ガス発生器
【課題】安定して所望の出力特性が得られる小型軽量化されたガス発生器を提供する。
【解決手段】シリンダ型ガス発生器1Aは、長尺円筒状のハウジングと、ハウジングの内部に設けられた作動ガス生成室およびフィルタ室と、点火器30とを備えている。作動ガス生成室には、区画部材50および粒状のガス発生剤62が主として収容されている。区画部材50は、円筒状部52、底部53、中空部55を有しており、粒状のガス発生剤62は、作動ガス生成室の上記中空部55を除く部分に収容されている。区画部材50の底部63は、点火器30側に向かうにつれて徐々にその外形が小さくなる先細り形状を有している。
【解決手段】シリンダ型ガス発生器1Aは、長尺円筒状のハウジングと、ハウジングの内部に設けられた作動ガス生成室およびフィルタ室と、点火器30とを備えている。作動ガス生成室には、区画部材50および粒状のガス発生剤62が主として収容されている。区画部材50は、円筒状部52、底部53、中空部55を有しており、粒状のガス発生剤62は、作動ガス生成室の上記中空部55を除く部分に収容されている。区画部材50の底部63は、点火器30側に向かうにつれて徐々にその外形が小さくなる先細り形状を有している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等に搭載される乗員保護装置としてのエアバッグ装置に組み込まれるガス発生器に関し、より特定的には、長尺円柱状の外形を有するいわゆるシリンダ型ガス発生器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の乗員の保護の観点から、乗員保護装置であるエアバッグ装置が普及している。エアバッグ装置は、車両等衝突時に生じる衝撃から乗員を保護する目的で車両等に装備されるものであり、車両等衝突時に瞬時にエアバッグを膨張および展開させることにより、展開されたエアバッグで乗員の体を受け止めるものである。ガス発生器は、このエアバッグ装置に組み込まれ、車両等衝突時に瞬時にガスを発生させてエアバッグを膨張および展開させる機器である。
【0003】
ガス発生器には、車両等に対する設置位置や出力等の仕様に基づき、種々の構成のものが存在している。その一つに、「シリンダ型」と呼ばれる構造のガス発生器が存在する。シリンダ型ガス発生器は、その外形が長尺円柱状であり、サイドエアバッグ装置や助手席用のエアバッグ装置、カーテンエアバッグ装置、ニーエアバッグ装置等に好適に組み込まれる。なお、長尺円柱状の外形を有するガス発生器としては、このシリンダ型ガス発生器の他にも、いわゆるT字型ガス発生器と呼ばれるもの等が存在している。
【0004】
上述したシリンダ型ガス発生器の具体的な構造が開示された文献として、たとえば特開2005−313812号公報(特許文献1)や特開平11−78766号公報(特許文献2)、特開2002−166818号公報(特許文献3)等がある。これら特許文献1ないし3に開示のシリンダ型ガス発生器にあっては、長尺円筒状のハウジングの軸方向の一端部に点火器および伝火薬が配置され、軸方向の略中央部にガス発生剤が収容されてこのガス発生剤が燃焼することで作動ガスが生成される作動ガス生成室が設けられ、軸方向の他端部にフィルタが収容されたフィルタ室およびガス噴出口が設けられている。
【0005】
当該構成のシリンダ型ガス発生器においては、点火器が作動することによって生じた火炎が伝火薬の燃焼を介してガス発生剤に伝達され、これによりガス発生剤が燃焼して高温高圧の作動ガスが作動ガス生成室にて生成され、生成された作動ガスがハウジングの軸方向に沿って作動ガス生成室からフィルタ室に流入し、フィルタを通過してガス噴出口よりハウジングの外部へと噴出される。ガス噴出口から噴出された作動ガスは、その後エアバッグの膨張および展開に利用される。
【0006】
このうち、上記特許文献3には、作動ガス生成室に有底円筒状の区画部材が配置されてなるシリンダ型ガス発生器が開示されている(特に特許文献3の図3参照)。当該作動ガス生成室に区画部材が配置されてなるシリンダ型ガス発生器にあっては、区画部材の中空部を除く部分の作動ガス生成室にガス発生剤が収容されており、点火手段によって点火されたガス発生剤が順次点火手段側から燃焼して作動ガスが生成されるとともに、生成された作動ガスが速やかに区画部材に設けられた連通孔を介して区画部材の中空部に流入してフィルタ室へと移動することになる。したがって、当該構成を採用することにより、未燃焼のガス発生剤が作動ガスの流動抵抗になることが未然に防止され、出力特性に優れたシリンダ型ガス発生器とすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−313812号公報
【特許文献2】特開平11−78766号公報
【特許文献3】特開2002−166818号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
シリンダ型ガス発生器においては、車両等への搭載性の改善の要求が非常に強く、その小型軽量化が重要な課題となっている。そのため、近年においては、シリンダ型ガス発生器の主要構成部品であるハウジングやフィルタといった比較的重量の重い部品を小型かつ軽量の部品に変更する試みがなされている。その一つに、強度部品であるハウジングを、従来利用されていたステンレス鋼や鉄鋼等からなる部材から、SPCEに代表される圧延鋼板等の小径のプレス成形品に変更する試みが検討されている。
【0009】
ここで、近年、ガス発生器に使用されるガス発生剤として、非アジド系ガス発生剤が普及している。この非アジド系ガス発生剤を使用した場合には、生成される作動ガスが比較的低温であり、エアバッグ装置に好適に利用できるメリットが得られるものの、他の組成のガス発生剤を使用した場合に比べて着火性が悪いといった問題や、安定的に燃焼させるためには高圧環境下におく必要があるといった問題が生じてしまう。そのため、シリンダ型ガス発生器のハウジングを小型軽量化するためには、これらの点を考慮に入れることが必要となる。
【0010】
また、シリンダ型ガス発生器のハウジングを小径化した場合には、生成された作動ガスが作動ガス生成室内にこもることによってガス噴出口から作動ガスが噴出されるまでの時間が長くなってしまう傾向がある。これは、未燃焼のガス発生剤や燃焼中のガス発生剤自体が、生成された作動ガスの流動抵抗となってしまうためである。そのため、シリンダ型ガス発生器のハウジングを単に小径化した場合には、作動初期時に作動ガス生成室の内圧が急激に上昇してしまい、求められる出力特性を満足させることが困難になり、特に作動初期の動作速度が速いことが求められるサイドエアバッグ装置やカーテンエアバッグ装置等への適用が困難になる問題が生じる。
【0011】
また、シリンダ型ガス発生器においては、ガス発生剤が燃焼して作動ガスが生成されることによる作動ガス生成室の内圧上昇に十分に耐え得るようにハウジングに耐圧性をもたせることが必要である。ハウジングにこのような耐圧性をもたせるために高張力鋼板のような高強度の部材をプレス成形して小径のハウジングを構成した場合には、作動ガス生成室の内圧上昇に十分に耐え得るものとすることはできるものの、プレス加工の際にハウジングに顕著に残留応力が発生することになり、特に低温環境下においてハウジングに十分な強度をもたせることが困難になる。これを解決するためには、焼き鈍し等の処理を行なうことが必要になるが、このような焼き鈍し処理を施した場合には、上述した作動ガス生成室の内圧上昇に耐え得る耐圧性を維持することができなくなってしまう。したがって、低温環境下における強度の確保と作動時の耐圧性の確保の両立を図るためには、結果的にハウジングの厚みを相当程度厚くすることが必要になり、成形性が劣るといった問題や重量が増加するといった問題が生じ、そもそも小径化を行なう意義が損なわれてしまうことになってしまう。
【0012】
一方、上述した圧延鋼板からなる小径のプレス成形品にてハウジングを構成しようとした場合には、低温環境下において十分な強度を有したものとすることができるものの、ハウジングに上述した作動ガス生成室の内圧上昇に耐え得る耐圧性をもたせることが困難になる。
【0013】
このように、シリンダ型ガス発生器の小型軽量化(特に小径化および軽量化)を図るためには、動作時において作動ガス生成室をガス発生剤の燃焼に適した高圧環境下に維持すること、生成された作動ガスが作動ガス生成室内にこもることを防止して初期の動作速度を速めること、ハウジングに十分な耐圧性と低温環境下における十分な強度とをもたせること等のすべての条件を充足させることが必要になり、その実現が非常に困難となっている。
【0014】
また、シリンダ型ガス発生器の小型軽量化を図る場合には、上述した点に加え、安定して所望の出力特性が得られるように装置構成を検討することが必要である。一般に、ガス発生剤は、粒状の小型のペレットとして成形されるが、これら粒状のガス発生剤のそれぞれを個別にその配置位置や向きを調整しつつ作動ガス生成室に充填することは、事実上不可能である。そのため、粒状のガス発生剤は、作動ガス生成室にその配置位置や向きが調整されることとなくランダムに充填される場合が多い。
【0015】
しかしながら、粒状のガス発生剤を作動ガス生成室にランダムに充填した場合には、作動ガス生成室におけるガス発生剤の密度に偏りが生じる場合がある。このガス発生剤の密度の偏りが生じた場合には、シリンダ型ガス発生器の出力特性に大きな影響を与えてしまうことになり、結果として製品間で出力特性に大きなばらつきが生じてしまうことになる。ここで、小型化が十分に図られていないシリンダ型ガス発生器においては、ガス発生剤が収容される作動ガス生成室の容積が比較的大きく構成できるため、上述したガス発生剤の密度の偏りの問題は生じ難いが、小型化が図られたシリンダ型ガス発生器においては、作動ガス生成室の容積が必然的に小さくなるため、当該ガス発生剤の密度の偏りの問題は、非常に重大な問題になる。
【0016】
当該ガス発生剤の密度の偏りの問題は、上述した特許文献3に開示の如くの構成のシリンダ型ガス発生器においても例外ではなく、非常に重大な問題となり得る。すなわち、当該特許文献3に開示の如くの構成のシリンダ型ガス発生器とすることにより、作動ガス生成室に区画部材を配置することで出力特性に優れたものとすることができるものの、ガス発生剤の充填状態の如何によっては、その出力特性に大きなばらつきが生じてしまうことになる。
【0017】
したがって、本発明は、上述した問題点を解決すべくなされたものであり、安定して所望の出力特性が得られる小型軽量化されたガス発生器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明に基づくガス発生器は、ハウジングと、点火手段と、仕切り部材と、区画部材とを備えている。上記ハウジングは、軸方向の両端が閉塞されてなる長尺円筒状の部材からなり、ガス発生剤が燃焼することで作動ガスが生成される作動ガス生成室と、上記作動ガス生成室で生成された作動ガスが通過するフィルタが収容されたフィルタ室とを内部に含んでいる。上記点火手段は、上記ガス発生剤を燃焼させるための火炎を発生させるものであり、上記ハウジングの軸方向の一端部に配置されている。上記仕切り部材は、上記ハウジングの内部に位置しており、上記ハウジングの内部の空間を軸方向に上記作動ガス生成室と上記フィルタ室とに仕切っている。上記区画部材は、上記作動ガス生成室の内部に位置しており、上記作動ガス生成室を区画している。上記フィルタ室は、上記作動ガス生成室よりも上記ハウジングの軸方向の他端部側に位置している。上記ハウジングの上記フィルタ室を規定する部分の周壁部には、上記フィルタを通過した作動ガスを外部に噴出するための複数のガス噴出口が設けられている。上記区画部材は、上記ハウジングと同軸上に配置された内部に中空部を有する有底筒状の部材にて構成されており、上記仕切り部材の上記作動ガス生成室側の端部から上記ハウジングの軸方向に沿って延びる筒状部と、上記筒状部の上記点火手段側の端部を閉塞する底部とを含んでいる。上記区画部材の上記底部は、上記作動ガス生成室の上記点火手段側の端部よりも上記仕切り部材側に位置している。上記ガス発生剤は、上記区画部材の上記中空部を除く部分の上記作動ガス生成室に収容されている。上記区画部材の上記筒状部には、上記作動ガス生成室の上記ガス発生剤が収容された空間と上記区画部材の上記中空部とを連通する複数の第1連通孔が設けられている。上記仕切り部材の中央部には、上記区画部材の上記中空部と上記フィルタ室とを連通するための第2連通孔が設けられている。ここで、上記区画部材の上記底部は、上記点火手段側に向かうにつれて徐々にその外形が小さくなる先細り形状を有している。
【0019】
上記本発明に基づくガス発生器にあっては、上記区画部材の上記底部の外表面が、略半球面形状を有していることが好ましい。
【0020】
上記本発明に基づくガス発生器にあっては、上記区画部材の上記底部の外表面が、略円錐面形状を有していてもよい。
【0021】
上記本発明に基づくガス発生器にあっては、上記区画部材の上記筒状部が、上記ハウジングの軸方向に沿って内径および外径が一定とされた円筒状部を有していることが好ましく、その場合には、上述した複数の第1連通孔が、上記区画部材の上記円筒状部に設けられていることが好ましい。
【0022】
上記本発明に基づくガス発生器にあっては、上記区画部材の上記筒状部が、上記円筒状部の上記仕切り部材側の端部から連続して延び、上記仕切り部材側に向かうにつれて徐々に拡径する拡径部をさらに有していてもよい。
【0023】
上記本発明に基づくガス発生器にあっては、上記ハウジングが、当該ハウジングの上記他端部および上記周壁部を構成する長尺有底円筒状の第1ハウジング部材と、上記第1ハウジング部材の開口端を閉塞することで上記ハウジングの上記一端部を構成する第2ハウジング部材(スクイブホルダ)とを含んでいてもよく、その場合には、上記第1ハウジング部材が、電縫管の軸方向端部の一方をクロージング処理していなる成形品にて構成されていることが好ましい。そのように構成した場合には、上記第1ハウジング部材の外径R1が、15mm≦R1≦22mmの条件を充足し、上記区画部材における上記底部と上記筒状部との境界部分から上記区画部材の上記底部の上記点火手段側の端部までの距離L1が、1mm≦L1≦7mmの条件を充足し、上記区画部材の上記底部の上記点火手段側の端部から上記作動ガス生成室の上記点火手段側の端部までの距離L2と、上記作動ガス生成室の径R2とが、0.026≦L2/R2≦0.71の条件を充足し、かつ、上記区画部材の上記中空部の径R3と、上記作動ガス生成室の径R2とが、0.28≦R3/R2≦0.54の条件を充足していることが好ましい。
【0024】
上記本発明に基づくガス発生器にあっては、上記ガス発生剤が、燃料としてグアニジン系化合物と、酸化剤として塩基性硝酸銅とを含んでいることが好ましい。
【0025】
上記本発明に基づくガス発生器は、さらに、振動による上記ガス発生剤の破砕を防止するための破砕防止部材と、上記ハウジングの内部に位置し、密閉された収容空間を有する第1密閉容器とを備えていることが好ましく、その場合に、上記ガス発生剤、上記区画部材および上記破砕防止部材が、上記第1密閉容器の上記収容空間に収容されていることが好ましい。
【0026】
上記本発明に基づくガス発生器は、上記ハウジングの内部に位置し、密閉された収容空間を有する第2密閉容器をさらに備えていてもよい。その場合には、上記点火手段が、燃焼することによって火炎を生じさせる点火薬を含む点火器と、上記点火器にて生じた火炎を上記ガス発生剤に伝達するための伝火薬とを含んでいることが好ましく、このうちの上記伝火薬が、上記第2密閉容器の上記収容空間に収容されていることが好ましい。
【0027】
上記本発明に基づくガス発生器にあっては、上記フィルタが、上記ハウジングの軸方向に沿って延びる中空連通部を有していることが好ましく、当該中空連通部が、上記フィルタの上記作動ガス生成室側の端面に少なくとも達していることが好ましい。その場合には、上記仕切り部材が、上記フィルタの上記端面を覆う環状板部と、当該環状板部の内周縁から上記フィルタの上記中空連通部内に向けて連続して延びることで上記フィルタの上記端面寄りの内周面を覆う筒状突出部とを含んでいることが好ましく、上記第2連通孔は、上記仕切り部材の上記筒状突出部の内周面によって規定されていることが好ましい。そして、さらにその場合には、上記仕切り部材の上記筒状突出部が、上記仕切り部材の上記環状板部から遠ざかるにつれて上記第2連通孔の開口面積が減少するように徐々に縮径していることが好ましい。
【0028】
上記本発明に基づくガス発生器にあっては、上記フィルタが、上記ハウジングの軸方向に沿って延びる中空連通部を有していることが好ましく、当該中空連通部が、上記フィルタの上記作動ガス生成室側の端面に少なくとも達していることが好ましい。その場合には、上記仕切り部材が、上記フィルタの上記端面を覆う環状板部と、当該環状板部の内周縁から上記フィルタの上記中空連通部内に向けて連続して延びることで上記フィルタの上記端面寄りの内周面を覆う筒状突出部とを含んでいることが好ましく、上記第2連通孔は、上記仕切り部材の上記筒状突出部の内周面によって規定されていることが好ましい。そして、さらにその場合には、上記仕切り部材の上記筒状突出部が、上記仕切り部材の上記環状板部から遠ざかるにつれて上記第2連通孔の開口面積が増加するように徐々に拡径していることが好ましい。
【0029】
上記本発明に基づくガス発生器にあっては、上記第1ハウジング部材の外径と上記第2ハウジング部材の外径とが、同一であることが好ましい。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、安定して所望の出力特性が得られる小型軽量化されたガス発生器とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施の形態1におけるシリンダ型ガス発生器の正面図および右側面図である。
【図2】本発明の実施の形態1におけるシリンダ型ガス発生器の模式断面図である。
【図3】本発明の実施の形態1におけるシリンダ型ガス発生器を製造する際のガス発生剤の充填および封止工程を示す模式断面図である。
【図4】本発明の実施の形態1におけるシリンダ型ガス発生器の要部拡大断面図である。
【図5】検証試験において使用した実施例に係るシリンダ型ガス発生器の構成を示す模式断面図である。
【図6】検証試験において使用した比較例に係るシリンダ型ガス発生器の構成を示す模式断面図である。
【図7】検証試験にて測定した各種パラメータを説明するためのグラフである。
【図8】検証試験の試験結果を示す表である。
【図9】検証試験の試験結果を示すグラフであり、10ms時のタンク圧のばらつきを示すグラフである。
【図10】検証試験の試験結果を示すグラフであり、タンク圧の最大値のばらつきを示すグラフである。
【図11】検証試験の試験結果を示すグラフであり、タンク圧が最大値に達する時間のばらつきを示すグラフである。
【図12】検証試験の試験結果を示すグラフであり、作動ガス生成室で観測される内圧の最大値のばらつきを示すグラフである。
【図13】本発明の実施の形態2におけるシリンダ型ガス発生器の模式断面図である。
【図14】本発明の実施の形態3におけるシリンダ型ガス発生器の模式断面図である。
【図15】本発明の実施の形態4におけるシリンダ型ガス発生器の模式断面図である。
【図16】本発明の実施の形態4におけるシリンダ型ガス発生器の要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。なお、以下に示す実施の形態は、サイドエアバッグ装置等に好適に組み込まれるいわゆるシリンダ型ガス発生器に本発明を適用した場合を例示するものである。
【0033】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1におけるシリンダ型ガス発生器の外観構造を示す図であり、図1(A)は正面図、図1(B)は右側面図である。図2は、図1に示すシリンダ型ガス発生器の内部構造を示す図であり、図1(A)および図1(B)に示すII−II線に沿った模式断面図である。以下においては、これら図1(A)、図1(B)および図2を参照して、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器の外観構造および内部構造について説明する。
【0034】
図1(A)、図1(B)および図2に示すように、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Aは、長尺円柱状の外形を有しており、軸方向の両端が閉塞されてなる外殻部材としてのハウジングを有している。外殻部材としてのハウジングは、周壁部11および底壁部12を有する軸方向の片側が閉塞された有底円筒状の第1ハウジング部材10と、第1ハウジング部材10の軸方向と同方向に沿って延びる貫通部23を有する筒状の第2ハウジング部材20とを含んでいる。第2ハウジング部材20は、その外周面の所定位置に後述するかしめ固定のための溝21を有しており、当該溝21は、第2ハウジング部材20の外周面に周方向に沿って延びるように環状に形成されている。なお、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Aにおいては、第1ハウジング部材10の外径と第2ハウジング部材20の外径とが、同一となるように構成されている。
【0035】
第2ハウジング部材20は、第1ハウジング部材10の開口端を閉塞するように第1ハウジング部材10に固定されている。具体的には、第1ハウジング部材10の開口端に第2ハウジング部材20の一部が内挿された状態で、当該第2ハウジング部材20の外周面に設けられた溝21に対応する部分の第1ハウジング部材10の周壁部11を径方向内側に向けて縮径させて当該溝21に係合させることにより、第2ハウジング部材20が第1ハウジング部材10に対してかしめ固定されている。これにより、ハウジングの軸方向の一端部が、第2ハウジング部材20によって構成されることになり、ハウジングの軸方向の他端部が、第1ハウジング部材10の底壁部12によって構成されることになる。
【0036】
当該かしめ固定は、第1ハウジング部材10の周壁部11を径方向内側に向けて均等に縮径される八方かしめと呼ばれるかしめ固定である。この八方かしめを行なうことにより、第1ハウジング部材10の周壁部11には、かしめ部14が設けられることになる。
【0037】
第1ハウジング部材10は、ステンレス鋼や鉄鋼、アルミニウム合金、ステンレス合金等の金属製の部材にて構成されていてもよいし、SPCEに代表される圧延鋼板をプレス加工することで有底円筒状に成形された金属製のプレス成形品、またはSTKMに代表される電縫管の軸方向端部の一方をクロージング処理して有底円筒状に成形された金属製の成形品にて構成されていてもよい。特に、第1ハウジング部材10を圧延鋼板のプレス成形品や電縫管の成形品で構成した場合には、ステンレス鋼や鉄鋼等の金属製の部材を用いた場合に比べて安価にかつ容易に第1ハウジング部材10を形成することができるとともに、大幅な軽量化が可能になる。一方、第2ハウジング部材20は、ステンレス鋼や鉄鋼、アルミニウム合金、ステンレス合金等の金属製の部材にて構成されている。
【0038】
第1ハウジング部材10および第2ハウジング部材20によって構成されるハウジングの内部の空間には、仕切り部材40が配置されている。この仕切り部材40は、ハウジングの内部の空間を軸方向に作動ガス生成室とフィルタ室とに仕切るものである。作動ガス生成室は、ハウジングの軸方向の略中央部に位置しており、内部に後述する第1密閉容器80の一部が収容されている。フィルタ室は、ハウジングの軸方向の他端部側(すなわち、第1ハウジング部材10の底壁部12側)に位置しており、内部に後述するフィルタ70が収容されている。
【0039】
図2に示すように、ハウジングの軸方向の一端部(すなわち、第2ハウジング部材20寄りの部分)には、点火手段としての点火器(スクイブ)30および伝火薬(エンハンサ)61が配置されている。点火手段としての点火器30および伝火薬61は、後述する粒状のガス発生剤62を燃焼させるための火炎を発生させるためのものであり、このうちの伝火薬61は、第2密閉容器90に収容されている。当該点火器30および第2密閉容器90が収容された部分のハウジングの内部の空間は、点火室に相当する。すなわち、点火室は、ハウジングの軸方向の一端部寄りの部分に位置しており、第1ハウジング部材10の周壁部11と、第2ハウジング部材20と、後述する第1密閉容器80とによって規定されている。
【0040】
点火器30は、第2ハウジング部材20の貫通部23に内挿されてかしめ固定されている。より詳細には、第2ハウジング部材20は、ハウジングの内部の空間に面する側の端部にかしめ部24を有しており、点火器30が貫通部23に内挿されて第2ハウジング部材20に当て留めされた状態で当該かしめ部24をかしめることにより、点火器30が第2ハウジング部材20に挟持されて点火器30が第2ハウジング部材20に固定されている。
【0041】
点火器30は、火炎を発生させるための点火装置であり、基部31と、点火部32と、端子ピン33とを含んでいる。基部31は、一対の端子ピン33が挿通されることでこれを保持するための部位であり、点火部32に隣接して設けられている。点火部32は、その内部に作動時において着火する点火薬と、この点火薬を燃焼させるための抵抗体とを含んでいる。端子ピン33は、点火薬を着火させるために点火部32に接続されている。
【0042】
より詳細には、点火器30においては、基部31によって保持された一対の端子ピン33が点火部32内に挿入され、その先端を連結するように抵抗体(ブリッジワイヤ)が取付けられ、この抵抗体を取り囲むようにまたはこの抵抗体に接するように点火部32内に点火薬が充填されている。抵抗体としては、一般にニクロム線やプラチナおよびタングステンを含む合金製の抵抗線等が利用され、点火薬としては、一般にZPP(ジルコニウム・過塩素酸カリウム)、ZWPP(ジルコニウム・タングステン・過塩素酸カリウム)、鉛トリシネート等が利用される。また、点火部32を囲うスクイブカップは、一般に金属製またはプラスチック製である。
【0043】
衝突を検知した際には、端子ピン33を介して抵抗体に所定量の電流が流れる。抵抗体に所定量の電流が流れることにより、抵抗体においてジュール熱が発生し、この熱を受けて点火薬が燃焼を開始する。燃焼により生じた高温の火炎は、点火薬を収納しているスクイブカップを破裂させる。抵抗体に電流が流れてから点火器30が作動するまでの時間は、抵抗体にニクロム線を利用した場合には3ミリ秒以下である。
【0044】
上述したように、伝火薬61は、第2密閉容器90に収容されている。第2密閉容器90は、有底筒状のカップ部91と、当該カップ部91の開口を閉塞するキャップ部92とを含んでおり、ハウジングの軸方向の一端部寄りの位置に点火器30に連接するように内挿されている。第2密閉容器90においては、カップ部91とキャップ部92とが組み合わされて接合されており、これにより第2密閉容器90の内部に形成される収容空間93が当該第2密閉容器90の外部から気密に封止されている。カップ部91およびキャップ部92としては、銅やアルミニウム、銅合金、アルミニウム合金等の金属薄板(箔)をプレス加工等することで成形された金属部材や、射出成形やシート成形等を行なうことで形成された樹脂部材等が利用される。また、カップ部91とキャップ部92との接合には、ろう付けや接着、巻き締め(かしめ)等が好適に用いられる。当該接合の際にシール剤を使用すれば、気密性をさらに高めることもできる。
【0045】
伝火薬61は、点火器30が作動することによって生じた火炎によって点火され、燃焼することによって熱粒子を発生する。伝火薬61としては、後述するガス発生剤62を確実に燃焼開始させることができるものであることが必要であり、一般的には、B/KNO3、B/NaNO3、Sr(NO3)2等に代表される金属粉/酸化剤からなる組成物など、後述するガス発生剤62よりも燃焼速度が速くかつ高発熱性の組成物が用いられる。伝火薬61は、粉状のものや、バインダによって所定の形状に成形されたもの等が利用される。バインダによって成形された伝火薬の形状としては、たとえば顆粒状、円柱状、シート状、球状、単孔円筒状、多孔円筒状、タブレット状など種々の形状がある。なお、バインダとしては、好適にはヒドロタルサイト類、ニトロセルロース等が使用できるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0046】
なお、第2密閉容器90と第2ハウジング部材20との間でかつ点火器30の点火部32を取り巻く部分の点火室には、第1クッション材63が配置されている。当該第1クッション材63は、後述する各種の内部構成部品をハウジングの内部において軸方向に固定するための部材であり、同時に上述した内部構成部品の軸方向長さのばらつきを吸収するための部材でもある。したがって、第1クッション材63は、上述した第2密閉容器90と第2ハウジング部材20とによってハウジングの軸方向に挟み込まれて固定されている。第1クッション材63としては、たとえばセラミックスファイバの成形体や発泡シリコン等が利用可能である。
【0047】
図2に示すように、ハウジングの内部の空間のうち、第2密閉容器90が配置された空間に隣接する空間には、第1密閉容器80が配置されている。第1密閉容器80は、有底筒状のカップ部81と、当該カップ部81の開口を閉塞するキャップ部82とを含んでおり、ハウジングの内部の空間に内挿されている。第1密閉容器80においては、カップ部81とキャップ部82とが組み合わされて接合されることにより、第1密閉容器80の内部に形成される収容空間83が当該第1密閉容器80の外部から気密に封止されている。カップ部81およびキャップ部82としては、銅やアルミニウム、銅合金、アルミニウム合金等の金属薄板(箔)をプレス加工等することで成形された金属部材や、射出成形やシート成形等を行なうことで形成された樹脂部材等が利用される。また、カップ部81とキャップ部82との接合には、ろう付けや接着、巻き締め(かしめ)等が好適に用いられる。当該接合の際にシール剤を使用すれば、気密性をさらに高めることもできる。
【0048】
第1密閉容器80の収容空間83には、粒状のガス発生剤62と、区画部材50と、第2クッション材64とが収容されている。より詳細には、第1密閉容器80の第2密閉容器90が位置する側の端部部分には、第2クッション材64が配置されており、当該第2クッション材64が配置された部分を除く部分に、ガス発生剤62および区画部材50が配置されている。ここで、上述した作動ガス生成室は、第1ハウジング部材10の周壁部11と、第2クッション材64と、後述する仕切り部材40とによって規定される空間にて構成されている。そして、当該作動ガス生成室は、その内部に収容された上記区画部材50によってさらに2つの空間に区画されている。
【0049】
区画部材50は、内部に中空部55を有する一端が閉塞された有底筒状の部材にて構成されており、フランジ部51と、筒状部としての円筒状部52と、底部53とを有している。フランジ部51は、第1密閉容器80の仕切り部材40側の端部に配置されており、フランジ部51の仕切り部材40側の主面は、第1密閉容器80の仕切り部材40側の軸方向端部81aに当接している。円筒状部52は、ハウジングの軸方向に沿って内径および外径が一定とされた直管状に延びる円筒形状を有しており、フランジ部51の内周縁から連続して延び、第1密閉容器80の仕切り部材40側の端部から収容空間83の内部に向けて突出して位置している。底部53は、円筒状部52から連続して延び、円筒状部52の点火器30側の端部を閉塞している。なお、底部53は、第1密閉容器80の点火器30側の端部から所定の距離をもって離間して配置されており、点火器30側に向かうにつれてその外形が徐々に小さくなる先細り形状を有している。ここで、区画部材50の軸方向長さは、第1密閉容器80の軸方向長さの40%以上90%以下とされることが好ましく、より好ましくは第1密閉容器80の軸方向長さの70%以上85%以下とされる。
【0050】
ここで、作動ガス生成室のうち、区画部材50の中空部55を除く部分には、上述した粒状のガス発生剤62が収容されている。すなわち、ガス発生剤62は、作動ガス生成室のうち、区画部材50の円筒状部52および底部53を径方向に取り巻く空間と、ハウジングの軸方向に沿って区画部材50と第2クッション材64との間に位置する空間とに充填されている。
【0051】
粒状のガス発生剤62は、点火器30によって点火された伝火薬61が燃焼することによって生じた熱粒子によって着火され、燃焼することによってガスを発生させるものである。粒状のガス発生剤62の各々は、一般に燃料と酸化剤と添加剤とを含む成形体として形成される。燃料としては、たとえばトリアゾール誘導体、テトラゾール誘導体、グアニジン誘導体、アゾジカルボンアミド誘導体、ヒドラジン誘導体等またはこれらの組み合わせが利用される。具体的には、たとえばニトログアニジンや硝酸グアニジン、シアノグアニジン、5−アミノテトラゾール等が好適に利用される。また、酸化剤としては、たとえば塩基性硝酸銅等の塩基性硝酸塩や、過塩素酸アンモニウムや過塩素酸カリウム等の過塩素酸塩、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、アンモニアから選ばれたカチオンを含む硝酸塩等が利用される。硝酸塩としては、たとえば硝酸ナトリウム、硝酸カリウム等が好適に利用される。また、添加剤としては、バインダやスラグ形成剤、燃焼調整剤等が挙げられる。バインダとしては、たとえばヒドロキシプロピレンメチルセルロース等のセルロース誘導体や、カルボキシメチルセルロースの金属塩、ステアリン酸塩等の有機バインダや、合成ヒドロキシタルサイト、酸性白土等の無機バインダが好適に利用可能である。スラグ形成剤としては窒化珪素、シリカ、酸性白土等が好適に利用可能である。また、燃焼調整剤としては、金属酸化物、フェロシリコン、活性炭、グラファイト等が好適に利用可能である。
【0052】
粒状に形成された個々のガス発生剤62の成形体の形状としては、顆粒状、ペレット状、円柱状、ディスク状など様々な形状のものが挙げられる。また、有孔状(たとえば単孔筒形状や多孔筒形状等)の成形体も利用可能である。これらの形状は、シリンダ型ガス発生器1Aが組み込まれるエアバッグ装置の仕様に応じて適宜選択されることが好ましく、たとえばガス発生剤62の燃焼時において作動ガスの生成速度が時間的に変化する形状を選択するなど、仕様に応じた最適な形状を選択することが好ましい。また、ガス発生剤62の形状の他にもガス発生剤62の線燃焼速度、圧力指数などを考慮に入れて成形体のサイズや充填量を適宜選択することが好ましい。
【0053】
なお、粒状のガス発生剤62としては、燃料としてグアニジン系化合物を含み、酸化剤として塩基性硝酸銅を含むものを利用することが特に好適である。このグアニジン系化合物と塩基性硝酸銅とを含むガス発生剤を利用することとすれば、アジ化化合物のような毒性の問題が生じることもなく、また燃焼温度がスラグの融点よりも低くなってスラグを固形物として効果的にフィルタ70にて捕捉することができることになる。
【0054】
区画部材50の円筒状部52には、第1連通孔54が周方向および軸方向に沿って複数個設けられている。第1連通孔54は、粒状のガス発生剤62が収容された空間と区画部材50の中空部55とを連通させるための孔であり、粒状のガス発生剤62よりも小径の孔にて構成されている。なお、第1連通孔54は、区画部材50の底部53には設けられていないことが好ましい。これは、当該底部53に第1連通孔54が存在すると、シリンダ型ガス発生器1Aの動作時においてその孔が閉塞されてしまい、性能にばらつきが生じ易くなってしまうためである。
【0055】
区画部材50は、作動時において上述した中空部55と粒状のガス発生剤62が収容された空間との間に圧力差を生じさせるための圧力隔壁として機能するものであり、所定の強度をもった部材にて構成されている。具体的には、区画部材50は、たとえばステンレス鋼や鉄鋼、アルミニウム合金、ステンレス合金等の金属製の部材にて構成されている。
【0056】
第2クッション材64は、成形体からなるガス発生剤62が振動等によって破砕されることを防止するための破砕防止部材に相当し、好適にはセラミックスファイバの成形体や発泡シリコン等が利用される。この第2クッション材64は、作動時において伝火薬61の燃焼によって開口または分断し、場合によっては焼失する。
【0057】
上述したように、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Aにおいては、第1密閉容器80および第2密閉容器90にガス発生剤62および伝火薬61をそれぞれ封入した構成であるため、予めこれら薬剤を密閉容器に封入しておくことにより、シリンダ型ガス発生器1Aの組立作業が容易化するのみならず、ハウジングに別途気密処理を施すことも不要になり、部品点数の削減と構成の簡素化が可能になる。また、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Aにおいては、ガス発生剤62に加え、区画部材50および第2クッション材64を第1密閉容器80に予め封入した構成であるため、シリンダ型ガス発生器1Aの組立作業がさらに容易化する効果も得られる。
【0058】
図2に示すように、仕切り部材40は、ハウジングの内部の空間を軸方向に作動ガス生成室とフィルタ室とに仕切っている。仕切り部材40は、ハウジングの内部の空間において上述した第1密閉容器80に接するように配置されており、環状板部41と、筒状突出部42と、第2連通孔43とを有している。環状板部41は、第1密閉容器80に接してハウジングの軸と直交するように配置されている。筒状突出部42は、環状板部41の内周縁から連続して延び、上述した第1密閉容器80から遠ざかる方向に向けて突出して位置している。第2連通孔43は、筒状突出部42によって規定され、区画部材50の中空部55とフィルタ室とを連通するための孔である。
【0059】
仕切り部材40は、ハウジングに対して嵌合または遊嵌されており、ハウジングには、当該仕切り部材40を固定するためのかしめ加工は施されていない。ここで、嵌合とは、いわゆる圧入固定を含むものであり、仕切り部材40の環状板部41の外周端がハウジングの内周面に接触した状態で取付けられた状態を言う。また、遊嵌とは、仕切り部材40の環状板部41の外周端とハウジングの内周面とが全周にわたって必ずしも接触しておらず、多少の隙間(あそび)をもって内挿された状態を言う。なお、組立ての容易化の観点からは、仕切り部材41をハウジングに遊嵌することが好ましい。
【0060】
仕切り部材40は、後述するフィルタ70の作動ガス生成室側の端部に取付けられており、フィルタ70と上述した粒状のガス発生剤62を収容する第1密閉容器80とによって挟み込まれることでハウジングの内部において支持されている。なお、仕切り部材40は、たとえばステンレス鋼や鉄鋼、アルミニウム合金、ステンレス合金等の金属製の板状部材をプレス加工等することによって形成される。
【0061】
図2に示すように、第1ハウジング部材10の周壁部11および底壁部12と、仕切り部材40とによって規定されるフィルタ室には、フィルタ70が配置されている。フィルタ70が収容されたフィルタ室は、仕切り部材40を介して作動ガス生成室に隣接して設けられ、作動ガス生成室よりもハウジングの他端部側(すなわち、第1ハウジング部材10の底壁部12側)に位置している。
【0062】
フィルタ70は、ハウジングの軸方向と同方向に沿って延び、その軸方向端面に達する中空連通部71を有する円筒状の部材からなり、その軸方向の作動ガス生成室側の端面が仕切り部材40に当接しており、他方の端面が第1ハウジング部材10の底壁部12に当接している。また、フィルタ70の外周面は、第1ハウジング部材10の周壁部11の内周面に当接している。このような円筒状の部材からなるフィルタ70を利用すれば、作動時においてフィルタ室を流動する作動ガスの流動抵抗が低く抑えられ、効率的な作動ガスの流動が実現可能となる。
【0063】
フィルタ70は、たとえばステンレス鋼や鉄鋼等の金属線材を巻き回して焼結したものや、金属線材を編み込んだ網材をプレス加工することによって押し固めたもの、あるいは孔あき金属板を巻き回したもの等が利用される。ここで、網材としては、具体的にはメリヤス編みの金網や平織りの金網、クリンプ織りの金属線材の集合体等が利用される。また、孔あき金属板としては、たとえば、金属板に千鳥状に切れ目を入れるとともにこれを押し広げて孔を形成して網目状に加工したエキスパンドメタルや、金属板に孔を穿つとともにその際に孔の周縁に生じるバリを潰すことでこれを平坦化したフックメタル等が利用される。この場合において、形成される孔の大きさや形状は、必要に応じて適宜変更が可能であり、同一金属板上において異なる大きさや形状の孔が含まれていてもよい。なお、金属板としては、たとえば鋼板(マイルドスチール)やステンレス鋼板が好適に利用でき、またアルミニウム、銅、チタン、ニッケルまたはこれらの合金等の非鉄金属板を利用することもできる。
【0064】
このように金属線材や網材を円筒状に巻き回して焼結したり押し固めたりすることで形成されたフィルタや、エキスパンドメタルおよびフックメタル等にて構成されたフィルタは、その内部に空隙が含まれることになり、上述した作動ガスの流動を可能にする。フィルタ70は、作動ガス生成室にて生成された作動ガスがこのフィルタ70中を通過する際に、当該作動ガスが有する高温の熱を奪い取ることによってこれを冷却する冷却手段として機能するとともに、作動ガス中に含まれる残渣(スラグ)等を除去する除去手段としても機能する。
【0065】
図2に示すように、フィルタ室を規定する部分の第1ハウジング部材10の周壁部11には、ガス噴出口13が設けられている。このガス噴出口13は、シリンダ型ガス発生器1Aの内部において生成された作動ガスを外部に放出するための孔であり、第1ハウジング部材10の周壁部11の周方向および軸方向に沿って複数個設けられている。
【0066】
なお、シリンダ型ガス発生器1Aの第2ハウジング部材20が配置された側の端部には、雌型コネクタ(不図示)が取付けられる。より詳細には、第2ハウジング部材20に設けられた凹部22にシリンダ型ガス発生器1Aとは別途設けられる衝突検知センサからの信号を伝達するハーネスの雄型コネクタが接続される雌型コネクタが取付けられる。雌型コネクタには、必要に応じてショーティングクリップ(不図示)が取付けられる。このショーティングクリップは、シリンダ型ガス発生器1Aの搬送時等において静電放電等によってシリンダ型ガス発生器1Aが誤動作することを防止するために取付けられるものであり、エアバッグ装置への組付け段階においてハーネスの雄型コネクタが雌型コネクタに挿し込まれることによってその端子ピン33への接触が解除されるものである。
【0067】
次に、以上において説明したシリンダ型ガス発生器1Aの作動時における動作について図2を参照して説明する。本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Aが組み込まれたエアバッグ装置が搭載された車両が衝突した場合には、車両に別途設けられた衝突検知手段によって衝突が検知され、これに基づいて点火器30が作動する。点火器30が作動すると、点火薬の燃焼によって点火部32内の圧力が上昇し、これによって点火部32が破裂し、火炎が点火部32の外部へと流出する。
【0068】
点火部32の破裂後において、点火部32を取り巻く空間の温度と圧力は上昇し、第2密閉容器90が溶融または破裂する。これにより、第2密閉容器90内に収容された伝火薬61は、点火器30が作動することによって生じた火炎によって点火されて燃焼し、多量の熱粒子を発生させる。発生した多量の熱粒子は、第1密閉容器80のキャップ部82を溶融または破裂させ、第2クッション材64を開口または分断し、作動ガス生成室へと流入する。
【0069】
作動ガス生成室へと流入した熱粒子は、点火器30が位置する側から順次粒状のガス発生剤62を着火して燃焼させ、多量の作動ガスを生成させる。このようにして生成された作動ガスは、区画部材50に設けられた第1連通孔54を通過して区画部材50の中空部55に流入し、その先に位置する第1密閉容器80のカップ部81の軸方向端部81aを破裂させ、仕切り部材40に設けられた第2連通孔43を経由してフィルタ室へと流入する。
【0070】
フィルタ室に流れ込んだ作動ガスは、フィルタ70の中空連通部71内を経由してフィルタ70へと進入し、当該フィルタ70中を通過することで所定の温度にまで冷却されてガス噴出口13からシリンダ型ガス発生器1Aの外部へと噴出される。ガス噴出口13から噴出された作動ガスは、エアバッグの内部に導かれてエアバッグを膨張および展開させる。
【0071】
本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Aにあっては、粒状のガス発生剤62の燃焼の初期段階において、区画部材50と第2クッション材64との間に位置する部分のガス発生剤62が第2クッション材64が位置する側から順次燃焼し、作動ガス生成室の中空部55を除く部分の内圧が急速に上昇してガス発生剤62が燃焼するのに適した相当程度の高い圧力に達し、これによりガス発生剤62の燃焼が促進され、未燃焼のガス発生剤62によって作動ガスの流動が阻害されることなく作動ガスが区画部材50の円筒状部52に設けられた第1連通孔54を経由して中空部55へと流入する。
【0072】
そして、粒状のガス発生剤62の燃焼の初期段階が完了した後は、区画部材50の円筒状部52を取り巻く空間に位置する部分のガス発生剤62が第2クッション材64が位置する側から順次燃焼し、作動ガス生成室の中空部55を除く部分の内圧を維持しつつ安定的に作動ガスが生成され、未燃焼のガス発生剤62によって、生成された作動ガスの流動が阻害されることなく作動ガスが区画部材50の円筒状部52に設けられた第1連通孔54を経由して中空部55へと流入する。
【0073】
したがって、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Aの如くの構成を採用することにより、区画部材50の機能によって未燃焼のガス発生剤が作動ガスの流動抵抗になることが未然に防止されることになり、安定した出力特性が得られるシリンダ型ガス発生器とできる。
【0074】
ここで、上述した如くの出力特性が安定したシリンダ型ガス発生器にするためには、区画部材50と第2クッション材64との間に位置する部分のガス発生剤62の充填量が所定の量となるように精度よく調整することが極めて重要になる。これは、当該部分におけるガス発生剤62の充填量が不足した場合には、燃焼の初期段階において作動ガス生成室の中空部55を除く部分の内圧上昇が十分ではなくなり、その結果その後のガス発生剤62の燃焼状態に大きな影響が生じ、結果として所望の出力特性が得られなくなってしまうためである。
【0075】
そこで、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Aにおいては、上述したように、区画部材50を第1連通孔54を有する円筒状部52と第1連通孔54を有さない底部53とによって構成するとともに、当該底部53が点火器30側に向かうにつれてその外形が徐々に小さくなる先細り形状を有するように構成することにより、区画部材50と第2クッション材64との間に位置する部分のガス発生剤62の充填量が所定の量となるように精度よく調整することを可能にしている。以下においては、この点について詳細に説明する。
【0076】
図3は、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器を製造する際の第1密閉容器へのガス発生剤の充填および封止工程を示す模式断面図である。
【0077】
図2および図3に示すように、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Aにおいては、区画部材50の底部53が点火器30側(図3(C)に示すサブアセンブリにおいてはキャップ部82側)に向かうにつれてその外形が徐々に小さくなるように先細り形状に構成されており、ここでは、底部53の外表面が半球面形状を有するように構成されている。なお、当該底部53の外表面は必ずしも半球面形状とされる必要はなく、底部53の外形が先細り形状となるのであれば、どのような形状であってもよい。
【0078】
第1密閉容器80の収容空間83に粒状のガス発生剤62を充填して封止する工程においては、まず図3(A)に示すように、第1密閉容器80の一部となる有底筒状のカップ部81を準備し、当該カップ部81の内部に区画部材50を配置する。より詳細には、カップ部81の開口を介して区画部材50をカップ部81の内部に挿入し、区画部材50のフランジ部51をカップ部81の底壁である軸方向端部81aに当接させる。
【0079】
次に、図3(B)に示すように、粒状のガス発生剤62を所定量だけカップ部81の内部の空間へと充填する。その際、カップ部81の内部に導入された粒状のガス発生剤62は、区画部材50の底部53をつたってスムーズにカップ部81の内部でかつ区画部材50を取り巻く空間に落下し、当該空間に収容される。当該空間が粒状のガス発生剤62によって充填された後は、当該空間および底部53を覆うように粒状のガス発生剤62がさらに充填されることになる。ここで、より好ましくはカップ部81を軽く振動させること等により、粒状のガス発生剤62がより隙間なく密に充填されるようにする。ただし、カップ部81に振動を加える場合には、粒状のガス発生剤62が破砕しない程度に十分に弱い振動とすることが必要である。
【0080】
次に、図3(C)に示すように、充填された粒状のガス発生剤62の上面を覆うように第2クッション材64を載置し、さらにその上からカップ部81の開口を閉塞するようにキャップ部82を組付け、カップ部81の内部の空間を外部から気密に封止する。このカップ部81に対するキャップ部82の組付けには、上述したように、ろう付けや接着、巻き締め(かしめ)等が好適に用いられ、より好ましくは、シール剤を用いた接合が用いられる。
【0081】
その際、粒状のガス発生剤62の密度に偏りが生じないように、より密に粒状のガス発生剤62を収容空間83に充填するために、キャップ部82をカップ部81に図中に示す荷重F1をもって押し付けた状態として組付ける。このとき、粒状のガス発生剤62に加わる荷重F1は、区画部材50の底部53が滑らかな曲面形状を有しているため、当該曲面に沿って図示するように分散されて当該曲面に沿う方向に加わる荷重F2となり、そのため当該底部53上に位置するガス発生剤62はスムーズに当該曲面に沿って移動することになる。したがって、区画部材50と第2クッション材64との間に位置する部分のガス発生剤62の充填量が所定の量となるように精度よく調整することができる。また、このようにすれば、粒状のガス発生剤62に無理に荷重が加わることも防止でき、キャップ部82と底部53とによってガス発生剤62が挟み込まれて破砕してしまうことも抑制できる。
【0082】
このように、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Aとすることにより、区画部材50と第2クッション材64との間に位置する部分のガス発生剤62の充填量が所定の量となるように精度よく調整することが可能となり、また充填の際にガス発生剤62が破砕してしまうことも防止でき、その結果、安定して所望の出力特性が得られる小型軽量化されたシリンダ型ガス発生器とすることができる。
【0083】
また、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Aにおいては、上述したように、ガス発生剤62を第1密閉容器80に、また伝火薬61を第2密閉容器90にそれぞれ封入したものであり、そのためガス発生剤62や伝火薬61を気密に封止するためのシール処理をハウジングに対して施す必要がなくなるため、その分だけハウジングの外形を小型化(すなわち小径化や短尺化)することができたり、その分だけハウジングの肉厚を増して耐圧性を向上させることができたりすることになり、結果として小型化や高耐圧化に有利な構造のシリンダ型ガス発生器とすることができる。
【0084】
また、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Aとすることにより、作動ガス生成室にて生成された作動ガスがハウジングの軸方向に流動せずにもっぱらハウジングの径方向に流動して第1連通孔54を経由して区画部材50の中空部55に流入し、さらにその後第2連通孔43を経由してフィルタ室に流入することとなるため、燃焼中のガス発生剤や未燃焼のガス発生剤が作動ガスの流動によって破壊されることで生じる固形残渣の発生量が大幅に抑制されることになり、またその固形残渣が作動ガスの流動によってさらに破壊されて微小な残渣となることが抑制されることになり、結果としてフィルタ70に対する負荷が大幅に軽減されることになる。したがって、区画部材50は、残渣の一部を除去するフィルタ作用をも具備していることになるため、フィルタ70を小型化することが可能になり、小型かつ軽量のシリンダ型ガス発生器とすることができる。
【0085】
なお、上述した本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Aにおいては、図2を参照して、第1ハウジング部材10の外径をR1とした場合に、当該R1が、15mm≦R1≦22mmの条件を充足していることが好ましく、より好ましくは15mm≦R1≦20mmの条件を充足している。
【0086】
また、上述した本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Aにおいては、図2を参照して、区画部材50の底部53の点火器30側の端部から作動ガス生成室の点火器30側の端部(すなわち、第2クッション材64に接する部分)までの距離(当該距離は、区画部材50が位置していない部分の作動ガス生成室の軸方向長さに相当し、ガス発生剤62が作動ガス生成室の径方向に沿って全体にわたって充填されている部分の軸方向長さである)をL2とし、作動ガス生成室の径(より詳細には作動ガス生成室のうちのガス発生剤62が充填されている部分の径、すなわち第1密閉容器80の内径)をR2とした場合に、これらL2およびR2が、0.026≦L2/R2≦0.71の条件を充足していることが好ましい。
【0087】
また、上述した本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Aにおいては、図2を参照して、区画部材50の中空部55の径、すなわち区画部材50の円筒状部52の内径をR3とした場合に、上述したR2およびR3が、0.28≦R3/R2≦0.54の条件を充足していることが好ましい。
【0088】
加えて、上述した本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Aにおいては、図2を参照して、区画部材50における底部53と円筒状部52との境界部分から底部53の点火器30側の端部までの距離をL1とした場合に、当該L1が、0mm<L1≦10mmの条件を充足していることが好ましく、より好ましくは、1mm≦L1≦7mmの条件を充足していることが好ましい。ここで、上記L1を0mmとした場合には、そもそも先細り形状の底部53が存在しないことになり、ガス発生剤62の充填性の効率化が図れないこととなってしまう。
【0089】
これら条件を充足していることにより、圧延鋼板のプレス成形品または電縫管をクロージング処理した成形品を用いて第1ハウジング部材10を構成した場合にも、ガス発生剤62の燃焼を促進しつつハウジングの破損を防止することができる。具体的には、上記条件を充足していることにより、上述したガス発生剤62の燃焼の初期段階や当該初期段階の完了後において、作動ガス生成室の内圧を適正に維持することが可能になるとともに、圧延鋼板のプレス成形品または電縫管をクロージング処理した成形品からなる第1ハウジング部材10の意図しない変形を抑止することができる。したがって、圧延鋼板のプレス成形品または電縫管をクロージング処理した成形品を利用して第1ハウジング部材10を構成した場合にも、上記条件を充足することで所望の出力特性が得られる小型軽量化が図られたシリンダ型ガス発生器とすることができる。
【0090】
ここで、上述したL2およびR2が、L2/R2<0.026となった場合には、作動ガス生成室の最大内圧が35MPa未満となることが実験的に確認されており、その場合には、所望のガス出力が得られずにエアバッグの膨張および展開が不充分となるおそれがある。一方、上述したL2およびR2が、0.71<L2/R2となった場合には、作動ガス生成室の最大内圧が90MPaを超えることが実験的に確認されており、その場合には、圧延鋼板のプレス成形品または電縫管をクロージング処理した成形品からなる第1ハウジング部材10に意図しない変形が生じるおそれがある。なお、より確実にかつ安定的な動作を保証するためには、上述したL2およびR2が、0.053≦L2/R2≦0.57の条件を充足していることがさらに好適である。
【0091】
また、上述したR3およびR2が、R3/R2<0.28となった場合には、作動ガス生成室の最大内圧が90MPaを超えることが実験的に確認されており、その場合には、圧延鋼板のプレス成形品または電縫管をクロージング処理した成形品からなる第1ハウジング部材10に意図しない変形が生じるおそれがある。一方、上述したR3およびR2が、0.54<R3/R2となった場合には、作動ガス生成室の最大内圧が35MPa未満となることが実験的に確認されており、その場合には、所望のガス出力が得られずにエアバッグの膨張および展開が不充分となるおそれがあるとともに、ガス発生剤62の十分な充填が困難になる問題が生じる。なお、より確実にかつ安定的な動作を保証するためには、上述したR3およびR2が、0.32≦R3/R2≦0.43の条件を充足していることがさらに好適である。
【0092】
また、以上において説明した如くのシリンダ型ガス発生器1Aとすることにより、上述した如く、作動ガス生成室の内圧が作動時において適正にガス発生剤62の燃焼が促進される高圧環境下に維持できるようになるとともに、ガス発生剤62が燃焼する際に生じる残渣の量を適正に低減することができる。これにより、本実施の形態のシリンダ型ガス発生器1Aにおいては、仕切り部材40の形状および組付け構造ならびにフィルタ70の形状および組付け構造を以下に説明する如くの構成にすることができる。
【0093】
すなわち、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Aにおいては、作動ガス生成室とフィルタ室とを仕切る仕切り部材40の筒状突出部42が、環状板部41から遠ざかるにつれて(作動ガス生成室から遠ざかり、筒状突出部42の先端に向かうにつれて)、当該筒状突出部42によって規定される第2連通孔43の開口面積が減少するように徐々に縮径した円錐板状の形状にて構成されるとともに、ハウジングに対して嵌合または遊嵌されている。したがって、第1ハウジング部材10には、当該仕切り部材40を固定するためのかしめ加工は施されていない。そのため、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Aにあっては、その組み立てが従来に比して容易に行なえることになる。以下においては、このような組付け構造を採用した場合にも、仕切り部材40が十分に機能する理由について説明する。
【0094】
図4は、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器の仕切り部材が設けられた位置の近傍を拡大した要部拡大断面図であり、図4(A)は、シリンダ型ガス発生器の作動開始直後の状態を示す図であり、図4(B)は、作動開始から所定時間経過後の状態を示す図である。なお、図4(A)および図4(B)中においては、作動ガスの流動方向を矢印Gで示すとともに、作動ガス生成室の具体的な図示は省略している。
【0095】
図4(A)に示すように、シリンダ型ガス発生器1Aが作動した作動開始直後においては、作動ガス生成室にて生成された高温高圧の作動ガスの推力(すなわち、作動ガス生成室の内圧の上昇に伴って生じる圧力)を受け、仕切り部材40の環状板部41が、ハウジングの軸方向に沿ってフィルタ70側に向けての力(図中矢印Aにて示す力)を受ける。これにより、仕切り部材40の環状板部41は、フィルタ70側に向けて移動を開始し、仕切り部材40とハウジングとによって囲まれたフィルタ70の部分(すなわち、フィルタ70の作動ガス生成室側の端部近傍部分、図中に示す領域B1に含まれる部分)が、当該環状板部41が移動することによってハウジングの軸方向に沿って圧縮されることになる。
【0096】
ここで、フィルタ70の内部には、フィルタ70が金属線材または金属線材を編み込んだ網材を巻き回したりあるいはプレス加工することで押し固めたりすることで形成された結果生じる空隙が存在するが、図4(B)に示すように、上記環状板部41の移動に伴って当該空隙の容積は減少し、金属線材は当該領域B1においてさらに密に充填された状態となるとともに、ハウジングの径方向に沿って広がろうとして仕切り部材40の筒状突出部42をハウジングの径方向に沿って内側に向けて押し込もうとする力を発生させる。しかしながら、仕切り部材40の筒状突出部42には、上述した内圧の上昇に伴ってハウジングの大略径方向に沿って外側に向けての力(図中矢印Cにて示す力)が加わっているため、仕切り部材40の筒状突出部42をハウジングの径方向に沿って内側に向けて押し込もうとする力は当該力に押し負け、その反力(図中矢印Dで示す力)がハウジングとフィルタ70との接触部分(図中において示す領域E)に加わることになる。これにより、当該ハウジングとフィルタ70との接触部分において摩擦力が発生し、当該摩擦力が仕切り部材40がさらにフィルタ70側に向けて移動することを抑制するブレーキ力となる。
【0097】
ここで、上記反力(図中矢印Dで示す力)は、ハウジングの径方向および軸方向と交差する方向に向けて作用する力となるため、ハウジングの広い範囲に仕切り部材40の移動を防止する高いブレーキ力として作用することになり、当該ブレーキ力に基づいて仕切り部材40の移動量は僅かで留まることになる。そのため、仕切り部材40によってフィルタ70が確実に保護されることになり、フィルタ70の破損を防止することができる。また、仕切り部材40の外縁とハウジングの内周面とが圧接触することになるため、当該部分を介して作動ガスがフィルタ70を経由せずにガス噴出口13からハウジング外部へと放出されるいわゆるバイパス現象を確実に防止することもできる。
【0098】
また、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Aにおいては、仕切り部材40の筒状突出部42が、フィルタ70の作動ガス生成室側の端部近傍のみを覆うように構成されている。したがって、図4(B)中に示す領域B2に位置する部分のフィルタ70の内部には、十分な空隙が形成された状態が維持されることになり、上述した仕切り部材40の移動および変形の影響を受けることなく当該部分においてスムーズに作動ガスが流動することが可能となる。したがって、フィルタ70の有する作動ガスの冷却機能およびスラグ捕集機能が損なわれることもない。
【0099】
さらに、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Aにおいては、仕切り部材40とフィルタ70とをハウジングの軸方向に沿って当該軸と直交する面に投影した場合に、フィルタ70の投影領域の内縁が仕切り部材40の投影領域の内縁よりも内側に位置しないように構成されている。すなわち、作動ガス生成室側から仕切り部材40およびフィルタ70を平面視した場合に、フィルタ70が仕切り部材40によって完全に覆い隠されるように仕切り部材40およびフィルタ70の相対的な位置関係が調節されている。このように構成することにより、仕切り部材40の第2連通孔43を通過した高温高圧の作動ガスは、フィルタ70の内周面を沿って流動することになるため、作動ガスが直接フィルタ70に吹き付けられる割合を大幅に低減することができる。
【0100】
なお、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Aにおいては、作動時において仕切り部材40が上述した領域B1に位置する部分のフィルタ70によって保持されることになるため、当該仕切り部材40のみによって作動ガスの推力に耐え得るように仕切り部材40を設計する必要がなく、その厚みを従来に比して小さくすることができる。具体的には、一般的なシリンダ型ガス発生器の仕様を考慮した場合には、仕切り部材40として鉄鋼材を利用した場合にその厚みを概ね0.7mm以上とすれば足りる。
【0101】
以上において説明したように、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Aの如くの構成を採用することにより、仕切り部材40の取付けのためにハウジングにかしめ加工を実施することが必要なくなるという効果や仕切り部材40を薄型化できるという効果が得られる。そのため、シリンダ型ガス発生器1A全体として見た場合に、性能を低下させることなく、小型軽量化することが可能になる。また、上記構成を採用することにより、仕切り部材40をハウジングにかしめ加工する作業も不要となり、製造コストを削減することもできる。したがって、性能を低下させることなく小型軽量化が可能でかつ製造が容易なシリンダ型ガス発生器とすることができる。
【0102】
(実施例)
以下、本発明の効果を検証するために行なった検証試験の内容および結果について詳説する。図5は、検証試験において使用した実施例に係るシリンダ型ガス発生器の構成を示す模式断面図であり、図6は、検証試験において使用した比較例に係るシリンダ型ガス発生器の構成を示す模式断面図である。まず、これら図5および図6を参照して、検証試験において使用したサンプルの構成について説明する。
【0103】
図5に示すように、実施例に係るシリンダ型ガス発生器1Aは、上述した本発明の実施の形態1に示した構造を有するものである。ただし、作動時における作動ガス生成室の内圧を測定可能にするために、第1ハウジング部材10の所定位置には、圧力センサSEが取付けられている。ここで、圧力センサSEとしては、歪ゲージ式のものを用い、当該圧力センサSEの第1ハウジング部材10への取付けは、第1ハウジング部材10の周壁部11の所定位置に開口部およびセンサ組付けポートMPを設け、開口部を閉塞するように圧力センサSEをセンサ組付けポートMPにそれぞれ取付けることで行なった。これにより、圧力センサSEの感圧面は、作動ガス生成室に面した状態となっている。
【0104】
ここで、実施例に係るシリンダ型ガス発生器1Aにおいては、第1ハウジング部材10としてSTKMに代表される電縫管の軸方向端部の一方をクロージング処理してなる成形品を使用した。シリンダ型ガス発生器1Aの軸方向長さは83mmである。第1ハウジング部材10の軸方向長さは、78mmであり、第1ハウジング部材10の外径R1は、φ20mmである。作動ガス生成室の径R2は、φ16mmであり、作動ガス生成室の軸方向長さは、40mmである。また、区画部材50における底部53と円筒状部52との境界部分から底部53の点火器30側の端部までの距離L1は、4.7mmであり、底部53の点火器30側の端部から作動ガス生成室の点火器30側の端部までの距離L2は、7mmである。また、第2クッション材64の厚みは、1.5mmである。区画部材50の軸方向長さは、31.5mmであり、中空部55の径R3は、φ6mmである。区画部材50の円筒状部52には、合計24個の第1連通孔54が設けれ、その配置位置としては、円筒状部52の周方向に一列当たり4個の第1連通孔が設けられ、当該列が円筒状部52の軸方向にピッチ4.4mmで6列並ぶようにされている。なお、個々の第1連通孔54は、φ2mmの丸孔である。
【0105】
作動ガス生成室に充填されるガス発生剤62としては、硝酸グアニジン56.2重量部、塩基性硝酸銅33.8重量部、過塩素酸カリウム10.0重量部、高分散シリカ0.4重量部を乾式混合し、その後、0.6重量部のポリビニルアルコール水溶液11.0重量部を噴霧添加して湿式造粒を行い、粒径1mm以下の顆粒を得、これを90℃で15時間熱処理をした後にステアリン酸マグネシウム0.4重量部を添加し、これを回転式打錠機で直径3.2mm、厚さ1.5mmのペレットに成形し、さらにこれを110℃で10時間熱処理することで製作されたものを使用した。当該作動ガス生成室に充填される粒状のガス発生剤62の総量は、生成される作動ガスの総量が0.2molでかつその重量が6.57gとなる量とした。
【0106】
一方、図6に示すように、比較例に係るシリンダ型ガス発生器1Xは、区画部材50の底部53を除き、上述した本発明の実施の形態1に示した構造を有するものである。比較例に係るシリンダ型ガス発生器1Xにおいては、区画部材50の底部53の外表面が平面形状となるように底部53を平板状に構成している。なお、比較例に係るシリンダ型ガス発生器1Xにおいても、作動時における作動ガス生成室の内圧を測定可能にするために、第1ハウジング部材10の所定位置に圧力センサSEが取付けられている。圧力センサSEの種類やその取付け構造は、上述した実施例に係るシリンダ型ガス発生器1Aと同様である。
【0107】
ここで、比較例に係るシリンダ型ガス発生器1Xにおいては、第1ハウジング部材10としてSTKMに代表される電縫管の軸方向端部の一方をクロージング処理してなる成形品を使用した。シリンダ型ガス発生器1Xの軸方向長さは83mmである。第1ハウジング部材10の軸方向長さは、78mmであり、第1ハウジング部材10の外径R1は、φ20mmである。作動ガス生成室の径R2は、φ16mmであり、作動ガス生成室の軸方向長さは、40mmである。区画部材50の底部53は、平板状の形状を有しており、上述した実施例に係るシリンダ型ガス発生器1Aの如くの先細り形状は有していない。また、区画部材50の底部53の点火器30側の端部から作動ガス生成室の点火器30側の端部までの距離L2は、7mmである。また、第2クッション材64の厚みは、1.4mmである。区画部材50の軸方向長さは、31.6mmであり、中空部55の径R3は、φ6mmである。区画部材50の円筒状部52には、合計24個の第1連通孔54が設けれ、その配置位置としては、円筒状部52の周方向に一列当たり4個の第1連通孔が設けられ、当該列が円筒状部52の軸方向にピッチ4.4mmで6列並ぶようにされている。なお、個々の第1連通孔54は、φ2mmの丸孔である。
【0108】
作動ガス生成室に充填されるガス発生剤62としては、上述した実施例に係るシリンダ型ガス発生器1Aで用いたものと同様のものを使用し、その総量も、上述した実施例に係るシリンダ型ガス発生器1Aの場合と同様に、生成される作動ガスの総量が0.2molでかつその重量が6.57gとなる量とした。
【0109】
検証試験においては、上述した構成のサンプルをそれぞれ複数個準備し、個々のサンプルをそれぞれ所定容量の気密に封止されたタンク内に設置し、当該サンプルを作動させてその際のタンク圧および作動ガス生成室の内圧を経時的に測定することで個々のサンプルの性能を評価し、当該評価結果に基づいてサンプル間のばらつきがどの程度であるかを確認した。なお、使用したタンクの容量は、1立方フィート(約28.3リットル)である。タンク内の雰囲気温度は、低温環境下(約−40℃)、室温環境下(約23℃)および高温環境下(約85℃)にそれぞれ設定し、サンプルの温度が当該雰囲気温度に合致したことを確認した後にサンプルを作動させた。
【0110】
図7は、検証試験にて測定した各種パラメータを説明するためのグラフである。次に、この図7を参照して、測定した各種パラメータについて説明する。なお、図7に示すグラフにおいては、横軸に時間をとり、縦軸にタンク圧および作動ガス生成室の内圧(以下、単に「内圧」とも称する)をとっている。
【0111】
測定したパラメータは、作動開始から10msが経過した時点におけるタンク圧Pt10、タンク圧の最大値Pmax、タンク圧が最大値に達するのに要する時間TPmax(いずれもサンプル数n=8)、および、作動ガス生成室の内圧の最大値pmax(いずれもサンプル数n=7)の4つである。ここで、上記Pt10および上記TPmaxは、当該シリンダ型ガス発生器をエアバッグ装置に組み込んだ場合の、当該エアバッグ装置におけるエアバッグの膨張速度を評価するために使用される指標であり、上記Pmaxは、エアバッグの膨張後における緩衝性能を評価するために使用される指標である。また、上記pmaxは、当該シリンダ型ガス発生器におけるガス発生剤の燃焼特性を評価するために使用される指標である。なお、これら4つのパラメータは、いずれもシリンダ型ガス発生器の性能を評価する重要なパラメータであり、これらパラメータは、いずれも所望の値を採ることはもちろんのこと、製品間でばらつきがないことが理想である。
【0112】
図8は、検証試験の試験結果を示す表であり、図9ないし図12は、当該検証試験の結果を示すグラフである。ここで、図9は、比較例および実施例に係るシリンダ型ガス発生器のサンプル間における上記Pt10のばらつきを示すものであり、図10は、比較例および実施例に係るシリンダ型ガス発生器のサンプル間における上記Pmaxのばらつきを示すものである。また、図11は、比較例および実施例に係るシリンダ型ガス発生器のサンプル間における上記TPmaxのばらつきを示すものであり、図12は、比較例および実施例に係るシリンダ型ガス発生器のサンプル間における上記pmaxのばらつきを示すものである。
【0113】
これら図8ないし図12から理解されるように、比較例に係るシリンダ型ガス発生器1Xに比べ、実施例に係るシリンダ型ガス発生器1Aにおいては、低温環境下、室温環境下および高温環境下のいずれにおいても、上記Pt10、上記Pmax、上記TPmaxおよび上記pmaxのサンプル間のばらつきが抑制されている。特に、低温環境下および室温環境下においては、比較例に係るシリンダ型ガス発生器1Xに比べ、実施例に係るシリンダ型ガス発生器1Aにおいて、上記Pt10、上記Pmaxおよび上記TPmaxのサンプル間のばらつきの幅が、概ね1/2〜1/3程度に抑制されており、その結果、標準偏差σもいずれもより小さい値を示している。したがって、当該検証試験の試験結果から、本発明を採用することで、安定して所望の出力特性が得られる小型軽量化されたシリンダ型ガス発生器とすることができることが実験的に確認された。
【0114】
(実施の形態2)
図13は、本発明の実施の形態2におけるシリンダ型ガス発生器の模式断面図である。以下においては、この図13を参照して、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器について説明する。なお、上述した本発明の実施の形態1におけるシリンダ型ガス発生器と同様の部分については図中同一の符号を付し、その説明はここでは繰り返さない。
【0115】
シリンダ型ガス発生器において、ガス噴出口から噴出される作動ガスの流量や、ガス発生剤の燃焼を持続させるために維持することが必要となる作動ガス生成室の内圧は、作動ガス生成室にて生成される作動ガスの量と、作動ガスが流動する流路上における当該流路の断面積によって概ね決定される。すなわち、作動ガスの流路において最も断面積が小さい部分において作動ガスの流量や作動ガス生成室の内圧が拘束を受け、そのため作動ガスの流路の断面積をどの程度の大きさにするかは、シリンダ型ガス発生器の性能を決定する上で重要なファクターとなる。ここで、一般に、シリンダ型ガス発生器においては、作動ガス生成室とフィルタ室とを仕切る仕切り部材に設けられる第2連通孔を作動ガスの流路上における最小断面積部分とするとともに、当該第2連通孔の開口面積の大きさを調整することにより、ガス噴出口から噴出される作動ガスの流量を調整している。なお、第2連通孔の径は、仕切り部材の内径と同程度とされることが好ましい。
【0116】
上述した本発明の実施の形態1におけるシリンダ型ガス発生器1Aにおいては、区画部材50の筒状部が、ハウジングの軸方向に沿って内径および外径が一定とされた直管状に延びる円筒形状の円筒状部52のみにて構成されており、その仕切り部材40側の端部の開口形状(すなわち中空部55の端部の形状)が、仕切り部材40に設けられた第2連通孔43の開口形状と概ね合致するように構成されていた。ここで、ガス発生剤62の充填量を維持しつつガス噴出口13から噴出される作動ガスの流量を変更する場合や、ガス発生剤62の充填量を維持しつつ作動時における作動ガス生成室の内圧を変更する場合等には、区画部材50の筒状部の形状を維持しつつ仕切り部材40に設けられる第2連通孔43の開口面積の大きさを調整することが必要になる。
【0117】
しかしながら、区画部材50の筒状部の形状を維持しつつ仕切り部材40に設けられる第2連通孔43の開口面積を大きくした場合等には、作動ガスの流路上における最小断面積部分が当該第2連通孔43ではなく区画部材50の仕切り部材40側の端部となってしまい、狙い通りの変更が行なえない問題が生じる。
【0118】
そこで、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Bにおいては、区画部材50の形状を僅かに変更するとともに仕切り部材40に設けられる第2連通孔43の開口面積を大きくすることにより、上記問題の解決を図っている。すなわち、図13に示すように、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Bにおいては、区画部材50の筒状部が、ハウジングの軸方向に沿って内径および外径が一定とされた直管状に延びる円筒形状の円筒状部52と、当該円筒状部52の仕切り部材40側の端部から連続して延び、仕切り部材40側に向かうにつれて徐々に拡径する拡径部52aを有しており、当該拡径部52aの仕切り部材40側の端部の開口形状(すなわち中空部55の端部の形状)が、仕切り部材40に設けられた第2連通孔43の開口形状と概ね合致するように構成している。なお、本実施の形態の如く区画部材50に拡径部52aを設ける場合にも、拡径部52aの軸方向長さは、区画部材50の軸方向長さの5%以上20%以下とされることが好ましい。
【0119】
このように構成することにより、ガス発生剤62の充填量を維持しつつガス噴出口13から噴出される作動ガスの流量を変更する場合や、ガス発生剤62の充填量を維持しつつ作動時における作動ガス生成室の内圧を変更する場合等に必要となる設計変更が僅かで済むようになり、従来に比してより容易に如何なる仕様に対しても対応が可能なシリンダ型ガス発生器とすることができる。
【0120】
なお、本実施の形態においては、区画部材50に設けられた拡径部52aの仕切り部材40側の端部の開口形状が、仕切り部材40に設けられた第2連通孔43の開口形状と概ね合致するように構成した場合を例示したが、当該第2連通孔43の開口径を当該拡径部52aの仕切り部材40側の端部の開口径よりも小さく構成してもよい。その場合には、当該第2連通孔43が設けられた位置が作動ガスの流路上における最小断面積部分となり、その結果、仕切り部材40が圧力隔壁として機能することになる。
【0121】
(実施の形態3)
図14は、本発明の実施の形態3におけるシリンダ型ガス発生器の模式断面図である。以下においては、この図14を参照して、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器について説明する。なお、上述した本発明の実施の形態1におけるシリンダ型ガス発生器と同様の部分については図中同一の符号を付し、その説明はここでは繰り返さない。
【0122】
上述した本発明の実施の形態1におけるシリンダ型ガス発生器1Aにおいては、区画部材50の底部53が、当該底部53の外表面が半球面形状を有するように構成されていた。これに対し、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Cにおいては、区画部材50の底部53が点火器30側に向かうにつれてその外形が徐々に小さくなる先細り形状となるように、底部53の外表面が略円錐形状を有するように構成されている。
【0123】
このように構成した場合にも、上述した本発明の実施の形態1におけるシリンダ型ガス発生器1Aとした場合と同様の効果が得られ、安定して所望の出力特性が得られる小型軽量化されたシリンダ型ガス発生器とすることができる。なお、本実施の形態の如くの構成を採用する場合には、ガス発生剤62の充填の際に当該ガス発生剤62が区画部材50の底部53の先端部分に接触して破砕されてしまうことを防止するために、底部53の先端部分の形状は、非先鋭形状(たとえば、極小の曲面形状や平面形状)とすることが好ましい。
【0124】
(実施の形態4)
図15は、本発明の実施の形態4におけるシリンダ型ガス発生器の模式断面図である。また、図16は、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器の仕切り部材が設けられた位置の近傍を拡大した要部拡大断面図であり、図16(A)は、シリンダ型ガス発生器の作動開始直後の状態を示す図であり、図16(B)は、作動開始から所定時間経過後の状態を示す図である。なお、図16(A)および図16(B)中においては、作動ガスの流動方向を矢印Gで示している。以下においては、これら図15および図16を参照して、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器について説明する。なお、上述した本発明の実施の形態1におけるシリンダ型ガス発生器と同様の部分については図中同一の符号を付し、その説明はここでは繰り返さない。
【0125】
図15に示すように、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Dにおいては、作動ガス生成室とフィルタ室とを仕切る仕切り部材40の筒状突出部42が、環状板部41から遠ざかるにつれて(作動ガス生成室から遠ざかり、筒状突出部42の先端に向かうにつれて)、当該筒状突出部42によって規定される第2連通孔43の開口面積が増加するように徐々に拡径した円錐板状の形状にて構成されるとともに、ハウジングに対して嵌合または遊嵌されている。したがって、第1ハウジング部材10には、当該仕切り部材40を固定するためのかしめ加工は施されていない。そのため、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Dにあっても、上述した本発明の実施の形態1におけるシリンダ型ガス発生器1Aとした場合と同様に、その組み立てが従来に比して容易に行なえることになる。以下においては、このような組付け構造を採用した場合にも、仕切り部材40が十分に機能する理由について説明する。
【0126】
図16(A)に示すように、シリンダ型ガス発生器1Dが作動した作動開始直後においては、作動ガス生成室にて生成された高温高圧の作動ガスの推力(すなわち、作動ガス生成室の内圧の上昇に伴って生じる圧力)を受け、仕切り部材40の環状板部41が、ハウジングの軸方向に沿ってフィルタ70側に向けての力(図中矢印Aにて示す力)を受ける。これにより、仕切り部材40の環状板部41は、フィルタ70側に向けて移動を開始し、仕切り部材40とハウジングとによって囲まれたフィルタ70の部分(すなわち、フィルタ70の作動ガス生成室側の端部近傍部分、図中に示す領域B1に含まれる部分)が、当該環状板部41が移動することによってハウジングの軸方向に沿って圧縮されることになる。
【0127】
ここで、フィルタ70の内部には、フィルタ70が金属線材または金属線材を編み込んだ網材を巻き回したりあるいはプレス加工することで押し固めたりすることで形成された結果生じる空隙が存在するが、図16(B)に示すように、上記環状板部41の移動に伴って当該空隙の容積は減少し、金属線材は当該領域B1においてさらに密に充填された状態となるとともに、ハウジングの径方向に沿って広がろうとして仕切り部材40の筒状突出部42をハウジングの径方向に沿って内側に向けて押し込もうとする力を発生させる。しかしながら、仕切り部材40の筒状突出部42には、上述した内圧の上昇に伴ってハウジングの大略径方向に沿って外側に向けての力(図中矢印Cにて示す力)が加わっているため、仕切り部材40の筒状突出部42をハウジングの径方向に沿って内側に向けて押し込もうとする力は当該力に押し負け、その反力(図中矢印Dで示す力)がハウジングとフィルタ70との接触部分(図中において示す領域E)に加わることになる。これにより、当該ハウジングとフィルタ70との接触部分において摩擦力が発生し、当該摩擦力が仕切り部材40がさらにフィルタ70側に向けて移動することを抑制するブレーキ力となる。
【0128】
ここで、上記反力(図中矢印Dで示す力)は、ハウジングの径方向および軸方向と交差する方向に向けて作用する力となるため、ハウジングの広い範囲に仕切り部材40の移動を防止する高いブレーキ力として作用することになり、当該ブレーキ力に基づいて仕切り部材40の移動量は僅かで留まることになる。そのため、仕切り部材40によってフィルタ70が確実に保護されることになり、フィルタ70の破損を防止することができる。また、仕切り部材40の外縁とハウジングの内周面とが圧接触することになるため、当該部分を介して作動ガスがフィルタ70を経由せずにガス噴出口13からハウジング外部へと放出されるいわゆるバイパス現象を確実に防止することもできる。
【0129】
また、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Bにおいては、仕切り部材40の筒状突出部42が、フィルタ70の作動ガス生成室側の端部近傍のみを覆うように構成されている。したがって、図16(B)中に示す領域B2に位置する部分のフィルタ70の内部には、十分な空隙が形成された状態が維持されることになり、上述した仕切り部材40の移動および変形の影響を受けることなく当該部分においてスムーズに作動ガスが流動することが可能となる。したがって、フィルタ70の有する作動ガスの冷却機能およびスラグ捕集機能が損なわれることもない。
【0130】
さらに、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Bにおいては、仕切り部材40とフィルタ70とをハウジングの軸方向に沿って当該軸と直交する面に投影した場合に、フィルタ70の投影領域の内縁が仕切り部材40の投影領域の内縁よりも内側に位置しないように構成されている。すなわち、作動ガス生成室側から仕切り部材40およびフィルタ70を平面視した場合に、フィルタ70が仕切り部材40によって完全に覆い隠されるように仕切り部材40およびフィルタ70の相対的な位置関係が調節されている。このように構成することにより、仕切り部材40の第2連通孔43を通過した高温高圧の作動ガスは、フィルタ70の内周面を沿って流動することになるため、作動ガスが直接フィルタ70に吹き付けられる割合を大幅に低減することができる。
【0131】
なお、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Bにおいては、作動時において仕切り部材40が上述した領域B1に位置する部分のフィルタ70によって保持されることになるため、当該仕切り部材40のみによって作動ガスの推力に耐え得るように仕切り部材40を設計する必要がなく、その厚みを従来に比して小さくすることができる。具体的には、一般的なシリンダ型ガス発生器の仕様を考慮した場合には、仕切り部材40として鉄鋼材を利用した場合にその厚みを概ね0.7mm以上とすれば足りる。
【0132】
以上において説明した本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Dとすることにより、上述した本発明の実施の形態1におけるシリンダ型ガス発生器1Aとした場合と同様の効果を得ることができる。
【0133】
なお、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Dにおいては、仕切り部材40とフィルタ70とをハウジングの軸方向に沿って当該軸と直交する面に投影した場合に、フィルタ70の投影領域の内縁が仕切り部材40の投影領域の内縁と合致するように構成している。このように構成すれば、フィルタ70の機能を最大限に得ることができる。
【0134】
また、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Dにおいては、仕切り部材40の筒状突出部42が環状板部41から遠ざかるにつれて徐々に拡径した円錐板状の形状にて構成されているため、当該シリンダ型ガス発生器1Dを組み立てるに際して、予めフィルタ70と仕切り部材40とを一体化させておくことが可能になる。このようにすれば、組立て時において組付けるべき部品の点数を削減することができ、組立て工数が減少することに伴って製造コストを低減することも可能になる。
【0135】
以上において説明した本発明の実施の形態1ないし4においては、第1ハウジング部材10として圧延鋼板をプレス成形してなるプレス成形品または電縫管の軸方向端部の一方をクロージング処理してなる成形品にて構成した場合を例示して説明を行なったが、これに代えて、第1ハウジング部材10を引き抜き成形してなるシームレス管にて構成してもよい。このようなシームレス管にて第1ハウジング部材10を形成した場合にも、上述した効果を得ることができる。
【0136】
また、以上において説明した本発明の実施の形態1ないし4においては、点火器30として、抵抗体としてのニクロム線等を熱源として利用するものを例示して説明を行なったが、いわゆる半導体ブリッジ(Semiconductor Bridge)を熱源として利用する点火器を使用することも可能である。当該半導体ブリッジを熱源として利用する点火器を利用した場合には、作動時においてより迅速にガス出力の得られるシリンダ型ガス発生器とすることができる。
【0137】
また、以上において説明した本発明の実施の形態1ないし4においては、ガス発生剤62および伝火薬61がそれぞれ第1密閉容器80および第2密閉容器90に収容されてなるシリンダ型ガス発生器を例示して説明を行なったが、必ずしもこのように構成されている必要はなく、ガス発生剤62および伝火薬61は、第1ハウジング部材10および第2ハウジング部材20からなるハウジングに直接充填された構成とされていてもよい。ただし、その場合には、ガス発生剤62および伝火薬61が吸湿することを防止するための気密処理が、ハウジングの所定部位に別途施されていることが必要である。
【0138】
また、以上において説明した本発明の実施の形態1ないし4においては、ガス発生剤62の燃焼を促進させるために伝火薬61が装填されてなるシリンダ型ガス発生器を例示して説明を行なったが、当該伝火薬61は必ずしも必須の構成ではなく、燃焼開始のためのガス発生剤62の感度を向上させること等によって伝火薬61の装填を不要とすることも可能である。また、伝火薬61をシリンダ型ガス発生器に装填する構成を採用する場合にも、当該伝火薬61を点火器30に一体化させて組付けることも可能である。
【0139】
また、以上において説明した本発明の実施の形態1ないし4においては、第1ハウジング部材10と第2ハウジング部材20とをかしめ固定することで連結してなるシリンダ型ガス発生器を例示して説明を行なったが、第1ハウジング部材10と第2ハウジング部材20との固定に溶接を利用することも当然に可能である。
【0140】
また、以上において説明した本発明の実施の形態1ないし4においては、仕切り部材40の筒状突出部42の形状を円錐板状とした場合を例示して説明を行なったが、当該筒状突出部42の形状はこれに限定されるものではなく、たとえば断面の形状が湾曲状とされていてもよい。いずれにせよ、筒状突出部42の形状としては、内圧の上昇に伴って筒状突出部42に加わる力がハウジングの径方向および軸方向のいずれにも交差する方向に作用するような形状とされていればよく、当該筒状突出部42の内周面がハウジングの軸方向と平行に配置されていなければよい。
【0141】
加えて、以上において説明した本発明の実施の形態1ないし4においては、本発明をサイドエアバッグ装置に組み込まれるシリンダ型ガス発生器に適用した場合を例示して説明を行なったが、本発明の適用対象はこれに限られるものではなく、助手席用エアバッグ装置やカーテンエアバッグ装置、ニーエアバッグ装置等に組み込まれるシリンダ型ガス発生器や、シリンダ型ガス発生器と同様に長尺状のガス出力部を有するいわゆるT字型のガス発生器にもその適用が可能である。
【0142】
なお、以上において説明した本発明の実施の形態1ないし4におけるシリンダ型ガス発生器の特徴的な構成は、装置構成上、許容される範囲で当然に相互に組み合わせることが可能である。
【0143】
このように、今回開示した上記各実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって画定され、また特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【符号の説明】
【0144】
1A〜1D,1X シリンダ型ガス発生器、10 第1ハウジング部材、11 周壁部、12 底壁部、13 ガス噴出口、14 かしめ部、20 第2ハウジング部材、21 溝、22 凹部、23 貫通部、24 かしめ部、30 点火器、31 基部、32 点火部、33 端子ピン、40 仕切り部材、41 環状板部、42 筒状突出部、43 第2連通孔、50 区画部材、51 フランジ部、52 円筒状部、52a 拡径部、53 底部、54 第1連通孔、55 中空部、61 伝火薬、62 ガス発生剤、63 第1クッション材、64 第2クッション材、70 フィルタ、71 中空連通部、80 第1密閉容器、81 カップ部、81a 軸方向端部、82 キャップ部、83 収容空間、90 第2密閉容器、91 カップ部、92 キャップ部、93 収容空間、MP センサ組付けポート、SE 圧力センサ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等に搭載される乗員保護装置としてのエアバッグ装置に組み込まれるガス発生器に関し、より特定的には、長尺円柱状の外形を有するいわゆるシリンダ型ガス発生器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の乗員の保護の観点から、乗員保護装置であるエアバッグ装置が普及している。エアバッグ装置は、車両等衝突時に生じる衝撃から乗員を保護する目的で車両等に装備されるものであり、車両等衝突時に瞬時にエアバッグを膨張および展開させることにより、展開されたエアバッグで乗員の体を受け止めるものである。ガス発生器は、このエアバッグ装置に組み込まれ、車両等衝突時に瞬時にガスを発生させてエアバッグを膨張および展開させる機器である。
【0003】
ガス発生器には、車両等に対する設置位置や出力等の仕様に基づき、種々の構成のものが存在している。その一つに、「シリンダ型」と呼ばれる構造のガス発生器が存在する。シリンダ型ガス発生器は、その外形が長尺円柱状であり、サイドエアバッグ装置や助手席用のエアバッグ装置、カーテンエアバッグ装置、ニーエアバッグ装置等に好適に組み込まれる。なお、長尺円柱状の外形を有するガス発生器としては、このシリンダ型ガス発生器の他にも、いわゆるT字型ガス発生器と呼ばれるもの等が存在している。
【0004】
上述したシリンダ型ガス発生器の具体的な構造が開示された文献として、たとえば特開2005−313812号公報(特許文献1)や特開平11−78766号公報(特許文献2)、特開2002−166818号公報(特許文献3)等がある。これら特許文献1ないし3に開示のシリンダ型ガス発生器にあっては、長尺円筒状のハウジングの軸方向の一端部に点火器および伝火薬が配置され、軸方向の略中央部にガス発生剤が収容されてこのガス発生剤が燃焼することで作動ガスが生成される作動ガス生成室が設けられ、軸方向の他端部にフィルタが収容されたフィルタ室およびガス噴出口が設けられている。
【0005】
当該構成のシリンダ型ガス発生器においては、点火器が作動することによって生じた火炎が伝火薬の燃焼を介してガス発生剤に伝達され、これによりガス発生剤が燃焼して高温高圧の作動ガスが作動ガス生成室にて生成され、生成された作動ガスがハウジングの軸方向に沿って作動ガス生成室からフィルタ室に流入し、フィルタを通過してガス噴出口よりハウジングの外部へと噴出される。ガス噴出口から噴出された作動ガスは、その後エアバッグの膨張および展開に利用される。
【0006】
このうち、上記特許文献3には、作動ガス生成室に有底円筒状の区画部材が配置されてなるシリンダ型ガス発生器が開示されている(特に特許文献3の図3参照)。当該作動ガス生成室に区画部材が配置されてなるシリンダ型ガス発生器にあっては、区画部材の中空部を除く部分の作動ガス生成室にガス発生剤が収容されており、点火手段によって点火されたガス発生剤が順次点火手段側から燃焼して作動ガスが生成されるとともに、生成された作動ガスが速やかに区画部材に設けられた連通孔を介して区画部材の中空部に流入してフィルタ室へと移動することになる。したがって、当該構成を採用することにより、未燃焼のガス発生剤が作動ガスの流動抵抗になることが未然に防止され、出力特性に優れたシリンダ型ガス発生器とすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−313812号公報
【特許文献2】特開平11−78766号公報
【特許文献3】特開2002−166818号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
シリンダ型ガス発生器においては、車両等への搭載性の改善の要求が非常に強く、その小型軽量化が重要な課題となっている。そのため、近年においては、シリンダ型ガス発生器の主要構成部品であるハウジングやフィルタといった比較的重量の重い部品を小型かつ軽量の部品に変更する試みがなされている。その一つに、強度部品であるハウジングを、従来利用されていたステンレス鋼や鉄鋼等からなる部材から、SPCEに代表される圧延鋼板等の小径のプレス成形品に変更する試みが検討されている。
【0009】
ここで、近年、ガス発生器に使用されるガス発生剤として、非アジド系ガス発生剤が普及している。この非アジド系ガス発生剤を使用した場合には、生成される作動ガスが比較的低温であり、エアバッグ装置に好適に利用できるメリットが得られるものの、他の組成のガス発生剤を使用した場合に比べて着火性が悪いといった問題や、安定的に燃焼させるためには高圧環境下におく必要があるといった問題が生じてしまう。そのため、シリンダ型ガス発生器のハウジングを小型軽量化するためには、これらの点を考慮に入れることが必要となる。
【0010】
また、シリンダ型ガス発生器のハウジングを小径化した場合には、生成された作動ガスが作動ガス生成室内にこもることによってガス噴出口から作動ガスが噴出されるまでの時間が長くなってしまう傾向がある。これは、未燃焼のガス発生剤や燃焼中のガス発生剤自体が、生成された作動ガスの流動抵抗となってしまうためである。そのため、シリンダ型ガス発生器のハウジングを単に小径化した場合には、作動初期時に作動ガス生成室の内圧が急激に上昇してしまい、求められる出力特性を満足させることが困難になり、特に作動初期の動作速度が速いことが求められるサイドエアバッグ装置やカーテンエアバッグ装置等への適用が困難になる問題が生じる。
【0011】
また、シリンダ型ガス発生器においては、ガス発生剤が燃焼して作動ガスが生成されることによる作動ガス生成室の内圧上昇に十分に耐え得るようにハウジングに耐圧性をもたせることが必要である。ハウジングにこのような耐圧性をもたせるために高張力鋼板のような高強度の部材をプレス成形して小径のハウジングを構成した場合には、作動ガス生成室の内圧上昇に十分に耐え得るものとすることはできるものの、プレス加工の際にハウジングに顕著に残留応力が発生することになり、特に低温環境下においてハウジングに十分な強度をもたせることが困難になる。これを解決するためには、焼き鈍し等の処理を行なうことが必要になるが、このような焼き鈍し処理を施した場合には、上述した作動ガス生成室の内圧上昇に耐え得る耐圧性を維持することができなくなってしまう。したがって、低温環境下における強度の確保と作動時の耐圧性の確保の両立を図るためには、結果的にハウジングの厚みを相当程度厚くすることが必要になり、成形性が劣るといった問題や重量が増加するといった問題が生じ、そもそも小径化を行なう意義が損なわれてしまうことになってしまう。
【0012】
一方、上述した圧延鋼板からなる小径のプレス成形品にてハウジングを構成しようとした場合には、低温環境下において十分な強度を有したものとすることができるものの、ハウジングに上述した作動ガス生成室の内圧上昇に耐え得る耐圧性をもたせることが困難になる。
【0013】
このように、シリンダ型ガス発生器の小型軽量化(特に小径化および軽量化)を図るためには、動作時において作動ガス生成室をガス発生剤の燃焼に適した高圧環境下に維持すること、生成された作動ガスが作動ガス生成室内にこもることを防止して初期の動作速度を速めること、ハウジングに十分な耐圧性と低温環境下における十分な強度とをもたせること等のすべての条件を充足させることが必要になり、その実現が非常に困難となっている。
【0014】
また、シリンダ型ガス発生器の小型軽量化を図る場合には、上述した点に加え、安定して所望の出力特性が得られるように装置構成を検討することが必要である。一般に、ガス発生剤は、粒状の小型のペレットとして成形されるが、これら粒状のガス発生剤のそれぞれを個別にその配置位置や向きを調整しつつ作動ガス生成室に充填することは、事実上不可能である。そのため、粒状のガス発生剤は、作動ガス生成室にその配置位置や向きが調整されることとなくランダムに充填される場合が多い。
【0015】
しかしながら、粒状のガス発生剤を作動ガス生成室にランダムに充填した場合には、作動ガス生成室におけるガス発生剤の密度に偏りが生じる場合がある。このガス発生剤の密度の偏りが生じた場合には、シリンダ型ガス発生器の出力特性に大きな影響を与えてしまうことになり、結果として製品間で出力特性に大きなばらつきが生じてしまうことになる。ここで、小型化が十分に図られていないシリンダ型ガス発生器においては、ガス発生剤が収容される作動ガス生成室の容積が比較的大きく構成できるため、上述したガス発生剤の密度の偏りの問題は生じ難いが、小型化が図られたシリンダ型ガス発生器においては、作動ガス生成室の容積が必然的に小さくなるため、当該ガス発生剤の密度の偏りの問題は、非常に重大な問題になる。
【0016】
当該ガス発生剤の密度の偏りの問題は、上述した特許文献3に開示の如くの構成のシリンダ型ガス発生器においても例外ではなく、非常に重大な問題となり得る。すなわち、当該特許文献3に開示の如くの構成のシリンダ型ガス発生器とすることにより、作動ガス生成室に区画部材を配置することで出力特性に優れたものとすることができるものの、ガス発生剤の充填状態の如何によっては、その出力特性に大きなばらつきが生じてしまうことになる。
【0017】
したがって、本発明は、上述した問題点を解決すべくなされたものであり、安定して所望の出力特性が得られる小型軽量化されたガス発生器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明に基づくガス発生器は、ハウジングと、点火手段と、仕切り部材と、区画部材とを備えている。上記ハウジングは、軸方向の両端が閉塞されてなる長尺円筒状の部材からなり、ガス発生剤が燃焼することで作動ガスが生成される作動ガス生成室と、上記作動ガス生成室で生成された作動ガスが通過するフィルタが収容されたフィルタ室とを内部に含んでいる。上記点火手段は、上記ガス発生剤を燃焼させるための火炎を発生させるものであり、上記ハウジングの軸方向の一端部に配置されている。上記仕切り部材は、上記ハウジングの内部に位置しており、上記ハウジングの内部の空間を軸方向に上記作動ガス生成室と上記フィルタ室とに仕切っている。上記区画部材は、上記作動ガス生成室の内部に位置しており、上記作動ガス生成室を区画している。上記フィルタ室は、上記作動ガス生成室よりも上記ハウジングの軸方向の他端部側に位置している。上記ハウジングの上記フィルタ室を規定する部分の周壁部には、上記フィルタを通過した作動ガスを外部に噴出するための複数のガス噴出口が設けられている。上記区画部材は、上記ハウジングと同軸上に配置された内部に中空部を有する有底筒状の部材にて構成されており、上記仕切り部材の上記作動ガス生成室側の端部から上記ハウジングの軸方向に沿って延びる筒状部と、上記筒状部の上記点火手段側の端部を閉塞する底部とを含んでいる。上記区画部材の上記底部は、上記作動ガス生成室の上記点火手段側の端部よりも上記仕切り部材側に位置している。上記ガス発生剤は、上記区画部材の上記中空部を除く部分の上記作動ガス生成室に収容されている。上記区画部材の上記筒状部には、上記作動ガス生成室の上記ガス発生剤が収容された空間と上記区画部材の上記中空部とを連通する複数の第1連通孔が設けられている。上記仕切り部材の中央部には、上記区画部材の上記中空部と上記フィルタ室とを連通するための第2連通孔が設けられている。ここで、上記区画部材の上記底部は、上記点火手段側に向かうにつれて徐々にその外形が小さくなる先細り形状を有している。
【0019】
上記本発明に基づくガス発生器にあっては、上記区画部材の上記底部の外表面が、略半球面形状を有していることが好ましい。
【0020】
上記本発明に基づくガス発生器にあっては、上記区画部材の上記底部の外表面が、略円錐面形状を有していてもよい。
【0021】
上記本発明に基づくガス発生器にあっては、上記区画部材の上記筒状部が、上記ハウジングの軸方向に沿って内径および外径が一定とされた円筒状部を有していることが好ましく、その場合には、上述した複数の第1連通孔が、上記区画部材の上記円筒状部に設けられていることが好ましい。
【0022】
上記本発明に基づくガス発生器にあっては、上記区画部材の上記筒状部が、上記円筒状部の上記仕切り部材側の端部から連続して延び、上記仕切り部材側に向かうにつれて徐々に拡径する拡径部をさらに有していてもよい。
【0023】
上記本発明に基づくガス発生器にあっては、上記ハウジングが、当該ハウジングの上記他端部および上記周壁部を構成する長尺有底円筒状の第1ハウジング部材と、上記第1ハウジング部材の開口端を閉塞することで上記ハウジングの上記一端部を構成する第2ハウジング部材(スクイブホルダ)とを含んでいてもよく、その場合には、上記第1ハウジング部材が、電縫管の軸方向端部の一方をクロージング処理していなる成形品にて構成されていることが好ましい。そのように構成した場合には、上記第1ハウジング部材の外径R1が、15mm≦R1≦22mmの条件を充足し、上記区画部材における上記底部と上記筒状部との境界部分から上記区画部材の上記底部の上記点火手段側の端部までの距離L1が、1mm≦L1≦7mmの条件を充足し、上記区画部材の上記底部の上記点火手段側の端部から上記作動ガス生成室の上記点火手段側の端部までの距離L2と、上記作動ガス生成室の径R2とが、0.026≦L2/R2≦0.71の条件を充足し、かつ、上記区画部材の上記中空部の径R3と、上記作動ガス生成室の径R2とが、0.28≦R3/R2≦0.54の条件を充足していることが好ましい。
【0024】
上記本発明に基づくガス発生器にあっては、上記ガス発生剤が、燃料としてグアニジン系化合物と、酸化剤として塩基性硝酸銅とを含んでいることが好ましい。
【0025】
上記本発明に基づくガス発生器は、さらに、振動による上記ガス発生剤の破砕を防止するための破砕防止部材と、上記ハウジングの内部に位置し、密閉された収容空間を有する第1密閉容器とを備えていることが好ましく、その場合に、上記ガス発生剤、上記区画部材および上記破砕防止部材が、上記第1密閉容器の上記収容空間に収容されていることが好ましい。
【0026】
上記本発明に基づくガス発生器は、上記ハウジングの内部に位置し、密閉された収容空間を有する第2密閉容器をさらに備えていてもよい。その場合には、上記点火手段が、燃焼することによって火炎を生じさせる点火薬を含む点火器と、上記点火器にて生じた火炎を上記ガス発生剤に伝達するための伝火薬とを含んでいることが好ましく、このうちの上記伝火薬が、上記第2密閉容器の上記収容空間に収容されていることが好ましい。
【0027】
上記本発明に基づくガス発生器にあっては、上記フィルタが、上記ハウジングの軸方向に沿って延びる中空連通部を有していることが好ましく、当該中空連通部が、上記フィルタの上記作動ガス生成室側の端面に少なくとも達していることが好ましい。その場合には、上記仕切り部材が、上記フィルタの上記端面を覆う環状板部と、当該環状板部の内周縁から上記フィルタの上記中空連通部内に向けて連続して延びることで上記フィルタの上記端面寄りの内周面を覆う筒状突出部とを含んでいることが好ましく、上記第2連通孔は、上記仕切り部材の上記筒状突出部の内周面によって規定されていることが好ましい。そして、さらにその場合には、上記仕切り部材の上記筒状突出部が、上記仕切り部材の上記環状板部から遠ざかるにつれて上記第2連通孔の開口面積が減少するように徐々に縮径していることが好ましい。
【0028】
上記本発明に基づくガス発生器にあっては、上記フィルタが、上記ハウジングの軸方向に沿って延びる中空連通部を有していることが好ましく、当該中空連通部が、上記フィルタの上記作動ガス生成室側の端面に少なくとも達していることが好ましい。その場合には、上記仕切り部材が、上記フィルタの上記端面を覆う環状板部と、当該環状板部の内周縁から上記フィルタの上記中空連通部内に向けて連続して延びることで上記フィルタの上記端面寄りの内周面を覆う筒状突出部とを含んでいることが好ましく、上記第2連通孔は、上記仕切り部材の上記筒状突出部の内周面によって規定されていることが好ましい。そして、さらにその場合には、上記仕切り部材の上記筒状突出部が、上記仕切り部材の上記環状板部から遠ざかるにつれて上記第2連通孔の開口面積が増加するように徐々に拡径していることが好ましい。
【0029】
上記本発明に基づくガス発生器にあっては、上記第1ハウジング部材の外径と上記第2ハウジング部材の外径とが、同一であることが好ましい。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、安定して所望の出力特性が得られる小型軽量化されたガス発生器とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施の形態1におけるシリンダ型ガス発生器の正面図および右側面図である。
【図2】本発明の実施の形態1におけるシリンダ型ガス発生器の模式断面図である。
【図3】本発明の実施の形態1におけるシリンダ型ガス発生器を製造する際のガス発生剤の充填および封止工程を示す模式断面図である。
【図4】本発明の実施の形態1におけるシリンダ型ガス発生器の要部拡大断面図である。
【図5】検証試験において使用した実施例に係るシリンダ型ガス発生器の構成を示す模式断面図である。
【図6】検証試験において使用した比較例に係るシリンダ型ガス発生器の構成を示す模式断面図である。
【図7】検証試験にて測定した各種パラメータを説明するためのグラフである。
【図8】検証試験の試験結果を示す表である。
【図9】検証試験の試験結果を示すグラフであり、10ms時のタンク圧のばらつきを示すグラフである。
【図10】検証試験の試験結果を示すグラフであり、タンク圧の最大値のばらつきを示すグラフである。
【図11】検証試験の試験結果を示すグラフであり、タンク圧が最大値に達する時間のばらつきを示すグラフである。
【図12】検証試験の試験結果を示すグラフであり、作動ガス生成室で観測される内圧の最大値のばらつきを示すグラフである。
【図13】本発明の実施の形態2におけるシリンダ型ガス発生器の模式断面図である。
【図14】本発明の実施の形態3におけるシリンダ型ガス発生器の模式断面図である。
【図15】本発明の実施の形態4におけるシリンダ型ガス発生器の模式断面図である。
【図16】本発明の実施の形態4におけるシリンダ型ガス発生器の要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。なお、以下に示す実施の形態は、サイドエアバッグ装置等に好適に組み込まれるいわゆるシリンダ型ガス発生器に本発明を適用した場合を例示するものである。
【0033】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1におけるシリンダ型ガス発生器の外観構造を示す図であり、図1(A)は正面図、図1(B)は右側面図である。図2は、図1に示すシリンダ型ガス発生器の内部構造を示す図であり、図1(A)および図1(B)に示すII−II線に沿った模式断面図である。以下においては、これら図1(A)、図1(B)および図2を参照して、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器の外観構造および内部構造について説明する。
【0034】
図1(A)、図1(B)および図2に示すように、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Aは、長尺円柱状の外形を有しており、軸方向の両端が閉塞されてなる外殻部材としてのハウジングを有している。外殻部材としてのハウジングは、周壁部11および底壁部12を有する軸方向の片側が閉塞された有底円筒状の第1ハウジング部材10と、第1ハウジング部材10の軸方向と同方向に沿って延びる貫通部23を有する筒状の第2ハウジング部材20とを含んでいる。第2ハウジング部材20は、その外周面の所定位置に後述するかしめ固定のための溝21を有しており、当該溝21は、第2ハウジング部材20の外周面に周方向に沿って延びるように環状に形成されている。なお、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Aにおいては、第1ハウジング部材10の外径と第2ハウジング部材20の外径とが、同一となるように構成されている。
【0035】
第2ハウジング部材20は、第1ハウジング部材10の開口端を閉塞するように第1ハウジング部材10に固定されている。具体的には、第1ハウジング部材10の開口端に第2ハウジング部材20の一部が内挿された状態で、当該第2ハウジング部材20の外周面に設けられた溝21に対応する部分の第1ハウジング部材10の周壁部11を径方向内側に向けて縮径させて当該溝21に係合させることにより、第2ハウジング部材20が第1ハウジング部材10に対してかしめ固定されている。これにより、ハウジングの軸方向の一端部が、第2ハウジング部材20によって構成されることになり、ハウジングの軸方向の他端部が、第1ハウジング部材10の底壁部12によって構成されることになる。
【0036】
当該かしめ固定は、第1ハウジング部材10の周壁部11を径方向内側に向けて均等に縮径される八方かしめと呼ばれるかしめ固定である。この八方かしめを行なうことにより、第1ハウジング部材10の周壁部11には、かしめ部14が設けられることになる。
【0037】
第1ハウジング部材10は、ステンレス鋼や鉄鋼、アルミニウム合金、ステンレス合金等の金属製の部材にて構成されていてもよいし、SPCEに代表される圧延鋼板をプレス加工することで有底円筒状に成形された金属製のプレス成形品、またはSTKMに代表される電縫管の軸方向端部の一方をクロージング処理して有底円筒状に成形された金属製の成形品にて構成されていてもよい。特に、第1ハウジング部材10を圧延鋼板のプレス成形品や電縫管の成形品で構成した場合には、ステンレス鋼や鉄鋼等の金属製の部材を用いた場合に比べて安価にかつ容易に第1ハウジング部材10を形成することができるとともに、大幅な軽量化が可能になる。一方、第2ハウジング部材20は、ステンレス鋼や鉄鋼、アルミニウム合金、ステンレス合金等の金属製の部材にて構成されている。
【0038】
第1ハウジング部材10および第2ハウジング部材20によって構成されるハウジングの内部の空間には、仕切り部材40が配置されている。この仕切り部材40は、ハウジングの内部の空間を軸方向に作動ガス生成室とフィルタ室とに仕切るものである。作動ガス生成室は、ハウジングの軸方向の略中央部に位置しており、内部に後述する第1密閉容器80の一部が収容されている。フィルタ室は、ハウジングの軸方向の他端部側(すなわち、第1ハウジング部材10の底壁部12側)に位置しており、内部に後述するフィルタ70が収容されている。
【0039】
図2に示すように、ハウジングの軸方向の一端部(すなわち、第2ハウジング部材20寄りの部分)には、点火手段としての点火器(スクイブ)30および伝火薬(エンハンサ)61が配置されている。点火手段としての点火器30および伝火薬61は、後述する粒状のガス発生剤62を燃焼させるための火炎を発生させるためのものであり、このうちの伝火薬61は、第2密閉容器90に収容されている。当該点火器30および第2密閉容器90が収容された部分のハウジングの内部の空間は、点火室に相当する。すなわち、点火室は、ハウジングの軸方向の一端部寄りの部分に位置しており、第1ハウジング部材10の周壁部11と、第2ハウジング部材20と、後述する第1密閉容器80とによって規定されている。
【0040】
点火器30は、第2ハウジング部材20の貫通部23に内挿されてかしめ固定されている。より詳細には、第2ハウジング部材20は、ハウジングの内部の空間に面する側の端部にかしめ部24を有しており、点火器30が貫通部23に内挿されて第2ハウジング部材20に当て留めされた状態で当該かしめ部24をかしめることにより、点火器30が第2ハウジング部材20に挟持されて点火器30が第2ハウジング部材20に固定されている。
【0041】
点火器30は、火炎を発生させるための点火装置であり、基部31と、点火部32と、端子ピン33とを含んでいる。基部31は、一対の端子ピン33が挿通されることでこれを保持するための部位であり、点火部32に隣接して設けられている。点火部32は、その内部に作動時において着火する点火薬と、この点火薬を燃焼させるための抵抗体とを含んでいる。端子ピン33は、点火薬を着火させるために点火部32に接続されている。
【0042】
より詳細には、点火器30においては、基部31によって保持された一対の端子ピン33が点火部32内に挿入され、その先端を連結するように抵抗体(ブリッジワイヤ)が取付けられ、この抵抗体を取り囲むようにまたはこの抵抗体に接するように点火部32内に点火薬が充填されている。抵抗体としては、一般にニクロム線やプラチナおよびタングステンを含む合金製の抵抗線等が利用され、点火薬としては、一般にZPP(ジルコニウム・過塩素酸カリウム)、ZWPP(ジルコニウム・タングステン・過塩素酸カリウム)、鉛トリシネート等が利用される。また、点火部32を囲うスクイブカップは、一般に金属製またはプラスチック製である。
【0043】
衝突を検知した際には、端子ピン33を介して抵抗体に所定量の電流が流れる。抵抗体に所定量の電流が流れることにより、抵抗体においてジュール熱が発生し、この熱を受けて点火薬が燃焼を開始する。燃焼により生じた高温の火炎は、点火薬を収納しているスクイブカップを破裂させる。抵抗体に電流が流れてから点火器30が作動するまでの時間は、抵抗体にニクロム線を利用した場合には3ミリ秒以下である。
【0044】
上述したように、伝火薬61は、第2密閉容器90に収容されている。第2密閉容器90は、有底筒状のカップ部91と、当該カップ部91の開口を閉塞するキャップ部92とを含んでおり、ハウジングの軸方向の一端部寄りの位置に点火器30に連接するように内挿されている。第2密閉容器90においては、カップ部91とキャップ部92とが組み合わされて接合されており、これにより第2密閉容器90の内部に形成される収容空間93が当該第2密閉容器90の外部から気密に封止されている。カップ部91およびキャップ部92としては、銅やアルミニウム、銅合金、アルミニウム合金等の金属薄板(箔)をプレス加工等することで成形された金属部材や、射出成形やシート成形等を行なうことで形成された樹脂部材等が利用される。また、カップ部91とキャップ部92との接合には、ろう付けや接着、巻き締め(かしめ)等が好適に用いられる。当該接合の際にシール剤を使用すれば、気密性をさらに高めることもできる。
【0045】
伝火薬61は、点火器30が作動することによって生じた火炎によって点火され、燃焼することによって熱粒子を発生する。伝火薬61としては、後述するガス発生剤62を確実に燃焼開始させることができるものであることが必要であり、一般的には、B/KNO3、B/NaNO3、Sr(NO3)2等に代表される金属粉/酸化剤からなる組成物など、後述するガス発生剤62よりも燃焼速度が速くかつ高発熱性の組成物が用いられる。伝火薬61は、粉状のものや、バインダによって所定の形状に成形されたもの等が利用される。バインダによって成形された伝火薬の形状としては、たとえば顆粒状、円柱状、シート状、球状、単孔円筒状、多孔円筒状、タブレット状など種々の形状がある。なお、バインダとしては、好適にはヒドロタルサイト類、ニトロセルロース等が使用できるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0046】
なお、第2密閉容器90と第2ハウジング部材20との間でかつ点火器30の点火部32を取り巻く部分の点火室には、第1クッション材63が配置されている。当該第1クッション材63は、後述する各種の内部構成部品をハウジングの内部において軸方向に固定するための部材であり、同時に上述した内部構成部品の軸方向長さのばらつきを吸収するための部材でもある。したがって、第1クッション材63は、上述した第2密閉容器90と第2ハウジング部材20とによってハウジングの軸方向に挟み込まれて固定されている。第1クッション材63としては、たとえばセラミックスファイバの成形体や発泡シリコン等が利用可能である。
【0047】
図2に示すように、ハウジングの内部の空間のうち、第2密閉容器90が配置された空間に隣接する空間には、第1密閉容器80が配置されている。第1密閉容器80は、有底筒状のカップ部81と、当該カップ部81の開口を閉塞するキャップ部82とを含んでおり、ハウジングの内部の空間に内挿されている。第1密閉容器80においては、カップ部81とキャップ部82とが組み合わされて接合されることにより、第1密閉容器80の内部に形成される収容空間83が当該第1密閉容器80の外部から気密に封止されている。カップ部81およびキャップ部82としては、銅やアルミニウム、銅合金、アルミニウム合金等の金属薄板(箔)をプレス加工等することで成形された金属部材や、射出成形やシート成形等を行なうことで形成された樹脂部材等が利用される。また、カップ部81とキャップ部82との接合には、ろう付けや接着、巻き締め(かしめ)等が好適に用いられる。当該接合の際にシール剤を使用すれば、気密性をさらに高めることもできる。
【0048】
第1密閉容器80の収容空間83には、粒状のガス発生剤62と、区画部材50と、第2クッション材64とが収容されている。より詳細には、第1密閉容器80の第2密閉容器90が位置する側の端部部分には、第2クッション材64が配置されており、当該第2クッション材64が配置された部分を除く部分に、ガス発生剤62および区画部材50が配置されている。ここで、上述した作動ガス生成室は、第1ハウジング部材10の周壁部11と、第2クッション材64と、後述する仕切り部材40とによって規定される空間にて構成されている。そして、当該作動ガス生成室は、その内部に収容された上記区画部材50によってさらに2つの空間に区画されている。
【0049】
区画部材50は、内部に中空部55を有する一端が閉塞された有底筒状の部材にて構成されており、フランジ部51と、筒状部としての円筒状部52と、底部53とを有している。フランジ部51は、第1密閉容器80の仕切り部材40側の端部に配置されており、フランジ部51の仕切り部材40側の主面は、第1密閉容器80の仕切り部材40側の軸方向端部81aに当接している。円筒状部52は、ハウジングの軸方向に沿って内径および外径が一定とされた直管状に延びる円筒形状を有しており、フランジ部51の内周縁から連続して延び、第1密閉容器80の仕切り部材40側の端部から収容空間83の内部に向けて突出して位置している。底部53は、円筒状部52から連続して延び、円筒状部52の点火器30側の端部を閉塞している。なお、底部53は、第1密閉容器80の点火器30側の端部から所定の距離をもって離間して配置されており、点火器30側に向かうにつれてその外形が徐々に小さくなる先細り形状を有している。ここで、区画部材50の軸方向長さは、第1密閉容器80の軸方向長さの40%以上90%以下とされることが好ましく、より好ましくは第1密閉容器80の軸方向長さの70%以上85%以下とされる。
【0050】
ここで、作動ガス生成室のうち、区画部材50の中空部55を除く部分には、上述した粒状のガス発生剤62が収容されている。すなわち、ガス発生剤62は、作動ガス生成室のうち、区画部材50の円筒状部52および底部53を径方向に取り巻く空間と、ハウジングの軸方向に沿って区画部材50と第2クッション材64との間に位置する空間とに充填されている。
【0051】
粒状のガス発生剤62は、点火器30によって点火された伝火薬61が燃焼することによって生じた熱粒子によって着火され、燃焼することによってガスを発生させるものである。粒状のガス発生剤62の各々は、一般に燃料と酸化剤と添加剤とを含む成形体として形成される。燃料としては、たとえばトリアゾール誘導体、テトラゾール誘導体、グアニジン誘導体、アゾジカルボンアミド誘導体、ヒドラジン誘導体等またはこれらの組み合わせが利用される。具体的には、たとえばニトログアニジンや硝酸グアニジン、シアノグアニジン、5−アミノテトラゾール等が好適に利用される。また、酸化剤としては、たとえば塩基性硝酸銅等の塩基性硝酸塩や、過塩素酸アンモニウムや過塩素酸カリウム等の過塩素酸塩、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、アンモニアから選ばれたカチオンを含む硝酸塩等が利用される。硝酸塩としては、たとえば硝酸ナトリウム、硝酸カリウム等が好適に利用される。また、添加剤としては、バインダやスラグ形成剤、燃焼調整剤等が挙げられる。バインダとしては、たとえばヒドロキシプロピレンメチルセルロース等のセルロース誘導体や、カルボキシメチルセルロースの金属塩、ステアリン酸塩等の有機バインダや、合成ヒドロキシタルサイト、酸性白土等の無機バインダが好適に利用可能である。スラグ形成剤としては窒化珪素、シリカ、酸性白土等が好適に利用可能である。また、燃焼調整剤としては、金属酸化物、フェロシリコン、活性炭、グラファイト等が好適に利用可能である。
【0052】
粒状に形成された個々のガス発生剤62の成形体の形状としては、顆粒状、ペレット状、円柱状、ディスク状など様々な形状のものが挙げられる。また、有孔状(たとえば単孔筒形状や多孔筒形状等)の成形体も利用可能である。これらの形状は、シリンダ型ガス発生器1Aが組み込まれるエアバッグ装置の仕様に応じて適宜選択されることが好ましく、たとえばガス発生剤62の燃焼時において作動ガスの生成速度が時間的に変化する形状を選択するなど、仕様に応じた最適な形状を選択することが好ましい。また、ガス発生剤62の形状の他にもガス発生剤62の線燃焼速度、圧力指数などを考慮に入れて成形体のサイズや充填量を適宜選択することが好ましい。
【0053】
なお、粒状のガス発生剤62としては、燃料としてグアニジン系化合物を含み、酸化剤として塩基性硝酸銅を含むものを利用することが特に好適である。このグアニジン系化合物と塩基性硝酸銅とを含むガス発生剤を利用することとすれば、アジ化化合物のような毒性の問題が生じることもなく、また燃焼温度がスラグの融点よりも低くなってスラグを固形物として効果的にフィルタ70にて捕捉することができることになる。
【0054】
区画部材50の円筒状部52には、第1連通孔54が周方向および軸方向に沿って複数個設けられている。第1連通孔54は、粒状のガス発生剤62が収容された空間と区画部材50の中空部55とを連通させるための孔であり、粒状のガス発生剤62よりも小径の孔にて構成されている。なお、第1連通孔54は、区画部材50の底部53には設けられていないことが好ましい。これは、当該底部53に第1連通孔54が存在すると、シリンダ型ガス発生器1Aの動作時においてその孔が閉塞されてしまい、性能にばらつきが生じ易くなってしまうためである。
【0055】
区画部材50は、作動時において上述した中空部55と粒状のガス発生剤62が収容された空間との間に圧力差を生じさせるための圧力隔壁として機能するものであり、所定の強度をもった部材にて構成されている。具体的には、区画部材50は、たとえばステンレス鋼や鉄鋼、アルミニウム合金、ステンレス合金等の金属製の部材にて構成されている。
【0056】
第2クッション材64は、成形体からなるガス発生剤62が振動等によって破砕されることを防止するための破砕防止部材に相当し、好適にはセラミックスファイバの成形体や発泡シリコン等が利用される。この第2クッション材64は、作動時において伝火薬61の燃焼によって開口または分断し、場合によっては焼失する。
【0057】
上述したように、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Aにおいては、第1密閉容器80および第2密閉容器90にガス発生剤62および伝火薬61をそれぞれ封入した構成であるため、予めこれら薬剤を密閉容器に封入しておくことにより、シリンダ型ガス発生器1Aの組立作業が容易化するのみならず、ハウジングに別途気密処理を施すことも不要になり、部品点数の削減と構成の簡素化が可能になる。また、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Aにおいては、ガス発生剤62に加え、区画部材50および第2クッション材64を第1密閉容器80に予め封入した構成であるため、シリンダ型ガス発生器1Aの組立作業がさらに容易化する効果も得られる。
【0058】
図2に示すように、仕切り部材40は、ハウジングの内部の空間を軸方向に作動ガス生成室とフィルタ室とに仕切っている。仕切り部材40は、ハウジングの内部の空間において上述した第1密閉容器80に接するように配置されており、環状板部41と、筒状突出部42と、第2連通孔43とを有している。環状板部41は、第1密閉容器80に接してハウジングの軸と直交するように配置されている。筒状突出部42は、環状板部41の内周縁から連続して延び、上述した第1密閉容器80から遠ざかる方向に向けて突出して位置している。第2連通孔43は、筒状突出部42によって規定され、区画部材50の中空部55とフィルタ室とを連通するための孔である。
【0059】
仕切り部材40は、ハウジングに対して嵌合または遊嵌されており、ハウジングには、当該仕切り部材40を固定するためのかしめ加工は施されていない。ここで、嵌合とは、いわゆる圧入固定を含むものであり、仕切り部材40の環状板部41の外周端がハウジングの内周面に接触した状態で取付けられた状態を言う。また、遊嵌とは、仕切り部材40の環状板部41の外周端とハウジングの内周面とが全周にわたって必ずしも接触しておらず、多少の隙間(あそび)をもって内挿された状態を言う。なお、組立ての容易化の観点からは、仕切り部材41をハウジングに遊嵌することが好ましい。
【0060】
仕切り部材40は、後述するフィルタ70の作動ガス生成室側の端部に取付けられており、フィルタ70と上述した粒状のガス発生剤62を収容する第1密閉容器80とによって挟み込まれることでハウジングの内部において支持されている。なお、仕切り部材40は、たとえばステンレス鋼や鉄鋼、アルミニウム合金、ステンレス合金等の金属製の板状部材をプレス加工等することによって形成される。
【0061】
図2に示すように、第1ハウジング部材10の周壁部11および底壁部12と、仕切り部材40とによって規定されるフィルタ室には、フィルタ70が配置されている。フィルタ70が収容されたフィルタ室は、仕切り部材40を介して作動ガス生成室に隣接して設けられ、作動ガス生成室よりもハウジングの他端部側(すなわち、第1ハウジング部材10の底壁部12側)に位置している。
【0062】
フィルタ70は、ハウジングの軸方向と同方向に沿って延び、その軸方向端面に達する中空連通部71を有する円筒状の部材からなり、その軸方向の作動ガス生成室側の端面が仕切り部材40に当接しており、他方の端面が第1ハウジング部材10の底壁部12に当接している。また、フィルタ70の外周面は、第1ハウジング部材10の周壁部11の内周面に当接している。このような円筒状の部材からなるフィルタ70を利用すれば、作動時においてフィルタ室を流動する作動ガスの流動抵抗が低く抑えられ、効率的な作動ガスの流動が実現可能となる。
【0063】
フィルタ70は、たとえばステンレス鋼や鉄鋼等の金属線材を巻き回して焼結したものや、金属線材を編み込んだ網材をプレス加工することによって押し固めたもの、あるいは孔あき金属板を巻き回したもの等が利用される。ここで、網材としては、具体的にはメリヤス編みの金網や平織りの金網、クリンプ織りの金属線材の集合体等が利用される。また、孔あき金属板としては、たとえば、金属板に千鳥状に切れ目を入れるとともにこれを押し広げて孔を形成して網目状に加工したエキスパンドメタルや、金属板に孔を穿つとともにその際に孔の周縁に生じるバリを潰すことでこれを平坦化したフックメタル等が利用される。この場合において、形成される孔の大きさや形状は、必要に応じて適宜変更が可能であり、同一金属板上において異なる大きさや形状の孔が含まれていてもよい。なお、金属板としては、たとえば鋼板(マイルドスチール)やステンレス鋼板が好適に利用でき、またアルミニウム、銅、チタン、ニッケルまたはこれらの合金等の非鉄金属板を利用することもできる。
【0064】
このように金属線材や網材を円筒状に巻き回して焼結したり押し固めたりすることで形成されたフィルタや、エキスパンドメタルおよびフックメタル等にて構成されたフィルタは、その内部に空隙が含まれることになり、上述した作動ガスの流動を可能にする。フィルタ70は、作動ガス生成室にて生成された作動ガスがこのフィルタ70中を通過する際に、当該作動ガスが有する高温の熱を奪い取ることによってこれを冷却する冷却手段として機能するとともに、作動ガス中に含まれる残渣(スラグ)等を除去する除去手段としても機能する。
【0065】
図2に示すように、フィルタ室を規定する部分の第1ハウジング部材10の周壁部11には、ガス噴出口13が設けられている。このガス噴出口13は、シリンダ型ガス発生器1Aの内部において生成された作動ガスを外部に放出するための孔であり、第1ハウジング部材10の周壁部11の周方向および軸方向に沿って複数個設けられている。
【0066】
なお、シリンダ型ガス発生器1Aの第2ハウジング部材20が配置された側の端部には、雌型コネクタ(不図示)が取付けられる。より詳細には、第2ハウジング部材20に設けられた凹部22にシリンダ型ガス発生器1Aとは別途設けられる衝突検知センサからの信号を伝達するハーネスの雄型コネクタが接続される雌型コネクタが取付けられる。雌型コネクタには、必要に応じてショーティングクリップ(不図示)が取付けられる。このショーティングクリップは、シリンダ型ガス発生器1Aの搬送時等において静電放電等によってシリンダ型ガス発生器1Aが誤動作することを防止するために取付けられるものであり、エアバッグ装置への組付け段階においてハーネスの雄型コネクタが雌型コネクタに挿し込まれることによってその端子ピン33への接触が解除されるものである。
【0067】
次に、以上において説明したシリンダ型ガス発生器1Aの作動時における動作について図2を参照して説明する。本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Aが組み込まれたエアバッグ装置が搭載された車両が衝突した場合には、車両に別途設けられた衝突検知手段によって衝突が検知され、これに基づいて点火器30が作動する。点火器30が作動すると、点火薬の燃焼によって点火部32内の圧力が上昇し、これによって点火部32が破裂し、火炎が点火部32の外部へと流出する。
【0068】
点火部32の破裂後において、点火部32を取り巻く空間の温度と圧力は上昇し、第2密閉容器90が溶融または破裂する。これにより、第2密閉容器90内に収容された伝火薬61は、点火器30が作動することによって生じた火炎によって点火されて燃焼し、多量の熱粒子を発生させる。発生した多量の熱粒子は、第1密閉容器80のキャップ部82を溶融または破裂させ、第2クッション材64を開口または分断し、作動ガス生成室へと流入する。
【0069】
作動ガス生成室へと流入した熱粒子は、点火器30が位置する側から順次粒状のガス発生剤62を着火して燃焼させ、多量の作動ガスを生成させる。このようにして生成された作動ガスは、区画部材50に設けられた第1連通孔54を通過して区画部材50の中空部55に流入し、その先に位置する第1密閉容器80のカップ部81の軸方向端部81aを破裂させ、仕切り部材40に設けられた第2連通孔43を経由してフィルタ室へと流入する。
【0070】
フィルタ室に流れ込んだ作動ガスは、フィルタ70の中空連通部71内を経由してフィルタ70へと進入し、当該フィルタ70中を通過することで所定の温度にまで冷却されてガス噴出口13からシリンダ型ガス発生器1Aの外部へと噴出される。ガス噴出口13から噴出された作動ガスは、エアバッグの内部に導かれてエアバッグを膨張および展開させる。
【0071】
本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Aにあっては、粒状のガス発生剤62の燃焼の初期段階において、区画部材50と第2クッション材64との間に位置する部分のガス発生剤62が第2クッション材64が位置する側から順次燃焼し、作動ガス生成室の中空部55を除く部分の内圧が急速に上昇してガス発生剤62が燃焼するのに適した相当程度の高い圧力に達し、これによりガス発生剤62の燃焼が促進され、未燃焼のガス発生剤62によって作動ガスの流動が阻害されることなく作動ガスが区画部材50の円筒状部52に設けられた第1連通孔54を経由して中空部55へと流入する。
【0072】
そして、粒状のガス発生剤62の燃焼の初期段階が完了した後は、区画部材50の円筒状部52を取り巻く空間に位置する部分のガス発生剤62が第2クッション材64が位置する側から順次燃焼し、作動ガス生成室の中空部55を除く部分の内圧を維持しつつ安定的に作動ガスが生成され、未燃焼のガス発生剤62によって、生成された作動ガスの流動が阻害されることなく作動ガスが区画部材50の円筒状部52に設けられた第1連通孔54を経由して中空部55へと流入する。
【0073】
したがって、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Aの如くの構成を採用することにより、区画部材50の機能によって未燃焼のガス発生剤が作動ガスの流動抵抗になることが未然に防止されることになり、安定した出力特性が得られるシリンダ型ガス発生器とできる。
【0074】
ここで、上述した如くの出力特性が安定したシリンダ型ガス発生器にするためには、区画部材50と第2クッション材64との間に位置する部分のガス発生剤62の充填量が所定の量となるように精度よく調整することが極めて重要になる。これは、当該部分におけるガス発生剤62の充填量が不足した場合には、燃焼の初期段階において作動ガス生成室の中空部55を除く部分の内圧上昇が十分ではなくなり、その結果その後のガス発生剤62の燃焼状態に大きな影響が生じ、結果として所望の出力特性が得られなくなってしまうためである。
【0075】
そこで、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Aにおいては、上述したように、区画部材50を第1連通孔54を有する円筒状部52と第1連通孔54を有さない底部53とによって構成するとともに、当該底部53が点火器30側に向かうにつれてその外形が徐々に小さくなる先細り形状を有するように構成することにより、区画部材50と第2クッション材64との間に位置する部分のガス発生剤62の充填量が所定の量となるように精度よく調整することを可能にしている。以下においては、この点について詳細に説明する。
【0076】
図3は、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器を製造する際の第1密閉容器へのガス発生剤の充填および封止工程を示す模式断面図である。
【0077】
図2および図3に示すように、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Aにおいては、区画部材50の底部53が点火器30側(図3(C)に示すサブアセンブリにおいてはキャップ部82側)に向かうにつれてその外形が徐々に小さくなるように先細り形状に構成されており、ここでは、底部53の外表面が半球面形状を有するように構成されている。なお、当該底部53の外表面は必ずしも半球面形状とされる必要はなく、底部53の外形が先細り形状となるのであれば、どのような形状であってもよい。
【0078】
第1密閉容器80の収容空間83に粒状のガス発生剤62を充填して封止する工程においては、まず図3(A)に示すように、第1密閉容器80の一部となる有底筒状のカップ部81を準備し、当該カップ部81の内部に区画部材50を配置する。より詳細には、カップ部81の開口を介して区画部材50をカップ部81の内部に挿入し、区画部材50のフランジ部51をカップ部81の底壁である軸方向端部81aに当接させる。
【0079】
次に、図3(B)に示すように、粒状のガス発生剤62を所定量だけカップ部81の内部の空間へと充填する。その際、カップ部81の内部に導入された粒状のガス発生剤62は、区画部材50の底部53をつたってスムーズにカップ部81の内部でかつ区画部材50を取り巻く空間に落下し、当該空間に収容される。当該空間が粒状のガス発生剤62によって充填された後は、当該空間および底部53を覆うように粒状のガス発生剤62がさらに充填されることになる。ここで、より好ましくはカップ部81を軽く振動させること等により、粒状のガス発生剤62がより隙間なく密に充填されるようにする。ただし、カップ部81に振動を加える場合には、粒状のガス発生剤62が破砕しない程度に十分に弱い振動とすることが必要である。
【0080】
次に、図3(C)に示すように、充填された粒状のガス発生剤62の上面を覆うように第2クッション材64を載置し、さらにその上からカップ部81の開口を閉塞するようにキャップ部82を組付け、カップ部81の内部の空間を外部から気密に封止する。このカップ部81に対するキャップ部82の組付けには、上述したように、ろう付けや接着、巻き締め(かしめ)等が好適に用いられ、より好ましくは、シール剤を用いた接合が用いられる。
【0081】
その際、粒状のガス発生剤62の密度に偏りが生じないように、より密に粒状のガス発生剤62を収容空間83に充填するために、キャップ部82をカップ部81に図中に示す荷重F1をもって押し付けた状態として組付ける。このとき、粒状のガス発生剤62に加わる荷重F1は、区画部材50の底部53が滑らかな曲面形状を有しているため、当該曲面に沿って図示するように分散されて当該曲面に沿う方向に加わる荷重F2となり、そのため当該底部53上に位置するガス発生剤62はスムーズに当該曲面に沿って移動することになる。したがって、区画部材50と第2クッション材64との間に位置する部分のガス発生剤62の充填量が所定の量となるように精度よく調整することができる。また、このようにすれば、粒状のガス発生剤62に無理に荷重が加わることも防止でき、キャップ部82と底部53とによってガス発生剤62が挟み込まれて破砕してしまうことも抑制できる。
【0082】
このように、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Aとすることにより、区画部材50と第2クッション材64との間に位置する部分のガス発生剤62の充填量が所定の量となるように精度よく調整することが可能となり、また充填の際にガス発生剤62が破砕してしまうことも防止でき、その結果、安定して所望の出力特性が得られる小型軽量化されたシリンダ型ガス発生器とすることができる。
【0083】
また、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Aにおいては、上述したように、ガス発生剤62を第1密閉容器80に、また伝火薬61を第2密閉容器90にそれぞれ封入したものであり、そのためガス発生剤62や伝火薬61を気密に封止するためのシール処理をハウジングに対して施す必要がなくなるため、その分だけハウジングの外形を小型化(すなわち小径化や短尺化)することができたり、その分だけハウジングの肉厚を増して耐圧性を向上させることができたりすることになり、結果として小型化や高耐圧化に有利な構造のシリンダ型ガス発生器とすることができる。
【0084】
また、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Aとすることにより、作動ガス生成室にて生成された作動ガスがハウジングの軸方向に流動せずにもっぱらハウジングの径方向に流動して第1連通孔54を経由して区画部材50の中空部55に流入し、さらにその後第2連通孔43を経由してフィルタ室に流入することとなるため、燃焼中のガス発生剤や未燃焼のガス発生剤が作動ガスの流動によって破壊されることで生じる固形残渣の発生量が大幅に抑制されることになり、またその固形残渣が作動ガスの流動によってさらに破壊されて微小な残渣となることが抑制されることになり、結果としてフィルタ70に対する負荷が大幅に軽減されることになる。したがって、区画部材50は、残渣の一部を除去するフィルタ作用をも具備していることになるため、フィルタ70を小型化することが可能になり、小型かつ軽量のシリンダ型ガス発生器とすることができる。
【0085】
なお、上述した本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Aにおいては、図2を参照して、第1ハウジング部材10の外径をR1とした場合に、当該R1が、15mm≦R1≦22mmの条件を充足していることが好ましく、より好ましくは15mm≦R1≦20mmの条件を充足している。
【0086】
また、上述した本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Aにおいては、図2を参照して、区画部材50の底部53の点火器30側の端部から作動ガス生成室の点火器30側の端部(すなわち、第2クッション材64に接する部分)までの距離(当該距離は、区画部材50が位置していない部分の作動ガス生成室の軸方向長さに相当し、ガス発生剤62が作動ガス生成室の径方向に沿って全体にわたって充填されている部分の軸方向長さである)をL2とし、作動ガス生成室の径(より詳細には作動ガス生成室のうちのガス発生剤62が充填されている部分の径、すなわち第1密閉容器80の内径)をR2とした場合に、これらL2およびR2が、0.026≦L2/R2≦0.71の条件を充足していることが好ましい。
【0087】
また、上述した本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Aにおいては、図2を参照して、区画部材50の中空部55の径、すなわち区画部材50の円筒状部52の内径をR3とした場合に、上述したR2およびR3が、0.28≦R3/R2≦0.54の条件を充足していることが好ましい。
【0088】
加えて、上述した本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Aにおいては、図2を参照して、区画部材50における底部53と円筒状部52との境界部分から底部53の点火器30側の端部までの距離をL1とした場合に、当該L1が、0mm<L1≦10mmの条件を充足していることが好ましく、より好ましくは、1mm≦L1≦7mmの条件を充足していることが好ましい。ここで、上記L1を0mmとした場合には、そもそも先細り形状の底部53が存在しないことになり、ガス発生剤62の充填性の効率化が図れないこととなってしまう。
【0089】
これら条件を充足していることにより、圧延鋼板のプレス成形品または電縫管をクロージング処理した成形品を用いて第1ハウジング部材10を構成した場合にも、ガス発生剤62の燃焼を促進しつつハウジングの破損を防止することができる。具体的には、上記条件を充足していることにより、上述したガス発生剤62の燃焼の初期段階や当該初期段階の完了後において、作動ガス生成室の内圧を適正に維持することが可能になるとともに、圧延鋼板のプレス成形品または電縫管をクロージング処理した成形品からなる第1ハウジング部材10の意図しない変形を抑止することができる。したがって、圧延鋼板のプレス成形品または電縫管をクロージング処理した成形品を利用して第1ハウジング部材10を構成した場合にも、上記条件を充足することで所望の出力特性が得られる小型軽量化が図られたシリンダ型ガス発生器とすることができる。
【0090】
ここで、上述したL2およびR2が、L2/R2<0.026となった場合には、作動ガス生成室の最大内圧が35MPa未満となることが実験的に確認されており、その場合には、所望のガス出力が得られずにエアバッグの膨張および展開が不充分となるおそれがある。一方、上述したL2およびR2が、0.71<L2/R2となった場合には、作動ガス生成室の最大内圧が90MPaを超えることが実験的に確認されており、その場合には、圧延鋼板のプレス成形品または電縫管をクロージング処理した成形品からなる第1ハウジング部材10に意図しない変形が生じるおそれがある。なお、より確実にかつ安定的な動作を保証するためには、上述したL2およびR2が、0.053≦L2/R2≦0.57の条件を充足していることがさらに好適である。
【0091】
また、上述したR3およびR2が、R3/R2<0.28となった場合には、作動ガス生成室の最大内圧が90MPaを超えることが実験的に確認されており、その場合には、圧延鋼板のプレス成形品または電縫管をクロージング処理した成形品からなる第1ハウジング部材10に意図しない変形が生じるおそれがある。一方、上述したR3およびR2が、0.54<R3/R2となった場合には、作動ガス生成室の最大内圧が35MPa未満となることが実験的に確認されており、その場合には、所望のガス出力が得られずにエアバッグの膨張および展開が不充分となるおそれがあるとともに、ガス発生剤62の十分な充填が困難になる問題が生じる。なお、より確実にかつ安定的な動作を保証するためには、上述したR3およびR2が、0.32≦R3/R2≦0.43の条件を充足していることがさらに好適である。
【0092】
また、以上において説明した如くのシリンダ型ガス発生器1Aとすることにより、上述した如く、作動ガス生成室の内圧が作動時において適正にガス発生剤62の燃焼が促進される高圧環境下に維持できるようになるとともに、ガス発生剤62が燃焼する際に生じる残渣の量を適正に低減することができる。これにより、本実施の形態のシリンダ型ガス発生器1Aにおいては、仕切り部材40の形状および組付け構造ならびにフィルタ70の形状および組付け構造を以下に説明する如くの構成にすることができる。
【0093】
すなわち、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Aにおいては、作動ガス生成室とフィルタ室とを仕切る仕切り部材40の筒状突出部42が、環状板部41から遠ざかるにつれて(作動ガス生成室から遠ざかり、筒状突出部42の先端に向かうにつれて)、当該筒状突出部42によって規定される第2連通孔43の開口面積が減少するように徐々に縮径した円錐板状の形状にて構成されるとともに、ハウジングに対して嵌合または遊嵌されている。したがって、第1ハウジング部材10には、当該仕切り部材40を固定するためのかしめ加工は施されていない。そのため、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Aにあっては、その組み立てが従来に比して容易に行なえることになる。以下においては、このような組付け構造を採用した場合にも、仕切り部材40が十分に機能する理由について説明する。
【0094】
図4は、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器の仕切り部材が設けられた位置の近傍を拡大した要部拡大断面図であり、図4(A)は、シリンダ型ガス発生器の作動開始直後の状態を示す図であり、図4(B)は、作動開始から所定時間経過後の状態を示す図である。なお、図4(A)および図4(B)中においては、作動ガスの流動方向を矢印Gで示すとともに、作動ガス生成室の具体的な図示は省略している。
【0095】
図4(A)に示すように、シリンダ型ガス発生器1Aが作動した作動開始直後においては、作動ガス生成室にて生成された高温高圧の作動ガスの推力(すなわち、作動ガス生成室の内圧の上昇に伴って生じる圧力)を受け、仕切り部材40の環状板部41が、ハウジングの軸方向に沿ってフィルタ70側に向けての力(図中矢印Aにて示す力)を受ける。これにより、仕切り部材40の環状板部41は、フィルタ70側に向けて移動を開始し、仕切り部材40とハウジングとによって囲まれたフィルタ70の部分(すなわち、フィルタ70の作動ガス生成室側の端部近傍部分、図中に示す領域B1に含まれる部分)が、当該環状板部41が移動することによってハウジングの軸方向に沿って圧縮されることになる。
【0096】
ここで、フィルタ70の内部には、フィルタ70が金属線材または金属線材を編み込んだ網材を巻き回したりあるいはプレス加工することで押し固めたりすることで形成された結果生じる空隙が存在するが、図4(B)に示すように、上記環状板部41の移動に伴って当該空隙の容積は減少し、金属線材は当該領域B1においてさらに密に充填された状態となるとともに、ハウジングの径方向に沿って広がろうとして仕切り部材40の筒状突出部42をハウジングの径方向に沿って内側に向けて押し込もうとする力を発生させる。しかしながら、仕切り部材40の筒状突出部42には、上述した内圧の上昇に伴ってハウジングの大略径方向に沿って外側に向けての力(図中矢印Cにて示す力)が加わっているため、仕切り部材40の筒状突出部42をハウジングの径方向に沿って内側に向けて押し込もうとする力は当該力に押し負け、その反力(図中矢印Dで示す力)がハウジングとフィルタ70との接触部分(図中において示す領域E)に加わることになる。これにより、当該ハウジングとフィルタ70との接触部分において摩擦力が発生し、当該摩擦力が仕切り部材40がさらにフィルタ70側に向けて移動することを抑制するブレーキ力となる。
【0097】
ここで、上記反力(図中矢印Dで示す力)は、ハウジングの径方向および軸方向と交差する方向に向けて作用する力となるため、ハウジングの広い範囲に仕切り部材40の移動を防止する高いブレーキ力として作用することになり、当該ブレーキ力に基づいて仕切り部材40の移動量は僅かで留まることになる。そのため、仕切り部材40によってフィルタ70が確実に保護されることになり、フィルタ70の破損を防止することができる。また、仕切り部材40の外縁とハウジングの内周面とが圧接触することになるため、当該部分を介して作動ガスがフィルタ70を経由せずにガス噴出口13からハウジング外部へと放出されるいわゆるバイパス現象を確実に防止することもできる。
【0098】
また、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Aにおいては、仕切り部材40の筒状突出部42が、フィルタ70の作動ガス生成室側の端部近傍のみを覆うように構成されている。したがって、図4(B)中に示す領域B2に位置する部分のフィルタ70の内部には、十分な空隙が形成された状態が維持されることになり、上述した仕切り部材40の移動および変形の影響を受けることなく当該部分においてスムーズに作動ガスが流動することが可能となる。したがって、フィルタ70の有する作動ガスの冷却機能およびスラグ捕集機能が損なわれることもない。
【0099】
さらに、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Aにおいては、仕切り部材40とフィルタ70とをハウジングの軸方向に沿って当該軸と直交する面に投影した場合に、フィルタ70の投影領域の内縁が仕切り部材40の投影領域の内縁よりも内側に位置しないように構成されている。すなわち、作動ガス生成室側から仕切り部材40およびフィルタ70を平面視した場合に、フィルタ70が仕切り部材40によって完全に覆い隠されるように仕切り部材40およびフィルタ70の相対的な位置関係が調節されている。このように構成することにより、仕切り部材40の第2連通孔43を通過した高温高圧の作動ガスは、フィルタ70の内周面を沿って流動することになるため、作動ガスが直接フィルタ70に吹き付けられる割合を大幅に低減することができる。
【0100】
なお、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Aにおいては、作動時において仕切り部材40が上述した領域B1に位置する部分のフィルタ70によって保持されることになるため、当該仕切り部材40のみによって作動ガスの推力に耐え得るように仕切り部材40を設計する必要がなく、その厚みを従来に比して小さくすることができる。具体的には、一般的なシリンダ型ガス発生器の仕様を考慮した場合には、仕切り部材40として鉄鋼材を利用した場合にその厚みを概ね0.7mm以上とすれば足りる。
【0101】
以上において説明したように、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Aの如くの構成を採用することにより、仕切り部材40の取付けのためにハウジングにかしめ加工を実施することが必要なくなるという効果や仕切り部材40を薄型化できるという効果が得られる。そのため、シリンダ型ガス発生器1A全体として見た場合に、性能を低下させることなく、小型軽量化することが可能になる。また、上記構成を採用することにより、仕切り部材40をハウジングにかしめ加工する作業も不要となり、製造コストを削減することもできる。したがって、性能を低下させることなく小型軽量化が可能でかつ製造が容易なシリンダ型ガス発生器とすることができる。
【0102】
(実施例)
以下、本発明の効果を検証するために行なった検証試験の内容および結果について詳説する。図5は、検証試験において使用した実施例に係るシリンダ型ガス発生器の構成を示す模式断面図であり、図6は、検証試験において使用した比較例に係るシリンダ型ガス発生器の構成を示す模式断面図である。まず、これら図5および図6を参照して、検証試験において使用したサンプルの構成について説明する。
【0103】
図5に示すように、実施例に係るシリンダ型ガス発生器1Aは、上述した本発明の実施の形態1に示した構造を有するものである。ただし、作動時における作動ガス生成室の内圧を測定可能にするために、第1ハウジング部材10の所定位置には、圧力センサSEが取付けられている。ここで、圧力センサSEとしては、歪ゲージ式のものを用い、当該圧力センサSEの第1ハウジング部材10への取付けは、第1ハウジング部材10の周壁部11の所定位置に開口部およびセンサ組付けポートMPを設け、開口部を閉塞するように圧力センサSEをセンサ組付けポートMPにそれぞれ取付けることで行なった。これにより、圧力センサSEの感圧面は、作動ガス生成室に面した状態となっている。
【0104】
ここで、実施例に係るシリンダ型ガス発生器1Aにおいては、第1ハウジング部材10としてSTKMに代表される電縫管の軸方向端部の一方をクロージング処理してなる成形品を使用した。シリンダ型ガス発生器1Aの軸方向長さは83mmである。第1ハウジング部材10の軸方向長さは、78mmであり、第1ハウジング部材10の外径R1は、φ20mmである。作動ガス生成室の径R2は、φ16mmであり、作動ガス生成室の軸方向長さは、40mmである。また、区画部材50における底部53と円筒状部52との境界部分から底部53の点火器30側の端部までの距離L1は、4.7mmであり、底部53の点火器30側の端部から作動ガス生成室の点火器30側の端部までの距離L2は、7mmである。また、第2クッション材64の厚みは、1.5mmである。区画部材50の軸方向長さは、31.5mmであり、中空部55の径R3は、φ6mmである。区画部材50の円筒状部52には、合計24個の第1連通孔54が設けれ、その配置位置としては、円筒状部52の周方向に一列当たり4個の第1連通孔が設けられ、当該列が円筒状部52の軸方向にピッチ4.4mmで6列並ぶようにされている。なお、個々の第1連通孔54は、φ2mmの丸孔である。
【0105】
作動ガス生成室に充填されるガス発生剤62としては、硝酸グアニジン56.2重量部、塩基性硝酸銅33.8重量部、過塩素酸カリウム10.0重量部、高分散シリカ0.4重量部を乾式混合し、その後、0.6重量部のポリビニルアルコール水溶液11.0重量部を噴霧添加して湿式造粒を行い、粒径1mm以下の顆粒を得、これを90℃で15時間熱処理をした後にステアリン酸マグネシウム0.4重量部を添加し、これを回転式打錠機で直径3.2mm、厚さ1.5mmのペレットに成形し、さらにこれを110℃で10時間熱処理することで製作されたものを使用した。当該作動ガス生成室に充填される粒状のガス発生剤62の総量は、生成される作動ガスの総量が0.2molでかつその重量が6.57gとなる量とした。
【0106】
一方、図6に示すように、比較例に係るシリンダ型ガス発生器1Xは、区画部材50の底部53を除き、上述した本発明の実施の形態1に示した構造を有するものである。比較例に係るシリンダ型ガス発生器1Xにおいては、区画部材50の底部53の外表面が平面形状となるように底部53を平板状に構成している。なお、比較例に係るシリンダ型ガス発生器1Xにおいても、作動時における作動ガス生成室の内圧を測定可能にするために、第1ハウジング部材10の所定位置に圧力センサSEが取付けられている。圧力センサSEの種類やその取付け構造は、上述した実施例に係るシリンダ型ガス発生器1Aと同様である。
【0107】
ここで、比較例に係るシリンダ型ガス発生器1Xにおいては、第1ハウジング部材10としてSTKMに代表される電縫管の軸方向端部の一方をクロージング処理してなる成形品を使用した。シリンダ型ガス発生器1Xの軸方向長さは83mmである。第1ハウジング部材10の軸方向長さは、78mmであり、第1ハウジング部材10の外径R1は、φ20mmである。作動ガス生成室の径R2は、φ16mmであり、作動ガス生成室の軸方向長さは、40mmである。区画部材50の底部53は、平板状の形状を有しており、上述した実施例に係るシリンダ型ガス発生器1Aの如くの先細り形状は有していない。また、区画部材50の底部53の点火器30側の端部から作動ガス生成室の点火器30側の端部までの距離L2は、7mmである。また、第2クッション材64の厚みは、1.4mmである。区画部材50の軸方向長さは、31.6mmであり、中空部55の径R3は、φ6mmである。区画部材50の円筒状部52には、合計24個の第1連通孔54が設けれ、その配置位置としては、円筒状部52の周方向に一列当たり4個の第1連通孔が設けられ、当該列が円筒状部52の軸方向にピッチ4.4mmで6列並ぶようにされている。なお、個々の第1連通孔54は、φ2mmの丸孔である。
【0108】
作動ガス生成室に充填されるガス発生剤62としては、上述した実施例に係るシリンダ型ガス発生器1Aで用いたものと同様のものを使用し、その総量も、上述した実施例に係るシリンダ型ガス発生器1Aの場合と同様に、生成される作動ガスの総量が0.2molでかつその重量が6.57gとなる量とした。
【0109】
検証試験においては、上述した構成のサンプルをそれぞれ複数個準備し、個々のサンプルをそれぞれ所定容量の気密に封止されたタンク内に設置し、当該サンプルを作動させてその際のタンク圧および作動ガス生成室の内圧を経時的に測定することで個々のサンプルの性能を評価し、当該評価結果に基づいてサンプル間のばらつきがどの程度であるかを確認した。なお、使用したタンクの容量は、1立方フィート(約28.3リットル)である。タンク内の雰囲気温度は、低温環境下(約−40℃)、室温環境下(約23℃)および高温環境下(約85℃)にそれぞれ設定し、サンプルの温度が当該雰囲気温度に合致したことを確認した後にサンプルを作動させた。
【0110】
図7は、検証試験にて測定した各種パラメータを説明するためのグラフである。次に、この図7を参照して、測定した各種パラメータについて説明する。なお、図7に示すグラフにおいては、横軸に時間をとり、縦軸にタンク圧および作動ガス生成室の内圧(以下、単に「内圧」とも称する)をとっている。
【0111】
測定したパラメータは、作動開始から10msが経過した時点におけるタンク圧Pt10、タンク圧の最大値Pmax、タンク圧が最大値に達するのに要する時間TPmax(いずれもサンプル数n=8)、および、作動ガス生成室の内圧の最大値pmax(いずれもサンプル数n=7)の4つである。ここで、上記Pt10および上記TPmaxは、当該シリンダ型ガス発生器をエアバッグ装置に組み込んだ場合の、当該エアバッグ装置におけるエアバッグの膨張速度を評価するために使用される指標であり、上記Pmaxは、エアバッグの膨張後における緩衝性能を評価するために使用される指標である。また、上記pmaxは、当該シリンダ型ガス発生器におけるガス発生剤の燃焼特性を評価するために使用される指標である。なお、これら4つのパラメータは、いずれもシリンダ型ガス発生器の性能を評価する重要なパラメータであり、これらパラメータは、いずれも所望の値を採ることはもちろんのこと、製品間でばらつきがないことが理想である。
【0112】
図8は、検証試験の試験結果を示す表であり、図9ないし図12は、当該検証試験の結果を示すグラフである。ここで、図9は、比較例および実施例に係るシリンダ型ガス発生器のサンプル間における上記Pt10のばらつきを示すものであり、図10は、比較例および実施例に係るシリンダ型ガス発生器のサンプル間における上記Pmaxのばらつきを示すものである。また、図11は、比較例および実施例に係るシリンダ型ガス発生器のサンプル間における上記TPmaxのばらつきを示すものであり、図12は、比較例および実施例に係るシリンダ型ガス発生器のサンプル間における上記pmaxのばらつきを示すものである。
【0113】
これら図8ないし図12から理解されるように、比較例に係るシリンダ型ガス発生器1Xに比べ、実施例に係るシリンダ型ガス発生器1Aにおいては、低温環境下、室温環境下および高温環境下のいずれにおいても、上記Pt10、上記Pmax、上記TPmaxおよび上記pmaxのサンプル間のばらつきが抑制されている。特に、低温環境下および室温環境下においては、比較例に係るシリンダ型ガス発生器1Xに比べ、実施例に係るシリンダ型ガス発生器1Aにおいて、上記Pt10、上記Pmaxおよび上記TPmaxのサンプル間のばらつきの幅が、概ね1/2〜1/3程度に抑制されており、その結果、標準偏差σもいずれもより小さい値を示している。したがって、当該検証試験の試験結果から、本発明を採用することで、安定して所望の出力特性が得られる小型軽量化されたシリンダ型ガス発生器とすることができることが実験的に確認された。
【0114】
(実施の形態2)
図13は、本発明の実施の形態2におけるシリンダ型ガス発生器の模式断面図である。以下においては、この図13を参照して、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器について説明する。なお、上述した本発明の実施の形態1におけるシリンダ型ガス発生器と同様の部分については図中同一の符号を付し、その説明はここでは繰り返さない。
【0115】
シリンダ型ガス発生器において、ガス噴出口から噴出される作動ガスの流量や、ガス発生剤の燃焼を持続させるために維持することが必要となる作動ガス生成室の内圧は、作動ガス生成室にて生成される作動ガスの量と、作動ガスが流動する流路上における当該流路の断面積によって概ね決定される。すなわち、作動ガスの流路において最も断面積が小さい部分において作動ガスの流量や作動ガス生成室の内圧が拘束を受け、そのため作動ガスの流路の断面積をどの程度の大きさにするかは、シリンダ型ガス発生器の性能を決定する上で重要なファクターとなる。ここで、一般に、シリンダ型ガス発生器においては、作動ガス生成室とフィルタ室とを仕切る仕切り部材に設けられる第2連通孔を作動ガスの流路上における最小断面積部分とするとともに、当該第2連通孔の開口面積の大きさを調整することにより、ガス噴出口から噴出される作動ガスの流量を調整している。なお、第2連通孔の径は、仕切り部材の内径と同程度とされることが好ましい。
【0116】
上述した本発明の実施の形態1におけるシリンダ型ガス発生器1Aにおいては、区画部材50の筒状部が、ハウジングの軸方向に沿って内径および外径が一定とされた直管状に延びる円筒形状の円筒状部52のみにて構成されており、その仕切り部材40側の端部の開口形状(すなわち中空部55の端部の形状)が、仕切り部材40に設けられた第2連通孔43の開口形状と概ね合致するように構成されていた。ここで、ガス発生剤62の充填量を維持しつつガス噴出口13から噴出される作動ガスの流量を変更する場合や、ガス発生剤62の充填量を維持しつつ作動時における作動ガス生成室の内圧を変更する場合等には、区画部材50の筒状部の形状を維持しつつ仕切り部材40に設けられる第2連通孔43の開口面積の大きさを調整することが必要になる。
【0117】
しかしながら、区画部材50の筒状部の形状を維持しつつ仕切り部材40に設けられる第2連通孔43の開口面積を大きくした場合等には、作動ガスの流路上における最小断面積部分が当該第2連通孔43ではなく区画部材50の仕切り部材40側の端部となってしまい、狙い通りの変更が行なえない問題が生じる。
【0118】
そこで、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Bにおいては、区画部材50の形状を僅かに変更するとともに仕切り部材40に設けられる第2連通孔43の開口面積を大きくすることにより、上記問題の解決を図っている。すなわち、図13に示すように、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Bにおいては、区画部材50の筒状部が、ハウジングの軸方向に沿って内径および外径が一定とされた直管状に延びる円筒形状の円筒状部52と、当該円筒状部52の仕切り部材40側の端部から連続して延び、仕切り部材40側に向かうにつれて徐々に拡径する拡径部52aを有しており、当該拡径部52aの仕切り部材40側の端部の開口形状(すなわち中空部55の端部の形状)が、仕切り部材40に設けられた第2連通孔43の開口形状と概ね合致するように構成している。なお、本実施の形態の如く区画部材50に拡径部52aを設ける場合にも、拡径部52aの軸方向長さは、区画部材50の軸方向長さの5%以上20%以下とされることが好ましい。
【0119】
このように構成することにより、ガス発生剤62の充填量を維持しつつガス噴出口13から噴出される作動ガスの流量を変更する場合や、ガス発生剤62の充填量を維持しつつ作動時における作動ガス生成室の内圧を変更する場合等に必要となる設計変更が僅かで済むようになり、従来に比してより容易に如何なる仕様に対しても対応が可能なシリンダ型ガス発生器とすることができる。
【0120】
なお、本実施の形態においては、区画部材50に設けられた拡径部52aの仕切り部材40側の端部の開口形状が、仕切り部材40に設けられた第2連通孔43の開口形状と概ね合致するように構成した場合を例示したが、当該第2連通孔43の開口径を当該拡径部52aの仕切り部材40側の端部の開口径よりも小さく構成してもよい。その場合には、当該第2連通孔43が設けられた位置が作動ガスの流路上における最小断面積部分となり、その結果、仕切り部材40が圧力隔壁として機能することになる。
【0121】
(実施の形態3)
図14は、本発明の実施の形態3におけるシリンダ型ガス発生器の模式断面図である。以下においては、この図14を参照して、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器について説明する。なお、上述した本発明の実施の形態1におけるシリンダ型ガス発生器と同様の部分については図中同一の符号を付し、その説明はここでは繰り返さない。
【0122】
上述した本発明の実施の形態1におけるシリンダ型ガス発生器1Aにおいては、区画部材50の底部53が、当該底部53の外表面が半球面形状を有するように構成されていた。これに対し、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Cにおいては、区画部材50の底部53が点火器30側に向かうにつれてその外形が徐々に小さくなる先細り形状となるように、底部53の外表面が略円錐形状を有するように構成されている。
【0123】
このように構成した場合にも、上述した本発明の実施の形態1におけるシリンダ型ガス発生器1Aとした場合と同様の効果が得られ、安定して所望の出力特性が得られる小型軽量化されたシリンダ型ガス発生器とすることができる。なお、本実施の形態の如くの構成を採用する場合には、ガス発生剤62の充填の際に当該ガス発生剤62が区画部材50の底部53の先端部分に接触して破砕されてしまうことを防止するために、底部53の先端部分の形状は、非先鋭形状(たとえば、極小の曲面形状や平面形状)とすることが好ましい。
【0124】
(実施の形態4)
図15は、本発明の実施の形態4におけるシリンダ型ガス発生器の模式断面図である。また、図16は、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器の仕切り部材が設けられた位置の近傍を拡大した要部拡大断面図であり、図16(A)は、シリンダ型ガス発生器の作動開始直後の状態を示す図であり、図16(B)は、作動開始から所定時間経過後の状態を示す図である。なお、図16(A)および図16(B)中においては、作動ガスの流動方向を矢印Gで示している。以下においては、これら図15および図16を参照して、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器について説明する。なお、上述した本発明の実施の形態1におけるシリンダ型ガス発生器と同様の部分については図中同一の符号を付し、その説明はここでは繰り返さない。
【0125】
図15に示すように、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Dにおいては、作動ガス生成室とフィルタ室とを仕切る仕切り部材40の筒状突出部42が、環状板部41から遠ざかるにつれて(作動ガス生成室から遠ざかり、筒状突出部42の先端に向かうにつれて)、当該筒状突出部42によって規定される第2連通孔43の開口面積が増加するように徐々に拡径した円錐板状の形状にて構成されるとともに、ハウジングに対して嵌合または遊嵌されている。したがって、第1ハウジング部材10には、当該仕切り部材40を固定するためのかしめ加工は施されていない。そのため、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Dにあっても、上述した本発明の実施の形態1におけるシリンダ型ガス発生器1Aとした場合と同様に、その組み立てが従来に比して容易に行なえることになる。以下においては、このような組付け構造を採用した場合にも、仕切り部材40が十分に機能する理由について説明する。
【0126】
図16(A)に示すように、シリンダ型ガス発生器1Dが作動した作動開始直後においては、作動ガス生成室にて生成された高温高圧の作動ガスの推力(すなわち、作動ガス生成室の内圧の上昇に伴って生じる圧力)を受け、仕切り部材40の環状板部41が、ハウジングの軸方向に沿ってフィルタ70側に向けての力(図中矢印Aにて示す力)を受ける。これにより、仕切り部材40の環状板部41は、フィルタ70側に向けて移動を開始し、仕切り部材40とハウジングとによって囲まれたフィルタ70の部分(すなわち、フィルタ70の作動ガス生成室側の端部近傍部分、図中に示す領域B1に含まれる部分)が、当該環状板部41が移動することによってハウジングの軸方向に沿って圧縮されることになる。
【0127】
ここで、フィルタ70の内部には、フィルタ70が金属線材または金属線材を編み込んだ網材を巻き回したりあるいはプレス加工することで押し固めたりすることで形成された結果生じる空隙が存在するが、図16(B)に示すように、上記環状板部41の移動に伴って当該空隙の容積は減少し、金属線材は当該領域B1においてさらに密に充填された状態となるとともに、ハウジングの径方向に沿って広がろうとして仕切り部材40の筒状突出部42をハウジングの径方向に沿って内側に向けて押し込もうとする力を発生させる。しかしながら、仕切り部材40の筒状突出部42には、上述した内圧の上昇に伴ってハウジングの大略径方向に沿って外側に向けての力(図中矢印Cにて示す力)が加わっているため、仕切り部材40の筒状突出部42をハウジングの径方向に沿って内側に向けて押し込もうとする力は当該力に押し負け、その反力(図中矢印Dで示す力)がハウジングとフィルタ70との接触部分(図中において示す領域E)に加わることになる。これにより、当該ハウジングとフィルタ70との接触部分において摩擦力が発生し、当該摩擦力が仕切り部材40がさらにフィルタ70側に向けて移動することを抑制するブレーキ力となる。
【0128】
ここで、上記反力(図中矢印Dで示す力)は、ハウジングの径方向および軸方向と交差する方向に向けて作用する力となるため、ハウジングの広い範囲に仕切り部材40の移動を防止する高いブレーキ力として作用することになり、当該ブレーキ力に基づいて仕切り部材40の移動量は僅かで留まることになる。そのため、仕切り部材40によってフィルタ70が確実に保護されることになり、フィルタ70の破損を防止することができる。また、仕切り部材40の外縁とハウジングの内周面とが圧接触することになるため、当該部分を介して作動ガスがフィルタ70を経由せずにガス噴出口13からハウジング外部へと放出されるいわゆるバイパス現象を確実に防止することもできる。
【0129】
また、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Bにおいては、仕切り部材40の筒状突出部42が、フィルタ70の作動ガス生成室側の端部近傍のみを覆うように構成されている。したがって、図16(B)中に示す領域B2に位置する部分のフィルタ70の内部には、十分な空隙が形成された状態が維持されることになり、上述した仕切り部材40の移動および変形の影響を受けることなく当該部分においてスムーズに作動ガスが流動することが可能となる。したがって、フィルタ70の有する作動ガスの冷却機能およびスラグ捕集機能が損なわれることもない。
【0130】
さらに、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Bにおいては、仕切り部材40とフィルタ70とをハウジングの軸方向に沿って当該軸と直交する面に投影した場合に、フィルタ70の投影領域の内縁が仕切り部材40の投影領域の内縁よりも内側に位置しないように構成されている。すなわち、作動ガス生成室側から仕切り部材40およびフィルタ70を平面視した場合に、フィルタ70が仕切り部材40によって完全に覆い隠されるように仕切り部材40およびフィルタ70の相対的な位置関係が調節されている。このように構成することにより、仕切り部材40の第2連通孔43を通過した高温高圧の作動ガスは、フィルタ70の内周面を沿って流動することになるため、作動ガスが直接フィルタ70に吹き付けられる割合を大幅に低減することができる。
【0131】
なお、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Bにおいては、作動時において仕切り部材40が上述した領域B1に位置する部分のフィルタ70によって保持されることになるため、当該仕切り部材40のみによって作動ガスの推力に耐え得るように仕切り部材40を設計する必要がなく、その厚みを従来に比して小さくすることができる。具体的には、一般的なシリンダ型ガス発生器の仕様を考慮した場合には、仕切り部材40として鉄鋼材を利用した場合にその厚みを概ね0.7mm以上とすれば足りる。
【0132】
以上において説明した本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Dとすることにより、上述した本発明の実施の形態1におけるシリンダ型ガス発生器1Aとした場合と同様の効果を得ることができる。
【0133】
なお、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Dにおいては、仕切り部材40とフィルタ70とをハウジングの軸方向に沿って当該軸と直交する面に投影した場合に、フィルタ70の投影領域の内縁が仕切り部材40の投影領域の内縁と合致するように構成している。このように構成すれば、フィルタ70の機能を最大限に得ることができる。
【0134】
また、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Dにおいては、仕切り部材40の筒状突出部42が環状板部41から遠ざかるにつれて徐々に拡径した円錐板状の形状にて構成されているため、当該シリンダ型ガス発生器1Dを組み立てるに際して、予めフィルタ70と仕切り部材40とを一体化させておくことが可能になる。このようにすれば、組立て時において組付けるべき部品の点数を削減することができ、組立て工数が減少することに伴って製造コストを低減することも可能になる。
【0135】
以上において説明した本発明の実施の形態1ないし4においては、第1ハウジング部材10として圧延鋼板をプレス成形してなるプレス成形品または電縫管の軸方向端部の一方をクロージング処理してなる成形品にて構成した場合を例示して説明を行なったが、これに代えて、第1ハウジング部材10を引き抜き成形してなるシームレス管にて構成してもよい。このようなシームレス管にて第1ハウジング部材10を形成した場合にも、上述した効果を得ることができる。
【0136】
また、以上において説明した本発明の実施の形態1ないし4においては、点火器30として、抵抗体としてのニクロム線等を熱源として利用するものを例示して説明を行なったが、いわゆる半導体ブリッジ(Semiconductor Bridge)を熱源として利用する点火器を使用することも可能である。当該半導体ブリッジを熱源として利用する点火器を利用した場合には、作動時においてより迅速にガス出力の得られるシリンダ型ガス発生器とすることができる。
【0137】
また、以上において説明した本発明の実施の形態1ないし4においては、ガス発生剤62および伝火薬61がそれぞれ第1密閉容器80および第2密閉容器90に収容されてなるシリンダ型ガス発生器を例示して説明を行なったが、必ずしもこのように構成されている必要はなく、ガス発生剤62および伝火薬61は、第1ハウジング部材10および第2ハウジング部材20からなるハウジングに直接充填された構成とされていてもよい。ただし、その場合には、ガス発生剤62および伝火薬61が吸湿することを防止するための気密処理が、ハウジングの所定部位に別途施されていることが必要である。
【0138】
また、以上において説明した本発明の実施の形態1ないし4においては、ガス発生剤62の燃焼を促進させるために伝火薬61が装填されてなるシリンダ型ガス発生器を例示して説明を行なったが、当該伝火薬61は必ずしも必須の構成ではなく、燃焼開始のためのガス発生剤62の感度を向上させること等によって伝火薬61の装填を不要とすることも可能である。また、伝火薬61をシリンダ型ガス発生器に装填する構成を採用する場合にも、当該伝火薬61を点火器30に一体化させて組付けることも可能である。
【0139】
また、以上において説明した本発明の実施の形態1ないし4においては、第1ハウジング部材10と第2ハウジング部材20とをかしめ固定することで連結してなるシリンダ型ガス発生器を例示して説明を行なったが、第1ハウジング部材10と第2ハウジング部材20との固定に溶接を利用することも当然に可能である。
【0140】
また、以上において説明した本発明の実施の形態1ないし4においては、仕切り部材40の筒状突出部42の形状を円錐板状とした場合を例示して説明を行なったが、当該筒状突出部42の形状はこれに限定されるものではなく、たとえば断面の形状が湾曲状とされていてもよい。いずれにせよ、筒状突出部42の形状としては、内圧の上昇に伴って筒状突出部42に加わる力がハウジングの径方向および軸方向のいずれにも交差する方向に作用するような形状とされていればよく、当該筒状突出部42の内周面がハウジングの軸方向と平行に配置されていなければよい。
【0141】
加えて、以上において説明した本発明の実施の形態1ないし4においては、本発明をサイドエアバッグ装置に組み込まれるシリンダ型ガス発生器に適用した場合を例示して説明を行なったが、本発明の適用対象はこれに限られるものではなく、助手席用エアバッグ装置やカーテンエアバッグ装置、ニーエアバッグ装置等に組み込まれるシリンダ型ガス発生器や、シリンダ型ガス発生器と同様に長尺状のガス出力部を有するいわゆるT字型のガス発生器にもその適用が可能である。
【0142】
なお、以上において説明した本発明の実施の形態1ないし4におけるシリンダ型ガス発生器の特徴的な構成は、装置構成上、許容される範囲で当然に相互に組み合わせることが可能である。
【0143】
このように、今回開示した上記各実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって画定され、また特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【符号の説明】
【0144】
1A〜1D,1X シリンダ型ガス発生器、10 第1ハウジング部材、11 周壁部、12 底壁部、13 ガス噴出口、14 かしめ部、20 第2ハウジング部材、21 溝、22 凹部、23 貫通部、24 かしめ部、30 点火器、31 基部、32 点火部、33 端子ピン、40 仕切り部材、41 環状板部、42 筒状突出部、43 第2連通孔、50 区画部材、51 フランジ部、52 円筒状部、52a 拡径部、53 底部、54 第1連通孔、55 中空部、61 伝火薬、62 ガス発生剤、63 第1クッション材、64 第2クッション材、70 フィルタ、71 中空連通部、80 第1密閉容器、81 カップ部、81a 軸方向端部、82 キャップ部、83 収容空間、90 第2密閉容器、91 カップ部、92 キャップ部、93 収容空間、MP センサ組付けポート、SE 圧力センサ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス発生剤が燃焼することで作動ガスが生成される作動ガス生成室と、前記作動ガス生成室で生成された作動ガスが通過するフィルタが収容されたフィルタ室とを内部に含み、軸方向の両端が閉塞されてなる長尺円筒状のハウジングと、
前記ハウジングの軸方向の一端部に配置され、前記ガス発生剤を燃焼させるための火炎を発生させる点火手段と、
前記ハウジングの内部に位置し、前記ハウジングの内部の空間を軸方向に前記作動ガス生成室と前記フィルタ室とに仕切る仕切り部材と、
前記作動ガス生成室の内部に位置し、前記作動ガス生成室を区画する区画部材とを備え、
前記フィルタ室は、前記作動ガス生成室よりも前記ハウジングの軸方向の他端部側に位置し、
前記ハウジングの前記フィルタ室を規定する部分の周壁部には、前記フィルタを通過した作動ガスを外部に噴出するための複数のガス噴出口が設けられ、
前記区画部材は、前記ハウジングと同軸上に配置された内部に中空部を有する有底筒状の部材にて構成され、前記仕切り部材の前記作動ガス生成室側の端部から前記ハウジングの軸方向に沿って延びる筒状部と、前記筒状部の前記点火手段側の端部を閉塞する底部とを含み、
前記区画部材の前記底部は、前記作動ガス生成室の前記点火手段側の端部よりも前記仕切り部材側に位置し、
前記ガス発生剤は、前記区画部材の前記中空部を除く部分の前記作動ガス生成室に収容され、
前記区画部材の前記筒状部には、前記作動ガス生成室の前記ガス発生剤が収容された空間と前記区画部材の前記中空部とを連通する複数の第1連通孔が設けられ、
前記仕切り部材の中央部には、前記区画部材の前記中空部と前記フィルタ室とを連通するための第2連通孔が設けられ、
前記区画部材の前記底部は、前記点火手段側に向かうにつれて徐々にその外形が小さくなる先細り形状を有している、ガス発生器。
【請求項2】
前記区画部材の前記底部の外表面が、略半球面形状を有している、請求項1に記載のガス発生器。
【請求項3】
前記区画部材の前記底部の外表面が、略円錐面形状を有している、請求項1に記載のガス発生器。
【請求項4】
前記区画部材の前記筒状部は、前記ハウジングの軸方向に沿って内径および外径が一定とされた円筒状部を有し、
前記複数の第1連通孔が、前記区画部材の前記円筒状部に設けられている、請求項1から3のいずれかに記載のガス発生器。
【請求項5】
前記区画部材の前記筒状部は、前記円筒状部の前記仕切り部材側の端部から連続して延び、前記仕切り部材側に向かうにつれて徐々に拡径する拡径部をさらに有する、請求項4に記載のガス発生器。
【請求項6】
前記ハウジングは、前記ハウジングの前記他端部および前記周壁部を構成する長尺有底円筒状の第1ハウジング部材と、前記第1ハウジング部材の開口端を閉塞することで前記ハウジングの前記一端部を構成する第2ハウジング部材とを含み、
前記第1ハウジング部材は、電縫管の軸方向端部の一方をクロージング処理してなる成形品にて構成され、
前記第1ハウジング部材の外径R1が、15mm≦R1≦22mmの条件を充足し、
前記区画部材における前記底部と前記筒状部との境界部分から前記区画部材の前記底部の前記点火手段側の端部までの距離L1が、1mm≦L1≦7mmの条件を充足し、
前記区画部材の前記底部の前記点火手段側の端部から前記作動ガス生成室の前記点火手段側の端部までの距離L2と、前記作動ガス生成室の径R2とが、0.026≦L2/R2≦0.71の条件を充足し、
前記区画部材の前記中空部の径R3と、前記作動ガス生成室の径R2とが、0.28≦R3/R2≦0.54の条件を充足している、請求項1から5のいずれかに記載のガス発生器。
【請求項7】
前記ガス発生剤が、燃料としてグアニジン系化合物を含み、酸化剤として塩基性硝酸銅を含む、請求項1から6のいずれかに記載のガス発生器。
【請求項8】
振動による前記ガス発生剤の破砕を防止するための破砕防止部材と、
前記ハウジングの内部に位置し、密閉された収容空間を有する第1密閉容器とをさらに備え、
前記ガス発生剤、前記区画部材および前記破砕防止部材が、前記第1密閉容器の前記収容空間に収容されている、請求項1から7のいずれかに記載のガス発生器。
【請求項9】
前記ハウジングの内部に位置し、密閉された収容空間を有する第2密閉容器をさらに備え、
前記点火手段は、燃焼することによって火炎を生じさせる点火薬を含む点火器と、前記点火器にて生じた火炎を前記ガス発生剤に伝達するための伝火薬とを含み、
前記伝火薬が、前記第2密閉容器の前記収容空間に収容されている、請求項8に記載のガス発生器。
【請求項10】
前記フィルタは、前記ハウジングの軸方向に沿って延びる中空連通部を有し、
前記中空連通部は、前記フィルタの前記作動ガス生成室側の端面に少なくとも達し、
前記仕切り部材は、前記フィルタの前記端面を覆う環状板部と、前記環状板部の内周縁から前記フィルタの前記中空連通部内に向けて連続して延びることで前記フィルタの前記端面寄りの内周面を覆う筒状突出部とを含み、
前記第2連通孔は、前記仕切り部材の前記筒状突出部の内周面によって規定され、
前記仕切り部材の前記筒状突出部は、前記仕切り部材の前記環状板部から遠ざかるにつれて前記第2連通孔の開口面積が減少するように徐々に縮径している、請求項1から9のいずれかに記載のガス発生器。
【請求項11】
前記フィルタは、前記ハウジングの軸方向に沿って延びる中空連通部を有し、
前記中空連通部は、前記フィルタの前記作動ガス生成室側の端面に少なくとも達し、
前記仕切り部材は、前記フィルタの前記端面を覆う環状板部と、前記環状板部の内周縁から前記フィルタの前記中空連通部内に向けて連続して延びることで前記フィルタの前記端面寄りの内周面を覆う筒状突出部とを含み、
前記第2連通孔は、前記仕切り部材の前記筒状突出部の内周面によって規定され、
前記仕切り部材の前記筒状突出部は、前記仕切り部材の前記環状板部から遠ざかるにつれて前記第2連通孔の開口面積が増加するように徐々に拡径している、請求項1から9のいずれかに記載のガス発生器。
【請求項12】
前記第1ハウジング部材の外径と前記第2ハウジング部材の外径とが、同一である、請求項1から11のいずれかに記載のガス発生器。
【請求項1】
ガス発生剤が燃焼することで作動ガスが生成される作動ガス生成室と、前記作動ガス生成室で生成された作動ガスが通過するフィルタが収容されたフィルタ室とを内部に含み、軸方向の両端が閉塞されてなる長尺円筒状のハウジングと、
前記ハウジングの軸方向の一端部に配置され、前記ガス発生剤を燃焼させるための火炎を発生させる点火手段と、
前記ハウジングの内部に位置し、前記ハウジングの内部の空間を軸方向に前記作動ガス生成室と前記フィルタ室とに仕切る仕切り部材と、
前記作動ガス生成室の内部に位置し、前記作動ガス生成室を区画する区画部材とを備え、
前記フィルタ室は、前記作動ガス生成室よりも前記ハウジングの軸方向の他端部側に位置し、
前記ハウジングの前記フィルタ室を規定する部分の周壁部には、前記フィルタを通過した作動ガスを外部に噴出するための複数のガス噴出口が設けられ、
前記区画部材は、前記ハウジングと同軸上に配置された内部に中空部を有する有底筒状の部材にて構成され、前記仕切り部材の前記作動ガス生成室側の端部から前記ハウジングの軸方向に沿って延びる筒状部と、前記筒状部の前記点火手段側の端部を閉塞する底部とを含み、
前記区画部材の前記底部は、前記作動ガス生成室の前記点火手段側の端部よりも前記仕切り部材側に位置し、
前記ガス発生剤は、前記区画部材の前記中空部を除く部分の前記作動ガス生成室に収容され、
前記区画部材の前記筒状部には、前記作動ガス生成室の前記ガス発生剤が収容された空間と前記区画部材の前記中空部とを連通する複数の第1連通孔が設けられ、
前記仕切り部材の中央部には、前記区画部材の前記中空部と前記フィルタ室とを連通するための第2連通孔が設けられ、
前記区画部材の前記底部は、前記点火手段側に向かうにつれて徐々にその外形が小さくなる先細り形状を有している、ガス発生器。
【請求項2】
前記区画部材の前記底部の外表面が、略半球面形状を有している、請求項1に記載のガス発生器。
【請求項3】
前記区画部材の前記底部の外表面が、略円錐面形状を有している、請求項1に記載のガス発生器。
【請求項4】
前記区画部材の前記筒状部は、前記ハウジングの軸方向に沿って内径および外径が一定とされた円筒状部を有し、
前記複数の第1連通孔が、前記区画部材の前記円筒状部に設けられている、請求項1から3のいずれかに記載のガス発生器。
【請求項5】
前記区画部材の前記筒状部は、前記円筒状部の前記仕切り部材側の端部から連続して延び、前記仕切り部材側に向かうにつれて徐々に拡径する拡径部をさらに有する、請求項4に記載のガス発生器。
【請求項6】
前記ハウジングは、前記ハウジングの前記他端部および前記周壁部を構成する長尺有底円筒状の第1ハウジング部材と、前記第1ハウジング部材の開口端を閉塞することで前記ハウジングの前記一端部を構成する第2ハウジング部材とを含み、
前記第1ハウジング部材は、電縫管の軸方向端部の一方をクロージング処理してなる成形品にて構成され、
前記第1ハウジング部材の外径R1が、15mm≦R1≦22mmの条件を充足し、
前記区画部材における前記底部と前記筒状部との境界部分から前記区画部材の前記底部の前記点火手段側の端部までの距離L1が、1mm≦L1≦7mmの条件を充足し、
前記区画部材の前記底部の前記点火手段側の端部から前記作動ガス生成室の前記点火手段側の端部までの距離L2と、前記作動ガス生成室の径R2とが、0.026≦L2/R2≦0.71の条件を充足し、
前記区画部材の前記中空部の径R3と、前記作動ガス生成室の径R2とが、0.28≦R3/R2≦0.54の条件を充足している、請求項1から5のいずれかに記載のガス発生器。
【請求項7】
前記ガス発生剤が、燃料としてグアニジン系化合物を含み、酸化剤として塩基性硝酸銅を含む、請求項1から6のいずれかに記載のガス発生器。
【請求項8】
振動による前記ガス発生剤の破砕を防止するための破砕防止部材と、
前記ハウジングの内部に位置し、密閉された収容空間を有する第1密閉容器とをさらに備え、
前記ガス発生剤、前記区画部材および前記破砕防止部材が、前記第1密閉容器の前記収容空間に収容されている、請求項1から7のいずれかに記載のガス発生器。
【請求項9】
前記ハウジングの内部に位置し、密閉された収容空間を有する第2密閉容器をさらに備え、
前記点火手段は、燃焼することによって火炎を生じさせる点火薬を含む点火器と、前記点火器にて生じた火炎を前記ガス発生剤に伝達するための伝火薬とを含み、
前記伝火薬が、前記第2密閉容器の前記収容空間に収容されている、請求項8に記載のガス発生器。
【請求項10】
前記フィルタは、前記ハウジングの軸方向に沿って延びる中空連通部を有し、
前記中空連通部は、前記フィルタの前記作動ガス生成室側の端面に少なくとも達し、
前記仕切り部材は、前記フィルタの前記端面を覆う環状板部と、前記環状板部の内周縁から前記フィルタの前記中空連通部内に向けて連続して延びることで前記フィルタの前記端面寄りの内周面を覆う筒状突出部とを含み、
前記第2連通孔は、前記仕切り部材の前記筒状突出部の内周面によって規定され、
前記仕切り部材の前記筒状突出部は、前記仕切り部材の前記環状板部から遠ざかるにつれて前記第2連通孔の開口面積が減少するように徐々に縮径している、請求項1から9のいずれかに記載のガス発生器。
【請求項11】
前記フィルタは、前記ハウジングの軸方向に沿って延びる中空連通部を有し、
前記中空連通部は、前記フィルタの前記作動ガス生成室側の端面に少なくとも達し、
前記仕切り部材は、前記フィルタの前記端面を覆う環状板部と、前記環状板部の内周縁から前記フィルタの前記中空連通部内に向けて連続して延びることで前記フィルタの前記端面寄りの内周面を覆う筒状突出部とを含み、
前記第2連通孔は、前記仕切り部材の前記筒状突出部の内周面によって規定され、
前記仕切り部材の前記筒状突出部は、前記仕切り部材の前記環状板部から遠ざかるにつれて前記第2連通孔の開口面積が増加するように徐々に拡径している、請求項1から9のいずれかに記載のガス発生器。
【請求項12】
前記第1ハウジング部材の外径と前記第2ハウジング部材の外径とが、同一である、請求項1から11のいずれかに記載のガス発生器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図11】
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【図16】
【公開番号】特開2011−143777(P2011−143777A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−4783(P2010−4783)
【出願日】平成22年1月13日(2010.1.13)
【出願人】(000004086)日本化薬株式会社 (921)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月13日(2010.1.13)
【出願人】(000004086)日本化薬株式会社 (921)
【Fターム(参考)】
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