説明

ガラスセラミック焼結体およびその製造方法、並びにそれを用いた配線基板

【課題】2相以上のガラス相を含有するガラスセラミック焼結体およびその製造方法、並びにかかるガラスセラミック焼結体を用いた配線基板を提供する。
【解決手段】ガラス相α1、α2と結晶相βとを有するガラスセラミック焼結体において、前記ガラス相が組成の異なる2相以上のガラス相からなるとともに、前記ガラス相が、1価の金属元素、2価の金属元素、および3価の金属元素のうち少なくとも1種からなる軟化成分を酸化物換算した合量で1質量%以上含有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、電気素子収納用パッケージ、多層配線基板等に適用される配線基板等に最適なガラスセラミック焼結体およびその製造方法に関するものであり、また、これを絶縁基板として用いた配線基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年における情報通信技術の急速な発展は、情報通信機器の高周波数化をもたらし、これに伴って、高周波信号を伝送する配線基板では、特に周波数が100MHz以上の高周波信号の伝送損失を低減するために、配線層の低抵抗化と絶縁基板の低誘電率化、低誘電損失化が求められている。そこで、1000℃以下での焼成によって緻密化でき、金、銀、銅等の低抵抗金属を主成分とする配線層との同時焼成が可能であり、誘電率がアルミナの9〜10程度よりも低いガラスセラミックスを絶縁層とする配線基板が提案されている。
【0003】
また、シリコンを主体とする半導体素子に関して、近年、微細配線化、高速化が急速に進行している。半導体素子の絶縁膜としては、従来はSiOが用いられてきたが、この絶縁膜をさらに低誘電率化するため、例えば多孔質化すると、その機械的特性が著しく低下することが良く知られている。
【0004】
そこで、このような低誘電率の絶縁膜を使用した半導体素子を半導体素子収納用パッケージ上に実装(以下一次実装と称す)する際に、アンダーフィル剤を硬化させる(キュア工程)際に必要な熱処理や、素子のON/OFFに伴う素子の発熱/冷却に伴って、素子とパッケージ間の熱膨張係数のミスマッチにより熱応力が発生し、半導体素子が破壊してしまうといった問題が懸念されている。さらに、素子が大型化すると熱応力がそれに伴い大きくなるため、素子が破壊する危険性が増大する。
【0005】
そのため、一次実装に関わる熱応力を低減するために、パッケージの熱膨張係数をシリコンの熱膨張係数(2〜4ppm/℃:40〜400℃)に合わせることが求められている。
【0006】
例えば、ムライト、石英ガラス、ほう珪酸ガラスからなるガラスセラミック焼結体を絶縁材料とすることで、低熱膨張係数の多層セラミック回路基板が得られることが記載されている(特許文献1参照)。
【0007】
また、例えば、SiO、B、KO、Alからなる硼珪酸ガラスとアルミナ、コージェライト(コーディエライトと同意)、石英ガラスとを組み合わせることにより、低抵抗配線が可能な低誘電率のガラスセラミック基板が得られることが記載されている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特公平4−058198号公報
【特許文献2】特開平5−254923号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1、2において、用いた原料である、石英ガラス、ほう珪酸ガラスの2種以上のガラスのうち、石英ガラスとは、一般に、網目形成酸化物であるSiOの含有量が99.5質量%以上のガラスを指し、非晶質ではあるものの、例えば、代表的には、アルカリ金属酸化物や、アルカリ土類金属酸化物、Bなどの1価の金属元素、2価の金属元素、および3価の金属元素からなり、ガラスの軟化点を低下させる軟化成分をほとんど含んでおらず、非軟化成分であるSiOを99.5質量%以上含有するため、その軟化点が1600度以上と非常に高く、1000℃程度の温度では軟化することはないのであるから、石英ガラスは、ガラスと記載されてはいるもののフィラーとして振る舞い、焼結に寄与することはない。
【0009】
このような軟化成分を実質的に含有しない、例えば、石英ガラスは製造が困難であるため、一般的なガラスに比べ、2倍以上の単価を有し、非常に高価である。また、一般的なフィラーと比較すると数十倍の単価になる。
【0010】
つまり、このよう軟化成分を実質的に含有しない、例えば、石英ガラスなどのガラスは、焼結性を向上させる機能を具備せず、高価であるため、製造が困難で、しかも、非常に高価なガラスセラミック焼結体となるという課題がある。
【0011】
しかも、従来の軟化成分を含んだ1種以上のガラスと、軟化成分を実質的に含まない石英ガラスとを用いた上記特許文献1、2に記載されているガラスセラミック焼結体では、低抵抗金属を導体として使用し、かつ低誘電率であるため、比較的周波数の低い信号の伝送損失を低減するには優れるものの、未だ、100MHz以上の高周波における誘電損失が大きく、このため高周波での伝送損失が大きくなるという問題がある。
【0012】
例えば、特許文献1、2で用いた石英ガラスに換えて、1000℃以下の温度で軟化する、軟化成分を含んだガラスを用いたとしても、この2種のガラスは焼成の過程で互いに軟化流動して一体化するため、2種以上の異なる組成のガラス相がガラスセラミック焼結体に残存することはなく、ガラスセラミック焼結体には1種のガラス相のみが残ることになる。
【0013】
つまり、実質的に軟化成分を含んだ2種以上のガラス相と、結晶とを含むガラスセラミック焼結体については、未だ、報告されていないのである。
【0014】
このような実質的に軟化成分を含んだ2種以上のガラス相と、結晶とを含むガラスセラミック焼結体は、従来にない構造を具備することから、従来にない優れた特性を具備するガラスセラミック焼結体となることが期待される。
【0015】
従って、本発明は、軟化成分を酸化物換算した合量で1質量%以上含有する2種以上のガラス相と、結晶とを含むガラスセラミック焼結体およびその製造方法を提供することを目的とする。また、例えば、低い誘電率と、低い誘電損失とを有するガラスセラミック焼結体およびその製造方法、並びにかかるガラスセラミック焼結体を用いた配線基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明のガラスセラミック焼結体は、ガラス相と結晶相とを有するガラスセラミック焼結体において、前記ガラス相が組成の異なる2相以上のガラス相からなるとともに、前記ガラス相が、1価の金属元素、2価の金属元素、および3価の金属元素のうち少なくとも1種からなる軟化成分を酸化物換算した合量で1質量%以上含有することを特徴とする。
【0017】
また、本発明のガラスセラミック焼結体は、前記軟化成分の金属酸化物が、LiO、NaO、KO、MgO、CaO、SrO、BaO、B、Al、Ga、Y、Laの群から選ばれる少なくとも1種であることが望ましい。
【0018】
また、本発明のガラスセラミック焼結体は、前記組成の異なるガラス相のうち、少なくとも一種がSiOを70質量%以上含有することが望ましい。
【0019】
また、本発明のガラスセラミック焼結体は、SiOを70質量%以上含有する前記ガラス相が、前記軟化成分を酸化物換算した合量で10質量%以下含むことが望ましい。
【0020】
また、本発明のガラスセラミック焼結体は、2GHzにおける誘電損失が20×10−4以下、誘電率が7以下であることが望ましい。
【0021】
また、本発明のガラスセラミック焼結体は、Pb、Cd、Asの含有量が、酸化物換算の合量で0.01質量%以下であることが望ましい。
【0022】
また、本発明のガラスセラミック焼結体は、40〜400℃における熱膨脹係数が、5×10−6/℃以下であることが望ましい。
【0023】
本発明の配線基板は、以上説明したガラスセラミック焼結体からなる絶縁基板と、少なくともその表面に金、銀、銅のいずれかを主体とする配線層とを具備することを特徴とする。
【0024】
本発明のガラスセラミック焼結体の製造方法は、ガラス粉末と、少なくとも一種のセラミック粉末とを混合、成形して、得られた成形体を1050℃以下の温度で焼成し、前記ガラス粉末よりガラス相を形成するとともに、前記ガラス相を分相して、組成の異なる2相以上のガラス相を形成することを特徴とする。
【0025】
また、本発明のガラスセラミック焼結体の製造方法は、前記ガラス粉末が、焼成工程中に少なくとも一種の析出結晶相を析出する結晶化ガラスであることが望ましい。
【0026】
また、本発明のガラスセラミック焼結体の製造方法は、前記セラミック粉末のうち少なくとも一種が、前記析出結晶相のうち少なくとも一種と、同じ結晶である核形成剤であることが望ましい。
【0027】
また、本発明のガラスセラミック焼結体の製造方法は、前記核形成剤の含有量が、前記ガラス粉末と前記セラミック粉末との合量のうち0.5〜20質量%であることが望ましい。
【発明の効果】
【0028】
本発明のガラスセラミック焼結体によれば、ガラス相として組成の異なる2相以上のガラス相を含有せしめるとともに、前記ガラス相を、SiOなどの非軟化成分を除く、1価の金属元素、2価の金属元素、および3価の金属元素のうち少なくとも1種からなる軟化成分を酸化物換算した合量で1質量%以上含有するものとすることで、全く新規のガラスセラミック焼結体となり、例えば、従来、困難であった優れた特性を有するガラスセラミック焼結体を実現することができる。
【0029】
すなわち、従来のガラスセラミック焼結体では、1050℃以下で緻密化させるための焼結性を維持するためには、ガラス成分のSiO含有量を高めるとガラスの軟化点が高くなりすぎるため、軟化成分の含有量を低下させることには自ずと限界があった。一方、本発明のガラスセラミック焼結体によれば、ガラス相が分相する結果、SiO含有量が非常に高いガラス相を含有したガラスセラミック焼結体を、1050℃以下での焼結性を維持したまま実現することができ、ガラス相の誘電損失を低減させることができるため、低誘電損失のガラスセラミック焼結体を得ることができる。また、強度や熱膨張係数などの電気的特性以外の特性に関しても、従来、実現が困難な特性が実現されるのである。
【0030】
また、軟化成分の金属酸化物として、LiO、NaO、KO、MgO、CaO、SrO、BaO、B、Al、Ga、Y、Laが例示でき、これらの金属酸化物を用いることで、ガラス相の軟化点を低下させることができる。
【0031】
また、ガラス相のうち、少なくとも一種にSiOを70質量%以上含有させることで、このガラス相の誘電損失をさらに低減させることができる結果、より低誘電損失のガラスセラミック焼結体を得ることができる。
【0032】
また、さらには、前記SiOを70質量%以上含有するガラス相の、軟化成分を酸化物換算した合量を10質量%以下とすることにより、このガラス相の誘電損失をさらに低減させることができる結果、さらなるガラスセラミック焼結体の低誘電損失化を図ることができる。
【0033】
また、特に、ガラスセラミック焼結体の2GHzにおける誘電損失を20×10−4以下、誘電率を7以下とした場合には、高周波特性に優れたガラスセラミック焼結体となる。
【0034】
また、Pb、Cd、Asの含有量を、酸化物換算の合量で0.01質量%以下とすることで、有害物質を実質的に含まない環境負荷の少ないガラスセラミック焼結体となる。
【0035】
また、ガラスセラミック焼結体の40〜400℃における熱膨脹係数を5×10−6/℃以下とすること、即ち、シリコンと熱膨張係数を近似させることにより、1次実装に関わる熱応力を低減した配線基板の絶縁基板として好適なガラスセラミック焼結体となる。
【0036】
本発明の配線基板は、以上説明したガラスセラミック焼結体を絶縁基板として用いることで、低抵抗導体との同時焼成を可能とし、低誘電率、低誘電損失を兼ね備えるため高周波における伝送損失を低減した配線基板となる。
【0037】
また、本発明のガラスセラミック焼結体の製造方法によれば、焼成工程において、ガラスから組成の異なる2種以上のガラスを分相させることで、組成の異なる2種以上のガラスを含有するガラスセラミック焼結体を容易に作製することができる。
【0038】
また、前記ガラス粉末が結晶を析出する場合には、ガラスセラミック焼結体、結晶化により残留ガラス相の熱力学的安定性が低下するため、残留ガラス相の分相が促進される結果、更に容易に、組成の異なる2種以上のガラスを含有するガラスセラミック焼結体を容易に作製することができる。
【0039】
また、さらに、前記セラミック粉末のうち少なくとも一種として、前記析出結晶相のうち少なくとも一種と、同じ結晶のセラミック粉末を選択することにより、同じ結晶構造を有するセラミック粉末が、核形成剤として機能し、前記ガラス粉末中より前記析出結晶相を優先的に析出させることにより、残留ガラス相の熱力学的安定性がさらに低下する結果、残留ガラス相の分相をさらに促進させることが可能となるため、さらに、組成の異なる2種以上のガラスを含有するガラスセラミック焼結体を容易に作製することができる。
【0040】
また、前記核形成剤を、前記ガラス粉末と前記セラミック粉末との合量のうち0.5〜20質量%含有する成形体を焼成することで、組成の異なる2種以上のガラスを含有するガラスセラミック焼結体を容易に作製することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
本発明のガラスセラミック焼結体は、図1に示すように、ガラス相αと結晶相βとを有し、前記ガラス相として組成の異なる2相以上(図中α1およびα2)を含有することを大きな特徴とする。なお、組成の異なる2相以上のガラス相とは、いずれも非晶質のガラス相のことを意味し、このガラス相は、SiOなどの非軟化成分を除く、1価の金属元素、2価の金属元素、および3価の金属元素のうち少なくとも1種からなる軟化成分を酸化物換算した合量で1質量%以上含有するものものである。
【0042】
この軟化成分の金属酸化物の具体例としては、例えば、LiO、NaO、KO、MgO、CaO、SrO、BaO、B、Al、Ga、Y、Laなどが例示でき、これらの金属酸化物を用いることで、ガラス相の軟化点を低下させることができる。
【0043】
また、これらの軟化成分の金属酸化物のそれぞれのガラス相における含有量は、例えば、2質量%以上、5質量%以上、8質量%以上含有するものが例示される。
【0044】
なお、この軟化成分を酸化物換算した合量は、XRF(蛍光X線分析)やICP(誘導結合プラズマ)発光分析、原子吸光光度分析、等の組成分析手段、と、TEM(透過型電子顕微鏡)およびそれに付帯したXMA(X線マイクロアナライザー)を用いて求めることができる。
【0045】
具体的には、TEMを用いてガラス相を特定し、TEMに付帯したXMAを用いて、ガラス相の組成分析を行うことにより各元素の含有量を測定することができる。
【0046】
但し、XMAでは、N(窒素)よりも原子番号の小さい軽元素の測定が不可能なため、そのような軽元素が含有している場合には、直接TEM−XMAを用いた測定により、各成分の含有量を測定することが不可能である。
【0047】
従って、その場合には、以下の方法で各成分の含有量を算出する。まず、XRFやICP、原子吸光光度分析法により、ガラスセラミック中に含有している成分の特定を行う。その後、前記と同様にTEM−XMAを用いて各元素の含有量を測定する。
【0048】
そして、軽元素以外の元素に化学両論組成となる様に酸素を割り当てる。例えば、Si1モル%に対して酸素は2mol%、Al2モルに対して酸素3molを割り当てる。こうして全元素に酸素を割り当てた後、残った酸素のモル数に対応した軽元素を割り当て、その割り当てたモル数を、軽元素の含有量として算出する。
【0049】
この新規な構成を備えた本発明のガラスセラミック焼結体によれば、従来、困難であった優れた特性を有するガラスセラミック焼結体を実現することができる。
【0050】
すなわち、従来、軟化成分を酸化物換算した合量で1質量%以上含有する、特性の異なる2種のガラス粉末を用いたとしても、焼成過程においてこれらの2種のガラスは一体化してしまい、複数の異なる組成を有するとともに修飾元素を含有するガラス相を一つのガラスセラミック焼結体の中に同時に存在させることは不可能であった。
【0051】
一方、本発明のガラスセラミック焼結体によれば、ガラス相として組成の異なる2相以上のガラス相を含有せしめることで、特性の異なるガラス相を複合化することができるため、従来、困難であった優れた特性を有するガラスセラミック焼結体を実現することができる。
【0052】
例えば、従来のガラスセラミック焼結体では、ガラス成分のSiO含有量を高めるとガラスの軟化点が高くなりすぎるため、1050℃以下での焼結性を維持するためには、ガラス成分のSiO含有量を増大させるには自ずと限界があった。また、フィラーとして石英ガラスを用いた場合には、コストが増加するという問題があった。
【0053】
一方、本発明のガラスセラミック焼結体によれば、ガラス相が分相する結果、SiO含有量が非常に高いガラス相を含有したガラスセラミック焼結体を、1050℃以下での焼結性を維持したまま実現することができ、ガラス相の誘電損失を低減させることができるため、低誘電損失のガラスセラミック焼結体を得ることができる。また、強度や熱膨張係数などの電気的特性以外の特性に関しても、従来、実現が困難な特性が実現されるのである。
【0054】
ここで、本発明のガラスセラミック焼結体において、前記組成の異なるガラス相のうち、少なくとも一種がSiOを70質量%以上含有することが、より低い誘電率と、より低い誘電損失、特に、高周波における誘電損失の低減に効果的である。前記SiOの含有量のさらに望ましい範囲は75質量%以上、最適には、80質量%以上である。
【0055】
さらに、SiOを70質量%以上含有するガラス成分は、2種以上であっても良く、全ガラス成分中に占めるSiOを70質量%以上含有するガラス成分の割合が、20%以上、さらに30%以上であることが望ましい。
【0056】
さらには、このSiOを70質量%以上含有するガラス相における、軟化成分を酸化物換算した合量が、10質量%以下、特に5質量%以下、最適には3質量%以下とすることが、より低い誘電損失を実現するために望ましい。
【0057】
これは、これらの元素がガラス相の誘電率と誘電損失を増大させる成分であるため、その含有量が前記範囲よりも多い場合には、誘電率と、誘電損失、特に、高周波における誘電損失が大きくなる恐れがあることに起因する。
【0058】
また、本発明のガラスセラミック焼結体は、ガラス相のSiO含有量を向上させることで、2GHzにおける誘電損失が20×10−4以下、誘電率が7以下とすることができ、さらには、誘電損失は、15×10−4以下、最適には10×10−4以下、誘電率は、6.5以下、最適には6.0以下とすることも可能である。
【0059】
また、本発明のガラスセラミック焼結体は、少なくともSiO:20〜53質量%、B:2〜14質量%、Al:20〜61質量%、MgO:2〜24質量%、を含有し、さらに任意成分として、ZnO、CaO、SrO、BaO、ZrOの群から選ばれる少なくとも一種をその合量で0〜20質量%含有することが望ましい。
【0060】
例えば、上記ガラスセラミック焼結体を構成する成分を、上記範囲とした場合には、金、銀、銅といった低抵抗配線と同時焼成が容易で、かつ、アルミナよりも低い誘電率と、低い誘電損失を具備した本発明のガラスセラミック焼結体が得られる。
【0061】
上記ガラスセラミック焼結体の組成の特に望ましい範囲は、SiO:25〜48質量%、B:3〜11質量%、Al:28〜55質量%、MgO:4〜18質量%、ZnO、CaO、SrO、BaO、ZrOの群から選ばれる少なくとも一種をその合量で0〜15質量%である。
【0062】
また、本発明のガラスセラミック焼結体は、人体や環境へ与える悪影響を極力抑制するために、Pb、Cd、Asの含有量が、酸化物換算の合量で0.01質量%以下、特に0.005質量%以下、であることが望ましい。
【0063】
さらに、本発明のガラスセラミック焼結体は、結晶相として、コーディエライト、アルミナ、ガーナイト、スピネル、ムライト、フォルステライト、エンスタタイト、アノーサイト、スラウソナイト、セルジアン、ジルコニアの群から選ばれる少なくとも一種を含有することが望ましい。これらの結晶相を任意に組み合わせることにより、前記ガラスセラミック焼結体の特性、例えば、誘電率、誘電損失、熱膨張係数、抗折強度といった特性を、用途に応じて調整することができる。
【0064】
なお、これら結晶相は、ガラス粉末中から析出させても良いし、セラミック粉末として添加しても良く、その形成方法に制約を受けるものではない。
【0065】
また、本発明のガラスセラミック焼結体をかかる構成とすることにより、40〜400℃における熱膨脹係数が5.0×10−6/℃以下とすることができ、さらには、4.5×10−6/℃以下、最適には4.0×10−6/℃以下とすることも可能である。
【0066】
以下に、本発明のガラスセラミック焼結体の製造方法を説明する。
【0067】
本発明のガラスセラミック焼結体の製造方法は、ガラス粉末と、少なくとも一種のセラミック粉末とを混合、成形し、1000℃以下の温度で焼成する工程を具備してなり、かつ焼成工程で前記ガラス粉末を分相させることを特徴とするものである。
【0068】
かかる製造方法により、本発明のガラスセラミック焼結体を製造することにより、低誘電率かつ低誘電損失のガラス相を分相により生成させることができる結果、金、銀、銅等の低抵抗金属との同時焼成が可能で、低い誘電率と、低い誘電損失とを兼ね備えたガラスセラミック焼結体を得ることができる。
【0069】
ここで、本発明のガラスセラミック焼結体の製造方法では、前記ガラス粉末が、焼成中に少なくとも一種の析出結晶相を析出する結晶化ガラスであることが望ましい。
【0070】
このことにより、結晶化によりガラス粉末の組成が変化する結果、残留ガラスの分相が促進される結果、更なる誘電率、誘電損失を低下させることが可能となる。
【0071】
さらには、本発明のガラスセラミック焼結体の製造方法では、前記析出結晶相として、コーディエライト結晶相を含有することが望ましい。
【0072】
ここで、前記析出結晶相として、低誘電率と低誘電損失かつ低熱膨張係数という特性を有するコーディエライト結晶相を析出させることにより、アルミナよりも低い誘電率と、低い誘電損失を具備し、さらには、シリコンチップに近似した低い熱膨張係数を容易に達成することが可能となる。
【0073】
また、前記セラミック粉末のうち少なくとも一種が、前記析出結晶相のうち少なくとも一種と、同じ結晶である核形成剤であることが望ましい。
【0074】
これは、前記析出結晶相と、同じ結晶であるセラミック粉末が、結晶化を促進する核形成剤として働くことにより、残留ガラス相の分相をさらに促進させることが可能となり、さらなる低誘電損失化を図ることができるためである。ここで、前記析出結晶相および、この析出結晶相と同じ結晶であり、核形成剤として機能するセラミック粉末としては、コーディエライトが、低誘電率、低誘電損失、低熱膨張係数の観点から、最も望ましい。
【0075】
また、本発明のガラスセラミック焼結体の製造方法では、前記ガラス粉末として、少なくともSiO、Al、MgO、B、を含むほう珪酸系ガラス粉末を60〜99.5質量%と、前記セラミック粉末として、少なくともコーディエライト粉末0.5〜20質量%と、金属酸化物粉末0〜35質量%とを含有することが望ましい。
【0076】
このように、前記ガラス粉末とセラミック粉末とを、ガラスとコーディエライト粉末及び金属酸化物の組み合わせとすることにより、ガラスの軟化流動によりフィラーの最配列が効率よく行われる結果、より低温で、より短時間に、気孔の少ない緻密な燒結体を得ることができる。なお、上記ほう珪酸系ガラス粉末およびセラミック粉末の粒径は、0.5〜10μm、望ましくは0.8〜7μm、最適には1〜5μmである。
【0077】
前記ほう珪酸系ガラス粉末の量を上記範囲に限定したのは、該ガラス粉末の量が60重量%未満であると、1000℃以下の低温で焼結体を緻密化することができなくなるためであり、逆に99.5重量%より多いと、焼成時に焼結体がガラスの流動により原形を保てなくなるためである。前記ほう珪酸系ガラス粉末のさらに望ましい範囲は、65〜88.5質量%である。
【0078】
ここで、上記ほう珪酸系ガラス粉末中に上記成分を含有させる場合には、SiO、Al、MgOが、コーディエライト結晶相をガラスから析出させ、より低い熱膨脹係数と誘電率とを得るために有効であり、また、Bはガラスの軟化点を下げる効果が特に高い軟化成分であるため、Bを含有せしめることにより、酸化物粉末の量を増加させることが可能となるため、誘電率、誘電損失、熱膨張係数、抗折強度といった特性を、用途に応じて調整する範囲を拡大することができるため望ましい。
【0079】
一方、上記コーディエライト粉末は、前述のように、低誘電率、低誘電損失、低熱膨張係数を示し、かつガラス粉末中から該コーディエライト粉末を核として、より多くのコーディエライト結晶相を析出させることが可能となるため、ガラスの分相を促進させ、より低い誘電率とより低い誘電損失、さらには低い熱膨張係数を実現できる。
【0080】
ここで、コーディエライト粉末の量を、0.5質量%以上とすることで焼結体の熱膨張係数をシリコンと近似した値にまで低下させることが容易となり、また、20質量%以下とすることで1000℃以下の低温で焼結体を緻密化することが容易となる。
【0081】
さらに、金属酸化物粉末の量を、上記範囲内とすることが望ましいのは、この金属酸化物粉末の量を35質量%以下とすることで、1000℃以下の低温で焼結体を緻密化することが容易となるためである。なお、前記コーディエライト粉末のより望ましい範囲は、1.5〜15質量%、前記金属酸化物粉末のより望ましい範囲は、10〜30質量%、である。
【0082】
さらに、本発明のガラスセラミック焼結体の製造方法では、前記ほう珪酸系ガラス粉末が、少なくともSiO:30〜55重量%、Al:15〜40質量%、MgO:3〜25質量%、B:2〜15質量%、BaO:10〜40質量%を含有し、さらに任意成分として、ZnO、CaO、SrO、BaO、ZrOの群から選ばれる少なくとも一種以上をその合量で0〜25質量%、含有することが望ましい。
【0083】
上記ほう珪珪酸系ガラスの成分が、上記範囲内であることが望ましいのは、緻密な焼結体を得るために最適な軟化特性を得ると同時に、前述の分相を効果的に促進するためである。逆に、前記ほう珪酸ガラス粉末の組成が、上記範囲から逸脱すると、1000℃以下の焼成温度にて、望ましい磁器特性を有する焼結体を得ることが困難となる。
【0084】
また、任意成分であるZnO、CaO、SrO、BaOは、前記ほう珪酸系ガラスの軟化挙動を制御しつつ、かつ例えば、ガーナイト結晶相、アノーサイト結晶相、スラウソナイト結晶相、セルジアン結晶相等をガラス中から析出させ磁器特性を制御することが可能となる。さらに、CaO、ZrOは焼結体の耐薬品性を向上させるために特に効果的な成分であり、また、ZrOは核形成剤としてガラスの結晶化を促進し、より高い抗折強度を得ることができる効果がある。
【0085】
上記ほう珪珪酸系ガラスの成分のより望ましい範囲は、SiO:35〜50重量%、Al:20〜35質量%、MgO:5〜20質量%、B:4〜12質量%、BaO:10〜40質量%、ZnO、CaO、SrO、BaO、ZrOの群から選ばれる少なくとも一種以上をその合量で0〜20質量%、である。
【0086】
本発明のガラスセラミック焼結体の製造方法では、前記金属酸化物粉末が、アルミナ、ガーナイト、スピネル、ムライト、フォルステライト、エンスタタイト、アノーサイト、スラウソナイト、セルジアン、ジルコニア、CaZrO、CaSiOの群から選ばれる少なくとも一種を含有することが望ましい。
【0087】
これらの金属酸化物粉末を任意に組み合わせることにより、前記ガラスセラミック焼結体の特性、例えば、誘電率、誘電損失、熱膨張係数、抗折強度といった特性を、用途に応じて調整することができる。特に、抗折強度を高めるためにアルミナ、耐薬品性を向上させるためにジルコニア、CaZrOを選択することが効果的である。
【0088】
なお、本発明では、例えば、石英ガラスを用いることなく、低誘電率のガラス相を実現できるのであるが、フィラーとして石英ガラスを用いることを否定するものではなく、必要に応じて、適宜、用いても良いことは言うまでもない。
【0089】
図2に、以上説明したガラスセラミック焼結体を絶縁層として用いた本発明の配線基板を示す。
【0090】
図2に、示すように、本発明の配線基板3は、絶縁基板1と少なくともその表面に金、銀、銅のいずれかを主体とする配線層5を具備し、かつ絶縁基板1が、本発明のガラスセラミック焼結体1で構成されていることを特徴とするものである。
【0091】
そして、本発明の配線基板3は、絶縁基板1を、本発明のガラスセラミック焼結体1で構成することで、例えば、誘電率、強度などの絶縁基板1の重要な特性を制御することができる。特に、誘電率、誘電損失に関しては、非常に優れた特性を達成することができ、特に、MPU等の高周波用途に好適に用いることができる。
【0092】
以下に、本発明の配線基板3の製造方法を説明する。
【0093】
まず、例えば、前記ガラス粉末と、前記少なくとも一種のセラミック粉末とを、適量秤量し、適当な有機樹脂バインダー、溶媒等を添加、混合した後、所望の成形手段、例えば、金型プレス、冷間静水圧プレス、射出成形、押出し成形、ドクターブレード法、カレンダーロール法、圧延法等により任意の形状に成形する。特にグリーンシートを作製するには、ドクターブレード法が好適である。
【0094】
次に、このセラミックグリーンシートにビアホール導体を形成するための貫通穴をパンチングやレーザー加工法などにより形成してその貫通穴内に、Cu、Ag、Auの群から選ばれる少なくとも一種以上を主成分として含有する導体ペーストを充填するとともに、導体ペーストをスクリーン印刷法やグラビア印刷法等の印刷法、あるいは表面に形成した所定の配線パターンの金属箔を形成した転写フィルムを前記グリーンシート表面に転写すること等によって、内部配線層や接続用電極のパターンを形成する。そして、必要に応じて上記と同様にしてメタライズ配線層やビアホール導体を形成したグリーンシートを積層する。
【0095】
次に、上記の成形体を焼成するにあたり、まず、成形のために配合したバインダー成分を除去する。バインダーの除去は、導体材料としてAg、Au、を使用する際には500℃前後の大気雰囲気中で行い、導体材料としてCuを用いる場合には、700℃前後の水蒸気を含有する窒素雰囲気中で行われる。
【0096】
そして、700〜1000℃の酸化性雰囲気または非酸化性雰囲気中で0.2〜10時間、特に0.5〜5時間焼成することにより、前記ガラス粉末を分相させることにより、ガラス相α1、α2を形成させる。
【0097】
なお、上記焼成についてはCu等の導体材料と同時焼成する場合には、導体材料が酸化しない、窒素、窒素/水蒸気混合、窒素/水素混合雰囲気などの非酸化性雰囲気中で焼成される。これによって、接続用電極及び内部配線層、ビアホール導体を有する配線基板3を得ることができる。
【0098】
このとき、上記焼成温度が700℃より低いか、焼成時間が0.2時間より短いと、分相が不十分となり、誘電率、誘電損失の低下効果が不十分となる恐れがあり、逆に焼成温度が1000℃を越えるか、焼成時間が10時間より長いと、焼結体中のボイドが多くなったり、焼結体の形状が崩れてしまう恐れがある。
【0099】
そして、この配線基板3の表面に、半導体素子等の電気素子を搭載し、内部配線層、ビアホール導体を通じて接続用電極と信号の伝達が可能なように接続される。接続方法としては、図中で示される半田を用いたフリップチップ実装や、ワイヤボンディング、さらには配線層上に直接搭載させて接続させる形態が好適である。
【0100】
なお、電気素子としては、半導体素子に限定されるものではなく、各種コンデンサやフィルター、等の電子部品を複数個実装することも可能である。
【0101】
さらに、電気素子と配線基板3との間隙にアンダーフィル剤を充填、硬化させたり、電気素子上にポッティング樹脂を被覆し、硬化させるか、絶縁基板3と同種の絶縁材料や、その他の絶縁材料、あるいは放熱性が良好な金属等からなる蓋体をガラス、樹脂、ロウ材等の接着剤により接合することにより、電気素子を実装した配線基板3を作製することができる。
【0102】
また、配線基板3の下面に、低融点半田からなる半田によって高融点半田からなる半田ボールを接続する。そして、この配線基板をプリント基板に実装する場合には、プリント基板の表面に、前記パッケージの半田ボールを半田を介してプリント配線基板の接続用電極上に載置し、半田リフロー処理することによって、配線基板3をプリント基板上に二次実装することができる。
【実施例1】
【0103】
本発明の配線基板の効果を確認すべく、以下のようにして評価用の多層配線基板を作製した。まず、表1に示した組成のガラスを準備した。なお、平均粒径は2μmとした。
【0104】
これらのガラス粉末に対して、平均粒径が1〜2μmの表2に示すフィラー粉末を用いて、表2の組成に従い混合した。
【0105】
そして、この混合物に有機バインダ、可塑剤、トルエンを添加し、スラリーを調製した後、このスラリーを用いてドクターブレード法により厚さ300μmのグリーンシートを作製した。さらに、このグリーンシートを所望の厚さになるように複数枚積層し、60℃の温度で10MPaの圧力を加えて熱圧着した。
【0106】
得られた積層体を窒素雰囲気中、750℃で脱バインダ処理した後、200℃/時間で昇温して、大気中で表2の条件にて焼成して絶縁基板評価用のガラスセラミック焼結体を得た。
【0107】
得られた焼結体について、TEM(透過型電子顕微鏡)およびTEM付属のXMA(X線マイクロアナライザー)を用いて分相の有無と、ガラス相のSiOの含有量を測定した。このとき、分相しているものに関しては、SiOの含有量が多い方をα1とし、分相のないものに関しては、ガラス相全体をα1とみなして測定を行った。
【0108】
また、50mm□、厚さ1.0mmに加工し、空洞共振器法にて2GHzにおける誘電率および誘電損失を測定した。
【0109】
さらに、焼結体を2mm□、長さ18mmに加工し、10℃/分の速度で焼温しながらレーザー測距計にて寸法変化を測定することにより、40〜400℃における熱膨張係数を測定した。
【0110】
また、焼結体を粉砕し、結晶相をX線回折測定から同定し、主ピーク強度の大きい順に並べた。以上の測定結果を表2に示す。
【表1】

【0111】
【表2】

【0112】
表1〜2の結果から明らかなように、本発明に基づき、ガラス相が分相した、試料No.1、2、4、6、8〜18では、2GHzにおける誘電率が7以下、誘電損失が20×10−4以下、さらには40〜400℃における熱膨張係数も5×10−6/℃以下と良好な値を示した。
【0113】
それに対して、ガラス相が分相しない試料No.3、5、7、19〜22では、誘電損失が大きくなった。
【実施例2】
【0114】
実施例1の試料No.1、2、4、6、8〜18の原料粉末に対して、アクリル系バインダと可塑剤とトルエンを添加、混合し、ドクターブレード法によって厚み300μmのグリーンシートを作製した。次に、該グリーンシートの所定位置にビアホールを形成し、銅を主成分とする導体ペーストを充填した後、スクリーン印刷法により前記導体ペーストを用いてグリーンシート表面に配線層を形成した。
【0115】
そして、前記配線層を形成したグリーンシートを位置合わせしながら4枚積層、熱圧着した。この積層体を水蒸気含有窒素中、表2に示す焼成条件にて焼成し、銅を主成分とする配線層を具備する多層配線基板を作製した。
【0116】
得られた配線基板について、配線層の導通と2GHzにおける伝送特性を確認したところ、断線等がなく、低抵抗で良好な導通特性と良好な伝送特性を示した。
【実施例3】
【0117】
さらに、上記グリーンシートの表面に、銅を主体とした導体ペーストをスクリーン印刷法にて、パッケージAの表面には、0.12mmφのパッドをマトリックス状に配設したフリップチップパッドを形成し、裏面には1mmφのパッドをマトリックス状に配設したボールパッドを形成した。焼成後の形状が30mm□、厚み1.5mmとなるようにグリーンシートを積層、切断後、表2に示す条件にて焼成した。得られた配線基板にNi−Auめっきを施した後、上記パッド上に共晶半田ペーストを印刷し、1.2mmφの高温半田ボールを位置合わせして載置し、リフロー処理を行うことにより、高温半田ボールを搭載した配線基板Aを作製した。
【0118】
次に、シリコンを主体とする熱膨張係数が3×10−6/℃の半導体素子5をパッケージAの表面に、半田ボールを位置合わせして載置し、リフロー処理を行った後、エポキシ樹脂からなるアンダーフィル剤を半導体素子とパッケージAとの間隙に注入し、硬化させることにより半導体素子をフリップチップ実装した。
【0119】
上記一次実装を行ったサンプルを、0〜100℃の温度範囲で温度サイクル試験を、2000サイクル行った。その結果、いずれの試料も、2000サイクルまで断線や半導体素子の破壊等がなく、良好な接続部の長期信頼性を示した。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】本発明のガラスセラミック焼結体の組織を示す断面図である。
【図2】本発明のガラスセラミック焼結体を絶縁基板とする配線基板の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0121】
α1 ガラス相
α2 ガラス相
β 結晶相
1 絶縁基板
3 配線基板
5 配線層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス相と結晶相とを有するガラスセラミック焼結体において、前記ガラス相が組成の異なる2相以上のガラス相からなるとともに、前記ガラス相が、1価の金属元素、2価の金属元素、および3価の金属元素のうち少なくとも1種からなる軟化成分を酸化物換算した合量で1質量%以上含有することを特徴とするガラスセラミック焼結体。
【請求項2】
前記軟化成分の金属酸化物が、LiO、NaO、KO、MgO、CaO、SrO、BaO、B、Al、Ga、Y、Laの群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載のガラスセラミック焼結体。
【請求項3】
前記組成の異なるガラス相のうち、少なくとも一種がSiOを70質量%以上含有することを特徴とする請求項1または2に記載のガラスセラミック焼結体。
【請求項4】
SiOを70質量%以上含有する前記ガラス相が、前記軟化成分を酸化物換算した合量で10質量%以下含むことを特徴とする請求項3に記載のガラスセラミック焼結体。
【請求項5】
2GHzにおける誘電損失が20×10−4以下、誘電率が7以下であることを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれかに記載のガラスセラミック焼結体。
【請求項6】
Pb、Cd、Asの含有量が、酸化物換算の合量で0.01質量%以下であることを特徴とする請求項1乃至5のうちいずれかに記載のガラスセラミック焼結体。
【請求項7】
40〜400℃における熱膨脹係数が、5×10−6/℃以下であることを特徴とする請求項1乃至6のうちいずれかに記載のガラスセラミック焼結体。
【請求項8】
請求項1乃至7のうちいずれかに記載のガラスセラミック焼結体からなる絶縁基板と、少なくともその表面に金、銀、銅のいずれかを主体とする配線層とを具備することを特徴とする配線基板。
【請求項9】
ガラス粉末と、少なくとも一種のセラミック粉末とを混合、成形して、得られた成形体を1050℃以下の温度で焼成し、前記ガラス粉末よりガラス相を形成するとともに、前記ガラス相を分相して、組成の異なる2相以上のガラス相を形成することを特徴とするガラスセラミック焼結体の製造方法。
【請求項10】
前記ガラス粉末が、焼成工程中に少なくとも一種の析出結晶相を析出する結晶化ガラスであることを特徴とする請求項9に記載のガラスセラミック焼結体の製造方法。
【請求項11】
前記セラミック粉末のうち少なくとも一種が、前記析出結晶相のうち少なくとも一種と、同じ結晶である核形成剤であることを特徴とする請求項10に記載のガラスセラミック焼結体の製造方法。
【請求項12】
前記核形成剤の含有量が、前記ガラス粉末と前記セラミック粉末との合量のうち0.5〜20質量%であることを特徴とする請求項11に記載のガラスセラミック焼結体の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−282474(P2006−282474A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−106581(P2005−106581)
【出願日】平成17年4月1日(2005.4.1)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】