説明

ガス発生器

【課題】経年変化によるガス発生剤の片寄り等、設置状態に関わらず、ガス発生剤全体への着火性を向上する。
【解決手段】点火器16とガス排出口15を有するディフューザ部12が取り付けられた筒状ハウジング10内には、第1多孔板部材14により仕切られて形成された、第1ガス発生剤22が充填された第1燃焼室20と、連通孔37を有する筒状部材30と、第2多孔板部材32と、筒状ハウジング10から形成された第2ガス発生剤50が充填された第2燃焼室25が備えられている。筒状部材30が間隙35を形成するように配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアバッグ装置など、車輌の人員拘束装置等に使用されるガス発生器に関するもので、特に乗員の側面にエアバッグを展開させるためのエアバッグシステムに使用されるガス発生器に関する。
【背景技術】
【0002】
乗員の側面にエアバッグを展開させる装置に使用されるガス発生器は、その取り付け場所の関係から、細長いシリンダー形状のものが多い。そしてシリンダー形状のハウジングをその軸を略鉛直方向に向けたり、水平方向に向けたりして車両内部に配置している。
【0003】
特許文献1には、細長いアウターハウジング12の一端部にイニシエータ32が配置され、反対端部にガス排出口20を形成したディフューザ部が設けられたガス発生器が開示されている。
【0004】
このガス発生器は、イニシエータ32に近接してブースター剤24を収容したブースターカップ23と、開口28aが形成された仕切り28が配置されている。そして、インナーハウジング14で形成されている空間内にガス発生剤16が配置されている。このインナーハウジング14によってアウターハウジング12との間に筒状のガス通路が形成されている。
【0005】
イニシエータ32によって燃焼したブースター24は、燃焼生成物を発生させ、その燃焼生成物が開口28aからインナーハウジング14内部に入り込み、ガス発生剤16を燃焼させる。ガス発生剤16から発生したガスは、インナーハウジング14のオリフィス18を通り、アウターハウジング12とインナーハウジング14との筒状間隙を抜け、ディフューザ部のガス排出口20から排出される。インナーハウジング14等の部品により、このようにガスの流れがジグザグになるように形成されており、従来のようなフィルターは使用されていない。
【0006】
このガス発生器は、特許文献1の図1に示すように水平に設置されたとき、車両に取り付けたときに年数を経て加えられる振動等により、インナーハウジング14内部の燃焼室において図面の下側にガス発生剤16が片寄った状態になり、上側に隙間が形成されうる。特に当該燃焼室内に配置されたガス発生剤16が十分保持されていない場合は、この傾向が大きくなる。
【0007】
このような隙間が発生すると、ブースターから発生した燃焼生成物は、ガス発生剤16を一部しか着火させず、残りはこの隙間を通ってディフューザ側に流れてしまう。またガス発生剤から発生した燃焼ガスも、燃焼室に存在する未燃焼のガス発生剤16を着火させずに、当該隙間を通ってディフューザ側に流れてしまう。このためガス発生剤16への着火性が十分確保できず改良の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許2008/0078486号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、細長い形状のガス発生器であっても、車両内の設置状態に拘わらず、ガス発生剤全体への着火性が向上されたガス発生器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
〔請求項1〕
本発明は、課題の解決手段として、
一端側に点火手段が取り付けられ、他端側にガス排出口を有するディフューザ部が取り付けられた筒状ハウジングを有しており、
前記筒状ハウジング内には、
前記筒状ハウジング内の前記一端側に、第1多孔板部材により仕切られて形成された、第1ガス発生剤が充填された第1燃焼室と、
前記筒状ハウジング内の残部空間内に配置された、周壁部に連通孔を有する筒状部材と、前記第1多孔板部材と前記筒状部材の間に配置された第2多孔板部材と、前記筒状ハウジングから形成された第2ガス発生剤が充填された第2燃焼室が備えられており、
前記筒状部材が、前記筒状ハウジングの周壁部との間に間隙を形成するように配置されており、前記筒状ハウジングの第1多孔板部材側の内周面に当接された第1開口端部と、前記ディフューザ部側にて支持された第2端部を有しているものである、ガス発生器と、その組立方法を提供する。
【0011】
点火手段は、周知の電気式点火器と周知の伝火薬又はガス発生剤とを組み合わせたものであり、筒状ハウジングの一端側に取り付けられている。
【0012】
ディフューザ部は公知のインフレータと同じものでよく、開口部にフランジを有するカップ状のもので、周壁面に複数のガス排出口を有しているものであることが好ましい。ディフューザ部は、筒状ハウジングの他端側に取り付けられている。
【0013】
第1燃焼室は、筒状ハウジングに配置された第1多孔板部材、筒状ハウジング及び点火器(あるいはそれを固定するカラー)によって形成される空間であり、第1ガス発生剤が充填されている。
【0014】
第1燃焼室は、筒状ハウジングの上記他端より(ディフューザ部より)において、筒状ハウジングを第1多孔板部材で仕切ることで形成されている。第1多孔板部材は、複数の貫通孔を有しているものであり、周縁部にフランジ部を有し、弾力性のある金属からなるものが好ましい。複数の貫通孔の数、開口の大きさ、形成位置等は特に制限されない。第1燃焼室内には、点火手段と共に第1ガス発生剤が充填されている。
【0015】
第2燃焼室は、周壁部に連通孔を有する筒状部材と、第1多孔板部材と筒状部材との間に配置された第2多孔板部材と、前記筒状ハウジングとで囲まれて形成されている。第2燃焼室内には、第2ガス発生剤が充填されている。
【0016】
第2多孔板部材は、複数の貫通孔を有しているものであり、周縁部にフランジ部を有し、弾力性のある金属からなるものが好ましい。複数の貫通孔の数、開口の大きさ、形成位置等は特に制限されない。このような第2多孔板部材を用いることにより、第2燃焼室の容積の調整が容易になり、第2多孔板部材で第2ガス発生剤を押しつけることにより、第2ガス発生剤が移動しないように密に充填できるようになる。
【0017】
さらに、第2多孔板部材が筒状部材と第1多孔板部材の間に配置されることで、第1多孔板部剤と第2多孔板部材との間に間隔(空間)が形成されることになる。このため、第1燃焼室で発生し、第1多孔板部材の貫通孔を通過した燃焼ガスが、前記空間全体を満たした後、第2多孔板部材の貫通孔を通過して、第2燃焼室内に流入することから、第2ガス発生剤が端部から揃って燃焼開始されやすくなり、着火斑を抑制できるようになる。
【0018】
筒状部材は、周壁部に連通孔を有している(好ましくは複数の連通孔を有している)もので、弾力性のある金属からなるものが好ましい。連通孔は、筒状部材の軸方向及び円周方向にそれぞれ等間隔で形成することができる。また、ディフューザ部側よりに形成することができ、この場合、ディフューザ部側の開口面積が大きくなるように、連通孔の個数や径を調整する。
【0019】
筒状部材は、筒状ハウジングの周壁部との間に間隙(筒状間隙)を形成するように配置されており、ハウジングの一端側(点火手段側)に向いて、ハウジングの内周面に当接された第1開口端部と、ディフューザ部側にて支持された第2端部を有している。
【0020】
この筒状間隙は、インフレータの作動時において燃焼ガスがディフューザ部に流れる排出経路となる。燃焼ガスが筒状間隙をディフューザ部まで流れる間、間隙を形成する筒状部材と筒状ハウジングの壁面と接触しやすくなり、残渣捕集機能や冷却機能が向上される。また、筒状間隙を流れるガスは、流れを妨げられることなくガス排出口に到達するため、点火からガスが排出されるまでの時間を短くすることができる。
【0021】
筒状ハウジングの周壁部との間に間隙を形成するため筒状部材の外径は、筒状ハウジングの内径よりも小さくなるように設定されている。
【0022】
筒状部材は、周壁部に連通孔が形成され、この連通孔で筒状部材内部(第2燃焼室)と筒状間隙が連通されている。このとき、第2ガス発生剤の移動(例えば、一方向に片寄った移動)等により、筒状部材内部(第2燃焼室)に空間が形成されてしまうと、第1燃焼室で発生した燃焼ガスの一部は、この空間を通って連通孔を経由し、筒状間隙に流れ込みやすくなる。
しかし、本発明のガス発生器では、第1ガス発生剤及び第2ガス発生剤が隙間なく充填されており、前記のような空間が形成されることがないため、第1燃焼室にて発生した燃焼ガスの全量が、第2燃焼室内の第2ガス発生剤に伝わりやすくなり、第2ガス発生剤全体の着火性能が向上される。
【0023】
第1ガス発生剤及び第2ガス発生剤の含有成分は、公知のものを用いることができる。
第1ガス発生剤及び第2ガス発生剤は、成形体であれば形状は特に制限されず、ディスク形状、円柱状、1又は2以上の貫通孔がある円柱状のものを用いることができる。
【0024】
〔請求項2〕
本発明は、課題の他の解決手段として、
前記筒状部材が、第1開口端部側の開口部が拡径された拡径部を有し、第2端部側が底面の中心部に中央孔を有するものであり、
前記ディフューザ部側には、カップ状で、周壁部に連通孔を有し、底面に突起を有するガス迂回手段が、その開口部側がディフューザ部側になるように配置されており、
前記筒状部材の拡径部が前記筒状ハウジングの内壁面に当接され、
前記筒状部材の中央孔が前記ガス迂回手段底面の突起に嵌合されている、請求項1記載のガス発生器と、その組立方法を提供する。
【0025】
筒状部材は、第1開口端部側(即ち、点火手段側及び第1燃焼室側)の開口部が拡径された拡径部を有しており、拡径部が筒状ハウジングの内壁面に当接されている。この拡径部の外径が、筒状ハウジングの内径よりも僅かに大きくなるように調整されていることで、拡径部と筒状ハウジングの内壁面が圧接(互いに押し合うに接触する)されている。このため、筒状部材が強く固定されることになり、筒状間隙の形成(特に均等間隔の筒状間隙の形成)も容易になる。さらに第1ガス発生剤からの燃焼生成物が、再度、筒状間隙にショートパスすることを防止できるため、第2ガス発生剤全体の着火性が向上する。
【0026】
筒状部材は、第2開口端部側(即ち、ディフューザ部側)が底面の中心部に底面を貫通した中央孔を有している。
【0027】
ガス迂回手段は、カップ状で、周壁部に連通孔を有し、底面に第2燃焼室側に向いた突起を有するものである。ガス迂回手段は、その開口部側がディフューザ部側に向くように配置されている。ガス迂回手段は、その中心軸がディフューザ部の中心軸及び筒状ハウジングの中心軸と一致して配置されるようにする。
【0028】
筒状部材の第2端部側の中央孔に、ガス迂回手段底面の突起が嵌め込まれている。このため、筒状部材の第2端部側の固定と筒状間隙の形成(特に均等間隔の筒状間隙の形成)が容易である。さらに、このように固定したとき、ディフューザ部の中心軸、筒状ハウジングの中心軸及びガス迂回手段の中心軸が全て一致するように配置することで、それらと筒状部材の中心軸を容易に一致させることができる。
このように筒状ハウジングの取付と固定(位置決め)が容易であることから、ガス発生器の組立も容易になるので好ましい。
【0029】
本発明のガス発生器は、小型軽量化の点で燃焼ガスを冷却・濾過するためのクーラント・フィルタは使用していないが、必要に応じて使用することもできる。クーラント・フィルタを使用する場合は、筒状部材と筒状ハウジングとの間の筒状間隙や、第1多孔板部材と第2多孔板部材との間、あるいは迂回手段の内部空間に配置することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明のガス発生器は、細長い形状の筒状ハウジングであっても、設置状態に拘わらず、長期間にわたってガス発生剤全体を保持し、燃焼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施形態を含むガス発生器の軸方向断面図。
【図2】図1とは別実施形態の部分拡大断面図。
【図3】本発明の比較例を示すガス発生器の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の一実施形態を図1により説明する。図1は、ガス発生器1の軸方向の断面図である。
【0033】
筒状ハウジング10の一端部10a側には、点火手段となる点火器16が取り付けられている。点火器16は、公知の電気式点火器がカラー17に固定されたもので、点火薬を含んだ着火部16aがカラー17から突出している。
【0034】
筒状ハウジング10の反対端部10b側には、ディフューザ12が取り付けられている。ディフューザ12は、フランジ部12a、周壁部12b、底部12cを有する略カップ形状であり、このフランジ部12aにおいて筒状ハウジング10に溶接固定されている。周壁部12bには、複数のガス排出口15が形成されている。
【0035】
筒状ハウジング10の点火器16側には、点火器16とは間隔をおいて、第1多孔板部材14が配置されている。第1多孔板部材14は、円形底面の周縁に環状壁14aが形成されたものであり、環状壁14aが筒状ハウジング10の内壁面と圧接されることで固定されている。
【0036】
点火器16(点火器16とカラー17)、筒状ハウジング10、第1多孔板部材14で囲まれた空間が第1燃焼室20となっている。第1燃焼室20には、第1ガス発生剤22が充填されている。
【0037】
第1ガス発生剤22は、点火器16の着火部16aと接触している。第1多孔板部材14の貫通孔(図示せず)は、第1ガス発生剤22よりも小さな開口である。貫通孔はシールテープで塞がれていてもよい。
【0038】
第1ガス発生剤22としては、着火性が良く、燃焼が持続する(燃焼温度の高い)ガス発生剤を使用することができる。第1ガス発生剤22の燃焼温度は、1700〜3000℃の範囲にあることが望ましい。このような第1ガス発生剤としては、例えばニトログアニジン(34重量%)、硝酸ストロンチウム(56重量%)からなる、外径1.5mm、厚さ1.5mmのディスク状のものを用いることができる。
【0039】
第1ガス発生剤22は、第1多孔板部材14によって、点火器16側へ押しつけられた状態で保持されている。
【0040】
筒状ハウジング10内部のディフューザ12側端部(反対端部10b)には、ガス迂回手段となるカップ状部材40が配置されている。カップ状部材40は、底面40aと周壁部40bを有しており、周壁部40bは複数の連通孔40cを有している。底面40aの中心部には、突起40dが点火器16側に伸びるように形成されている。
【0041】
カップ状部材40は、ディフューザ12のフランジ部12aに対して公知の方法(溶接等)で固定されている。カップ状部材40の開口部は、シールテープ45で閉塞されており、ガス排出口15から湿気が進入しないよう機能している。
【0042】
カップ状部材40の外径は、筒状ハウジング10の内径よりも小さい。このため、周壁部40bと筒状ハウジング10の内壁面との間には間隙36が存在しており、ディフューザ部のフランジ12aにて行き止まりのポケット部(間隙)36となっている。このポケット部36は、筒状間隙35と続いているため、燃焼ガス中のミストを滞留させるように機能する。
【0043】
筒状ハウジング10内には、さらに筒状部材30が配置されている。この筒状部材30は、筒状ハウジング10の内径よりも小さな外径を有しており、筒状部材30と筒状ハウジング10の間には均等幅の筒状間隙35が形成されている。
【0044】
筒状部材30は、その周壁部に複数のガス通過孔37が軸方向に均等間隔で形成されている。このガス通過孔37は、筒状部材30の円周方向に均等間隔で形成されている。第2燃焼室25と環状間隙35は、ガス通過孔37で連通されている。なお、このガス通過孔37は、周壁部のうちディフューザ部12側寄りに形成されていてもよい。また、ディフューザ部12側に近づくにつれて開口面積が増大するようにしてもよい。
【0045】
筒状部材30は、点火器16側においてフランジ状に形成された拡径部31を有しており、拡径部31の外周縁31aが筒状ハウジング10の内周面に当接されている。
【0046】
外周縁31aの外径は、筒状ハウジング10の内径よりも僅かに大きくなっており、筒状ハウジング10内に配置されたとき、拡径部31が有する弾性により、筒状ハウジング10の内壁面に圧接されている。このため、圧接部分には隙間が形成されていない。なお、筒状部材30の固定のために、拡径部31の開口周縁に嵌合する段部や係合する突起を筒状ハウジング10の内部に形成してもよい。
【0047】
図1において拡径部31は、筒状部材30の周面とのなす角度α(図2参照)が直角になっているが、前記角度αは鋭角又は鈍角になるように形成されていてもよい。
【0048】
さらに拡径部31は、図2に示すように、先端部が折り曲げられた環状折曲部31bを有していてもよい。この実施形態では、外周縁31aではなく、環状折曲部31bが筒状ハウジング10の内壁面に圧接されている。
【0049】
筒状部材30は、ディフューザ部12側が底面32の中心部に中央孔30dが形成されている。そして、中央孔30dがカップ状部材40の底面40aに形成された突起40dに嵌め込まれている。
【0050】
筒状部材30は、拡径部31と筒状ハウジング10の内壁面が圧接されていることと、中央孔30dがカップ状部材40の突起40dに嵌め込まれていることで、軸方向及び半径方向の両方向において固定されており、筒状ハウジング10と同軸上に配置されている。
【0051】
筒状部材30と第1多孔板部材14の間には、第2多孔板部材32が配置されている。第2多孔板部材32は、円形底面の周縁に環状壁32aが形成されたものであり、環状壁32aが筒状ハウジング10の内壁面と圧接されることで固定されている。第2多孔板部材32と第1多孔板部材14の間には、空間18が形成されている。環状壁32aは点火器16側に伸びている。
【0052】
第2燃焼室25は、第2多孔板部材32と、筒状部材30と、筒状ハウジング10で囲まれて形成されている。第2燃焼室25には、第2ガス発生剤50が充填されている。第2多孔板部材32の貫通孔(図示せず)は、第2ガス発生剤50よりも小さな開口である。貫通孔はシールテープで塞がれていてもよい。
【0053】
第2燃焼室25は、筒状部材30の拡径部31から第2多孔板部材32までの空間25aと、残部の空間25bからなるものであり、全体として1つの燃焼室を形成している。空間25aの方が空間25bよりも内径が大きくなっている。
【0054】
第2ガス発生剤50は、第1ガス発生剤22よりも燃焼温度の低いガス発生剤を使用している。第2ガス発生剤50の燃焼温度は、1000〜1700℃の範囲にあることが望ましく、例えば、硝酸グアニジン(41重量%)、塩基性硝酸銅(49重量%)及びバインダーや添加物からなる、外径1.8mm、内径0.7mm、長さ1.9mmの単孔円柱状のものを用いることができる。
【0055】
第2ガス発生剤50は、第2多孔板部材32によって、ディフューザ部12側へ押しつけられた状態で保持されている。このため、第2燃焼室25内の第2ガス発生剤50が密に充填されることになり、移動して隙間が形成されることが阻止される。
【0056】
次に、図1に示すガス発生器の組立方法について説明する。
筒状ハウジング10の端部10b側の開口部に、ガス排出口15を有するディフューザ部12を溶接で固定する。
その後、カップ状部材(ガス迂回手段)40を、開口部側がディフューザ部12側になるようにして、フランジ部12aに取り付ける。
【0057】
その後、筒状ハウジング10の端部10a側から筒状部材30を圧入する。このとき、筒状部材30の拡径部31の外周縁31a(図2では環状折曲部31b)が筒状ハウジング10の内壁面に当接され、筒状部材10の中央孔30dがカップ状部材(ガス迂回手段)40の突起40dに嵌合するようにして取り付ける。このようにして筒状部材30を取り付けることにより、位置決めと固定が容易になる。
【0058】
その後、筒状部材30内に所要量の第2ガス発生剤50をタッピングしながら充填した後、第2多孔板部材32を圧入して、第2ガス発生剤50が充填された第2燃焼室25を形成する。このようにして第2多孔板部材32を圧入することで、第2ガス発生剤50が密に充填されて移動が防止されるため、第2燃焼室25内に隙間が生じることが防止される。
【0059】
その後、第1多孔板部材14を圧入し、第1多孔板部材14に当接するようにして第1ガス発生剤22を充填する。予め第1多孔板部材14は、一端部10a寄りに配置しておき、カラー17を一端部10aから挿入するとき、第1ガス発生剤22とともに第1多孔板部材14を奥まで押し込む。
【0060】
その後、カラー17に固定された点火器16を取り付け、第1燃焼室20を形成する。
【0061】
次に、図1に示すガス発生器の動作を説明する。
点火器16の作動によって第1燃焼室20内の第1ガス発生剤22が燃焼すると、そこから燃焼生成物(火炎や高温ガス)が発生し、第1多孔板状部材14の多孔を通って空間18へ進入する。また第1燃焼室20内には第1ガス発生剤22が密に充填されているため、着火斑(斑に燃焼する現象)が発生しにくく、第1ガス発生剤22が均等に燃焼される。燃焼生成物は空間18に進入する。
【0062】
燃焼生成物は、空間18から第2板状部材32の貫通孔を通って第2燃焼室25内に存在する第2ガス発生剤50を着火させる。このとき、先に空間25a内にある第2ガス発生剤50が着火されることになる。第1燃焼室20から発生した燃焼生成物は、一旦空間18へ入ることから、第2多孔板部材32に隣接する第2ガス発生剤50(空間25a内の第2ガス発生剤50)は、端面から揃って燃焼を開始するため、着火斑が生じにくい。
【0063】
空間25a内の第2ガス発生剤50の燃焼生成物は、空間25bに進入するときに拡径部31によって流れが速くなる。また、拡径部31と筒状ハウジング10の内壁面が圧接されているので、前記圧接部から筒状間隙35内に燃焼生成物が流入することはない。よって、発生した燃焼生成物及び燃焼ガスは、全量が空間25bに流れ込むことから、この空間25bにある第2ガス発生剤50を着火させる能力が維持される。
【0064】
燃焼ガス及び燃焼生成物は、ガス通過孔37から筒状間隙35内に流出し、筒状ハウジング10の内壁面に当たり、その向きをディフューザ12側に向けて流れる。その過程で含まれる残渣は、筒状ハウジング10内壁面に付着する。
【0065】
さらに燃焼ガスおよび燃焼生成物は、ディフューザ12のフランジ部12aに当たり向きを変え、連通孔40からカップ状部材40内部に侵入する。この過程でも、ポケット36で残渣が捕集される。その後、ディフューザ12の底部12cに当たってさらに向きを変え、ガス排出口15から排出される。
【0066】
第1燃焼室20内の第1ガス発生剤22が密に充填されていない場合には、図3のようにガス発生器を水平に配置した状態で作動したとき、長期間にわたる車両からの振動により、第1ガス発生剤22と筒状ハウジング10との間に隙間53が形成されることがあり得る。隙間53が生じると、発生した燃焼生成物が矢印Aで示すように、その隙間53に優先的に流れ込みやすくなり、第1ガス発生剤22の着火や燃焼に斑が出るばかりか、第2ガス発生剤50への着火性にも影響を及ぼす。
【0067】
第2燃焼室25内の第2ガス発生剤50が密に充填されていない場合には、図3のようにガス発生器を水平に配置した状態で作動したとき、長期間にわたる車両からの振動により、第2ガス発生剤50と筒状ハウジング10との間に隙間55が形成されることがあり得る。隙間55が生じると、発生した燃焼生成物が矢印Bで示すように、その隙間55に優先的に流れ込みやすくなり、第2ガス発生剤50の着火や燃焼に斑が出るばかりか、第2ガス発生剤50から発生した燃焼ガスや第1ガス発生剤22からの燃焼生成物が、その隙間55を経由してガス通過孔37から優先的に排出されやすくなる。
【0068】
本発明のガス発生器は、以上のような構造であることから、ガス発生剤の着火斑を抑制して、全体として着火、燃焼性能を向上させることができる。特にハウジングが軸方向に長い形状のもので、第1燃焼室と第2燃焼室が軸方向に隣接している構造のガス発生器では、円滑にガス発生剤の燃焼を行うことができ、迅速に作動するガス発生器となる。
【符号の説明】
【0069】
10 筒状ハウジング
12 ディフューザ
15 ガス排出口
16 点火器
20 第1燃焼室
22 第1ガス発生剤
25 第2燃焼室
30 筒状部材
31 拡径部
35 筒状間隙
37 ガス通過孔
50 第2ガス発生剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端側に点火手段が取り付けられ、他端側にガス排出口を有するディフューザ部が取り付けられた筒状ハウジングを有しており、
前記筒状ハウジング内には、
前記筒状ハウジング内の前記一端側に、第1多孔板部材により仕切られて形成された、第1ガス発生剤が充填された第1燃焼室と、
前記筒状ハウジング内の残部空間内に配置された、周壁部に連通孔を有する筒状部材と、前記第1多孔板部材と前記筒状部材の間に配置された第2多孔板部材と、前記筒状ハウジングから形成された第2ガス発生剤が充填された第2燃焼室が備えられており、
前記筒状部材が、前記筒状ハウジングの周壁部との間に間隙を形成するように配置されており、前記筒状ハウジングの第1多孔板部材側の内周面に当接された第1開口端部と、前記ディフューザ部側にて支持された第2端部を有しているものである、ガス発生器。
【請求項2】
前記筒状部材が、第1開口端部側の開口部が拡径された拡径部を有し、第2端部側が底面の中心部に中央孔を有するものであり、
前記ディフューザ部側には、カップ状で、周壁部に連通孔を有し、底面に突起を有するガス迂回手段が、その開口部側がディフューザ部側になるように配置されており、
前記筒状部材の拡径部が前記筒状ハウジングの内壁面に当接され、
前記筒状部材の中央孔が前記ガス迂回手段底面の突起に嵌合されている、請求項1記載のガス発生器。
【請求項3】
請求項1記載のガス発生器の組立方法であり、
他端側にガス排出口を有するディフューザ部が取り付けられた筒状ハウジング内に筒状部材を取り付ける工程、
前記筒状部材内に所要量の第2ガス発生剤を筒状ハウジングの一端側からタッピングしながら充填する工程、
前記筒状ハウジングの一端側から第2多孔板部材を圧入して、第2ガス発生剤が充填された第2燃焼室を形成する工程、
前記筒状ハウジングの一端側から第1多孔板部材を圧入する工程、
前記筒状ハウジングの一端側から第1多孔板部材に当接するようにして第1ガス発生剤を充填する工程、
前記筒状ハウジングの一端側に点火手段を取り付ける工程、
を有しているガス発生器の組立方法。
【請求項4】
請求項2記載のガス発生器の組立方法であり、
他端側にガス排出口を有するディフューザ部が取り付けられた筒状ハウジング内に、カップ状で、周壁部に連通孔を有し、底面に突起を有するガス迂回手段が、その開口部側がディフューザ部側になるように取り付ける工程、
筒状部材の拡径部の外周面が筒状ハウジングの内壁面に当接され、筒状部材の中央孔がガス迂回手段底面の突起に嵌合されるようにして、筒状部材を取り付ける工程、
前記筒状部材内に所要量の第2ガス発生剤をタッピングしながら充填する工程、
第2多孔板部材を圧入して、第2ガス発生剤が充填された第2燃焼室を形成する工程、
第1多孔板部材を圧入する工程、
第1多孔板部材に当接するようにして第1ガス発生剤を充填する工程、
点火手段を取り付ける工程、
を有しているガス発生器の組立方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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