説明

ガセット袋

【課題】一枚又は複数枚のフィルム材料から簡易且つ安価に製造できると共に、取出し口部の開封後に、取出し部のフィルム材料を折り畳むだけで、取出し開口を閉塞した状態を安定して保持できるガセット袋を提供する。
【解決手段】アルミニウム箔層30と、このアルミニウム箔層30を挟んだ外側樹脂層31及び内側樹脂層32とからなる多層フィルム材料22を用いて形成され、開封した取出し部13を開放したり閉塞して洗剤16の取出しと保管とを繰り返しつつ用いるガセット袋10であって、多層フィルム材料22を構成するアルミニウム箔層30の厚さTAと、外側樹脂層31及び内側樹脂層32の合計の厚さ(To+Ti)との比が、1:2〜1:4となっている。またアルミニウム箔層30の厚さTAが、外側樹脂層31の厚さToよりも大きく、アルミニウム箔層30の厚さTAと、内側樹脂層32の厚さTiとの比が、1:1〜1:3となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガセット袋に関し、特に、アルミニウム箔層と、アルミニウム箔層を挟んだ外側樹脂層及び内側樹脂層とからなる多層フィルム材料を用いて形成されるガセット袋に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、洗剤や食品等の、例えば粉粒状や液体状の収容物を収容する容器として、予め立体形状に形成された相当の剛性を有するガラス製或いはプラスチック製のボトル容器や箱形容器等に代えて、収容物を収容する前は平坦に折り畳まれた形状を有する、合成樹脂製のフィルム材料を用いたガセット袋が多用されている。
【0003】
このようなガセット袋では、合成樹脂製のフィルム材料は、一般に、収容物の変質を防止するためのバリヤ性を備えるアルミニウム箔層を含んでおり、アルミニウム箔層の内側には、フィルム材料の周縁部分をヒートシールにより接合して袋形状とするためのシーラント層が配設されている。またアルミニウム箔層の外側を覆って、アルミニウム箔層を防護したり、印刷や装飾を施すための外側樹脂層が配設されている。
【0004】
一方、ガセット袋は、例えば投入用の開口から収容物を投入して内部に収容物を収容した後に、投入用の開口にヒートシールを施すことによって、収容物を封入した状態で製品化される。使用者は、例えばガセット袋の収容物が及ばない上方領域である取出し部の上端の封止部分を切り取って取出し開口を形成し、形成した取出し開口から収容物を取り出すことになる。また、一度に全ての収容物を取り出さない場合には、開封した取出し開口の開放と閉塞により、収容物の取出しと保管とを繰り返しつつガセット袋が使用されることになる(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−88903号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のガセット袋では、取出し部が開封された後の取出し開口の閉塞は、単に取出し部のフィルム材料を折り返すようにして折り畳むだけで、フィルム材料による折り返し復元力に抗して閉塞状態を容易に保持できるようになっている。すなわち、特許文献1では、ガセット袋の一対の側面折り込み部に塑性変形可能な線状部材が各々配置されており、これらの線状部材の塑性変形性による形状保持機能によって、フィルム材料の折り畳まれた状態を保持し、取出し開口を容易且つ確実に閉塞することができるようになっている。
【0006】
しかしながら、特許文献1のガセット袋では、一対の側面折り込み部に塑性変形可能な線状部材を予め取り付けておくだけの簡易な構成によって、開封した後の取出し開口を容易に閉塞できる一方で、ガセット袋の製造時に、フィルム材料を折り畳んだり周縁部分をシールしたりする袋本体の製造工程の他に、縦方向線状部材をフィルム材料に取り付ける工程を必要とするため、製造工程が増加し、生産スピードに影響し、製造コスト高にも繋がる可能性がある。したがって、より簡易且つ安価に製造でき、しかも特許文献1のガセット袋と同様の閉塞機能を発揮できる新たなガセット袋の開発が望まれている。
【0007】
本発明は、一般のガセット袋と同様の折り込みと融着の製造工程によって、一枚又は複数枚のフィルム材料から簡易且つ安価に製造できると共に、取出し部が開封された後に、取出し部のフィルム材料を折り畳むだけで、取出し開口を閉塞した状態を安定して保持できるガセット袋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、アルミニウム箔層と、該アルミニウム箔層を挟んだ外側樹脂層及び内側樹脂層とからなる多層フィルム材料を用いて形成され、前後一対の正面部とこれらの正面部の内側に折り込み形成された左右一対の側面折り込み部とを備えたガセット袋であって、前記多層フィルム材料は、以下のデッドホールド試験によって測定される、錘を除いてから10秒後の跳ね上がり高さH10が3〜12mm、60秒後の跳ね上がり高さH60が3〜15mmのデッドホールド性を備えるガセット袋を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0009】
〔デッドホールド試験〕
20℃条件下で、幅15mmの横長矩形短冊状に形成した多層フィルム材料の試験片に対して、一端部から20mm離れた位置で第1谷折り線によって折れるようにし、更に該第1谷折り線から25mm離れた位置で第2谷折り線によって折れるようにフィルム材料を湾曲させた状態で、前記第1谷折り線よりも先端側の部分を内側に折り込みつつ前記第1谷折り線及び前記第2谷折り線を介して3重に折り畳まれる領域の全体を覆って、上方から直径80mm、高さ150mm、重さ5kgの鉄製の円柱形状の錘を30秒間試験片の上に載置することにより、該錘に押し付けられて扁平に3重に折り重ねられる部分を形成する。30秒経過後に錘を取り除き、錘を取り除いてから10秒後における第1谷折り線の載置面からの垂直高さを測定すると共に、錘を取り除いてから60秒後における第1谷折り線の載置面からの垂直高さを測定して、各々、10秒後の跳ね上がり高さH10、60秒後の跳ね上がり高さH60とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明のガセット袋によれば、一般のガセット袋と同様の製造工程によって、一枚又は複数枚のフィルム材料から折り込みと融着の工程により簡易且つ安価に製造できると共に、取出し部のフィルム材料を折り畳むだけで、取出し開口を閉塞した状態を安定して保持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1に示す本発明の好ましい一実施形態に係るガセット袋10は、一対の正面部14と、これらの正面部の内側に折り込み形成された左右一対の側面折り込み部(マチ部)15とを備える。また本実施形態のガセット袋10は、収容物として例えば粉末状の洗剤16を収容する袋容器として用いられ、図2(a),(b)に示すように、収容物が収容されていない領域である取出し部13の上端を融着により密閉して製品化されている。使用者は、この密封された製品化状態から、融着により形成された密閉領域より下方の切り取り線20に沿って切り取って上端取出し開口11を形成し、この上端取出し開口11から洗剤16を繰り返し取り出して使用できるようにすると共に、洗剤16を必要量取り出したら、その都度、上端取出し開口11をスムーズ且つ安定した状態で閉塞して、残った洗剤16を保管することを可能にするものである。
【0012】
そして、本実施形態のガセット袋10は、アルミニウム箔層30と、このアルミニウム箔層30を挟んだ外側樹脂層31及び内側樹脂層32とからなる多層フィルム材料22(図3参照)を用いて形成され、開封した取出し部13を開放したり閉塞して洗剤16の取出しと保管とを繰り返しつつ用いる袋容器であって、多層フィルム材料22を構成するアルミニウム箔層の厚さTAと、外側樹脂層及び内側樹脂層の合計の厚さ(To+Ti)との比が、1:2〜1:4となっている。
【0013】
また、本実施形態のガセット袋10では、多層フィルム材料22は、後述するデッドホールド試験によって測定される、錘を除いてから10秒後の跳ね上がり高さH10が3〜12mm、60秒後の跳ね上がり高さH60が3〜15mmのデッドホールド性を備えている。
【0014】
本実施形態によれば、ガセット袋10は、図1及び図2(a),(b)に示すように、予め設計された所定の形状に切断加工された1枚又は複数枚のフィルム材料22に、公知の各種の折り曲げ加工や接合加工を施すことにより形成される。ガセット袋10の袋本体は、矩形形状を有する底部19と、底部19の各辺部から立設する前後一対の正面部14及び左右一対の側面折り込み部15とによって周囲を囲まれて、洗剤16を収容するガセット袋10の本体部分を構成する胴部12と、この胴部12の上方部分に一体として連続配置され、ガセット袋10を閉塞する際に折り返される部分である取出し部13とからなる。またガセット袋10は、投入用の開口から収容物である粉末状の洗剤16を、予め設計された所定量として例えば300〜2500g投入した後に(図2(b)参照)、左右一対の側面折り込み部15をV字状に内側に折り込むようにしながら、投入用の開口を例えばシール接合して密封することにより、投入された洗剤16を内部に封入して(図2(a)参照)洗剤製品として製品化される。使用者は、この洗剤製品の切取り線20より上端側の接合部を切取り後に、洗剤16の未収容部分である取出し部13を例えば2重に折り返した状態で保存する(図1参照)。
【0015】
ここで、ガセット袋10の取出し部13は、図4に示すように、開封後の袋容器10を閉塞するために、例えばガセット袋10の上端部分から下半部分に至る領域における適宜の位置を折り返し部24として折り返した際の、当該折り返し部24及びこれよりも上方に位置する部分である。またガセット袋10の胴部12は、この折り返し部24よりも下方に位置して、洗剤16を収容する本体部分を構成する部分である。すなわち、本実施形態によれば、ガセット袋10を閉塞する際に折り返される部分である折り返し部24の位置は、ガセット袋10に収容された洗剤16の減少等に伴って上下方向に移動してゆくものであり、このような折り返し部24の位置は予め特定されることなく所定の領域内で任意に選択されるものであることから、閉塞時にガセット袋10が実際に折り返される折り返し部24を挟んだ上方部分を取出し部13、下方部分を胴部12として規定するものである。
【0016】
そして、本実施形態では、ガセット袋10を構成する多層フィルム材料22は、図3に示すように、アルミニウム箔層30と、このアルミニウム箔層30を挟んだ外側樹脂層31及び内側樹脂層32とからなる。なお、本実施形態では、多層フィルム材料22は、紙層を含んでおらず、これによって、洗剤16を収容した状態でガセット袋10が落下して例えば床面に衝突した場合でも、破袋しにくい構造となっている。
【0017】
ここで、アルミニウム箔層30の厚さTAは、15〜50μmとすることが好ましく、20〜50μmとすることがさらに好ましい。アルミニウム箔層30の厚さTAが小さすぎると、所望のデッドホールド性を得るために外側樹脂層31を薄くする必要が生じ、外側樹脂層31の印刷適性の低下や耐突き刺し性の不良が発生しやすくなる。またアルミニウム箔層30の厚さTAが小さすぎると、所望のデッドホールド性を得るために内側樹脂層32を薄くする必要が生じ、接着不良を発生しやすくなる。アルミニウム箔層30の厚さTAが大きすぎると、コストアップや貼合シワの発生という不具合が生じることになるが、アルミニウム箔層30の厚さTAを15〜50μmとすることにより、外側樹脂層31および内側樹脂層32との適正な貼合条件が得られることになり、シワの発生の少ない多層フィルム材料22を製造することが可能になる。
【0018】
外側樹脂層31は、単層の合成樹脂であっても、複数層の合成樹脂であっても良いが、外側樹脂層31を薄く形成する観点からは単層が好ましい(PETは12μm、ナイロンは15μm、PPは20μmが限界)。外側樹脂層31を構成する合成樹脂としては、例えばポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン等を用いることができる。印刷適性の観点からはポリエステル(特にPET)が好ましく、突き刺し強度の観点からはナイロン層が好ましい。また、外側樹脂層31は、当該外側樹脂層31の厚さToよりもアルミニウム箔層30の厚さTAが大きくなるように、その厚さToを設定することが好ましい。アルミニウム箔層30の厚さTAが外側樹脂層31の厚さToよりも大きくなっていることにより、優れたデッドホールド性を付与できる。本実施形態では、より具体的には、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、二軸延伸ナイロン(ONy)、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)等が、外側樹脂層31として好ましく用いられ、外側樹脂層31を一定範囲以内とする観点から単一層の合成樹脂で形成されることが好ましい。
【0019】
内側樹脂層32は、シーラント層からなる単層の合成樹脂であっても、シーラント層を最内層に含む複数層の合成樹脂であっても良い。内側樹脂層32を構成する合成樹脂としては、例えばポリエチレン、ポリポロピレン等を用いることができる。また、内側樹脂層32は、アルミニウム箔層30の厚さTAと、当該内側樹脂層32の厚さTiとの比が1:1〜1:3となるように、その厚さTiを設定することが好ましい。アルミニウム箔層30の厚さTAと内側樹脂層32の厚さTiとの比が1:1〜1:3となっていることにより、優れたデッドホールド性を付与できる。本実施形態では、より具体的には、例えば直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)、無延伸ポリプロピレン(CPP)、二軸延伸ナイロン(ONy)等が、内側樹脂層32として好ましく用いられる。シーラント層は20μm以上必要とし、内容物の重量が1.5kg以上では40μm以上、2kg以上では50μm以上とすることで、破袋を防止しつつデッドホールド性を発揮できる。
【0020】
そして、本実施形態では、多層フィルム材料22を構成するアルミニウム箔層30の厚さTAと、外側樹脂層31及び内側樹脂層32の合計の厚さ(To+Ti)との比が、1:2〜1:4となっており、好ましくは1:2〜1:3となっている。アルミニウム箔層30の厚さTAと、外側樹脂層31及び内側樹脂層32の合計の厚さ(To+Ti)との比が、1:2よりも小さいと所望のデッドホールド性を得るために外側樹脂層31や内側樹脂層32を薄くする必要が生じる。外側樹脂層31を薄くすると、外側樹脂層31の印刷適性の低下や耐突き刺し性の不良が発生しやすくなり、内側樹脂層32を薄くすると、接着不良を発生しやすくなる。また1:4よりも大きいと樹脂層の剛性が高くなり、所望のデッドホールド性が得られなくなる。またアルミニウム箔層30の厚さTAと、外側樹脂層31及び内側樹脂層32の合計の厚さ(To+Ti)との比が1:2〜1:3となっていることにより、適度な印刷適性・耐突き刺し性・接着性を備えると共に再封性に優れたガセット袋が得られる。
【0021】
また、本実施形態のガセット袋10では、多層フィルム材料22は、下記のデッドホールド試験によって測定される、錘を除いてから10秒後の跳ね上がり高さH10が3〜12mm、60秒後の跳ね上がり高さH60が3〜15mmのデッドホールド性を備えている。
【0022】
〔デッドホールド試験〕
20℃条件下で、幅15mmの横長矩形短冊状に形成した多層フィルム材料の試験片50に対して、図5(a)に示すように、一端部から20mm離れた位置で第1谷折り線51によって折れるようにし、更に第1谷折り線51から25mm離れた位置で第2谷折り線52によって折れるようにフィルム材料を湾曲させた状態で(図5(a)の破線参照)、第1谷折り線51よりも先端側の部分を内側に折り込みつつ第1谷折り線51及び第2谷折り線52を介して3重に折り畳まれる領域の全体を覆って、上方から直径80mm、高さ150mm、重さ5kgの鉄製の円柱形状の錘54を30秒間試験片50の上に載置することにより、錘54に押し付けられて扁平に3重に折り重ねられる部分を形成する。なお、試験片50は、錘54を載置するのに先立って、第2谷折り線52となる部分よりも他端部側の部分53を、平坦な面に形成した錘54の載置面55に、第2谷折り線52の予定箇所から1mm離してテープ56で留めることによって、試験片50を載置面55から移動しないように固定しておく(図5(b)参照)。錘54を載置してから30秒経過後に錘54を取り除くと、図5(b)に示すように、3重に折り重ねられた部分は、折り畳まれる前の形状に復元しようとして起立し始めるので、錘54を取り除いてから10秒後における第1谷折り線51の載置面55からの垂直高さを測定すると共に、錘54を取り除いてから60秒後における第1谷折り線51の載置面55からの垂直高さを測定して、各々、10秒後の跳ね上がり高さH10、60秒後の跳ね上がり高さH60とする。
【0023】
本実施形態のガセット袋10は、当該ガセット袋10を構成する多層フィルム材料22が、錘54を除いてから10秒後の跳ね上がり高さH10が3〜12mm、60秒後の跳ね上がり高さH60が3〜15mmのデッドホールド試験によるデッドホールド性を備えていることにより、折り曲げによる再封の際に蓋が自然に開かずに密封性が得られる。
【0024】
そして、本実施形態のガセット袋10は、上述のように粉末状の洗剤16を例えば300〜2500g封入した状態で洗剤製品として製品化され、使用者は、取出し部13の上端の封止部分を切り取って上端取出し開口11を形成し、洗剤16を繰り返し取り出して使用することになるが、本実施形態のガセット袋10によれば、自立させた状態で上端取出し開口11を開かせて、開封した取出し部13から洗剤16を容易且つスムーズに取り出すことができると共に、取出し部13を容易且つ確実に閉塞して洗剤16を効果的に保管しつつ、当該洗剤16を繰り返し取り出してゆくことが可能になる。
【0025】
すなわち、本実施形態によれば、ガセット袋10は、多層フィルム材料22を構成するアルミニウム箔層30の厚さTAと、外側樹脂層31及び内側樹脂層32の合計の厚さ(To+Ti)との比が、1:2〜1:4となっており、これによって多層フィルム材料22は、デッドホールド試験によって測定される10秒後の跳ね上がり高さH10が3〜12mm、60秒後の跳ね上がり高さH60が3〜15mmのデッドホールド性を備えている。したがって、従来のガセット袋に用いる多層フィルム材料中のアルミニウム箔層よりも厚く設けられたアルミニウム箔層30による塑性変形後の形状保持機能によって、取出し時における上端取出し開口11を、矩形形状に広く開放した状態に容易に保持することが可能になり、これによって、自立させた状態においても、収容物である洗剤16を容易且つスムーズに取り出すことが可能になる。
【0026】
また、従来のガセット袋に用いる多層フィルム材料中のアルミニウム箔層よりも厚く設けられたアルミニウム箔層30による塑性変形後の形状保持機能によって、取出し部13を折り返してガセット袋10を閉塞する際に、取出し部13の多層フィルム材料22による折り返し復元力に効果的に抵抗して、取出し部13を折り返した状態を安定して保持することが可能になる。これによって、側面折り込み部15を内側に折り込みつつ上端取出し開口11における一対の正面部14の上端を重ね合わて当該上端取出し開口11を閉じながら、取出し部13のシート材料22を折り返し部24に沿って下方に折り返すだけの簡単な操作によって、ガセット袋10の取出し部13を容易且つ確実に閉塞することが可能になる。
【0027】
なお、本実施形態では、図2(a),(b)に示すように、ガセット袋10の前後一対の正面部14と左右一対の側面折り込み部15は、胴部12及び取出し部13の4箇所の各立辺17において、多層フィルム材料22の最内層のシーラント層を立辺17に沿って例えば2〜30mm程度のヘムシール幅で折返し接合することによる折返しシール部であるヘムシール23を介して、矩形断面を有する中空筒状に接合一体化されている。これによって、ガセット袋10の上端取出し開口11は、これを開封した際に、底部19と略同様の大きさの矩形形状を有することになると共に、前後一対の正面部14と左右一対の側面折り込み部15とが4箇所の立辺17において各々ヘムシール23によって接合されていることにより、取出し時におけるガセット袋10の形状保持性及び上端取出し開口11の開口保持性をさらに効果的に発揮することが可能になる。またガセット袋10を形成するための多層フィルム材料22がアルミニウム箔層30を含んでいることにより、袋にシワ等が発生し難くなってガセット袋10の外観を良好に保持することが可能になる。
【0028】
また、取出し部13を折り返すことによるガセット袋10の閉塞は、図4に示すように、折り返し部24に沿った一回の折り返しによって行うことも可能であるが、複数の折り返し部24に沿って二回以上折り返すことにより、さらに確実なガセット袋10の閉塞を行うことが可能になる(図1参照)。正面部14の表面に例えば折り返し案内線を予め描いておくことにより、当該折り返し案内線に沿って取出し部13を折り返させるようにすることもできる。さらに、収容した洗剤16の減少に伴って折り返し部24を適宜下方にずらしつつ、取出し部13を折り返すようにすることもできる。さらにまた、洗剤16が少なくなった場合には、取出し部13の上部を洗剤16を取り出し易い適切な位置で切断することにより、洗剤16の量に応じた取り扱い易い高さとなるように、ガセット袋10の高さを適宜修正することもできる。
【0029】
そして、上述の構成を有する本実施形態のガセット袋10によれば、一般のガセット袋と同様の製造工程によって、一枚又は複数枚の多層フィルム材料22から折り込みと融着の工程により簡易且つ安価に製造できると共に、取出し部13のフィルム材料22を折り畳むだけで、取出し開口11を閉塞した状態を安定して保持することがが可能になる。
【0030】
すなわち、本実施形態によれば、取出し部13を開封した後、取出し部13を折り畳んだり伸ばしたりして上端取出し開口11を開閉する際の取出し部13の形状を、多層フィルム材料22に相当の厚さで含まれるアルミニウム箔層30の塑性変形後の形状保持機能によって保持するようになっているので、例えばフィルム材料を折り畳んだ状態に保持するための塑性変形可能な線状部材等の他の部材をガセット袋に取り付ける必要が無く、したがって、一般のガセット袋と同様に、一枚又は複数枚の多層フィルム材料22を折り畳んだり周縁部分をシールしたりするだけの製造工程によって、簡易且つ安価に製造することが可能になる。また、ガセット袋10を形成するための多層フィルム材料22が、アルミニウム箔層30の厚さTAと、外側樹脂層31及び内側樹脂層32の合計の厚さ(To+Ti)との比が1:2〜1:4となるように、アルミニウム箔層30を含んでいるので、多層フィルム材料22は、錘を除いてから10秒後の跳ね上がり高さH10が3〜12mm、60秒後の跳ね上がり高さH60が3〜15mmの優れたデッドホールド性を備えることになる。このような優れたデッドホールド性によって、取出し部13のフィルム材料22を折り畳むだけで、外側樹脂層31及び内側樹脂層32の元の形状に戻ろうとする弾力性に抗して、上端取出し開口11を閉塞した状態を安定して保持することが可能になる。
【0031】
さらに、本実施形態のガセット袋10によれば、多層フィルム材料22が、相当の厚さのアルミニウム箔層30を含んでいるので、折り加工によるガセット袋10の稜線をくっきりと出すことが可能になり、見た目の良好な外観を備えることが可能になる。さらにまた、ガセット袋10を段ボール箱等に梱包する際に、ガセット袋10の洗剤16が収容されていない部分である取出し部13を、胴部12に沿わせるように折ると、折り曲げた部分が立ち上がりにくいので、梱包しやすくなり、梱包作業性が向上することになる。
【0032】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々の変更が可能である。例えば、自立させた状態で、開封した取出し部から収容物を取り出すガセット袋である必要は必ずしも無い。さらに、ガセット袋に収容される収容物は、粉末状の洗剤である必要は必ずしもなく、食品等の、その他の種々の粉粒状や液体状の収容物であっても良い。
【実施例】
【0033】
以下、実施例及び比較例により、本発明のガセット袋を形成するための多層フィルム材料についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0034】
〔実施例1,2、比較例1〜3〕
表1に示す層構成の多層フィルム材料を実施例1,2及び比較例1〜3の多層フィルム材料とした。実施例1,2の多層フィルム材料、比較例1〜3の多層フィルム材料の各々における、アルミニウム箔層の厚さTAと外側樹脂層及び内側樹脂層の合計の厚さ(To+Ti)との比、外側樹脂層の厚さToとアルミニウム箔層の厚さTAとの比、及びアルミニウム箔層の厚さTAと内側樹脂層の合計の厚さTiとの比を表1に示す。実施例1,2の多層フィルム材料、比較例1〜3の多層フィルム材料の各々から、幅15mmの横長矩形短冊状に形成した試験片を切り取り、上述と同様の方法によりデッドホールド試験を行って、錘を取り除いてから10秒後の跳ね上がり高さH10、及び60秒後の跳ね上がり高さH60を測定すると共に、デッドホールド性を判定した。試験結果を表1に示す。
【0035】
【表1】

【0036】
表1に示す試験結果から、本発明のガセット袋に係る実施例1及び実施例2の多層フィルム材料は、優れたデッドホールド性を備えており、これらの多層フィルム材料を用いてガセット袋を形成することにより、取出し部の開封後、取出し部を折り畳むだけで、取出し開口を閉塞した状態を安定して保持できることが判明する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の好ましい一実施形態に係るガセット袋を示す斜視図である。
【図2】(a)は本発明の好ましい一実施形態に係るガセット袋に収容物を封入した状態を示す斜視図、(b)は上端取出し開口を開いた状態を示す斜視図である。
【図3】ガセット袋を構成する多層フィルム材料の層構成を説明する拡大断面図である。
【図4】取出し部を折り返してガセット袋を閉塞した状態を示す斜視図である。
【図5】(a),(b)は、デッドホールド試験の説明図である。
【符号の説明】
【0038】
10 ガセット袋
11 上端取出し開口
12 胴部
13 取出し部
14 正面部
15 側面折り込み部
16 洗剤(収容物)
19 底部
20 切り取り線
22 多層フィルム材料
24 折り返し部
30 アルミニウム箔層
31 外側樹脂層
32 内側樹脂層
50 多層フィルム材料の試験片
51 第1谷折り線
52 第2谷折り線
53 第2谷折り線よりも他端部側の部分
54 錘
55 載置面
56 テープ
TA アルミニウム箔層の厚さ
To 外側樹脂層の厚さ
Ti 内側樹脂層の厚さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム箔層と、該アルミニウム箔層を挟んだ外側樹脂層及び内側樹脂層とからなる多層フィルム材料を用いて形成され、前後一対の正面部とこれらの正面部の内側に折り込み形成された左右一対の側面折り込み部とを備えたガセット袋であって、
前記多層フィルム材料は、以下のデッドホールド試験によって測定される、錘を除いてから10秒後の跳ね上がり高さH10が3〜12mm、60秒後の跳ね上がり高さH60が3〜15mmのデッドホールド性を備えるガセット袋。
〔デッドホールド試験〕
20℃条件下で、幅15mmの横長矩形短冊状に形成した多層フィルム材料の試験片に対して、一端部から20mm離れた位置で第1谷折り線によって折れるようにし、更に該第1谷折り線から25mm離れた位置で第2谷折り線によって折れるようにフィルム材料を湾曲させた状態で、前記第1谷折り線よりも先端側の部分を内側に折り込みつつ前記第1谷折り線及び前記第2谷折り線を介して3重に折り畳まれる領域の全体を覆って、上方から直径80mm、高さ150mm、重さ5kgの鉄製の円柱形状の錘を30秒間試験片の上に載置することにより、該錘に押し付けられて扁平に3重に折り重ねられる部分を形成する。30秒経過後に錘を取り除き、錘を取り除いてから10秒後における第1谷折り線の載置面からの垂直高さを測定すると共に、錘を取り除いてから60秒後における第1谷折り線の載置面からの垂直高さを測定して、各々、10秒後の跳ね上がり高さH10、60秒後の跳ね上がり高さH60とする。
【請求項2】
前記多層フィルム材料を構成する前記アルミニウム箔層の厚さと、前記外側樹脂層及び前記内側樹脂層の合計の厚さとの比が、1:2〜1:4である請求項1記載のガセット袋。
【請求項3】
前記アルミニウム箔層の厚さが、前記外側樹脂層の厚さよりも大きい請求項1又は2に記載のガセット袋。
【請求項4】
前記アルミニウム箔層の厚さと、前記内側樹脂層の厚さとの比が、1:1〜1:3である請求項1〜3のいずれかに記載のガセット袋。
【請求項5】
前記アルミニウム箔層の厚さが、15〜50μmである請求項1〜4のいずれかに記載のガセット袋。
【請求項6】
前記多層フィルム材料を用いて袋本体が形成され、切断によって形成される取出し開口を備え、該取出し開口を袋本体の折り畳みによって封止して用いる請求項1〜5のいずれかに記載のガセット袋。
【請求項7】
収容物が収容された状態で融着により密封され、開封前の収容物の重量が、300〜2500gである請求項1〜6のいずれかに記載のガセット袋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−1311(P2009−1311A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−164940(P2007−164940)
【出願日】平成19年6月22日(2007.6.22)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】