説明

ガラス、ガラスセラミックス組成物および誘電体

【課題】誘電率が高く、かつ緻密性の高い焼成体を低温焼成で得られるようにする。
【解決手段】モル%表示で、SiO 15〜40%、B 5〜37%、Al 2〜15%、MgO+CaO+SrO 1〜25%、MgO 0〜7%、BaO 5〜25%、ZnO 0〜35%、TiO 3〜15%、ZrO+SnO 0〜10%、SiO+Al 25〜50%、B+ZnO 15〜45%である無鉛無アルカリガラス。質量%で、前記ガラスの粉末30〜70%と、BaとTiを含有しモル比(Ti/Ba)が3.0〜5.7であるBa−Ti化合物の粉末30〜70%とからなるガラスセラミックス組成物。前記ガラスセラミックス組成物を焼成して得られる誘電体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板、アンテナ基板等に好適な誘電体、およびそのような誘電体を低温焼成によって製造するのに好適なガラスセラミックス組成物およびガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
高周波領域で使用されるアンテナ、共振フィルタ等の基板には誘電体が用いられるが、そのような誘電体には誘電率が高いことが求められ従来多くのガラスが誘電体材料として提案されている。
このような誘電率が高い誘電体はたとえば、誘電率が低い誘電体と積層して回路基板として使用される。
【0003】
近年、このような誘電体材料には、低温焼成(たとえば900℃以下で焼成)が可能であること、鉛を含有しないこと、さらに電気絶縁性向上のためにアルカリ金属酸化物含有量が低いこと、が求められており、そのような要求を満たすガラスも提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2004−113276号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者は特許文献1で提案されているガラスの粉末を誘電率が高い誘電体の材料として用い、高誘電率層と低誘電率層が積層され高誘電率層と低誘電率層の間の一部に銀層が形成されているフィルタ用積層誘電体を作製したところ、高誘電率層の銀層と接する部分の誘電率が銀層と接していない部分の誘電率よりも高くなり所望のフィルタ機能が得られなくなることがあった。
このような現象が起こる原因を知るべく種々の調査をしたところ、銀層と接していない高誘電率層の緻密性が低い場合にこのような現象が起こりやすいという知見が得られた。このような場合においては高誘電率層の銀層と接する部分は銀層と接していない部分よりも緻密性が高くなり、そのために前記現象が起こると考えられる。
本発明は、銀層形成材料と接していなくとも焼成して緻密性の高い高誘電率層が得られるガラスセラミックス組成物、そのようなガラスセラミックス組成物の成分であるガラス粉末に好適なガラス、およびそのようなガラスセラミックス組成物を焼成して得られる誘電体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下記酸化物基準のモル%表示で、SiO 15〜40%、B 5〜37%、Al 2〜15%、MgO+CaO+SrO 1〜25%、MgO 0〜7%、BaO 5〜25%、ZnO 0〜35%、TiO 3〜15%、ZrO+SnO 0〜10%、から本質的になり、SiO+Alが25〜50モル%、B+ZnOが15〜45モル%であり、鉛およびアルカリ金属のいずれも含有しないガラスを提供する。
また、質量百分率表示で、前記ガラスの粉末30〜70%と、BaとTiを含有しモル比(Ti/Ba)が3.0〜5.7であるBa−Ti化合物の粉末(以下、この粉末をBT粉末という。)30〜70%とから本質的になるガラスセラミックス組成物を提供する。
また、前記ガラスセラミックス組成物を焼成して得られる誘電体を提供する。
【0007】
本発明者は、特許文献1で提案されている高誘電率誘電体製造用ガラスセラミックス組成物のガラス粉末のTiO含有量が3モル%未満では緻密性が低いが、同含有量が3モル%以上では緻密性が高くなることを見出し、本発明に至った。
【発明の効果】
【0008】
ガラスセラミックス組成物を銀層形成材料と接することがないようにして焼成しても緻密性の高い高誘電率誘電体が得られる。その結果、ガラスセラミックス組成物を銀層形成材料と接するようにして焼成しても、接することがないようにして焼成しても同程度に緻密性の高い高誘電率誘電体が得られ、高誘電率誘電体の銀層と接している部分の誘電率が銀層と接していない部分の誘電率よりも高くなる問題が解決される可能性が高くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明のガラスセラミックス組成物は、1GHz〜25GHzのいずれかの周波数における比誘電率(以下、この比誘電率をεという。)が16〜30である誘電体の製造に好適である。典型的にはεは室温たとえば20℃で測定され、またその測定周波数は5〜7GHzの範囲のものとされる。
【0010】
本発明のガラスセラミックス組成物は900℃以下の温度で焼成しても緻密な焼成体が得られるものであることが好ましい。このようなものであると、銀ペースト等の低温焼成電極用材料や低温同時焼成セラミックス(LTCC)基板用材料と900℃以下の温度で同時焼成できる。
焼成は通常、800〜900℃に5〜120分間保持して行われる。より典型的な焼成温度は850〜880℃である。
なお、銀ペースト等と同時に焼成して銀または銀含有導体を焼成体の表面または内部に形成する場合、焼成温度は880℃以下であることが好ましい。880℃超では焼成時に銀または銀含有導体が軟化し配線パターンの形状が保持できなくなるおそれがある。より好ましくは870℃以下である。
【0011】
本発明のガラスセラミックス組成物を焼成して得られる焼成体(誘電体)のεは典型的には16〜30であり、そのような焼成体は本発明の誘電体である。
本発明のガラスセラミックス組成物を焼成して得られる焼成体および本発明の誘電体の1GHz〜25GHzのいずれかの周波数における誘電正接(以下、この誘電正接をtanδという。)は典型的には0.0040以下であり、tanδの逆数をQ、共振周波数をfGHzとしてQfは1500以上であることが好ましい。Qfは、1500未満では電子回路基板として使用することが困難になり、より好ましくは2000以上である。なお、fは典型的には5〜7、たとえば6である。
また、当該焼成体および当該誘電体の50MHzにおける比誘電率の−25℃〜85℃における平均温度変化率(以下、この平均温度変化率をτという。)は典型的には−100〜+30ppm/℃である。
【0012】
電子機器の回路やアンテナなどの基板の構成要素として用いられる本発明の誘電体は通常、本発明のガラスセラミックス組成物をグリーンシート化したものを用いて製造される。すなわち、本発明のガラスセラミックス組成物に、ブチラール樹脂、アクリル樹脂等の樹脂と、トルエン、キシレン、ブタノール、酢酸ブチル等の溶剤と、さらに必要に応じてフタル酸ジブチル、トリエチレングリコール等の可塑剤や分散剤を添加して混合し、スラリーとする。次に、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のフィルム上にドクターブレード法等の方法で前記スラリーを塗布してシート上に成形する。これを乾燥して、溶剤を除去してグリーンシートとする。グリーンシートは典型的には850〜880℃に5〜120分保持して焼成され、誘電体とされる。
【0013】
本発明の誘電体からなる層を含む複数の誘電体層が積層された基板の製造は通常、複数のグリーンシートを積層したものを焼成して行う。また、これらグリーンシートには必要に応じて銀ペースト、銀導体等によって配線パターンやビアなどが形成される。
【0014】
次に、本発明のガラスセラミックス組成物の成分について説明する。なお、各成分の含有量は質量百分率で表示する。
本発明のガラスの粉末は焼成体の緻密性を高めるための成分であり、必須である。30%未満では緻密な焼成体が得にくくなる。好ましくは35%以上である。70%超ではεが小さくなる、またはtanδが大きくなる。好ましくは65%以下である。
【0015】
本発明のガラスの粉末の体積基準50%粒径(D50)は0.5〜10μmであることが好ましい。0.5μm未満では粉末が凝集しにくくなって取り扱いにくくなる。より好ましくは1.0μm以上である。10μm超では緻密で均質な焼成体が得にくくなる。より好ましくは5.0μm以下である。なお、D50はたとえばレーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定される。
本発明のガラスの粉末のBET比表面積は2.5〜4.0m/gであることが好ましい。典型的には3.0〜3.6m/gである。
【0016】
本発明のガラスの粉末は本発明のガラスを粉砕して製造される。粉砕の方法は本発明の目的を損なわないものであれば限定されず、乾式粉砕でもよいし湿式粉砕でもよい。湿式粉砕の場合には、溶媒として水を用いることが好ましい。また粉砕にはロールミル、ボールミル、ジェットミル等の粉砕器を適宜用いることができる。ガラスは粉砕後、必要に応じて乾燥され、分級される。
【0017】
BT粉末は焼成体のεを高くする成分であり、必須である。30%未満ではεが小さくなる。好ましくは35%以上、より好ましくは45%以上、特に好ましくは50%以上である。70%超では緻密な焼成体が得にくくなる。より好ましくは65%以下である。
【0018】
BT粉末はBaTi結晶を含有することが好ましい。
BT粉末はたとえば次のようにして作製される。すなわち、炭酸バリウム粉末と酸化チタン粉末をBa/Tiモル比が3.5〜4.5の範囲となるように調合して混合した粉末をボールミル等によって粉砕し粉砕混合粉末とする。この粉砕混合粉末を1000〜1500℃に保持して炭酸バリウム粉末と酸化チタン粉末を反応させる。前記保持する温度は好ましくは1050〜1250℃である。このようにして作製された粉末のX線回折パターンにBaTi結晶の回折ピークパターンが認められるように作製条件を選択することが好ましい。
このようにして作製されたBT粉末には通常BaTi結晶が存在するが、それ以外の結晶、たとえばBaTi20結晶、BaTi11結晶、TiO結晶等の回折ピークパターンが認められることがある。
【0019】
BT粉末のD50は0.5〜10μmであることが好ましい。10μm超では緻密な誘電体が得にくくなる。より好ましくは5μm以下、特に好ましくは3μm以下である。
また、BT粉末のBET比表面積は2.5〜4.0m/gであることが好ましい。
【0020】
本発明のガラスセラミックス組成物は本質的に上記成分からなるが、本発明の目的を損なわない範囲でその他の成分、たとえばBT粉末以外のセラミックス粉末を含有してもよい。そのような成分を含有する場合の当該成分の含有量の合計は、好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下である。
前記その他のセラミックス粉末としては、TiO結晶、BaTi結晶、BaTi20結晶、BaNdTi14結晶、BaZrO結晶、ZrTiO結晶、BaWO結晶、CaTiO結晶、MgTiO結晶およびこれらの固溶体のようなεの大きなセラミックスの粉末、アルミナ粉末、ムライト粉末のような焼成体の強度を高くするためのセラミックス粉末いわゆる高強度フィラーが例示される。このようなセラミックス粉末を含有する場合、当該粉末はTiO結晶粉末を含有するものであることが好ましい。
【0021】
次に、本発明のガラスについて説明する。
本発明のガラスのガラス転移点(Tg)は好ましくは660℃以下、より好ましくは640℃以下である。
また、その軟化点(Ts)は好ましくは770℃以下、より好ましくは750℃以下であり、また、典型的には680℃以上である。
また、その結晶化ピーク温度(Tc)は好ましくは900℃以下、より好ましくは860℃以下である。
本発明のガラスの粉末を焼成して得られる焼成体にはBaAlSi結晶が析出していることが好ましい。
【0022】
次に、本発明のガラスの組成について説明する。なお、以下ではガラスの各成分のモル%表示含有量を単に%で表す。
SiOはガラスのネットワークフォーマであり、必須である。15%未満ではガラスが得られにくい。好ましくは20%以上、より好ましくは25%以上、特に好ましくは28%以上である。40%超であるとTgまたはTsが高くなりすぎる。好ましくは35%以下である。
Alはガラスの安定性を高める成分であり、必須である。2%未満ではガラスが不安定になる。好ましくは4%以上である。15%超ではTsが高くなる。好ましくは8%以下である。
SiOおよびAlの含有量の合計は25〜50%であるが、典型的には30〜45%である。
【0023】
はTgまたはTsを低くする成分であり、必須である。好ましくは10%以上である。37%超では化学的耐久性が低下する、またはtanδが大きくなる。好ましくは30%以下、より好ましくは25%以下、特に好ましくは20%以下である。
ZnOは必須ではないが、TgまたはTsを低くするために35%まで含有してもよい。35%超では化学的耐久性、特に耐酸性が低下するおそれがある。好ましくは30%以下、より好ましくは25%以下、特に好ましくは20%以下である。ZnOを含有する場合その含有量は、好ましくは2%以上、より好ましくは7%以上、特に好ましくは12%以上である。
およびZnOの含有量の合計が15%未満ではTgまたはTsが高くなる。45%超では化学的耐久性が低下する、または焼成時にBaAlSi等の結晶が析出しにくくなる。好ましくは40%以下、より好ましくは35%以下である。
【0024】
MgO、CaOおよびSrOはガラスを安定化させる成分であり、いずれか一種以上を含有しなければならない。これら成分の含有量の合計が1%未満ではガラスが不安定になる。好ましくは2%以上、典型的には6%以上である。同合計が25%超ではガラスがかえって不安定になる、またはεが小さくなる。好ましくは15%以下、典型的には13%以下である。
これら3成分の中ではMgOまたはCaOを含有することが好ましい。
MgOを7%超含有するとBT粉末が焼成時にガラス成分と反応しやすくなって焼成体中に残留しにくくなり、その結果焼成体のεが小さくなるおそれがある。MgOは好ましくは6%以下である。
CaOを含有する場合、その典型的な含有量は5〜10%である。
CaOと同時にSrOを含有する場合、SrO含有量は典型的には1〜5%である。
【0025】
BaOは焼成体のεを高める、または焼成時にBaAlSi結晶を析出させる効果を有し、必須である。5%未満では前記効果が不十分となる。好ましくは8%以上、より好ましくは10%以上、特に好ましくは12%以上である。25%超であるとガラスが不安定になるおそれがある。好ましくは20%以下、より好ましくは18%以下である。
【0026】
TiOは焼成体のεを高くし、または焼成時にBaAlSi結晶を析出させる効果を有し、さらに、焼成体の緻密性を高める成分であり、必須である。3%未満では焼成体の緻密性が低下するおそれがある。好ましくは5%以上である。
ZrOおよびSnOはいずれも必須ではないが、化学的耐久性を高める等の目的で、合計で10%までの範囲で含有してもよい。
【0027】
本発明のガラスは本質的に上記成分からなるが、本発明の目的を損なわない範囲でその他の成分を含有してもよい。その場合このような成分の含有量の合計は好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下である。
前記その他の成分としては、Y、La、CeO、Nd、SnO、AgO、CoO、Nb、Ta、MoO、WO、In、Bi、TeO、P等が例示される。
なお、本発明のガラスは鉛およびアルカリ金属酸化物のいずれも含有しない。
【実施例】
【0028】
表のSiOからTiOまでの欄にモル%表示で示す組成となるように原料を調合、混合し、この混合された原料を白金ルツボに入れて1550〜1600℃で60分間溶融後、溶融ガラスを流し出し冷却した。例1、2は本発明のガラスであり実施例、例3、4は比較例である。
【0029】
冷却したガラスをアルミナ製ボールミルで6時間乾式粉砕した後、水を溶媒として、さらに10〜30時間粉砕してガラス粉末とした。島津製作所製レーザー回折式粒度分布計SALD2100を用いて測定した各ガラス粉末のD50(単位:μm)を表に示す。
また、各ガラス粉末を試料として各ガラスのTg(単位:℃)、Ts(単位:℃)、Tc(単位:℃)を理学電機社製熱分析装置マクロ型DTAを用いて昇温速度10℃/分の条件で1000℃まで昇温して測定した。結果を表に示す。
また、各ガラス粉末を870℃に2時間保持(焼成)して得られた焼成体についてX線回折法により結晶析出の有無を調べたところ、例1、2、4についてはBaAlSi結晶の析出、例3についてはエンスタタイト結晶の析出がそれぞれ認められた。
【0030】
一方、BT粉末を次のようにして作製した。すなわち、BaCO粉末(堺化学工業社製炭酸バリウムBW−KT)88gとTiO粉末(関東化学社製試薬ルチル型)130gとを水を溶媒としてボールミルで混合し、乾燥後1150℃に2時間保持した。その後ボールミルで60時間粉砕してD50が0.9μm、BET比表面積が3.4m/gである粉末を得た。この粉末についてX線回折測定を行ったところBaTi結晶の強い回折ピークパターンが認められた。
【0031】
表のガラスからチタン酸マグネシウムまでの欄に各粉末の質量百分率表示含有量を示すガラスセラミックス組成物を作製した。
酸化チタン粉末としては東邦チタニウム社製HT0210(D50=1.8μm)を、チタン酸マグネシウム粉末としては富士チタン工業社製MT(D50=0.8μm)をそれぞれ使用した。
【0032】
例1〜4のガラスセラミックス組成物各5gを円柱状の金型を用いてプレス成形し、870℃に1.5時間保持する焼成を行って焼成体を得、これを研磨加工して直径約14mm、厚さ約8mmの円柱状サンプルを得た。このサンプルを用いて、ネットワークアナライザとキーコム社製平行導体共振法誘電率測定システムを使用して約20℃でεとtanδを測定した。共振周波数f(単位:GHz)とあわせて表に示す。
【0033】
また、各ガラスセラミックス組成物を用いてグリーンシートを作製し、これを積層して焼成して焼成体を得た。すなわち、ガラスセラミックス組成物50gに有機溶剤(トルエン、キシレン、2−プロパノール、2−ブタノールを質量比4:2:2:1で混合したもの)15g、可塑剤(フタル酸ジ−2−エチルヘキシル)2.5g、樹脂(デンカ社製ポリビニルブチラールPVB#3000K)5gと分散剤(BYK180)を混合してスラリーとした。このスラリーをPETフィルム上にドクターブレード法を利用して塗布し、乾燥して厚みが0.2mmのグリーンシートを作製した。
得られたグリーンシート4cm×4cmに切断し、6枚を積層してプレスしたものを550℃に5時間保持して、バインダーを除去した後、875℃に1.5時間保持して焼成し焼成体を得た。
【0034】
得られた焼成体の寸法を測定して、焼成による収縮率(単位:%)を求めた。結果を表に示す。
また、これら焼成体について、JIS R1634「ファインセラミックスの焼結体密度・開気孔率の測定方法」に従ってかさ密度および開気孔率を測定した。かさ密度の測定結果を表のρ875の欄に示す。また、開気孔率はいずれの焼成体についても0%であった。
【0035】
また、これら焼成体の断面を鏡面研磨し、走査型電子顕微鏡を用いて倍率1000倍で撮影した断面の写真から、画像解析ソフトを使用して穴の面積の画面全体に占める割合を算出し、空隙率(単位:%)として表に示した。
【0036】
かさ密度の測定は865℃に1.5時間保持して焼成した焼成体、および885℃に1.5時間保持して焼成した焼成体についても測定した。その結果を表のρ865、ρ885欄に示す。例3、例4は空隙が多く、焼成温度によるかさ密度の変動|Δρ|が大きい。このことは焼成条件によって焼成体の緻密性が変化しやすいことを示唆している。実際にこれらのガラスセラミックス組成物を用いてバンドパスフィルタを試作したところ、焼成体の緻密性が異なる場合があり、所定のフィルター特性が得られない場合があった。緻密性が変化することで、誘電率が異なることが原因と考えられる。
【0037】
また、50MHzにおいて85℃から−25℃での比誘電率を測定しτ(単位:ppm/℃)を測定した。結果を表に示す。
また、X線回折法によりこれら焼成体に結晶が存在するか否かを調べたところ、例1〜4のいずれの焼成体にもBaAlSi結晶、ルチル、BaTi結晶が認められた。
【0038】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0039】
回路基板、アンテナ基板等の電子回路基板の製造に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記酸化物基準のモル%表示で、SiO 15〜40%、B 5〜37%、Al 2〜15%、MgO+CaO+SrO 1〜25%、MgO 0〜7%、BaO 5〜25%、ZnO 0〜35%、TiO 3〜15%、ZrO+SnO 0〜10%、から本質的になり、SiO+Alが25〜50モル%、B+ZnOが15〜45モル%であり、鉛およびアルカリ金属のいずれも含有しないガラス。
【請求項2】
軟化点が770℃以下である請求項1に記載のガラス。
【請求項3】
質量百分率表示で、請求項1または2に記載のガラスの粉末30〜70%と、BaとTiを含有しモル比(Ti/Ba)が3.0〜5.7であるBa−Ti化合物の粉末30〜70%とから本質的になるガラスセラミックス組成物。
【請求項4】
請求項3に記載のガラスセラミックス組成物を焼成して得られる誘電体。
【請求項5】
1GHz〜25GHzのいずれかの周波数における比誘電率が16〜30である請求項4に記載の誘電体。

【公開番号】特開2006−298716(P2006−298716A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−125120(P2005−125120)
【出願日】平成17年4月22日(2005.4.22)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】