ガス検出装置
【課題】匂いガスを高感度で且つ短時間に検出できるガス検出装置を提供する。
【解決手段】少なくとも匂いガスを含む検知対象ガスに感応して電気抵抗値の変化を生じる金属酸化物半導体に貴金属触媒を添加した感ガス体4と、感ガス体4中に埋設されて感ガス体4を加熱するヒータ兼用電極3aと、感ガス体4の温度を第1の設定温度に加熱する高温期間と第1の設定温度よりも低い第2の設定温度に加熱する低温期間とが交互に繰り返すようにヒータ兼用電極3aの加熱量を制御するとともに、感ガス体4の電気抵抗値から検知対象ガスのガス濃度を検出するマイコン11とを備え、マイコン11は、被検ガス雰囲気中の低温期間における電気抵抗値の、清浄空気中の低温期間における電気抵抗値に対する抵抗値変化から匂いガスのガス濃度を検出している。
【解決手段】少なくとも匂いガスを含む検知対象ガスに感応して電気抵抗値の変化を生じる金属酸化物半導体に貴金属触媒を添加した感ガス体4と、感ガス体4中に埋設されて感ガス体4を加熱するヒータ兼用電極3aと、感ガス体4の温度を第1の設定温度に加熱する高温期間と第1の設定温度よりも低い第2の設定温度に加熱する低温期間とが交互に繰り返すようにヒータ兼用電極3aの加熱量を制御するとともに、感ガス体4の電気抵抗値から検知対象ガスのガス濃度を検出するマイコン11とを備え、マイコン11は、被検ガス雰囲気中の低温期間における電気抵抗値の、清浄空気中の低温期間における電気抵抗値に対する抵抗値変化から匂いガスのガス濃度を検出している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ガスセンサを用いたガス検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体ガスセンサを用いて検知対象ガスのガス濃度を検出するガス検出装置が提供されている(特許文献1参照)。また、このようなガス検出装置を利用し、匂いガスに対して感度を有する感ガス体を用いて、呼気の匂いを簡易的に検出する口臭検査装置も従来より提供されている。
【特許文献1】特開平7−198644号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、近年、自動車の空調システムで外気の汚れを検出して外気導入と内気循環の切替を自動的に行うことによって、車内の空気質を清浄に保つシステムが提供されているが、外気の汚れ(例えばガソリンエンジンやディーゼルエンジンの排気ガス)だけでなく、農場やゴミ処理施設から排出される悪臭ガスを検知して、外気導入から内気循環に切り替えるようなシステムが要求されている。ここで、硫化物系のガスやアンモニア、トリメチルアミンなどの匂いガスの検出には数十ppb〜数ppmの低濃度でガスを検出できることが要求されている。
【0004】
しかしながら、従来の口臭検査装置では、SnO2、In2O3、ZnO、WO3などの金属酸化物半導体に各種の添加物を加えて感ガス材料としたガスセンサが用いられており、比較的高濃度の匂いガスを検出する簡易型のもので、上述した空調システムの用途で使用するには感度が不足していた。
【0005】
また従来より、リテンションタイムの違いを利用し、ガスクロマトグラフを用いて分離したガスの濃度を半導体ガスセンサにより検出する高精度の呼気成分分析装置も提供されているが、感ガス体を高温状態に加熱してヒートクリーニングを行った後、匂いガスに対して感度を有する低温状態に保ち、この低温期間中に感ガス体の電気抵抗値から匂いガスを検出しており、低温状態に移行後、10〜200秒経過しなければ、匂いガスに対する感度が出なかったため、測定時間に長時間を要し、使用用途が限られるという問題があった。
【0006】
本発明は上記問題点に鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、匂いガスを高感度で且つ短時間に検出できるガス検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、少なくとも匂いガスを含む検知対象ガスに感応して電気抵抗値の変化を生じる金属酸化物半導体に貴金属触媒を添加した感ガス体と、感ガス体を加熱する加熱手段と、感ガス体の温度を第1の設定温度に加熱する高温期間と第1の設定温度よりも低い第2の設定温度に加熱する低温期間とが交互に繰り返すように加熱手段の加熱量を制御する加熱制御手段と、感ガス体の電気抵抗値から検知対象ガスのガス濃度を検出するガス濃度検出手段とを備え、当該ガス濃度検出手段は、被検ガス雰囲気中の低温期間における電気抵抗値の、清浄空気中の低温期間における電気抵抗値に対する抵抗値変化から匂いガスのガス濃度を検出することを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、金属酸化物半導体の主材料がSnO2、In2O3、又はWO3の内の少なくとも一種であることを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において、貴金属触媒はAu、Pd、Ruの内の少なくとも何れか1つであることを特徴とする。
【0010】
請求項4の発明は、請求項3の発明において、Pdの添加量が主材料に対して0.1〜1重量%であることを特徴とする。
【0011】
請求項5の発明は、請求項3の発明において、Au、Ruの添加量が主材料に対して0.05〜1重量%であることを特徴とする。
【0012】
請求項6の発明は、請求項1〜5の何れか1つの発明において、金属酸化物半導体にアルミナゾル又はシリカ系バインダの内の少なくとも何れか1つを添加したことを特徴とする。
【0013】
請求項7の発明は、請求項1〜6の何れか1つの発明において、第1の設定温度が300℃以上且つ500℃以下、第2の設定温度が100℃以上且つ200℃以下であり、高温期間および低温期間がそれぞれ0.3秒以上且つ10秒以下であることを特徴とする。
【0014】
請求項8の発明は、請求項7の発明において、高温期間が1秒以下で、低温期間が2秒以下であることを特徴とする。
【0015】
請求項9の発明は、請求項1〜8の何れか1つの発明において、ガス濃度検出手段は、高温期間における感ガス体の電気抵抗値から硫化物系、アミン系、カルボン系以外のガスを検出するとともに、低温期間における感ガス体の電気抵抗値から硫化物系、アミン系、カルボン系のガスを検出することを特徴とする。
【0016】
請求項10の発明は、請求項1〜9の何れか1つの発明において、高温期間における感ガス体の電気抵抗値を用いて、低温期間における感ガス体の電気抵抗値を補正する抵抗値補正手段を設け、ガス濃度検出手段が補正後の電気抵抗値から匂いガスのガス濃度を検出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の発明によれば、感ガス体に貴金属触媒を添加することによって、匂いガスを少なくとも含む検知対象ガスに対する感度を高めることができ、且つ、高温期間において感ガス体に被検ガス雰囲気中の匂いガスを吸着させた後、匂いガスに対して高感度で再現性の良好な低温期間に移行させ、この低温期間における電気抵抗値から匂いガスのガス濃度を求めているので、匂いガスを高感度に検出できるという効果がある。さらに、加熱制御手段によって高温期間と低温期間とが交互に繰り返すように加熱手段の加熱量を制御しているので、感ガス体を一定温度に加熱する場合に比べて、匂いガスに対して感度が出るまでの時間を短くでき、匂いガスを検出するまでの期間を短縮できるという効果がある。
【0018】
なお金属酸化物半導体の主材料はSnO2、In2O3、又はWO3の内の少なくとも一種であることが好ましい。
【0019】
また請求項3の発明によれば、貴金属触媒としてAu、Pd、Ruの内の少なくとも何れか1つを用いており、貴金属触媒を感ガス体に添加することで、匂いガスに対するガス感度を向上させることができ、Pdの添加量を主材料に対して0.1〜10重量%、Au、Ruの添加量を主材料に対して0.05〜10重量%とするのが好ましい。
【0020】
また請求項6の発明によれば、金属酸化物半導体にアルミナゾル又はシリカ系バインダの内の少なくとも何れか1つを添加することで、匂いガスに対する感度を高めるとともに応答性を向上させることができる。
【0021】
請求項7の発明によれば、第1の設定温度を300℃以上且つ500℃以下、第2の設定温度を100℃以上且つ200℃以下とし、高温期間及び低温期間をそれぞれ0.3秒以上且つ10秒以下とすることで、匂いガスに対する感度を向上させるとともに、検出に要する時間を短縮できるという効果があり、好ましくは高温期間が1秒以下、低温期間が2秒以下である。
【0022】
請求項9の発明によれば、低温期間における電気抵抗値から硫化物系、アミン系、カルボン系などの匂いガスを検出し、高温期間における電気抵抗値から硫化物系、アミン系、カルボン系以外のガスを検出しているので、1つの感ガス体の電気抵抗値から匂いガスとそれ以外のガスのガス濃度を検出できるという効果がある。
【0023】
請求項10の発明によれば、1つの感ガス体を用い、高温期間における電気抵抗値で低温期間における電気抵抗値を補正し、補正後の電気抵抗値から匂いガスのガス濃度を検出しているので、低コストで精度の高いガス検出装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0025】
本実施形態のガス検出装置は、例えば自動車の空調システムにおいて外気導入と内気循環の切替を自動的に行うために外気に含まれる匂いガスや排気ガスのガス濃度を検出するために用いられ、検出したガス濃度が所定のしきい値を越えると、空調システム側で外気導入から内気循環に切り替えて、室内の空気を清浄に保つようになっている。
【0026】
図1は本実施形態の回路図であり、このガス検出装置は、検知対象ガスに感応して電気抵抗値が変化するセンシング素子2と、センシング素子2が備えるヒータ兼用電極3aへの通電制御を行うとともに、感ガス体4の電気抵抗値から検知対象ガスのガス濃度を検出する制御回路部10とを主要な構成要素としている。
【0027】
図2(a)は上述のセンシング素子2を備えたガスセンサ1の一部破断せる外観斜視図であり、このガスセンサ1は、有底筒状であって天井部を構成する面(底面)にガス流入孔5aが形成され、このガス流入孔5aに防爆のためにステンレス製の金網6が二重に取り付けられたセンサ筐体5と、このセンサ筐体5の底部を兼ねる樹脂製のベース7と、ベース7を貫通してセンサ筐体5の内外に突出する3本の端子8a〜8cと、端子8a〜8cに接続固定して支持されたセンシング素子2とを備える。
【0028】
そしてセンシング素子2は、図2(b)に示すように、白金又は白金合金の細線をコイル状に曲成したヒータ兼用電極3aと、白金又は白金合金の細線からなりヒータ兼用電極2の中心に挿通された検出電極3bとをセンサ基体とし、ヒータ兼用電極3aおよび検出電極3bを覆うように略球状(例えば長径が0.5mm、短径が0.3mmの楕円球状)の感ガス体4を形成して構成される。そしてヒータ兼用電極3aの両端はそれぞれ両側の端子8a,8cに電気的に接続され、検出電極3bの一端は中央の端子8bに電気的に接続されている。なお、センシング素子2の構造は上記の構造に限定されるものではなく、例えばアルミナ基板などの絶縁基板をセンサ基体として用い、この絶縁基板の一面に感応材料を膜状に形成して、センシング素子を構成するようにしても良い。
【0029】
ここで、感ガス体4の具体的な組成の例を説明する。以下に説明する感ガス体4の具体例は、硫化物系のガスやアンモニア、トリメチルアミン、メチルメルカプタンなどの匂いガスの検出に好適なものであるが、他の匂いガスの検出に用いる場合には必要に応じて適宜組成を変更することで、所望の検知対象の匂いガスを検知するために好適な感ガス体4を得ることができる。
【0030】
金属酸化物半導体としては、例えばSnO2、In2O3、又はWO3を用いることができ、これらは一種のみを用いるほか、二種以上を併用することもできる。SnO2を用いる場合には、適宜の手法で調整されるものを用いることができるが、例えばSnCl4の水溶液をNH4で加水分解してスズ酸ゾルを得て、これを風乾した後に空気中で例えば550〜700℃で0.5〜3時間焼成することで調整することができる。
【0031】
上記金属酸化物半導体にはPd、AuおよびRuが担持され、匂いガスを検出する場合において、感ガス体4中のPd、AuおよびRuが触媒として作用し、匂いガスに対する感度を向上させることができる。ここで、Pd、AuおよびRuの添加量(含有量)は感ガス体4に所望の特性を付与できるように適宜調整されるのであるが、好ましくはPdの添加量が感ガス体4の主材料である金属酸化物半導体の全量に対して0.1〜1重量%、更に好ましくは0.1〜0.5重量%であり、Au、Ruの添加量は感ガス体4の主材料である金属酸化物半導体の全量に対して0.05〜1重量%である。なおPd、Au、Ruの添加量を上記の如く決定した理由は後に詳細に説明する。また感ガス体4の主材料に担持させる貴金属触媒はAu、Pd、Ruの内の一種のみでも良いし、二種以上を併用することも可能である。
【0032】
このような感ガス体4は適宜の手法で作製できる。例えば、コイル状のヒータ兼用電極3aの中心に検出電極3bを挿通した後、金属酸化物半導体の粒子にテルピネオールなどの有機溶剤を加えて成形材料をペースト状とし、ヒータ兼用電極3aおよび検出電極3bを覆うように感ガス体4を塗布して楕円球状に形成し、700℃で10分間焼成する。そして、貴金属触媒の添加は塩化物溶液に感ガス体4をディッピングし、その後焼成することで行う。なお貴金属触媒の添加は、感ガス体4の主材料粉体に貴金属を例えば塩化物溶液の形で添加し、風乾後、焼成することで行っても良い。
【0033】
次に制御回路部10の回路構成について説明する。制御回路部10は、ヒータ兼用電極3aの通電制御を行う加熱制御手段、検知対象ガスのガス濃度を検知するガス濃度検知手段、および低温期間における電気抵抗値の補正処理を行う抵抗値補正手段などの機能がプログラム化されて装置全体の制御処理を行うマイコン11と、マイコン11からの制御信号に応じてヒータ兼用電極3aを駆動するヒータ駆動部12と、入力回路部13と、出力回路部14と、マイコン11に動作クロックを与えるクロック回路部15と、電源投入時にマイコン11をリセットするリセット回路部16とを主要な構成として備え、端子Ta,Td間に接続される乾電池や充電池などの電池電源(図示せず)から電源供給を受けて動作する。
【0034】
ヒータ駆動部12は、端子Ta,Td間(つまり電池電源の両端間)にヒータ兼用電極3aを介して接続される抵抗R1およびNPN形トランジスタ(以下トランジスタと略称す)Q1の直列回路と、端子Ta,Td間に接続された抵抗R2〜R5の直列回路と、非反転入力端子が抵抗R4,R5の接続点に、反転入力端子がトランジスタQ1のエミッタに、出力端子がトランジスタQ1のベースにそれぞれ接続されたバッファアンプA1と、マイコン11の出力ポートP11に抵抗を介してベースが接続されるとともに、端子Ta(電池電源の正極側)と抵抗R3,R4の接続点との間にエミッタ・コレクタ間が接続されたPNP形トランジスタDT1とを備える。そして、マイコン11の出力ポートP11の電圧レベルがハイ/ローに切り替えられると、トランジスタDT1がオン/オフして、抵抗R3,R4の接続点の電位が高低2段階に切り替えられるので、それに応じて抵抗R4,R5の接続点の電位、すなわちトランジスタQ1のベース電位が高低2段階に切り替わって、トランジスタQ1がオン/オフする。而してマイコン11の出力ポートP11からデューティ制御用のパルス信号を出力することによって、トランジスタQ1のオンデューティを変化させ、感ガス体4を所定の第1の設定温度に加熱する高温期間と、第1の設定温度よりも低い第2の設定温度に加熱する低温期間とが交互に繰り返すように、ヒータ兼用電極3aの発熱を制御する。
【0035】
入力回路部13は、一端が端子Ta(電池電源の正極側)に電気的に接続されるとともに、他端側が検出電極3bに電気的に接続された抵抗R6と、抵抗R6の両端間に抵抗R7を介してエミッタ−コレクタ間が接続されるとともに、マイコン11の出力ポートP12にベースが接続されたPNP形トランジスタDT2と、端子Ta,Tb間に接続されたサーミスタTH1および抵抗R8の直列回路とを有し、抵抗R6および検出電極3bの接続点の電位(すなわち感ガス体4の電気抵抗値に比例した電圧)がマイコン11の入力ポートP21に入力されるとともに、サーミスタTH1および抵抗R8の接続点の電位がマイコン11の入力ポートP22に入力されている。ここで、低温期間においてはマイコン11が出力ポートP12の電圧レベルをハイに切り替えて、トランジスタDT2をオフにすることで、抵抗R6のみを検出電極3bに直列に接続させる。一方、高温期間では感ガス体4の電気抵抗値が低温期間に比べて低抵抗となるので、マイコン11が出力ポートP12の電圧レベルをローに切り替えて、トランジスタDT2をオンさせ、抵抗R6,R7の並列回路を検出電極3bと電気的に接続させることで、検出電極3bに直列接続される負荷抵抗のインピーダンスを下げており、高温期間と低温期間とで略同じ電圧レベルの信号を入力ポートP21に入力させている。
【0036】
而してマイコン11は、高温期間において出力ポートP12の電圧レベルをハイに切り替えて、検出電極3bと直列に抵抗R6のみを接続させた状態で、入力ポートP21から検出電極3bと抵抗R6との接続点の電位を読み込むとともに、低温期間において出力ポートP12の電圧レベルをローに切り替え、検出電極3bと直列に抵抗R6,R7の並列回路を接続した状態で、入力ポートP21から検出電極3bと抵抗R6との接続点の電位を読み込む。またマイコン11は、入力ポートP22からサーミスタTH1および抵抗R8の分圧電圧を取り込み、この電圧値に応じて感ガス体4の電気抵抗値の温度補償を行う。尚、温度補償の方法については後述する。
【0037】
出力回路部14は、端子Ta,Td間にそれぞれ接続された抵抗R9,R10とコンデンサC1との直列回路、および抵抗R11,R12とコンデンサC2との直列回路と、出力端子と非反転入力端子とが短絡されてボルテージフォロワを構成し、抵抗R10およびコンデンサC1の接続点に非反転入力端子が接続されたオペアンプA2と、出力端子と非反転入力端子とが短絡されてボルテージフォロワを構成し、抵抗R12およびコンデンサC2の接続点に非反転入力端子が接続されたオペアンプA3とを備え、オペアンプA2,A3の出力端子はそれぞれ抵抗R13,R14を介して端子Tb、Tcに電気的に接続される。
【0038】
次に本実施形態のガス検出装置により被検ガス雰囲気中の検知対象ガス(匂いガスや自動車の排気ガスなど)のガス濃度を検出する場合の動作について説明する。
【0039】
マイコン11は、出力ポートP11からデューティ制御用のパルス信号を出力し、図3に示すように感ガス体4を第1の設定温度t2(例えば300℃以上且つ500℃以下)に加熱する高温期間Taと、第2の設定温度t1(例えば100℃以上且つ200℃以下)に加熱する低温期間Tbとが交互に繰り返すようにヒータ兼用電極3aの発熱量を制御しており、本実施形態では高温期間Taを1秒間、低温期間Tbを2秒間とし、1周期を3秒としている。
【0040】
ここで、図4は貴金属を添加していないSnO2を感ガス材料とした場合にヒータ兼用電極3aの印加電圧(ヒータ電圧)を変化させたときの感ガス体4の電気抵抗値の測定結果を示しており、図中のaは清浄空気中の電気抵抗値を、bは30ppmのトリメチルアミンを清浄空気に混入した被検ガス雰囲気中の電気抵抗値を、cは3ppmのメチルメルカプタンを清浄空気に混入した被検ガス雰囲気中の電気抵抗値をそれぞれ示している。この測定結果から明らかなように、メチルメルカプタンについてはヒータ電圧が0.4V(約150℃に相当)の時に感度が最大となり、トリメチルアミンについてはヒータ電圧が0.3V(約100℃に相当)の時に感度が最大となっており、検知対象である匂いガスの感度を高くするにはヒータ電圧を0.3〜0.4Vの範囲(100〜150℃に相当)に設定するのが好ましい。
【0041】
しかしながら、感ガス体4を常に100〜150℃の比較的低温で加熱する場合は応答速度が遅く、検知時間が非常に長くなって実用には適さないので、本発明者らは応答速度を改善するために、感ガス体4を高温状態に加熱する高温期間と低温状態に加熱する低温期間とが交互に繰り返すようにヒータ兼用電極3aを通電することを検討した。
【0042】
図5は貴金属を添加していないSnO2を感ガス材料とした場合に高温期間Ta(ヒータ電圧が0.9Vで感ガス体4の温度が約400℃)を1秒、低温期間Tb(ヒータ電圧が0.3Vで感ガス体4の温度が約100℃)を2秒としてヒータ兼用電極3aを通電したときの感ガス体4の電気抵抗値の測定結果を示し、図中のaは清浄空気中の電気抵抗値を、bは1ppmのトリメチルアミンを清浄空気に混入した被検ガス雰囲気中の電気抵抗値を、cは3ppmのトリメチルアミンを清浄空気に混入した被検ガス雰囲気中の電気抵抗値をそれぞれ示している。これらの測定結果より何れの雰囲気中でも高温期間Taでは1秒経過後、低温期間Tbでは2秒経過後に電気抵抗値が安定に達していることが判明した。そこで、本実施形態では高温期間を1秒、低温期間を2秒に設定し、高温期間に切り替え後1秒が経過した時点(図4の時刻t10)の電気抵抗値と低温期間に切り替え後2秒が経過した時点(図4の時刻t11)の電気抵抗値をそれぞれ検出するようにしている。なお高温期間および低温期間はそれぞれ検知対象ガスのガス種に応じて適宜設定すれば良く、高温期間および低温期間をそれぞれ0.3〜10秒までの範囲、さらに好ましくは高温期間を1秒以下、低温期間を2秒以下に設定すれば良い。
【0043】
また図6は貴金属を添加していないSnO2を感ガス材料とした場合に感ガス体4を常に150℃の比較的低温で加熱した場合と、高温期間と低温期間を交互に設けた場合(以下ハイ/ロー駆動と言う)とで2種のガス(トリメチルアミン(CH3)3N、メチルメルカプタンCH3SH)のガス濃度に対するガス感度(被検ガス雰囲気中の電気抵抗値Rの清浄空気中の電気抵抗値Rairに対する抵抗値変化の割合(R/Rair))を測定した結果であり、図中のa,bは常に低温状態とした場合の(CH3)3NおよびCH3SHに対するガス感度、図中のc,dはハイ/ロー駆動の場合の(CH3)3NおよびCH3SHに対するガス感度をそれぞれ示しており、これらの測定結果からハイ/ロー駆動によってガス感度を飛躍的に向上させることが可能であると判明した。
【0044】
以上の考察結果から本実施形態では、マイコン11がヒータ兼用電極3aの通電を制御して、高温期間と低温期間とを交互に繰り返すように感ガス体4の温度を制御しており、高温期間に切り替えてから1秒目の時点(すなわち高温期間が終了する直前)で入力ポートP21から感ガス体4の両端電圧を取り込み、この電圧値から感ガス体4の電気抵抗値を求めており、高温期間中では検知対象ガスである匂いガス(例えば硫化物系やアンモニア、トリメチルアミンなどのアミン系やカルボン系)以外のガス(ノイズガス)に対して感ガス材料の感度が高感度となるので、この期間の電気抵抗値からノイズガスのガス濃度を検出する。また雰囲気中の湿度は一種のガスとして検出が可能であるから、マイコン11は高温期間中に取り込んだ感ガス体4の電気抵抗値の抵抗値変化から雰囲気中の湿度を検出しており、ノイズガスのガス濃度および雰囲気中の湿度の検出値を用いて低温期間中に読み込んだ感ガス体4の電気抵抗値を補償する。尚、補償方法については後述する
その後、高温期間から低温期間に移行すると、マイコン11は低温期間に切り替えてから2秒目の時点(すなわち低温期間が終了する直前)で入力ポートP21から感ガス体4の両端電圧を取り込み、この電圧値から感ガス体4の電気抵抗値を求めており、低温期間中では検知対象ガスである匂いガス(例えば硫化物系やアンモニア、トリメチルアミンなどのアミン系やカルボン系)に対して感ガス材料の感度が高感度となるので、被検ガス雰囲気中の低温期間における電気抵抗値の、清浄空気中の低温期間における電気抵抗値に対する抵抗値変化から検知対象ガスである匂いガスを検出する。
【0045】
このように本実施形態ではマイコン11によりヒータ兼用電極3aの通電を制御して高温期間と低温期間を交互に設けており、高温期間では被検ガス雰囲気中の匂いガス(例えば硫化物系やアンモニア、トリメチルアミンなどのアミン系やカルボン系)が選択的に感ガス材料に吸着、或いは低温期間で高感度となる成分に分解された後、短時間で低温期間に移行するため感ガス材料に吸着されたガス、または分解された成分がそのまま保存され、低温期間では匂いガスや高温期間で分解された成分に対して高感度となるので、この低温期間の電気抵抗値から検知対象である匂いガスのガス濃度を検出することで、感ガス体4の温度を第1又は第2の設定温度に固定する場合に比べて高感度に匂いガスを検出することができる。
【0046】
またマイコン11は、高温期間中に検出した感ガス体4の電気抵抗値を用いて低温期間中に検出した感ガス体4の電気抵抗値を補正し、補正後の電気抵抗値から検知対象ガスのガス濃度を検出しており、ノイズガスや雰囲気中の湿度に対して高感度である高温期間中の電気抵抗値を用いて低温期間中の電気抵抗値を補正することで、ノイズガスや湿度などの外乱要因の影響を低減して、検知対象ガスのガス濃度を正確に検出できる。なお補正方法としては、例えばノイズガスや湿度(外乱要因)に対する高温期間中のガス感度(抵抗比)で、低温期間におけるガス感度を補正する方法や、外乱要因に対する高温期間中のガス感度と低温期間におけるガス感度とを対応付けたテーブルを用いて、被検ガス雰囲気中の低温期間におけるガス感度を補正する方法などがある。前者の方法では、高温期間における清浄空気中の電気抵抗値をRH0、被検ガス雰囲気中の電気抵抗値をRHgとし、低温期間における清浄空気中の電気抵抗値をRL0、被検ガス雰囲気中の電気抵抗値をRLgとすると、補正後の低温期間におけるガス感度Sは以下の式(1)で表され、補正後のガス感度Sから検知対象ガスのガス濃度を求めることによって、外乱要因の影響を低減して検知対象ガスのガス濃度を正確に検出することができる。
【0047】
S=(RLg/RL0)/(RHg/RH0) …(1)
また後者の方法では、マイコン11の内蔵ROMに外乱要因に対する高温期間中のガス感度と低温期間におけるガス感度とを対応付けたテーブル(下記の表1参照)を予め書き込んでおき、高温期間におけるガス感度(RHg/RH0)をもとに、表1のテーブルから低温期間におけるガス感度(RLg’/RL0’)を読み出し、低温期間中における電気抵抗値の測定値RLgを清浄空気中の電気抵抗値RL0で除算して得たガス感度(RLg/RL0)と、外乱要因に対する低温期間中のガス感度(RLg’/RL0’)とから以下の式(2)を用いて補正後のガス感度Sを求めることができる。
【0048】
【表1】
【0049】
S=(RLg/RL0)/(RLg’/RL0’) …(2)
このように後者の補正方法では、高温期間における感ガス体4の電気抵抗値から外乱要因に対するガス感度を求め、このガス感度をもとに表1から低温期間での外乱要因に対するガス感度を読み込み、低温期間での外乱要因に対するガス感度を用いて低温期間中の感ガス体4の電気抵抗値から求めたガス感度を補正しているので、高温期間中の外乱要因に対するガス感度を用いて補正するよりも、より正確な補正を行うことができる。
【0050】
また感ガス体4の抵抗値は周囲温度によって大きく変動し、特に低温期間においては周囲温度の影響が顕著になる。そこで、マイコン11では入力ポートP22からサーミスタTH1および抵抗R8の分圧電圧を取り込み、この分圧電圧からサーミスタTH1の抵抗値を求めて周囲温度を検出しており、周囲温度に応じて感ガス体4の電気抵抗値に所定の補正係数を乗算することで、周囲温度による抵抗値変化を補償するようにしても良い。
【0051】
またマイコン11は、検知対象ガスのガス濃度を検出すると、出力回路部14を用いてガス濃度、補正後のガス感度S、或いは(1−S)のデータを外部に出力する。例えば出力回路部14からガス濃度のデータを出力する場合について説明する。マイコン11の内蔵ROMには予め補正後のガス感度とガス濃度の関係を示したテーブルを書き込んであり、マイコン11では補正後のガス感度をもとにテーブルからガス濃度を読み出して、検知対象のガス濃度を求め、ガス濃度に応じてデューティを変化させたPWM出力を出力ポートP13,P14から出力する。このとき、コンデンサC1,C2には出力ポートP13,P14から出力されるPWM出力のパルス幅(すなわちガス濃度)に比例した電圧が発生するので、端子Tb,Tcからガス濃度に比例した電圧信号を外部に出力することができる。
【0052】
ところで、本実施形態を匂いガスの検出用途に用いる場合には検出対象ガスを数十ppb〜数ppmの低濃度まで測定できることが要求されるので、上述のように本発明者らは感ガス体4の主材料(SnO2)に貴金属触媒を添加して、感ガス体4の感度を高感度とすることを検討した。図7(a)〜(e)は感ガス体の主材料(SnO2)に何も添加していない場合と各種の貴金属触媒を添加した各々の場合について被検ガス雰囲気中での電気抵抗値の時間的変化を測定した結果を示し、同図(a)は何も添加していない比較例の測定結果、(b)はAu、(c)はPt、(d)はPd、(e)はRuをそれぞれ添加した場合の測定結果を示している。図7(a)〜(e)において図中のアは清浄空気中の電気抵抗値を、イは1ppmのトリメチルアミンを清浄空気に混入した被検ガス雰囲気中での電気抵抗値を、ウは1ppmのメチルメルカプタンを清浄空気に混入した被検ガス雰囲気中での電気抵抗値をそれぞれ示しており、これらの測定結果から貴金属触媒としてAu、Ruを用いれば匂いガスに対する感度を大幅に向上させることが可能であると判明した。なおRuは低温域で電気抵抗値が高すぎるので、触媒としては使いづらいが、Sbを一緒に添加して原子価制御すれば実用上問題無いと考えられる。
【0053】
また図7の測定結果では貴金属触媒としてPdを用いた場合、あまり増感効果が得られないという結果が出たが、本発明者らはPdの添加量を変えて測定を行うことで、Pdの添加量に最適値があることを見出した。
【0054】
図8は感ガス体4の主材料(SnO2)へ添加するPdの量とトリメチルアミンに対するガス感度との関係を示し、図中のa,b,cはそれぞれ0.1ppm、0.3ppm、1ppmのトリメチルアミンを清浄空気に混入した被検ガス雰囲気中での測定結果である。また図9は感ガス体4の主材料(SnO2)へ添加するPdの量とメチルメルカプタンに対するガス感度との関係を示し、図中のa,b,cはそれぞれ0.03ppm、0.1ppm、0.3ppmのメチルメルカプタンを清浄空気に混入した被検ガス雰囲気中での測定結果である。図8及び図9の測定結果から匂いガスに対するガス感度に対してPdの添加量に最適値があることが判明し、Pdの添加量を主材料に対して1重量%以下、好ましくは0.1重量%以上且つ0.5重量%以下とするのが良い。またAu、Ruの添加量についても同様の検討を行った結果、Au、Ruの添加量を主材料に対して0.05重量%以上且つ1重量%以下とするのが好ましい。なお図8および図9は図4の測定結果と同様の条件で感ガス体4をハイ/ロー駆動した場合の測定結果を示している。
【0055】
以上のように感ガス体4に添加する貴金属触媒の検討を行った結果、本発明者らは感ガス体4の主材料(SnO2)に添加する貴金属触媒としてAu、Ru、およびPdを用いることが好適であると判断し、0.3重量%のPdを添加したSnO2にAuを添加した場合でヒータ兼用電極3aに印加するヒータ電圧の最適値を再検討した。図10は低温期間におけるヒータ電圧と0.3ppmのトリメチルアミンに対するガス感度との関係を測定した結果を示し、図中のaは高温期間におけるヒータ電圧を0.8Vとした場合、bは高温期間におけるヒータ電圧を0.9Vとした場合、cは高温期間におけるヒータ電圧を1.0Vとした場合をそれぞれ示している。また図11は低温期間におけるヒータ電圧と0.1ppmのメチルメルカプタンに対するガス感度との関係を測定した結果を示し、図中のaは高温期間におけるヒータ電圧を0.8Vとした場合、bは高温期間におけるヒータ電圧を0.9Vとした場合、cは高温期間におけるヒータ電圧を1.0Vとした場合をそれぞれ示している。これらの測定結果から、トリメチルアミンに対しては高温期間のヒータ電圧を0.9V、低温期間のヒータ電圧を0.3Vとした場合がガス感度が最も高くなり(すなわち清浄空気中における電気抵抗値と被検ガス雰囲気中の電気抵抗値との抵抗値変化が最も大きくなり)、メチルメルカプタンに対しては高温期間のヒータ電圧を0.8V、低温期間のヒータ電圧を0.3Vとした場合がガス感度が最も高くなることが判明した。
【0056】
また本実施形態では感ガス体4の主材料に貴金属触媒としてAuとPdを添加しているのであるが、感ガス体4の主材料にバインダーを含浸させることも好ましい。図12は感ガス体4の主材料にバインダーを含浸させていないもの(none)と、バインダーとしてアルミナゾルを含浸させたものと、シリカゾル、エチルシリケートなどのシリカ系バインダを含浸させたものとについてメチルメルカプタンに対するガス感度の変化を測定した結果であり、図中のaは0.1ppmのメチルメルカプタンを清浄空気に混入した被検ガス雰囲気中での測定結果、bは1ppmのメチルメルカプタンを清浄空気に混入した被検ガス雰囲気中での測定結果である。この測定結果より感ガス体4の主材料にアルミナゾルを含浸させたものが最も増感効果が高く、シリカ系バインダを含浸させたものでも或る程度の増感効果が得られることが判明した。なお図12の測定では高温期間のヒータ電圧を0.9V、低温期間のヒータ電圧を0.3Vとして測定を行った。
【0057】
以上のように感ガス体4の組成を検討した結果、感ガス体4の主材料(SnO2)に貴金属触媒としてAuとPdとを添加し、さらにアルミナゾルを含浸させることで、匂いガスに対する感度を向上させることが判明した。
【実施例】
【0058】
以下、本発明を実施例によって詳述する。
(ガスセンサの作製)
ガスセンサ1として、図2に示すものを作製した。ここで、感ガス体4としては、次に示すようにして形成されたものを用いた。
【0059】
粉体状の酸化スズを空気雰囲気下で500℃で1時間焼成した。このとき、PdやAuなどの貴金属触媒を含有させる場合には、粉体状の酸化スズを、貴金属触媒の塩化物溶液にディッピングし、その後焼成することで、貴金属触媒を酸化スズに担持させ、さらにアルミナゾルやエチルシリケート系のバインダーを含浸させた後、焼成を行った。
(ガス感度特性の評価)
このような組成の感ガス体4について高温期間(ヒータ電圧を0.9Vとして1秒間加熱)と低温期間(ヒータ電圧を0.3Vとして2秒間加熱)とが交互に繰り返すように感ガス体4を加熱した状態で各種の被検ガス雰囲気中でガス感度を測定した結果を図13に示す。図中のaはトリメチルアミン、bはメチルメルカプタン、cは硫化水素、dはアンモニア、eは水素、fは一酸化炭素の測定結果であり、匂いガスに対して1ppm前後の低濃度まで感度を有することが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本実施形態のガス検出装置の回路図である。
【図2】(a)はガスセンサの一部破断せる外観斜視図、(b)はセンシング素子の断面図である。
【図3】同上の感ガス体の温度の時間変化を示す図である。
【図4】同上のヒータ電圧を変化させた場合の感ガス体の電気抵抗値の測定結果を示す図である。
【図5】同上のヒータ兼用電極をハイ/ロー駆動した場合に感ガス体の電気抵抗値の時間変化を測定した結果を示す図である。
【図6】同上のヒータ兼用電極を一定電圧で駆動した場合とハイ/ロー駆動した場合とで被検ガス雰囲気中のガス感度を測定した結果を示す図である。
【図7】(a)〜(e)は同上の感ガス体に各種の貴金属触媒を添加した各々の場合について被検ガス雰囲気中での電気抵抗値の時間的変化を測定した結果を示す図である。
【図8】同上の感ガス体へのPdの添加量とトリメチルアミンに対するガス感度との関係を測定した結果を示す図である。
【図9】同上の感ガス体へのPdの添加量とメチルメルカプタンに対するガス感度との関係を測定した結果を示す図である。
【図10】同上のヒータ兼用電極に印加するヒータ電圧を変化させた場合のトリメチルアミンに対する感度を測定した結果を示す図である。
【図11】同上のヒータ兼用電極に印加するヒータ電圧を変化させた場合のメチルメルカプタンに対する感度を測定した結果を示す図である。
【図12】同上の感ガス体へバインダを含浸させない場合と各種のバインダを含浸させた場合のメチルメルカプタンに対するガス感度の測定結果である。
【図13】同上の各種検知対象ガスに対するガス感度の測定結果を示す図である。
【符号の説明】
【0061】
2 センシング素子
3a ヒータ兼用電極
3b 検出電極
4 感ガス体
11 マイコン
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ガスセンサを用いたガス検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体ガスセンサを用いて検知対象ガスのガス濃度を検出するガス検出装置が提供されている(特許文献1参照)。また、このようなガス検出装置を利用し、匂いガスに対して感度を有する感ガス体を用いて、呼気の匂いを簡易的に検出する口臭検査装置も従来より提供されている。
【特許文献1】特開平7−198644号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、近年、自動車の空調システムで外気の汚れを検出して外気導入と内気循環の切替を自動的に行うことによって、車内の空気質を清浄に保つシステムが提供されているが、外気の汚れ(例えばガソリンエンジンやディーゼルエンジンの排気ガス)だけでなく、農場やゴミ処理施設から排出される悪臭ガスを検知して、外気導入から内気循環に切り替えるようなシステムが要求されている。ここで、硫化物系のガスやアンモニア、トリメチルアミンなどの匂いガスの検出には数十ppb〜数ppmの低濃度でガスを検出できることが要求されている。
【0004】
しかしながら、従来の口臭検査装置では、SnO2、In2O3、ZnO、WO3などの金属酸化物半導体に各種の添加物を加えて感ガス材料としたガスセンサが用いられており、比較的高濃度の匂いガスを検出する簡易型のもので、上述した空調システムの用途で使用するには感度が不足していた。
【0005】
また従来より、リテンションタイムの違いを利用し、ガスクロマトグラフを用いて分離したガスの濃度を半導体ガスセンサにより検出する高精度の呼気成分分析装置も提供されているが、感ガス体を高温状態に加熱してヒートクリーニングを行った後、匂いガスに対して感度を有する低温状態に保ち、この低温期間中に感ガス体の電気抵抗値から匂いガスを検出しており、低温状態に移行後、10〜200秒経過しなければ、匂いガスに対する感度が出なかったため、測定時間に長時間を要し、使用用途が限られるという問題があった。
【0006】
本発明は上記問題点に鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、匂いガスを高感度で且つ短時間に検出できるガス検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、少なくとも匂いガスを含む検知対象ガスに感応して電気抵抗値の変化を生じる金属酸化物半導体に貴金属触媒を添加した感ガス体と、感ガス体を加熱する加熱手段と、感ガス体の温度を第1の設定温度に加熱する高温期間と第1の設定温度よりも低い第2の設定温度に加熱する低温期間とが交互に繰り返すように加熱手段の加熱量を制御する加熱制御手段と、感ガス体の電気抵抗値から検知対象ガスのガス濃度を検出するガス濃度検出手段とを備え、当該ガス濃度検出手段は、被検ガス雰囲気中の低温期間における電気抵抗値の、清浄空気中の低温期間における電気抵抗値に対する抵抗値変化から匂いガスのガス濃度を検出することを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、金属酸化物半導体の主材料がSnO2、In2O3、又はWO3の内の少なくとも一種であることを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において、貴金属触媒はAu、Pd、Ruの内の少なくとも何れか1つであることを特徴とする。
【0010】
請求項4の発明は、請求項3の発明において、Pdの添加量が主材料に対して0.1〜1重量%であることを特徴とする。
【0011】
請求項5の発明は、請求項3の発明において、Au、Ruの添加量が主材料に対して0.05〜1重量%であることを特徴とする。
【0012】
請求項6の発明は、請求項1〜5の何れか1つの発明において、金属酸化物半導体にアルミナゾル又はシリカ系バインダの内の少なくとも何れか1つを添加したことを特徴とする。
【0013】
請求項7の発明は、請求項1〜6の何れか1つの発明において、第1の設定温度が300℃以上且つ500℃以下、第2の設定温度が100℃以上且つ200℃以下であり、高温期間および低温期間がそれぞれ0.3秒以上且つ10秒以下であることを特徴とする。
【0014】
請求項8の発明は、請求項7の発明において、高温期間が1秒以下で、低温期間が2秒以下であることを特徴とする。
【0015】
請求項9の発明は、請求項1〜8の何れか1つの発明において、ガス濃度検出手段は、高温期間における感ガス体の電気抵抗値から硫化物系、アミン系、カルボン系以外のガスを検出するとともに、低温期間における感ガス体の電気抵抗値から硫化物系、アミン系、カルボン系のガスを検出することを特徴とする。
【0016】
請求項10の発明は、請求項1〜9の何れか1つの発明において、高温期間における感ガス体の電気抵抗値を用いて、低温期間における感ガス体の電気抵抗値を補正する抵抗値補正手段を設け、ガス濃度検出手段が補正後の電気抵抗値から匂いガスのガス濃度を検出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の発明によれば、感ガス体に貴金属触媒を添加することによって、匂いガスを少なくとも含む検知対象ガスに対する感度を高めることができ、且つ、高温期間において感ガス体に被検ガス雰囲気中の匂いガスを吸着させた後、匂いガスに対して高感度で再現性の良好な低温期間に移行させ、この低温期間における電気抵抗値から匂いガスのガス濃度を求めているので、匂いガスを高感度に検出できるという効果がある。さらに、加熱制御手段によって高温期間と低温期間とが交互に繰り返すように加熱手段の加熱量を制御しているので、感ガス体を一定温度に加熱する場合に比べて、匂いガスに対して感度が出るまでの時間を短くでき、匂いガスを検出するまでの期間を短縮できるという効果がある。
【0018】
なお金属酸化物半導体の主材料はSnO2、In2O3、又はWO3の内の少なくとも一種であることが好ましい。
【0019】
また請求項3の発明によれば、貴金属触媒としてAu、Pd、Ruの内の少なくとも何れか1つを用いており、貴金属触媒を感ガス体に添加することで、匂いガスに対するガス感度を向上させることができ、Pdの添加量を主材料に対して0.1〜10重量%、Au、Ruの添加量を主材料に対して0.05〜10重量%とするのが好ましい。
【0020】
また請求項6の発明によれば、金属酸化物半導体にアルミナゾル又はシリカ系バインダの内の少なくとも何れか1つを添加することで、匂いガスに対する感度を高めるとともに応答性を向上させることができる。
【0021】
請求項7の発明によれば、第1の設定温度を300℃以上且つ500℃以下、第2の設定温度を100℃以上且つ200℃以下とし、高温期間及び低温期間をそれぞれ0.3秒以上且つ10秒以下とすることで、匂いガスに対する感度を向上させるとともに、検出に要する時間を短縮できるという効果があり、好ましくは高温期間が1秒以下、低温期間が2秒以下である。
【0022】
請求項9の発明によれば、低温期間における電気抵抗値から硫化物系、アミン系、カルボン系などの匂いガスを検出し、高温期間における電気抵抗値から硫化物系、アミン系、カルボン系以外のガスを検出しているので、1つの感ガス体の電気抵抗値から匂いガスとそれ以外のガスのガス濃度を検出できるという効果がある。
【0023】
請求項10の発明によれば、1つの感ガス体を用い、高温期間における電気抵抗値で低温期間における電気抵抗値を補正し、補正後の電気抵抗値から匂いガスのガス濃度を検出しているので、低コストで精度の高いガス検出装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0025】
本実施形態のガス検出装置は、例えば自動車の空調システムにおいて外気導入と内気循環の切替を自動的に行うために外気に含まれる匂いガスや排気ガスのガス濃度を検出するために用いられ、検出したガス濃度が所定のしきい値を越えると、空調システム側で外気導入から内気循環に切り替えて、室内の空気を清浄に保つようになっている。
【0026】
図1は本実施形態の回路図であり、このガス検出装置は、検知対象ガスに感応して電気抵抗値が変化するセンシング素子2と、センシング素子2が備えるヒータ兼用電極3aへの通電制御を行うとともに、感ガス体4の電気抵抗値から検知対象ガスのガス濃度を検出する制御回路部10とを主要な構成要素としている。
【0027】
図2(a)は上述のセンシング素子2を備えたガスセンサ1の一部破断せる外観斜視図であり、このガスセンサ1は、有底筒状であって天井部を構成する面(底面)にガス流入孔5aが形成され、このガス流入孔5aに防爆のためにステンレス製の金網6が二重に取り付けられたセンサ筐体5と、このセンサ筐体5の底部を兼ねる樹脂製のベース7と、ベース7を貫通してセンサ筐体5の内外に突出する3本の端子8a〜8cと、端子8a〜8cに接続固定して支持されたセンシング素子2とを備える。
【0028】
そしてセンシング素子2は、図2(b)に示すように、白金又は白金合金の細線をコイル状に曲成したヒータ兼用電極3aと、白金又は白金合金の細線からなりヒータ兼用電極2の中心に挿通された検出電極3bとをセンサ基体とし、ヒータ兼用電極3aおよび検出電極3bを覆うように略球状(例えば長径が0.5mm、短径が0.3mmの楕円球状)の感ガス体4を形成して構成される。そしてヒータ兼用電極3aの両端はそれぞれ両側の端子8a,8cに電気的に接続され、検出電極3bの一端は中央の端子8bに電気的に接続されている。なお、センシング素子2の構造は上記の構造に限定されるものではなく、例えばアルミナ基板などの絶縁基板をセンサ基体として用い、この絶縁基板の一面に感応材料を膜状に形成して、センシング素子を構成するようにしても良い。
【0029】
ここで、感ガス体4の具体的な組成の例を説明する。以下に説明する感ガス体4の具体例は、硫化物系のガスやアンモニア、トリメチルアミン、メチルメルカプタンなどの匂いガスの検出に好適なものであるが、他の匂いガスの検出に用いる場合には必要に応じて適宜組成を変更することで、所望の検知対象の匂いガスを検知するために好適な感ガス体4を得ることができる。
【0030】
金属酸化物半導体としては、例えばSnO2、In2O3、又はWO3を用いることができ、これらは一種のみを用いるほか、二種以上を併用することもできる。SnO2を用いる場合には、適宜の手法で調整されるものを用いることができるが、例えばSnCl4の水溶液をNH4で加水分解してスズ酸ゾルを得て、これを風乾した後に空気中で例えば550〜700℃で0.5〜3時間焼成することで調整することができる。
【0031】
上記金属酸化物半導体にはPd、AuおよびRuが担持され、匂いガスを検出する場合において、感ガス体4中のPd、AuおよびRuが触媒として作用し、匂いガスに対する感度を向上させることができる。ここで、Pd、AuおよびRuの添加量(含有量)は感ガス体4に所望の特性を付与できるように適宜調整されるのであるが、好ましくはPdの添加量が感ガス体4の主材料である金属酸化物半導体の全量に対して0.1〜1重量%、更に好ましくは0.1〜0.5重量%であり、Au、Ruの添加量は感ガス体4の主材料である金属酸化物半導体の全量に対して0.05〜1重量%である。なおPd、Au、Ruの添加量を上記の如く決定した理由は後に詳細に説明する。また感ガス体4の主材料に担持させる貴金属触媒はAu、Pd、Ruの内の一種のみでも良いし、二種以上を併用することも可能である。
【0032】
このような感ガス体4は適宜の手法で作製できる。例えば、コイル状のヒータ兼用電極3aの中心に検出電極3bを挿通した後、金属酸化物半導体の粒子にテルピネオールなどの有機溶剤を加えて成形材料をペースト状とし、ヒータ兼用電極3aおよび検出電極3bを覆うように感ガス体4を塗布して楕円球状に形成し、700℃で10分間焼成する。そして、貴金属触媒の添加は塩化物溶液に感ガス体4をディッピングし、その後焼成することで行う。なお貴金属触媒の添加は、感ガス体4の主材料粉体に貴金属を例えば塩化物溶液の形で添加し、風乾後、焼成することで行っても良い。
【0033】
次に制御回路部10の回路構成について説明する。制御回路部10は、ヒータ兼用電極3aの通電制御を行う加熱制御手段、検知対象ガスのガス濃度を検知するガス濃度検知手段、および低温期間における電気抵抗値の補正処理を行う抵抗値補正手段などの機能がプログラム化されて装置全体の制御処理を行うマイコン11と、マイコン11からの制御信号に応じてヒータ兼用電極3aを駆動するヒータ駆動部12と、入力回路部13と、出力回路部14と、マイコン11に動作クロックを与えるクロック回路部15と、電源投入時にマイコン11をリセットするリセット回路部16とを主要な構成として備え、端子Ta,Td間に接続される乾電池や充電池などの電池電源(図示せず)から電源供給を受けて動作する。
【0034】
ヒータ駆動部12は、端子Ta,Td間(つまり電池電源の両端間)にヒータ兼用電極3aを介して接続される抵抗R1およびNPN形トランジスタ(以下トランジスタと略称す)Q1の直列回路と、端子Ta,Td間に接続された抵抗R2〜R5の直列回路と、非反転入力端子が抵抗R4,R5の接続点に、反転入力端子がトランジスタQ1のエミッタに、出力端子がトランジスタQ1のベースにそれぞれ接続されたバッファアンプA1と、マイコン11の出力ポートP11に抵抗を介してベースが接続されるとともに、端子Ta(電池電源の正極側)と抵抗R3,R4の接続点との間にエミッタ・コレクタ間が接続されたPNP形トランジスタDT1とを備える。そして、マイコン11の出力ポートP11の電圧レベルがハイ/ローに切り替えられると、トランジスタDT1がオン/オフして、抵抗R3,R4の接続点の電位が高低2段階に切り替えられるので、それに応じて抵抗R4,R5の接続点の電位、すなわちトランジスタQ1のベース電位が高低2段階に切り替わって、トランジスタQ1がオン/オフする。而してマイコン11の出力ポートP11からデューティ制御用のパルス信号を出力することによって、トランジスタQ1のオンデューティを変化させ、感ガス体4を所定の第1の設定温度に加熱する高温期間と、第1の設定温度よりも低い第2の設定温度に加熱する低温期間とが交互に繰り返すように、ヒータ兼用電極3aの発熱を制御する。
【0035】
入力回路部13は、一端が端子Ta(電池電源の正極側)に電気的に接続されるとともに、他端側が検出電極3bに電気的に接続された抵抗R6と、抵抗R6の両端間に抵抗R7を介してエミッタ−コレクタ間が接続されるとともに、マイコン11の出力ポートP12にベースが接続されたPNP形トランジスタDT2と、端子Ta,Tb間に接続されたサーミスタTH1および抵抗R8の直列回路とを有し、抵抗R6および検出電極3bの接続点の電位(すなわち感ガス体4の電気抵抗値に比例した電圧)がマイコン11の入力ポートP21に入力されるとともに、サーミスタTH1および抵抗R8の接続点の電位がマイコン11の入力ポートP22に入力されている。ここで、低温期間においてはマイコン11が出力ポートP12の電圧レベルをハイに切り替えて、トランジスタDT2をオフにすることで、抵抗R6のみを検出電極3bに直列に接続させる。一方、高温期間では感ガス体4の電気抵抗値が低温期間に比べて低抵抗となるので、マイコン11が出力ポートP12の電圧レベルをローに切り替えて、トランジスタDT2をオンさせ、抵抗R6,R7の並列回路を検出電極3bと電気的に接続させることで、検出電極3bに直列接続される負荷抵抗のインピーダンスを下げており、高温期間と低温期間とで略同じ電圧レベルの信号を入力ポートP21に入力させている。
【0036】
而してマイコン11は、高温期間において出力ポートP12の電圧レベルをハイに切り替えて、検出電極3bと直列に抵抗R6のみを接続させた状態で、入力ポートP21から検出電極3bと抵抗R6との接続点の電位を読み込むとともに、低温期間において出力ポートP12の電圧レベルをローに切り替え、検出電極3bと直列に抵抗R6,R7の並列回路を接続した状態で、入力ポートP21から検出電極3bと抵抗R6との接続点の電位を読み込む。またマイコン11は、入力ポートP22からサーミスタTH1および抵抗R8の分圧電圧を取り込み、この電圧値に応じて感ガス体4の電気抵抗値の温度補償を行う。尚、温度補償の方法については後述する。
【0037】
出力回路部14は、端子Ta,Td間にそれぞれ接続された抵抗R9,R10とコンデンサC1との直列回路、および抵抗R11,R12とコンデンサC2との直列回路と、出力端子と非反転入力端子とが短絡されてボルテージフォロワを構成し、抵抗R10およびコンデンサC1の接続点に非反転入力端子が接続されたオペアンプA2と、出力端子と非反転入力端子とが短絡されてボルテージフォロワを構成し、抵抗R12およびコンデンサC2の接続点に非反転入力端子が接続されたオペアンプA3とを備え、オペアンプA2,A3の出力端子はそれぞれ抵抗R13,R14を介して端子Tb、Tcに電気的に接続される。
【0038】
次に本実施形態のガス検出装置により被検ガス雰囲気中の検知対象ガス(匂いガスや自動車の排気ガスなど)のガス濃度を検出する場合の動作について説明する。
【0039】
マイコン11は、出力ポートP11からデューティ制御用のパルス信号を出力し、図3に示すように感ガス体4を第1の設定温度t2(例えば300℃以上且つ500℃以下)に加熱する高温期間Taと、第2の設定温度t1(例えば100℃以上且つ200℃以下)に加熱する低温期間Tbとが交互に繰り返すようにヒータ兼用電極3aの発熱量を制御しており、本実施形態では高温期間Taを1秒間、低温期間Tbを2秒間とし、1周期を3秒としている。
【0040】
ここで、図4は貴金属を添加していないSnO2を感ガス材料とした場合にヒータ兼用電極3aの印加電圧(ヒータ電圧)を変化させたときの感ガス体4の電気抵抗値の測定結果を示しており、図中のaは清浄空気中の電気抵抗値を、bは30ppmのトリメチルアミンを清浄空気に混入した被検ガス雰囲気中の電気抵抗値を、cは3ppmのメチルメルカプタンを清浄空気に混入した被検ガス雰囲気中の電気抵抗値をそれぞれ示している。この測定結果から明らかなように、メチルメルカプタンについてはヒータ電圧が0.4V(約150℃に相当)の時に感度が最大となり、トリメチルアミンについてはヒータ電圧が0.3V(約100℃に相当)の時に感度が最大となっており、検知対象である匂いガスの感度を高くするにはヒータ電圧を0.3〜0.4Vの範囲(100〜150℃に相当)に設定するのが好ましい。
【0041】
しかしながら、感ガス体4を常に100〜150℃の比較的低温で加熱する場合は応答速度が遅く、検知時間が非常に長くなって実用には適さないので、本発明者らは応答速度を改善するために、感ガス体4を高温状態に加熱する高温期間と低温状態に加熱する低温期間とが交互に繰り返すようにヒータ兼用電極3aを通電することを検討した。
【0042】
図5は貴金属を添加していないSnO2を感ガス材料とした場合に高温期間Ta(ヒータ電圧が0.9Vで感ガス体4の温度が約400℃)を1秒、低温期間Tb(ヒータ電圧が0.3Vで感ガス体4の温度が約100℃)を2秒としてヒータ兼用電極3aを通電したときの感ガス体4の電気抵抗値の測定結果を示し、図中のaは清浄空気中の電気抵抗値を、bは1ppmのトリメチルアミンを清浄空気に混入した被検ガス雰囲気中の電気抵抗値を、cは3ppmのトリメチルアミンを清浄空気に混入した被検ガス雰囲気中の電気抵抗値をそれぞれ示している。これらの測定結果より何れの雰囲気中でも高温期間Taでは1秒経過後、低温期間Tbでは2秒経過後に電気抵抗値が安定に達していることが判明した。そこで、本実施形態では高温期間を1秒、低温期間を2秒に設定し、高温期間に切り替え後1秒が経過した時点(図4の時刻t10)の電気抵抗値と低温期間に切り替え後2秒が経過した時点(図4の時刻t11)の電気抵抗値をそれぞれ検出するようにしている。なお高温期間および低温期間はそれぞれ検知対象ガスのガス種に応じて適宜設定すれば良く、高温期間および低温期間をそれぞれ0.3〜10秒までの範囲、さらに好ましくは高温期間を1秒以下、低温期間を2秒以下に設定すれば良い。
【0043】
また図6は貴金属を添加していないSnO2を感ガス材料とした場合に感ガス体4を常に150℃の比較的低温で加熱した場合と、高温期間と低温期間を交互に設けた場合(以下ハイ/ロー駆動と言う)とで2種のガス(トリメチルアミン(CH3)3N、メチルメルカプタンCH3SH)のガス濃度に対するガス感度(被検ガス雰囲気中の電気抵抗値Rの清浄空気中の電気抵抗値Rairに対する抵抗値変化の割合(R/Rair))を測定した結果であり、図中のa,bは常に低温状態とした場合の(CH3)3NおよびCH3SHに対するガス感度、図中のc,dはハイ/ロー駆動の場合の(CH3)3NおよびCH3SHに対するガス感度をそれぞれ示しており、これらの測定結果からハイ/ロー駆動によってガス感度を飛躍的に向上させることが可能であると判明した。
【0044】
以上の考察結果から本実施形態では、マイコン11がヒータ兼用電極3aの通電を制御して、高温期間と低温期間とを交互に繰り返すように感ガス体4の温度を制御しており、高温期間に切り替えてから1秒目の時点(すなわち高温期間が終了する直前)で入力ポートP21から感ガス体4の両端電圧を取り込み、この電圧値から感ガス体4の電気抵抗値を求めており、高温期間中では検知対象ガスである匂いガス(例えば硫化物系やアンモニア、トリメチルアミンなどのアミン系やカルボン系)以外のガス(ノイズガス)に対して感ガス材料の感度が高感度となるので、この期間の電気抵抗値からノイズガスのガス濃度を検出する。また雰囲気中の湿度は一種のガスとして検出が可能であるから、マイコン11は高温期間中に取り込んだ感ガス体4の電気抵抗値の抵抗値変化から雰囲気中の湿度を検出しており、ノイズガスのガス濃度および雰囲気中の湿度の検出値を用いて低温期間中に読み込んだ感ガス体4の電気抵抗値を補償する。尚、補償方法については後述する
その後、高温期間から低温期間に移行すると、マイコン11は低温期間に切り替えてから2秒目の時点(すなわち低温期間が終了する直前)で入力ポートP21から感ガス体4の両端電圧を取り込み、この電圧値から感ガス体4の電気抵抗値を求めており、低温期間中では検知対象ガスである匂いガス(例えば硫化物系やアンモニア、トリメチルアミンなどのアミン系やカルボン系)に対して感ガス材料の感度が高感度となるので、被検ガス雰囲気中の低温期間における電気抵抗値の、清浄空気中の低温期間における電気抵抗値に対する抵抗値変化から検知対象ガスである匂いガスを検出する。
【0045】
このように本実施形態ではマイコン11によりヒータ兼用電極3aの通電を制御して高温期間と低温期間を交互に設けており、高温期間では被検ガス雰囲気中の匂いガス(例えば硫化物系やアンモニア、トリメチルアミンなどのアミン系やカルボン系)が選択的に感ガス材料に吸着、或いは低温期間で高感度となる成分に分解された後、短時間で低温期間に移行するため感ガス材料に吸着されたガス、または分解された成分がそのまま保存され、低温期間では匂いガスや高温期間で分解された成分に対して高感度となるので、この低温期間の電気抵抗値から検知対象である匂いガスのガス濃度を検出することで、感ガス体4の温度を第1又は第2の設定温度に固定する場合に比べて高感度に匂いガスを検出することができる。
【0046】
またマイコン11は、高温期間中に検出した感ガス体4の電気抵抗値を用いて低温期間中に検出した感ガス体4の電気抵抗値を補正し、補正後の電気抵抗値から検知対象ガスのガス濃度を検出しており、ノイズガスや雰囲気中の湿度に対して高感度である高温期間中の電気抵抗値を用いて低温期間中の電気抵抗値を補正することで、ノイズガスや湿度などの外乱要因の影響を低減して、検知対象ガスのガス濃度を正確に検出できる。なお補正方法としては、例えばノイズガスや湿度(外乱要因)に対する高温期間中のガス感度(抵抗比)で、低温期間におけるガス感度を補正する方法や、外乱要因に対する高温期間中のガス感度と低温期間におけるガス感度とを対応付けたテーブルを用いて、被検ガス雰囲気中の低温期間におけるガス感度を補正する方法などがある。前者の方法では、高温期間における清浄空気中の電気抵抗値をRH0、被検ガス雰囲気中の電気抵抗値をRHgとし、低温期間における清浄空気中の電気抵抗値をRL0、被検ガス雰囲気中の電気抵抗値をRLgとすると、補正後の低温期間におけるガス感度Sは以下の式(1)で表され、補正後のガス感度Sから検知対象ガスのガス濃度を求めることによって、外乱要因の影響を低減して検知対象ガスのガス濃度を正確に検出することができる。
【0047】
S=(RLg/RL0)/(RHg/RH0) …(1)
また後者の方法では、マイコン11の内蔵ROMに外乱要因に対する高温期間中のガス感度と低温期間におけるガス感度とを対応付けたテーブル(下記の表1参照)を予め書き込んでおき、高温期間におけるガス感度(RHg/RH0)をもとに、表1のテーブルから低温期間におけるガス感度(RLg’/RL0’)を読み出し、低温期間中における電気抵抗値の測定値RLgを清浄空気中の電気抵抗値RL0で除算して得たガス感度(RLg/RL0)と、外乱要因に対する低温期間中のガス感度(RLg’/RL0’)とから以下の式(2)を用いて補正後のガス感度Sを求めることができる。
【0048】
【表1】
【0049】
S=(RLg/RL0)/(RLg’/RL0’) …(2)
このように後者の補正方法では、高温期間における感ガス体4の電気抵抗値から外乱要因に対するガス感度を求め、このガス感度をもとに表1から低温期間での外乱要因に対するガス感度を読み込み、低温期間での外乱要因に対するガス感度を用いて低温期間中の感ガス体4の電気抵抗値から求めたガス感度を補正しているので、高温期間中の外乱要因に対するガス感度を用いて補正するよりも、より正確な補正を行うことができる。
【0050】
また感ガス体4の抵抗値は周囲温度によって大きく変動し、特に低温期間においては周囲温度の影響が顕著になる。そこで、マイコン11では入力ポートP22からサーミスタTH1および抵抗R8の分圧電圧を取り込み、この分圧電圧からサーミスタTH1の抵抗値を求めて周囲温度を検出しており、周囲温度に応じて感ガス体4の電気抵抗値に所定の補正係数を乗算することで、周囲温度による抵抗値変化を補償するようにしても良い。
【0051】
またマイコン11は、検知対象ガスのガス濃度を検出すると、出力回路部14を用いてガス濃度、補正後のガス感度S、或いは(1−S)のデータを外部に出力する。例えば出力回路部14からガス濃度のデータを出力する場合について説明する。マイコン11の内蔵ROMには予め補正後のガス感度とガス濃度の関係を示したテーブルを書き込んであり、マイコン11では補正後のガス感度をもとにテーブルからガス濃度を読み出して、検知対象のガス濃度を求め、ガス濃度に応じてデューティを変化させたPWM出力を出力ポートP13,P14から出力する。このとき、コンデンサC1,C2には出力ポートP13,P14から出力されるPWM出力のパルス幅(すなわちガス濃度)に比例した電圧が発生するので、端子Tb,Tcからガス濃度に比例した電圧信号を外部に出力することができる。
【0052】
ところで、本実施形態を匂いガスの検出用途に用いる場合には検出対象ガスを数十ppb〜数ppmの低濃度まで測定できることが要求されるので、上述のように本発明者らは感ガス体4の主材料(SnO2)に貴金属触媒を添加して、感ガス体4の感度を高感度とすることを検討した。図7(a)〜(e)は感ガス体の主材料(SnO2)に何も添加していない場合と各種の貴金属触媒を添加した各々の場合について被検ガス雰囲気中での電気抵抗値の時間的変化を測定した結果を示し、同図(a)は何も添加していない比較例の測定結果、(b)はAu、(c)はPt、(d)はPd、(e)はRuをそれぞれ添加した場合の測定結果を示している。図7(a)〜(e)において図中のアは清浄空気中の電気抵抗値を、イは1ppmのトリメチルアミンを清浄空気に混入した被検ガス雰囲気中での電気抵抗値を、ウは1ppmのメチルメルカプタンを清浄空気に混入した被検ガス雰囲気中での電気抵抗値をそれぞれ示しており、これらの測定結果から貴金属触媒としてAu、Ruを用いれば匂いガスに対する感度を大幅に向上させることが可能であると判明した。なおRuは低温域で電気抵抗値が高すぎるので、触媒としては使いづらいが、Sbを一緒に添加して原子価制御すれば実用上問題無いと考えられる。
【0053】
また図7の測定結果では貴金属触媒としてPdを用いた場合、あまり増感効果が得られないという結果が出たが、本発明者らはPdの添加量を変えて測定を行うことで、Pdの添加量に最適値があることを見出した。
【0054】
図8は感ガス体4の主材料(SnO2)へ添加するPdの量とトリメチルアミンに対するガス感度との関係を示し、図中のa,b,cはそれぞれ0.1ppm、0.3ppm、1ppmのトリメチルアミンを清浄空気に混入した被検ガス雰囲気中での測定結果である。また図9は感ガス体4の主材料(SnO2)へ添加するPdの量とメチルメルカプタンに対するガス感度との関係を示し、図中のa,b,cはそれぞれ0.03ppm、0.1ppm、0.3ppmのメチルメルカプタンを清浄空気に混入した被検ガス雰囲気中での測定結果である。図8及び図9の測定結果から匂いガスに対するガス感度に対してPdの添加量に最適値があることが判明し、Pdの添加量を主材料に対して1重量%以下、好ましくは0.1重量%以上且つ0.5重量%以下とするのが良い。またAu、Ruの添加量についても同様の検討を行った結果、Au、Ruの添加量を主材料に対して0.05重量%以上且つ1重量%以下とするのが好ましい。なお図8および図9は図4の測定結果と同様の条件で感ガス体4をハイ/ロー駆動した場合の測定結果を示している。
【0055】
以上のように感ガス体4に添加する貴金属触媒の検討を行った結果、本発明者らは感ガス体4の主材料(SnO2)に添加する貴金属触媒としてAu、Ru、およびPdを用いることが好適であると判断し、0.3重量%のPdを添加したSnO2にAuを添加した場合でヒータ兼用電極3aに印加するヒータ電圧の最適値を再検討した。図10は低温期間におけるヒータ電圧と0.3ppmのトリメチルアミンに対するガス感度との関係を測定した結果を示し、図中のaは高温期間におけるヒータ電圧を0.8Vとした場合、bは高温期間におけるヒータ電圧を0.9Vとした場合、cは高温期間におけるヒータ電圧を1.0Vとした場合をそれぞれ示している。また図11は低温期間におけるヒータ電圧と0.1ppmのメチルメルカプタンに対するガス感度との関係を測定した結果を示し、図中のaは高温期間におけるヒータ電圧を0.8Vとした場合、bは高温期間におけるヒータ電圧を0.9Vとした場合、cは高温期間におけるヒータ電圧を1.0Vとした場合をそれぞれ示している。これらの測定結果から、トリメチルアミンに対しては高温期間のヒータ電圧を0.9V、低温期間のヒータ電圧を0.3Vとした場合がガス感度が最も高くなり(すなわち清浄空気中における電気抵抗値と被検ガス雰囲気中の電気抵抗値との抵抗値変化が最も大きくなり)、メチルメルカプタンに対しては高温期間のヒータ電圧を0.8V、低温期間のヒータ電圧を0.3Vとした場合がガス感度が最も高くなることが判明した。
【0056】
また本実施形態では感ガス体4の主材料に貴金属触媒としてAuとPdを添加しているのであるが、感ガス体4の主材料にバインダーを含浸させることも好ましい。図12は感ガス体4の主材料にバインダーを含浸させていないもの(none)と、バインダーとしてアルミナゾルを含浸させたものと、シリカゾル、エチルシリケートなどのシリカ系バインダを含浸させたものとについてメチルメルカプタンに対するガス感度の変化を測定した結果であり、図中のaは0.1ppmのメチルメルカプタンを清浄空気に混入した被検ガス雰囲気中での測定結果、bは1ppmのメチルメルカプタンを清浄空気に混入した被検ガス雰囲気中での測定結果である。この測定結果より感ガス体4の主材料にアルミナゾルを含浸させたものが最も増感効果が高く、シリカ系バインダを含浸させたものでも或る程度の増感効果が得られることが判明した。なお図12の測定では高温期間のヒータ電圧を0.9V、低温期間のヒータ電圧を0.3Vとして測定を行った。
【0057】
以上のように感ガス体4の組成を検討した結果、感ガス体4の主材料(SnO2)に貴金属触媒としてAuとPdとを添加し、さらにアルミナゾルを含浸させることで、匂いガスに対する感度を向上させることが判明した。
【実施例】
【0058】
以下、本発明を実施例によって詳述する。
(ガスセンサの作製)
ガスセンサ1として、図2に示すものを作製した。ここで、感ガス体4としては、次に示すようにして形成されたものを用いた。
【0059】
粉体状の酸化スズを空気雰囲気下で500℃で1時間焼成した。このとき、PdやAuなどの貴金属触媒を含有させる場合には、粉体状の酸化スズを、貴金属触媒の塩化物溶液にディッピングし、その後焼成することで、貴金属触媒を酸化スズに担持させ、さらにアルミナゾルやエチルシリケート系のバインダーを含浸させた後、焼成を行った。
(ガス感度特性の評価)
このような組成の感ガス体4について高温期間(ヒータ電圧を0.9Vとして1秒間加熱)と低温期間(ヒータ電圧を0.3Vとして2秒間加熱)とが交互に繰り返すように感ガス体4を加熱した状態で各種の被検ガス雰囲気中でガス感度を測定した結果を図13に示す。図中のaはトリメチルアミン、bはメチルメルカプタン、cは硫化水素、dはアンモニア、eは水素、fは一酸化炭素の測定結果であり、匂いガスに対して1ppm前後の低濃度まで感度を有することが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本実施形態のガス検出装置の回路図である。
【図2】(a)はガスセンサの一部破断せる外観斜視図、(b)はセンシング素子の断面図である。
【図3】同上の感ガス体の温度の時間変化を示す図である。
【図4】同上のヒータ電圧を変化させた場合の感ガス体の電気抵抗値の測定結果を示す図である。
【図5】同上のヒータ兼用電極をハイ/ロー駆動した場合に感ガス体の電気抵抗値の時間変化を測定した結果を示す図である。
【図6】同上のヒータ兼用電極を一定電圧で駆動した場合とハイ/ロー駆動した場合とで被検ガス雰囲気中のガス感度を測定した結果を示す図である。
【図7】(a)〜(e)は同上の感ガス体に各種の貴金属触媒を添加した各々の場合について被検ガス雰囲気中での電気抵抗値の時間的変化を測定した結果を示す図である。
【図8】同上の感ガス体へのPdの添加量とトリメチルアミンに対するガス感度との関係を測定した結果を示す図である。
【図9】同上の感ガス体へのPdの添加量とメチルメルカプタンに対するガス感度との関係を測定した結果を示す図である。
【図10】同上のヒータ兼用電極に印加するヒータ電圧を変化させた場合のトリメチルアミンに対する感度を測定した結果を示す図である。
【図11】同上のヒータ兼用電極に印加するヒータ電圧を変化させた場合のメチルメルカプタンに対する感度を測定した結果を示す図である。
【図12】同上の感ガス体へバインダを含浸させない場合と各種のバインダを含浸させた場合のメチルメルカプタンに対するガス感度の測定結果である。
【図13】同上の各種検知対象ガスに対するガス感度の測定結果を示す図である。
【符号の説明】
【0061】
2 センシング素子
3a ヒータ兼用電極
3b 検出電極
4 感ガス体
11 マイコン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも匂いガスを含む検知対象ガスに感応して電気抵抗値の変化を生じる金属酸化物半導体に貴金属触媒を添加した感ガス体と、前記感ガス体を加熱する加熱手段と、前記感ガス体の温度を第1の設定温度に加熱する高温期間と前記第1の設定温度よりも低い第2の設定温度に加熱する低温期間とが交互に繰り返すように前記加熱手段の加熱量を制御する加熱制御手段と、前記感ガス体の電気抵抗値から検知対象ガスのガス濃度を検出するガス濃度検出手段とを備え、当該ガス濃度検出手段は、被検ガス雰囲気中の低温期間における電気抵抗値の、清浄空気中の低温期間における電気抵抗値に対する抵抗値変化から匂いガスのガス濃度を検出することを特徴とするガス検出装置。
【請求項2】
前記金属酸化物半導体の主材料がSnO2、In2O3、又はWO3の内の少なくとも一種であることを特徴とする請求項1記載のガス検出装置。
【請求項3】
前記貴金属触媒はAu、Pd、Ruの内の少なくとも何れか1つであることを特徴とする請求項1又は2記載のガス検出装置。
【請求項4】
Pdの添加量が主材料に対して0.1〜1重量%であることを特徴とする請求項3記載のガス検出装置。
【請求項5】
Au、Ruの添加量が主材料に対して0.05〜1重量%であることを特徴とする請求項3記載のガス検出装置。
【請求項6】
前記金属酸化物半導体にアルミナゾル又はシリカ系バインダの内の少なくとも何れか1つを添加したことを特徴とする請求項1〜5の何れか1つに記載のガス検出装置。
【請求項7】
前記第1の設定温度が300℃以上且つ500℃以下、前記第2の設定温度が100℃以上且つ200℃以下であり、前記高温期間および前記低温期間がそれぞれ0.3秒以上且つ10秒以下であることを特徴とする請求項1〜6の何れか1つに記載のガス検出装置。
【請求項8】
前記高温期間が1秒以下で、前記低温期間が2秒以下であることを特徴とする請求項7記載のガス検出装置。
【請求項9】
前記ガス濃度検出手段は、前記高温期間における前記感ガス体の電気抵抗値から硫化物系、アミン系、カルボン系以外のガスを検出するとともに、前記低温期間における前記感ガス体の電気抵抗値から硫化物系、アミン系、カルボン系のガスを検出することを特徴とする請求項1〜8の何れか1つに記載のガス検出装置。
【請求項10】
前記高温期間における前記感ガス体の電気抵抗値を用いて、前記低温期間における前記感ガス体の電気抵抗値を補正する抵抗値補正手段を設け、前記ガス濃度検出手段が補正後の電気抵抗値から匂いガスのガス濃度を検出することを特徴とする請求項1〜9の何れか1つに記載のガス検出装置。
【請求項1】
少なくとも匂いガスを含む検知対象ガスに感応して電気抵抗値の変化を生じる金属酸化物半導体に貴金属触媒を添加した感ガス体と、前記感ガス体を加熱する加熱手段と、前記感ガス体の温度を第1の設定温度に加熱する高温期間と前記第1の設定温度よりも低い第2の設定温度に加熱する低温期間とが交互に繰り返すように前記加熱手段の加熱量を制御する加熱制御手段と、前記感ガス体の電気抵抗値から検知対象ガスのガス濃度を検出するガス濃度検出手段とを備え、当該ガス濃度検出手段は、被検ガス雰囲気中の低温期間における電気抵抗値の、清浄空気中の低温期間における電気抵抗値に対する抵抗値変化から匂いガスのガス濃度を検出することを特徴とするガス検出装置。
【請求項2】
前記金属酸化物半導体の主材料がSnO2、In2O3、又はWO3の内の少なくとも一種であることを特徴とする請求項1記載のガス検出装置。
【請求項3】
前記貴金属触媒はAu、Pd、Ruの内の少なくとも何れか1つであることを特徴とする請求項1又は2記載のガス検出装置。
【請求項4】
Pdの添加量が主材料に対して0.1〜1重量%であることを特徴とする請求項3記載のガス検出装置。
【請求項5】
Au、Ruの添加量が主材料に対して0.05〜1重量%であることを特徴とする請求項3記載のガス検出装置。
【請求項6】
前記金属酸化物半導体にアルミナゾル又はシリカ系バインダの内の少なくとも何れか1つを添加したことを特徴とする請求項1〜5の何れか1つに記載のガス検出装置。
【請求項7】
前記第1の設定温度が300℃以上且つ500℃以下、前記第2の設定温度が100℃以上且つ200℃以下であり、前記高温期間および前記低温期間がそれぞれ0.3秒以上且つ10秒以下であることを特徴とする請求項1〜6の何れか1つに記載のガス検出装置。
【請求項8】
前記高温期間が1秒以下で、前記低温期間が2秒以下であることを特徴とする請求項7記載のガス検出装置。
【請求項9】
前記ガス濃度検出手段は、前記高温期間における前記感ガス体の電気抵抗値から硫化物系、アミン系、カルボン系以外のガスを検出するとともに、前記低温期間における前記感ガス体の電気抵抗値から硫化物系、アミン系、カルボン系のガスを検出することを特徴とする請求項1〜8の何れか1つに記載のガス検出装置。
【請求項10】
前記高温期間における前記感ガス体の電気抵抗値を用いて、前記低温期間における前記感ガス体の電気抵抗値を補正する抵抗値補正手段を設け、前記ガス濃度検出手段が補正後の電気抵抗値から匂いガスのガス濃度を検出することを特徴とする請求項1〜9の何れか1つに記載のガス検出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2006−23256(P2006−23256A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−203817(P2004−203817)
【出願日】平成16年7月9日(2004.7.9)
【出願人】(593210961)エフアイエス株式会社 (39)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年7月9日(2004.7.9)
【出願人】(593210961)エフアイエス株式会社 (39)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]