説明

ガラスインサート成形用金型及びそれを用いたハウジングケースの製造方法

【課題】正面部分に充分な硬度を与えることができるハウジングケースを得ることができる製造方法とこれに用いるガラスインサート成形用金型とを提供する。
【解決手段】型締めによって固定型15と可動型10との間に平面板2を挟持するとともに、平面板2の周縁部及び端面が面するキャビティ13を形成するガラスインサート成形用金型。固定型15は、平面板2の周縁部に接する底部と当該底部から連続して平面板2の端面に接触する壁部とを先端に有するスライドコア5と、平面板2を挟持する面に設けられた吸引孔8とを備える。スライドコア5は、平面板位置決め位置Iとキャビティ形成位置IIとの間を型締め方向に進退可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、型締めによって固定型と可動型との間にガラス板を主構成とする平面板を挟持するとともに、平面板の固定型との対向面周縁部及び平面板の端面が面するキャビティを形成するガラスインサート成形用金型と、そのガラスインサート成形用金型を用いたハウジングケースの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
小型の電気機器や通信機器、例えば洋服やカバンの中に保持されて、持ち運びされるデジタルオーディオプレーヤーや携帯電話は、誤って落下させてしまったり、カバンの中の他のものにぶつかったりして、表面に衝撃を受ける場合が多い。
【0003】
このため、これらの機器のハウジングケースは、耐傷性を高めるためにハウジングケースの正面となる部分、特にLCD等の表示画面を覆う部分に高い硬度のハードコート層を積層する必要がある。例えば特許文献1には、ベースフィルム上に剥離層、ハードコート層103、印刷層、接着層、を順次積層してなり、前記ハードコート層103は、ハウジングケース100の正面となる部分では高硬度とするようにハードコートを積層し、前記印刷層には非印刷部102を有する印刷パターンを複数設けた連続フィルムを、ガラスインサート成形用金型内に連続して通過させ、該ガラスインサート成形用金型内で、前記連続フィルムの接着層側に透明な合成樹脂を射出することにより、前記連続フィルムを前記ガラスインサート成形用金型のキャビティ形状に絞りながら合成樹脂層101を形成し、該合成樹脂層の硬化後、ハードコート層103、印刷層、接着層及び合成樹脂層101をベースフィルム及び剥離層から取り外してなるハウジングケース100(図38を参照)が開示されている。なお、図38中の104はLCDの表示画面を覆う表示窓、105はボタン孔である。
【0004】
ハードコート層103は、通常、熱硬化型樹脂、あるいは紫外線硬化型樹脂等の活性エネルギー線重合性樹脂をプラスチック基材上に直接、或いは0.03〜0.5μm程度のプライマー層を介して3〜10μm程度の薄い塗膜を形成して製造している。
【0005】
しかしながら、薄い塗膜からなるハードコート層103では、ハウジングケースの正面部分、特に高い硬度が要求されるLCD等の表示画面を覆う部分の硬さとしては充分でない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−36258号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、ハウジングケースの正面部分、特にLCD等の表示画面を覆う部分に充分な硬度を与えることができるハウジングケースを得ることができる製造方法とこれに用いるガラスインサート成形用金型とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明に係るガラスインサート成形用金型の特徴構成は、型締めによって固定型と可動型との間にガラス板を主構成とする平面板を挟持するとともに、前記平面板の前記固定型との対向面周縁部及び前記平面板の端面が面するキャビティを形成され、前記固定型が、前記平面板の当該固定型との対向面周縁部に接する底部と当該底部に連続して前記平面板の端面に位置決め可能に接触する壁部とを先端に有するスライドコアと、前記平面板を挟持する面に設けられた吸引孔とを備え、さらに前記スライドコアが、先端底部を前記固定型の前記平面板を挟持する面より突出させず且つ先端壁部を前記平面板と接触させる平面板位置決め位置と、前記先端底部及び前記先端壁部を共に前記平面板と離間させるキャビティ形成位置との間を、型締め方向に進退可能である点にある。
【0009】
また、前記ガラスインサート成形用金型は、前記スライドコアが、前記平面板の全周に対して部分的に設けられていると好適である。
【0010】
また、前記ガラスインサート成形用金型は、前記スライドコアが、さらに前記先端底部を前記固定型の前記平面板を挟持する面より突出させるガラスインサート成形品押出し位置まで前進可能であると好適である。
【0011】
また、前記ガラスインサート成形用金型は、前記平面板を吸着した前記固定型と前記可動型との間に転写フィルムを挟み込み可能である成形同時絵付け手段をさらに備えていると好適である。
【0012】
また、上記目的を達成するための本発明に係るガラスインサート成形用金型を用いたハウジングケースの製造方法の特徴構成は、上記のガラスインサート成形用金型を用い、前記スライドコアを前記平面板位置決め位置に移動させた状態で、前記固定型の前記平面板を挟持する面に前記平面板を配置する工程と、位置決めされた前記平面板を、当該平面板を挟持する面に吸着固定する工程と、前記平面板を吸着した前記固定型と前記可動型とを型締めする工程と、型締め後に、前記スライドコアを前記キャビティ形成位置に移動させた状態で、キャビティ内に溶融樹脂を射出することにより前記平面板に樹脂枠を一体化する工程と、を備える点にある。
【0013】
更に、上記目的を達成するための本発明に係るガラスインサート成形用金型を用いたハウジングケースの製造方法の特徴構成は、上記押出し機構を備えたガラスインサート成形用金型を用い、前記スライドコアを前記平面板位置決め位置に移動させた状態で、前記固定型の前記平面板を挟持する面に前記平面板を配置する工程と、位置決めされた前記平面板を、当該平面板を挟持する面に吸着固定する工程と、前記平面板を吸着した前記固定型と前記可動型とを型締めする工程と、型締め後に、前記スライドコアを前記キャビティ形成位置に移動させた状態で、キャビティ内に溶融樹脂を射出することにより前記平面板に樹脂枠を一体化する工程と、型開き後に、前記スライドコアを前記ガラスインサート成形品押出し位置に移動させる工程と、を備える点にある。
【0014】
また、前記ハウジングケースの製造方法は、前記平面板が、前記ガラス板に加飾が施されたものであると好適である。
【0015】
また、前記ハウジングケースの製造方法は、前記平面板が、前記ガラス板にガラス用接着剤層、プライマー層、樹脂用接着剤層を順次形成されたものであると好適である。
【0016】
また、前記ハウジングケースの製造方法は、前記平面板が、前記固定型と前記可動型によって挟持される部分に開口部を有していると好適である。
【0017】
また、前記ハウジングケースの製造方法は、前記溶融樹脂の材料が、成形収縮率0.6%以下のものであると好適である。
【0018】
また、前記ハウジングケースの製造方法は、前記平面板を吸着した前記固定型と前記可動型との間に転写フィルムを挟み込む工程をさらに備え、前記溶融樹脂の射出と同時に前記転写フィルムの絵付け部分を前記平面板に一体化された前記樹脂枠に転写すると好適である。
【0019】
本発明のガラスインサート成形用金型およびハウジングケースの製造方法によれば、小型の電気機器や通信機器に用いられるハウジングケースであって、当該ハウジングケース正面部分の寸法と略同一の寸法であり少なくともガラス板で構成される平面板と、前記平面板の裏面周縁部を支持するように前記平面板に一体化された樹脂枠とを備えるハウジングケースを得ることができる。このようなハウジングケースでは、ガラス板を主構成とする平面板の裏面周縁部を支持するように樹脂枠が一体化されるので、ハウジングケースの正面部分、特にLCD等の表示画面を覆う部分に充分な硬度を与えることができる。しかも、ガラスインサート成形用金型に設けられたスライドコアが、裏面周縁部を支持する樹脂枠を成形するためのキャビティを形成するのみならず、平面板の位置決め機構、さらに必要に応じてガラスインサート成形品の押出し機構を兼ねるため、ハウジングケースの製造が低コストで容易に行える。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係るハウジングケースの一実施例を示す斜視図
【図2】図1に示すハウジングケースのII−II線断面図
【図3】ハウジングケースの他の実施例を示す断面図
【図4】ハウジングケースの他の実施例を示す断面図
【図5】ハウジングケースの他の実施例を示す断面図
【図6】ハウジングケースの他の実施例を示す断面図
【図7】ハウジングケースの一実施例を示す背面図
【図8】ハウジングケースの他の実施例を示す背面図
【図9】ハウジングケースの他の実施例を示す背面図
【図10】ハウジングケースの他の実施例を示す背面図
【図11】ハウジングケースの他の実施例を示す背面図
【図12】ハウジングケースの他の実施例を示す背面図
【図13】ハウジングケースの他の実施例を示す斜視図
【図14】ハウジングケースの平面板構造の一実施例を示す断面拡大図
【図15】ハウジングケースの平面板構造の他の実施例を示す断面拡大図
【図16】ハウジングケースの他の実施例を示す斜視図
【図17】ハウジングケースの他の実施例を示す斜視図
【図18】ガラスインサート成形用金型の固定型の一実施例を可動型側から見た図
【図19】図18に示す固定型のXIX−XIX線断面図
【図20】固定型に平面板を配置した状態を可動型側から見た図
【図21】図20に示す固定型のXXI−XXI線断面図
【図22】ハウジングケースの製造工程の一実施例を示す断面図
【図23】ハウジングケースの製造工程の一実施例を示す断面図
【図24】ハウジングケースの製造工程の一実施例を示す断面図
【図25】ハウジングケースの製造工程の一実施例を示す断面図
【図26】図18の固定型を用いて得られたハウジングケースの一例を示す図
【図27】ガラスインサート成形用金型の固定型の他の実施例を可動型側から見た図
【図28】ガラスインサート成形用金型の固定型の他の実施例を可動型側から見た図
【図29】図27の固定型を用いて得られたハウジングケースの一例を示す図
【図30】図28の固定型を用いて得られたハウジングケースの一例を示す図
【図31】ガラスインサート成形用金型の固定型の他の実施例を可動型側から見た図
【図32】図31に示す固定型のXXXII−XXXII線断面図
【図33】図31の固定型を用いて得られたハウジングケースの一例を示す図
【図34】ガラスインサート成形用金型の固定型の他の実施例を示す断面図
【図35】図18の固定型を用いて得られたハウジングケースの他の例を示す図
【図36】ガラスインサート成形用金型の平面板を吸着した固定型と可動型との間に転写フィルムを挟み込んだ場合における実施例を示す図
【図37】図36のガラスインサート成形用金型を用いて転写フィルムを挟み込む工程を経た後に型締めした場合における一例を示す図
【図38】従来のハウジングケースを示す斜視図
【図39】ハードコート層を有するフィルムの代わりにガラス板を金型内に挿入し、ハウジングケースの正面全体にガラス板を一体化させた場合の成形収縮の様子を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0021】
1.ハウジングケース
以下、図面を用いて本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1に示すハウジングケース1は、当該ハウジングケース正面の寸法と略同一の寸法であり少なくともガラス板で構成される平面板2と、平面板2の裏面周縁部(対向面周縁部)を支持するように平面板に一体化された樹脂枠3とを備えたものである。なお、図1中、(b)は(a)の分解図である。図示しないもう一方のバックケースとともに一体化され、これらの内側に、各種電子部品を搭載した基板を保持することにより、小型の電気機器や通信機器が構成される。
【0022】
平面板2は、少なくともガラス板で構成され、当該構成によってハウジングケース1の正面部分に充分な硬度(9H以上)を与えることができる。ガラス板としては、普通板ガラス、強化板ガラス、磨き板ガラスなどを用いることができる。また、ガラス板の厚みは強度の点から0.3mm〜2.0mmとするのが好ましい。より好ましくは0.5mm〜2.0mm、さらに好ましくは0.8mm〜1.5mmである。
【0023】
本発明者は、課題を解決するための手段として、最初、従来のハウジングケースにおいて、ケース正面のハードコート層103に代えて平面板2を合成樹脂層に一体化させることを考えていた。すなわち、ケース正面では平面板2と合成樹脂層101とが全面的に密着する構成である。しかしながら、射出成形用金型内で成形された合成樹脂層101は、図39に示されるように冷却固化時に成形収縮し、しかも平面板2と全面的に密着している面側では成形収縮せず、反対面側のみで成形収縮が進むため(例えば、図39の矢印方向)、得られたハウジングケース106に反りが発生することがあった。そして、平面板2は、反りに耐えられなくなると破損した。
【0024】
そこで、本発明は、平面板2の裏面のうち周縁部においてのみ一体化させるように、樹脂枠3とした。例えば、図1においては、樹脂枠3は平面板2の裏面周縁部全周を支持している。本発明の樹脂枠3は平面板2と全面的に密着していないので、当該樹脂枠3が冷却固化時に成形収縮しても、その影響は平面板2全面までおよびにくい。したがって、得られたハウジングケースに反りが発生することを防止できる。
【0025】
樹脂枠3としては、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、AN樹脂などの汎用樹脂を挙げることができる。また、ポリフェニレンオキシド・ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリカーボネート変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、超高分子量ポリエチレン樹脂などの汎用エンジニアリング樹脂やポリスルホン樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、ポリフェニレンオキシド系樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリイミド樹脂、液晶ポリエステル樹脂、ポリアリル系耐熱樹脂などのスーパーエンジニアリング樹脂を使用することもできる。とくに成形収縮率0.6%以下の物性を持つ樹脂材料を樹脂枠3に用いると反り防止の点でより好ましく、このような樹脂材料としては、例えばポリアクリル系樹脂などが該当する。また、樹脂枠3は、着色されていても、着色されていなくても良い。
【0026】
平面板2と樹脂枠3との一体化は、次のようにして行う。まず、可動型と固定型とからなる成形用金型内に平面板2を送り込み、真空吸引等でキャビティ面の所定位置に平面板2を固定する。成形用金型を閉じた後、ゲートより溶融樹脂をキャビティ内に射出充満させ、樹脂枠3を形成するのと同時にその樹脂枠3に平面板2を接着させる。樹脂枠3を冷却した後、成形用金型を開いて平面板2と樹脂枠3との一体化物を取り出す。なお、成形用金型が垂直方向に型開きする縦型の場合、平面板2は真空吸引等を行わずに固定することもできる。
【0027】
なお、平面板2と樹脂枠3との一体化物は、箱型(図2〜図4を参照)とすることもできるし、蓋型(図5、図6を参照:破線は対応するバックケース)とすることもできる。なお図2は、図1におけるII−II線断面図であり、図3〜図6は図2の別実施形態である。また、箱型、蓋型に関わらず、図2、図5及び図6に示すように平面板2の寸法がハウジングケース1正面の寸法より僅かに小さくすれば、図3及び図4に示すように平面板2の寸法がハウジングケース1正面の寸法と同一である場合と比較して、ハウジングケース1の外観デザイン設計の自由度を増すことができる。例えば、ハウジングケース1の角部に丸みを設けるようなデザインが可能である(図2、図5及び図6を参照)。また、箱型において、図2及び図3に示すように箱の側壁の厚みよりも平面板2と樹脂枠3との一体化幅を大きくすれば、その分だけ平面板2の支持面積が増加するため、ハウジングケース1の強度を増すことができる。
【0028】
また、本発明のハウジングケース1の構成は、上記した態様に限定されるものではなく、たとえば、樹脂枠3が、平面板2の裏面周縁部のうち1〜3辺を支持しているようにしても良いし(図7〜図10を参照)、複数に分割されて平面板2の裏面周縁部を支持しているようにしても良い(図11及び図12を参照)。これらの場合、当該樹脂枠3が冷却固化時に成形収縮しても、成形収縮の影響が平面板2全面まで、より一層およびにくくなる。すなわち、樹脂枠3が平面板2の裏面周縁部全周を支持する場合と比べて、ハウジングケースの反り防止効果が向上する。また、樹脂枠3が平面板2の裏面周縁部全周を支持しない場合、ハウジングケース1の側面に入出力端子などを設け易い。
【0029】
また、平面板2が、ガラス板の裏面に加飾が施されたものであっても良い(図示せず)。ガラス板は充分な硬度(9H以上)を有しているため傷付きにくく、当該ガラス板を通して視認される裏面の加飾はその美しさが損なわれることはない。
【0030】
また、ハウジングケース1が表示装置を備えた機器のハウジングケースである場合、平面板2が、少なくとも表示装置のための表示窓部を除いて、ガラス板の表面または/および裏面に加飾が施されたものであっても良い(図13を参照)。図13中、(b)は(a)の分解図であり、2Aは加飾部、2Bは非加飾部を示す。ガラス板の表面に加飾が施された場合、ガラス板は充分な硬度(9H以上)を有しているため傷付きにくく、非加飾部2Bにおいて当該ガラス板を通して視認される表示装置の表示画面はその見やすさが損なわれることはない。また、ガラス板の裏面に加飾が施された場合、ガラス板は充分な硬度(9H以上)を有しているため傷付きにくく、ガラス板の表面に加飾が施された場合と同様に表示画面の見やすさが損なわれないだけでなく、加えて加飾部2Aにおいてガラス板を通して視認される裏面の加飾はその美しさも損なわれることはない。
【0031】
また、本発明のハウジングケース1は、平面板2が、平面板2と樹脂枠3との密着力を向上させるための層を有していても良い。例えば、ガラス板2Eの裏面に加飾が施されておらず、ガラス板2Eの裏面と樹脂枠3とが、ガラス用接着剤層2F、プライマー層2G、樹脂用接着剤層2Hを介して一体化されているようにすることができる(図14を参照)。なお、図14は、平面板2の断面拡大図であり、図14中の2Dは表面加飾層である。
【0032】
ガラス用接着剤層2Fには、公知のガラス用接着剤を使用すれば良く、例えば、ポリエステル系樹脂からなるガラス用接着剤を用いることができる。
【0033】
プライマー層2Gとしては、公知のプライマー材料を使用すれば良く、例えば、ポリエステル系樹脂からなるプライマー材料を用いることができる。また、ガラス用接着剤層2Fと樹脂用接着剤層2Hの密着力が高い場合には、プライマー層2Gを省略することもできる。
【0034】
樹脂用接着剤層2Hとしては、公知のガラス用接着剤を使用すれば良く、例えば、塩酢ビ・アクリル系樹脂からなる樹脂用接着剤を用いることができる。
【0035】
また、本発明のハウジングケース1は、平面板2が、次に示すような平面板2と樹脂枠3との密着力を向上させるための層を有していても良い。すなわち、ガラス板2Eの裏面に加飾が施され、且つ加飾を構成する層が平面板2の裏面と樹脂枠3との一体化部分においてガラス用接着剤層を兼ねており、平面板2の裏面と樹脂枠3とが、プライマー層2G、樹脂用接着剤層2Hを介して一体化されているようにすることができる(図15を参照)。なお、図15は、平面板2の断面拡大図である。また、図15中の2Iは裏面加飾層であり、一体化部分においてガラス用接着剤層を兼ねている。この加飾兼ガラス用接着剤層2Jとしては、ガラス用接着剤層2Fと同様の材料に適切な色の顔料または染料を着色剤として含有させたものを用いることができる。なお、この場合、ガラス板は充分な硬度(9H以上)を有しているため傷付きにくく、当該ガラス板を通して視認される裏面の加飾はその美しさが損なわれることはない。
【0036】
ガラス用接着剤層2F、プライマー層2G、樹脂用接着剤層2H及び加飾兼ガラス用接着剤層2Jの形成方法としては、スクリーン印刷法などを用いると良い。
【0037】
また、本発明のハウジングケース1は、平面板2が、開口部2Cを有しているように構成しても良い(図16を参照)。図16に示すハウジングケース1は、図示しないもう一方のバックケースとともに一体化され、これらの内側に、フラッシュメモリ等の電子素子、液晶パネル等の表示装置、操作音を出すための圧電スピーカー、バッテリー、並びに開口部2Cに嵌入される操作パネルを配した基板を保持することにより、デジタルオーディオプレーヤーが構成される。なお、図16中、(b)は(a)の分解図である。
【0038】
また、本発明のハウジングケース1が平面板2に開口部2Cを有する場合、図17に示すように開口部2C周囲を支持するように平面板2に一体化された開口部用樹脂枠4をさらに備えるようにすると良い。このように構成することにより、ハウジングケース1の強度を増すことができる。なお、開口部用樹脂枠4についても樹脂枠3と同様の各種実施態様をとることができる。なお、図17中、(b)は(a)の分解図である。
【0039】
また、本発明のハウジングケース1は、図2、図5及び図6に示すように平面板2の側面を樹脂枠3が覆って段差が生じないようにすると、製品の使用時に平面板2の側面が何かに引っ掛かって平面板2と樹脂枠3とが剥離するおそれがない。
【0040】
2.ガラスインサート成型用金型およびハウジングケースの製造方法
次に、ガラスインサート成型用金型およびハウジングケースの製造方法について説明する。まず、本実施形態において得られるハウジングケース1を、図26、図29、図30、図33及び図35を参照しながら説明する。これらの図に示すハウジングケース1は、当該ハウジングケース正面面積のほとんどを占め少なくともガラス板で構成される平面板2と、平面板2の裏面周縁部を支持し且つ平面板2の端面のうち少なくとも当該支持部分に連続する部分を被覆するように平面板2に一体化された樹脂枠3とを備えたものである。なお、図26、図29、図30、図33及び図35中、(a)は正面図、(b)は背面図、(c)及び(d)は断面図である。図示しないもう一方のバックケースとともに一体化され、これらの内側に、各種電子部品を搭載した基板を保持することにより、小型の電気機器や通信機器が構成される。
【0041】
本発明においては、平面板2の裏面のうち周縁部において一体化する樹脂枠3をインサート成形している。例えば、図26、図33及び図35においては、樹脂枠3は平面板2の裏面周縁部の全てを、図29及び図30においては、樹脂枠3は平面板2の裏面周縁部のうち一部を切り欠いた略C字状部分を支持している。本発明の樹脂枠3は平面板2と全面的に密着していないので、当該樹脂枠3が冷却固化時に成形収縮しても、その影響は平面板2全面までおよびにくい。したがって、得られたハウジングケースに反りが発生することを防止できる。
【0042】
また、本発明は、平面板2の端面を樹脂枠3が覆っているので、製品の使用時に平面板2の端面が何かに引っ掛かって平面板2と樹脂枠3とが剥離するおそれがない。
【0043】
平面板2と樹脂枠3との一体化は、以下に説明するガラスインサート成形用金型を用いて行われる。
【0044】
このガラスインサート成形用金型は、型締めによって固定型15と可動型10との間にガラス板を主構成とする平面板2を挟持するとともに、平面板2の固定型15との対向面周縁部及び平面板2の端面が面するキャビティを形成する金型であって、固定型15が、平面板2の当該固定型15との対向面周縁部に接する底部(以下、先端底部5bという)と当該先端底部5bに連続して平面板2の端面に位置決め可能に接触する壁部(以下、先端壁部5aという)とを先端に有するスライドコア5と、平面板2を挟持する面(以下、平面板当接面7という)に設けられた吸引孔8と、を備えている(図18及び図19を参照)。ここで、図19は、図18のXIX−XIX線断面図である。
【0045】
スライドコア5は、図示しない駆動部により、先端底部5bを固定型15の平面板2を挟持する面より突出させず且つ先端壁部5aを平面板2と接触させる平面板位置決め位置I(図19、図21及び図22を参照)と、先端底部5b及び先端壁部5aを共に平面板2と離間させるキャビティ形成位置II(図23、図24を参照)との間を、型締め方向に進退可能である。また、スライドコア5は、必要に応じて先端底部5bを固定型15の平面板当接面7より突出させるガラスインサート成形品押出し位置III(図25を参照)まで前進可能とすることができる。
【0046】
なお、図19、図21及び図22では、スライドコア5の先端底部5bと固定型15の平面板当接面7が面一で接しているが、両者の間に溝部14が形成されていても良い(図34を参照)。この場合、成形時に溝部14に充填される分だけ平面板2の裏面周縁部(対向面周縁部)に一体化する樹脂枠3の面積が広くなる。また、平面板位置決め位置Iについては、図19、図21及び図22に示すように先端底部5bを固定型15の平面板当接面7に揃えても良いが、先端壁部5aを平面板2の端面と接触させることができれば位置決め可能なので、先端底部5bが固定型15の平面板当接面7より後退していても良い。
【0047】
平面板2の端面に位置決め可能に接触する先端壁部5aは、金型パーティング面6に垂直な方向から見た場合に、例えば図18に示すような対向する2つのコ字状とすることができる。もちろん、この実施態様に限定されるものではなく、平面板2の形状に応じて平面板2が位置ずれしないような配置を適宜決定すれば良く、例えば、平面板2の各コーナーに先端壁部5aを配置したり、平面板2の各辺の一部に先端壁部5aを配置したりするなどできる。平面板2の形状としては、図18に示すような角に丸みを帯びた矩形の他、角に丸みのない矩形、楕円形状など自由である。また、スライドコア5の数も限定されない。さらには、スライドコア5は、図18のように平面板2の全周に対して部分的に設けても良いし、平面板2の全周を先端壁部5aで完全に囲っても良い。
【0048】
上述のように構成されたガラスインサート成形用金型を用いてハウジングケース1を製造する方法について説明する。
【0049】
まず、スライドコア5を平面板位置決め位置Iに移動させた状態で、固定型15の平面板当接面7上に、平面板2を配置する(配置工程;図20、図21を参照)。ここで、図21は、図20のXXI−XXI線断面図である。
【0050】
そして、この位置決め状態で、平面板当接面7に設けられた吸引孔8からエアー12を吸引することにより、当該平面板当接面7に平面板2を吸着固定する(吸着固定工程;図22を参照)。なお、平面板の吸着固定にはエアー吸引以外の手段を用いても良く、例えば平面板2を挟持する面に吸盤を設けても良い。
【0051】
さらに、可動型10を、平面板2を吸着した固定型15に向かって前進移動させ型締めし(型締め工程)、可動型10と固定型15の平面板当接面7との間に平面板2を挟持するとともに、固定型15と可動型10と平面板2とにより金型空間であるキャビティ13を形成する(図23を参照)。ここで、スライドコア5は、図示しない駆動部により、先端底部5bが平面板2の裏面周縁部と所定の距離だけ離間する位置まで後退移動して、スライドコア5の先端壁部5a及び先端底部5bと今まで接していた部分まで溶融樹脂の充填を可能としている(キャビティ形成位置II)。なお、スライドコア5の後退移動は、可動型10の前進移動開始直前、前進移動中、前進移動完了直後のいずれのタイミングで行っても良い。
【0052】
その後に、スライドコア5をキャビティ形成位置IIに移動させた状態で、ゲート11を通じて射出した溶融樹脂をキャビティ13内に充填する。これにより、樹脂枠3が、平面板2の裏面周縁部を支持し且つ平面板2の端面のうち少なくとも当該支持部分に連続する部分を被覆するように平面板2に一体化され、ガラスインサート成形品であるハウジングケース1が得られる(一体化工程;図24を参照)。
【0053】
溶融樹脂の材料としては、樹脂枠3を構成するものとして先に例示した各種の樹脂を使用することができる。とくに成形収縮率0.6%以下の物性を持つものを用いると反り防止の点でより好ましく、例えばポリアクリル系樹脂などが好ましい。また、溶融樹脂は、着色されていても、着色されていなくても良い。
【0054】
そして、可動型10を固定型15から離間するように後退移動、すなわち型開きした後、スライドコア5を駆動部によりガラスインサート成形品押出し位置IIIに前進移動させる(押出し工程;図25を参照)。これにより、スライドコア5がエジェクターピンの役割を果たし、ハウジングケース1は固定型15から良好に引離されることになり、この金型装置から容易に取り外すことが可能になる。なお、別に専用のエジェクターピンが存在する場合は、スライドコア5によってガラスインサート成形品の押出しを行わなくても良い。
【0055】
上述のように、本実施形態によるガラスインサート成形用金型を用いたハウジングケースの製造方法によれば、スライドコア5が、裏面周縁部を支持する樹脂枠3を成形するためのキャビティを形成するのみならず、平面板2の位置決め機構、さらに必要に応じてガラスインサート成形品の押出し機構を兼ねるため、ハウジングケース1の製造が低コストで容易に行える。
【0056】
なお、平面板2と樹脂枠3との一体化物は、蓋型(図26、図29及び図30を参照)とすることもできるし、箱型(図33、図35を参照)とすることもできる。なお、図26(c)及び(d)は、夫々図26(b)におけるXXVIc−XXVIc断面図、XXVId−XXVId断面図である。また、図29(c)及び(d)は、夫々図29(b)におけるXXIXc−XXIXc断面図、XXIXd−XXIXd断面図であり、図30(c)及び(d)は、夫々図30(b)におけるXXXc−XXXc断面図、XXXd−XXXd断面図である。また、箱型とする場合でも、図33に示すようにスライドコア5の外側に箱の側壁用のキャビティを形成するタイプや、図35に示すようにスライドコア5の後退により側壁用のキャビティを形成するタイプが考えられる。図33及び図35も上記と同様に、図33(c)及び(d)は、夫々図33(b)におけるXXXIIIc−XXXIIc断面図、XXXIId−XXXIId断面図であり、図35(c)及び(d)は、夫々図35(b)におけるXXXVc−XXXVc断面図、XXXVd−XXXVd断面図である。
【0057】
また、平面板2のうちスライドコア5に対応しない部分は、図26、図33及び図35に示すようにその裏面周縁部及び端面全てにおいて樹脂枠3と一体化する必要はない。例えば図29に示すように端面においてのみ樹脂枠3と一体化している部分があっても良いし、図30に示すように裏面周縁部及び端面のいずれにおいても樹脂枠3と一体化していない部分があっても良い。図29に示すハウジングケース1を得るためには、図27に示すように、図18における平面板当接面7をキャビティ形成部9の下側内壁まで拡大し、ガラス板2Eの裏面周縁部の該当部分に溶融樹脂が充填されないようにする。また、図30に示すハウジングケース1を得るためには、図28に示すように、図18における平面板当接面7はそのままに当該平面板当接面7下端までキャビティ形成部9の下側内壁を移動させ、ガラス板2Eの裏面周縁部及び端面の該当部分に溶融樹脂が充填されないようにする。
【0058】
また、平面板2は、図26、図29、図30、図33及び図35に示すようにガラス板に加飾が施されたものでも良いし、ガラス板に加飾が施されていないスケルトンタイプでも良い。図26、図29、図30、図33及び図35中、2Aは加飾部、2Bは透明窓となる非加飾部である。
【0059】
ガラス板の裏面への加飾は、加飾層を印刷形成することによって施す。加飾層の材質としては、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリエステルウレタン系樹脂、セルロースエステル系樹脂、アルキド樹脂などの樹脂をバインダーとし、適切な色の顔料または染料を着色剤として含有する着色インキを用いると良い。印刷方法としては、スクリーン印刷法などを用いると良い。また、単色ベタの場合には、スプレーコート法などの各種コート法を採用することもできる。
【0060】
また、加飾層は、金属薄膜層からなるもの、あるいは印刷層と金属薄膜層との組み合わせからなるものでも良い。金属薄膜層は、加飾層として金属光沢を表現するためのものであり、真空蒸着法、スパッターリング法、イオンプレーティング法、鍍金法などで形成する。この場合、表現したい金属光沢色に応じて、アルミニウム、ニッケル、金、白金、クロム、鉄、銅、スズ、インジウム、銀、チタニウム、鉛、亜鉛などの金属、これらの合金又は化合物を使用する。部分的な金属薄膜層を形成する場合の一例としては、金属薄膜層を必要としない部分に溶剤可溶性樹脂層を形成した後、その上に全面的に金属薄膜を形成し、溶剤洗浄を行って溶剤可溶性樹脂層と共に不要な金属薄膜を除去する方法がある。この場合によく用いられる溶剤は、水又は水溶液である。また、別の一例としては、全面的に金属薄膜を形成し、次に金属薄膜を残しておきたい部分にレジスト層を形成し、酸又はアルカリでエッチングを行い、レジスト層を除去する方法がある。
【0061】
また、平面板2の樹脂枠3との一体化面(裏面周縁部)を粗面化しておけば、平面板2と樹脂枠3との密着力を向上させることができる。
【0062】
また、本発明のガラスインサート成形用金型は、平面板2を吸着した固定型15と可動型10との間に転写フィルム17を挟み込み可能である成形同時絵付け手段16(図36を参照)を備えることもできる。この場合、平面板2を吸着した固定型15と可動型10との間に転写フィルム17を挟み込む工程(挟み込み工程)を経た後に型締めすることにより(図37を参照)、溶融樹脂の射出と同時に転写フィルム17の絵付け部分を平面板2に一体化された樹脂枠3に転写することができる。すなわち、本発明のガラスインサート成形用金型に、成形同時転写用金型としての働きもさせるものである。
【0063】
転写フィルム17は、長尺状の基体シート上に転写層を有するものである。転写層は、剥離層、図柄層、接着層などが順次積層されたものである。剥離層は基体シートと転写層との剥離性を付与する層である。図柄層は射出成形品表面に装飾性や機能性を付与する層である。図柄層は通常の印刷図柄や導電材で形成された導電パターンなどがある。接着層は転写層と成形品である樹脂枠3とを接着させる層である。
【0064】
転写フィルム17は、図36に示すようなフィルム送り装置によって、転写フィルム17の絵付け部分が金型間に所定ピッチずつ送り込まれるようにしても良い。あるいは、枚葉で送り込まれるようにしても良い。
【0065】
なお、様々な実施形態のうちの任意の実施形態を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。本発明は、添付図面を参照しながら好ましい実施形態に関連して充分に記載されているが、この技術の熟練した人々にとっては種々の変形や修正は明白である。そのような変形や修正は、請求の範囲による本発明の範囲から外れない限りにおいて、その中に含まれると理解されるべきである。
【0066】
以下に、上記実施形態における数値の一例を記載する。しかしながら、本発明の適用範囲は、これに限定されるものではない。
【0067】
(実施例1)
縦88mm、横38mm、厚み1mmのガラス板に操作パネル用の円形の開口部を設けた。次いで、ガラス板の一方の面にポリエステル系樹脂をバインダーとして着色剤を含有するインキを用い、液晶画面用の表示窓部を除いてスクリーン印刷法にて加飾層を形成した。次に、ガラス板について加飾の施されていない面の周縁部全周には、スクリーン印刷法にてポリエステル系樹脂からなるガラス用接着剤層、ポリエステル系樹脂からなるプライマー層、塩酢ビ・アクリル系樹脂からなる樹脂用接着剤層を順次形成して平面板を得た。
【0068】
この平面板を、可動型と固定型とからなる成形用金型内に送り込み、真空吸引でキャビティ面の所定位置に固定し、成形用金型を閉じた後、ゲートより溶融状態のポリアクリル系樹脂をキャビティ内に射出充満させ、矩形の樹脂枠を形成するのと同時にその樹脂枠と平面板の非加飾面とを樹脂用接着剤層、プライマー層、ガラス用接着剤層を介して接着させた。樹脂枠を冷却した後、成形用金型を開いて平面板の裏面周縁部全周にて樹脂枠と一体化した物を取り出し、縦90mm、横40mm、高さ4mm、角部R1mmのデジタルオーディオプレーヤー用ハウジングケースを得た。
【0069】
(実施例2)
縦88mm、横38mm、厚み1mmのガラス板に操作パネル用の円形の開口部を設けた。次いで、ガラス板の一方の面に液晶画面用の表示窓部を除いてスクリーン印刷法にてポリエステル系樹脂をバインダーとして着色剤を含有するインキを用いて加飾兼ガラス用接着剤層を形成し、さらにガラス板の加飾の施された面の周縁部全周には、スクリーン印刷法にてポリエステル系樹脂からなるプライマー層、塩酢ビ・アクリル系樹脂からなる樹脂用接着剤層を順次形成して平面板を得た。
【0070】
この平面板を、可動型と固定型とからなる成形用金型内に送り込み、真空吸引でキャビティ面の所定位置に固定し、成形用金型を閉じた後、ゲートより溶融状態のポリアクリル系樹脂をキャビティ内に射出充満させ、矩形の樹脂枠を形成するのと同時にその樹脂枠と平面板の加飾面とを樹脂用接着剤層、プライマー層を介して接着させた。樹脂枠を冷却した後、成形用金型を開いて平面板の裏面周縁部全周にて樹脂枠と一体化した物を取り出し、縦90mm、横40mm、高さ4mm、角部R1mmのデジタルオーディオプレーヤー用ハウジングケースを得た。
【0071】
(実施例3)
ガラス板の周縁部だけでなく、平面板の非加飾面の開口部周囲全体にもガラス用接着剤層、プライマー層、樹脂用接着剤層を順次設けて平面板を得、さらに射出成形によって矩形の樹脂枠及び円形の開口部用樹脂枠を形成するのと同時にその樹脂枠及び開口部用樹脂枠と平面板の非加飾面とを樹脂用接着剤層、プライマー層、ガラス用接着剤層を介して接着させた点以外、実施例1と同様とした。
【0072】
(実施例4)
ガラス板の周縁部だけでなく、平面板の加飾面の開口部周囲全体にもプライマー層、樹脂用接着剤層を順次設けて平面板を得、さらに射出成形によって矩形の樹脂枠及び円形の開口部用樹脂枠を形成するのと同時にその樹脂枠及び開口部用樹脂枠と平面板の加飾面とを樹脂用接着剤層、プライマー層を介して接着させた点以外、実施例2と同様とした。
【0073】
(実施例5)
樹脂枠が2つに分割されている点以外、実施例3と同様とした。
【0074】
(実施例6)
樹脂枠及び開口部用樹脂枠が各々2つに分割されている点以外、実施例4と同様とした。
【0075】
(実施例7)
縦88mm、横38mm、厚み1mmのガラス板に操作パネル用の円形の開口部を設けた。次いで、ガラス板の一方の面にポリエステル系樹脂をバインダーとして着色剤を含有するインキを用い、液晶画面用の表示窓部を除いてスクリーン印刷法にて加飾層を形成した。次に、ガラス板について加飾の施されていない面の周縁部全周には、スクリーン印刷法にてポリエステル系樹脂からなるガラス用接着剤層、ポリエステル系樹脂からなるプライマー層、塩酢ビ・アクリル系樹脂からなる樹脂用接着剤層を順次形成して平面板を得た。
【0076】
前述した本発明のガラスインサート成形用金型を用い、スライドコアを平面板位置決め位置に移動させた状態で、固定型の平面板を挟持する面に平面板を配置し、位置決めされた平面板を吸引孔からエアーを吸引することにより平面板を挟持する面に吸着固定した。次いで、平面板を吸着した固定型と可動型とを型締めした後に、スライドコアをキャビティ形成位置に移動させた状態でキャビティ内に溶融樹脂を射出することにより平面板に樹脂枠を一体化した。型開き後に、スライドコアをガラスインサート成形品押出し位置に移動させてガラスインサート成形品を取り出し、縦90mm、横40mm、高さ4mm、角部R1mmのデジタルオーディオプレーヤー用ハウジングケースを得た。
【0077】
(実施例8)
縦88mm、横38mm、厚み1mmのガラス板に操作パネル用の円形の開口部を設けた。次いで、ガラス板の一方の面に液晶画面用の表示窓部を除いてスクリーン印刷法にてポリエステル系樹脂をバインダーとして着色剤を含有するインキを用いて加飾兼ガラス用接着剤層を形成し、さらにガラス板の加飾の施された面の周縁部全周には、スクリーン印刷法にてポリエステル系樹脂からなるプライマー層、塩酢ビ・アクリル系樹脂からなる樹脂用接着剤層を順次形成して平面板を得た。
【0078】
実施例7と同様のガラスインサート成形を行い、縦90mm、横40mm、高さ4mm、角部R1mmのデジタルオーディオプレーヤー用ハウジングケースを得た。
【0079】
実施例1〜8のいずれのハウジングケースも、ケースの正面部分、特にLCD等の表示画面を覆う部分に充分な硬度を与えることができるものであった。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明は、例えば小型の電気機器や通信機器のハウジングケースを製造するための製造方法と、これに用いるガラスインサート成形用金型とに好適に利用することが可能である。
【符号の説明】
【0081】
1 :ハウジングケース
2 :平面板
2E :ガラス板
3 :樹脂枠
5 :スライドコア
5a :先端壁部
5b :先端底部
8 :吸引孔
10 :可動型
13 :キャビティ
15 :固定型
17 :転写フィルム
I :平面板位置決め位置
II :キャビティ形成位置
III :ガラスインサート成形品押出し位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
型締めによって固定型と可動型との間にガラス板を主構成とする平面板を挟持するとともに、前記平面板の前記固定型との対向面周縁部及び前記平面板の端面が面するキャビティを形成するガラスインサート成形用金型であって、
前記固定型が、前記平面板の当該固定型との対向面周縁部に接する底部と当該底部に連続して前記平面板の端面に位置決め可能に接触する壁部とを先端に有するスライドコアと、
前記平面板を挟持する面に設けられた吸引孔とを備え、
さらに前記スライドコアが、先端底部を前記固定型の前記平面板を挟持する面より突出させず且つ先端壁部を前記平面板と接触させる平面板位置決め位置と、前記先端底部及び前記先端壁部を共に前記平面板と離間させるキャビティ形成位置との間を、型締め方向に進退可能であることを特徴とするガラスインサート成形用金型。
【請求項2】
前記スライドコアが、前記平面板の全周に対して部分的に設けられている請求項1に記載のガラスインサート成形用金型。
【請求項3】
前記スライドコアが、さらに前記先端底部を前記固定型の前記平面板を挟持する面より突出させるガラスインサート成形品押出し位置まで前進可能である請求項1又は2に記載のガラスインサート成形用金型。
【請求項4】
前記平面板を吸着した前記固定型と前記可動型との間に転写フィルムを挟み込み可能である成形同時絵付け手段をさらに備えた請求項1から3のいずれか一項に記載のガラスインサート成形用金型。
【請求項5】
請求項1又は2に記載のガラスインサート成形用金型を用いたハウジングケースの製造方法であって、
前記スライドコアを前記平面板位置決め位置に移動させた状態で、前記固定型の前記平面板を挟持する面に前記平面板を配置する工程と、
位置決めされた前記平面板を、当該平面板を挟持する面に吸着固定する工程と、
前記平面板を吸着した前記固定型と前記可動型とを型締めする工程と、
型締め後に、前記スライドコアを前記キャビティ形成位置に移動させた状態で、キャビティ内に溶融樹脂を射出することにより前記平面板に樹脂枠を一体化する工程と、
を備えたことを特徴とするハウジングケースの製造方法。
【請求項6】
請求項3に記載のガラスインサート成形用金型を用いたハウジングケースの製造方法であって、
前記スライドコアを前記平面板位置決め位置に移動させた状態で、前記固定型の前記平面板を挟持する面に前記平面板を配置する工程と、
位置決めされた前記平面板を、当該平面板を挟持する面に吸着固定する工程と、
前記平面板を吸着した前記固定型と前記可動型とを型締めする工程と、
型締め後に、前記スライドコアを前記キャビティ形成位置に移動させた状態で、キャビティ内に溶融樹脂を射出することにより前記平面板に樹脂枠を一体化する工程と、
型開き後に、前記スライドコアを前記ガラスインサート成形品押出し位置に移動させる工程と、
を備えたことを特徴とするハウジングケースの製造方法。
【請求項7】
前記平面板が、前記ガラス板に加飾が施されたものである請求項5又は6に記載のハウジングケースの製造方法。
【請求項8】
前記平面板が、前記ガラス板にガラス用接着剤層、プライマー層、樹脂用接着剤層を順次形成されたものである請求項5から7のいずれか一項に記載のハウジングケースの製造方法。
【請求項9】
前記平面板が、前記固定型と前記可動型によって挟持される部分に開口部を有している請求項5から8のいずれか一項に記載のハウジングケースの製造方法。
【請求項10】
前記溶融樹脂の材料が、成形収縮率0.6%以下のものである請求項5から9のいずれか一項に記載のハウジングケースの製造方法。
【請求項11】
前記平面板を吸着した前記固定型と前記可動型との間に転写フィルムを挟み込む工程をさらに備え、
前記溶融樹脂の射出と同時に前記転写フィルムの絵付け部分を前記平面板に一体化された前記樹脂枠に転写する請求項5から10のいずれか一項に記載のハウジングケースの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【公開番号】特開2012−166567(P2012−166567A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−132206(P2012−132206)
【出願日】平成24年6月11日(2012.6.11)
【分割の表示】特願2008−535384(P2008−535384)の分割
【原出願日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【出願人】(000231361)日本写真印刷株式会社 (477)
【Fターム(参考)】