説明

ガラスを保護するためのガラス組成物およびその製造方法と使用方法

ここに開示された主題は、広く、ガラスを保護するためのガラス組成物およびその組成物の製造方法と使用方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の説明】
【0001】
本出願は、ここに引用する「ガラスを保護するためのガラス組成物およびその製造方法」と題する、2006年2月10日に出願された米国特許出願第11/351,360号の恩恵を主張する。
【技術分野】
【0002】
ここに開示された主題は広く、ガラスを保護するためのガラス組成物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ディスプレイは、広く2つのタイプ:発光型(例えば、CRTおよびプラズマディスプレイパネル(PDP))または非発光型の内の一方に分類されるであろう。液晶ディスプレイ(LCD)が属するこの後者の一群は、外部光源に依存し、ディスプレイは光変調器としてしか働かない。液晶ディスプレイの場合、この外部光源は、周囲光(反射型ディスプレイに用いられる)または専用光源(直視型ディスプレイに見られるものなどの)のいずれであっても差し支えない。
【0004】
液晶ディスプレイは、光を変調するために液晶(LC)材料の3つの固有の特徴に依存する。最初の特徴は、偏光の旋光を生じるLCの能力である。第2の特徴は、液晶の機械的配向によりこの回転を確立する液晶の能力である。第3の特徴は、外部電場の印加によりこの機械的回転を上書きする液晶の能力である。
【0005】
単純なツイストネマチック(TN)型液晶ディスプレイの構造において、2枚の基板が、液晶材料の層を取り囲んでいる。ノーマリホワイトとして知られているディスプレイ方式において、基板の内面にアライメント層を適用することにより、液晶のディレクタが90°旋回する。これは、液晶セルの一方の面に進入する直線偏光の偏光状態が液晶材料により90°回転させられることを意味する。互いに90°に方向付けられた偏光フイルムが、基板の外面に配置されている。
【0006】
光は、第1の偏光フイルムに進入する際に、線形偏光される。この光の偏光状態は、液晶セルを進みながら、90°回転させられ、第2の偏光フイルムを通って出ることができる。液晶層に亘り電場を印加すると、電場により液晶ディレクタがアライメントされ、光を回転させるその能力が遮られる。このセルを通過する直線偏光は、偏光状態が回転させられず、それゆえ、第2の偏光フイルムにより遮断される。よって、この最も単純な意味において、液晶材料は光弁になり、光の透過を可能にするかまたは遮断するその能力は、電場の印加により制御される。
【0007】
先の記載は、液晶ディスプレイ内の1つのピクセルの動作に関するものである。大量情報型のディスプレイでは、サブピクセルと称されるこれらピクセルを数百万、マトリクスフォーマットに組み込む必要がある。アドレス指定速度を最大にしかつクロストークを最小にしながら、これらサブピクセルの全てにアドレス指定し、または電場を印加することには、いくつかの課題がある。サブピクセルをアドレス指定する好ましい方法の1つは、各サブピクセルに位置する薄膜トランジスタで電場を制御することによるものである。このトランジスタは、アクティブマトリクス液晶ディスプレイ装置(AMLCD)の基礎を構成する。
【0008】
これらのディスプレイの製造は極めて複雑であり、基板用ガラスの性質は極めて重要である。まず何よりも、AMLCD装置の製造に用いられるガラス基板は、厳密に制御された物理的寸法を有する必要がある。特許文献1および2に記載されているダウンドローシートまたはフュージョンプロセスは、ラップ仕上げまたは研磨などの、費用のかかる成形後の仕上げ操作を必要とせずにそのような製品を提供できる数少ないプロセスの内の1つである。
【0009】
一般に、ディスプレイを構成する2枚の基板は別々に製造される。一方のカラーフィルタ基板には、一連の赤、青および緑の有機染料がその上に成膜されている。これらの原色の各々は、対になるアクティブ基板のピクセル電極区域に精密に対応しなければならない。2枚の基板の製造中に遭遇する周囲の熱条件間の差の影響を除くために、熱条件に無関係な寸法を持つガラス基板(すなわち、熱膨張係数が低いガラス)を使用することが望ましい。しかしながら、この性質は、膨張の不一致のために生じる、成膜された膜と基板との間の応力の発生と釣り合わせる必要がある。最適な熱膨張係数は28〜33×10-7/℃の範囲にあると推測される。
【0010】
アクティブ薄膜トランジスタを含むためにそう呼ばれているアクティブ基板は、典型的な半導体方式のプロセスを用いて製造される。これらのプロセスには、スパッタリング、CVD、フォトリソグラフィー、およびエッチングが含まれる。これらのプロセス中にガラスが不変であることが非常に望ましい。それゆえ、ガラスは、熱安定性と化学安定性の両方を示す必要がある。
【0011】
熱安定性(熱圧縮または収縮としても知られている)は、特定のガラス組成の固有の粘性(歪み点により示される)および製造プロセスにより決定されるガラスシートの熱履歴の両方に依存する。特許文献3には、650℃を超える歪み点を有し、フュージョンプロセスの熱履歴を持つガラスが、a−Si薄膜トランジスタ(TFT)および超低温p−Si TFTの両方に基づくアクティブ基板にとって許容される熱安定性を有することが開示されている。高温処理(低温p−Si TFTに必要とされるような)には、熱安定性を確実にするために、ガラス基板にアニーリング工程を加える必要があるであろう。
【0012】
化学安定性は、製造プロセスに用いられる様々なエッチング液の攻撃に対する耐性を意味する。シリコン層をエッチングするのに用いられるドライエッチング条件からの攻撃に対する耐性が特に興味深い。ドライエッチング条件を基準にしたがって評価するために、基板サンプルは、110BHFとして知られるエッチング液に曝露される。このテストは、1体積の50質量%のHFおよび10体積の40質量%のNH4Fの溶液中に30℃で5分間に亘りガラスのサンプルを浸漬する工程を含む。このサンプルは、質量損失および外観により等級付けされる。
【0013】
これらの要件に加え、ディスプレイの製造業者から、極めて滑らかな表面を持つ基板が要求される。現在、フュージョンプロセスは、原子レベルまで滑らかな(20マイクロメートルの区域に亘りAFMにより測定して約0.3nmのRa)「火造り」表面の可能性を提示する。しかしながら、シート分離、包装などのその後の処理工程で、粒子の存在および/または表面損傷により、表面条件が劣化し得る。そのような外因的損傷に対して保護するために、基板用ガラスに様々なポリマーフイルムを被覆して、基板製造とディスプレイ製造との間の輸送中にガラス表面を保護することができる。また、基板を被覆することにより、最終的な輸送配置において基板を互いに密に充填することが可能になる。
【特許文献1】米国特許第3338696号明細書
【特許文献2】米国特許第3682609号明細書
【特許文献3】米国特許第5374595号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
基板用ガラスに保護ポリマーフイルムを被覆する現行の方法には、いくつかの欠点がある。第1に、ポリマーコーティングは、ガラスの汚れを避けるために冷たいガラスに施さなければならない。このことは、そのコーティングは、これらの2工程から生じる粒子汚染に対して表面を保護するためには存在しないことを意味する。第2に、ポリマーコーティングは透明ではないので、そのコーティングは、最終品質の検査プロセスを考慮して仕上げ後にガラスから除去しなければならない。ディスプレイに使用するのに適した性質を持つ基板用ガラス、そのような基板の表面を基板の製造、輸送、それ以降に保護するための方法および組成物が、当該技術分野において必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
ここに開示された組成物および方法は、これらと他の必要性を満たすものである。
【0016】
ここに具体化され、広く記載された、開示の材料、化合物、組成物、物品、装置および方法の目的にしたがって、開示された主題は、ある態様において、ガラスを保護するためのガラス組成物、およびその組成物の製造方法と使用方法に関する。追加の利点は、一部は、以下の説明に述べられており、一部は、その説明から明らかであるか、または以下に記載された態様の実施により分かるであろう。以下に記載された利点は、添付の特許請求の範囲に特に指摘された要素および組合せにより実現され、達成される。先の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は、例示と説明のみであり、制限するものではないことが理解されよう。
【0017】
本明細書に包含され、その一部を構成する添付の図面は、以下に記載されたいくつかの態様を示す。
【0018】
ここに記載された材料、化合物、組成物、物品、装置および方法は、開示された手段の特定の態様の以下の詳しい記載およびその中に含まれる実施例および図面を参照することによって、より用意に理解されるであろう。
【0019】
その材料、化合物、組成物、物品、装置および方法を開示し説明する前に、以下に記載された態様は、特定の合成方法または特定の試薬に制限されるものではなく、もちろん、様々であってよいことが理解されよう。ここに用いた用語法は、特定の態様を説明する目的のためだけであり、制限を意図するものではないことも理解されよう。
【0020】
また、本明細書全体に亘り、様々な公報が挙げられている。これらの公報の全体の開示は、開示された主題が関連する技術分野をより完全に説明するために、本明細書中に包含される。開示された文献は、その文献が準拠する文に論じられたその中に含まれる題材に関して参照により個々に具体的に含まれる。
【0021】
本明細書と添付の特許請求の範囲において、以下の意味を持つように定義された多数の用語を参照する:
本明細書の説明と特許請求の範囲に全体に亘り、「含む」という用語は、含有することを意味するがそれに限られず、例えば、他の添加剤、成分、整数、または工程を排除することを意図していない。
【0022】
「随意的」または「必要に応じて」は、その後に記載された事象または環境が、起こっても起こらなくても差し支えなく、その記載が、その事象または環境が起こる場合と、起こらない場合を含むことを意味する。
【0023】
範囲は、「約」ある特定の値から、および/または「約」別の特定の値までとしてここに表すことができる。そのような範囲が表された場合、別の態様は、ある特定の値から、および/または他の特定の値までを含む。同様に、値が、「約」という先行詞を使用して、近似として表される場合、特定の値は別の態様を構成することが理解されるであろう。さらに、範囲の各々の端点は、他の端点に関してと、他の端点とは独立しての両方において有意であるこが理解されよう。また、ここには多数の値が開示されており、各値は、「約」特定の値に加え、その値自体としてもここに開示されていることも理解されよう。例えば、値の「10」が開示されている場合、「約10」も開示される。ある値が開示されている場合、当業者に適切に理解されるように、「その値以下」、「その値以上」および値の間の可能性のある範囲も開示されることも理解されよう。例えば、値「10」が開示されている場合、「10以下」並びに「10以上」も開示される。本出願の全体に亘り、データが多数の異なる形式で提供されており、このデータは、端点と出発点、およびデータ点の任意の組合せに関する範囲を示すことも理解されよう。例えば、特定のデータ点「10」および特定のデータ点「15」が開示されている場合、10および15より大きい、以上、未満、以下、および等しいが、10および15の間と同様に開示されていると考えられる。2つの特定の単位値の間の各単位値も開示されていると考えられる。例えば、10および15が開示されている場合、11、12、13および14も開示されている。
【0024】
明細書および特許請求の範囲における組成物中の特定の要素または成分の質量部への言及は、質量部が表される組成物または物品におけるその要素または成分と任意の他の要素または成分との間の質量関係を意味する。それゆえ、2質量部の成分Xおよび5質量部の成分Yを含有する化合物において、成分XおよびYは、2:5の質量比で存在し、追加の成分がその化合物中に含まれているか否かにかかわらず、そのような比で存在する。
【0025】
ある成分の質量パーセント(質量%)は、別記しない限り、その成分が含まれる配合物または組成物の総質量に基づく。
【0026】
ここに開示された特定の材料、化合物、組成物、および成分は、市販のものを入手できるか、または当業者に一般に知られた技法を用いて容易に合成できる。例えば、開示された化合物および組成物の調製に用いられる出発材料および試薬は、コーニング社(Corning Incorporated)(ニューヨーク州、コーニング所在)、アルドリッチ・ケミカル社(Aldrich Chemical Co.)(ウィスコンシン州、ミルウォーキー所在)、アクロス・オーガニックス社(Acros Organics)(ニュージャージー州、モリスプレーンズ所在)、フィッシャー・サイエンティフィック社(Fisher Scientific)(ペンシルベニア州、ピッツバーグ所在)、またはシグマ社(Sigma)(ミズーリ州、セントルイス所在)などの民間の供給業者から入手できるか、またはFieser and Fieser’s Reagents for Organic Synthesis, Volumes 1-17 (John Wiley and Sons, 1991); Rodd’s Chemistry of Carbon Compounds, Volumes 1-5 and Supplementals (Elsevier Science Publishers, 1989); Organic Reactions, Volumes 1-40 (John Wiley and Sons, 1991); March’s Advanced Organic Chemistry, (John Wiley and Sons, 4th Edition); および Larock’s Comprehensive Organic Transformations (VCH Publishers Inc., 1989)などの文献に述べられている手法にしたがって、当業者に公知の方法により調製される。
【0027】
また、開示された方法および組成物に使用できる、それと共に使用できる、その調製に使用できる、またはその生成物である材料、化合物、組成物および成分もここに開示されている。これらと他の材料がここに開示されており、これらの材料の組合せ、サブセット、相互作用、群などが開示されている場合、これらの化合物の各様々な個々と集合的な組合せや順序の特別な参照が明白に開示されていなくても、各々が具体的に考えられ、ここに記載されていると理解されよう。例えば、ある組成物が開示され、その組成物の多数の成分に対して製造できる多数の改変が論じられている場合、可能な各々と全ての組合せおよび順序が、別記されていない限り、具体的に考えられる。それゆえ、成分A、BおよびCの群、並びに成分D、EおよびFの群および組合せA−Dの例が開示されている場合、各々が個々に列挙されていなくとも、各々が個々と集合的に考えられる。それゆえ、この例において、組合せA−E、A−F、B−D、B−E、B−F、C−D、C−EおよびC−Fの各々が具体的に考えられ、A、BおよびC;D、EおよびF;並びに組合せA−Dの例の開示から、開示されていると考えるべきである。同様に、これらの任意のサブセットまたは組合せも具体的に考えられ開示されている。それゆえ、例えば、部分群A−E、B−FおよびC−Eが、具体的に考えられ、A、BおよびC;D、EおよびF;並びに組合せA−Dの例の開示から、開示されていると考えるべきである。この概念は、以下に限られないが、開示された組成物の製造方法と使用方法における工程を含む、この開示の全ての態様に適用する。それゆえ、実施できる様々な追加の工程がある場合、これらの追加の工程の各々は、開示された任意の特定の態様または態様の組合せと共に実施でき、そのような組合せの各々が、具体的に考えられ、開示されていると考えるべきであるのが理解されよう。
【0028】
ここで、添付の実施例および図面にその例が示された、開示された材料、化合物、組成物、物品および方法の特別な態様を詳細に参照する。
【0029】
ある態様において、刻線形成/分割プロセスの何れもが行われる前に、ガラス層または表皮でガラス基板を被覆するための方法および組成物がここに開示されている。次いで、この表面ガラスは、例えば、仕上げ/検査操作の全ての後に、除去することができる。ある実例において、コーティングは、輸送中にガラスを保護するために残したままにし、その後、除去しても差し支えない。さらに別の利点は、そのコーティングを高品質側またはA側からだけ除去し、そのようなコーティングを背面またはB側には残すことである。これにより、ディスプレイの製造中にガラス基板を効果的に厚くし、取扱いによる垂れ下がりや損傷に関する懸念を減らすことができる。次いで、このB側のコーティングは、パネル製造プロセスにおいて、後に除去し、最終的な薄いディスプレイを得ることができる。
【0030】
ガラス物品を保護するために可溶性ガラスを使用する方法が報告され(例えば、米国特許第4102664号および同第4880453号の各明細書を参照のこと)、フュージョンドローでガラスシートをラミネートする方法が米国特許第4214886号に開示されている。しかしながら、そのような方法は、耐酸性の高いガラス表面層を含み、その表面層を除去するのが難しい。ここに開示された方法および組成物は、ガラスの粘度とCTE(熱間ラミネーションがうまくいくのに重要な2つの性質)への影響を最小にしながら、ガラスの耐酸性を急激に減少させることができる。
【0031】
I. 組成物
ある態様において、液晶ディスプレイ用のガラス組成物であって、約1.5から約10モル%のP25を含むガラス組成物がここに開示されている。この組成物中に存在するP25の量は、以下に限られないが、エネルギー分散型X線蛍光分析を含む当該技術分野に公知の技法および以下に限られないが、誘導結合プラズマ発光分析法を含む標準的な湿式化学技法により測定できる。他の実例において、P25の量は、前記組成物の約2から約8モル%、約2から約6モル%、または約2から約5モル%までであって差し支えない。さらに他の実例において、組成物中のP25の量は、組成物の約1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、8、8.1、8.2、8.3、8.4、8.5、8.6、8.7、8.8、8.9、9、9.1、9.2、9.3、9.4、9.5、9.6、9.7、9.8、9.9、または10モル%であって差し支えなく、上述した値のいずれが、適切な場合に上限または下限の端点であり得る。
【0032】
別の態様において、開示された組成物は、約650℃より高い歪み点を有し得る。他の実例において、ある組成物は、約650、655、660、665、670、675、680、685、690、695、700、705、710、715、720、725、730、735、740、745、750、760、770、780、790、または800℃より高い歪み点を有し得、上述した値のいずれも、適切な場合に、上限または下限の端点を形成できる。開示された組成物の歪み点は、公知の技法を用いて、当業者により決定できる。例えば、歪み点は、ASTM法C336を用いて決定できる。
【0033】
さらに別の態様において、開示された組成物は、約20,000ポアズより大きい液相線粘度を有し得る。例えば、ある組成物は、約20,000、30,000、40,000、50,000、60,000、70,000、80,000、90,000、1000,000、200,000、250,000、300,000、350,000、400,000、450,000、500,000、550,000、600,000、650,000、700,000、750,000、800,000、900,000、または1,000,000ポアズより大きい液相線粘度を有し得、上述した値のいずれも、適切な場合、上限または下限の端点を形成できる。液相線粘度は、フルチャー(Fulcher)の方程式の係数を使用することにより計算し、×100,000ポアズ(10,000Pa・s)で換算できる。
【0034】
さらに別の態様において、開示された組成物は、0℃から300℃の温度範囲に亘り、約28×10-7/℃から約40×10-7/℃の熱膨張係数を有し得る。いくつかの実例において、組成物は、約28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、または40×10-7/℃の熱膨張係数を有し得、上述した値のいずれも、適切な場合、上限または下限の端点を形成できる。開示された組成物の熱膨張係数は、公知の技法を用いて当業者により決定できる。例えば、熱膨張係数は、ASTM法のE228を用いて決定できる。
【0035】
ここに記載されたガラス組成物は、酸に曝露されたときに、増加した質量損失を示す。「質量損失」という用語は、特定の酸に曝露または接触されたときに除去されるガラス組成物の量と定義される。ある態様において、開示された組成物は、24時間に亘り95℃で5%のHCl中に浸漬されたときに、少なくとも3mg/cm2の質量損失を有し得る。例えば、組成物は、24時間に亘り95℃で5%のHCl中に浸漬されたときに、約3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、34、36、37、38、39、40、50、60、70、80、90、100、125、150、175、200、225、250、または300mg/cm2の質量損失を有し得、上述した値のいずれも、適切な場合、上限または下限の端点を形成できる。開示された組成物は、無機酸(例えば、HBr、H2SO4、H3PO4、HNO3など)および有機酸(例えば、酢酸、蟻酸、クエン酸、安息香酸、マレイン酸、アジピン酸など)などの他の酸中に浸漬されたときに質量損失を示し得る。ガラスの最終用途に応じて、前記ガラス組成物の質量損失が、典型的なLCDガラスのものよりも大きいことが望ましいであろう。例えば、開示された組成物がLCD基板用ガラス上の保護表皮として用いられる場合、その組成物は、24時間に亘り95℃で5%のHCl中に浸漬されたときに、LCD基板用ガラスに関するよりも、質量損失が2、3、4、5、6、7、8、9、10倍、またはそれ以上であり得る。
【0036】
ある態様において、ガラス組成物が透明であることが望ましい。1つの態様において、開示された組成物は、0.7mmの厚さのときに365nmの波長で80%より大きく、同じ厚さについて、450および800nmの間の波長で90%より大きい透明度を有し得る。
【0037】
別の態様において、開示された組成物は、約2.45g/cm3未満の密度を有し得る。例えば、組成物は、約2.45、2.45、2.44、2.43、2.42、2.41、2.4、2.39、2.38、2.37、2.36、2.35、2.34、2.33、2.32、2.31、2.3、2.29、2.28、2.27、2.26、2.25、2.24、2.23、2.22、2.21、2.2、2.19、2.18、2.17、2.16、2.15、2.14、2.13、2.12、2.11、2.1、2.09、2.08、2.07、2.06、2.05、2.04、2.03、2.02、2.01、2、1.99、1.98、1.97、1.96、1.95、1.94、1.93、1.92、1.91、1.9、1.89、1.88、1.87、1.86、1.85、1.84、1.83、1.82、1.81、1.8、1.79、1.78、1.77、1.76、1.75、1.74、1.73、1.72、1.71、1.7、1.69、1.68、1.67、1.66、1.65、1.64、1.63、1.62、1.61、1.6、1.59、1.58、1.57、1.56、1.55、1.54、1.53、1.52、1.51、1.5、1.49、1.48、1.47、1.46、または1.45g/cm3の密度を有し得、上述した値のいずれも、適切な場合、上限または下限の端点を形成できる。開示された組成物の密度は、公知の技法を用いて当業者により決定できる。例えば、密度は、ASTM法のC693を用いて決定できる。
【0038】
ガラス組成物に関してその教示をここに引用する米国特許第5374595号および同第6319867号の各明細書に開示されたガラス組成物のいずれを用いて、ここに記載されたガラス組成物のいずれを製造しても差し支えない。ある態様において、ここに記載されたガラス組成物は、28〜40×10-7/℃の間の0〜300℃の温度範囲に亘る線熱膨張係数、650℃より高い歪み点、1200℃以下の液相線温度、約200,000ポアズ(20,000Pa・s)より大きい液相線粘度、溶融温度と成形温度での失透に対する長期安定性、および1675℃未満での約200ポアズ(20Pa・s)の溶融粘度を含み、そのガラスは、アルカリ金属酸化物を実質的に含まず、酸化物基準のモルパーセントで表して、SiO2(64〜70)、Y23(0〜3)、Al23(9.5〜14)、MgO(0〜5)、B23(5〜10)、CaO(3〜13)、TiO2(0〜5)、SrO(0〜5.5)、Ta25(0〜5)、BaO(2〜7)、Nb25(0〜5)を含み、MgO+CaO+SrO+BaOの合計が10〜20である。別の態様において、ここに記載されたガラス組成物は、約2.45g/cm3未満の密度、約200,000ポアズより大きい液相線粘度、および650℃を超える歪み点を示すガラスを構成し、そのガラスは、酸化物基準のモルパーセントで表して、以下の組成:65〜75のSiO2、7〜13のAl23、5〜15のB23、0〜3のMgO、5〜15のCaO、0〜5のSrOを含み、BaOを実質的に含まない。別の態様において、前記組成物は、65モル%未満のB23を有する。さらに別の態様において、前記組成物は、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、または64モル%のB23を有し、その任意の値が、ある範囲の端点を形成できる。1つの態様において、約1.5から約10モル%のP25および65モル%未満のB23を含むガラス組成物が開示されている。
【0039】
ここに記載されたガラス組成物を製造するのに有用な適切なガラスの例としては、以下に限られないが、ここにその全てを引用する、米国特許第5374595号、同第6060168号、同第6319867号、米国特許出願公開第2002−0082158号、同第2005−0084440号、および同第2005−0001201号の各明細書に開示されたものが挙げられる。さらに別の態様において、表皮ガラス組成物は、1.5モル%から10モル%のP25を含有するコーニングコード1737またはEAGLE2000(商標)である。
【0040】
ある態様において、ここに記載された組成物は清澄剤を含有しない。別の態様において、ここに記載された組成物はSnO2を含有しない。
【0041】
II. 製造方法
ある態様において、上述した組成物などの組成物を調製する方法が開示されている。ある態様において、その方法は、ガラスまたはガラスを製造するために用いられるおよびリンの供給源の混合物を加熱する工程を有してなり、そのリンの供給源の量は、約1.5モル%から約10モル%のP25を含有するガラスを生成するのに十分である。「リンの供給源」という句は、リンを含有し、リンをガラス組成物に含ませる任意の化合物または化合物の混合物とここでは定義される。約1.5モル%から約10モル%のP25を含有するガラスを生成するのに十分なリン供給源の量は、様々であり、最終ガラス中に所望のリン含有量に対する供給源のリン含有量並びに所望のレベルの質量損失に依存する。リン供給源は、加熱前にガラスを製造するのに用いられる個々の成分と混合しても、あるいは、既に製造されたガラスに、リン供給源をドープし、その後、加熱を行っても差し支えない。
【0042】
ここに使用するのに適したリン供給源の例としては、以下に限られないが、金属メタリン酸塩、金属ポリリン酸塩、金属ピロリン酸塩、金属オルトリン酸塩、またはその混合物のいずれかを含む、金属リン酸塩を含む組成物が挙げられる。他の実例において、リン供給源は、以下に限られないが、ケイ素、ホウ素、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、アルミニウム、バリウムの金属メタリン酸塩、金属ポリリン酸塩、金属ピロリン酸塩、金属オルトリン酸塩、またはそれらの混合物を含むリン酸塩を含んで差し支えない。そのような金属リン酸塩の特別な例のいくつかとして、以下に限られないが、SiP27、BPO4、Mg(PO32、Ca(PO32、Sr(PO32、およびBa(PO32が挙げられる。さらに別の実例において、リン供給源は、P25またはH3PO4を含んで差し支えない。さらに別の実例において、リン供給源は、メタリン酸アルミニウム(Al(PO32)、オルトリン酸アルミニウム(AlPO4)、またはそれらの混合物を含んで差し支えない。
【0043】
ある態様において、ここに記載されたガラス組成物は、LCDガラスを製造するのに用いられるシリカの一部を、例えば、AlPO4などのリン供給源で置換することを含む。組成物中に存在するAlPO4の量は、その組成物の約1.5モル%から約10モル%であって差し支えない。他の実例において、AlPO4の量は、前記組成物の約4から約8モル%、約4から約6モル%、または約4から約5モル%であり得る。さらに他の実例において、前記組成物中のAlPO4の量は、その組成物の約4、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6。7.7、7.8、7.9、8、8.1、8.2、8.3、8.4、8.5、8.6、8.7、8.8、8.9、9、9.1、9.2、9.3、9.4、9.5、9.6、9.7、9.8、9.9、または10モル%であり得、上述した値のいずれも、適切な場合、上限または下限の端点であり得る。
【0044】
開示された方法の別の態様において、加熱工程は、約1,500から1.650℃で行うことができる。他の態様において、加熱工程は、1,500、1,525、1,550、1,575、1,600、1,625、または1,650℃で行うことができる。加熱工程は一般に、ここに記載された組成物を製造するのに用いられる成分は、均一状態が生じるようなものであるような温度で行われる。
【0045】
III. ガラス物品および保護方法
ガラス組成物中にここに特定された量でリンを含ませると、酸耐久性が急激に劣化することがここに開示されている。これにより、ここに記載したガラス組成物を、基礎ガラスまたはコアガラスを攻撃せずに、選択的に除去できる保護薄板または表皮層として使用できる。それと同時に、薄板または表皮ガラスの他の性質(その粘度、CTE、および失透挙動)は、大きく変化しない。
【0046】
それゆえ、別の態様において、少なくとも一つの露出表面および表皮を含むガラスコアを含む物品であって、その表皮がコアの露出表面と結合されており、ここに記載されたガラス組成物のいずれかを含むものである物品が開示されている。ここに用いられる「結合された」という用語は、表皮がコアの露出表面に隣接(すなわち、緊密に接触)しているか、または1つ以上の中間層によりコアに間接的に取り付けられているときを含む。ここに定義される「露出表面」という用語は、表皮ガラスと接触させたときに、表皮ガラスと接触していられるコアガラスの任意の表面である。そのガラス物品は、1つ以上の露出表面を有することができる。例えば、ガラスコアがガラスのシートである場合、そのコアは、2つの露出表面を有し、一方または両方の表面が、それに結合されたガラス表皮を有することができる。表皮およびコアガラス材料の性質に応じて、化学結合(例えば、共有結合、静電結合)が形成され得る。しかしながら、化学結合は必要ない。
【0047】
表皮は、0.1mmから1.1mmの厚さを有し得る。例えば、表皮は、約0.1、0.12、0.14、0.16、0.18、0.20、0.22、0.24、0.26、0.28、0.30、0.32、0.33、0.34、0.35、0.36、0.37、0.38、0.39、0.4、0.41、0.42、0.43、0.44、0.45、0.46、0.47、0.48、0.49、0.5、0.51、0.52、0.53、0.54、0.55、0.56、0.57、0.58、0.59、0.6、0.61、0.62、0.63、0.64、0.65、0.66、0.67、0.68、0.69、0.7、0.71、0.72、0.73、0.74、0.75、0.76、0.77、0.78、0.79、0.8、0.81、0.82、0.83、0.84、0.85、0.86、0.87、0.88、0.89、0.9、0.91、0.92、0.93、0.94、0.95、0.96、0.97、0.98、0.99、1、1.01、1.02、1.03、1.04、1.05、1.06、1.07、1.08、1.09、または1.1mmの厚さを有し得、上述した値のいずれも、適切な場合、上限または下限の端点を形成できる。別の態様において、組み合わされたコアおよび表皮は、0.3mmから1.1mmの厚さを有し得る。
【0048】
ある態様において、前記物品は、第1と第2の露出表面を有するガラスのシートであり得、前記表皮は、第1と第2の露出表面の両方に隣接している。ガラスシートの第1と第2の露出表面の両方に表皮を置くことにはいくつかの利点があり得、例えば、そのガラスシートは、ディスプレイの製造中に効果的に厚くし、取扱いによる垂れ下がりや損傷に関する懸念を減らす事ができる。このために、ディスプレイの製造に、より薄い軽量ガラスを使用できるようになる。さらに、表皮は、他の表面を保護しながら、ある表面(例えば、ディスプレイの製造においてTFTを受け取る表面)から除去することができる。例えば、ガラスのシートが両面に保護コーティングを有する場合、一方のコーティングを除去し、その後、コアの背面は保護されたままにしながら、コアの露出表面上に電子部品を製造し、パネルを構成する2枚のガラスを封止し、次いで、今では、組み立てられたパッケージの外側にある残りのコーティングを剥ぎ取ることができる。他の実例において、表皮または薄板は、第1または第2いずれかの露出表面に隣接していても差し支えない。
【0049】
ここに記載されたガラス組成物は、ガラス物品上に保護表皮層を製造するために使用できる。ある態様において、保護できるガラス物品は、電子用途に使用できる。そのような物品の例としては、以下に限られないが、フラットスクリーンのディスプレイパネル、有機発光ダイオード、または薄膜トランジスタ用基板のためのガラスが挙げられる。別の態様において、ここに記載されたガラス組成物は、液晶ディスプレイ用のガラスを保護するのに使用できる。液晶ディスプレイ(LCD)は、照明のために外部光源に依存するパッシブ・フラットパネルディスプレイである。
【0050】
ある態様において、表皮は、フュージョンプロセスによりコアの露出表面に施すことができる。適切なフュージョンプロセスの例が、ここに全てを引用する米国特許第4214886号明細書に開示されている。このプロセスは以下のように要約できる。異なる組成の少なくとも2種類のガラス(例えば、基礎またはコアガラスおよび表皮)を別々に溶融する。次いで、各々のガラスを適切な供給システムに通してオーバーフロー送達装置に送達する。それらの送達装置は、各送達装置からのガラスが、送達装置の頂部の縁部分を越えて、少なくとも一方の側に流下して、そのような頂部の縁部分の下で、送達装置の片側または両側に適切な厚さの均一流動層を形成するように、一方が他方の上に搭載されている。
【0051】
下部の送達装置は、収束する側壁部分を持つそれに関連する楔形成形部材を有し、その収束側壁部分は、送達装置の側壁とその頂端部で繋がり、延伸ラインの収束する底部で終わる。下部の送達装置をオーバーフローする溶融ガラスは、送達装置の壁に沿って下方に流動し、成形部材の収束する外面に隣接する初期ガラス流層を形成し、一方で、その上の送達装置をオーバーフローする溶融ガラスは、その上部の送達装置の側壁を流下し、初期ガラス流層の外面部分上を流れる。成形部材の各収束側壁からの2つの別個のガラス層は一緒にされ、延伸ラインで融合して、1つの連続積層シートが形成される。2つのガラスの積層体における中央のガラスはコアガラスと呼ばれ、一方で、コアガラスの外面を流下するガラスは表皮ガラスと呼ばれる。3種類以上の別々のガラスが用いられる場合、コアガラスと表皮ガラスとの間に形成されるガラスは、中央ガラスまたは埋込ガラスのいずれかとして知られている。中央または埋込ガラスが用いられる場合、表皮は、中央または埋込ガラスにより、コアに「結合」されている。逆に、たった1つの表皮ガラスがコアに直接融合される場合には、表皮はコアに「隣接」している。
【0052】
オーバーフロー送達装置プロセスは、そのように形成されたシートガラスに火造り表面を与え、制御された送達装置により提供されたガラスの均一に送達された厚さは、ガラスシートに優れた光学的品質を与える。
【0053】
ここに開示された方法に使用できる他のフュージョンプロセスが、ここにその全てを引用する、米国特許第3338696号、同第3682609号、同第4102664号、同第4880453号、および米国特許出願公開第2005−0001201号の各明細書に記載されている。
【0054】
上述したように、ここに記載したガラス組成物は、酸に曝露されたときに質量損失を経る。それゆえ、表皮層の一部または全てが、表皮を酸に接触させることにより除去できる。薄板を除去できるどのような酸を用いても差し支えない。例えば、酸は、無機酸または有機酸を含んでも差し支えない。開示された方法に使用できる無機酸の例としては、以下に限られないが、HCl、H2SO4、HNO3、またはH3OP4が挙げられる。その酸は、当該技術分野において公知の技法を用いて保護層に施すことができる。例えば、保護層を有するガラスを酸の溶液中に浸漬して、保護層を除去することができる。別の態様において、保護層に酸を吹き付けることができる。必要であれば、保護層が酸と接触している最中またはその後に、音波(例えば、超音波)または機械的(例えば、ブラシによる洗浄)作用を用いても差し支えない。
【実施例】
【0055】
以下の実施例は、開示された主題による方法および結果を示すために下記に述べられている。これらの実施例は、ここに開示された主題の全ての態様を含めることを意図しておらず、むしろ、代表的な方法および結果を実証することが意図されている。これらの実施例は、当業者に明らかな、本発明の同等物および変更例を排除することを意図したものではない。
【0056】
数値(例えば、量、温度など)に関する精度を確実にするように努力してきたが、ある程度の誤差や偏差を考慮すべきである。別記しない限り、部は質量部であり、温度は℃で表されているかまたは周囲温度であり、圧力は大気圧またはその辺りである。反応条件には数多くの変数および組合せ、例えば、成分濃度、温度、圧力および他の反応範囲並びに記載したプロセスから得られる生成物の純度と種率を最適化するために用いられる条件がある。そのようなプロセス条件を最適化するためには、適当な日常の実験しか必要ないであろう。
【0057】
実施例1
ここに記載した性質を示すAlPO4ドープト・ボロアルミノケイ酸塩ガラスを、Pt坩堝内において1650℃で一晩、バッチを溶融することにより形成した。AlPO4成分は、オルトリン酸アルミニウム(AlPO4)の形態で、またはアルミナ+メタリン酸アルミニウム(Al(PO33)の混合物のいずれかとして、ガラスバッチ中に含ませることができる。後者が好ましい方法である。表1の以下の組成物が、ここに開示された組成物を表す。
【表1】

【0058】
最初の3つの実施例(A〜C)はコーニングコード1737ガラス(ニューヨーク州、コーニング所在のコーニング社(Corning Inc.))の派生物であり、一方、四番目(D)は「EAGLE2000」(ニューヨーク州、コーニング所在のコーニング社)に基づくものである。コーニングコード1737ガラスおよび「EAGLE2000」の研究室で調製した具体例に関する組成と性質のデータが、それぞれ、6番目と7番目の行に与えられている。
【0059】
図1は、AlPO4濃度(モル%)の関数としての歪み点(℃)のグラフである。このグラフは、市販のLCDガラスであるコーニングコード1737ガラスおよび「EALGE2000」の研究室での類似物にAlPO4をSiO2の代替、または追加成分のいずれかとして添加すると、0から7モル%のAlPO4の範囲に亘り測定した歪み点にわずかな変化が生じることを示している。
【0060】
図2は、AlPO4濃度(モル%)の関数としての熱膨張係数(α;×10-7/℃)のグラフである。このグラフは、αがAlPO4濃度の範囲に亘り略一定であることを示し、製造環境において、市販のLCDガラスであるコーニングコード1737ガラスまたは「EAGLE2000」のいずれかおよびそのAlPO4置換類似物から形成された積層シートが熱膨張の不一致による応力を実質的に持たずにいられることを示唆している。
【0061】
図3は、AlPO4濃度(モル%)の関数としての酸耐久性(HClの質量損失(mg/cm2))のグラフである。このグラフは、24時間に亘り95℃で5%のHClに曝露されたときの測定された質量損失が、AlPO4含有量が約5モル%に増加するにつれて、ほぼ二桁の大きさ増加することを示している。
【0062】
図4は、温度(℃)の関数としての、市販のガラスであるコーニングコード1737ガラス(○)および891HWQ(◇)の研究室で調製した類似物に関する粘度(η;ポアズ)のグラフである。891HWQは、頂部に5%のAlPO4が添加されたコーニングコード1737ガラスである。データのほぼ一致により、製造環境において、これら2種類のガラスを積層シートに適合できることが示される。
【0063】
実施例2
実施例1に記載した手法を用いて、P25を様々な量で、コーニングコード1737ガラス(表2)および「EAGLE2000」(表3)に加えた。
【表2】

【表3】

【0064】
CTE、歪みおよびHClは、それぞれ、熱膨張係数(10-7/℃)、歪み点(℃)および24時間に亘る95℃での5%のHCl中の質量損失(mg/cm2)を指す。図5は、図3と類似のプロットであり、P25ドープガラスの益々低下するHCl耐久性を示している。表2および3のデータが示すように、基礎ガラスにP25を加えた場合、研究した範囲に亘り、粘度とCTEは著しくは変化しない。
【0065】
自明でありかつ本発明に固有の他の利点は、当業者に明白であろう。ある特徴およびその下位の組合せは、有益であり、他の特徴および下位の組合せに言及せずに用いてよいことが理解されよう。これは、特許請求の範囲により検討され、その範囲に含まれる。本発明に多くの可能な実施の形態が、その範囲から逸脱せずに行ってよいので、ここに述べられたまたは添付の図面に示された全ての事象が、制限の意味ではなく、説明として解釈されるべきであることが理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】AlPO4濃度(モル%)の関数としての歪み点(℃)のグラフ
【図2】AlPO4濃度(モル%)の関数としての熱膨張係数(α;×10-7/℃)のグラフ
【図3】AlPO4濃度(モル%)の関数としての酸耐久性(HCl質量損失(mg/cm2))の関数
【図4】温度(℃)の関数としての市販ガラスのコーニングコード1737ガラス(○)および891 HWQ(◇)についての粘土(η;ポアズ)のグラフ。891HWQは、頂面に5%のAlPO4添加されたコーニングコード1737ガラスである
【図5】様々な量のP25がドープされた市販ガラスのコーニングコード1737ガラスおよびEAGLE2000(商標)についての、P25の量の関数としての質量損失のグラフ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子ディスプレイを製造するためのガラス組成物であって、約1.5から約10モル%のP25を含むことを特徴とするガラス組成物。
【請求項2】
25の量が約2から約8モル%であることを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項3】
25の量が約2から約5モル%であることを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項4】
650℃より高い歪み点を有することを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項5】
24時間に亘り95℃で5%のHCl中に浸漬されたときの質量損失が少なくとも3mg/cm2であることを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物が、酸化物基準のモルパーセントで計算して、64〜70のSiO2、0〜3のY23、9.5〜14のAl23、0〜5のMgO、5〜10のB23、3〜13のCaO、0〜5のTiO2、0〜5.5のSrO、0〜5のTa25、2〜7のBaO、および0〜5のNb25を含み、MgO+CaO+SrO+BaOの合計が10〜20であることを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物が、酸化物基準のモルパーセントで計算して、65〜75のSiO2、7〜13のAl23、5〜15のB23、0〜3のMgO、5〜15のCaO、および0〜5のSrOを含み、BaOを実質的に含まないことを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物が65モル%未満しかB23を含まないことを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項9】
少なくとも一つの露出表面を有するガラスコアおよび表皮を備えたガラス物品であって、前記表皮が請求項1記載の組成物からなることを特徴とするガラス物品。
【請求項10】
少なくとも一つの露出表面を有するガラス物品を製造する方法であって、前記物品の少なくとも一つの露出表面に請求項1記載の組成物を施して、表皮を製造する工程を有してなる方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−525943(P2009−525943A)
【公表日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−554390(P2008−554390)
【出願日】平成19年2月9日(2007.2.9)
【国際出願番号】PCT/US2007/003565
【国際公開番号】WO2007/095116
【国際公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【出願人】(397068274)コーニング インコーポレイテッド (1,222)
【Fターム(参考)】