説明

ガス遮断器

【課題】小型でありながら熱ガス流の冷却を効果的に行えるガス遮断器を提供する。
【解決手段】 消弧性ガス2が充填された円筒形のタンク1内にアーク接触子3a,4aを通常運転時は接触状態に設け、電流遮断時、相対移動の開離で両接触子間に発生させたアークを消弧性ガス2を吹き付けて消弧し、消弧時生じた固定側熱ガス流11aをタンク1内に同軸に設けた排気筒101により固定アーク接触子3aから離れる方向に導き出すよう構成したもので、排気筒101は、内側を内筒流路102aとした内筒102と、該内筒102との間に外筒流路103aを設けて同軸状に覆うカップ形状の外筒103と、内筒102の筒壁に形成した内外を連通する孔106を備えており、固定側熱ガス流11aが、内筒流路102aを固定アーク接触子3aから離れる方向に流れた後、折り返して外筒流路103aを逆の方向に流れて排気筒101から排出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流遮断時、消弧性ガスを吹き付けて発生したアークの消弧を行い、さらに発生した熱ガス流をアーク接触子から離れる方向に導き出すよう構成したガス遮断器に関する。
【背景技術】
【0002】
電力系統において電流開閉を行うガス遮断器には、接地された金属あるいは碍子等の密閉容器内に充填した消弧性ガスを吹き付けて電流遮断時に発生したアークの消弧を行い、電流遮断を行うものがある。そして、消弧性ガスの消弧媒質としてSFを用い、消弧の際にパッファシリンダとピストンとにより圧縮した消弧性ガスのSFガスを接触子間に吹き付け、発生したアークの消弧を行うパッファ形SF遮断器が主流となっている。またガス遮断器には、消弧性ガスとしてSFガス以外、消弧媒質に空気を用いた空気遮断器や、地球温暖化効果の高いSFガスに代わる代替ガスを用いたガス遮断器等がある。
【0003】
こうしたガス遮断器の構造は、例えば図4に遮断動作途中における状態の断面図を示すように、基本的に軸円筒形状の各部品を持って構成されている。図4において、1は接地された金属製密閉容器のタンクであり、このタンク1内には、例えばSFガス等の消弧性ガス2が充填され、さらに固定接触部3と可動接触部4とが軸方向に対向配置されており、固定接触部3には固定アーク接触子3a、可動接触部4には可動アーク接触子4aがそれぞれ設けられている。そして、固定アーク接触子3aと可動アーク接触子4aは、通常運転時は接触導通状態となっており、遮断動作時には開離方向に相対移動して、両アーク接触子3a,4a間の空間にアーク5を発生させるようになっている。
【0004】
また、可動接触部4側には、両アーク接触子3a,4a間のアーク5に対し消弧性ガス2をガス流にして吹き付けるガス流発生手段6が設置されており、ガス流発生手段6は、ピストン7とパッファシリンダ8、ピストン7により区画されてパッファシリンダ8内に形成されたパッファ室9、さらに絶縁ノズル10を備えて構成されている。一方、固定接触部3側には、消弧の際に発生した熱ガス流11の固定側熱ガス流11aが通過可能な金属製の円筒形状の排気筒12が取り付けられている。また可動接触部4側には、熱ガス流11の可動側熱ガス流11bが通過可能な中空ロッド13が、先端に可動アーク接触子4aを備えるようにして設けられている。
【0005】
このように構成されたガス遮断器での遮断過程は、可動接触部4が図4における左方向に後退移動して、可動アーク接触子4aが固定アーク接触子3aから開離し、両アーク接触子3a,4a間にアーク5を発生する。またパッファシリンダ8の左方向移動によりピストン7でパッファ室9を圧縮し、室内圧力が上昇する。これによりパッファ室9内の高圧力の消弧性ガス2が、ガス流発生手段6の先端側に設けられた絶縁ノズル10から高温のアーク5に吹き付けられ、アーク5が消滅して電流遮断がなされる。また、消弧性ガス2は、消弧後、高温低密度の熱ガス流11となって両アーク接触子3a,4a間から離れる方向に、固定側熱ガス流11aは排気筒12内を冷却されながら流れ、排気筒12の終端12a部分からタンク1内に排出され、また可動側熱ガス流11bは中空ロッド13内に導かれて排出され、最終的にタンク1内に放出される。
【0006】
そして、上述したガス遮断器については、設置面積の省スペース化、コストダウンのために小型化する傾向があり、また地球環境負荷低減の観点から材料の低減がなされ、さらに環境保全の面からもコンパクト化が強く要望されている。それに伴い、タンク1や排気筒12のサイズを小型化すること進められている。
【0007】
排気筒12のサイズを小型化した場合、消弧で発生した固定側熱ガス流11aの冷却に要するボリュームが小さくなり、また、固定側熱ガス流11aが排気筒12内で冷却される時間が短くなり、タンク1内に高温状態のまま排出されてしまうことになる。さらに、排気筒12には電流遮断後の電力系統回路の過渡現象により発生する過渡回復電圧が印加されて高電位となるために、小型化により排気筒12の終端12aにおける電界強度がより高くなってしまうことになる。その結果、排気筒12の終端12aとタンク1との間で絶縁破壊の事故(以下、「地絡」と記す)が発生しやすかった。
【0008】
また、図4に示すように密閉容器のタンク1が金属製ではなくて、タンクが碍子等の絶縁物でなるガス遮断器の場合は地絡の問題は生じないが、大電流遮断時に発生する非常に高温の熱ガス流11に曝されて、碍子や付随部品に変質、溶損などの不具合が生じる虞があった。
【0009】
このような課題を解決するものとして、排気筒の内面に熱ガスの流れ方向に交差する溝を4列以上設けた図5に示すもの(例えば、特許文献1参照)がある。このものでは、固定側熱ガス流11aが、排気筒14内部を流れる際に溝15により擾乱を受けて溝15部分に存在する常温ガスと混合され、電界強度が特に高い溝15を設けた排気筒14表面付近で冷却され、それにより絶縁耐力が回復して地絡が防止できるとしている。
【0010】
一方、消弧性ガスについては、地球温暖化の問題の観点から、地球温暖化効果の高いSFガスの代替ガスを消弧媒質にすることが提案されているが、一般に提案されている代替ガスの絶縁耐力は、SFガスよりも低いことが知られている(例えば、非特許文献1参照)。このため、代替ガスを用いる場合には、地絡現象を回避するためにタンクの大型化をまねいてしまうことになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2005−243465号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】電気学会技術報告書第841号「SF6の地球環境負荷とSF6混合・代替ガス絶縁」2001年5月25日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上述の排気筒14内面に固定側熱ガス流11aの流れ方向に交差する溝15を設けたガス遮断器では、冷却効果を高めるには、溝15の容積を大きくして溝内に保持する常温ガスの量を増やすか、溝15の数を増やすなどして擾乱発生の機会を増やす必要があり、いずれも排気筒14を大型化しなければならず、ガス遮断器を小型化することができない。
【0014】
また、ガス遮断器は電力系統故障により事故電流が発生した場合、電流を一旦遮断して数百msの後に再び投入動作を行うことがある。投入後に系統故障が除去されていなかった場合、再度事故電流遮断(以下、「高速再閉路遮断」と記す)を行うが、上述のガス遮断器で高速再閉路遮断を実施した場合、1度目の電流遮断で固定側熱ガス流11aと常温ガスの混合が行われ高温状態となっている溝15部分の存在ガスが、2度目の電流遮断までの短時間で常温に回復する可能性が極めて低く、効果的な固定側熱ガス流11aの冷却を行えないことになる。
【0015】
こうした状況に鑑みて本発明はなされたもので、その目的とするところは、小型でありながら熱ガス流の冷却を効果的に行うことが可能で、高速再閉路遮断を実施した場合でも安定して熱ガス流の冷却を行える信頼性の向上したガス遮断器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この発明は上記目的を達成するものであって、消弧性ガスが充填された円筒形状の密閉容器内の軸方向に一対のアーク接触子を対向して設け、前記アーク接触子を通常運転時は接触状態にし、電流遮断時には相対移動により開離して前記アーク接触子間にアークを発生させると共に、前記アークをガス発生手段により前記消弧性ガスを吹き付けて消弧し、かつ前記消弧性ガスの吹き付けで生じた熱ガス流を前記密閉容器内に同軸に設けた金属製の排気筒により前記アーク接触子から離れる方向に導き出すよう構成したガス遮断器において、前記排気筒は、内側を内筒流路とした円筒形状の内筒と、該内筒を間に外筒流路を設けて覆う同軸のカップ形状の外筒とを備えると共に、前記内筒の筒壁に前記内筒流路と前記外筒流路とを連通する孔が形成されていて、前記熱ガス流が、前記内筒流路を前記アーク接触子から離れる方向に流れて前記内筒の先端部分で折り返した後、前記外筒流路を前記内筒流路とは逆の方向に流れて前記排気筒の終端部分から排出されることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、小型でありながら熱ガス流の冷却を効果的に行え、また高速再閉路遮断を実施した場合においても安定して熱ガス流の冷却を行うことができる信頼性の向上したガス遮断器を実現できる等の効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施形態における排気筒の要部を示す断面図である。
【図2】本発明の第2の実施形態における排気筒の要部を示す断面図である。
【図3】本発明の第2の実施形態における内筒を、排気筒の一部を断面にして示す正面図である。
【図4】従来の一般的なガス遮断器の例を示す断面図である。
【図5】従来のガス遮断器の他の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。なお、以下の各実施形態は、排気筒の構成のみが図4に示す一般的なガス遮断器と主として異なるため、従来と同一部分には同一符号を付して説明を省略し、従来と異なる本発明の実施の形態の構成について説明する。
【0020】
(第1の実施形態)
先ず本発明の第1の実施形態を、遮断途中における状態を示す図1により説明する。
【0021】
図1に示すように、第1の実施形態のガス遮断器における固定接触部100の排気筒101は、例えばSFガス等の消弧性ガス2が充填され、接地された円筒形状の金属製密閉容器のタンク1内に同軸に設けられた金属製のもので、内側を内筒流路102aとした円筒形状の内筒102と、内筒102との間の隙間を外筒流路103aとして内筒102を覆う同軸のカップ形状の外筒103とで構成されている。これにより、カップ形状の外筒103の内底面103bと、この内底面103bに対向する円形状の内筒102の先端102bとの間に折り返し部104が形成され、内筒流路102aから折り返し部104に形成された折り返し部流路104a、外筒流路103aへと続き、カップ形状の外筒103の縁部分を終端103cとする連続した流路105が形成される。
【0022】
そして、内筒102の筒壁には、内筒流路102aと外筒流路103aとを連通する同開口径の孔106が複数形成されている。複数形成された孔106は、内筒102の筒中心線Oaに対し直交する断面における筒壁の同一円周上に少なくとも2つ以上が対称配置となるよう、すなわち、同一円周上に孔間隔が均等になるようにして少なくとも2つ以上が配置されるように形成されている。なお、孔106の形成は、効率的な冷却が可能となるよう分布を持たせ、例えば筒壁に格子状配置に設けたり、千鳥状配置となるように設けたりするようにしてもよく、また開口径の異なる孔を分布させるように設けてもよい。
【0023】
また、複数個の孔106の総開口面積Sは、内筒流路102aの流路断面積S1の5%以上、30%以下となっている。さらに、内筒流路102aの流路断面積S1については、折り返し部流路104aの流路断面積S2より小さく、またさらに、折り返し部流路104aの流路断面積S2は、流路断面形状が円環状の外筒流路103aの流路断面積S3より小さくなっている。すなわち、形成された孔106の総開口面積Sと、内筒流路102aの流路断面積S1、折返し部流路104aの流路断面積S2、外筒流路103aの流路断面積S3の関係式は、
(0.05)S1<S<(0.3)S1 かつ S<S1<S2<S3
となっている。
【0024】
そして、上述の構成を有する第1の実施形態のガス遮断器の遮断過程は、図4の一般的なガス遮断器を参照して説明すると、可動接触部4が図4の左方向に後退移動して、可動アーク接触子4aが固定接触部100の固定アーク接触子3aから開離し、両アーク接触子3a,4a間にアーク5を発生する。発生したアーク5に対し高圧力の消弧性ガス2が絶縁ノズル10を介してアーク5に吹き付けられ、アーク5が消滅して電流遮断がなされる。さらに、吹き付けにより生じた熱ガス流11のうちの固定側熱ガス流11aは、高速で排気筒101の内筒102内を流れる。
【0025】
このとき、固定側熱ガス流11aは極めて高速の流れとなっているため、内筒102の内部に存在する常温ガス107と容易に混合せず、固定側熱ガス流11aが常温ガス107を前方に押し出すように流れる。これにより、固定側熱ガス流11aと常温ガス107とはガス境界面108を介して明確に領域が区分けされる。さらに、常温ガス107が内筒102の先端102bで外側の外筒流路103aへと折り返した状態では、内筒102内部を流れる固定側熱ガス流11aと常温ガス107とは、内筒102の筒壁内外面に沿う対向流となる。
【0026】
そして、内筒102の筒壁に複数個の孔106が形成されているので、孔106を通じて対向流となっている固定側熱ガス流11aと常温ガス107との間で活発な熱交換が起こる。この活発な熱交換によって高温の固定側熱ガス流11aの熱が常温ガス107へと移動し、固定側熱ガス流11aは効果的に冷却される。こうして冷却されながら固定側熱ガス流11aは、内筒流路102aから折り返し部流路104aへ、さらに外筒流路103aへと流路105を流れ、外筒103縁部分の終端103cからタンク1内へと流れて排気されることになる。
【0027】
このように内筒102に形成した複数個の孔106を介し、排気筒101内全ての常温ガス107で固定側熱ガス流11aを効果的に全体を均一に冷却することができることになり、また流路105の全長を折り返して流れるようにしていることから長くでき、冷却に費やされる時間も長くなって、固定側熱ガス流11aとなっている消弧性ガス2の絶縁耐力を十分に回復させることができる。その結果、ガス遮断器を小型化した場合でも、排気筒101の終端103cとタンク1との間での地絡発生を防止することができる。
【0028】
さらに、高速再閉路遮断を実施した場合においても、排気筒101内全ての常温ガス107で固定側熱ガス流11aを安定して冷却することになるため、2回目の電流遮断となるも、冷却作用の低下を極僅かに抑えることができることになる。
【0029】
また、排気筒101内部における固定側熱ガス流11aの流路105の断面積は、流れ方向に段階的に大きくなる構成となっているので、固定側熱ガス流11aは、常温ガス107と混合しながら途中で閉塞せずに流路105を円滑に流れ、タンク1へと排気されることになる。このため、アーク5の発生箇所から固定側熱ガス流11aは、流れを妨げられることなく流れて排気されることになり、消弧が速やかに行われ、アーク遮断性能の低下を招くことがない。さらに、内筒102からタンク1に至るまで流路105が狭まることなく連続しているため、外筒流路103aを常温ガス107が勢いを失うことはなく、内筒流路102aを流れる固定側熱ガス流11aと激しく混合されることになる。
【0030】
またさらに、内筒102に形成された孔106の総開口面積Sは、内筒流路102aの流路断面積S1の5%以上としているため、内筒102内を流れる固定側熱ガス流11aと、内筒102の外筒壁に沿った外筒流路103aを流れる常温ガス107との接触面積は必要十分に確保でき、孔106を介しての固定側熱ガス流11aと常温ガス107との熱交換は活発に行われることになる。
【0031】
また、孔106の総開口面積Sを、内筒流路102aの流路断面積S1の30%以下とすることで、孔106を通じて内筒102内を流れる固定側熱ガス流11aの大部分が、折返し部流路104aを流れることなく外筒流路103aへ短絡して流れ、タンク1へと排出されてしまうのが最低限に抑えられ、排気筒101内で固定側熱ガス流11aを十分に冷却することができる。
【0032】
以上のように、本実施形態のガス遮断器は、小型でありながら熱ガス11流の冷却を十分に行うことができ、また高速再閉路遮断を実施した場合においても、熱ガス流11の冷却を効果的に行うことができる高い信頼性を有したものとなっている。
【0033】
(第2の実施形態)
次に本発明の第2の実施形態を図2及び図3により説明する。
【0034】
図2に遮断途中における状態を示すように、第2の実施形態のガス遮断器における固定接触部110の排気筒111は、第1の実施形態と同様に、消弧性ガス2が充填され、接地された円筒形状の金属製密閉容器のタンク1内に同軸に設けられた金属製のもので、内側を内筒流路102aとした円筒形状の内筒112と、内筒112との間の隙間を外筒流路103aとして内筒112を覆う同軸のカップ形状の外筒113とで構成されている。そして、カップ形状の外筒113の内底面113aの中央部に、略円錐形状のフローガイド113bが内筒流路102a内方向に向けて突出するように設けられており、内底面113aは、径方向断面がフローガイド113bからカップ形状の内側壁面113cにかけて、滑らかな連続した曲線を描くものとなっている。
【0035】
これにより排気筒111内には、カップ形状の外筒113の内底面113aと、この内底面113aに対向する円形状の内筒112の先端102bとの間に折り返し部114が形成され、内筒流路102aから折り返し部114に形成された折り返し部流路114a、外筒流路103aへと続き、カップ形状の外筒113の縁部分を終端103cとする連続した流路115が形成される。
【0036】
また、内筒112の筒壁には、内筒流路102aと外筒流路103aとを連通する同開口径の孔116が複数形成されている。複数形成された孔116は、内筒112内の内筒流路102aを筒中心線Oa方向に流れる固定側熱ガス流11aの流れ方向に対して90°以下の鋭角となる角度θを持つように、すなわち、流れ方向に対し漸次孔中心線Obが内筒112の筒中心線Oaから90°以下の鋭角の角度θ方向に遠ざかるように形成されている。さらに、複数の孔116は、内筒112の筒中心線Oaに対し直交する断面における筒壁の同一円周上に少なくとも2つ以上が対称配置となるように形成されていると共に、図3に示すように、筒壁に千鳥配置となるように形成されている。
【0037】
そして、第1の実施形態と同様に、複数個の孔116の総開口面積Sは、内筒流路102aの流路断面積S1の5%以上、30%以下となっている。さらに、内筒流路102aの流路断面積S1については、折り返し部流路114aの流路断面積S2より小さく、またさらに、折り返し部流路114aの流路断面積S2は、流路断面形状が円環状の外筒流路103aの流路断面積S3より小さくなっている。すなわち、形成された孔116の総開口面積Sと、各流路102a,114a,103aの各流路断面積S1,S2,S3との関係式は、第1の実施形態と同じく、
(0.05)S1<S<(0.3)S1 かつ S<S1<S2<S3
となっている。
【0038】
また、内筒112を覆う外筒113には、固定側熱ガス流11aの折り返し部流路114aや外筒流路103aがカップ形状内側に形成されており、カップ形状の底部外側部分には、外底面113dの中央部に、固定アーク接触子3aに電流供給を行う高電圧導体117の一端が接続されている。なお、高電圧導体117は、その中間部が絶縁スペーサ118によってタンク1の内壁に絶縁支持されている。また図示しないが高電圧導体117の電流を計測する変流器等の計測部を底部外側部分に設けるようにしてもよい。
【0039】
そして、上述の構成を有する第2の実施形態のガス遮断器の遮断過程は、第1の実施形態と同様に、可動接触部4の後退移動で可動アーク接触子4aが固定接触部100の固定アーク接触子3aから開離し、両アーク接触子3a,4a間にアーク5を発生する。発生したアーク5に対し高圧力の消弧性ガス2が絶縁ノズル10を介してアーク5に吹き付けられ、アーク5が消滅して電流遮断がなされる。さらに、吹き付けにより生じた熱ガス流11のうちの固定側熱ガス流11aは、高速で排気筒111の内筒112内を流れる。
【0040】
極めて高速の固定側熱ガス流11aの流れによって、内筒112内の常温ガス107と固定側熱ガス流11aとの間にガス境界面108が形成され、こうした状態で、固定側熱ガス流11aは、内筒流路102aから折り返し部流路114aで折り返して外筒流路103aに流れ、内筒112の筒壁を介しての常温ガス107との対向流となる。対向流となった固定側熱ガス流11aと常温ガス107との間では、内筒112筒壁の複数個の孔116を介して熱交換が起こる。
【0041】
このとき、孔116が固定側熱ガス流11aと常温ガス107の流れ方向に対して鋭角に形成されているので、固定側熱ガス流11aと常温ガス107は、孔116内に流れ込み易く、固定側熱ガス流11aの外筒流路103aに向かおうとする流れと、常温ガス107の内筒流路102aに向かおうとする流れが、孔116内で衝突する状態になる。この孔116内での衝突により活発な熱交換が行われ、固定側熱ガス流11aが常温ガス107により効果的に冷却される。
【0042】
そして、固定側熱ガス流11aは、冷却されながら内筒流路102aから折り返し部流路114aへ、さらに外筒流路103aへと流路115を流れ、外筒113縁部分の終端103cからタンク1内へと流れて排気される。なお、常温ガス107と固定側熱ガス流11aが流路115を流れる際、内底面113aの中央に突出するフローガイド113bを設けたことにより、内底面113aを半径方向に円滑に流れて折り返し、内筒流路102aから外筒流路103aへと停滞したり減速したりすることなく流れる。
【0043】
このように内筒112に形成した複数個の孔116を介し、第1の実施形態と同様に、排気筒111内全ての常温ガス107で固定側熱ガス流11aを効果的に冷却することができる。また、一般的に準平等電界環境下においては、ガス絶縁上の最弱点部である最も高温度のガス部分によって絶縁耐力は決定付けられ、固定側熱ガス流11aの冷却に偏りがあるとガス遮断器の絶縁耐力は向上しないことになるが、内筒112には複数個の孔116が対称的に満遍なく形成されているため、固定側熱ガス流11aの冷却が一部分のみとなり、冷却不十分な部分が生じてしまうこともなく、固定側熱ガス流11a全体を均一に冷却することができ、ガス遮断器の絶縁耐力を向上させることができる。
【0044】
さらに、流路115が折り返して流す構成であるから、その流路長を長いものとすることができ、固定側熱ガス流11aが流れる時間が長くなり、冷却に費やされる時間も長くなって、固定側熱ガス流11aとなっている消弧性ガス2の絶縁耐力を十分に回復させることができる。その結果、ガス遮断器を小型化した場合でも、排気筒111の終端103cとタンク1との間での地絡発生を防止することができる。
【0045】
またさらに、ガス遮断器は、上述のようにタンク1内に設けた排気筒111の外筒113の筒軸方向外側に、中間部が絶縁スペーサ118によってタンク1の内壁に絶縁支持されるようにして高電圧導体117等を配置することができることにより、ガス遮断器をより小型化したコンパクトなものとすることができる。
【0046】
すなわち、ガス遮断器は、可動接触部4、ガス流発生手段6、固定接触部110や排気筒111等を備え、アークを消弧させ生じた熱ガス流11を冷却する消弧室と呼ばれる部分以外にも、消弧室に外部から電流(固定アーク接触子3aに供給する電流)を導くための高電圧導体117等の金属導体や、この金属導体を絶縁支持するための絶縁スペーサ118等の固体絶縁物、さらには金属導体の電流を計測する不図示の変流器など様々なコンポーネントから構成されている。そのため、図4に例示した従来の一般的なガス遮断器の排気筒12のように単純な直円筒形のものでは、排気筒12の熱ガス流11を冷却して排気する筒軸方向に高温に弱い固体絶縁物や変流器などを配置せざるを得ない場合、広いデッドスペースを設けるべく、タンク1を大きくしなければならなくなる。しかし、本実施形態のように構成することで、その必要がなくなり、絶縁上などの必要最低限の距離を設けて配置すればよいことになる。
【0047】
以上のように、本実施形態のガス遮断器は、第1の実施形態と同様に、小型でありながら熱ガス流11の冷却を十分に行うことができ、また高速再閉路遮断を実施した場合においても、熱ガス流11の冷却を効果的に行うことができる信頼性が向上したものとなっている。
【0048】
なお、上記の各実施形態では、消弧性ガス2に、例えばSFガス等を用いるとしているが、SFガスよりも地球温暖化係数(GWP:Global Warming Potential)が小さいガス、例えば窒素や二酸化炭素、空気などを用いたり、天然に存在するガスのほうが人工ガスより環境の側面から考えると望ましいが、SFガスよりも地球温暖化係数が小さく比較的絶縁性能に優れた人工ガス、例えばCF4等を用いたりするようにしてもよい。
【0049】
また、上記の各実施形態の流路105,115は、各流路断面形状が流れ方向に不連続に広がって、各流路断面積S1,S2,S3が段階的に大きくなる構成になっているが、各流路断面形状が流れ方向に沿って滑らかに、連続して広がり、各流路断面積が連続的に大きくなるように構成してもよく、さらにまた、上記の第1の実施形態において、タンク1内の外筒103の底部外側部分に、第2の実施形態と同様に、絶縁スペーサ118で絶縁支持するようにして高電圧導体117を設けたり、変流器等の計測部を設けたりするようにしてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1…タンク、2…消弧性ガス、3a…固定アーク接触子、4…可動接触部、4a…可動アーク接触子、5…アーク、10…絶縁ノズル、11…熱ガス流、11a…固定側熱ガス流、100,110…固定接触部、101,111…排気筒、102,112…内筒、102a…内筒流路、102b…先端、103,113…外筒、103a…外筒流路、103b,113a…内底面、103c…終端、104,114…折り返し部、104a,114a…折り返し部流路、105,115…流路、106,116…孔、107…常温ガス、108…ガス境界面、113b…フローガイド、113c…内側壁面、113d…外底面、117…高電圧導体、118…絶縁スペーサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
消弧性ガスが充填された円筒形状の密閉容器内の軸方向に一対のアーク接触子を対向して設け、前記アーク接触子を通常運転時は接触状態にし、電流遮断時には相対移動により開離して前記アーク接触子間にアークを発生させると共に、前記アークをガス発生手段により前記消弧性ガスを吹き付けて消弧し、かつ前記消弧性ガスの吹き付けで生じた熱ガス流を前記密閉容器内に同軸に設けた金属製の排気筒により前記アーク接触子から離れる方向に導き出すよう構成したガス遮断器において、
前記排気筒は、内側を内筒流路とした円筒形状の内筒と、該内筒との間に外筒流路を設けて同軸状に覆うカップ形状の外筒とを備えると共に、前記内筒の筒壁に前記内筒流路と前記外筒流路とを連通する孔が形成されていて、前記熱ガス流が、前記内筒流路を前記アーク接触子から離れる方向に流れて前記内筒の先端部分で折り返した後、前記外筒流路を前記内筒流路とは逆の方向に流れて前記排気筒の終端部分から排出されることを特徴とするガス遮断器。
【請求項2】
前記孔の総開口面積は、前記内筒流路の流路断面積の5%以上、30%以下であって、かつ前記内筒流路と前記外筒流路の流路断面積が、前記熱ガス流の流れ方向に沿って漸次増大していることを特徴とする請求項1記載のガス遮断器。
【請求項3】
前記孔は、孔方向が前記熱ガス流の前記内筒内部における流れ方向に対して鋭角となっていることを特徴とする請求項1または請求項2記載のガス遮断器。
【請求項4】
前記孔は、筒中心線に直交する断面における前記筒壁の同一円周上に、少なくとも2つ以上が対称配置となるように形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のガス遮断器。
【請求項5】
前記孔は、前記筒壁に千鳥配置となるように形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のガス遮断器。
【請求項6】
前記外筒は、カップ形状の内底面中央部に、前記内筒流路内方向に向けて突出する略円錐形状のフローガイドが設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のガス遮断器。
【請求項7】
前記密閉容器内の前記外筒の底部外側部分に、前記アーク接触子に給電する金属導体、または前記金属導体を絶縁支持する固体絶縁物、または前記金属導体の電流を計測する変流器のいずれかを配置したことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載のガス遮断器。
【請求項8】
前記消弧性ガスをSFガスよりも地球温暖化係数の小さいガスで形成したことを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載のガス遮断器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−69348(P2012−69348A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−212549(P2010−212549)
【出願日】平成22年9月22日(2010.9.22)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】