説明

ガラスの酸化状態を定量化する方法

本発明は、ガラス組成物内のFe(II)およびFe(III)のレベルを測定する方法と、測定されたFe(II)およびFe(III)のレベルを用いて、ガラス材料の関連する酸化状態を決定する方法と、Fe(II)およびFe(III)の測定値に基づき、ガラス材料の品質に関する決定をさらに行う方法とを提供する。さらに、これらの方法は、時間と手間を低減して、超微細/超薄ガラスの確実な品質を決定するために提供される。

【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本出願は、その内容が参照により本明細書に援用される2003年6月24日に出願された米国特許出願第10/602,290号明細書の優先権の利益を主張する。
【技術分野】
【0002】
本発明は、一般に、ガラス内の鉄酸化物レベルを測定する方法、特に、ガラス内の鉄酸化物レベルを当該ガラスの酸化状態と相関させる方法と、ガラスの酸化状態をガラスの品質とさらに関連させる方法とに関する。
【背景技術】
【0003】
ガラス物品の製造コストの大きな負担の1つは、最終用途のガラス物品に欠陥が存在し続けることである。製造されたガラス物品におけるこれらの欠陥の存在は、ガラス物品を適用する際にガラス物品の適合性に影響を与えることがある。これらの欠陥は、本質的に固体(例えば非溶融原材料または他の耐熱性材料)、あるいは本質的に気体(例えば気泡または水泡)として分類することが可能である。これらのガラス物品の欠陥の除去を補助するために、ある化学成分が原材料混合物に使用される。これらの化学成分は清澄剤として知られており、またある範囲の多価酸化物材料および/またはハロゲン化物材料を含む。典型的な清澄剤は、例えば、特許文献1(バンゲ(Bange))および特許文献2(バンゲ(Bange))に記載されている。
【0004】
比較的新しくまた需要の多いガラスが使用されているものは、フラットパネルディスプレイ(FPD)用の基板である。この群のディスプレイでよく知られているものの1つは液晶ディスプレイ(LCD)である。LCDでは、各々の厚さが1mm程度の2枚のガラスシートは、3〜5μmの薄い液晶材料層を囲む。液晶材料は、複屈折の特性(結晶方位に依存する屈折率)を有し、かつ電界の印加によって結晶方位を変える能力を有するある範囲の有機材料を含む。偏光フィルムをこのガラス、すなわち液晶ガラス「セル」の外側に適用することによって、電圧制御弁を形成し得る。ディスプレイに本当に必要な画素化は、液晶の小領域全体のみに必要な電圧を印加することによって行われる。この画素化は、固有に行うか(パッシブマトリックス液晶ディスプレイ)、または薄膜トランジスタ(TFT)を各画素位置に形成することによって積極的に行うことができる(アクティブマトリックス液晶ディスプレイ(AMLCD))。次に、外部光源を付加することにより、ディスプレイが完成する。
【0005】
ガラス基板の光透過特性は、これらのFPDの光学性能に、特にAMLCDの光学性能に直接影響を与える。画素サイズ程度のガラスの欠陥は、当該画素を通した光透過を妨害し、またディスプレイの視聴者/ユーザがすぐに分かるようなディスプレイの光学的欠陥を生じることがある。ディスプレイサイズおよびディスプレイ解像度の両方が増加することによって、より小さな包有物を有するより大きなガラス片を供給する必要があるために、ガラス製造業者に対して出される要求も増加することになる。AMLCDに使用されるガラス基板に関する典型的な要求は、ガラスが、約1m×1mのガラス領域内に約50μmよりも大きな包有物を含んではいけないことである。
【0006】
ガラス基板のこのような高い品質レベルを達成するために、ガラス製造工程全体にわたって、非常に厳密な制御を行わなければならない。固体包有物の発生を最小限に抑えるために、原材料、溶融システム、および作業にわたる厳密な制御を維持しなければならない。気体包有物については、追加の制御レベル、すなわち、清澄剤の効率に応じた特定の量のおよび特定の種類の1つまたは複数の清澄剤の添加が、製造工程に組み込まれている。今説明した大部分の制御は、標準的な操作制御によってリアルタイムで制御できるが、その一方で、清澄剤の効率が問題となることが判明されている。多価酸化物(例えば、As、Sb、SnO、CeO、Fe)をベースとする清澄剤パッケージでは、効率は酸化物の酸化状態に関連する。
【0007】
ガラスの酸化状態は、ほとんどの製造ガラスに混入成分として存在する鉄イオンFe(II)およびFe(III)の相対量が反映されるように予め決定されている。あいにく、ガラス内の鉄の酸化状態を決定するための既存の技術は、費用がかかりまた時間もかかる化学的分析、例えば、原子吸収分光法(AAS)または電子常磁性共鳴(EPR)を必要とするか、あるいは時間的にはるかに速いが一貫しないことが多いのでそれほど正確でない分光写真法(2つの波長、例えば、300〜400nmと1000〜1200nmに集中してガラス特性を監視する方法)を必要とする。したがって、フィードバック時間は遅くなり、および/またはフィードバック情報の品質は、ガラスに携わる技術者、または工程に携わるエンジニアに信頼されるものではないので、ガラス溶融工程内に補正動作を行うことが困難になる。
【特許文献1】米国特許第5,824,127号明細書
【特許文献2】米国特許第6,128,924号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
結果として、鉄イオンレベルを正確に追跡できるようにすること、これによって、製造されたガラス材料の酸化状態を正確に追跡できるようにすることが当業界において必要となる。このことは、極めて需要の多いFPD市場に出回っているガラス物品に特に当てはまる。また、許容できないガラス製品の製造および出荷を回避するために、速くて効率的で正確な方法が当業界において必要であり、またこの方法が適切ならば、補正動作を行うのにかかる時間を最小限に抑えるために、ガラスが製造される現場において諸条件の決定を行うことも必要である。この背景に対して、本発明が開発された。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、一般に、ガラス材料内のFe(II)およびFe(III)の分光検出に関する。検出された鉄レベルは、ガラスの品質と一致するガラスの相対酸化状態を提供する。
【0010】
本発明は、UV−Vis−分光法を用いてFe(II)およびFe(III)の量を測定するための正確で高感度な方法を提供する。透過測定値は減衰係数に変換されて、Fe(II)およびFe(III)の既知の濃度値を有するガラス試料で実行された透過測定値と比較される。Fe(II)およびFe(III)の相対濃度値が決定され、またガラス材料の相対酸化状態に変換される。本発明の方法は、ガラス材料内の他の金属イオンレベル、例えばマンガンイオンレベルを測定して定量化するために、またこれらの測定値をガラスの品質にさらに関連させるために用いることもできる。本発明の好ましい実施形態は、スペクトル曲線全体(〜350〜1400nm)を用いて、Fe(II)およびFe(III)のレベルを測定し、これによって、ガラス試料でなされる測定の分解能および感度が向上させられることに留意されたい。
【0011】
ガラス試料内の鉄イオンレベルまたは酸化状態を測定するための既存の化学的分析方法と比較して、本発明は、それほど時間がかからず、それほど労働集約的でもなく、また一貫した正確な信頼性の高い結果を提供する。これらの結果は、結果を得るのに数日を要する化学的分析方法と比較して数時間で得られることが多い。
【0012】
他の態様では、本発明は、ガラス材料をエンドユーザに出荷する前にガラス材料の品質を決定する方法を含む。この方法は、ガラス材料の酸化状態閾値を設定するステップを含み、この閾値を超えるガラス材料はエンドユーザに出荷されない。本発明の方法は、ガラス材料の特定の最終用途に対応するガラス内の酸化状態の標準レベルを設けるステップを含むことができる。したがって、特定の最終用途、例えばLCDの用途のために、特定の酸化状態を有するガラスを最大限に使用することが可能である。
【0013】
本発明の他の態様では、本発明の方法は、ガラス材料内に溶解した水を分光測定して、ガラス材料品質の指標を設けるステップを含む。ガラス材料内に溶解した分光学的に決定された水分含有量と、ガラス材料の分光学的に決定された酸化状態とを組み合わせて、ガラス材料の品質に関するさらなる信頼性を提供することができる。
【0014】
本発明の他の態様では、本発明の方法は、ガラス材料の品質を最適化するために必要なある種類のおよびある量の清澄剤を設ける。特に、特定のガラス材料組成物と共に使用するために、本発明の方法を用いて、許容可能な清澄剤およびその酸化状態を特定することができる。本発明の方法を用いてガラス組成物の製造で最適化できる他の潜在的なパラメータは、ガラス製造工程中の温度変化、製造工程中にガラス組成物に添加される硝酸カリウムの濃度、および同様の他のパラメータを含む。
【0015】
他の態様では、超純粋/超微細ガラスシートの酸化状態を決定する際に用いるための本発明の方法が変更される。本発明の方法は、超純粋/超微細ガラス試料を通した光透過を正確に測定するステップと、上述のように、分光測定を、それにガラスシートの相対的品質と関連させるステップとを含む。
【0016】
本発明の追加の特徴および利点は、以下の詳細な説明に記載されており、また部分的には、本発明の追加の特徴および利点について、当業者は、当該説明から容易に理解できるか、あるいは以下の詳細な説明と特許請求の範囲と添付図面とを含む本明細書に説明したような本発明を実施することによって認識するであろう。
【0017】
上述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方が、本発明の実施形態を提供しており、また特許請求されているような本発明の特性および特徴を理解するための概要または枠組みを提供するように意図されていることを理解されたい。添付図面は、本発明をさらに理解するために含まれ、また本明細書に組み込まれてその一部を構成している。添付図面は、本発明の種々の実施形態を示しており、また本発明の原理および実施を説明するために、詳細な説明と共に用いられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
次に、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
【0019】
概して、本発明の実施形態は、ガラス材料内のFeOおよびFeレベルを測定するために、特に、LCD装置およびAMLCD装置にとりわけ有用である超純粋/超微細ガラス材料(典型的にはガラスシート材料)内のFeOおよびFeレベルを測定するために、信頼性および感受性が極めて高い方法を提供することを目的とする。さらに、本発明の方法は、ガラス材料内の測定されたFeOおよびFeレベルをそのガラス材料の酸化状態に変換するステップを提供する。本発明の方法は、非分光手段と比較して、感受性が高く、正確であり、比較的迅速であり、また他の従来の分光手段の品質よりも優れた特定のガラス試料の品質に関する信頼性の高い指標を提供する。
【0020】
本発明の方法は、酸素分圧がガラスの最終組成物に関連するすべてとは言わないがほとんどのタイプのガラスに適用できることに留意されたい。このように、本発明の方法は、フラットパネル表示装置に使用される超純粋/超微細ガラスのほとんどに適用でき、このガラスの場合、最終製品内の酸素分圧は、ガラス内の水泡の数に直接相関している。しかし、本発明の方法は、光を透過する任意のガラス材料に適用できることが考えられる。
【0021】
ガラス材料内の酸素濃度または酸素分圧は、特定のガラス製品の品質に強く相関している。例えば、許容できない程度に高い酸素分圧を有するガラス材料は、水泡を含むことが多く、またエンドユーザ、すなわち、フラットパネル表示装置の製造業者にとっては利用価値がない。
【0022】
本発明の実施形態では、ガラス材料内の酸素レベルには、ガラス材料内に存在するFe(II)およびFe(III)の相対量、特に、ガラス材料内のFe(III)対Fe(II)の比率が反映される。ガラス内の鉄イオン濃度を正確に測定することにより、ガラスの酸化状態、したがってガラスの品質の指標が確固たるものとなる(以下参照)。したがって、本発明によれば、本発明の実施形態は、概して、ガラス材料内の鉄濃度、したがって酸素濃度を高感度で正確に検出するための分光法に関する。特定のガラス材料が特定の用途のために製造されるときに、その特定のガラス材料の品質を決定するために、本発明の方法は、より費用効果的であり、便利であり、また信頼性の高い方法である。本発明は、ガラス材料内の清澄剤の量および種類を最適化するために、さらに、ガラス材料内の任意の目標組成パラメータを最適化するために、ガラスの酸化状態の測定を手段として使用する方法も提供する。
【0023】
本発明の一実施形態によれば、ガラス材料内の酸化状態を測定する方法が提供される。この方法は、製造されたガラス材料から、代表とするガラス試料を獲得するステップと、UV−Vis−分光光度計を使用して、所定の波長間隔で、例えば10nm間隔で、約200nmから3000nmまで、より好ましくは300nmから1400nmまで、ガラス試料の透過を測定するステップと、測定された波長毎に、透過データを減衰データに変換するステップと、波長毎に減衰係数を表にするステップと、減衰係数データから鉄イオン濃度を計算するステップと、鉄イオン濃度を、ガラス試料内の相対的な酸素分圧に変換するステップとを有してなる。この方法は、関連する波長数にわたる統計的に大きな数を読み取って、一連の正確な減衰係数を求めることに基づいている。
【0024】
本発明の実施形態によれば、標準曲線のフローダイアグラムは、既知の鉄イオンレベルを有する一連のガラス組成物から作成される。標準曲線は、関連する一連の波長で既知の鉄濃度毎に減衰係数を測定し、次に、その減衰係数を用いて、未知の鉄イオンレベルを有するガラス試料内の鉄イオンレベルを決定するプロットを示している。
【0025】
第1のステップでは、関連技術でよく知られているように、一連のガラス試験組成物が定式化されて調製される。既知でありまた段階的に変更されるFe(II)およびFe(III)の量、例えば、250ppm、500ppm、および1500ppmを有する各試験組成物が調製される。既知の化学的分析手順を用いて、各試料で保持される各鉄イオン量の精度がチェックされ、例えば、原子吸収分光法(AAS)を用いて、鉄イオンの合計量を決定できる。所定の各鉄イオン量を有する各ガラス材料の1つまたは複数の試料は、ガラス組成物から採取されて、透過実験のために調製される。試料は、ガラス組成物を冷却して、最終用途のために完成した状態になった後に獲得される。一実施形態では、透過実験に使用するためのガラス試料は、入力光の波長が、試料によって受光されたときに正確な光透過を行うような厚さおよび幅になっている。好ましい実施形態では、ガラス試料は、厚さが1〜2cm、直径が約2.5〜5cm(1〜2インチ)である。ガラス材料の試料の中心に孔を開けることができ、またその試料を好ましくは約3〜10mmの厚さに研磨できる。他のガラス試料の寸法は本発明の範囲内にあることが考えられる。
【0026】
透過曲線は、既知の鉄イオン濃度を有する各試料から作成される。透過曲線の作成に用いられる光の波長範囲は、典型的に約200〜3000nm、より好ましくは300〜1400nmである。典型的に、すべての波長において、より好ましくは5nm間隔、最も好ましくは10nm間隔で、測定が行われる。透過曲線が少なくとも3個のデータ点を有する限り、他の波長間隔を用いることができる。約1110nmの広範囲の吸収帯は、試料内に存在するFe(II)の量を示しており、これに対し、UV遮断位置は、試料内に存在するFe(III)の量を示している。このことについては、P.S.ダニエルソン(P.S.Danielson)とJ.W.H.シロイアーズ(J.W.H.Schreurs)とによってノースホーランド出版(North−Holland Publishing Company)から1980年に発表された非晶質固体に関する刊行物「アルカリ土類アルミノシリケートガラス内における鉄の光吸収およびEPR吸収」(Optical and EPR Absorption of Iron in Alkaline Earth Aluminosilicate Glasses)の第38号と第39号の177〜182ページを参照されたい。
【0027】
各試料に関する透過データ、例えば350nmから1400nmまでの透過データは、10nm間隔で測定された波長毎に減衰データに変換されて、異なる106個の減衰データ点を提供する。透過データから減衰データへの変換は関連技術でよく知られている。要約すると、
T(λ)=100(1−R)−e(λ)t (式1)
が用いられ、式中、量100(1−R)は91.59である(基準指数は1.523に等しい)。減衰係数(ελ)は、鉄イオンの重量パーセントの一次関数として近似され、この結果、
ελ=鉄イオンの一次関数=m2λFe(II)+ m3λFe(III) (式2)
となる。各ガラス組成物内の既知の鉄濃度値を用いて、その値の合計と適切な係数とを乗算することによって、波長毎に計算された減衰係数が決定される(さらなる詳細については以下の実施例を参照)。次に、計算された当該減衰係数を用いて、試験された波長、例えば350nmから1400nmまでの標準透過曲線を計算する。
【0028】
上に記載されているステップを拡張して、試料の透過データから未知の鉄イオン濃度値を決定することができる。試料は、未知の鉄イオン濃度値を有するガラス組成物から採取され、例えば、試料は、表示装置に使用される一群のガラス材料から採取される。上述のように、試料は、正確な透過データを裏付けるのに十分な厚さおよび幅である。透過曲線は、ある波長範囲で、例えば350nmから1400nmまで測定され、また上述の(式1)を用いて、減衰曲線に変換される。測定された各減衰係数は波長毎に表にされる。次に、標準化された、すなわち、既知の1つ以上の鉄イオン濃度曲線からのデータは、未知の鉄イオン濃度曲線のために測定された曲線から減算される。2つの曲線の間の差は「残差値」を示している。残差値は二乗され、次に、「二乗和」と称される単数に合計される。次に、逐次反復法をデータに実行して、「最小二乗和」を与えるFe(II)およびFe(III)の濃度値を求める。この最後のステップは、典型的に、数値目標に向かって逐次反復法を行うプログラム、例えば、エクセルのソルバープログラム、または同様の他のプログラムによって実行される。したがって、ガラス材料の鉄イオン濃度値は、当該試料の透過データから展開される。
【0029】
上述の手順から計算された減衰曲線成分のグラフが図1に示されている。実線は、Fe(II)およびFe(III)の既知の濃度値を有する試料のために測定された減衰曲線である。一点破線は、ソルバープログラムから計算されたFe(II)およびFe(III)の濃度値から計算された減衰曲線である。他の2つの減衰曲線は、Fe(II)およびFe(III)の濃度値の入力から得られる2つの破線成分である。破線と実線との間の差は残差値を示している。
【0030】
本発明の好ましい実施形態では、Fe(II)およびFe(III)の未知の濃度値を有するガラス材料は、超微細/超純粋ガラス、例えば、コーニング社(Corning Incorporated)のコード1737ガラスおよびコードEagle2000(商標)ガラスである。超微細/超純粋ガラスは薄いシートに製造され、典型的に、透過データを得るのに十分な厚さではないので、光透過の研究のために、試料を調製しなければならない。製造された超微細/超純粋ガラスシートには、約1インチ平方の切れ目が入れられる。ガラスシートの各平方は、洗剤溶液の脱イオン水を用いて洗浄され、引き続き、すすぎ洗いして空気乾燥される。洗浄はクラス1000のクリーンルームで行われる。洗浄された1インチ平方のガラスは、厚さ約1cmの積層体になるように積層される(厚さ約0.7mmのシートが約14枚積層される)。各積層体は、クランプを用いて結合させられる。積層体のエッジには、透過試験中に入力光を受光するための平坦なエッジまたは側面を形成する必要がある。この処置により、ガラスシートが互いに光学的に接触することが保証され、これにより、UV−Vis−分光光度計を使用して測定する場合の光散乱が最小になる。このようにして、関連する波長範囲にわたってガラスの光透過を単に測定し、また上述のようなステップを実行することによって、超純粋/超微細ガラスの鉄イオン濃度を決定できる。このことは、ガラスを製造した直後に、エンドユーザ、例えばLCDの製造業者に出荷するためのガラスを調製して、鉄レベルの測定を行おうとする場合に特に重要である。
【0031】
上述の方法を用いて、ガラス材料内の他の金属イオン量を決定することもできる。例えば、マンガン濃度が上昇するにつれて大きくなる約430nmの吸収ピークが展開した場合に、上述の方法を用いて、試料内のマンガン濃度を決定できる。
【0032】
以下の熱力学的考慮を用いて、未知のガラス材料の試料について分光測定された鉄イオン濃度または他の金属イオン濃度を、相対酸素分圧に変換できる。一般に、次式の平衡定数を用いることによって、ガラス材料内の鉄レベルと相対的な酸素濃度の測定値を計算できる。
【0033】
2Fe=4FeO+O (式3)
Keq=[FeO]4*[O]/[Fe (式4)
ガラス製造中に用いられる標準温度、すなわち1400℃にすることにより、平衡定数は5.51×10−6に低下する。このようにして、酸素分圧については、次のように上式を解くことができる。
pO=Keq[Fe/[FeO] (式5)
log(pO)=log(Keq)+log([Fe/[FeO]) (式6)
log(pO)=log([Fe/[FeO])−5.26 (式7)
【0034】
本実施形態のために、鉄酸化物の「活性」よりもむしろ鉄酸化物の「濃度」が(式7)に用いられていることに留意されたい。ガラス材料内の鉄酸化物はヘンリーの法則におそらく従っているので、モル濃度は、ヘンリーの法則による活性係数に従って活性に関連する。すなわち、(式7)は鉄酸化物の活性の近似値を表しており、実際の濃度ではない。
【0035】
したがって、本発明の一実施形態では、ガラス試料内の相対酸素分圧は、2つの鉄酸化物の分光測定されたモル濃度を(式7)に当てはめることによって決定される。このことは、正確な数値を提供することを意図するものではなく、他の製品タイプのガラス材料に関連する試料、および既知の酸素レベルを有する標準試料が、ガラス材料の最終用途のために許容可能な酸素レベルを有しているかどうかに関する相対的な基準を提供することを意図している。この基準は、ガラスの品質、すなわちガラス内の水泡の数が、水泡の数を計数するための標準的な品質管理方法を用いて決定された場合に、また本発明の方法を用いて決定されているような相対酸素分圧に関連した場合に、ある程度経験的に決定される。
【0036】
最後に、ガラス組成物内のパラメータが変更または修正されるときに、上述の方法を用いて、相対酸素分圧を分光学的に追跡でき、これによって、変更されたパラメータが、ガラス材料内の酸素レベルに対して正または負の効果を有しているかどうかが示される。例えば、異なる種類のおよび異なる酸化状態の清澄剤が、ガラス材料内の酸素を低減または掃気する能力について、それらの清澄剤の有効性を追跡できる。一実施形態では、量、酸化状態、および添加のタイミングを変更することによって、清澄剤としてのアンチモンまたはヒ素の有効性を追跡して最適化することができる。他の実施形態では、ガラス内の酸素分圧に対する溶融温度効果は、本発明の分光法を用いて追跡される。ガラス組成物の製造に関連する個々のパラメータを追跡する能力により、最終用途のために、ガラス材料の最終製品における品質およびコストの両方を最適化することが可能になる。
【0037】
最後に、鉄イオンレベルが分光法を用いて決定されるのとは独立してまたはそれと同時に、赤外(IR)透過曲線を作成して、ガラス材料内に溶解した水分含有量を決定することができる。試料内に溶解した水分含有量の測定は、目標ガラス材料内の相対酸素レベルとは独立した指標を提供する(溶解した水の量が大きくなると、ガラス材料内に気泡として遊離している可能性がある酸素の量がそれだけ大きくなる)。
【0038】
ガラス材料内に溶解した水は、約3800〜3100cm−1の吸収領域を有する。ガラス試料に関する相対的なヒドロキシル基線形濃度係数(βOH)が、次式を用いて計算される。
【0039】
βOH=x−llog(T3845/T3570) (式8)
式中、厚さxmmの試料において、T3845は、3845cm−1の透過(非OH吸収領域)を指し、またT3570は、3570cm−1の透過(OHピーク透過)を指す。
【0040】
本発明の他の実施形態で説明したように、鉄イオン濃度の決定に関連してまたはそれとは独立して、溶解した水の量の決定を実行できる。溶解した水の量の決定は、可能なガラス材料の品質の第2の指標を提供する。いくつかの実施形態では、マトリックスガラスの品質は、品質指標としてのガラス組成物のOレベルおよび水レベルを用いて作成される。
【実施例】
【0041】
本発明は、以下の実施例によってさらに明確にされるが、これらの実施例は、例示的なものであり、また本発明を限定することを意図するものではない。
【0042】
実施例1
既知の組成物を有する実験用溶融ガラスの調製
実験計画:既知の複数の試験変量を有する一連の実験用溶融ガラスを定式化した。ボロアルミノシリケートガラス、すなわち、ほとんどのAMLCD装置に使用されるガラスを、独立した試験変量の各々を付加するための基板として使用した。2つのベースタイプのボロアルミノシリケートガラス、すなわち、コーニング社のコード1737、およびコーニング社のコードEagle2000(商標)を実験に使用した。関連技術でよく知られているように、ガラスをヒ素(F)またはアンチモン(G)で清澄した。試験変量は以下のようなものである。
【0043】
−MnO(0、0.5、または1.0重量%のMnO
−FeO(250、750、または1500重量百万分率(PPM)のFe
−ガラスタイプ(コーニング社のコード1737F、コード1737G、コードEagle2000(商標)F、またはコードEagle2000(商標)G)
−酸化状態(低い酸化状態(炭素)、中間の酸化状態(何も無し)、高い酸化状態(硝酸バリウム、硝酸ストロンチウム、または硝酸アンモニウム)(0または2重量%のNO))
要因計画を反復してランダムに選択された63個の溶融ガラスを調製して、コード1737Fおよびコード1737Gベースのガラスを研究し、また18個の溶融ガラスを使用して、コードEagle2000(商標)FおよびコードEagle2000(商標)Gベースのガラスを研究した。表1に示したように、各溶融ガラスは、以下のような符号を用いて符号化されている。
【0044】
−第1の符号(L、M、H)は、低い、中間の、または高い酸素状態のMnOを意味する。
【0045】
−第2の符号(L、M、H)は、低い、中間の、または高い酸素状態のFeを意味する。
【0046】
−第3の符号はガラスタイプを意味する。コード1737「F」ベースのガラスは、ヒ素で清澄されていることを意味し、またコード1737「G」ベースのガラスは、アンチモンで清澄されていることを意味するか、あるいはコードEagle2000(商標)「A」ベースのガラスはAsを意味し、またコードEagle2000(商標)「S」ベースのガラスはSbを意味する。
【0047】
−第4の符号(L、M、H)は、低い酸化状態(炭素)、中間の酸化状態(何も無し)、または高い酸化状態(硝酸カリウム)を意味する。
【0048】
溶融ガラスの調製:各々の実験用溶融ガラス配合物を、500ccの白金坩堝内において1650℃で6時間溶融し、またVycor(登録商標)ブランドガラスロッドで攪拌して、交差汚染を回避した。各溶融ガラスを、厚さ1cm超のパティに「光学的に」流出させて、725℃で焼鈍した。ガラスパティをアニーラで一晩冷却した。各ガラスパティの直径1.5インチの4枚のディスクの中心に孔を開け、その内の2枚のディスクを10mmの厚さに研磨し、また残りの2枚のディスクを3mmの厚さに研磨した。
【0049】
原子吸収分光法(AAS)を用いて鉄イオンの合計量について、AASを用いてマンガンイオンの合計量について、また2つの形態のプラズマ分光法、すなわちICPとDCPとを用いてAsおよびSbの量について、各ガラスパティを化学的に分析した。電子常磁性共鳴(EPR)(Fe(+3))と比色分析(Fe(+2))とを用いて、鉄の酸化状態、すなわちFe(+3)とFe(+2)Oとを決定した。マンガンを添加することなく、ガラスパティ、すなわち、20個のコード1737シリーズおよび18個のコードEagle2000(商標)シリーズに関する鉄の酸化状態を分析しただけであることに留意されたい。
【0050】
結果:これらの結果は、鉄イオンの合計量、マンガンイオンの合計量、Asの量、およびSbの量に関する既知の値、すなわち測定値を有する一連の81個の実験用溶融ガラスを別の試験のために調製したことを示している。次に、透過測定をこれらの実験用溶融ガラスの各々で実行した。次に、これらの実験用溶融ガラスをUV−Vis−NIR分光光度計を用いて分析して、各溶融ガラスの透過測定値を得た。
【表1−1】

【表1−2】

【表1−3】

実施例2
実験用溶融ガラスの透過データによる鉄イオンおよびマンガンイオンの正確な合計レベルの提供
実験計画:実施例1で説明した一連の実験用ガラス試料を使用して、各ガラス試料内の鉄イオンの合計レベルを試料の透過曲線と相関させた。次に、当該データを用いて、コーニング社のコード1737ガラスおよびコードEagle2000(商標)ガラス内のFeOおよびFeレベルを計算するために用いられるモデルを展開した。
【0051】
透過測定:3mmの厚さと10mmの厚さとに研磨されたディスクを使用して、実験用溶融ガラスの透過測定を実行した(3mmの厚さと10mmの厚さとに研磨された2枚のディスクから、最小量の脈理および種を含むどちらかのディスクを選択して、測定のために使用した)。厚さ10mmのディスクを使用し、またUV−Vis−NIR分光光度計を使用して、200nmから1400nmまでの透過曲線を得た。約1110nmの広範囲の吸収帯は、各ガラス試料内に存在するFe(+2)の量を示しており、またUV遮断位置は、各ガラス試料内に存在するFe(+3)の量を示している。マンガン含有のガラス試料では、マンガン濃度が上昇するにつれて大きくなる約430nmの吸収ピークが展開する。
【0052】
3mmの厚さに研磨されたディスクを使用し、またフーリエ変換赤外分光計(FTIR)を使用して、溶解した水の吸収領域(3800〜3100cm−1)を含む赤外(IR)透過曲線を得た。各ガラス試料に関する相対的なヒドロキシル基線形濃度係数(別名βOH)を、次式を用いて計算した。
【0053】
βOH=x−llog(T3845/T3570
式中、厚さxmmの試料において、T3845は、3845cm−1の透過(非OH吸収領域)を指し、またT3570は、3570cm−1の透過(OHピーク透過)を指している。
【0054】
鉄含有量が少ない一連の製品ガラスについても、UV−Vis−NIR分光光度計を使用して、透過測定を実行したことに留意されたい。これらの試料、すなわち、溶融製品ガラスシートを洗浄し、また光路長を長くするための手段として、1インチ平方、厚さ0.7mmのガラスシートを積層して、エッジ照明によりそのガラスシートを測定し、Fe(II)およびFe(III)の測定可能な光吸収を得た(以下参照)。
【0055】
上述の詳細な方法から得られた各試料に関する透過データを、106個の異なる波長(350nmから1400nmまでの波長において10nm間隔)における減衰データに変換した。用いられた式は次の式である。
【0056】
T(λ)=100(1−R)−e(λ)t
式中、量100(1−R)は91.59である(基準指数=1.523)。データが減衰曲線としてプロットされている。
【0057】
減衰係数(ελ)は、着色イオンの重量パーセントの一次関数として推定され、すなわち、
ελ=着色イオンの一次関数=m2λFe(II)+m3λFe(III)
となる。したがって、試験されたすべてのガラスは106個の減衰係数を有しており、またFe(III)およびFe(II)の濃度値についても、20個のガラス試料を分析してきた。すなわち、106組の回帰係数m2λとm3λを、異なる106個の複数の回帰分析によって計算した。各回帰は、裏付けのために、20個の観測値(Fe(II)およびFe(III)の20組の濃度値)を有した。Fe(II)およびFe(III)の濃度値の合計と適切な係数とを乗算することにより、波長毎に計算された減衰係数が得られる(上述のελの式)。次に、減衰係数を用いて、350nmから1400nmまで10nm間隔で透過曲線を計算することができる。
【0058】
透過データから鉄濃度値を計算するためのモデル:測定された透過曲線は減衰曲線に変換される。測定された減衰係数は波長毎に表にされる。試算される減衰曲線は、Fe(II)およびFe(III)の公称濃度値を用いて計算される。試算された減衰曲線は、測定された曲線から減算される。測定された透過曲線と、試算された減衰曲線との間の差は「残差値」と称される。残差値は二乗され、次に、「二乗和}と称される単数に合計される。Excel(登録商標)の「Solver」、または同様の他のソフトウェアを用いて、最小「二乗和」の結果を与えるFe(II)およびFe(III)の濃度値を計算するように、逐次反復法が行われる。
【0059】
結果:図1を参照すると、減衰曲線成分のグラフが示されている。実線は、実験用ガラス試料(LMGM)の1つのために測定された減衰曲線である。一点破線は、Solverから結果として得られたFe(II)およびFe(III)の濃度値から計算された減衰曲線を示している。他の2つの減衰曲線は、Fe(II)およびFe(III)の濃度値の入力から得られる2つの破線成分である。破線と実線との間の差は残差値を表している。この残差値データは、透過データから鉄濃度値を計算するためのモデルがどの程度近づいているかを示している。図2は、モデルが、実験用ガラス試料内の鉄イオン濃度の予測にどの程度近づいているかをさらに示している。Solverから計算された鉄濃度値は、実験用ガラス試料毎の測定値に対してプロットされていることに留意されたい。測定値は、Fe(II)の比色分析、Fe(III)のEPR、およびFe(鉄イオンの合計量)のAASによるものであることに留意されたい。Solverから計算された鉄イオンの合計量は、Feとして各々が表されるFe(II)とFe(III)との和である。
【0060】
実施例3
ガラス試料の鉄酸化物の比率による当該試料の酸素分圧の指標
実験計画:実施例2で決定したような鉄イオン濃度は、FeOおよびFeの濃度比(モル比)に変換して、ガラス試料内の酸素レベルの指標として用いることができる。
【0061】
平衡定数:酸素の測定値は、次式の適切な平衡定数を用いることによって計算される。
【0062】
2Fe=4FeO+O
Keq=[FeO]4*[O]/[Fe
平衡定数を用いて酸素の測定値を決定する際に用いるためのやや独断的であるが、関連する温度として、1400℃を選択した。
【0063】
Keq=5.51×10−6(1400℃)
したがって、次式のような両側の対数を解いて、酸素分圧が得られる。
【0064】
PO=(Keq)[Fe/[FeO]
Log(PO)=Log[Keq]+Log([Fe/[FeO])=Log([Fe/[FeO])−5.26
このようにして、任意のガラス試料に関する酸素分圧の測定値は、2つの鉄酸化物のモル濃度を上式の最後の式に置き換えることによって得られる。平衡式は、反応物の「濃度」ではなく、反応物の活性を用いていることが理解される。ラウオルトの法則に従う(活性が濃度に等しい)濃溶液では、モル比は、活性の優れた尺度である。しかし、希溶液はヘンリーの法則に従う(活性が濃度に比例する)可能性が高くなる。ヘンリーの法則による溶液では、活性は、ある定数、すなわち、ヘンリーの法則による活性係数に従ってモル濃度に関連する。すなわち、上式は、モル濃度を用いることによって活性に近似するが、正確な酸素分圧を提供しない。これらの近似により、鉄酸化物濃度が変化することによって酸素分圧も変化することが理解される。
【0065】
ガラス試料内の清澄剤の+5/+3の比率の指標としても、鉄酸化物濃度の比率を用いることができることにも留意されたい。例えば、次式のようになる。
【0066】
2Fe=4FeO+O
Keq=[FeO]4*[O]/[Fe=5.51×10−6(1400℃において)
またアンチモンおよびヒ素を考慮すると、次式のようになる。
【0067】
Sb+O=Sb
Keq=[Sb]/([Sb[O]=6.36×10−6(1400℃において)
As+O=As
Keq=[As]/([As[O]=9.58×10−5(1400℃において)
これらの4つの最後の平衡式のいずれかと、その上に記載の2つの鉄濃度の平衡式のいずれかとを組み合わせると、次式のようになる。
【0068】
[Sb]/[Sb]=(6.36×10−6(5.5110−6)×[Fe/FeO]
[Sb]/[Sb]=3.5×10−11×[Fe/[FeO]
[As]/[As]=53×10−11×[Fe/[FeO]
実施例1の実験用ガラス(10mmの厚さに研磨された実験用ガラスディスク)と、実施例2の製品ガラス(厚さ0.7mm、1インチ平方の製品ガラス)とを、実施例2で説明したように鉄濃度について測定し、また上述のように、そのデータをFeOおよびFeの濃度(モルppm)に変換した。
【0069】
結果:図3は、試験された各ガラス試料が、試料のFeおよびFeOの濃度に従ったグラフになっており、またFeのモルがFeOのモルに対してプロットされているグラフである。グラフの格子線は、合計のFe(重量ppm)を表している。各格子線は左上から右下に向かって走っている。鉄イオンの合計量が広範囲に及ぶように、実験用ガラスを計画してきたことに留意されたい。
【0070】
第2の組の格子線(酸素等圧線)は、原点から右へ上がっていき、鉄イオンの合計量の格子線に対しやや垂直に走っている2つの曲線の組である。これらの格子線は、FeO/Feの比率が変化したときに計算された酸素分圧の変化を示している。この酸素等圧格子線により、FeO/Fe比が変化すると、酸素分圧も変化すること、およびその変化が、相当な値であり、例えば大きい値であり得ることが理解される。したがって、グラフにおける格子線の位置は、鉄イオンの合計含有量(左下から右上に向かって増加する)、および相対酸化状態(左上に向かって酸化状態が高くなり、さらに右下に向かって酸化状態が低くなる)の両方を示している。
【0071】
図3の傾向:図3は、次のようなことを示している。
【0072】
(1).アンチモンで清澄されたコード1737「G」ベースのガラスのほとんどは、1気圧の等圧線のより低い酸素分圧側にあり、またヒ素で清澄されたコード1737「F」ベースのガラスのほとんどは、より高い酸素分圧領域にある。
【0073】
(2).ヒ素はガラス試料の酸化状態を左右していることが明らかであり、これに対し、アンチモンが、酸化状態に与える影響ははるかに小さい。
【0074】
(3).実験用ガラスの条件を変更することによって、FeO対Feの比率を修正できる。
【0075】
実施例4
製品ガラスの酸素レベルに関する分光学的な追跡の実行
実験計画:
ガラス組成物を調製して、製品ガラス寸法を有する薄い超微細/超純粋ガラスシートの形に成形した。シートに、1インチ平方の切れ目を入れて、そのシートを洗浄し、また厚さ1cmの積層体(約14枚のシート)になるように積層した。積層体をクランプを用いて結合した。分光測定および計算は、実施例1〜3に示したものと同様であった。
【0076】
結果:
これらのデータは、本発明の方法を用いて得られた一貫した有用なデータであることを示しており、その上、製品タイプのガラスに関して、本発明の有用性を示している。この方法は、バルクガラスまたは薄いシートのどちらで測定を行っても有効である。また、モデルは、広範囲の鉄濃度にわたって有効であることが理解できる。
【0077】
本発明の精神と範囲から逸脱することなく、種々の修正および変更を本発明になし得ることが当業者には明白であろう。したがって、本発明は、その修正および変更が、添付された特許請求の範囲とそれらの等価物に含まれるならば、本発明の修正および変更を網羅することが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明による減衰曲線成分のグラフである。
【図2】複数のガラス試料である本発明の実施形態を使用した場合と、またFe(II)とFe(III)とについて、それらのガラス試料を、化学的分析を用いて実際に測定した場合の信頼性の比較を示したグラフである。
【図3】各ガラス試料が、種々の鉄濃度(合計250ppm、合計750ppm、および合計1500ppmのFe)を有しており、またFeのモルがFeOのモルに対してプロットされているグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス材料内の酸素分圧を決定する方法であって、
FeOおよびFeの含有量を検出するために適切な複数の光の波長を用いて、前記ガラス材料の光透過を測定するステップと、
前記ガラス材料で実行された測定された各光透過を減衰係数に変換するステップと、
減衰係数データ全体を前記ガラス材料の[Fe/[FeO]の含有量の比率に変換するステップであって、前記[Fe/[FeO]の前記比率が、前記ガラス材料内の前記酸素分圧に比例しているステップと、
を有してなることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記ガラス材料の前記光透過を測定する前記ステップが、約350nmから1400nmまでの波長で3つ以上の間隔で行われることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ガラス材料の前記光透過を測定する前記ステップが、約350nmから1400nmまでの波長で10nm間隔で行われることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ガラス材料が超純粋/超微細ガラス材料であり、また前記方法が、前記超純粋/超微細ガラス材料の複数の薄いシートを積層して、前記光透過を測定するためのエッジを形成するステップをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記エッジの厚さが約1cmであることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
ガラス材料を製造するために、動作条件の変化を定量化する方法であって、
第1の組の動作条件を用いて、第1のガラス材料を調製するステップと、
350nmから1400nmまでの複数の波長を用いて、前記第1のガラス材料内の[Fe/[FeO]の比率を分光学的に決定するステップと、
前記第1のガラス材料内の前記[Fe/[FeO]の前記比率を、前記第1のガラス材料の関連する酸素分圧に変換するステップと、
第2の組の動作条件を用いて、第2のガラス材料を調製するステップと、
350nmから1400nmまでの複数の波長を用いて、前記第2のガラス材料内の[Fe/[FeO]の比率を分光学的に決定するステップと、
前記第2のガラス材料内の前記[Fe/[FeO]の前記比率を、前記第2のガラス材料の関連する酸素分圧に変換するステップと、
前記第1のガラス材料内の酸素分圧と前記第2のガラス材料内の酸素分圧とを比較するステップであって、該比較するステップが、前記第1の組または第2の組の動作条件を変更するための傾向を示すステップと、
を有してなることを特徴とする方法。
【請求項7】
前記動作条件が清澄剤の添加を含むことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
超純粋/超微細製品ガラスシート内の酸化状態を測定する方法であって、
前記製品ガラスから複数の製品ガラス試料を調製するステップと、
前記複数の製品ガラス試料を積層して、積層体の少なくとも1つの切断エッジを設けるステップと、
前記積層体の切断エッジを通してFeOおよびFeの含有量を検出するために適切な光の波長を照射することによって、前記積層された製品ガラス試料の光透過を測定するステップと、
前記製品ガラスで実行された測定された各光透過を減衰係数に変換するステップと、
減衰係数データ全体を前記製品ガラス材料の[Fe/[FeO]の含有量の比率に変換するステップであって、[Fe/[FeO]の前記比率が、前記超純粋/超微細製品ガラスシート内の前記酸化状態に比例しているステップと、
を有してなることを特徴とする方法。
【請求項9】
前記積層体の前記少なくとも1つの切断エッジの厚さが約1cmであることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記切断エッジが略平坦であることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記積層された製品ガラス試料の少なくとも1個の前記光透過が、約350nmから1400nmまでの波長で10nm間隔で測定されることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項12】
ガラス材料内の酸素分圧に基づき、前記ガラス材料を適切な用途に割り当てる方法であって、
200nmから3000nmまでの3つ以上の光の波長を用いて、前記ガラス材料の光透過を測定するステップと、
前記ガラス材料で実行された測定された各光透過を減衰係数に変換するステップと、
減衰係数データ全体を前記ガラス材料の[Fe/[FeO]の含有量の比率に変換するステップであって、[Fe/[FeO]の前記比率が、前記ガラス材料内の前記酸素分圧に比例しているステップと、
前記ガラス材料内の前記酸素分圧に基づき、前記ガラス材料を適切な用途に割り当てるステップであって、関連する酸素の上方閾値レベルを有するガラス材料のみを各用途に提供できるステップと、
を有してなることを特徴とする方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2007−528987(P2007−528987A)
【公表日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−517762(P2006−517762)
【出願日】平成16年6月23日(2004.6.23)
【国際出願番号】PCT/US2004/020831
【国際公開番号】WO2005/003741
【国際公開日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【出願人】(505333931)コーニング インコーポレイテッド (5)
【氏名又は名称原語表記】CORNING INCORPORATED
【Fターム(参考)】