説明

ガス流量算出装置、ガス遮断装置およびガス流量算出方法

【課題】ガス遮断装置が保持している最大の変化量がガスの総使用量よりも大きくなり、ガス器具使用の利便性が低下することを回避する。
【解決手段】ガス遮断装置は、流量検出部11と、流量算出部12と、増減算出部13と、増減判定部14と、弁駆動部15と、弁16と、乖離補正部17とを備える。増減判定部14が乖離補正部17で判定した補正要求信号Gに基づき、一旦ガス遮断装置が保持している変化量Cを削除し、新たな変化量Cとしてガスの実流量を登録することで、ガス通路を閉栓するまでのガスの使用時間がありえない変化量Cに基づき短くなることを防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はガスの流量監視機能を向上させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ガス器具の使用状態を、供給されるガスの供給量や供給時間より判断し、監視するガス遮断装置が知られている(特許文献1参照)。図3は、ガス遮断装置の一例の構成を示す図であり、ガス遮断装置は流量検出部1と、流量算出部2と、増減算出部3と、増減判定部4と、弁駆動部5と、弁16とを備えている。
【0003】
流量検出部1は、ガス通路内を通過するガス流量に対応して流量信号aを出力し、流量算出部2が、流量検出部1の流量信号aを受け取ると流量bを算出する。次に増減算出部3は、流量算出部2の流量bを受け取ると、前回取得した流量bの値と今回取得した流量bとを比較し、変化がなければ何も実施しないで、変化がある場合に変化量(流量)cを出力する。
【0004】
次いで、増減判定部4は、増減算出部3が出力した変化量cが増加量であれば新たなガス器具の使用を開始したと判定し、変化量cを当該ガス器具の変化量として追加して保持する。一方、変化量cが減少量であれば、所定のガス器具の使用を停止したと判定し、保持している中で減少分の変化量cに最も近い変化量に相当するガス器具を削除する。そして、残りの複数保持しているガス器具を、変化量の大きなものから順番にならべ直し、ならべ直した後、保持しているうちで最大変化量のガス器具に基づき算出した使用時間を抽出するとともに計時を開始し、再び増減算出部3の変化量cを取得する前に使用時間が経過すると弁駆動信号dを出力する。一般的に、変化量(流量)が大きいガス器具ほど安全確保のため継続使用可能時間を短く設定されているため、最大変化量のガス器具に基づき使用時間を算出することにより、継続使用時間が短くなり、安全が確保される。
【0005】
さらに、弁駆動部5は、増減判定部4の弁駆動信号dを受け取ると閉栓信号eを出力し、弁16は、弁駆動部5の閉栓信号eを受け取るとガス通路を閉栓する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭61−289227号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の構成では、実際に使用されているガスの総使用量が減少したとき、ガス遮断装置が複数保持している中で、最も近い変化量を削除しているため、当該変化量を削除したときに、実際に使用しているガスの総使用量とガス遮断装置に複数保持している変化量の和に誤差が発生する事態が生じうる。
【0008】
図4は上記のような事象の発生を説明する図であり、実際に使用しているガスの総使用量である実流量のパターンと、ガス遮断装置に保持されたガスの保持変化量のパターンを示す。保持変化量のパターンは、各々起動時にガス流量の変化量(流量値)200L/h、100L/h、300L/hをもつ器具1,器具2、器具3が順次起動される際に、ガス遮断装置に保持されるQ0、Q1、Q2と、Q0からQ2の合計量であるΣQがどのように変化するかを示す。Q0、Q1、Q2には、所定の器具の使用開始時の変化量が保持され、所定以上の実流量の変化がなければ保持された値は書き換えられない。また、Q0、Q1、Q2の順番で、変化量の大きな器具が保持される。
【0009】
本例では、図4の実流量の変化パターンに示すように、どの器具も起動していない(1)の時点の後、(2)の時点で器具1が起動し、(3)の時点で器具1に加え器具2が起動し、(4)の時点で器具1、2に加え器具3が順次起動している。その後、(5)の時点で実流量に変化が生じ、合計流量が600L/hから490L/hへ減少している(−110L/h)。ここでの実流量の変化がどの器具により生じたのかは不明である。
【0010】
このとき、ガス遮断装置の増減判定部4は、変化量が減少量のため、所定のガス器具の使用を停止したと判定し、保持している中で減少分の変化量に最も近い変化量に相当する器具を削除する。ここでは変化量が−110L/hのため、増減判定部4は、誤差10L/hが生じているにもかかわらず、変化量100L/hとして保持されている器具2を削除する。
【0011】
上記のような誤差が生じさせる原因として次のような理由が考えられる。すなわち、(5)の時点で、ユーザが、器具1の使用流量を200L/hから90L/hへと110L/h分絞り込んだのが事実であるとする。このような場合にも、増減判定部4は110L/hの減少変化量をガス器具1の絞込みとは判断せず、保持している「器2」の変化量の削除と判定してしまうことがある。特に器具1の制御等により、ガス流量の絞込みの速度が極めて緩やかであるような場合、増減判定部4はガス流量の変化(量)を検知しないことがある。
【0012】
そして、保持された変化量と実流量の差が所定の量(例えば10L/h)以下であるような場合、増減判定部4は、当該差が単なる誤差として、保持された変化量と実流量が対応するものとして処理する(保持された変化量を削除する)ように設定されている。
【0013】
上記のような条件下では、増減判定部4は、器具1の使用流量の変化(絞込み)を器具2の停止と誤って判定し、器具2を削除してしまうことがある。
【0014】
その後、(6)の時点で実流量にさらに変化が生じ、合計流量が490L/hから190L/hへ減少している。変化量が−300L/hのため、増減判定部4は、変化量300L/hとして保持されている器具3を削除する。
【0015】
結果的に、(5)の時点で生じた誤差がそのまま残り、実流量が190L/hでありながら、最も大きな変化量としてQ0=200L/hが保持されているという矛盾状態(誤差)が生じている。
【0016】
すなわち、上述したように、ガスの実流量と、保持された合計の変化量との間に誤差が発生する場合がある(上記の500L/h−490L/h=10L/h)。そして、このような誤差が生じうる事態が何度も生ずると誤差の合計がどんどん大きくなり、実流量に比べ、ガス遮断装置に保持されている変化量の和が大きくなる。そして、このような状態の中では、保持された最大の変化量自体も実流量とかけ離れた大きな値となってしまうという矛盾状態が生じうる。
【0017】
上記のQ=190L/hとQ0=200L/hの間のような小さな差の場合は、大きな問題は生じないが、器具の起動後、上記(5)の時点におけるごとき緩やかな使用量の変化が何度も生じることはあり得る。このような変化の度に誤差が何度も生じ、積み重なることにより、さらに保持された最大の変化量自体と実流量の差に乖離が生じると、不都合が生じうる。すなわち、既に述べたように保安の見地から、保持された最大の変化量に基づき継続使用可能時間が設定されるため、実流量が極めて小さい(安定制御下など)にもかかわらず、増減判定部4は、保持された最大の変化量に基づき、継続使用時間を短く設定してしまう。最大の変化量の絶対値が大きいほど、保安の見地から継続使用時間は短く設定されるからである。そして、本来ガス通路を閉栓すべき時間よりも短い時間でガス通路が閉栓されてしまい、使い勝手が悪くなる事態が生じうる。
【0018】
本発明は、安全を確保しつつ、上述した事態を回避し、ガスの使用を快適ならしめる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、ガス通路内を通過するガス流量に対応して流量信号を出力する流量検出部と、前記流量信号に基づき、実流量を算出する流量算出部と、既に算出されている前記実流量と、新たに算出された前記実流量とを比較し、前記二つの実流量間の変化量を出力する増減算出部と、前記変化量が増加量であれば新たなガス器具の使用が開始されたと判定し、当該変化量を持つ新たなガス器具の流量値として保持し、前記変化量が減少量であれば所定のガス器具の使用が停止されたと判定し、既に保持している変化量の中で最も近い変化量を削除する増減判定部と、前記増減判定部によりガス器具が削除された場合、前記増減判定部が保持している最大の変化量と前記流量算出部で算出された前記実流量とを比較し、(i)前記最大の変化量が前記実流量よりも大きい場合、前記増減判定部が保持している総ての変化量を削除し、当該実流量を新たな変化量として保持する旨の補正要求信号を前記増減判定部に出力するとともに、(ii)前記最大の変化量が前記実流量よりも小さい場合、前記補正要求信号を出力しない乖離補正部と、を備えるガス流量算出装置を提供する。
【0020】
上記構成によれば、乖離補正部が、増減判定部が保持している最大の変化量と、所定の時点で流れているガスの総使用量である実流量とを比較し、当該最大の変化量が当該実流量より大きい場合、当該最大の変化量を、所定の時点で流れているガスの実流量に補正するようにしたものである。最大の変化量が実流量を上まわることは実際はありえない。したがって、実際に使われているガスの実流量と、ガス遮断装置が保持している最大の変化量との誤差を補正することが好ましい。
【0021】
また、ガスの実流量よりも増減判定部が保持している最大の変化量の方が大きくなることが防止され、ガスの供給が本来の時間より早めに停止されることが防止され、ガス使用の利便性も確保されることとなる。
【0022】
また、上記ガス流量算出装置と、弁駆動部と、弁とを備えるガス遮断装置が本発明により提供され、前記増減判定部は、保持している変化量の中で、最大の変化量に基づき使用時間を抽出し、前記増減算出部の前記変化量を取得する前に前記使用時間が経過すると弁駆動信号を出力し、前記弁駆動部は、前記弁駆動信号を受け取ると閉栓信号を出力し、前記弁は、前記閉栓信号を受け取るとガス通路を閉栓する。
【0023】
さらに、コンピュータが実行するガス流量算出方法であって、ガス通路内を通過するガス流量に対応して流量信号を出力する手順と、前記流量信号に基づき、実流量を算出する手順と、既に算出されている前記実流量と、新たに算出された前記実流量とを比較し、前記二つの実流量間の変化量を出力する手順と、前記変化量が増加量であれば新たなガス器具の使用が開始されたと判定し、当該変化量を持つ新たなガス器具の流量値して保持する手順と、前記変化量が減少量であれば所定のガス器具の使用が停止されたと判定し、既に保持している変化量の中で最も近い変化量を削除する手順と、前記ガス器具が削除された場合、前記増減判定部が保持している最大の変化量と前記流量算出部で算出された前記実流量とを比較し、(i)前記最大の変化量が前記実流量よりも大きい場合、前記増減判定部が保持している総ての変化量を削除し、当該実流量を新たな変化量として保持する旨の補正要求信号を出力するととともに、(ii)前記最大の変化量が前記実流量よりも小さい場合、前記補正要求信号を出力しない手順と、を含むガス流量算出方法も本発明に含まれる。また、本方法をコンピュータに実行させるためのプログラムも本発明に含まれる。
【発明の効果】
【0024】
実際に使われているガスの実流量とガス遮断装置が保持している変化量とに乖離が生じた場合、複数器具を使用している場合に、本来の使用可能な時間よりも短縮され、使用に不便が生ずる可能性がある。本発明によれば、安全を確保するとともに、継続使用可能時間の短縮が防止され、利便性と安全性の両立を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施の形態1におけるガス遮断装置の機能ブロック図
【図2】ガスの実際の使用量である実流量のパターンと、ガス遮断装置が保持している変化量(保持変化量)を表した図
【図3】従来のガス遮断装置の機能ブロック図
【図4】従来の装置におけるガスの実際の使用量である実流量のパターンと、ガス遮断装置が保持している変化量(保持変化量)を表した図
【発明を実施するための形態】
【0026】
第1の発明は、ガス通路内を通過するガス流量に対応して流量信号を出力する流量検出部と、前記流量信号に基づき、実流量を算出する流量算出部と、既に算出されている前記実流量と、新たに算出された前記実流量とを比較し、前記二つの実流量間の変化量を出力する増減算出部と、前記変化量が増加量であれば新たなガス器具の使用が開始されたと判定し、当該変化量を持つ新たなガス器具の流量値として保持し、前記変化量が減少量であれば所定のガス器具の使用が停止されたと判定し、既に保持している変化量の中で最も近い変化量を削除する増減判定部と、前記増減判定部によりガス器具が削除された場合、前記増減判定部が保持している最大の変化量と前記流量算出部で算出された前記実流量とを比較し、(i)前記最大の変化量が前記実流量よりも大きい場合、前記増減判定部が保持している総ての変化量を削除し、当該実流量を新たな変化量として保持する旨の補正要求信号を前記増減判定部に出力するとともに、(ii)前記最大の変化量が前記実流量よりも小さい場合、前記補正要求信号を出力しない乖離補正部と、を備えるガス流量算出装置を提供する。
【0027】
第2の発明によれば、上記ガス流量算出装置と、弁駆動部と、弁とを備えるガス遮断装置が本発明により提供され、前記増減判定部は、保持している変化量の中で、最大の変化量に基づき使用時間を抽出し、前記増減算出部の前記変化量を取得する前に前記使用時間が経過すると弁駆動信号を出力し、前記弁駆動部は、前記弁駆動信号を受け取ると閉栓信号を出力し、前記弁は、前記閉栓信号を受け取るとガス通路を閉栓する。
【0028】
第3の発明は、コンピュータが実行するガス流量算出方法であって、ガス通路内を通過するガス流量に対応して流量信号を出力する手順と、前記流量信号に基づき、実流量を算出する手順と、既に算出されている前記実流量と、新たに算出された前記実流量とを比較し、前記二つの実流量間の変化量を出力する手順と、前記変化量が増加量であれば新たなガス器具の使用が開始されたと判定し、当該変化量を持つ新たなガス器具の流量値として保持する手順と、前記変化量が減少量であれば所定のガス器具の使用が停止されたと判定し、既に保持している変化量の中で最も近い変化量を削除する手順と、前記ガス器具が削除された場合、前記増減判定部が保持している最大の変化量と前記流量算出部で算出された前記実流量とを比較し、(i)前記最大の変化量が前記実流量よりも大きい場合、前記増減判定部が保持している総ての変化量を削除し、当該実流量を新たな変化量として保持する旨の補正要求信号を出力するとともに、(ii)前記最大の変化量が前記実流量よりも小さい場合、前記補正要求信号を出力しない手順と、を含むガス流量算出方法も本発明に含まれる。
【0029】
第4の発明は、上記方法をコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【0030】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0031】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1におけるガス遮断装置の構成を示す。ガス遮断装置は、流量検出部11と、流量算出部12と、増減算出部13と、増減判定部14と、弁駆動部15と、弁16と、乖離補正部17とを備える。少なくとも流量検出部11と、流量算出部12と、増減算出部13と、増減判定部14と、乖離補正部17とによって、ガス流量を算出するガス流量算出装置が構成される。
【0032】
流量検出部11は、ガス通路内を通過するガス流量を検出し、当該ガス流量に対応する流量信号Aを出力する。流量検出部11としては種々の形式のセンサ、装置を使用することができるが、例えば、ガス通路内に対向した超音波センサを取り付け超音波の伝播時間の違いからガス流量を検知することができる。また、ガス通路内にガスが流れる経路を作成し、ガスが経路を流れるときに発生する振動からガス流量を検知することができる。また、ガスの通過量を計量し、一定の通過量に達する毎にガス流量として検出するようにしてもよい。
【0033】
流量算出部12は、流量検出部11の流量信号Aを受け取り、実流量Bを算出する。例えば流量算出部12は、予め保持している流量信号Aに対する重み付けを持たせた係数を流量信号Aに掛けあわせ、実流量Bを算出することができる。
【0034】
増減算出部13は、流量算出部12の実流量Bを受け取り、前回取得した実流量B(既に算出されたものであれば得に限定はされない)の値と今回取得した実流量B(新たに算出された実流量)とを比較し、変化がなければ何も実施せず、変化が生じれば(例えば、所定の差分値以上で判定しても良いし、変化率で判定しても同様の効果が得られる)、ガス流量の変化量(流量値)Cを出力する。
【0035】
増減判定部14は、増減算出部13が出力した変化量Cが増加量(+)であれば、新たなガス器具の使用が開始されたと判定して、変化量Cを流量値として追加して保持する。一方、変化量Cが減少量(−)であれば、所定のガス器具の使用が停止されたとして、保持している変化量の中で、最も変化量Cに近い変化量を削除する。増減判定部14は、複数の変化量Cを保持するとともに、減少処理済信号Fを出力する。
【0036】
また、増減判定部14は、減少処理済信号Fの出力後に、乖離補正部17からの補正要求信号Gを受け取ると、複数保持している変化量を全て削除し、流量算出部12の流量Bを新たな変化量Cとして保持する。さらに増減判定部14は、補正要求信号Gの有無に係わらず、複数保持している変化量Cを大きなものから順番にならべ直し、ならべ直した後に保持している最大の変化量Cに対応したガス器具の継続使用時間を抽出する。さらに増減判定部14は、継続使用時間の計時を開始し、再び増減算出部13の変化量Cを取得する前に使用時間が経過すると、弁駆動信号Dを出力する。
【0037】
乖離補正部17は、増減判定部14の減少処理済信号Fを受け取ると、増減判定部14が保持している最大の変化量Cと流量算出部12の実流量Bとを比較し、最大の変化量Cが流量Bよりも大きければ補正要求信号Gを出力し、最大の変化量Cが流量Bよりも小さければ補正要求信号Gを出力しない。
【0038】
図2は本発明が適用された場合における、実際に使用しているガスの総使用量の変化パターンを示す実流量(使用流量)Bのパターンと、ガス遮断装置に保持されたガスの保持変化量のパターンを示す。保持変化量のパターンは、各々起動時にガス流量の変化量200L/h、100L/h、300L/hをもつ器具1,器具2、器具3が順次起動される際に、ガス遮断装置に保持されるQ0、Q1、Q2と、Q0からQ2の合計量であるΣQがどのように変化するかを示す。Q0、Q1、Q2には、所定の器具の使用開始時の変化量(流量値)が保持され、所定以上の実流量Bの変化がなければ保持された値は書き換えられない。また、Q0、Q1、Q2の順番で、変化量の大きな器具が保持される(Q0>Q1>Q2)。
【0039】
本例では、図2の実流量Bの変化パターンに示すように、どの器具も起動していない(1)の時点の後、(2)の時点で器具1が起動し、(3)の時点で器具1に加え器具2が起動し、(4)の時点で器具1、2に加え器具3が順次起動している。
【0040】
(1)から(4)までのガス流量の増加期間においては、(2)の時点で器具1が使用開始されるので、ガス遮断装置に「器1」が、Q0=200L/hとして登録、保持される。(3)の時点で器具1に加え、器具2が使用開始されるので、「器1」のQ1=100L/hに加え、ガス遮断装置に「器2」がQ1=100L/hとして登録される。さらに、(4)の時点では、器具3が使用開始されるので、「器1」のQ1=200L/h、「器2」のQ2=200L/hに加え、ガス遮断装置に「器3」のQ0=300L/hとして登録される。この時点でのガスの実流量Bは600L/hであり、ガス遮断装置が保持している保持変化量の総和も600L/h(=200L/h+100L/h+300L/h)であり、両者の間に乖離(誤差)は発生していない。
【0041】
そして、本例では(5)の時点でガスユーザが、器具1のガス使用量を200L/hから90L/hへ、−110L/h分絞り込んでいる。すなわち、実流量Bが600L/hから490L/hへ減少している。
【0042】
このとき、ガス遮断装置は、この110L/hの減少した変化量をガス器具1の絞込みとは判断せず、保持している変化量のうち110L/hに最も近い「器2」の変化量が削除されるべきと判断し、Q2に登録された100L/hを削除する。一般的にガス遮断装置は、実際の変化量と、保持された変化量との差が所定値以下(例えば10L/h以下)であれば、当該保持された変化量の器具が停止したと判定するからである。既に説明したように、このような誤った判断がされる理由として、器具1の制御等により、ガス流量の絞込みの速度が極めて緩やかであるような場合、増減判定部4はガス流量の変化(量)を検知しないことがあるからである。
【0043】
このため、ガスの実流量Bは490L/hであるのに対し、ガス遮断装置が保持している変化量の総和は「器1」の200L/hと「器3」の300L/hの和であるΣQ=500L/hとなり、乖離(誤差)が発生する。
【0044】
一般的には、保安の見地から、保持された最大の変化量に基づき継続使用可能時間が設定され、最大の変化量が大きいほど、継続使用可能時間が短く設定される。ガスの総使用量が490L/hの場合のガス通路を閉栓するまでの時間(継続使用可能時間)が、例えば300分と設定される場合、「器1」の200L/hの流量や、「器3」の300L/hの流量に対する継続使用可能時間は、例えば450分に設定される。ガス遮断装置は、(5)の時点では「器1」の保持変化量を是正すべきか、「器3」の保持変化量を是正すべきか判断することができない。
【0045】
その後、(6)の時点でガスユーザが器具3の使用を停止した場合、ガス遮断装置が−300L/hの変化量を認識し、「器3」の変化量が、実流量Bの変化量に最も近いとして、器具3削除すると予想される。
【0046】
このため、結果としてガスの実流量Bは190L/hであるのに対し、ガス遮断装置が保持している変化量の総和ΣQ(本例では「器1」しか残っていないのでQ0でもよい)は、「器1」の200L/hとなり、ガスの実流量Bよりも保持された「器1」の変化量の方が大きな流量となって残ってしまうこととなる。
【0047】
ガス遮断装置が保持している変化量が、本来、ガスの使用上採りえない値(保持している変化量200L/hがガスの実流量B190L/hよりも大きくなること)であるにも拘らず、継続使用可能時間が、ガスの実流量Bではなく、採りえない値である「器1」の保持変化量である200L/hに基づいて決定されることとなる。
【0048】
記述したように、一般的に保安の見地から、流量が大きいほど、継続使用可能時間が短く設定される。ガスの実流量Bの190L/hに基づいてではなく、「器1」の保持変化量である200L/hの方が大きいので、当該200L/hに基づいて継続使用可能時間が決定されることとなる。すなわち、実流量Bの190L/hの継続使用可能時間(例えば600分)よりも、採りえない変化量であって、より短い継続使用可能時間(450分)をもつ保持変化量である200L/hが決定されることとなる。採りえない変化量に基づき、継続使用可能時間が短くなるという不合理な事態が生じるとともに、早目にガス通路が閉栓される事態が生じ、ガス器具の使用の利便性が低下してしまう結果となる。
【0049】
本実施形態では、上述した事態の発生を是正するもので、上記(6)の時点で、乖離補正部17が、ガス遮断装置が保持している変化量を実流量Bに書き換えることとしている。
【0050】
すなわち、乖離補正部17は、(5)、(6)の時点で、増減判定部14の減少処理済信号Fを受け取ると、増減判定部14が保持している最大の変化量Cと、流量算出部12の実流量Bとを比較する。(5)の時点では、最大の変化量C(300L/h)は実流量B(490L/h)より小さいので、乖離補正部17は補正要求信号Gを出力しない。
【0051】
一方、(6)の時点では、最大の変化量C(200L/h)が、実流量B(190L/h)よりも大きいので、乖離補正部17は補正要求信号Gを増減判定部14に出力する。そして、当該補正要求信号Gを受信した増減判定部14は、保持している変化量Cの200L/h(Q0、ΣQ両方とも)を削除し、実流量の190L/hに書き換える。したがって、新たな変化量190L/hをもつ新器具が、ガス遮断装置に保持される。実流量が、最大の変化量Cとして保持されることにより、本来の継続使用可能時間まで、ガス器具を使用することができることとなり、本来の保安とともに、ガス使用の利便性も確保されることとなる。
【0052】
弁駆動部15は、増減判定部14の弁駆動信号Dを受け取ると閉栓信号Eを出力する。弁16は、弁駆動部15の閉栓信号Eを受け取るとガス通路を閉栓する。
【0053】
以上のように、本実施の形態においては乖離補正部17により、実際のガスの実流量よりも増減判定部14が保持している最大の変化量Cの方が大きくなることが防止されることとなり、ガスの供給が本来の時間より早めに停止されることが防止され、ガス使用の利便性も確保されることとなる。
【0054】
なお、本発明は上記の実施形態において示されたものに限定されるものではなく、明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者が変更、応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
以上のように、本発明にかかるガス遮断装置は、実際のガスの総使用量とガス遮断装置が保持している最大の変化量との間に乖離が発生することを是正することが可能となり、安全性を確保するとともに、利便性を向上させることもできる。
【符号の説明】
【0056】
11 流量検出部
12 流量算出部
13 増減算出部
14 増減判定部
15 弁駆動部
16 弁
17 乖離補正部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス通路内を通過するガス流量に対応して流量信号を出力する流量検出部と、
前記流量信号に基づき、実流量を算出する流量算出部と、
既に算出されている前記実流量と、新たに算出された前記実流量とを比較し、前記二つの実流量間の変化量を出力する増減算出部と、
前記変化量が増加量であれば新たなガス器具の使用が開始されたと判定し、当該変化量を持つ新たなガス器具の流量値として保持し、前記変化量が減少量であれば所定のガス器具の使用が停止されたと判定し、既に保持している変化量の中で最も近い変化量を削除する増減判定部と、
前記増減判定部によりガス器具が削除された場合、前記増減判定部が保持している最大の変化量と前記流量算出部で算出された前記実流量とを比較し、(i)前記最大の変化量が前記実流量よりも大きい場合、前記増減判定部が保持している総ての変化量を削除し、当該実流量を新たな変化量として保持する旨の補正要求信号を前記増減判定部に出力するとともに、(ii)前記最大の変化量が前記実流量よりも小さい場合、前記補正要求信号を出力しない乖離補正部と、
を備えるガス流量算出装置。
【請求項2】
請求項1記載のガス流量算出装置と、弁駆動部と、弁とを備えるガス遮断装置であって、
前記増減判定部は、保持している変化量の中で、最大の変化量に基づき使用時間を抽出し、前記増減算出部の前記変化量を取得する前に前記使用時間が経過すると弁駆動信号を出力し、
前記弁駆動部は、前記弁駆動信号を受け取ると閉栓信号を出力し、
前記弁は、前記閉栓信号を受け取るとガス通路を閉栓する、ガス遮断装置。
【請求項3】
コンピュータが実行するガス流量算出方法であって、
ガス通路内を通過するガス流量に対応して流量信号を出力する手順と、
前記流量信号に基づき、実流量を算出する手順と、
既に算出されている前記実流量と、新たに算出された前記実流量とを比較し、前記二つの実流量間の変化量を出力する手順と、
前記変化量が増加量であれば新たなガス器具の使用が開始されたと判定し、当該変化量を持つ新たなガス器具の流量値として保持する手順と、
前記変化量が減少量であれば所定のガス器具の使用が停止されたと判定し、既に保持している変化量の中で最も近い変化量を削除する手順と、
前記ガス器具が削除された場合、前記増減判定部が保持している最大の変化量と前記流量算出部で算出された前記実流量とを比較し、(i)前記最大の変化量が前記実流量よりも大きい場合、前記増減判定部が保持している総ての変化量を削除し、当該実流量を新たな変化量として保持する旨の補正要求信号を出力するとともに、(ii)前記最大の変化量が前記実流量よりも小さい場合、前記補正要求信号を出力しない手順と、
を含むガス流量算出方法。
【請求項4】
請求項3記載の方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−27494(P2011−27494A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−171991(P2009−171991)
【出願日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【出願人】(000220262)東京瓦斯株式会社 (1,166)
【出願人】(000221834)東邦瓦斯株式会社 (440)
【Fターム(参考)】