説明

ガス漏れ検出装置とそれを用いたガス充填装置

【課題】簡単な構造でガス充填作業中のガス漏れを安全に検出することができるガス漏れ検出装置とそれを用いたガス充填装置を提供することを目的とする。
【解決手段】ガス充填装置1は、ガス容器4の充填口にノズル8を嵌挿させて液化ガスを供給するガス供給手段9と、ガス漏れ検出装置10と、エア吹付け手段11と、バルブ開閉手段12とが一体的に装備されるとともにレール部材13に昇降自在に係合される支持プレート14と、ガス容器4の正立状に保持する芯出し機構6と、支柱15の上部に設置され、耐圧防爆構造に形成された制御ボックス16と、報知部17と、制御部25と、制御部25の電源部と、フレキシブルチューブ7aと、ガス供給口48に接続されるとともに電磁バルブ49が介装されたフレキシブルチューブ7bとを備え、芯出し機構6及び支持プレート14は第1及び第2の昇降駆動手段によってそれぞれ昇降自在に構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LPG(Liquefied Petroleum Gas)等の液化ガスをガス容器に充填するガス充填装置に係り、特にガス充填作業中に発生したガス漏れを検出するガス漏れ検出装置とそれを用いたガス充填装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液化ガスをガス容器に充填する作業は、安全かつ確実に行う必要がある。そこで、自動装置が用いられることが多く、従来から、いろいろな自動装置が提案されている。代表的なものとしては、ガス容器の充填口にノズルを嵌挿装着して液化ガスを自動供給する機構とガス容器のバルブを自動開閉する機構を備えたガス充填機を、ガス容器の搬入ライン及び搬出ラインを連接したターンテーブル上に複数配置し、ガス容器の搬入、液化ガスの充填、ガス容器の搬出という一連の工程を自動で行うよう構成されたガス充填装置がよく知られている。
しかしながら、従来のガス充填装置においては、ガス充填完了後にガス容器に対して手作業で石鹸水などを塗布してガス漏れを目視で検査する必要があり、作業能率が低下するという課題があった。
【0003】
このような課題に対処するため、いくつかの発明や考案が開示されている。例えば特許文献1には、「ガス充填器」という名称で、ガス充填中におけるガス漏れの自動的検査が可能なガス充填器に関する発明が開示されている。
【0004】
以下、図6を参照しながら、特許文献1に開示された発明について説明する。
図6は従来技術に係るガス充填器の使用状態を示す側面図である。
図6に示すように、従来技術に係る「ガス充填器」は、充填口B1、充填ノズル101、ノズル本体102先端部分の近傍に配置された第1ガス漏れ検出器103を用いて、パッキン104等の摩耗によって充填ノズル101と充填口B1あるいは充填ノズル101とノズル本体102先端との間に生じた隙間からガス充填中に漏洩した微量のガスを検出し、定量充填後はガス容器Bの開閉バルブB2をカバー体(図示せず)で囲繞するとともにカバー体の内部に設けた第2ガス漏れ検出手段(図示せず)によって、ガス漏れ検査を行って適宜な報知手段により報知することを特徴とするものである。
このような構造においては、ガス充填中の充填ノズル101からのガス漏れ検査及びガス充填終了後の充填口B1からのガス漏れ検査を連続して自動的に行うことができる。
【0005】
また、特許文献2には「液化高圧ガス容器のガス漏れ検出装置」という名称で、液化高圧ガスをガス容器に定量充填した後に開閉バルブ周辺の異常や微量のガス漏れの発生を人手を要さずに確実に検査することができるガス漏れ検出装置に関する発明が開示されている。
特許文献2に開示された「液化高圧ガス容器のガス漏れ検出装置」は、ガス容器を保持するクランプ機構と、ガス容器の開閉バルブを気密状に覆うテストカップと、テストカップ内の異常圧を検出する異常検出部と、両端開口が上端となるよう設置され内部に所定量の液体を収容した正面視略U字状の管と、略U字状管内の液体が同管の他端開放部方向に移動したことを検出する水位検出手段と、テストカップの内部と略U字状管の一端開口とを連通するホースと、異常検出部と略U字状管との間に介設されるとともに異常検出部による異常検出がなかった時にテストカップと略U字状管を連通させる第1制御弁とを備え、異常検出部及び水位検出手段は開閉バルブをテストカップで覆った状態でガス漏れを検出することを特徴とするものである。
このような構造においては、開閉バルブの異常などに起因する大量のガス漏れを異常検出部によって検出し、それ以外の微量のガス漏れを略U字状管の水位検出手段によって検出することができる。
【0006】
さらに、特許文献3には「防爆式ガスリークモニタ」という名称で、爆発性ガスに影響を与えることなく安全にガス漏れを検出できる実用的な防爆式ガスリークモニタに関する発明が開示されている。
特許文献3に開示された「防爆式ガスリークモニタ」は、吸収されたレーザ光の波長を分析して漏洩したガスを検出するガスリークモニタにおいて、爆発性ガスを監視する防爆領域の外側にレーザ光の光源及び受光器を配置し、この光源から出力されたレーザ光を上記受光器へ向けて反射する反射部品を防爆領域の反対側壁面に配置したことを特徴とするものである。
このような構造においては、レーザ光の光源及び受光器が防爆領域の外側に配置されているので、爆発性ガスに影響を与えることなく、安全にガス漏れを検出することができる。
【特許文献1】特開平9−166293号公報
【特許文献2】特開平9−60800号公報
【特許文献3】特開平6−102132号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の従来技術である特許文献1に開示された発明は、ガス充填作業時及びガス充填作業完了後に使用するガス漏れ検出手段がそれぞれ異なるため、ガス漏れ検出部の構造が複雑になり、装置が高価になるという課題があった。
【0008】
また、特許文献2に開示された発明においては、ガスを検知する際に充填ノズルを容器バルブから離間させる必要があるため、ガス充填作業中のガス漏れを検知できないという課題があった。
【0009】
さらに、特許文献3に開示された発明においては、ガス漏れを安全に検出することができるものの、ガス容器のガス漏れを検出する場合にはガス容器自体を防爆領域内に設置する必要があるため、装置が大型で複雑な構造となり、高価になるという課題があった。
【0010】
本発明はかかる従来の事情に対処してなされたものであり、簡単な構造でガス充填作業中のガス漏れを安全に検出することができるガス漏れ検出装置とそれを用いたガス充填装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明であるガス漏れ検出装置は、ガス漏れを検知して検知信号を発する検知部と、この検知信号を受けて所望の装置に対して指令信号を出す制御部とを備え、検知部は、ガス漏れを検出しようとする領域に光路を形成し、この光路の遮断に伴う光量変化を検知して電気信号を発生させる投受光部と、この電気信号を処理して検知信号を発する信号処理部とから構成され、制御部を耐圧防爆構造に形成される容器に収納したことを特徴とするものである。
上記構成のガス漏れ検出装置においては、制御部を耐圧防爆構造を形成する容器に収納しているため、漏洩したガスに容器内部で電気火花等が引火した場合でも、周囲のガスに引火波及しないという作用を有する。
【0012】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載のガス漏れ検出装置において、検知部は光ファイバを利用した光電センサであって、投受光部は光ファイバユニットと、投光素子と、受光素子とを備え、信号処理部を構成する信号処理回路と、投光素子及び受光素子とを耐圧防爆構造に形成される容器に収納したことを特徴とするものである。
上記構成のガス漏れ検出装置においては、投受光部に光ファイバを用いるため、ガス漏れを検出する際に温度、湿度、振動、衝撃、水、電気ノイズなどの影響を受け難いという作用を有する。また、検出対象の近傍まで光ファイバで誘導できるため、投受光部及び信号処理部の取付場所に対する制限が少ない。さらに、信号処理回路と投光素子及び受光素子とを耐圧防爆構造に形成される容器に収納しているため、請求項1記載の発明と同様の作用を有する。
【0013】
請求項3記載のガス充填装置は、バルブコックの充填口に嵌挿させたノズルを介して液化ガスをガス容器に充填するガス充填装置において、充填口近傍に配設される請求項1又は請求項2に記載のガス漏れ検出装置と、制御部の指令信号に従ってガス漏れを報知する報知手段とを備えたことを特徴とするものである。
上記構成のガス充填装置においては、狭い場所への設置が可能な小型の検知部を有する光電センサを用いるため、検知部の取付け箇所の構造が単純になるという作用を有する。また、ガス充填作業中にガス漏れが検知されると、異常事態の発生が報知されるという作用を有する。
【0014】
請求項4記載の発明は、請求項3記載のガス充填装置において、充填口を開閉するバルブ開閉手段と、ガス容器に液化ガスを供給するガス供給手段と、このガス供給手段にガスを充填するガス供給路と、このガス供給路の途中に介装された電磁バルブとを備え、ガス充填作業中にガス漏れ検出装置がガス漏れを検知すると、制御部の指令信号に従って、バルブ開閉手段は充填口を閉栓し、及び/又は電磁バルブはガス供給路を遮断することを特徴とするものである。
上記構成のガス充填装置においては、請求項3に記載の発明の作用に加えて、ガス充填作業中にガス漏れが検知されると、ガス容器へのガス充填作業が中止されるという作用を有する。
【0015】
請求項5記載の発明は、請求項3又は請求項4に記載のガス充填装置において、エアを吹き付けて充填口の周囲に滞留している雰囲気を飛散させるエア吹付手段をバルブコック近傍に配設したことを特徴とするものである。
上記構成のガス充填装置においては、請求項3又は請求項4に記載された発明の作用に加えて、空気中の浮遊物や既に検知済みのガスを飛散させるという作用を有する。
【0016】
請求項6記載の発明は、請求項3乃至請求項5のいずれか1項に記載のガス充填装置において、検知部はガス容器の高さ方向に対して昇降自在に配設されるとともにバルブコックの軸を中心として回動自在に配設されたことを特徴とするものである。
上記構成のガス充填装置においては、請求項3乃至請求項5に記載の発明の作用に加えて、ガス容器の充填口以外の箇所からのガス漏れを検知するという作用を有する。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明の請求項1に記載のガス漏れ検出装置においては、可燃性ガス又は可燃性液体の蒸気が存在する環境下においても、安全に使用することができる。
【0018】
本発明の請求項2に記載のガス漏れ検出装置においては、請求項1に記載の発明と同様の効果を奏するとともに、高い精度でガス漏れを検出することが可能である。また、既存設備への追加・取り付けが容易であり、設備の改良に要する費用を安くすることができる。
【0019】
本発明の請求項3に記載のガス充填装置においては、小型化及びコストダウンが可能である。また、ガス充填作業中にガス漏れが発生した場合に、警報を発して作業者の注意を喚起することができるため、ガス充填作業の安全性が高まる。
【0020】
本発明の請求項4に記載のガス充填装置においては、請求項3に記載された発明の効果に加えて、ガス充填作業中にガス漏れが発生した場合に、ガス充填作業を中止することによってガス漏れの拡大を防ぐことができる。
【0021】
本発明の請求項5に記載のガス充填装置においては、請求項3又は請求項4に記載の発明の効果に加えて、ガス漏れ検出装置によるガス漏れ検出精度を高めることができる。
【0022】
本発明の請求項6に記載のガス充填装置によれば、ガス漏れ検出装置の数を増すことなく、充填口以外の箇所におけるガス漏れを検出できるため、装置の構造が簡単で小型なものとなる。また、検出対象箇所を連続的に変更しながらガス漏れ検査を行うことができるため、ガス漏れの発生箇所を容易に特定できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に、本発明の最良の実施の形態に係るガス漏れ検出装置とそれを用いたガス充填装置の実施例について説明する。
【実施例1】
【0024】
実施例1について図1乃至図3を用いて説明する(特に、請求項1乃至請求項3及び請求項5及び請求項6に対応)。
図1は本発明の実施の形態に係るガス充填装置の正面図である。
図1に示すように、ガス充填装置1は、ベース2上面の搬送ローラ3に載置されたガス容器4の軸芯をガス充填装置1に設定された基準芯Lに一致させるとともにガス容器4をアーム5によって正立状に保持する芯出し機構6と、ベース2に下端が支持されたレール部材13と、ベース2に立設された支柱15とを備えている。
【0025】
レール部材13には、支持プレート14及び芯出し機構6が昇降自在に係合されており、支持プレート14には、ガス供給手段9と、図2を用いて後述する光ファイバユニット23やアンプユニット24などからなる検知部26及び耐圧防爆構造の容器内に収納された制御部25とで構成されるガス漏れ検出装置10と、ガス容器4の充填口の周囲にエアを吹き付けるエア吹付け手段11と、ガス容器4の充填口を開閉するバルブ開閉手段12とが一体的に装備されている。さらに、支持プレート14及び芯出し機構6は、第1及び第2の昇降駆動手段(ともに図示せず)によってガス容器4のサイズに合わせてそれぞれ昇降するよう構成されている。
【0026】
ガス供給手段9は、ガス容器4の充填口にノズル8が接離するよう進退自在に装備されるとともにフレキシブルチューブ7aから送り込まれる液化ガスを充填口に嵌挿したノズル8を介してガス容器4に供給するものである。ガス供給手段9とエア吹付け手段11とバルブ開閉手段12はともに制御部25に電気的に接続されて、各々動作を制御されている。
【0027】
支柱15の上部には、耐圧防爆構造に形成された制御ボックス16が設置され、さらに、制御ボックス16の側面には報知部17とガス供給口48と図示しない電源部を有する制御部25が配置されている。また、ガス供給口48には、ガス充填装置1に外部から液化ガスを供給するフレキシブルチューブ7bが接続され、フレキシブルチューブ7bの途中には電磁バルブ49が介装されている。
【0028】
バルブ開閉手段12は支持プレート14の昇降によってガス容器4の頂部に設けられたハンドル(図示せず)に係合された爪部18を回転駆動手段19の駆動により基準芯Lを中心として正逆方向に駆動回転させてガス容器4の充填口の開閉を行う。
【0029】
ノズル8が装着されたスライドプレート20は支持プレート14の下面に固定されたフレーム21のレール(図示せず)に進退自在に係合され、ガス供給手段9は進退駆動手段22を駆動してスライドプレート20を前進又は後退させ、ノズル8をガス容器4の充填口に接離させる。
【0030】
光ファイバユニット23とエア吹付け手段11はガス容器4のサイズに合わせて支持プレート14が昇降した際に、ガス容器4の充填口近傍の所定の位置に配置される。
【0031】
報知部17はパイロットランプあるいはブザーによりガス漏れの発生を報知する。なお、報知部17はこの構造に限定されるものではなく、スピーカにより音声を発する構造としても良く、また、光、音声、振動又はその組合せたものを発生する構造とすることもできる。
【0032】
このように構成されたガス充填装置1においては、ガス充填作業中に図2で後述する検知部26がガス漏れを検知すると、制御部25の指令信号に従って報知部17がガス漏れを報知し、また、同様に、電磁バルブ49がフレキシブルチューブ7bによるガスの供給を遮断し、バルブ開閉手段12が充填口34を閉栓してガス充填作業を中止する。
【0033】
なお、ガス充填装置1は、図1に示す構造に限定されるものではなく、種々変形可能である。例えば、エア吹付け手段11を支持プレート14に装着せず、ワイヤー等により遊動自在に吊り下げた構造として、作業者が手作業でガス容器4の任意の箇所にエアを吹き付けても良い。さらに、制御部25を単独で耐圧防爆構造の容器に収納する代わりに、制御ボックス16の内部に収納する構造としても良い。また、制御部25に電源を供給する電源部を耐圧防爆構造の容器に収納した構造とすることもできる。なお、制御部25をガス漏れが発生する可能性のある場所から十分離れたところに設置する場合には、制御部25を耐圧防爆構造の容器に収納しなくとも良い。また、制御部25による集中制御に代えて、ガス供給手段9、ガス漏れ検出装置10、エア吹付け手段11及びバルブ開閉手段12のうちの少なくとも一つについて動作開始あるいは停止の切り替えを手動で行っても良い。
【0034】
次に、ガス漏れ検出装置10を構成する検知部について用いて説明する。本実施例における検知部は投光部及び受光部からなる投受光部と、信号処理部とを備えた光電センサである。投光部には光源(投光素子)として主にLED(発光ダイオード)が使用されており、受光部には受光素子として主にフォトトランジスタ、フォトダイオード、PSD(位置検出用フォトダイオード)が使用されている。光学系には屈折率が異なる2種類の材料、すなわち、芯材と、それを取り囲む薄いさや材とから構成される光ファイバを使用する。
図2は本発明の実施の形態に係るガス充填装置における検知部の構成図である。
図2に示すように、投光部及び受光部はそれぞれ光ファイバユニット23a,23b、投光素子27、受光素子28であり、信号処理部は信号処理回路29であり、投光素子27、受光素子28及び信号処理回路29を内蔵するアンプユニット24は耐圧防爆構造に形成される防爆容器30に収納されており、投光素子27及び受光素子28には光ファイバユニット23a,23bがそれぞれ接続されている。
このような構造の検知部26においては、光ファイバユニット23aの発光端部50から光ファイバユニット23bの受光端部51に向かって形成される光路52が漏洩したガスにより遮断されると、受光素子28が受ける光量に従って発生する電気信号が変化する。そして、この電気信号を信号処理回路29が処理してガス漏れを検知したことを示す検知信号を発する。
【0035】
なお、検知部26には図2に示す光ファイバ形に限らず、他の光電センサを用いることもできる。例えば、投光部、受光部、信号処理部、電源部を投光部などと一緒に内蔵した電源一体型の光電センサを用いても良い。また、耐圧防爆構造の容器に収納する代わりにアンプユニット24を、制御ボックス16の内部に収納しても良い。さらに、検知部26に電源を供給する図示しない電源部を耐圧防爆構造の容器に収納しても良い。なお、アンプユニット24をガス漏れが発生する可能性のある場所から十分離れたところに設置する場合には、アンプユニット24を耐圧防爆構造の容器に収納しない構造とすることもできる。
【0036】
検知部26及びエア吹付け手段11の配置について図3を用いて説明する。
図3(a)及び(b)は本発明の実施の形態に係るガス充填装置における検知部とエア吹付け手段の配置を示す正面図及び側面図である。なお、図3(a)及び(b)は前述したガス容器4のサイズに合わせて行われる支持プレート14の高さ方向の位置調節が完了した状態を示している。
図3(a)及び(b)において、ガス容器4は、容器本体31の頂部にバルブコック32を備えたガスボンベであり、バルブコック32は略円筒状のバルブ本体33の周面に充填口34及び安全弁35が各々背向状に突設され、バルブ本体33の上端には充填口34を開閉するハンドル36が進退可能に螺着されている。なお、バルブ本体33とハンドル36はガス容器4の軸芯に対して同心状に配設されている。
【0037】
図3(a)及び(b)に示すように、検知部26は光ファイバユニット23aの発光端部50から光ファイバユニット23bの受光端部51に向かう光路52が充填口34によって遮られないように配置される。なお、ガス漏れの検出精度を高めるため、発光端部50及び受光端部51は光路52が充填口34と干渉しない範囲でできるだけ充填口34に近接させて配置することが望ましい。また、エア吹付け手段11は、充填口34若しくは光路52に近接させて配置する。
【0038】
次に、ガス供給手段9及びエア吹付け手段11の配置方法の変形例について説明する。図1で説明したガス供給手段9は、ノズル8の先端部周辺に輪状パッキンが嵌着され、ノズル8をガス容器4の充填口34に嵌挿した際には充填口34の内面にこの輪状パッキンが密着して隙間を生じさせないように構成されている。長期の使用による輪状パッキンの磨耗や充填口34に対するノズル8の嵌合ずれに起因するガス充填中のガス漏れは、図3(a)及び(b)を用いて既に説明したようにガス漏れ検出装置10の発光端部50及び受光端部51を充填口34の近傍に配置することによって検知することが可能である。なお、発光端部50及び受光端部51は充填口34の近傍だけでなくバルブコック32の周囲や上部にも配置することが望ましい。この場合、ガス充填後のハンドル36の締め付け不足などによるガス漏れも検知することが可能である。
ここで、検知部26を回転駆動手段により基準芯Lを中心として回動自在に配設することによれば、ガス漏れ検出装置10の数を増やすことなく、バルブコック32の周囲におけるガス漏れの有無を検知することが可能である。この回転駆動手段はバルブ開閉手段12の回転駆動手段19を利用することができる。
【0039】
また、図1を用いて既に説明した第1の進退駆動手段を駆動してガス漏れ検出装置10を装着した支持プレート14を昇降させることによれば、バルブコック32の上部におけるガス漏れの有無の検知が可能である。回転駆動手段19や上記第1の進退駆動手段を利用する場合、ガス充填後にのみ検知部26の位置を移動させることができるが、回転駆動手段又は進退駆動手段を別に設けることによれば、ガス充填中においても検知部26の位置を移動させることが可能となる。なお、この場合、検知部26全体を移動させる必要はなく、例えば、アンプユニット24が支持プレート14あるいは他の箇所に固定された状態で、光ファイバユニット23のみを移動させる構造としても良い。
【0040】
さらに、搬送ローラ3にボール状のローラを使用してガス容器4を基準芯Lを中心として回転自在な構造としても良い。この場合、ガス充填後のバルブコック32の周囲のガス漏れ検知をする際に、検知部26を回転させる必要がない。
なお、エア吹付け手段11は上記検知部26の配置方法と同じ方法により、充填口34若しくは光路52に近接させて配置する。
【0041】
以上説明したように、本実施例のガス充填装置1は可燃性ガス又は可燃性液体の蒸気が存在する環境下において、高い精度でガス漏れを検知することが可能であるとともに安全に使用することができる。特に、ガス充填作業中にガス漏れ検出装置10がガス漏れを検知した場合には、報知部17が警報を発して作業者の注意を喚起し、制御部25の指令信号に従って、電磁バルブ49がフレキシブルチューブ7bによるガスの供給を遮断し、バルブ開閉手段12が充填口34を閉栓してガス充填作業を中止することによってガス漏れの拡大を防ぐことができる。また、本実施例のガス充填装置1は構造が簡単かつ小型であり、既存設備に対してガス漏れ検出装置10を容易に取り付けることが可能なため、製造コストを安くすることができる。
【実施例2】
【0042】
次に、複数のガス充填装置を備えたガスステーションについて図4を用いて説明する(特に請求項4に対応)。
図4は本発明の実施の形態に係るガス充填装置を複数備えたガスステーションの全体平面図である。
図4に示すように、ガスステーション37は搬入ライン38と、この搬入ライン38から未充填のガス容器4aを受け取るターンテーブル39と、充填後のガス容器4bを送り出す搬出ライン40とから構成され、搬入ライン38及び搬出ライン40の方向はターンテーブル39の半径方向と一致し、搬入ライン38に沿って上流側から下流側(ターンテーブル39)に向かって、キャップ外しステーション41、バーコード読み取りステーション42、不合格ガス容器4aの払い出しステーション43、コック位置合せステーション44及び待機ステーション45が設けられ、同様に、搬出ライン40に沿って各種ステーションが設けられている。
【0043】
ターンテーブル39の中央部には液化ガス供給源46が設けられ、ターンテーブル39の周囲にはパイプ47を介して液化ガス供給源46と連結されたガス充填装置1が等間隔で配置されている。
【0044】
ガス充填装置1は図1に示したベース2がターンテーブル39上に固定され、搬送ローラ3はその軸がターンテーブル39の半径方向に対して垂直となるように配置される。これにより、搬入ライン38及び搬出ライン40とガス充填装置1との間のガス容器4の受け取りと受渡しが搬送ローラ3によって円滑に行われることになる。
【0045】
次に、本実施例のガス充填装置の動作について説明する。
図5は本発明の実施の形態に係るガス充填装置の動作手順を示すフローチャートである。なお、図1乃至図4で説明した構成要素については同一の符号を付してその説明を省略する。
まず、ガス充填装置1に空のガス容器4aが搬入されると、制御部25はステップS1でエア吹付け手段11に指令信号を送って充填口34の周囲にエアを吹付けさせ、ステップS2でガス供給手段9に指令信号を送って進退駆動手段22の駆動によりノズル8を前進させて充填口34に嵌挿させるとともにステップS3で指令信号を送って電磁バルブ49を開かせ、ステップS4でバルブ開閉手段12に指令信号を送ってバルブ充填口34を開栓させてガスの充填を開始させる。
次に、ステップS5で検知部26はガス漏れを検知すると検知信号を発し、この検知信号を受けた制御部25は報知部17に指令信号を送り、ステップS6で報知部17は警報を発する。さらに、制御部25はステップS7でバルブ開閉手段12に指令信号を送ってバルブ充填口34を閉栓させ、ステップS8でガス供給手段9に指令信号を送って電磁バルブ49を閉じさせてガスの供給を遮断する。次いで、ステップS9において制御部25はガス供給手段9に指令信号を送って進退駆動手段22の駆動によりノズル8を後退させて充填口34から離脱させる。その後、制御部25はガス漏れが検知されたガス充填装置1のみの動作を停止させるが、他のガス充填装置1や搬入ライン38あるいは搬出ライン40の動作は継続させる。
これに対し、ステップS5において検知部26がガス漏れを検知しない場合はステップS10に進み、ガス充填作業が完了していない場合はステップS5に戻り、ガス充填作業が完了している場合はステップS11において制御部25はバルブ開閉手段12に指令信号を送ってバルブ充填口34を閉栓させ、ガス供給手段9に指令信号を送ってステップS12で電磁バルブ49を閉じてガスの供給を遮断するとともにステップS13で進退駆動手段22の駆動によりノズル8を後退させて充填口34から離脱させる。そして、ステップS14において検知部26がガス漏れを検知すると検知信号を発し、この検知信号を受けた制御部25は報知部17に指令信号を送り、ステップS16で報知部17は警報を発する。その後、制御部25はガス漏れが検知されたガス充填装置1のみの動作を停止させるが、他のガス充填装置1や搬入ライン38あるいは搬出ライン40の動作は継続させる。一方、ステップS14で検知部26がガス漏れを検知しない場合、制御部25はステップS15においてガス充填済みのガス容器4bを搬出ライン40へ送り出す。
【0046】
なお、本実施例のガス充填装置の動作手順はこれに限定されるものではなく、種々変形可能である。例えば、ステップS1乃至ステップS4及びステップS11乃至ステップS14を制御部25の制御対象から外すこともできる。すなわち、検知部26はガス漏れを検知しない場合、ステップS5からステップS10に進み、ガス充填が完了しているとステップS15に進むが、ガス充填が完了していないと再びステップS5に戻り、ガス漏れの有無を監視し続ける。一方、ステップS5で検知部26がガス漏れを検知した場合には検知信号を発し、制御部25はこの検知信号を受けてガス充填装置1の各手段に対して指令信号を送ってステップS6乃至ステップS9の動作を行わせることとなる。なお、ステップS15における搬入ライン38及び搬出ライン40の動作は制御部25の制御によらず、それぞれ単独で行われるものとしても良い。
また、本実施例では、ガス漏れが検知された場合にガス漏れが検知されたガス充填装置1のみの動作を停止させるが、これに限定されるものではなく、例えば、ガス漏れが検知されたガス充填装置1以外のガス充填装置1や搬入ライン38あるいは搬出ライン40など、ガスステーション37の全ラインを停止させるようにしても良い
【0047】
このように、本実施例のガス充填装置1においては、ガス充填作業中のガス漏れを安全に検知することが可能であり、ガス漏れ検出装置10がガス漏れを検知した場合には、報知部17の警報によって注意を促して作業者の安全を確保することができるとともに、ガス容器4へのガスの供給を遮断し、ノズル8を充填口34から離脱させることによってガス漏れの原因調査を速やかに行うことができる。これにより、ガス漏れによって引き起こされる2次災害を未然に防ぐことが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
以上説明したように、本発明の請求項1乃至請求項6に記載された発明は、液化ガスに限らず、ガスを容器に充填する装置すべてに対して適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】は本発明の実施の形態に係るガス充填装置の正面図である。
【図2】は本発明の実施の形態に係るガス充填装置における検知部の構成図である。
【図3】(a)及び(b)は本発明の実施の形態に係るガス充填装置における検知部とエア吹付け手段の配置を示す正面図及び側面図である。
【図4】は本発明の実施の形態に係るガス充填装置を複数備えたガスステーションの全体平面図である。
【図5】は本発明の実施の形態に係るガス充填装置の動作手順を示すフローチャートである。
【図6】は従来技術に係るガス充填器の使用状態を示す側面図である。
【符号の説明】
【0050】
1…ガス充填装置 2…ベース 3…搬送ローラ 4,4a,4b…ガス容器 5…アーム 6…芯出し機構 7a,7b…フレキシブルチューブ 8…ノズル 9…ガス供給手段 10…ガス漏れ検出装置 11…エア吹付け手段 12…バルブ開閉手段 13…レール部材 14…支持プレート 15…支柱 16…制御ボックス 17…報知部 18…爪部 19…回転駆動手段 20…スライドプレート 21…フレーム 22…進退駆動手段 23,23a,23b…光ファイバユニット 24…アンプユニット 25…制御部 26…検知部 27…投光素子 28…受光素子 29…信号処理回路 30…防爆容器 31…容器本体 32…バルブコック 33…バルブ本体 34…充填口 35…安全弁 36…ハンドル 37…ガスステーション 38…搬入ライン 39…ターンテーブル 40…搬出ライン 41…キャップ外しステーション 42…バーコード読み取りステーション 43…払い出しステーション 44…コック位置合せステーション 45…待機ステーション 46…液化ガス供給源 47…パイプ 48…ガス供給口 49…電磁バルブ 50…発光端部 51…受光端部 52…光路 L…基準芯 101…充填ノズル 102…ノズル本体 103…第1ガス漏れ検出器 104…パッキン B…ガス容器 B1…充填口 B2…開閉バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス漏れを検知して検知信号を発する検知部と、この検知信号を受けて所望の装置に対して指令信号を出す制御部とを備え、前記検知部は、ガス漏れを検出しようとする領域に光路を形成し、この光路の遮断に伴う光量変化を検知して電気信号を発生させる投受光部と、この電気信号を処理して前記検知信号を発する信号処理部とから構成され、前記制御部を耐圧防爆構造に形成される容器に収納したことを特徴とするガス漏れ検出装置。
【請求項2】
前記検知部は光ファイバを利用した光電センサであって、前記投受光部は光ファイバユニットと、投光素子と、受光素子とを備え、前記信号処理部を構成する信号処理回路と、前記投光素子及び前記受光素子とを耐圧防爆構造に形成される容器に収納したことを特徴とする請求項1記載のガス漏れ検出装置。
【請求項3】
バルブコックの充填口に嵌挿させたノズルを介して液化ガスをガス容器に充填するガス充填装置において、前記充填口近傍に配設される請求項1又は請求項2に記載のガス漏れ検出装置と、前記制御部の指令信号に従ってガス漏れを報知する報知手段とを備えたことを特徴とするガス充填装置。
【請求項4】
前記充填口を開閉するバルブ開閉手段と、前記ガス容器に液化ガスを供給するガス供給手段と、このガス供給手段にガスを充填するガス供給路と、このガス供給路の途中に介装された電磁バルブとを備え、ガス充填作業中に前記ガス漏れ検出装置がガス漏れを検知すると、前記制御部の指令信号に従って、前記バルブ開閉手段は前記充填口を閉栓し、及び/又は前記電磁バルブは前記ガス供給路を遮断することを特徴とする請求項3記載のガス充填装置。
【請求項5】
エアを吹き付けて前記充填口の周囲に滞留している雰囲気を飛散させるエア吹付手段を前記バルブコック近傍に配設したことを特徴とする請求項3又は請求項4に記載のガス充填装置。
【請求項6】
前記検知部は、前記ガス容器の高さ方向に対して昇降自在に配設されるとともに前記バルブコックの軸を中心として回動自在に配設されたことを特徴とする請求項3乃至請求項5のいずれか1項に記載のガス充填装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−308030(P2006−308030A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−133582(P2005−133582)
【出願日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(000154772)株式会社宝計機製作所 (10)
【Fターム(参考)】