説明

ガラスおよびガラスセラミック上ゲルマニウム構造

直接的に、あるいは1層または複数層の中間層を介して、互いに接合される第1層および第2層を備えた絶縁体上半導体構造。上記第1層はゲルマニウムを含む実質的に単結晶の半導体材料を含むが、上記第2層は、上記第1層のゲルマニウムの線熱膨張係数の±20×10−7/℃の範囲内の線熱膨張係数(25〜300℃)を有するガラスまたはガラスセラミックを含む。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の説明】
【0001】
本願は、2006年1月3日付けで提出された米国仮特許出願第60/755,934号の合衆国法典第35巻第119条(e)に規定する優先権を主張した出願である。
【技術分野】
【0002】
本発明は、ガラスまたはガラスセラミック上半導体のような絶縁体上半導体(SOI)構造およびその作製方法に関するものである。特に本発明は、ガラスまたはガラスセラミック上ゲルマニウム構造(GeOG)に関し、さらに特に膨張特性が適合したガラスまたはガラスセラミック上ゲルマニウム構造に関するものである。
【背景技術】
【0003】
現在、絶縁体上半導体構造に最も一般に使用されている半導体材料はシリコンである。このような構造は、文献においては絶縁体上シリコン構造と呼ばれ、このような構造に対しては「SOI」という略語が適用されている。SOI技術は、高性能の光発電用途(例えば太陽電池)、薄膜トランジスタ用途、および能動マトリクスディスプレーのようなディスプレーに関して急速に重要になってきている。公知の絶縁体上シリコンウェーハは、実質的に絶縁材料上単結晶シリコン(一般に厚さが0.1〜0.3μmであるが、5μmと厚い場合もある)からなる。
【0004】
説明を容易にするために、以下の記載では「絶縁体上シリコン構造」という言葉が時折用いられている。絶縁体上半導体構造のこの特定の形式に対する呼び方は、本発明の説明を容易にするためであって、本発明の範囲を限定することを意図したものでも、そのように解釈されるべきものでも全くない。ここで一般的に絶縁体上半導体構造に対して用いられている「SOI」という略語は、絶縁体上シリコン構造および絶縁体上ゲルマニウム構造の双方を含むがこれらに限定されない。同様に、一般的にガラス上半導体構造に対して用いられている「SOG」という略語は、ガラス上シリコン(SiOG)構造およびガラス上ゲルマニウム(GeOG)構造の双方を含むがこれらに限定されない。SOGという術語は、ガラスセラミック上半導体構造をも含むことを意図しており、ガラスセラミック上シリコン構造を含むが、これに限定されない。略語SOIはSOG構造の上位概念である。
【0005】
SOI構造を得るための種々の方法の中には、格子整合された基板上にSiをエピタキシャル成長させる方法がある。別の方法には、SiOからなる酸化物層が成長せしめられた別のシリコンウェーハ上に単結晶シリコンを接合し、次いで上部のウェーハを研磨またはエッチングによって、例えば0.1〜0.3μmの単結晶シリコンにする方法がある。さらに別の方法には、水素イオンまたは酸素イオンが注入されるイオン注入法があり、酸素イオン注入の場合には、Siによって上面を覆われたシリコンウェーハ内に埋め込まれた酸化物層を形成し、水素イオン注入の場合には、薄いSi層を分離(剥離)させて、酸化物層を備えた別のSiウェーハに接合することになる。
【0006】
従来の二つの方法は、コストおよび/または接合強度および耐久性の点で満足できる構造が得られなかった。水素イオン注入を含む後者の方法は、必要なエネルギーが酸素注入エネルギーの50%であり、かつ必要な注入量が2桁も低いために注目を惹き、それ以前の方法よりも有利と判断されている。
【0007】
水素イオン注入法による剥離は、一般に以下のステップからなる。熱酸化層が単結晶シリコンウェーハ上に成長せしめられる。次に水素イオンがこのウェーハ中に注入されて、表面下の多数の欠陥を生じさせる。注入エネルギーは欠陥が生じる深さを決定し、注入量は欠陥の密度を決定する。次にこのウェーハは、室温において別のシリコンウェーハ(支持基板)に接触せしめられて、一時的な接合を形成する。次にこれら2枚のウェーハは約600℃で熱処理されて、Siウェーハからシリコンの薄層を分離させるのに用いるために上記表面下の多数の欠陥を成長させる。得られたアセンブリは、次に1000℃を超える温度に加熱されて、SiOの下層を伴ったSi膜を支持基板、すなわちイオン注入を受けていないSiウェーハと完全に接合する。このようにして、この工程は、酸化物絶縁体を間にして別のシリコンウェーハに接合されたシリコン薄膜を備えたSOI構造を形成する。
【0008】
コストはSOI構造を市場に提供するための重要な事項である。現在、上述した方法および構造のコストの主要部分は、酸化物Si薄膜によって表面を覆われた酸化物を支持するシリコンウェーハのコストが占めており、すなわち、コストの主要部分は支持基板が占めている。支持基板として水晶を用いることが多くの特許文献(特許文献1〜6参照)に記載されているが、水晶はそれ自体が高価な材料である。支持基板の論議において、上述の引例の中には、水晶ガラス、ガラスおよびガラスセラミックに言及しているものがある。これらの引例に記載されている他の支持基板材料は、ダイアモンド、サファイヤ、炭化珪素、セラミック、金属およびプラスチックを含む。
【0009】
特許文献7には、熱処理を用いて、基板上に単結晶シリコン膜を得る工程が開示されている。平らな面を備えた半導体材料のウェーハに対し下記の処理ステップを施される。すなわち、(1)イオンを用いたウェーハ面の衝撃による注入が、基板の大部分を構成する下部領域を画成する細かい気泡からなる層と、薄膜を構成する上部領域とを生成させ、(2)少なくとも1層の硬い材料層によって構成された補強材を上記ウェーハの平らな面に接触させ、(3)上記ウェーハと上記補強材とからなるアセンブリを、上記イオン衝撃が行なわれた温度よりも高い温度で、かつ上記細かい気泡内に圧力効果を生じさせ、そして薄膜と基板の大部分との間に分離を生じさせるのに十分な温度で第3ステージの熱処理を施す。この方法は、高温で処理するために、より安価なガラスまたはガラスセラミックを用いては実行不能である。
【0010】
特許文献8には、SOG構造を製造するための方法が開示されている。この工程は、(1)シリコンウェーハの表面に対し水素イオン注入を行なって接合面を生成させ、(2)このウェーハの接合面にガラス基板を接触させ、(3)ウェーハとガラス基板に対し圧力、温度および電圧を加えて、それら間の接合を促進し、(4)上記構造を通常の温度まで冷却して、シリコンウェーハからのガラス基板およびシリコン薄層の分離を促進することを含む。この特許文献8に開示されたSOI形成技術は、ガラス基板に接合された比較的薄い半導体層(例えば1〜5μm)が得られることを示している。
【0011】
この半導体層の厚さは、用途によっては十分であり、一般に少なくとも200μmの厚さを示すバルクの半導体材料よりも優れているが、これらのシリコンまたはシリコンを主成分とする合金/酸化物ガラスまたは酸化物ガラスセラミックを主成分とするSOI構造は、例えばMOSトランジスタ、光検知器およびその他の光電子デバイス、ならびに高性能太陽電池/光発電デバイスのようなその他の用途に対しては、満足できる厚さの半導体層を提供し得ない。
【0012】
最近では、より薄い半導体層を有するSOI構造が特許文献9〜11に記載されており、特に、GOIとしても知られている絶縁体上ゲルマニウムに基づくデバイスの作製方法が開示されている。上述のGOIに関する出願に開示された半導体導電膜は200nm(0.2μm)未満の厚さを有する。そこに開示されているように、シリコンよりも高いゲルマニウムのキャリア(正孔および電子)易動度および光吸収性の結果として、薄膜、高性能/高量子効率の用途/デバイスに効果的である。高い電子および正孔の易動度に加えて、ゲルマニウムは、シリコンによって必要とされるよりも低い接触抵抗および低いドーパント活性化温度のような他の利点を有し、したがって、浅い接合部の形成を容易にする。
【0013】
上述の諸引例には「絶縁体」と記載されているが、これらは、一般に半導体材料(Ge,Si,GaAs,SiC等)内に埋め込まれた、一般に酸化物または窒化物である絶縁体層であり、ガラスは非半導体材料基板として開示されている。Geに接合されるときの基板材料としてガラスを用いることに付随する一つの問題は、Ge膜と、このGe膜が接合される基板との間に生じ得る熱膨張の不一致であり、この現象は、シリカガラス上Ge膜の場合に特に問題になる。膨張にかなりの不一致があると、高い膜応力および膜割れまたは層間剥離を招く可能性がある。
【特許文献1】米国特許第6,140,209号明細書
【特許文献2】米国特許第6,211,041号明細書
【特許文献3】米国特許第6,309,950号明細書
【特許文献4】米国特許第6,323,108号明細書
【特許文献5】米国特許第6,335,231号明細書
【特許文献6】米国特許第6,391,740号明細書
【特許文献7】米国特許第5,374,564号明細書
【特許文献8】米国特許出願第2004/0229444号明細書
【特許文献9】米国特許出願第2005/0093100号明細書
【特許文献10】米国特許出願第2005/0042842号明細書
【特許文献11】米国特許第6,759,712号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上述した薄膜GeOIの利点にも拘わらず、ガラスを絶縁体/基板として用いる場合の上述した不一致は一般に存在しており、未だ解決されていない。そこで、上述の膨張不一致問題を生じないガラス絶縁体/基板を備えたGeOIデバイス、特にGeOGデバイス、すなわち、Ge半導体膜のCTE特性と相性が良い熱膨張特性を有する基板を備えたGeOGデバイスのニーズがある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一実施の形態は、直接的に、あるいは1層または複数層の中間層を介して、互いに接合される第1および第2層を備えた絶縁体上半導体構造に関する。上記第1層はゲルマニウムを含む実質的に単結晶の半導体材料を含むが、上記第2層は、上記第1層のゲルマニウムの線熱膨張係数の±20×10−7/℃の範囲内の線熱膨張係数(25〜300℃)を有するガラスまたはガラスセラミックを含む。
【0016】
さらなる実施の形態においては、上記第2層が、上記第1層のゲルマニウムの線熱膨張係数の±10×10−7/℃の範囲内の線熱膨張係数(25〜300℃)を有するガラスまたはガラスセラミックを含む。
【0017】
本発明のさらなる特徴および利点は、下記の詳細な説明に記載されており、その一部は、当業者であれば、下記の説明から直ちに明らかになるであろうし、かつ下記の説明および請求項のみでなく、添付の図面の通りに本発明を実施することによって認識するであろう。
【0018】
上記の概要説明および下記の詳細説明の双方は、本発明の単なる例示であって、請求項に記載された本発明の性質および性格を理解するための概観または骨組の提供を意図したものであることを理解すべきである。
【0019】
本発明の種々の態様の説明のために、現在において好ましい形式の図面が示されているが、本発明は、図示された配列および手段に限定されるものではないことを理解すべきである。
【0020】
類似の要素には類似の番号が付されている図面を参照すると、図1には、本発明の一つまたは複数の実施の形態によるGeOG構造100が示されている。このGeOG構造100は、ゲルマニウムからなる実質的に単結晶の半導体材料からなる第1層102と、このゲルマニウムの第1層の線熱膨張係数の±20×10−7/℃の範囲内の線熱膨張係数(25〜300℃)を有するガラスまたはガラスセラミックからなる第2層104とを含むことが好ましい。
【0021】
別の実施の形態においては、GeOG構造100が、ゲルマニウムからなる実質的に単結晶の半導体材料からなる第1層102と、このゲルマニウムの第1層の線熱膨張係数の±10×10−7/℃の範囲内の線熱膨張係数(25〜300℃)を有するガラスまたはガラスセラミックからなる第2層104とを含むことが好ましい。
【0022】
上記GeOG構造100は、例えば、有機発光ダイオード(OLED)および液晶ディスプレー(LCD)を含むディスプレー用途、ならびに集積回路のような薄膜トランジスタ(TFT)の製造に関連して用いられるのに適している。この薄いGe膜/ガラスGeOG構造は、高性能太陽電池/光発電装置に用いるのに特に適している。
【0023】
層102の半導体材料は、実質的に単結晶のゲルマニウムの形態であることが好ましい。「実質的に」という言葉は、半導体材料が、格子欠陥または結晶粒界のような内部欠陥または表面欠陥を本質的にまたは目的的に添加されて少なくとも若干は含んでいることを考慮したものである。また、「実質的に」という言葉は、或る種のドーパントがバルク半導体の結晶構造を歪ませる、さもなければ影響を与える事実を反映したものである。実質的に単結晶のゲルマニウム材料は、少なくとも90%のGeと、したがって10%までの、例えばSiのような他の成分および/またはドーパントとを含む。
【0024】
ゲルマニウム半導体である第1層102は一般に厚さが約1μm未満であるが、電子回路に用いる場合は0.05〜0.5μmの間の厚さが望ましく、光発電用には1〜10の間の厚さが望ましい。第1層のゲルマニウム半導体材料は、一般に約61×10−7/℃のCTE(25〜300℃)を示す。
【0025】
ガラスまたはガラスセラミック基板104は、酸化物ガラスまたは酸化物ガラスセラミックから形成されていることが好ましい。必ずしも必要ではないが、ここに記載されている実施の形態は、約1000℃未満の歪み点を示す酸化物ガラスまたは酸化物ガラスセラミックを含むことが好ましい。従来のガラス製造分野におけると同様に、歪み点は、ガラスまたはガラスセラミックが1014.6ポアズ(1013.6Pa.s)の粘度を有する温度である。酸化物ガラスと酸化物ガラスセラミックとの間では、一般的に製造が簡単なために、したがってより広く入手可能で安価なために、現在ではガラスが好ましい。
【0026】
上記ガラス基板は、約0.1mmから約10mmまでの範囲内の厚さを有することが好ましく、約0.5mmから約1mmまでの範囲内の厚さが最も好ましい。或るGeOGに関しては、例えばGeOG構造が高周波で作動される場合に生じる寄生容量効果を避けるために、絶縁層が1μm以上の厚さを有することが好ましい。過去においては、このような厚さのものを得るのが困難であった。本発明によれば、約1μm以上の厚さを有するガラス基板104を単純に用いることにより、約1μmよりも厚い絶縁層を有するGeOG構造が容易に得られる。
【0027】
一般に、ガラスまたはガラスセラミック基板104は,本発明の処理ステップのみでなく、これに続くGeOG構造100上に施される処理を通じて、Ge半導体層102を支持するのに十分な厚さを有しなければならない。ガラス基板の厚さにおける理論的な上限はないものの、ガラス基板104の厚さが増大するほど、GeOG構造100の形成における処理ステップのうちの少なくとも或るステップを成し遂げるのが困難になるので、支持機能に必要な、または理想的なGeOG構造100に関して望ましい厚さを超える厚さは一般に好ましくない。
【0028】
上記酸化物ガラスまたは酸化物ガラスセラミック104は、シリカを主成分とするものが好ましい。したがって、酸化物ガラスまたは酸化物ガラスセラミック中のSiOの量は、30重量%を超えることが、実施の形態によっては70重量%を超えることが好ましい。本発明の一つまたは複数の実施の形態の実施においては、シリカを主成分としないガラスまたはガラスセラミックを用いてもよいが、それらはより高価および/または動作性能が劣るので、一般に好ましくない。シリカを主成分とするか、あるいはしないかに拘わらず、ガラスの重要な特徴は、一般に約61×10−7/℃であるゲルマニウムの線熱膨張係数の±20×10−7/℃の範囲内の線熱膨張係数(25〜300℃)を示すことである。実施の形態によっては、ガラス基板の線熱膨張係数(25〜300℃)を50〜70×10−7/℃の範囲内にすべきであり、さらに別の実施の形態においては、ガラス基板の線熱膨張係数(25〜300℃)をゲルマニウムの線熱膨張係数である約61×10−7/℃に一致させるべきである。
【0029】
例えばディスプレーおよび光発電用途のような用途においては、ガラスまたはガラスセラミック104が、可視光、近紫外線、および/または赤外線の波長範囲において透光性を有することが好ましく、例えば350nmから2μmまでの波長範囲において透光性を有することが好ましい。
【0030】
ガラスまたはガラスセラミック基板104は、単一のガラスまたはガラスセラミックからなることが好ましいが、必要であれば貼り合わせ構造を用いてもよい。貼り合わせ構造が用いられた場合、Ge半導体層102に最も近接した層は、単一のガラスまたはガラスセラミックからなるガラス基板104に関して説明した特性を有することが好ましい。Ge半導体層102から遠い層もこのような特性を有することが好ましいが、これらはGe半導体層102と直接相互作用を行なわないので、緩やかな特性を有していてもよい。後者の場合、ガラス基板104に関して特定された特性がもはや満足されない場合に、ガラスまたはガラスセラミック基板104が使命を終えたと認められる。
【0031】
本発明に用いるのに望ましいガラスは、ゲルマニウムの線熱膨張係数の±20×10−7/℃の範囲内の線熱膨張係数(25〜300℃)である上述したCTE特性を有するアルカリ、アルカリ土類、または希土類アルミノ珪酸塩またアルミノ硼珪酸塩ガラスである。これに加えて、ゲルマニウムの融点が973℃以下と比較的低いために、推奨される接合温度はゲルマニウムの融点よりも低くなければならない。したがって、少なくとも500℃から900℃までの歪み点を示すガラス基板、ガラスを主成分とする基板を一般に使用することができる。ガラスを主成分とする基板の歪み点よりも低い接合温度が一般に用いられ、かつガラスを主成分とする構造とゲルマニウム材料との間で必要かつ十分な接合が得られる適当な接合温度は、当業者の知識の範囲内であることに注目すべきである。
【0032】
第1の実施の形態において、ガラス上ゲルマニウム構造に用いるためのガラスは、重量%で計算してかつ酸化物基準のバッチから計算して、15〜45%のSiO、7.5〜15%のAl、15〜45%のMgO+CaO+SrO+BaOおよび55%までのREを含む組成を有し、REは、Sc,Y,La,Ce,Pr,Nd,Sm,Eu,Gd、Tb,Dy、Ho,Er,Tm、Yb,Luからなる希土類元素群およびそれらの混合体から選ばれる。
【0033】
さらに別の実施の形態において、ガラス上ゲルマニウム構造に用いるためのガラスは、重量%で計算してかつ酸化物基準のバッチから計算して、55〜65%のSiO、8〜20%のAl、および12〜30%のMgO+CaO+SrO+BaO+ZnO+TiO+ZrOを含む組成を有する。上記組成は、アルカリ化合物(NaO,KO,LiO)化合物を含まないことが好ましいが、10%までのアルカリであれば許容できる。
【0034】
さらに別の実施の形態において、ガラス上ゲルマニウム構造に用いるためのガラスは、重量%で計算してかつ酸化物基準のバッチから計算して、45〜70%のSiO、2.5〜30%のAl、0〜8%のB、2.5〜30%のMgO+CaO+SrO+BaO、および1〜20%のLa+Yを含む組成を有する。
【0035】
本発明に用いるのに適した代表的なCTEが適合したガラスは、下記の表1に重量%で示されており、熟練した職人であれば、これらのおよび他の適当なガラス組成物を標準的な方法を用いて作製することが可能である。例えば、酸化物、ハロゲン化物(例えばAlCl)窒化物、および/または炭化物(CaCO)の粉末をボールミル内で1持間混合して1kgのバッチを作製することによって、下記に掲げられたガラスを作製することができる。混合されたバッチは次にPt坩堝内に入れられ、1550〜1650℃のグロバー炉内で一晩溶融され、その後、溶融されたガラスはスチールプレート上に注がれ、700℃と800℃の間の温度でアニールされて応力を和らげる。
【0036】
これらのガラスの特性は、熟練した職人が成分を変えることによって調整することができる。例えば、SiO成分を増やし、かつRE(REは希土類で、Sc,Y,La,Ce,Pr,Nd,Sm,Eu,Gd、Tb,Dy、Ho,Er,Tm、Yb,Luを含む)に対するAlの比を増大させることによってのみでなく、REの種類を変えることによっても歪み点は上昇する。例えば、LaをYに置き換えると、歪み点は上昇し、CTEは低下する。熟練した職人は、下記に記載されている接合法に用いるのにより好適なガラスを得るために、下記に掲げたアルカリイオンおよびアルカリ土類イオンを含まない組成物に対し少量の(例えば数%までの)アルカリイオンおよびアルカリ土類イオンを添加することができる。しかしながら、ナトリウムイオンはシリコントランジスタに対して有害なことがよく知られており、ゲルマニウムに対しても同様に避けるべきであると推定される。特に最高処理温度が650℃前後のために、低い拡散速度を有するより大きいアルカリイオンが許容できる。したがって、ガラス組成はナトリウムを含まないことが最も好ましい。低イオン組成も好ましい。
【表1】

【表2】

【0037】
本発明に用いるためのガラスセラミックは、上述と同様の、ゲルマニウムの線熱膨張係数の±20×10−7/℃の範囲内の線熱膨張係数(25〜300℃)を有するというCTE特性を示すことが望ましい。特に、下記の組成の範囲内のスピネル・ガラスセラミックは、必要な±20×10−7/℃特性を示すように形成することができる。
【0038】
SiO 30〜55%
Al 18〜28%
ZnO 8〜20%
MgO 0〜6%
CaO 0〜3%
SrO 0〜3%
BaO 0〜3%
O 0〜10%
RbO+CsO 0〜15%
TiO 0〜10%
ZrO 0〜10%
本発明のガラス上ゲルマニウム構造に用いるためのガラスセラミックは、下記の表3に開示されているものを含む。そこに開示されているガラスセラミックは、当業者が周知の標準的なガラスセラミック製造法を用いて形成される。例えば、下記に開示されているガラスセラミックは、800〜1000℃の温度範囲における1〜10時間の時間範囲においてセラミック化することができ、下記の二つの実施例は、800℃において1時間、次いで900℃において2時間の処理によってセラミック化された。
【表3】

【0039】
ここで、図1のGeOG構造の製造に関連する中間構造を生成させるために実行される処理ステップを示す図2および図3を参照する。ステップ202においては、剥離層122が半導体ウェーハ120(図3)の表面上に形成される。説明の目的で、半導体ウェーハ120は実質的に単結晶のGeウェーハであることが好ましい。
【0040】
上記剥離層122は、Ge半導体ウェーハ120から分離され得るゲルマニウムからなる比較的薄い層であることが好ましい(後に説明する)。本発明の実施の形態は、剥離層の形成を如何なる特定の方法に限定するものではないが、一つの好適な方法は、イオン注入を用いて、Geウェーハ120の表面下に、脆弱化された領域を生成させることを含む。他のイオンまたは例えば硼素+水素、ヘリウム+水素のような多重イオン、または剥離のために文献で知られているようなイオンを用いてもよいが、実例として、水素イオン注入が用いられる。剥離層122の形成に適したその他の公知のまたは今後の進歩した技術も、本発明の精神および範囲から離れることなしに利用可能である。
【0041】
一つの実施の形態において、単一ステップの水素注入のみが用いられ、Geウェーハを、1×1016〜1×1017イオン/cmの間の注入量のHイオン注入に曝す。別の低注入量の注入ステップにおいては、Geウェーハが多重イオン、注入量の低い多重イオン注入ステップに曝される。特に、HとHeを組み合わせた、注入量の低いイオン注入が行なわれ、先ずGeウェーハが1×1015〜1×1016イオン/cmの間の範囲のHイオン注入に曝され、次いで再び低い注入レベルの1×1015〜1×1016イオン/cmの間の範囲のヘリウムイオン注入に曝される。
【0042】
剥離層122を生成させるのに如何なる技術を利用しても問題はないが、Geウェーハが表面上の(例えば水素)イオン濃度を低下させるように処理されるのが好ましい。例えば、ステップ204において、半導体ウェーハが洗浄されて清潔にされ、かつ剥離層122がマイルドな酸化を受けるのが好ましい。マイルドな酸化処理は、酸素プラズマ処理、オゾン処理、過酸化水素、過酸化水素およびアンモニア、過酸化水素および酸を用いた処理、ならびにこれらの処理の組合せを含む。これらの処理の間に、水素を末端基とする表面原子団がヒドロキシル基に酸化し、これがゲルマニウムウェーハの表面を親水性にすることが期待される。この処理は、酸素プラズマに関しては室温で、そしてアンモニアまたは酸処理に関しては25〜150℃の間の温度で実行されるのが好ましい。この処理に続いて、ガラスが洗剤中で、次いで蒸留水によって洗浄され、その後硝酸で、次いで蒸留水でさらに洗浄される。
【0043】
これらの処理は理想的であることに注目すべきである。もし、水素イオン濃度が低下しなければ、ゲルマニウムウェーハとガラスウェーハとの間に反発力が生じ、これは接合工程中により高い圧力を加えることによって克服される。
【0044】
イオン注入に続いて、個々の構造体は電解法を用いて一体に接合されるのが好ましい。好ましい電解接合法は特許文献8に記載されており、その記載内容のすべてが引例として本明細書に組み入れられる。
【0045】
最初に、適切な表面洗浄が実行されるのが好ましい。その後、中間構造体が直接的または間接的に接触せしめられて、図4に概略的に示された配列が得られる。この接触の前にまたは後に、Ge半導体ウェーハ120、剥離層122およびガラス基板104を含む構造体は差別的な温度勾配の下で加熱される。ガラス基板104は、半導体ウェーハ120および剥離層122よりも高い温度まで加熱される。実例では、ガラス基板104とGe半導体ウェーハ120との温度差は約100℃から150℃と高いほうがよいが、少なくとも1℃である。この温度差は、後の熱応力による半導体ウェーハ120からの剥離層122の分離を容易にするので、ゲルマニウムの熱膨張係数(CTE)に適合したCTEを有するガラスにとって望ましい。
【0046】
ガラス基板104とGe半導体ウェーハ120との間の温度差が安定化されると、機械的圧力が中間的アセンブリに印加される。好ましい圧力範囲は、約1から約50psi(6.9〜34.4Pa)の間が好ましい。例えば100psi(69Pa)を超える高い圧力の印加は、ガラスウェーハが破壊する原因となるので好ましくない。
【0047】
ガラス基板104およびGe半導体ウェーハ120は、ガラス基板104の歪み点の約±150℃以内の温度にされるのが好ましい。
【0048】
次に、好ましくは陽極が、ガラス基板104に陰極が付されて、上記中間的アセンブリに対して電圧が印加される。この電圧の印加は、ガラス基板104内のアルカリイオンまたはアルカリ土類イオンを、Ge半導体/ガラス界面からさらにガラス基板104内に移動させる。これは二つの機能を果たす。すなわち、(1)アルカリイオンまたはアルカリ土類イオンの無い界面が生成され、(2)ガラス基板104が極めて反応性になり、比較的低い温度における加熱とともに強固にGe半導体層に接合する。
【0049】
図2のステップ208においては、中間的アセンブリがこれらの状態に或る時間(例えば約1時間以内)保たれた後、電圧印加が停止され、中間的アセンブリは室温まで冷却される。Ge半導体ウェーハ120とガラス基板104とが次に分離されるが、これは、もしこれらがすでに完全に自由になっていなければ、剥がすことを伴って、図1に示すように、薄いGe半導体層が接合されたガラス基板104が得られる。
【0050】
この分離は、熱応力による剥離層122の破砕によって達成されるのが好ましい。その代わりに、あるいはそれに加えて、分離を容易にするために、ウォータージェット切断のような機械的応力、または化学的エッチングを用いてもよい。
【0051】
接合(加熱および電圧印加)工程中の雰囲気は、窒素および/またはアルゴンのような不活性雰囲気、あるいは単純に大気雰囲気でよいことに注目すべきである。
【0052】
図1に示されているように、分離後に得られた構造体は、ガラス基板104およびこれに接合されたGe半導体層102を含む。如何なる不要なGe半導体層材料も、研磨技法により、例えばCMPまたは当業者が周知の技法により除去されて、ガラス基板104上に単結晶ゲルマニウム層102が得られる。
【0053】
Ge半導体ウェーハ120は、再利用されて他のGeOG構造100の製造を継続することができることに注目すべきである。
【0054】
本発明の別の実施の形態が図5に断面図で示されていることに注目すべきである。ガラス上半導体構造300は、上述と実質的に同様に第1層302および第2層304を備えている。ガラス上半導体構造300は、ゲルマニウム半導体材料(306)、酸素含有量が高められたゲルマニウム半導体材料(308)、少なくとも一つの種類の陽イオンに関して低下せしめられた陽イオン濃度を有する、ゲルマニウムの線熱膨張係数の±20×10−7/℃の範囲内の線熱膨張係数(25〜300℃)を有するガラスまたはガラスセラミック(310)、少なくとも一つの種類の陽イオンに関して高められた陽イオン濃度を有するガラスまたはガラスセラミック(312)、およびガラスまたはガラスセラミック(314)を含む。
【実施例】
【0055】
下記の非限定的実施例によって本発明をさらに説明する。
【0056】
実施例1
直径100mm、厚さ500μmのゲルマニウムウェーハ(<100>)に対し、注入量4×1016イオン/cm、注入エネルギー100KeVをもってイオン注入を行なった。次にこのウェーハを、標準条件において10分間酸素プラズマで処理して、表面の原子団を酸化した。下記の組成(重量%)
64.1%SiO,8.4%B,4.2%Al,6.4%NaO,
6.9%KO,5.9%ZnO,4.0%TiO,0.1%Sb
を有するアルカリ・アルミノ硼珪酸塩ガラスウェーハを提供した。
【0057】
上記ガラスは、直径100mm、線熱膨張係数はゲルマニウムのそれに適合し、歪み点は529℃であった。このガラスをフィッシャー・サイエンティフィック社製の洗剤であるContrad70を用いて超音波槽内で15分間洗浄し、次いで蒸留水により超音波槽内で15分間洗浄した。その後、このガラスウェーハを10%硝酸液中で洗浄し、再び蒸留水で洗浄した。これらの2枚のウェーハを、クリーンルーム内の遠心洗浄乾燥器内で蒸留水を用いて最終的に浄化した。次にこれら2枚のウェーハを接触させ、ウェーハ間に空気が捕捉されていないことを確認してから、これらウェーハをSUSSマイクロテック社製ボンダ内に導入した。ガラスウェーハは陰極上に配置し、ゲルマニウムウェーハは陽極上に配置した。2枚のウェーハを525℃(ゲルマニウムウェーハ)と595℃(ガラスウェーハ)に個別に加熱した。1750ボルトの電圧をウェーハ表面間に印加した。この電圧は20分間印加し、電圧をゼロにしてからこれらウェーハを室温まで冷却した。次にこれらウェーハは容易に分離されてGeOG構造が得られ、Geウェーハは後に再利用された。
【0058】
この処理によって、卓越した特性を有するGeOGサンプルが得られた。特にこのGeOGサンプルは、ガラスの面上に強力に固着された薄い(0.5μm)、無欠陥のゲルマニウム膜を備えていた。図6は、処理中の障壁層形成を示すTOF二次イオン質量分析(SIMS)を表す。
【0059】
実施例2
上述の実験を、組成中にアルカリを全く含まないアルカリ土類・アルミノ珪酸塩ガラス(特に上述のサンプル8に示されているカルシウム・アルミノ珪酸塩ガラス)ウェーハを用いて上述の実験を反復した。このガラスの歪み点は735℃であり、Geウェーハに適合したCTEを示した。この場合も、ガラスに転移された無欠陥の卓越したGe薄膜(0.5μm)が得られ、このことは、ガラス組成内のアルカリイオンの存在は必ずしも必要としないことの証明である。
【0060】
本発明の精神および範囲から離れることなしに種々の変形、変更が可能なことは、当業者には明らかであろう。したがって、本発明は、添付の請求項およびそれらの均等物の範囲内でなされる種々の変形、変更をもカバーすることを意図するものである。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の一つまたは複数の実施の形態によるGeOGデバイスの構造を示すブロック図
【図2】図1のGeOG構造を製造するために実行される工程ステップのフローチャート
【図3】図2の工程を用いて図1のGeOG構造を形成する工程を示すブロック図
【図4】図3の中間構造にガラス基板を接合する工程を示すブロック図
【図5】本発明の別の実施の形態によるGeOG構造の概略的断面図
【図6】図4に示された形式を有しかつ本発明により作製されたたGeOG構造のTOF二次イオン質量分析の深さ輪郭を示すグラフ
【符号の説明】
【0062】
100 GeOG構造
102,302 第1層(ゲルマニウム半導体層)
104,304 第2層(ガラスまたはガラスセラミック基板)
120 ゲルマニウム半導体
122 剥離層
300 ガラス上半導体構造
306,308 ゲルマニウム半導体材料
310,314 ガラスまたはガラスセラミック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直接的に、あるいは1層または複数層の中間層を介して、互いに接合される第1層および第2層を備えた絶縁体上半導体構造において、
前記第1層が、ゲルマニウムを含む実質的に単結晶の半導体材料を含み、
前記第2層が、前記第1層のゲルマニウムの線熱膨張係数の±20×10−7/℃の範囲内の線熱膨張係数(25〜300℃)を有するガラスまたはガラスセラミックを含むことを特徴とする絶縁体上半導体構造。
【請求項2】
前記ガラスまたはガラスセラミックが、50〜70×10−7/℃の範囲内の線熱膨張係数(25〜300℃)を有することを特徴とする請求項1記載の絶縁体上半導体構造。
【請求項3】
前記ガラスまたはガラスセラミックが、61×10−7/℃の線熱膨張係数(25〜300℃)を有することを特徴とする請求項1記載の絶縁体上半導体構造。
【請求項4】
前記ガラスまたはガラスセラミックが、700℃以上の歪み点を有することを特徴とする請求項1記載の絶縁体上半導体構造。
【請求項5】
前記ガラスが、重量%で計算してかつ酸化物基準のバッチから計算して、15〜45%のSiO、7.5〜15%のAl、15〜45%のMgO+CaO+SrO+BaOおよび55%までのREを含む組成を有し、REが、Sc,Y,La,Ce,Pr,Nd,Sm,Eu,Gd、Tb,Dy、Ho,Er,Tm、Yb,Luからなる希土類元素群およびそれらの混合体から選ばれたものであることを特徴とする請求項1記載の絶縁体上半導体構造。
【請求項6】
前記ガラスが、重量%で計算してかつ酸化物基準のバッチから計算して、45〜70%のSiO、2.5〜30%のAl、0〜8%のB、2.5〜30%のMgO+CaO+SrO+BaO、および1〜20%のLa+Yを含む組成を有することを特徴とする請求項1記載の絶縁体上半導体構造。
【請求項7】
前記ガラスが、重量%で計算してかつ酸化物基準のバッチから計算して、55〜65%のSiO、10〜20%のAl、および15〜30%のMgO+CaO+SrO+BaOを含む組成を有することを特徴とする請求項1記載の絶縁体上半導体構造。
【請求項8】
前記ガラスセラミックが、重量%で計算してかつ酸化物基準のバッチから計算して、30〜55%のSiO、18〜28%のAl、8〜20%のZnO、0〜6%のMgO、0〜3%のCaO、0〜3%のSrO、0〜3%のBaO、0〜3%のKO、0〜15%のRbO+CsO、0〜10%のTiOおよび0〜10%のZrOを含む組成を有することを特徴とする請求項1記載の絶縁体上半導体構造。
【請求項9】
前記第1層と前記第2層との間の接合強度が少なくとも8J/mであることを特徴とする請求項1記載の絶縁体上半導体構造。
【請求項10】
前記絶縁体上半導体構造の少なくとも一部が、
ゲルマニウム半導体材料、
酸素含有量が高められたゲルマニウム半導体材料、
少なくとも一つの種類の陽イオンに関する陽イオン濃度が低下せしめられたガラスまたはガラスセラミック材料、
ガラスまたはガラスセラミック、
の順に並んでいることを特徴とする請求項1記載の絶縁体上半導体構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−528673(P2009−528673A)
【公表日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−549505(P2008−549505)
【出願日】平成18年12月22日(2006.12.22)
【国際出願番号】PCT/US2006/049272
【国際公開番号】WO2007/079077
【国際公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【出願人】(397068274)コーニング インコーポレイテッド (1,222)
【Fターム(参考)】