説明

ガス遮断器

【課題】大電流遮断時における高温ガスのスムーズな排気を実現することにより、小さな駆動力でも大電流領域において優れた電流遮断性能を発揮することができ、機器のコンパクト化および遮断性能の向上に寄与することが可能であるガス遮断器を提供する。
【解決手段】操作ロッド71には、固定側接点部B側の中空部71aと、操作機構16側の中実部71bとが連続して形成されている。中実部71bの外径寸法は中空部71aの内径寸法より小さくなるように設けられており、中空部71aと中実部71bとの境界面71eは操作ロッド7の中心軸に対して垂直な平面形状となっている。この中空部71aと中実部71bとの境界面71eには操作ロッド7の軸方向と平行な方向に開口された排気穴11が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、パッファ形のガス遮断器に関する。
【背景技術】
【0002】
電力系統においては、電流遮断時に発生するアーク放電をガスの吹き付けにより消弧するガス遮断器が広く採用されている。その中でも、パッファ形ガス遮断器は高い需要を得ている。パッファ形ガス遮断器は、消弧性ガスを圧縮して絶縁ノズルに導き、電極間に発生したアーク放電に吹き付けて消弧する。
【0003】
消弧性ガスは、ガス遮断器のタンク内に充填されている。消弧性ガスの種類としては、消弧性能および電気絶縁性能に優れたSFガスが主に使用されている。ただし、SFガスは、二酸化炭素ガスの23,900倍の地球温暖化効果を有すると言われている。そのため、環境調和が重視される近年では、SFガス以外の代替ガスを、単体若しくは複数種類のガスの混合として用いる場合もある。
【0004】
パッファ形ガス遮断器の基本構成について、図6(a)、(b)を参照しつつ、具体的に説明する。図6(a)はパッファ形ガス遮断器の投入状態すなわち通常時の電流通電状態を示す断面図、図6(b)はパッファ形ガス遮断器の電流遮断過程の途中状態を示す断面図である。
【0005】
図6(a)、(b)に示すように、パッファ形ガス遮断器には、消弧性ガスが充填されたタンク(図示せず)内に、可動側接点部A(図6の下側)と固定側接点部B(図6の上側)が同一軸線上に設けられている。可動側接点部Aは、操作機構16の駆動を伝達する絶縁ロッド15に接続されている。この可動側接点部Aは、操作機構16からの駆動力が絶縁ロッド15を介して伝達されることで往復動(図6では上下動)するようになっている。往復運動の方向は、固定側接点部Bと接離する方向である。
【0006】
可動側接点部Aには、可動通電接触子1及び可動アーク接触子3が設けられている。固定側接点部Bには、固定通電接触子2及び固定アーク接触子4が設けられている。可動通電接触子1と固定通電接触子2とは、対向して配置され、可動側接点部Aの往復運動に伴って接離自在となっている。また、可動アーク接触子3と固定アーク接触子4とは、対向して設けられ、接離自在となっている。
【0007】
可動側接点部Aは、可動通電接触子1及び可動アーク接触子3の他、絶縁ノズル5、パッファシリンダ6、操作ロッド7、パッファピストン10、及びピストン支え12を備えている。
【0008】
パッファシリンダ6は、中空の円筒形状を有し、可動側接点部Aと固定側接点部Bとの同軸線上に設けられる。このパッファシリンダ6は、固定側接点部B側の端部にフランジ部6aが設置されている。フランジ部6aは、パッファシリンダ6の縁から軸側へ延設されている。フランジ部6aにおいて固定側接点部B側の端面には、可動通電接触子1、絶縁ノズル5、及び可動アーク接触子3が、外周側から内周側に向かって同心円状に順次固定されている。可動通電接触子1、絶縁ノズル5、及び可動アーク接触子3は、中空の円筒状部材である。可動通電接触子1は、絶縁ノズル5を囲むように配置され、絶縁ノズル5は、可動アーク接触子3を囲むように配置されている。
【0009】
可動通電接触子1と絶縁ノズル5は互いに側面で接触して設置されている。絶縁ノズル5と可動アーク接触子3とは所定の間隔を持って設置されている。フランジ部6aにおいて可動アーク接触子3の外周部分に近接する位置には、軸方向に貫通穴6bが形成されている。
【0010】
操作ロッド7は、パッファシリンダ6の中空部を貫いて設置され、パッファシリンダ6と同軸上に位置する。この操作ロッド7は、固定側接点部B側の中空部7aと、操作機構16側の中実部7bが連続して形成されている。中空部7aと中実部7bとは同一外径であって、操作ロッド7は単一径の円筒状部材からなる。中実部7bは絶縁ロッド15を介して操作機構16に接続されている。
【0011】
中空部7aは、パッファシリンダ6のフランジ部6aに固定されている。中空部7aは、可動アーク接触子3と同軸に配置されている。また、中空部7aの内径および外径は、可動アーク接触子3の内径および外径と一致しており、可動アーク接触子3の内部空間と中空部7aとは連通された状態にある。換言すると、可動アーク接触子3は、中空部7aの縁から固定側接点部B側へ延設されている。中空部7aと中実部7bとの境界面には、操作ロッド7の径方向に排気穴11が形成されている。
【0012】
パッファピストン10は、パッファシリンダ6の内壁面及び操作ロッド7の外周面に対して摺動自在に挿入されている。このパッファピストン10、パッファシリンダ6の内壁面、及び操作ロッド7の外周面で囲まれた空間が、消弧性ガスのガス圧を上昇させるパッファ室9として機能する。また、このパッファ室9は、フランジ部6aの貫通穴6bを介して、絶縁ノズル5と可動アーク接触子3とに挟まれた空間とに連通されることとなる。ている。また、排気穴11は、後述するように、パッファ室9内のガス圧上昇を抑える役割を果たす。
【0013】
ピストン支え12は、筒状部材であって、パッファピストン10の端面に取り付けられ、パッファ室9とは反対の方向に伸びており、図示しないタンクの壁面に固定されている。このため、パッファピストン10は、ピストン支え12を介して当該タンクに固定されることになる。これらパッファシリンダ6、パッファピストン10およびピストン支え12によって、アーク放電8に吹付ける消弧性ガスを蓄圧するための蓄圧手段が構成される。なお、ピストン支え12には、パッファピストン10とは離れた位置に、ピストン支え12の内部空間とタンクとを連通させる排気穴12cが貫設されている。
【0014】
以上の構成を有するパッファ形ガス遮断器では、次のようにして電流遮断動作を実施する。すなわち、可動側接点部Aは、操作機構16からの駆動力を受けて、固定側接点部Bと離れる方向に移動を開始することで、投入状態から開極動作を始める。このとき、可動通電接触子1と固定通電接触子2が開離し、可動アーク接触子3と固定アーク接触子4が開離する。
【0015】
図6(b)に示すように、遮断過程の途中状態では、固定アーク接触子4と可動アーク接触子3との間にアーク放電8が発生する。アーク放電8は非常に高温であるため、アーク放電8から高温ガスが発生するとともに、アーク放電8によって加熱された周りの消弧性ガスも高温となる。
【0016】
高温ガスは、絶縁ノズル5と可動アーク接触子3とに挟まれた空間から、パッファシリンダ6の貫通穴6bを通ってパッファ室9に流入する。その結果、パッファ室9のガス圧力は高温ガスによって高められる。また、可動側接点部Aの移動が進むにつれて、パッファピストン10は、パッファシリンダ6に対して固定側接点部B側の方向に相対移動するため、パッファ室9の容積は縮小される。従って、パッファ室9内のガスは圧縮され、パッファ室9内のガス圧力はさらに高められる。一般に、パッファ形ガス遮断器ではパッファ室9内のガス圧力が高くなれば高くなるほど、遮断性能が上昇する傾向にある。
【0017】
その後、パッファ形ガス遮断器の遮断過程後半では、電流零点に向けてアーク放電8が小さくなり、高圧力となったパッファ室9内のガスがパッファ室9から貫通穴6bと絶縁ノズル5で形成された空間を通って整流され、アーク放電8に対し強力に吹き付けられる。これにより、パッファ形ガス遮断器においてはアーク放電8の消弧に至り、電流遮断が完了する。
【0018】
上記のようなパッファ形ガス遮断器では、大電流の遮断時にパッファ室9内のガス圧力が上昇し過ぎると、パッファピストン10にかかる圧力は、開極駆動する際の駆動反力として作用してしまう。特に、いわゆる自力効果を用いたタイプのガス遮断器においては、アーク放電8による高温ガスを用いてパッファ室9のガス圧を蓄圧するので、大電流遮断時のパッファ室9内のガス圧上昇は顕著であって、パッファピストン10に作用する駆動反力は相当に大きくなる。駆動反力が大きくなると、操作機構16の駆動力が不足して遮断性能が低下するおそれがある。そのため、操作機構16は駆動力の増大を余儀なくされ、機器の大形化を招くなどの問題が生じていた。
【0019】
そこで従来から、種々の技術が提案されている(例えば、特許文献1、2参照。)。具体的には図6に示したパッファ形ガス遮断器では、操作ロッド7に排気穴11を設けることにより、大電流遮断時のパッファ室9内のガス圧の極端な上昇を回避している。
【0020】
すなわち、アーク放電8によって発生した高温ガスは、絶縁ノズル5と可動アーク接触子3とで形成された空間からパッファシリンダ6の貫通穴6bを抜けてパッファ室9内に流入するだけではなく、可動アーク接触子3の内部を通って中空部7a内部にも流入する。中空部7a内部に流入した高温ガスは、中空部7aを流路して排気穴11に至り、ピストン支え12の内部に入る。さらに、高温ガスはピストン支え12の排気穴12cを経て、タンクの空間へと流れ出す。
【0021】
以上のようにして、操作ロッド7に排気穴11を有するパッファ形ガス遮断器では、アーク放電8によって生じた高温ガスの一部を、操作ロッド7の排気穴11を介して可動側接点部Aの内部から外部へと逃がしている。これにより、大電流遮断時のパッファ室9内のガス圧上昇を抑えることができ、開極駆動に対する駆動反力を低減させることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】特開平9−50747号公報
【特許文献2】特開平10−223101号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
ところで、電力需要が増大する近年では、ガス遮断器のコンパクト化や遮断性能については、より一層の向上が求められている。既に述べたように、大電流遮断時にパッファ室9内のガス圧力が過度に上昇すると、パッファピストン10への駆動反力が増大して、ガス遮断器の大形化や遮断性能の低下を招くおそれがある。したがって、ガス遮断器においては、大電流遮断時のパッファ室9内のガス圧上昇を抑え、パッファピストン10への駆動反力を低減させることにより、機器のコンパクト化や遮断性能を向上させることが要請されていた。
【0024】
特に、タンク内に充填される消弧性ガスとして、SFガス以外の単体ガスあるいは混合ガスが採用される場合、ガス遮断器の大形化や遮断性能の低下といった不具合が発生し易いので、機器のコンパクト化や遮断性能を向上させることが強く望まれている。これは、SFガスの代替ガスはSFガスよりも消弧性能および電気絶縁性能が劣り、パッファシリンダ6やパッファピストン10などの構成部材を大きくせざるを得ず、大きな駆動力で可動側接点部Aを駆動することが必要となるためである。
【0025】
本発明の実施形態は、上記の課題を解消するために提案されたものであり、大電流遮断時における高温ガスのスムーズな排気を実現することにより、小さな駆動力でも大電流領域において優れた電流遮断性能を発揮することができ、機器のコンパクト化および遮断性能の向上に寄与することが可能であるガス遮断器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0026】
上記の目的を達成するために、実施形態のガス遮断器では、消弧性ガスが充填された密閉容器内に、固定アーク接触子および固定通電接触子を含む固定側接点部と、可動アーク接触子および可動通電接触子を含む可動側接点部とが、同一軸線上に向かい合って配置されている。前記可動アーク接触子および前記可動通電接触子は絶縁ロッドを介して操作機構と接続された操作ロッドによって軸方向に駆動可能に設けられている。
【0027】
前記固定側接点部および前記可動側接点部は、閉極状態では互いに接触状態にあって電流通電が行われ、開離時には前記可動アーク接触子と前記固定アーク接触子の間にアーク放電が発生しうるように構成される。前記可動側接点部には、前記アーク放電に対し前記消弧性ガスを吹き付ける絶縁ノズルと、前記アーク放電に吹き付ける前記消弧性ガスを蓄圧する蓄圧手段とが設置されている。前記蓄圧手段には、前記可動側接点と一体となって駆動するパッファシリンダと、前記パッファシリンダに摺動自在に挿入されたパッファピストンと、前記パッファピストンを固定するためのピストン支えとが設けられている。
【0028】
前記操作ロッドにおいて、前記固定側接点部側には前記アーク放電に加熱された前記消弧性ガスを取り込む中空部が、前記操作機構側には中実部が、それぞれ形成され、前記中空部と前記中実部との境界面には前記中空部内の前記消弧性ガスを排気するための排気穴が開口されている。
【0029】
このような構成に加えて、実施形態のガス遮断器は、操作ロッドにおいて、中実部の外径寸法は中空部の内径より小さくなるように設けられ、操作ロッドの排気穴は、操作ロッドの軸方向に開口されている。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】第1の実施形態であるガス遮断器を模式的に示した断面図。
【図2】第2の実施形態であるガス遮断器を模式的に示した断面図。
【図3】第3の実施形態であるガス遮断器を模式的に示した断面図。
【図4】第4の実施形態であるガス遮断器を模式的に示した断面図。
【図5】第5の実施形態であるガス遮断器を模式的に示した断面図。
【図6】従来のガス遮断器を模式的に示した断面図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、実施形態であるガス遮断器について、図1〜図5を参照して具体的に説明する。なお、下記の実施形態において、図6で説明したガス遮断器と同一の構成に関しては同一符号を付して詳細な説明は省略する。また、図1〜図5において、中心線の右側は遮断過程の途中の状態、中心線の左側は遮断状態を示している。なお、下記の実施形態では消弧性ガスとして、SFガスよりも地球温暖化係数の小さいガス、具体的には空気、窒素、二酸化炭素などを、単体あるいは混合ガスとして使用してもよい。
【0032】
(第1の実施形態)
第1の実施形態に係るガス遮断器を図1を参照しつつ、詳細に説明する。第1の実施形態は、図6のガス遮断器と同様に操作ロッド71に排気穴11を有している。この排気穴11の開口方向は、操作ロッド7の軸方向と平行な方向となっており、中空部71aが形成する流路、及びピストン支え12及び中実部71bとが形成する流路とにおいて直交しないようになっている。
【0033】
すなわち、図1に示すように、操作ロッド71には、固定側接点部B側の中空部71aと、操作機構16側の中実部71bとが連続して形成されている。中空部71aおよび中実部71bは、異なる外径を有しており、操作ロッド71は、径の異なる円柱状部材をつなぎ合わせた部材からなる。
【0034】
このとき、中実部71bの外径寸法は中空部71aの内径寸法より小さくなるように設けられており、中空部71の底面のうち外周部分が露出している。すなわち、中空部71aと中実部71bとの境界面71eは、操作ロッド7の中心軸に対して垂直な平面形状となっている。排気穴11は、この中空部71aと中実部71bとの境界面71eに形成されている。つまり、排気穴11は、操作ロッド7の軸方向と平行な方向に開口されている。
【0035】
このガス遮断器において、アーク放電8によって発生した高温ガスは、パッファ室9内部に流入するとともに、可動アーク接触子3の内部を通って操作ロッド71の中空部71a内部にも流入する。
【0036】
中空部71a内部に流入した高温ガスは、中空部71aを通過した後、排気穴11を抜けてピストン支え12の内部に入る。ここで、排気穴11を通過する高温ガスの排気流路は、操作ロッド71の径方向に曲がる流路ではなく、操作ロッド71の軸方向に沿った直線流路となっている。
【0037】
したがって、高温ガスが操作ロッド71の径方向に曲がって流れる場合と比べて、排気穴11通過時の流路抵抗は、大幅に低減する。その結果、遮断動作時において高温ガスは中空部7a内部に滞留することがなく、ピストン支え12内部へとスムーズに排出される。
【0038】
このようなガス遮断器によれば、大電流遮断時に可動側接点部Aの内部から円滑に高温ガスを排気して、大電流遮断時のパッファ室9内のガス圧上昇を回避することができ、パッファピストン10に作用する駆動反力の抑止が可能である。したがって、操作機構16の駆動力が小さくても、大電流領域において優れた遮断性能を獲得することができる。
【0039】
しかも、第1の実施形態においては、高温ガスが操作ロッド71の中空部7a内部に滞留することがないので、中空部7a内面および排気穴11周辺に溶損が生じる心配がない。したがって、溶損部分からの金属蒸気によって絶縁性能が低下する心配がない。
【0040】
ところで、パッファピストン10に作用する駆動反力の低減化を図るに当たって、パッファピストン10を小径化することが考えられる。しかし、パッファピストン10を小径化した場合、ピストン支え12も小径化することになるので、ピストン支え12内部の体積は小さくなり、排気穴11を通過した後の高温ガスの排気断面積を確保することが困難となる。
【0041】
これに対し、第1の実施形態では、操作ロッド71の中実部71bを小径化したことで排気穴11の断面積を増加させており、従来よりも大きい排気流路断面積を容易に確保することが可能である。つまり、第1の実施形態においては、径の異なる中空部71aと中実部71bとの境界面71eに、操作ロッド7の軸方向と平行な排気穴11を開口するといった極めて簡単な構成によって、排気流路断面積の増大が可能であり、パッファピストン10に作用する駆動反力の低減化を確実に実現させることができる。
【0042】
さらに、第1の実施形態においては、中実部71bが小径化されるため、操作ロッド71の軽量化を進めることができ、可動側接点部Aの総重量を低減化することができる。
【0043】
これにより、操作機構16の駆動力をさらに小さくしても、大きな電流遮断性能を満足することができる。したがって、操作機構16の駆動力を低減して機器のコンパクト化に寄与することができ、且つ遮断性能の向上を図ることが可能である。このため、SFガスの代替ガスとしてSFガスよりも地球温暖化係数の小さいガスを使用した場合にも好適である。
【0044】
(第2の実施形態)
次に、図2を参照して、第2の実施形態に係るガス遮断器について説明する。第2の実施形態に係るガス遮断器は、中空部71aと中実部71bとの境界面71eの形状が異なっている。
【0045】
すなわち、図2に示すように、操作ロッド71は、相対的に大径の中空部71aの周縁と、相対的に小径の中実部71bの周縁が円錐状境界面7fによって繋がれている。円錐状境界面7fは、操作ロッド71の軸を中心に中空部71aの周縁から中実部71bの周縁へ向かって連続的に尖る円錐形状を有する。排気穴11は、この円錐状境界面7fに形成されている。このように、排気穴11は、操作ロッド7の軸方向に開口しているが、軸方向と開口方向とは完全に平行ではなく、軸方向と開口方向とのなす角が鈍角をなしている。
【0046】
このガス遮断器では、操作ロッド71に円錐状境界面7fを具備したことで、第1の実施形態の持つ作用効果に加えて、以下のような作用効果を得ることができる。すなわち、第2の実施形態に係るガス遮断器において、円錐状境界面7fの排気穴11を通過する高温ガスは、操作ロッド71の軸方向に流れるだけでなく、操作ロッド71の径方向にも広がることができる。したがって、第2の実施形態によれば、操作ロッド71の中空部71aから、一層スムーズに高温ガスを排気することができる。
【0047】
(第3の実施形態)
続いて、図3を参照して、第3の実施形態に係るガス遮断器ついて説明する。第3の実施形態の基本構成は前記第2の実施形態と同様である。
【0048】
第3の実施形態に係るガス遮断器は、ピストン支え12においては、細径部12aと太径部12bを有する。細径部12aは、固定側接点部B寄り、太径部12bは、操作機構16寄りに形成される。細径部12aは、太径部12bよりも内径寸法が小さい。
【0049】
また、このガス遮断器は、操作ロッド71の中実部71bの外周面から膨出したフローガイド13を有する。フローガイド13は、操作ロッド71と一体的に駆動する。このフローガイド13は、ガス流路において円錐状境界面7fの直下に設けられており、遮断状態においてピストン支え12の細径部12aの内周面と当接する位置に設けられている。
【0050】
このフローガイド13は、固定側接点部B側に向かって尖る円錐形状を有する。フローガイド13の最大外径寸法は、パッファピストン10の内径寸法と、ピストン支え12の細径部12aの内径寸法と一致する。
【0051】
このようなガス遮断器では、フローガイド13の最大外径寸法がパッファピストン10の内径寸法およびピストン支え12の細径部12aの内径寸法と一致しているので、遮断動作初期の段階においては、フローガイド13がピストン支え12との隙間を塞いだ状態にある。このため、中空部7a内部とピストン支え12内部は連通することがなく、操作ロッド71の排気穴11からピストン支え12内部への消弧性ガスの排気を制約することになる。
【0052】
一方、操作ロッド71が操作機構16方向の移動が進んだ遮断動作後半には、フローガイド13はピストン支え12の太径部12bに達する。このため、フローガイド13とピストン支え12との間には隙間ができ、操作ロッド71の排気穴11からピストン支え12内部に通じる流路が形成される。
【0053】
第3の実施形態に係るガス遮断器によれば、上記第2の実施形態と同様な効果に加えて、以下のような効果が得られる。すなわち、自力効果の高いパッファ形ガス遮断器では、中小電流を遮断する際、パッファ室9の圧力が上昇しにくい傾向にある。そこで第3の実施形態においては、遮断動作初期の段階で、操作ロッド71の排気穴11からピストン支え12内部への消弧性ガスの排気をフローガイド13が制約し、これにより、アーク放電8によって発生した高温ガスが、排気穴11を抜けてピストン支え12の内部に逃げることを防いでいる。
【0054】
したがって、可動アーク接触子3の内部を通って中空部7a内部に流れる高温ガスの流入量を抑制することができ、アーク放電8による高温ガスは、パッファシリンダ6の貫通穴6bを抜けてパッファ室9内に集中的に流入することができる。これにより、効率的なパッファ室9の蓄圧が可能となり、中小電流の遮断時においても、優れた遮断性能を得ることができる。
【0055】
(第4の実施形態)
第4の実施形態に係るガス遮断器について、図4を参照して説明する。このガス遮断器の基本構成は、第1の実施の形態と同様である。
【0056】
このガス遮断器の操作ロッド72は、固定側接点部B側に位置する接点側ロッド部71cと、操作機構16側に位置する機構側操作ロッド部71dに分離して構成されている。接点側ロッド部71cは、パッファシリンダ6のフランジ部6aに固定されており、機構側ロッド部71dはリンク14を介してパッファシリンダ6の端部に連結されている。
【0057】
接点側ロッド部71cは、アーク放電8に加熱された消弧性ガスを取り込むと共に機構側ロッド部71c側の開口面から消弧性ガスを排気するように中空に形成されている。接点側ロッド部71cと機構側操作ロッド部71dとの間には排気空間17が設けられており、この排気空間17から、接点側ロッド部71c内の高温ガスがピストン支え12内部に排気されるようになっている。
【0058】
このガス遮断器は、以下のような独自の作用効果を発揮することができる。すなわち、第4の実施形態によれば、接点側ロッド部71cと機構側ロッド部71dの分離により、排気空間17の断面積およびピストン支え12内部の容積が増加する。このため、従来よりも大きい排気流路断面積を確保することができる。
【0059】
また、操作ロッド72は、接点側ロッド部71cと機構側ロッド部71dとを、パッファシリンダ6およびリンク14により連結したことで、十分な移動ストロークを確保可能である。しかも、操作ロッド72は、接点側ロッド部71cと機構側ロッド部71dに分割した分だけ、従来の操作ロッド7と比較して、軽量化することができる。これにより、可動側接点部Aの総重量を低減することができ、より小さな操作駆動力にて、電流遮断性能を満足することができる。したがって、操作機構16の駆動力を低減して機器のコンパクト化に寄与することができ、且つ遮断性能の向上を図ることが可能である。
【0060】
(他の実施形態)
なお、本明細書においては、本発明に係る複数の実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであって、発明の範囲を限定することを意図していない。具体的には、図5に示すように、第5の実施形態として、図3に示した第3の実施形態と図4に示した第4の実施形態とを組み合わせたものも包含される。第5の実施形態の操作ロッド73では、接点側ロッド部71cに排気穴11を形成し、操作機構16側の部分にフローガイド13を設ける構成となっている。このような実施形態では、第3の実施形態および第4の実施形態の作用効果を併せ持つことができる。
【0061】
以上のような実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の範囲を逸脱しない範囲で、種々の省略や置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0062】
1 可動通電接触子
2 固定通電接触子
3 可動アーク接触子
4 固定アーク接触子
5 絶縁ノズル
6 パッファシリンダ
7、71、72、73 操作ロッド
7a、71a 中空部
7b、71b 中実部
71c 接点側ロッド部
71d 機構側ロッド部
71e 境界面
7f 円錐状境界面
8 アーク放電
9 パッファ室
10 パッファピストン
11 排気穴
12 ピストン支え
13 フローガイド
14 リンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定アーク接触子及び固定通電接触子を含む固定側接点部と、可動アーク接触子及び可動通電接触子を含む可動側接点部とを同軸上に向かい合わせて配置し、前記固定側接点部と前記可動側接点部とを開離させることで電流を遮断すると共に、電流遮断の過程で前記可動アーク接触子と前記固定アーク接触子との間で発生するアーク放電を消弧性ガスの吹き付けにより消弧するガス遮断器であって、
前記消弧性ガスを蓄圧するパッファ室を内面に形成し、前記可動側接点部とともに駆動するパッファシリンダと、
前記パッファ室の底面を形成するピストンと、
前記ピストンを支える中空のシリンダ支えと、
前記シリンダ支えの内部に挿入され、前記可動アーク接触子を前記固定アーク接触子に対して接離させる操作ロッドと、
前記操作ロッドの前記固定側接点部側に形成され、前記可動アーク接触子の先端から前記アーク放電により加熱された消弧性ガスが流入する中空部と、
前記中空部に連続して形成される前記操作ロッドの中実部と、
前記操作ロッドに形成され、前記中空部と前記中実部の境界に形成される排気穴と、
を備え、
前記操作ロッドは、前記中実部の外径寸法が前記中空部の内径より小さくなるように設けられ、
前記排気穴は、前記操作ロッドの軸方向に開口されること、
を特徴とするガス遮断器。
【請求項2】
前記中空部と前記中実部との境界は、前記中空部の周縁から前記中実部の周縁に向かって尖る円錐状に形成されること、
を特徴とする請求項1記載のガス遮断器。
【請求項3】
前記ピストン支えは、前記固定側接点部側寄りに形成される内径寸法の小さい細径部と、当該細径部に連続して形成される径寸法の大きい太径部とを有し、
前記操作ロッドは、最大外形寸法が前記細径部の内径寸法と一致するように前記中実部の外周から膨出して、前記操作ロッドと一体的に駆動するフローガイドを有すること、
を特徴とする請求項1及び2に記載のガス遮断器。
【請求項4】
前記操作ロッドは、前記中空部と前記中実部とが離間して構成され、
前記中実部と前記パッファシリンダには両者を連結するリンクが取り付けられ、
前記中空部は、前記パッファシリンダに固定されること、
を特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のガス遮断器。
【請求項5】
前記消弧性ガスとして、六弗化硫黄ガスよりも地球温暖化係数の小さいガスを使用したことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のガス遮断器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−164506(P2012−164506A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−23588(P2011−23588)
【出願日】平成23年2月7日(2011.2.7)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】