説明

ガス検知部及びガス警報器

【課題】 効率的に動作点検を行なうことができるガス検知部および当該ガス検知部を備えたガス警報器を提供する。
【解決手段】 被検知ガスを検出するセンサ1が、センサ1の内部と外部とに渡って被検知ガスの出入りを許容する少なくとも二つの開口部4を、上下に位置を異ならせて備えると共に、センサ1の表面であって、開口部4のうち何れか一つに近接する位置に被検知ガスを点検用に吹きかけるガス点検口2を備えたガス検知部。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検知ガスを検出するセンサと、当該センサに点検用の被検知ガスを吹きかけるガス点検口とを備えたガス検知部、および、当該ガス検知部を備えたガス警報器に関する。
【背景技術】
【0002】
家庭用のガス警報器を新たに取り付ける場合、或いは、既に取り付けたガス警報器の定期点検を行う際には、点検用の被検知ガスをセンサ部分に吹きかけ、適正に鳴動するか否かを点検する。この点検は、例えば次のような手法により行なう。
【0003】
ガス警報器の点検者は、そのガス検知回路に組み込まれているガス検知素子に、被検知ガス、もしくは、そのガス検知素子がその被検知ガスと同等のガス検知能を示す点検用ガスを供給する。これにより、ガス検知機構を実際に作動させて、そのガス検知動作、或いは、ガス検知回路の出力等を確認する(特許文献1〔0023〕乃至〔0025〕段落参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2002-269657号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
点検者が、このような動作点検を行う場合、例えば、通常のライターに充填されているイソブタンガスを用いる。都市ガス警報器のように炭化水素ガスを検知するガス警報器に対しては、イソブタンガスであっても十分に代用可能である。
【0006】
ガス警報器の点検を迅速に行うには、点検用ガスを、センサの内部に設けたガス検知素子に素速く到達させ、接触させる必要がある。
そのために、前記センサの何れかの場所に開口部が設けてあり、点検用のガスをセンサの内部に導くように構成してある。ただし、ライターに充填してある前記イソブタンガスは、ある程度の高濃度を有している。そのため、センサに過剰に供給されると、センサは直ちに鳴動を開始するものの、センサの周囲のガス濃度が長時間に亘って高く維持され、そのあいだガス警報器が鳴動し続けることとなる。
【0007】
また、通常、この種のガス警報器には、被検知ガス以外の雑ガスを吸着するために、活性炭などを用いたフィルタを備えている。このフィルタには、前記イソブタンガスが吸着し易い。このことも、センサの周囲が点検用ガスによって高濃度に維持される原因となっている。
このように、従来のガス警報器においては、効率的な動作点検を行なうにも限界があった。
【0008】
そこで、本発明は上記実状に鑑み、効率的に動作点検を行なうことができるガス検知部および当該ガス検知部を備えたガス警報器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(特徴構成1)
本発明のガス検知部の特徴構成は、被検知ガスを検出するセンサが、センサの内部と外部とに渡って前記被検知ガスの出入りを許容する少なくとも二つの開口部を、上下に位置を異ならせて備えると共に、前記センサの表面であって、前記開口部のうち何れか一つに近接する位置に前記被検知ガスを点検用に吹きかけるガス点検口を備えた点にある。
【0010】
(作用効果)
本構成では、被検知ガスを点検用に吹きかけるガス点検口を、センサに設けた開口部のうち何れか一つに近接する位置に点検用のガスを吹きかけできるように設けてある。よって、ガスをセンサの内部に注入させ易くなっている。
このとき、例えば、点検用ガスとして空気よりも重いイソブタンガスを用いる場合には、上下方向に位置が異なる開口部のうち、下方の開口部に向けて被検知ガスを吹きかける。これにより、センサの内部に注入されたガスがセンサの内部に留まり、センサ内部のガス濃度が早期に高まる。この結果、センサの動作確認を迅速に行なうことができる。
【0011】
一方、点検用のガスの吹きかけを停止すると、それまでガスの注入孔として機能していた下方の開口部がガスのドレン孔として機能するようになる。上方の開口は、点検用ガスの排出に応じた空気の侵入口として機能し始めるから、当該ガスが極めて円滑に排出される。
【0012】
このように、本構成のガス検知部であれば、センサの内部へのガスの注入と、センサの外部へのガスの排出を確実に行うことができる。よって、センサの動作点検を行なう際に少量の点検用ガスを吹きかけるだけでよく、効率よくセンサの動作点検を行なうことができる。さらに、センサの内部に過剰量のガスが注入されることが無いため、センサからの点検用ガスの抜けが早い。この結果、警報確認を行った後、早期に鳴動を停止させることができる。
【0013】
(特徴構成2)
本発明のガス検知部としては、前記センサの外形を円筒状に構成したものを用いることができる。
【0014】
(作用効果)
本構成のごとく、センサの外形を円筒状に構成してあれば、前記ガス点検口から吹きかけた点検用の被検知ガスがセンサの外周面に沿って通過する。このため、センサの外周部の何れの場所に前記開口部を形成したとしても、点検用ガスが開口部に達し易くなる。その結果、点検用ガスがセンサの内部に侵入し易くなる。
また、センサをその円筒の軸心周りに適宜回転させて固定することで、ガス点検口に対する開口部の相対位置を変化させることができる。これにより、吹きかけた点検用ガスが前記開口部に侵入する勢いを調節することができ、センサの内部へのガスの侵入量を容易に制御することができる。
【0015】
(特徴構成3)
本発明のガス検知部は、前記円筒状のセンサを、その円筒の軸心を水平にした状態で配置し、同一の円周上に前記二つの開口部を設けると共に、点検用のガスを前記ガス点検口から前記円周上に向けて吹きかけるように構成することができる。
【0016】
(作用効果)
筒状のセンサの軸心に対して直行する平面を考えると、当該平面とセンサの表面との交線が円となる。本構成では、二つの開口部をこの円上に分散させて設ける。前記ガス点検口から、これらの開口部に至る夫々の距離は異なるうえ、これら開口部が前記ガス点検口に対面する角度も夫々異なる。よって、当該開口部を流れる点検用ガスの流速には差が生じる。そして、例えば、一方の開口部を前記ガス点検口の側に向け、他方の開口部を前記ガス点検口からみて裏面に設けることで、前記一方の開口部における点検用ガスの圧力を正圧とし、前記他方の開口部における点検用ガスを負圧にすることができる。
この結果、前記一方の開口部から点検用ガスが押し込まれ、前記他方の開口部からはセンサの内部の空気を引き抜くことで、センサ内部への点検用ガスの注入が極めて円滑に行なわれる。
本構成であれば、前記一方の開口部の位置および他方の開口部の位置を適宜設定することで、ガスの注入・排出の速度を容易に制御することができ、鳴動確認および鳴動停止が迅速に行われる。
【0017】
(特徴構成4)
本発明のガス検知部は、点検用ガスを検出するセンサが、センサの内部と外部とに渡って前記点検用ガスの出入りを許容する少なくとも二つの開口部を備えると共に、前記センサの表面に向けて前記点検用ガスを吹きかけるガス点検口を備え、前記開口部の少なくとも一つに、当該開口部への前記点検用ガスの出入りを制御するガス整流手段を設けて構成することができる。
【0018】
(作用効果)
本構成のごとく、前記開口部の少なくとも一つにガス整流手段を設け、当該開口部への点検用ガスの出入りを制御すれば、点検用ガスがセンサの内部に入り過ぎるのを防止することができる。
一方、前記開口部の少なくとも一つに点検用ガスを誘導するガス整流手段を設けることで、点検用ガスを微量に吹きかける場合でも、センサの内部にガスを確実に導くことができる。
本構成のガス検知部であれば、用いるセンサの感度あるいは、用いる点検用ガスの種類などに応じて、動作点検時におけるセンサの鳴動のし易さを適宜設定することができる。
【0019】
(特徴構成5)
本発明のガス検知部は、被検知ガスを出入りさせる開口部を側面に備えた筒状のセンサを、その軸心が水平姿勢となるよう配置すると共に、前記開口部に向けて点検用のガスを吹きかけるガス点検口を前記開口部から離間した位置に設け、前記開口部が、前記センサの軸心および前記ガス点検口の何れに対しても下方となるよう前記センサを設けて構成することができる。
(作用効果)
通常、点検用のガスとしては、汎用性のあるイソブタンガスを用いることが多い。このイソブタンガスは空気よりも比重が大きいため、吹きかけられたイソブタンガスは、落下しつつ開口部の側に流れる。そこで、本構成のごとく、ガス点検口に対して開口部を下方に設けておくことで、点検用のガスをより確実に開口部に到達させることができる。仮に、ガス点検口と開口部との離間距離が大きい場合であっても、開口部の位置を適宜調整することで、センサの内部に点検用のガスを確実に導くことができる。このため、点検用ガスの使用量を少なくしながら点検作業を行うことができる。
【0020】
また、本構成では、前記開口部の高さをセンサの軸心よりも低い位置に設けてある。本構成であれば、例えばイソブタンガスのような比重の重い点検用ガスを用いる場合に、センサの内部に侵入した点検用ガスが、その自重によってセンサの外部に排出され易い。よって、点検時のセンサ鳴動時間を短縮することができ、点検作業を円滑に行うことができる。
【0021】
(特徴構成6)
本発明のセンサ検知部は、以下のごとくガス警報機に適用することができる。即ち、ガス検知部のうち、センサをケース本体の内部に備えると共に、ガス点検口を前記ケース本体に設けることができる。
(作用効果)
本構成のごとく、ガス点検口をガス警報器のケース本体に設けることで、ガス警報器の動作点検を容易に行なえる。即ち、点検用のガス点検器具を前記ガス点検口にセットするだけで、センサに向けて適正にガスを吹きかけることができる。その際には、センサの内部に、適度な濃度の点検用ガスが適量注入される。よって、点検技量が未熟な点検員でも、効率よくガス警報器の動作点検を行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
(概要)
本発明の装置は、主に家庭用燃料ガスを使用する各種燃焼器具からのガス漏れを検知するものであって、その設置場所における動作点検が容易なガス検知部Aおよびガス警報器Bである。
本発明のガス検知部Aおよびガス警報器Bを図面に基づいて説明する。
前記ガス検知部Aは、主に点検用ガスGを検出するセンサ1と、当該センサ1に点検用ガスGを吹きかけるためのガス点検口2とを備えている。前記センサ1は、ガス警報器Bのケース本体3の内部に装着してある。前記センサ1を構成するセンサ本体1Aには、点検用ガスGが侵入可能な点検用の開口部4を備えている。つまり、当該開口部4から点検用ガスGがセンサ本体1Aの内部に侵入し、センサ1が当該点検用ガスGを検知して警報を発する。
【0023】
前記点検用ガスGは、ガス警報器Bのケース本体3に設けたガス点検口2からセンサ1に向けて吹きかける。当該ガス点検口2は、ライターなどのガス点検器具5の先端部を位置合わせする孔部により構成してある。当該ガス点検口2は、ガス点検器具5のノズル6を方向付ける案内機能を備えている。これにより、吹きかけられた点検用ガスGは前記センサ1の所定の位置に向けて流動する。
【0024】
(ガス点検口)
図1に示すごとく、本実施形態では、点検用のガス点検器具5として、例えば一般のライターの先端に吹きかけ用のノズル6を設けたものを用いる。ガス警報器Bのケース本体3には、前記ノズル6を挿入する孔部2Aを設けてある。前記孔部2Aの内径は所定寸法に形成してあり、当該孔部2Aにノズル6を挿入すると、ノズル6の方向が自動的に固定される。これにより、点検用ガスGは、常にセンサ1の特定位置に向けて吹きかけられる。このように、点検用ガスGの吹きかけ方向を特定することで、後述するセンサ本体1Aの内部に確実に点検用ガスGを注入させることができる。本構成であれば、点検員の点検技量に影響されることなくセンサ1の動作点検を行なうことができるうえ、必要最低限の点検用ガスGを用いた効率的な点検を行なうことができる。
【0025】
(センサ)
図1及び図2に示すごとく、ガス検知部Aを構成するセンサ1は、略円筒状のセンサ本体1Aの内部に検知素子7を設けて構成してある。当該検知素子7は、センサ本体1Aの一方側に設けてある。前記センサ本体1Aの他方側は開放構造となっているが、当該部分には、点検用ガスG以外の雑ガスを吸着してセンサ1の検知精度を向上させるためのフィルタ8を設けてある。当該フィルタ8には、例えば、活性炭を用いる。
【0026】
前記センサ本体1Aの円筒表面には、例えば二つの開口部4を設けてある。当該開口部4は、センサ1の動作点検時に吹きかける点検用ガスGをセンサ本体1Aの内部に侵入させるためのものである。ただし、前記フィルタ8の開口面積は、二つの開口部4の合計面積よりも格段に広いから、通常のガス漏れ点検時には、主に前記フィルタ8を通して点検用ガスGがセンサ本体1Aの内部に侵入する。
【0027】
しかしながら、点検に用いる点検用ガスGは、例えば通常のライターに用いられるイソブタンガスである。このイソブタンガスは、前記フィルタ8に吸着され易い。よって、前記フィルタ8の汚染を少しでも防止するためには、点検用ガスGは前記フィルタ8を介さずにセンサ本体1Aの内部に導くのが好ましい。また、フィルタ8を介して点検用ガスGをセンサ本体1Aの内部に導こうとすると、フィルタ8の通過抵抗のために多量の点検用ガスGを吹きかけなければならず、点検時間も長くなる。このため、本発明のごとく、センサ本体1Aの側面に点検用ガスGを侵入させるための開口部4を設ける。
【0028】
本実施形態では、二つの開口部4を設けてある。当該開口部4の形状は、丸形状あるいは長方形状など任意の形状でよい。ただし、双方の開口部4は、鉛直方向に高さの差を設けて形成する。つまり、通常、点検用ガスGの比重は空気の比重とは異なる。よって、センサ本体1Aの内部に侵入する際および内部から排出する際のガスの流れを円滑にするために双方の開口部4の高さに差を設ける。
【0029】
本実施形態で用いるイソブタンガスは、空気よりも重い。よって、イソブタンガスが排出され易い下側の開口部4からイソブタンガスを注入することで、注入時のイソブタンガスの抜けを防止することができ、結果的に、ケース本体3へのイソブタンガスの注入を迅速に行なうことができる。
そのためには、例えば、下側の開口部4をガス点検口2の側に向け、かつ、ガス吹きかけ方向よりもやや下方の位置に開口部4を設ける。これにより、吹きかけられた点検用ガスGの多くが下側の開口部4に到達し、効率的にガスの注入が行なわれる。
【0030】
尚、前記開口部4の数は、必ずしも二つである必要はない。例えば、三つ以上の開口部4を設けてあっても上記と同様の効果を得ることができる。
また、開口部4を一つだけ備えた構成にすることもできる。この場合には、単に丸形状の開口部4を設けることとしてもよいし、その他に、例えば、長孔状の開口部4を設けてもよい。長孔状とする場合には、開口部4の下端部の高さと上端部の高さとを適宜設定することで、点検用ガスGの注入・排出を効率的に行うことができる。要するに用いる点検用ガスGの特性に応じて、ガスの注入・排出を容易にするいかなる構成も採用可能である。
【0031】
本構成のごとく、前記センサ1の外形を円筒状に構成すると、点検用ガスGをセンサ1の周囲に沿って滑らかに流通させることができる。特に、センサ1の表面のうちガス点検口2に面した側では吹きかけられた点検用ガスGの圧力が高まり、一方、ガス点検口2とは反対の裏側では、点検用ガスGの圧力が低くなる。この構成であれば、ガス点検口2に面した側の開口部4から点検用ガスGが注入され易くなる。一方、裏側の開口部4にあっては、センサ1の裏側に点検用ガスGが回り込む際に乱流となり、場合によっては負圧が発生する。この結果、センサ本体1Aの内部の空気を積極的に吸引する効果を生じ、前記ガス点検口2に近い側の開口部4からの点検用ガスGの注入を援助することにもなる。これにより、センサ1の動作点検をより迅速に行なえることとなる。
【0032】
本実施形態では、図1及び図2に示すごとく、センサ1を横向きに配置してある。より詳細には、前記センサ1は、当該センサ1の円筒の軸心が水平になるように設けてある。前記二つの開口部4は、同一の円周上に位置するように設けてある。つまり、円筒の軸心に対して垂直な平面を想定し、当該平面とセンサ本体1Aの外表面との交線を考える。この交線上に前記二つの開口部4を形成する。さらに、前記ガス点検口2からの点検用ガスGは、当該平面に沿って前記交線に向けて吹きかける。このように構成することで、次に示すごとく点検用ガスGの注入と排出とがより効率的に行なえる。
【0033】
前記ガス点検口2から双方の開口部4に至る距離は異なる。また、双方の開口部4は円筒状の外表面に開口しているから、前記ガス点検口2に対する当該開口部4の対面角度も異なる。この結果、双方の開口部4の周辺を流れる点検用ガスGの流速には差が生じる。特に、一方の開口部4を前記ガス点検口2の側に向け、他方の開口部4を前記ガス点検口2からみて裏面に設けることで、前記一方の開口部4におけるガス圧が正圧となり、前記他方の開口部4におけるガス圧が低圧もしくは負圧になる。
【0034】
本構成のごとく、吹きかけた点検用ガスGが双方の開口部4の周辺を通過する状況を作ることで、双方の位置におけるガス圧の差が最大となる。つまり、吹きかけた点検用ガスGが一方の開口部4に到達しない場合には、双方の開口部4におけるガス圧の差はそれほど大きくならないからである。
本構成のようなガス検知部Aを構成することで、一方の開口部4を点検用ガスGの注入口として機能させ、他方の開口部4を点検用ガスGの吸引口として機能させて、少量の点検用ガスGを吹きかけるだけでセンサ1の動作確認を行なえるようになる。
【0035】
(実施例)
本発明のセンサ本体1Aは、その外形寸法が約6mm、長さが約15mmの円筒形状を有する。その一方側には、検知素子7および当該検知素子7に接続する電極9などを内蔵する。他方側には、フィルタ8を備えている。これらの中間位置に内径約1mmの二つの開口部4を互いに180度対向した位置に設けてある。当該開口部4と前記検知素子7との間には、複数のガス流通孔を備えた仕切板10を設けてある。
【0036】
前記センサ1は、ガス警報器Bのケース本体3の内部に設けた基板11に平行となり、かつ、円筒の軸心が水平をなすように設けてある。また、前記基板11とセンサ1の外周面との最短距離は約4〜5mmに設定してある。
【0037】
本実施例では、開口部4の最も適切な位置を特定すべく、点検用ガスGの吹きかけ時間と、ガス点検口2に対する二つの開口部4の位置とを順次変更して鳴動試験を行なった。
点検用ガスGとしては、通常のライターに充填されているイソブタンガスを用いた。センサ1は、4000ppm以上の濃度のメタンを検知した場合に鳴動するよう設定した。センサ1の点検モード中において、点検用ガスGを吹きかけた後、20+2秒以内でガス警報器Bが鳴動するか否かを点検した。
【0038】
図3に示すごとく、センサ1の軸心Xを水平にした状態で、その軸心Xの高さとガス点検口2の高さとが同じになるようセンサ1を配置した。前記ガス点検口2と前記センサ1の表面との距離は約9mmであった。センサ1の角度は二つの開口部4の高さを同じ高さとし、かつ、ガス点検口2におけるガスの吹きかけ方向の延長線上に、前記二つの開口部4が位置する状態を「角度0度」とする。この角度から、ガス点検口2に近い側の開口部4を下方に回転させる角度をマイナス角度とし、その反対をプラス角度とする。このようにして、10台のガス警報器Bを用いて点検し、適切に鳴動したガス警報器Bの割合を求めた。
【0039】
以上の条件で鳴動試験を行なった結果を図4に示す。
表中、「○」印は、全てのガス警報器Bが鳴動したものを示す。全てのガス警報器Bが鳴動しなかったものは「×」印を付し合格率を併記した。
この結果から、ガスの吹きかけ時間が短い2秒の場合では、センサ1の角度が0度乃至マイナス10度のもので適切に鳴動し、ガスの吹きかけ時間が長い3秒の場合では、プラス5度乃至マイナス50度の範囲でガス警報器Bが適切に鳴動したことがわかる。吹きかけ時間としては、これらの間の2.2秒および2.5秒についても点検した。図4から明らかなごとく、ガスの吹きかけ時間が長くなるほど、鳴動可能なセンサ1の角度は広がることがわかる。
このとき、ガスの吹きかけ時間が長くなるほど鳴動範囲が下方に偏位するのは、イソブタンガスが空気より重いため、当該ガスがセンサ1の下方に流動したためと考えられる。
【0040】
通常、ガス警報器Bを組み立てる際には、ガス点検口2の位置に対してセンサ1の開口部4の位置にズレが生じる。本実施例のガス警報器Bでは、およそプラスマイナス12度の誤差が生じる。この12度は、例えば、ガス点検口2の高さにセンサ1の開口部4の高さを一致させる場合に、センサ1の角度を12度程度回転させると、両者の高さを一致させ得ることを意味する。よって、当該公差を考慮すれば、図4より、ガスの吹きかけ時間を2.5秒とし、センサ1の回転角度をマイナス20度に設定するのが好ましい。つまり、鳴動範囲が前記公差の2倍を吸収でき、ガスの吹きかけ時間が最も短い条件となるのが、上記条件となる。
【0041】
一方、ガス警報器Bの鳴動特性としては、点検用ガスGを吹きかけた後鳴動が止まるまでの時間が重要な要素となる。つまり、センサ本体1Aの内部に侵入した点検用ガスGが早く排出されるものほど、周囲のガス濃度の変動を敏感に検知できるセンサ1といえる。
そこで、上記で求めたセンサ1の角度条件の場合に、鳴動停止が確実に行なわれるか否かを実験した。実験は、点検用ガスGを吹きかけた後、100+2秒以内に鳴動が停止するか否かで評価した。ガスの吹きかけ時間は2.5秒乃至3.5秒とした。図4の条件に比べて吹きかけ時間がより長い3.5秒を含めたのは、ガスの吹きかけ量が過剰である場合でも確実に鳴動が停止するか否かを確認するためである。
【0042】
この結果を図5に示す。センサ1の角度が0度の場合には、何れも鳴動が停止しなかった。これは、センサ本体1Aの内部に侵入した点検用ガスGが排出され難いためと考えられる。これに対して、マイナス20度に設定したものは何れも鳴動が停止した。これは、二つの開口部4の高さが異なるため、センサ本体1Aの内部の点検用ガスGが排出され易くなったためと考えられる。
【0043】
尚、当該実施例の結果からみて、以下のようなガス検知部とすれば、簡単な構成でありながら、所期の性能を有するガス検知部を得ることができる。
即ち、図示は省略するが、例えば、被検知ガスである点検用のガスGを出入りさせる開口部4を一つ、センサ1の側面に備えておく。当該センサ1は筒状の形状とし、その軸心が水平姿勢となるよう配置する。前記開口部4に向けて点検用のガスGを吹きかけるガス点検口2を前記開口部4から離間した位置に設け、前記開口部4が、前記センサ1の軸心および前記ガス点検口2の何れに対しても下方となるよう前記センサ1を設ける。
【0044】
このように、ガス点検口2に対して開口部4を下方に設けることで、点検用のガスGをより確実に開口部4に到達させることができる。仮に、ガス点検口2と開口部4との離間距離が大きい場合であっても、センサ1の内部に点検用のガスを確実に導くことができ、点検用ガスGの使用量を少なくすることができる。
また、本構成では、前記開口部4の高さをセンサ1の軸心よりも低い位置に設けてある。よって、センサ1の内部に侵入した点検用ガスGが、その自重によってセンサ1の外部に排出され易く、点検時のセンサ鳴動時間を短縮することができる。この結果、点検作業を円滑に行うことができる。
尚、センサ1は略筒形状であれば何れの形状であってもよく、例えば、円筒形状や角筒形状など各種形状を採用可能である。
【0045】
(別実施形態)
上記実施形態では、開口部4を形成したセンサ本体1Aの回転角度を適宜設定して鳴動特性を適正化する例を示した。これに対し、前記開口部4の近傍に吹きかけた点検用ガスGの流れ状態を制御するガス整流手段Sを備えて、センサ本体1Aの内部への点検用ガスGの注入・排出を制御することもできる。
【0046】
例えば、図6に示すごとく、ガス点検口2のごく近傍に開口部4を位置させると共に、当該開口部4に点検用ガスGが侵入し過ぎるのを防止するために、遮蔽部材S1を設けるものであっても良い。このように、ガス点検口2と開口部4とを当初から近接させて設けることとすれば、組立誤差等を縮小することができる。よって、鳴動特性がより良好なガス警報器Bを提供することができる。
【0047】
また、これとは逆に、図7に示すごとく、吹きかけた点検用ガスGを集合させるための集合板S2を開口部4の周辺に設け、センサ本体1Aの内部に点検用ガスGが侵入し易い構成にすることもできる。本構成であれば、点検用ガスGの吹きかけ量が少ない場合でも、センサ1を確実に鳴動させることができる。また、ガス警報器Bの組立誤差が大きく、吹きかけたガスが拡散しがちな場合であっても、点検用ガスGをセンサ本体1Aの内部に確実に導くことができる。
【0048】
さらに、図8に示すごとく、前記二つの開口部4のうち、例えば、ガス点検口2から遠い側の開口部4の周囲に盛上り部S3を設けることもできる。このように構成すれば、当該開口部4の周囲を流れる点検用ガスGの流速が一時的に早くなって開口部4周辺の圧力が局所的に低下する。この結果、点検用ガスGをセンサ本体1Aの内部に積極的に引き込むことができ、センサ1の鳴動点検を迅速に行うことができる。
【0049】
以上のごとく、本構成のガス検知部Aであれば、用いるセンサ1の感度あるいは、用いる点検用ガスGの種類などに応じて、動作点検時におけるセンサ1の鳴動特性を適宜設定することができ、動作点検の容易なセンサ検知部およびガス警報器を構成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、主に家庭用の各種燃焼器具からのガス漏れを検出したときに警報を発するガス警報器等であって、その設置場所において簡易に点検することができるガス検知部Aおよびそのようなガス検知部Aを備えたガス警報器Bに適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明のガス検知部及びガス警報器を示す一部切欠斜視図
【図2】センサを示す斜視図
【図3】ガス点検口と開口部との位置関係を示す模式図
【図4】鳴動特性に係る実験結果を示す図
【図5】鳴動特性に係る実験結果を示す図
【図6】ガス整流手段の一例を示す模式図
【図7】別のガス整流手段の一例を示す模式図
【図8】別のガス整流手段の一例を示す模式図
【符号の説明】
【0052】
1 センサ
2 ガス点検口
3 ケース本体
4 開口部
G 点検用ガス
S ガス整流手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検知ガスを検出するセンサが、センサの内部と外部とに渡って前記被検知ガスの出入りを許容する少なくとも二つの開口部を、上下に位置を異ならせて備えると共に、
前記センサの表面であって、前記開口部のうち何れか一つに近傍する位置に前記被検知ガスを点検用に吹きかけるガス点検口を備えたガス検知部。
【請求項2】
前記センサの外形を円筒状に構成してある請求項1に記載のガス検知部。
【請求項3】
前記円筒状のセンサがその円筒の軸心を水平にした状態で配置してあり、同一の円周上に前記二つの開口部を設けると共に、点検用のガスを前記ガス点検口から前記円周上に向けて吹きかけるように構成してある請求項2に記載のガス検知部。
【請求項4】
被検知ガスを検出するセンサが、センサの内部と外部とに渡って前記被検知ガスの出入りを許容する少なくとも二つの開口部を備えると共に、
前記センサの表面に向けて点検用のガスを吹きかけるガス点検口を備え、
前記開口部の少なくとも一つに、当該開口部への前記点検用ガスの出入りを制御するガス整流手段を設けたガス検知部。
【請求項5】
被検知ガスを出入りさせる開口部を側面に備えた筒状のセンサを、その軸心が水平姿勢となるよう配置すると共に、
前記開口部に向けて点検用のガスを吹きかけるガス点検口を前記開口部から離間した位置に設け、
前記開口部が、前記センサの軸心および前記ガス点検口の何れに対しても下方となるよう前記センサを設けてあるガス検知部。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか一項に記載のガス検知部を備え、前記センサをケース本体の内部に備えると共に、前記ガス点検口を前記ケース本体に設けてあるガス警報器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−10552(P2006−10552A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−189488(P2004−189488)
【出願日】平成16年6月28日(2004.6.28)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【出願人】(000190301)新コスモス電機株式会社 (112)
【Fターム(参考)】