場合には、ガス検出器10の立ち上げ時において、発熱体50,51により素子ケース20を加熱し、素子ケース20の内側面が当該露点よりも高い温度に一旦なれば、その後は、発熱体50,51の発熱量を外気による冷却熱をキャンセルさせる発熱量に調整すれば、被検出ガスの熱により、素子ケース20の内側面の温度を当該露点より高い温度に保つことが可能である。
【0030】
また、発熱体50,51は、収容ケース40内に固着されているので、ガス検出器10を振動箇所に設置した場合にも、発熱体の設置位置がずれたりする等の不具合を生じない。また、被検出ガスと接触しない検出空間39外に設置されているので、可燃性ガスの流速を低下させるような妨げとならない。また、被検出ガス中に含まれる腐食性のガスにより腐食されることもないので、腐食を防止するための被覆等を施す必要もない。また、検出空間39内に設置する場合には、検出の妨げとならないよう、形状や大きさに制約があるが、検出空間39と隔てられた収容ケース40内に設けられているので、そのような制約を受けない。さらに、収容ケース40内に設けられているので、素子ケース20内に、別途リード線を配線する必要がなく、構成を簡単にできる。
【0031】
次に、ガス検出器10を構成する素子ケース20について、図3を参照して説明する。図3は、ガス検出器10の素子ケース20周辺部分を拡大した縦断面図である。尚、図3において、上下方向を上下方向、左右方向を左右方向と言う。
【0032】
図3に示すように、素子ケース20は、ガス検出素子60が設置される接続端子取出台21と、接続端子取出台21の周縁部を挟持するとともに、被検出ガスを導入する導入口に向かって突設された円筒状の壁面を有する検出空間形成部材22とを備えている。そして、素子ケース20の接続端子取出台21の周縁部には、被検出ガスの流路と素子ケース20との間をシールするシール部材48が外装されている。この接続端子取出台21及び検出空間形成部材22により囲まれた空間は、被検出ガスを導入するための検出空間39となっている。
【0033】
接続端子取出台21は、ガス検出素子60を支持するための部材であり、少なくとも一部は、外側面に設けられた発熱体50の熱を伝導する熱伝導性を有する部材にて形成されることが好ましい。接続端子取出台21の材料として、特に好適な材料については後述する。この接続端子取出台21の内側面には、スペーサ23を介して、ガス検出素子60が設けられている。このスペーサ23は、接続端子取出台21の外側面に設けられた発熱体50の熱をガス検出素子60に直接伝導しないために、熱伝導性を有しない樹脂から構成されている。また、接続端子取出台21には、接続端子24乃至28を個別に挿入するための挿入孔がそれぞれ設けられ、各挿入孔の周縁部は絶縁性部材により覆われている。
【0034】
この接続端子24乃至28は、図4及び図5を参照して後述するガス検出素子60と回路基板41に備えられた回路とを電気的に接続するための部材であり、導電性部材によりピン状に形成されている。各接続端子の一端は接続端子取出台21に設けられた挿入孔にそれぞれ挿通され、接続端子取出台21に対して垂直に支持されている。
【0035】
また、検出空間形成部材22は、外側面にて被検出ガスと接する外筒36,接続端子取出台21の周縁部を挟持する取出台支持部37及び、収容ケース40により支持されるつば部38を備えている。また、検出空間形成部材22の下端部には、被検出ガスを検出空間39に導入する開口である導入口34が設けられている。この検出空間形成部材22の少なくとも一部は、発熱体50,51の熱又は被検出ガスの熱を伝導する熱伝導性を有する部材にて形成されることが好ましい。検出空間形成部材22の材料として、特に好適な材料については後述する。
【0036】
この導入口34の近傍には、導入口34から被検出ガスを、ガス検出素子60に対して導入及び排出するための流路を形成する導入部35が設けられている。そして、この導入部35には、導入口34から近い順に、撥水フィルタ29,スペーサ30及び、2枚の金網31,32がそれぞれ装填されている。そして、これらの部材は、検出空間形成部材22とフィルタ固定部材33とにより挟持固定されている。以下、各導入部35を構成する部材について詳述する。
【0037】
撥水フィルタ29は、導入口34に最も近い位置に取り付けられるフィルタであり、被検出ガス中に含まれている水滴を除去する撥水性を有する薄膜である。これより、水滴などが飛来する多湿環境下においても、ガス検出素子60が被水することを防ぐことができる。この撥水フィルタ29は、物理的吸着により水滴を除去するものであればよく、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を利用したフィルタを適用することができる。
【0038】
スペーサ30は、フィルタ固定部材33の内周壁に備えられ、被検出ガスが導入される開口を有する平面視リング状の部材であり、所定の厚みを有することにより、撥水フィルタ29と金網31,32との位置を調整している。
【0039】
金網31,32は、所定の厚みと所定の開口部を有しており、ガス検出素子60に設けられた発熱抵抗体の温度が被検出ガスに含まれる水素ガスの発火温度よりも上昇して発火した場合であっても、火炎が外部に出るのを防止するフレームアレスタとしての機能を果たす。
【0040】
フィルタ固定部材33は、撥水フィルタ29,スペーサ30及び、2枚の金網31,32を挟持固定するための部材であり、検出空間形成部材22の内壁面と当接する筒状の壁面を有すると共に、その壁面の軸方向に突出し、フィルタを固定するための凸部を備えている。
【0041】
以上説明した接続端子取出台21並びに検出空間形成部材22及び、導入部35を構成する撥水フィルタ29,スペーサ30,2枚の金網31,32並びに、フィルタ固定部材33は、本発明で言う検出空間を形成する素子ケース20の内側面を形成する部材であり、これらの部材は、前述の発熱体50,51により被検出ガスの露点より高い温度に加熱されるように、熱伝導性が高い材料により形成されるのが好ましい。また、被検出ガスと接触する部材であるため耐食性の高い部材を用いるのが好ましい。このため、好ましくは、オーステナイト系鋼やオーステナイト・フェライト二相系鋼により形成され、さらに好ましくは、入手が容易であり、成型が容易なSUS300系鋼又は、耐食性の高いSUS329J4Lにより形成され、特に好ましくは、炭素含有量が少なく、耐食性及び、成型性に優れたSUS316Lにより形成される。尚、各部材の肉厚は、各部材の強度を考慮して設定するようにすればよい。
【0042】
また、接続端子取出台21及び検出空間形成部材22の少なくとも一部とは、当該部材の材料の少なくとも一部に熱伝導性を有する部材を用いた態様であればよく、例えば、表面を上述の材料により被覆する他、上述の材料を当該部材に筋状に挿入して形成される態様でもよい。
【0043】
また、接続端子取出台21及び検出空間形成部材22は、被検出ガスと直接接する部材であるため、当該部材の少なくとも一部が発熱体50,51から生じる熱を伝導する部材から形成されることにより、被検出ガスが当該部材にて露点以下まで冷却され、結露することを防ぐことができる。また、当該部材の熱を、熱伝導性を有する部材から構成された導入部35に効率的に伝導することができる。
【0044】
また、導入部35は被検出ガスがガス検出器10に導入される部分であるため、被検出ガスの温度よりもガス検出器10の温度の方が低い場合には、被検出ガスが導入部35に結露しやすい。これに対して、発熱体50,51から生じる熱が導入部35を構成する部材に伝導されるように、当該部材を、熱伝導性を有する部材にて構成することにより、被検出ガスが導入部35を構成する部材にて露点以下まで冷却され、結露することを防ぐことができる。導入部35を構成する撥水フィルタ29,スペーサ30,2枚の金網31,32及び、フィルタ固定部材33が、上述のような熱伝導性が高い材料で形成された場合には、収容ケース40の収容空間形成面58に固着された発熱体50,51の熱を、効率的に導入部35に伝導することができる。
【0045】
また、当該部材が外気等によって冷却される場合には、検出空間39内に導入された被検出ガスが冷却されるため、被検出ガスの温度が不安定となるおそれがあるが、本実施形態のガス検出器10では、接続端子取出台21,検出空間形成部材22及び導入部35に伝導された熱により、当該部材の温度を被検出ガスの露点よりも高い温度に保つことができる。このため、被検出ガスの温度の高低に伴うガス検出素子60の温度特性の影響を低減し、被検出ガスに含まれる可燃性ガスを高い精度で検出することができる。
【0046】
さらに、接続端子取出台21,検出空間形成部材22及び、導入部35を構成する撥水フィルタ29,スペーサ30,2枚の金網31,32並びに、フィルタ固定部材33が、耐食性の高い部材により形成された場合には、被検出ガス中に腐食性ガスが含まれている場合であっても、当該腐食性ガスによりこれらの部材が腐食されることを防ぐことができる。このため、検出空間39を構成する部材が腐食することにより感度不良等の不具合が発生することを回避することができる。
【0047】
次に、接続端子取出台21に備えられたガス検出素子60の構成を、図4及び図5を参照して説明する。図4は、ガス検出素子60の検出素子70及び参照素子75の配置状態を説明するための模式平面図であり、図5は、検出素子70及び参照素子75の配置状態を説明するための図4のA−A線における矢視方向断面図である。尚、図5において、上側を上方、下側を下方とし、図4及び図5において、左右方向を左右方向とする。
【0048】
図4に示すように、ガス検出素子60は、縦が3mm,横が5mmの長方形の平面形状を有する接触燃焼式ガス検出素子である。また、図4及び図5に示すように、ガス検出素子60は、板状のシリコン基板61と、シリコン基板61の表面に形成され、発熱抵抗体71及び参照発熱抵抗体76をそれぞれ内包する絶縁層65と、絶縁層65上に所定の厚みで形成される保護層64とを備えている。このガス検出素子60は、例えば、マイクロマシニング技術により形成される。以下、ガス検出素子60を構成する各部材について詳述する。
【0049】
シリコン基板61は、所定の厚みを有するシリコン製の平板である。このシリコン基板61は、発熱抵抗体71及び参照発熱抵抗体76の下方に位置する部位に、シリコン基板61の一部が開口状に除去された1対の空洞62,63を備えており、当該空洞62,63の上部は、絶縁層65の一部が露出している。このような構成にすることにより、発熱抵抗体71及び参照発熱抵抗体76は、空洞62,63により周囲から断熱されるため、短時間にて昇温又は降温する。このため、ガス検出素子60の熱容量を小さくすることができる。
【0050】
このシリコン基板61の上面には、絶縁性を有する絶縁層65が、所定の厚みで層状に形成されている。この絶縁層65の下面の一部は、シリコン基板61の一部が開口状に除去されている空洞62,63に露呈している。この空洞62,63に対応する領域には発熱抵抗体71と参照発熱抵抗体76とがそれぞれ内包されている。また、発熱抵抗体71及び参照発熱抵抗体76が形成された平面と同じ平面に形成された配線膜711,712,761及び、配線713,714,762,763がそれぞれ絶縁層65に内包されている。この絶縁層65は、絶縁性を有する材料により形成され、例えば、酸化ケイ素(SiO)、窒化ケイ素(Si)が用いられる。絶縁層65は単一の材料により形成される場合の他、異なる材料を用いて複数の層を形成するようにしてもよい。
【0051】
また、保護層64は、絶縁層65の上面に所定の厚みを有する層状に形成され、絶縁層65と同様の材質により形成される。この保護層64は、発熱抵抗体71,参照発熱抵抗体76,配線膜711,712,761及び、配線713,714,762,763を覆うように配設されることでこれらの汚染や損傷を防いでいる。
【0052】
絶縁層65に内包された発熱抵抗体71は、触媒層72とともに、検出素子70を構成するものであり、自身の温度変化により抵抗値が変化する抵抗体である。この発熱抵抗体71は、その上部を後述する触媒層72に覆われており、被検出ガスの温度と、被検出ガス中に含まれる可燃性ガスが触媒の作用により燃焼したときに生じる熱量とにより、発熱抵抗体71が加熱又は冷却され、自身の抵抗値が変化する。即ち、発熱抵抗体71は、被検出ガスの温度と、可燃性ガスが触媒の作用により燃焼したときに生じる熱量に基づいて、自身の抵抗値が変化するので、この発熱抵抗体71の抵抗値の変化に応じて変化する出力値を用いれば、被検出ガス中に含まれる可燃性ガスを検出することが可能である。この発熱抵抗体71の抵抗値の変化に応じて変化する出力値については、図6を参照して詳細に後述する。
【0053】
この発熱抵抗体71は、シリコン基板61と平行な平面の空洞62の上部に対応する部位に平面視渦巻き状に形成され、絶縁層65に内包されている。また、発熱抵抗体71は、温度抵抗係数が大きい導電性部材によって形成され、例えば、白金(Pt)、ポリシリコン等により形成される。
【0054】
また、絶縁層65の上面であって、この発熱抵抗体71の上方には発熱抵抗体71の一部を覆うように触媒層72が形成されている。この触媒層72は、発熱抵抗体71により加熱されるとともに、可燃性ガスの燃焼を促す触媒を含んでおり、被検出対象となる可燃性ガスによって適宜材質を選択することができる。例えば、水素ガス等の多くの可燃性ガスに適用する触媒として、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh),イリジウム(Ir)及びルテニウム(Ru)等の貴金属を採用でき、また、触媒層72として、触媒の単層膜又は、触媒を酸化アルミニウム(Al)、酸化ケイ素(SiO)又はジルコニア(ZrO)に担持させたものを用いることができる。尚、保護層64と触媒層72との密着強度を向上させるために、密着層を触媒層72の下層に設けることもできる。密着層を形成する材料としては、例えば、ガラス又はガラスと触媒層材料の混合物が用いられる。
【0055】
検出素子70を構成する発熱抵抗体71の左端は、絶縁層65に内包され、発熱抵抗体71と一体に形成された配線713及び配線膜711を介し、電極85と電気的に接続されている。一方、発熱抵抗体71の右端は、絶縁層65に内包され、発熱抵抗体71と一体に形成された配線714及び配線膜712を介し、グランド電極86と電気的に接続されている。この電極85及びグランド電極86は、発熱抵抗体71に接続される配線の引き出し部位であり、コンタクトホールを介して露出している。この電極85及びグランド電極86の材質は、例えば、アルミニウム(Al)又は金(Au)が用いられる。
【0056】
一方、参照発熱抵抗体76は、被検出ガスの温度変化による検出素子70の出力を補正するための参照素子75を構成するものであり、自身の温度変化により抵抗値が変化する抵抗体である。参照発熱抵抗体76は、被検出ガスの温度により、自身の抵抗値が変化するので、この参照発熱抵抗体76の抵抗値の変化に応じて変化する出力値を用いれば、前述の発熱抵抗体71の抵抗値の変化に応じて変化する出力値のうち、被検出ガスの温度変化に基づく発熱抵抗体71の抵抗値の変化分の出力値を補正することができる。この参照発熱抵抗体76の抵抗値の変化に応じて変化する出力値については、図6を参照して詳細に後述する。
【0057】
この参照発熱抵抗体76は、発熱抵抗体71と同様に、シリコン基板61と平行な平面の空洞63の上部に平面視渦巻き状に形成され、絶縁層65に内包されている。この参照発熱抵抗体76は、通常は発熱抵抗体71と同じの材料により形成され、例えば、白金(Pt)、ポリシリコン等により形成される。
【0058】
また、参照発熱抵抗体76の左端は、絶縁層65に内包され、参照発熱抵抗体76と一体に形成された配線762及び配線膜712を介し、グランド電極86と電気的に接続されている。一方、参照発熱抵抗体76の右端は、絶縁層65に内包され、参照発熱抵抗体76と一体に形成された配線763及び配線膜761を介し、電極87と電気的に接続されている。このグランド電極86及び電極87は、参照発熱抵抗体76に接続される配線の引き出し部位であり、コンタクトホールを介して露出している。このグランド電極86及び電極87の材質は、例えば、アルミニウム(Al)又は金(Au)が用いられる。
【0059】
測温抵抗体80は、検出空間39内に存在する被検出ガスの温度を検出するためのものであり、絶縁層65と保護層64との間で、かつ、シリコン基板61と平行な平面上に形成されている。測温抵抗体80は、電気抵抗値が温度に比例して変化する金属が用いられ、例えば、白金(Pt)が用いられる。測温抵抗体80は、検出素子70及び参照素子75とともに、ガス検出素子60を構成するため、被検出ガスの温度を検出するための測温抵抗体をガス検出素子60とは別に設ける場合に比べ、検出空間39を小型化することが可能である。
【0060】
また、測温抵抗体80は、電極88及びグランド電極89と電気的に接続されている。この電極88及びグランド電極89は、コンタクトホールを介して露出している。この電極88及びグランド電極89の材質は、例えば、アルミニウム(Al)又は金(Au)が用いられる。
【0061】
次に、回路基板41に備えられたセンサ出力回路90の概略について、図6を参照して説明する。図6は、ガス検出素子60の検出信号を処理するためのセンサ出力回路90を説明する説明図である。図6に示すように、センサ出力回路90は、検出回路91,参照回路92及び測温回路93を備えている。以下、センサ出力回路90が備える各回路について詳述する。
【0062】
検出回路91は、ガス検出素子60に備えられた発熱抵抗体71と、回路基板41に備えられた固定抵抗95乃至97とによって構成されるホイートストーンブリッジ911及び、回路基板41に備えられ、このホイートストーンブリッジ911から得られる電位差を増幅するオペアンプ912を備えている。発熱抵抗体71として、自身の温度が上昇すると、抵抗値が温度の上昇に伴い上昇する抵抗体を用いた場合、このオペアンプ912は、発熱抵抗体71の温度が所定の温度(例えば、200℃)に保たれるように、発熱抵抗体71の温度が上昇した場合には、出力する電圧を低くし、発熱抵抗体71の温度が下降した場合には、出力する電圧を高くするように作動する。そして、このオペアンプ912の出力は、ホイートストーンブリッジ911に接続されているので、被検出ガスに含まれる可燃性ガスが、触媒の作用により燃焼して発熱抵抗体71の温度が上昇すると、発熱抵抗体71の温度を下げるためにオペアンプ912から出力される電圧は低くなり、ホイートストーンブリッジ911に印加される電圧が低下する。このときの、ホイートストーンブリッジ911の端部を構成する電極85の電圧は検出回路91の出力として、マイコン94により検出され、マイコン94により検出された出力値は、被検出ガスに含まれ可燃性ガスを検出するための演算処理に供される。
【0063】
同様に、参照回路92は、ガス検出素子60に備えられた参照発熱抵抗体76と、回路基板41に備えられた固定抵抗98乃至100によって構成されるホイートストーンブリッジ921と、回路基板41に備えられ、このホイートストーンブリッジ921から得られる電位差を増幅するオペアンプ922とを備えている。このオペアンプ922の出力は、参照発熱抵抗体76の温度が所定の温度(例えば、200℃)に保たれるように作動し、ホイートストーンブリッジ921に接続されている。ホイートストーンブリッジ921の端部を構成する電極85の出力は、マイコン94により検出され、マイコン94により検出された出力値は、被検出ガスに含まれ可燃性ガスを検出するための演算処理に供される。
【0064】
測温回路93は、ガス検出素子60に備えられた測温抵抗体80と、回路基板41に備えられた固定抵抗101乃至103によって構成されるホイートストーンブリッジ931と、回路基板41に備えられ、このホイートストーンブリッジ931から得られる電位差を増幅するオペアンプ932とを備えている。このオペアンプ932の出力は、マイコン94により検出され、マイコン94により検出された出力値は、被検出ガスの温度を測定するのに用いられ、さらに、被検出ガスに含まれ可燃性ガスを検出するための演算処理に供される。
【0065】
以上のような構成を有するセンサ出力回路90の出力値に基づき、マイコン94により実行される可燃性ガスの濃度を演算する処理は、次のように行われる。まず、マイコン94が備えるCPUは、マイコン94が備える記憶装置(図示せず)に記憶されたプログラムに基づき、検出回路91の出力値及び、参照回路92の出力値から得られるそれぞれの電位差から、可燃性ガス濃度にほぼ比例した第1の出力値を出力する。この第1の出力値は検出空間39の雰囲気温度変化による出力変化を含んでいるので、続いて、測温回路93からの出力に基づき第1の出力値を補正した第2の出力値を出力する。さらに、マイコン94は、マイコン94の記憶装置(図示せず)に記憶された第2の出力値と可燃性ガスの濃度との関係に基づき、被検出ガス中に含まれる可燃性ガスの濃度を出力する。このように、第1の出力値を測温回路93の出力に基づき補正しているので、精度よく可燃性ガスを検出できる。
【0066】
以上説明したガス検出器10によれば、被検出ガスの温度がガス検出器10の外気等の温度よりも高い場合でも、発熱体50,51により、素子ケース20を加熱し、素子ケース20の内側面を構成する部材、即ち、素子ケース20の接続端子取出台21,検出空間形成部材及び、導入部35を構成する撥水フィルタ29,スペーサ30,2枚の金網31,32並びに、フィルタ固定部材33が外部の外気等により被検出ガスの露点以下に冷却されることを防いでいる。このため、被検出ガスがガス検出器10により露点以下に冷却されることを防ぐことができる。このため、被検出ガスが、ガス検出器10により露点以下に冷却され、検出空間39内で結露することを防ぐことができる。
【0067】
また、発熱体50,51の発熱量を調整することにより、被検出ガスが所定の温度となるように制御することが可能であり、被検出ガスの温度を安定させることができる。したがって、検出感度を良好に保つことができる。
【0068】
また、発熱体50が収容空間形成面58を構成する素子ケースの外側面に備えられているとともに、発熱体51が収容空間形成面58を構成する収容ケース40の内側面のうち、素子ケース20を保持する保持部46を有する面に備えられているので、検出空間39を形成する素子ケースの内側面に発熱体の熱が伝導されやすく、その内側面を効率的に加熱することができる。
【0069】
また、素子ケース20を構成する検出空間形成部材22の外側面が、被検出ガスと接するため、素子ケース20の被検出ガスと接触する面の面積を大きくすることができる。このため、被検出ガスから素子ケースに伝導する熱量が大きくなるので、検出空間内を形成する素子ケースを被検出ガスにより加熱することができ、さらには被検出ガスが結露することをより確実に防ぐことができる。また、被検出ガスの温度を安定させることができるので、ガス検出器の感度を安定させることができる。
【0070】
以上説明したガス検出器は、上述した実施形態に限定されるもではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加えてもよい。まず、上述の実施形態では、ガス検出器の一例として、ガス検出素子が接触燃焼式ガス検出素子である場合について説明したが、これに限定されない。例えば、ガス検出器のガス検出素子は、熱伝導式ガス検出素子の他、他の検出素子であってもよい。
【0071】
また、本実施形態において、ガス検出器10は、例えば、自動車の燃料電池ユニットに搭載され、水素の漏れを検出する目的等に用いられると例示したが、ガス検出器10の設置場所や用途は、種々選択可能であり、これに限定されない。例えば、都市ガス等の可燃性ガスの漏洩検出や濃度検出に用いるガス検出装置に本発明を適用してもよい。
【0072】
また、接触燃焼式ガス検出素子であるガス検出素子60の構成は、可燃性ガスの燃焼に伴って電気抵抗値が変化することを利用して可燃性ガスの濃度を検出するものであればよく、本実施形態に限定されない。したがって、例えば、本実施例の測温抵抗体80に代えて、ガス検出素子60とは別体の測温抵抗体やその他の温度センサを採用してもよい。
【0073】
また、本実施例において、収容空間形成面58に固着された発熱体は、発熱体50,51の2つであったが、発熱体の個数は、発熱体の発熱特性や、所望の温度等により適宜変更可能であり、これに限定されない。また、発熱体の固着位置は、収容空間形成面を構成する面を採用可能であり、本実施形態の固着位置に限定されない。検出空間を形成する素子ケースに、発熱体の熱を効率的に伝導するために、被検出ガスに接触する部材、即ち、素子ケースに近い位置に固着されることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】ガス検出器10が配管200に配設された状態を示す縦断面図である。
【図2】ガス検出器10の縦断面図である。
【図3】ガス検出器10の素子ケース20周辺部分を拡大した縦断面図である。
【図4】ガス検出素子60の検出素子70及び参照素子75の配設状態を説明するための模式平面図であり、
【図5】検出素子70及び参照素子75の配設状態を説明するための図4のA−A線における矢視方向断面図である。
【図6】ガス検出素子60の検出信号を処理するためのセンサ出力回路90を説明する説明図である。
【符号の説明】
【0075】
10 ガス検出器
20 素子ケース
39 検出空間
40 収容ケース
41 回路基板
46 保持部
50 発熱体
51 発熱体
58 収容空間形成面
59 収容空間
60 ガス検出素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検出ガスを検出するガス検出素子と、
前記ガス検出素子を内部に収容するとともに、前記被検出ガスを導入する導入口を備え、前記被検出ガスが導入される検出空間を形成する素子ケースと、
前記ガス検出素子と電気的に接続される回路基板を内部に収容するとともに、前記素子ケースの少なくとも一部を内部に配置させる状態で保持する保持部を有する収容ケースと、
前記収容ケースの内側面と前記素子ケースの外側面とから構成され、前記回路基板を収容する収容空間を形成する収容空間形成面とを備えるガス検出器であって、
前記収容空間形成面に固着され、前記検出空間を形成する前記素子ケースを加熱するための発熱体を備えることを特徴とするガス検出器。
【請求項2】
前記発熱体は、前記収容空間形成面を構成する前記素子ケースの外側面に備えられていることを特徴とする請求項1に記載のガス検出器。
【請求項3】
前記発熱体は、前記収容空間形成面を構成する前記収容ケースの内側面のうち、前記保持部を有する面に備えられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のガス検出器。
【請求項4】
前記素子ケースの外側面の少なくとも一部が、前記被検出ガスと接することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のガス検出器。
【請求項5】
前記ガス検出素子は、熱伝導式ガス検出素子又は接触燃焼式ガス検出素子であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のガス検出器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−309905(P2007−309905A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−142067(P2006−142067)
【出願日】平成18年5月22日(2006.5.22)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【Fターム(参考)】