説明

ガラス固化による物質の閉じ込めプロセス

【課題】ガラス固化による廃棄物の閉じ込めプロセスに関する先行技術に対し改良を提供する。
【解決手段】本発明は、少なくとも一つの易酸化性または易還元性化学種を含む材料のガラス固化による閉じ込めのためのガラス原料の製造プロセスと、ガラス固化による前記材料の閉じ込めプロセスに関する。ガラス原料の製造プロセスは、前記少なくとも一つの化学種を酸化または還元状態に維持することができる性質と量を有する少なくとも一つの酸化還元対の生ガラス原料への投入ステップを含む。閉じ込めプロセスは、得られたガラス原料と閉じ込める材料との混合物および熱溶解物を含む。本発明は、放射性核物質、金属、半金属などの汚染物質の閉じ込めの最適化を可能とする。材料は、核廃棄物または家庭ごみの焼却から得られる材料であってもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス固化による物質の閉じ込めプロセスに関する。
【0002】
対象となる物質は、主として、鉱物廃棄物、溶解した廃棄物である。本発明は、たとえば、核廃棄物のガラス基質への閉じ込めを可能にする。
【0003】
また、本発明は、鉱物種、特に、汚染金属および/または汚染金属イオンを含む工業廃棄物の閉じ込めを可能にする。核廃棄物、家庭ごみの焼却から得られる残留固形物、特に、ボイラー主灰、飛灰、中和と焼却煙処理から得られるろ過ケーキに対しても言及する。
【0004】
本発明は、ガラス固化による廃棄物の閉じ込めプロセスに関する先行技術に対し改良を提供する。
【背景技術】
【0005】
核廃棄物または家庭ごみ焼却固形物のガラス固化による閉じ込めの巧妙な例において、今日工業的に生産されるガラスは、それらの組成、または、プロセスまたはガラス組成に関する制約により製造温度が既に設定されていない場合、それらの製造温度、を最適化する製造研究の結果である。
【0006】
これらの組成および温度の最適化は、同時に、
−一度閉じ込めた廃棄物の量の縮小を可能とし、
−特に現在利用可能な工業プロセスにおける製造物との互換性を可能とし、
−貯蔵の視点での最終ガラス基質の閉じ込め品質(化学的耐久性、耐照射性、浸出耐性等)を改良可能な、ガラス形成を目的とする。
【0007】
現在のガラス固化プロセスにおいては、ガラス原料の役割は、廃棄物との混合後に、閉じ込めを実現するガラス固化アジュバントを単に供給するだけである。
【0008】
先行技術に記載のガラス原料は、多価種、すなわち、ガラスにおいて多種の酸化度を備えて存在し得る種を含んではおらず、また、多価種が原料に投入される酸化状態が最適化の対象ではないため、最終ガラスの酸化還元平衡に対する作用を有していない。加えて、現行のガラス原料に存在し得る種々の多価種の酸化還元平衡は、注目対象とされたことがない。
【0009】
核廃棄物のガラス固化の現行プロセスは、一般に2つのステップを含んでいる。得られた仮焼物のガラス固化後に続く、仮焼物を得るための核分裂生成物溶液の蒸着焼成がステップの一つである。蒸着焼成ステップは、たとえば、抵抗炉により過熱された回転チューブの中で実施され得る。このプロセスは、当業者自明である。
【0010】
次に、閉じ込めガラスを作り出すため、ガラス形成物またはガラス原料が、仮焼物に加えられる。たとえば、La Hague工場においては、ガラス原料は、主としておよそ80%SiO(シリカ)、B(ホウ酸無水物)、Al(アルミナ)、NaO(酸化ナトリウム)からなるホウケイ酸塩ガラスである。
【0011】
標準的なガラス生産者(食器の製造者)は、色を最適化し、気泡を防ぎ、ガラス槽の温度特性を最適化するために、ガラスの酸化還元状態を最適化している。しかしながら、標準的なガラス生産者のガラスにおいては、多価種の濃度は、本発明に従う核廃棄物閉じ込めガラスにおけるそれの濃度に比べてたいへん低い。そして、ガラスの酸化還元の調整方法は、コークス、硫化物等の還元剤、または、硫酸塩、硝酸塩等の酸化剤、の、ガラスバッチ材料への添加に基づいている。
【0012】
先行技術の閉じ込め技術については、
−プロセスの入力時に材料の付加流を管理する必要があり、
−放射性媒体によりガスプロセスシステムが高度化されていたとしても、ガスの付加流を管理する必要があり、
−廃棄物流と原料流とに加え、プロセスに材料流を付加する事実は、規定のガラスを得るために会社が付加パラメータを保証する必要があることを意味し、所望の酸化還元状態を得るために、廃棄物流と還元剤流または酸化剤流は、強く相関性がある必要があり、この相関性は、難しく、たとえば、廃棄物流の酸化還元レベルにおける可能なバリエーションの考慮を要求し、
−このプロセスで用いられる還元剤と酸化剤は、所望の酸化還元状態に従い酸化または還元される必要のある多価種に加え、この反応が、最初に反応する周囲媒体の酸化剤または還元剤、たとえば、散布ガス、硝酸塩、炭素材料等、により阻害されるため、必ず強力である必要があり、これは、ガラスの酸化還元状態の正確な制御に対しては好ましくなく、先験的であり、
−強力な酸化剤および/または還元剤の接触は、発熱反応に至るため、廃棄物ガラス固化プロセスにおいては、最大安全レベルが保証され、プロセスにおける維持手続きを避けるように、接触は制限されるのが望ましい、
という、解決すべき多数の短所がある。
【0013】
一般に、ガラス固化される核分裂生成物(仮焼物)または廃棄物の酸化物の投入程度は、そのようなガラスの質量で12〜18%の範囲である。すべての公知の核ガラスでは、廃棄物の組成とガラスの種類に従い、一般に質量で6%〜20%の間で展開する。酸化状態+IVのセリウムのような金属では、質量で2%が最大である。従って、投入程度は、制限される。
【0014】
従って、上述したような有毒廃棄物、特に核廃棄物のガラス固化による閉じ込めのさらなる改良が必要であり、工業レベルで実行が容易であり、より経済的であり、危険が少なく、同時に現行の利用可能なまたは簡易化された工場を用いた、廃棄物の閉じ込めのプロセスの開発が必要である。
【0015】
閉じ込めガラスは、固体であり、高密度であり、経年的に安定であり、浸出耐性および放射性耐性があり、保存容量を縮小してより多く貯蔵可能とする必要がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、標準的なガラス原料を、ガラス固化による材料閉じ込めに用いられる産業用制御法に何ら制約を与えることなく、また、先行技術のガラス固化プロセスに比べて付加的な材料の吸入排出流を加えることなく、酸化還元力を有するガラス原料に置き換えて、ガラス槽の酸化還元状態を所望のレベルにおいて簡単かつ適切に調整することにより、上述した目的を達成することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0017】
このために、本発明は、少なくとも一つの易酸化性または易還元性化学種を含む材料のガラス固化による閉じ込め用酸化還元ガラス原料の製造プロセスであって、
(a)前記少なくとも一つの化学種を所与の酸化還元平衡に維持することができる少なくとも一つの酸化還元対を選択すること、
(a)前記材料の所与量に対する前記化学種の量を決定すること、
(a)前記材料の前記所与量に対して、前記少なくとも一つの化学種を前記所与の酸化還元平衡に維持するために必要な前記少なくとも一つの酸化還元対の最小量を化学量論により決定すること、
(a)材料の、および/または生ガラスの、および/または材料のガラス固化による閉じ込めが実施される環境の、他の酸化または還元元素を考慮するように、随意的に、前記少なくとも一つの酸化還元対の前記最小量を調整すること、
(a)混合により、前記少なくとも一つの酸化還元対の、随意的に調整された、前記最小量を、材料の前記所与量の閉じ込めに適したある量の生ガラス原料、またはその前駆体に投入し、ガラス溶解物を得るのに混合物を十分な温度とすること、
(a)得られたガラス溶解物を冷却し、ガラス固化による前記材料の閉じ込め用酸化還元ガラス原料を得られるようにすること、
からなるステップを含む前記プロセスに関する。
【0018】
本発明は、本プロセスにより得られる酸化還元ガラス原料にも関する。この原料についての詳細は本発明の説明を通じて後述する。
【0019】
本発明は、少なくとも一つの易酸化性または易還元性化学種を含む材料のガラス固化による閉じ込めプロセスであって、
(a)本発明のプロセスに従って得られる酸化還元ガラス原料と、閉じ込める材料とを、ガラス固化による前記材料の閉じ込めに適した割合で、混合かつ熱溶解すること、
(b)前記材料を含むように、混合物をガラス固化すること、
からなるステップを含む前記プロセスにも関する。
【0020】
本発明の閉じ込めプロセスで用いる本発明の酸化還元ガラス原料は、本発明のプロセスのステップ(a)で得られるものである。
【0021】
本発明の変形に従えば、閉じ込められる廃棄物は、本発明のプロセスのステップ(a)で得られるガラス溶解物と直接混合され得る。そして、本発明の閉じ込めプロセスのステップ(b)に従う混合物が、ガラス固化され得る。この変形では、ガラス原料を準備するステップ(a)は適用されない。
【0022】
本発明の主要な特徴は、多価種とも呼ばれる一つのまたは多くの酸化還元種を投入することによる閉じ込めガラス原料の酸化還元状態の調整である。廃棄物の閉じ込めが完了する際に、閉じ込めの過程で削除されなければ(一つのまたは多くの揮発性種)、これらの多価種はガラスの最終組成の一部分となる。本発明の酸化還元原料の酸化還元力は、投入される一つのまたは多くの多価種の量および酸化還元状態によって定まる。
【0023】
本発明者は、本発明に従う廃棄物の閉じ込めに用いられるガラス原料の酸化還元状態の最適化は、閉じ込められる廃棄物と本発明の原料の酸化還元状態とに従い、閉じ込めガラス原料の品質を向上させ、生産を促進させ、ある場合においては、先行技術における閉じ込めガラスに比較して、ガラスに対する廃棄物の投入程度を増大する、述べている。
【発明の効果】
【0024】
本発明のプロセスの利用に関する利点は、
−本発明のプロセスは、プロセスの入力時点においては、還元剤が原料に溶解するため、または、プロセスの出力時点においては、酸化還元の調整プロセスが付加的なガスを発生しないため、ガラスの酸化還元を最適化しないプロセスに比べ、付加的な材料流を発生しない。
−酸化還元反応は、ガラス原料に投入される多価種とガラス溶解物に投入された後の多価種との間において基本的に生じるため、本発明のプロセスは、酸化還元の調整のための適切なプロセスである。その結果、周辺媒体(廃棄物、散布物の硝酸塩含有量、炭素含有量等)の酸化還元力における変動は、ガラスの最終酸化還元状態にほとんど影響しないことが期待される。
−酸化還元の調整におけるすべての困難は、インアクティブモードにおける原料の生産中に、アクティブな工業プロセスの上流においてコントロールされる。
−本発明に従い、原料に付加される所望の酸化剤または還元剤の量は、酸化還元の調整に用いられる他の一般的手法よりもたいへん少ない。
−加えて、使用され得る酸化剤は、先行技術に比べて非力であり、ガラス原料内で溶解するため、利用し易く、酸化剤と還元剤との間の発熱反応の危険性を制限し、プロセスの安全性の良好なレベルを保証する。
と言うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本願発明者は、多数の多価元素、たとえばセリウム、鉄、クロム、プルトニウム、モリブデン、硫黄、セシウム等、を、先行技術の閉じ込めガラス原料(下記参照)に取り込むことができる、と述べている。また、ガラスに投入される酸化の程度は、最終ガラスの特性を、下記のように予想外に修正し得る、と述べている。
−ある元素のガラスへの投入程度は、ガラス固化による材料の閉じ込め後に得られるガラス容量縮小(還元)要素に対して直接影響がある酸化の程度に従い、著しく異なる(文献[1]参照)。
−融解ガラスの特性は、ある種の酸化還元状態によって修正され得る。また、ある場合においては、文献[2]で述べられている発泡を排除できる。
−ガラスの化学的耐久品質は、ある場合においては、ガラスの酸化還元状態に依存する(文献[3]参照)。
【0026】
本書においては、「酸化または還元化学種」という表現は、その酸化状態に従って、酸化還元反応により酸化または還元され得る一つのまたはそれ以上の化学種を意味するものとして意図している。本発明の閉じ込めプロセスで達成される目的は、この少なくとも一つの化学種をプロセスのステップ(c)で得られるガラスに閉じ込めることである。
【0027】
本発明に従えば、易酸化性または易還元性化学種は、たとえば、ガラス固化により閉じ込められるべき汚染物質である。たとえば、それは、放射性核物質、金属または非金属元素または陽イオン、半金属、硫黄またはそれらの混合物であっても良い。たとえば、それは、一つまたは多数のランタニドまたはアクチニドであっても良い。易酸化性または易還元性化学種は、ガラス固化材料の生産、および/または、ガラス固化により閉じ込められた廃棄物の特性を改善する目的でガラスから蒸発すべき廃棄物の元素であっても良い。
【0028】
本発明に従えば、化学種が金属陽イオンまたは元素である場合に、易酸化性または易還元性化学種は、As、Cd、Ce、Cr、Cs、Fe、Hg、Li、Mg、Mn、Mo、Na、Ni、Pb、Sb、Tc、Ti、V、Zn、アクチニド(たとえばPu)または硫黄、それらの塩、または2つまたは多数のそれらの元素、陽イオン、および/または塩の混合物であっても良い。
【0029】
「ガラス固化による材料の閉じ込め」という表現は、材料がガラス基質に閉じ込められる、すなわち、この基質において十分に混ぜ合わされ維持されるプロセスを意味するものとして意図している。
【0030】
「材料」という言葉は、上述した特性(経年的安定性等)をもってガラス固化によりガラス基質に閉じ込められ得るあらゆる種類の材料を意味するものとして意図している。それは、たとえば、家庭ごみの焼却から得られる廃棄物、または核廃棄物あってもよい。
【0031】
本発明に従えば、極端なケースでは、材料は、本発明の目的に対しては、もっぱら一つまたは多数の易酸化性または易還元性化学種からなってもよい。「材料」という言葉と、「易酸化性または易還元性化学種」という表現は、従って、本書においては、区別することなく用いられ得る。
【0032】
「材料の所与量」は、材料の所与量の閉じ込めに十分な生ガラス原料の量に対する本発明の実行に役立つ酸化還元対の最小量を決定するための、算出用の簡潔な基礎を規定する。それは、適宜選択され、たとえば、研究室において容易に扱うことができ、少なくとも一つの易酸化性または易還元性化学種の含有量を決定するのに十分な量に対応する。本質事項は、本発明を実行するために、この量を知ること、すなわち、重量を計測すること、にある。材料を閉じ込めるために使われる閉じ込めガラス原料の量は、その後に、簡単な外挿法、たとえば、グラフを用いて、または材料の閉じ込めに必要なガラス原料の量を材料の重量の関数として呈するソフトウエアを用いて、決定されてもよい。
【0033】
本書において、「生ガラス原料」という言葉、またはその「生ガラス原料」における「酸化還元ガラス原料」に対する前駆体、または前駆体は、本発明に従って付加された酸化還元対を含まない。
【0034】
本書において、「生ガラス原料」という言葉は、本発明の「酸化還元ガラス原料」を製造するために用いられる出発材料を意味するものとして意図している。それは、ガラスであってもよく、炭酸塩、硝酸塩、酸化物、ホウ化物、窒化物、炭化物、金属、硫黄、硫化物、水酸化物等、またはそれらの混合物などの、ガラスの前駆体であってもよい。
【0035】
ガラスが用いられる場合は、多種の形態がある。たとえば、粉末、薄片、ビーズ、またはガラス破片などでもよい。
【0036】
本発明に従えば、生ガラス原料、またはその前駆体は、たとえば、先行技術におけるガラス固化による廃棄物の公知の閉じ込めプロセスの一つにおいて閉じ込めガラスを供給するために一般に用いられるような物理化学的形態であることが望ましい。
【0037】
その組成は、もちろん、本発明のガラス固化プロセスの実施における所望の目的、特に、閉じ込められる材料に依存する。
【0038】
生ガラス原料は、たとえば、シリカ基ガラスで構成されてもよく、SiO(シリカ)、B(ホウ酸無水物)、Al(アルミナ)、NaO(酸化ナトリウム)、Fe、CaO、LiO、ZnO、ZrO、等の無機化合物を含んでもよい。
【0039】
たとえば、ガラス原料が、放射性核物質、および/または半金属、および/または金属を含む廃棄物のような材料の閉じ込めを意図した場合、生ガラス原料は、好ましくは、ケイ酸ガラス原料である。それは、たとえば、主としておよそ80%SiO(シリカ)、B(ホウ酸無水物)、Al(アルミナ)、NaO(酸化ナトリウム)を含むガラス原料であってもよい。それは、たとえば、重量で20%から80%、または20%から75%のSiO、重量で0%から40%、または0%から25%のB、重量で0%から20%のFe、重量で0%から25%のNaO、重量で0%から25%、または0%から20%のAl、重量で0%から20%、または0%から15%のCaO、重量で0%から20%、または0%から10%のLiO、重量で0%から20%のZnO、重量で0%から20%、または0%から15%のZrOを含むガラス原料であってもよい。
【0040】
当業者に自明でありそのような材料の閉じ込めに適した他の原料は。もちろん、本発明に照らして用いてもよい。
【0041】
「酸化還元ガラス原料」、または「酸化還元力を有するガラス原料」、または「本発明のガラス原料」という表現は、たとえば、本発明の原料の製造プロセスに従い、一つまたは多数の酸化還元対が投入される生ガラス原料を意味するものとして意図している。選択された酸化還元対に従って、後述するように、このガラス原料は、本発明のプロセスに従いガラス固化により閉じ込められるべき化学種または材料の機能として、還元または酸化力を備えていてもよい。
【0042】
「酸化還元対」という言葉は、化学元素に対する酸化還元対を意味するものとして意図している。それは、一つまたは多数の多価種、すなわち、一つまたは多数の酸化および還元形態を有する種であってもよい。一般に、酸化または還元形態であり得る一つまたは多数の元素周期表の化学元素であってもよい。
【0043】
酸化還元対は、簡単な混合によって生ガラス原料またはその前駆体に取り込まれてもよい。
【0044】
たとえば、本発明のプロセスに従った核廃棄物の閉じ込めの事柄があった場合に、酸化還元対は、たとえば、Fe、Cr、V、S、Sb、Ti、As、Ce、Zn、またはこれらの対の混合物からなる群から選択された元素であってもよい。
【0045】
実際に、核廃棄物閉じ込め分野において最も一般的な製造プロセスにおいては、廃棄物は酸化物と硝酸塩の混合物である。最終ガラスの酸化還元状態は、従って、廃棄物の酸化還元レベルによってコントロールされ、酸化される。本発明のプロセスは、この廃棄物を、本書に記載された多数の利点をもって酸化還元状態が最適化されたガラスに閉じ込めることを可能にする。
【0046】
ガラス原料に酸化還元力を与えるために用いられる多価種は多数存在する。これらの中には、次に示す、単体または混合物で用いられる種が限定されない例として含まれる。Fe(II)/Fe(III);Ce(IV)/Ce(III);Ti(IV)/Ti(III);V(V)/V(III);Cr(VI)/Cr(III)/Cr(II);S(+VI)/S(−II);Sb(V)/Sb(III);Zn(II)/Zn(0);As(V)/As(III);等。資料[4]は、これらの酸化還元対と、さらに本発明で用いられる他の種の限定されない例と、それらの酸化還元力の特性をまとめている。
【0047】
本発明に従う酸化還元原料の酸化還元平衡の調整に用いられ得る酸化または還元剤は、その化学形態を適切に選択してガラス(前駆体)を構成する元素、たとえば、硝酸塩、硫酸塩、または酸化剤に対する酸化物、炭化物、窒化物、ホウ化物、または還元剤に対するケイ化物、または、酸化還元力を有する原料または閉じ込め原料の生産過程において原料の溶解点で完全に消失する、最終ガラスの構成要素ではない酸化または還元剤の形態で、供給されてもよい。そのような剤は、たとえば、有機材料、コーク、グラファイト、硝酸等である。
【0048】
化学元素の周期表の化学元素の幾つかは、本発明に用いられ得る、幾つかの酸化還元対と、対応する酸化還元力(酸化度)とを有している。
【0049】
以上は、すべてを言及するものではなく、実用的なことを述べている。当業者は、本発明を実施するために、周期表および、酸化還元力表にある元素の中で、最適な対を容易に発見するであろう。
【0050】
ガラス原料に投入される多価元素、または酸化還元対の性質、その容量、原料における酸化還元状態は、たとえば、廃棄物などの、閉じ込められる材料の組成に従って決定される。それらは、多価種がガラス原料に投入された際に、ガラス原料に投入される多価種の酸化還元状態により課される酸素ポテンシャルまたは酸素活量により、酸化還元状態を平衡する。
【0051】
酸化還元対が力の弱い酸化還元対を酸化することを知る当業者は、一つまたは多数の易酸化性または易還元性化学種の一つまたは他の酸化還元形態をガラス上に維持する目的である本発明を実施するための材料の一つまたは多数の易酸化性または易還元性化学種に従い、使用される酸化還元対を容易に選び得るであろう。幾つかの対が利用可能である場合、選択は、酸化還元対のコストまたはガラスの他の特性(粘性、化学的耐久性、微細構造等)への影響に従って行われてもよい。
【0052】
ガラス原料に投入される酸化還元対の量は、選択された酸化還元対と共に閉じ込められる材料の一つまたは多数の化学種に対する酸化還元式に基づく化学量論により、最初のアプローチで決定される。
【0053】
「所与の酸化還元平衡」という言葉は、平衡、すなわち、前述した化学種の酸化状態と還元状態の間の比率を意味するものとして意図している。この平衡は、実際に、閉じ込めガラス中のこの化学種の溶解度の促進を可能にし、従って、その閉じ込めの向上を可能にする。この平衡は、本発明に従い、酸化還元ガラス原料を得るために、随意的に調整され、ガラス原料に追加される、酸化還元対の量によって達成される。本発明に従えば、たとえば、CeIII/CeIVの比率が6.67を超え、総セリウム容量が質量7%のセリウムは、1200℃の溶解点で得られ得る。
【0054】
酸化還元対の量を調整することは、ガラス原料を構成しないが、ガラスの酸化還元力に影響し得る元素に関する影響、たとえば、原料および/または容器の準備中における気体環境、炭素材料および/または硝酸の存在等、を考慮するのに、有用であり得る。これは、本発明のステップ(a)である。このステップは、本発明のプロセスの実施のために酸化還元対の量を適切に増加または低減する当業者の想定内である。
【0055】
本発明に従えば、前述した少なくとも一つの化学種に従い、製造されるガラス原料における酸化還元対の酸化還元率を調整する少なくとも一つの化合物を、ガラス原料または前駆体に投入することができる。「酸化還元率」という言葉は、酸化還元対を構成する元素の還元形態に対する酸化形態の比率を意味するものとして意図している。
【0056】
酸化還元率は、結集された種の酸化還元に対する化学式により、化学量論的に決定され得る。この化合物は、その存在が、一つまたは他の形態に働きかけることにより酸化還元対の酸化状態←→還元状態の平衡に影響する化合物である。たとえば、酸化還元対がFe2+/Fe3+の場合、この対の酸化還元比を調整する化合物は、上述した対のFe2+形態に働きかけるグラファイトであってもよい。より一般的には、この化合物は、グラファイト、有機材料、コーク、炭化物、ホウ化物、ケイ化物、硫化物、金属等から選ばれてもよい。
【0057】
本発明に従えば、生ガラス原料への酸化還元対の投入と、酸化還元対の酸化還元率を調整する化学化合物の随意的な投入は、それらを生ガラス原料または生原料またはたとえば酸化物、炭化物、硝酸塩の形態等の上述した前駆体とともに単純に混ぜて溶解することで実行されてもよい。
【0058】
溶解槽の温度は、加熱炉において、ガラス原料、また必要であれば材料を完全に溶かすために、きわめて高温であるべきである。しかしながら、溶解の過熱バランスを最適化するには高すぎず、不必要なエネルギー損失を防ぐ程度の温度である。たとえば、生ガラス原料がホウケイ酸塩である場合、ガラスが溶解するように、加熱は、1100℃〜1400℃の間、たとえば1200℃で実行され得る。
【0059】
加熱は、使用される生ガラス原料を溶解することができるどのような種類の加熱炉で実行されてもよい。ガラス固化加熱炉が有利である。加熱は、たとえば、4kHzの周波数で駆動される200kw発電機を用いて、金属ポット内で行われてもよい。ポット内のガラスは、金属壁との接触による伝導によって溶解する。
【0060】
たとえば、直接または間接プラズマトーチ加熱、電気アーク過熱、ガス過熱、マッフル炉、ガラスへの直接誘導等の、本発明の技術領域における当業者に知られている他の適切な加熱方法も、もちろん利用されてもよい。本質は、溶解槽が、酸化還元対を投入できるように、生ガラス原料またはその前駆体から形成されていることにある。
【0061】
酸化還元原料の生産は、生原料前駆体元素と酸化還元対を、酸化還元対の正しい組成と正しい酸化還元平衡を最終的にもたらす適切な酸化剤と還元剤とに混合することにある。この混合は、ガラス溶解物を生じるのに十分高い温度で実行される。
【0062】
本発明に従えば、変形例として、得られる酸化還元ガラス原料は、本発明のプロセスに従い材料を閉じ込めるためにステップ(a)で得られる溶解槽において直ちに用いられ得る。
【0063】
好ましくは、得られるガラス溶解物は、冷却され、本発明の目的に対する生ガラス原料を得るために役立つ。すなわち、ガラス溶解物は、ガラス固化により前述した材料を閉じ込めるために用いられ得る。たとえば、本発明の閉じ込めプロセスが実行されるまでに、貯蔵用に粉にひかれた粒状形態とされてもよい。ガラス粉末またはビーズ成形技術、または前述した他の形態への技術は、当業者自明である。
【0064】
粒状に加工された場合は、冷却され、廃棄物と同時に、ガラス固化加熱炉へ投入される。発明者は、ガラス固化アジュバントガラス、または本発明の酸化還元力を有するガラス原料が、粒状形態で本発明のガラス固化プロセスに取り込まれた場合、酸化還元調整における効果は、粒の大きさに従って、予想外に修正され得る、と述べている。酸化還元力を有するガラス原料と酸化または還元雰囲気との表面積が大きすぎると、閉じ込められるすべての、または部分的元素が投入される前に、原料の酸化還元状態に支障を来たす。本発明に従えば、1μm〜2cmの大きさの範囲、好ましくは、100μm〜1cmの大きさの粒が好ましい、
【0065】
本発明に従えば、本発明の原料を、粒状で、たとえば、ガラスビーズで導入することが有利であり得る。実際、これで、本発明の酸化還元原料を、本発明の閉じ込めプロセスが実行される時点で直ちにガラス溶解物槽に取り込ませることができ、ガラス槽の雰囲気中の障害を可能な限り防止する。
【0066】
本発明のプロセスは、従って、すべての、または幾つかのガラス固化アジュバントが、最終ガラスの酸化還元状態を与える一つまたは多数の多価化学種を含むガラスの形態で投入されるガラスの生産プロセスである。この酸化還元レベルは、材料の閉じ込め用の工業的ガラス固化プロセスの上流で調整される。
【0067】
本発明の閉じ込めプロセスにおいては、酸化還元力を有するガラス原料と材料との混合は、好ましくは、均質な混合を得、材料の「ポケット」、たとえば、核廃棄物の場合における仮焼物ポケット、の形成を防ぐように実行される。混合は、溶解前の酸化還元原料、または、溶解中の酸化還元原料において実行されてもよい。均質化は、たとえば、バブリング法、機械的撹拌法、熱勾配に関連する対流法等によって実行されてもよい。
【0068】
本発明に従えば、酸化還元原料は、現行の工業的ガラス固化プロセスにおいて行われるように、閉じ込められるすべてのまたは部分的な材料の投入に継続して投入されてもよい。
【0069】
本発明に従えば、閉じ込められる材料と酸化還元原料とは、材料の閉じ込めのための混合を目的として、ガラス固化加熱炉の異なる二つのポイントにおいて投入され得る。混合は、こうして、他の先行ステップなしに、加熱炉において実行される。
【0070】
本発明に従えば、閉じ込められる材料/酸化還元原料の比率は、酸化還元ガラス原料により形成されたガラスへの材料の閉じ込めを可能とするように選択される。この比率は、本書においては、「適切」と見なされる。当業者は、問題なくその比率を決定するであろう。たとえば、核廃棄物の場合においては、これらの比率は、この廃棄物の追貯蔵に対する要求に応じた閉じ込めが得られるように決定される。この例では、比率は、重量で50%〜95%の酸化還元ガラス毎に重量で5%〜50%の核廃棄物である。
【0071】
本発明は、ある場合においては、先行技術のガラス原料を使う場合より多くの材料を投入可能にする。これは、材料の化学種の多数の酸化または還元形態の一つが、他の形態におけるガラス溶解物性とは異なるガラス溶解物性を示す場合である。たとえば、セリウムは、Ce+IV状態に比べて、Ce+III状態において、よりケイ酸塩ガラスに溶解する。より多くのセリウムに富む廃棄物の投入を可能とするために、本実施例の発明者は、本発明の還元力を有するガラス原料を考案している。セリウムの例では、本発明のガラス原料は、Ce+III形態のセリウムの促進を可能とする還元原料である。この原料は、質量で7%以上のセリウムの閉じ込めを可能とするが、同じ温度において、従来技術では2%の達成が困難であった。
【0072】
本発明に従えば、酸化還元ガラスと材料との混合物の過熱は、閉じ込めるガラスとの混合物として用いられるガラス原料を溶解する、どのような加熱炉でも実行され得る。好ましくは、閉じ込める材料が、特に、廃棄物、たとえば、核廃棄物、および/または重金属を含む廃棄物、および/または有毒揮発性元素である場合は、ガラス固化加熱炉が適している。
【0073】
加熱は、溶解のためにも行われる。すなわち、ガラス原料の生産のための上述した溶解槽の形成を可能とする必要がある。溶解槽の温度は、加熱炉内で酸化還元ガラスの完全な溶解をもたらし、材料との混合物として、閉じ込められる元素の導入をもたらすのに十分高くあるべきである。従って、この温度は、ガラス原料と閉じ込められる材料とに依存する。
【0074】
本発明に従えば、酸化還元ガラス原料がホウケイ酸塩ガラス原料である場合、ガラス原料と材料の混合物の加熱は、たとえば、1000〜1600℃の温度、たとえば、1200℃に達するまで行われる。
【0075】
本発明に従えば、混合物の加熱は、好ましくは、ガラス固化加熱炉、たとえば、金属ポットにおいて行われ、ガラスが溶解するように、たとえば、1000〜1600℃の温度、たとえば、1200℃まで加熱される。加熱は、たとえば、4kHzの周波数で駆動される200kw発電機を用いて実行され得る。ポット内のガラスは、金属壁との接触による伝導によって溶解する。
【0076】
たとえば、上述したような、本発明の技術領域における当業者に知られている他の加熱方法も、もちろん利用されてもよい。
【0077】
本発明は、多くの利点を有する。たとえば、本発明のプロセスは、プロセスの入力時点においては、還元剤が原料に溶解するため、または、プロセスの出力時点においては、酸化還元の調整プロセスが付加的なガスを発生しないため、ガラスの酸化還元力を最適化しない従来技術のプロセスに比べて、材料の付加流を生じない。
【0078】
さらに、本発明のプロセスは、本発明に従う酸化還元原料の使用を要求するだけであるため、現行の工業ガラス固化プロセスおよび工場と互換性を有している。
【0079】
本発明のプロセスは、酸化還元反応が、酸化還元力を有するガラス原料の製造に投入される多価種と材料の多価種との間に本質的に発生するため、酸化還元力の調整に、または、溶解ガラスへの投入後の閉じ込められる材料の形成に適切なプロセスである。その結果、周辺媒体、すなわち、たとえば、廃棄物の硝酸塩含有量、バブリング、炭素含有量等、の酸化還元力における変動は、ガラスの最終酸化還元状態にほとんど影響しない。
【0080】
加えて、酸化還元力の調整におけるすべての困難は、本発明により、インアクティブモードにおける本発明の原料の生産中に、アクティブな工業プロセスの上流においてコントロールされる。
【0081】
他の特徴や利点は、以降の限定されない例に関する当業者には明白であってもよい。
(例)
【0082】
以下の例では、酸化還元力を有する原料は、数百グラムのスケールで生成および試験される。
(例1:原料の生産)
【0083】
試験用原料は、次の質量%の化学組成を有する。SiO:53.5%+B:16.5%+Fe:9.1%+NaO:6.4%+Al:3.9%+CaO:4.8%+LiO:2.3%+ZnO:2.9%+ZrO:0.6%。
【0084】
これは、以下、「R7/T7型」と称する従来のホウケイ酸であり、La Hague(フランス)における核分裂生成物溶液の従来のガラス固化用ガラス固化アジュバントとして働き、本発明に従い、酸化還元力を与えるために、鉄が付されている。本例では、所望の還元力を有する原料である。
【0085】
原料の酸化還元状態は、所与のFeII/FeIII比を与えることにより定まる。FeII/FeIII比は、9/1となるように選定される。この比は、鉄に対する還元剤として働くグラファイトにより得られる。付与されるグラファイトの量は、従って、特に、酸化還元状態に依存し、原料に与えられるのが望ましい。
【0086】
この原料の生成と、原料におけるFeII/FeIII酸化還元比の調整は、雰囲気温度1200℃のマッフル炉において、700gのR7/T7型原料と、Fe形態の70gの鉄と、20gの粉末グラファイトを密に混合することで、同時に実行される。
【0087】
この例では、毎回生産されるガラス原料の量は、770gのオーダーである。
【0088】
得られたガラス原料においては、全ての鉄の重量の90%はFeIIの形態である。1200℃における原料の酸素圧は、10−5Paである。
(例2:廃棄物の閉じ込め)
【0089】
例1に従って得られた還元原料の使用は、最終的に還元ガラスを有することが適切である種々のアプリケーションに対してテストされた。
【0090】
最初のアプリケーションは、ガラス固化されるべき溶液によく存在し、インアクティブモードにおいてプルトニウムをシミュレートする主剤の種であるセリウムの可溶化に関する。
【0091】
発明者は、セリウムは、Ce+IV状態よりもCe+III状態においてより溶解性がある、と述べている。彼らは、よりセリウムに富む廃棄物を投入可能とするために、還元ガラスの製造が望ましい、と述べている。
【0092】
例1の還元原料は、従って、CeO状態で得られる、すなわち、Ce+IV状態のセリウムと密に混合される。CeOに対して質量で0.4%〜10.5%の容量のセリウムとの混合物100gは、添加物または他の材料を付加することなく、マッフル炉の雰囲気下において1200℃に熱せられる。
【0093】
質量7%を超える容量のセリウムが投入されるガラスがこうして生成され均質である。
【0094】
還元原料を、第一に、同等の化学組成を有する一方、より酸化鉄酸化還元状態にある原料と、第二に、鉄を含まない従来技術のR7/T7型ホウケイ酸原料と置き換えた同等の実験が実施された。後者の実験(鉄を含まないホウケイ酸原料)は、上述したセリウム容量の投入ができず、制限容量は、質量で2%であった。
【0095】
これらの結果は、従来技術のプロセスに比べて、本発明の確かな利点を明確に実証している。
(例3:発泡現象の低減)
【0096】
酸化還元力を有する本発明に従う原料の他のアプリケーションは、ガラス固化プロセスで現れ得る発泡現象の防止を目的としてテストされた。この現象は、ある元素の還元を誘発する温度暴走に起因する。この還元の間に失われた酸素は泡の形態で離脱し、表面にガラスの発泡を生じる。
【0097】
例1の還元原料は、発泡の原因である多価種を予防的に還元することができる。ガラス槽の酸素圧は、温度の増加に対して低すぎる状態となり、還元反応と泡の状態での酸素の離脱を生じさせない。
【0098】
これを実証する実験は、空気中でジュール効果により熱せられた撹拌プラチナるつぼにおいて、上述したものと同等の還元原料388gと、R7/T7型仮焼模擬核分裂生成仮焼物130gとを、1200℃で混合して生成された約500gの溶解ガラスにおいて実行された。
【0099】
生成された溶解ガラスは、こうして、発泡現象を引き起こすことなく、1350度に過熱される。
【0100】
従来技術と比較するために、本発明の還元原料を従来技術のR7/T7型原料に置き換え、同じ原理に従って溶解ガラスが生成された。温度暴走は、1200℃〜1300℃の間で明確に出現する発泡現象を引き起こす。
【0101】
研究室規模で実施されたこれらの実験は、工業規模プロセスで生じる現象を代表するものと認められる。
【0102】
これらの実験は、本発明に従う酸化還元力を有する原料により、最終ガラスの酸化還元の効果的な調整が、ガラス固化プロセスにおいて、たとえば、グラファイト、有機化合物、硝酸塩、炭化物、金属種等の還元剤などの添加を行う必要なく得られることを示している。
【0103】
(参考文献)
[1]C.Lopez - Solubilite des actinides et de leurs simulants dans les verres nucleaires limites d’incorporation et comprehension des mecanismes [Solubility of actinides and of simulants thereof in nuclear glasses with incorporation limits and understanding of mechanisms] - Rapport CEA-R-6019
[2]H.D.Schreiber, S.J.Kozak, P.G.Leonard, K.K.McManus, - Redox systematics in model glass compositions from west valley - Mat. Res. Symp. Proc. Vol.1 294. - 1993.
[3]O.Pinet, E.Baudrey, J.L.Dussossoy, C.Fillet, J.F.Hollebecque - Redox effect on waste containment glass properties: case of a borosilicate glass containing 16%wt MoO3 - Proc.XIX Int. Congr. Glas Edimburgh, 1-6 July 2001, Glass Technol., 2002.
[4]O.Pinet, C.Di Nardo, Characteristic oxygen fugacity of redox couples in glass applied to the analysis of the redox state of glass melts - Processing and characterization of Electrochemical Materials and Device - Ceramic transaction - Vol.109, American Ceramic Society, Indianapolis, April 2000.

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの易酸化性または易還元性化学種を含む材料のガラス固化による閉じ込め用酸化還元ガラス原料の製造プロセスであって、
(a)前記少なくとも一つの化学種を所与の酸化還元平衡に維持することができる少なくとも一つの酸化還元対を選択すること、
(a)前記材料の所与量に対する前記化学種の量を決定すること、
(a)前記材料の前記所与量に対して、前記少なくとも一つの化学種を前記所与の酸化還元平衡に維持するために必要な前記少なくとも一つの酸化還元対の最小量を化学量論により決定すること、
(a)材料の、および/または生ガラスの、および/または材料のガラス固化による閉じ込めが実施される環境の、他の酸化または還元元素を考慮するように、随意的に、前記少なくとも一つの酸化還元対の前記最小量を調整すること、
(a)混合により、前記少なくとも一つの酸化還元対の、随意的に調整された、前記最小量を、材料の前記所与量の閉じ込めに適したある量の生ガラス原料、またはその前駆体に投入し、ガラス溶解物を得るのに混合物を十分な温度とすること、
(a)得られたガラス溶解物を冷却し、ガラス固化による前記材料の閉じ込め用酸化還元ガラス原料を得られるようにすること、
からなるステップを含む前記プロセス。
【請求項2】
少なくとも一つの易酸化性または易還元性化学種を含む材料のガラス固化による閉じ込めプロセスであって、
(a)請求項1のプロセスに従って得られる酸化還元ガラス原料と、閉じ込める材料とを、ガラス固化による前記材料の閉じ込めに適した割合で、混合かつ熱溶解すること、
(b)前記材料を含むように、混合物をガラス固化すること、
からなるステップを含む前記プロセス。
【請求項3】
前記少なくとも一つの化学種が、放射性核物質、金属または非金属元素または陽イオン、半金属、硫黄またはそれらの混合物である、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記少なくとも一つの化学種が、金属元素または陽イオンであり、As、Cd、Ce、Cr、Cs、Fe、Hg、Li、Mg、Mn、Mo、Na、Ni、Pb、Sb、Tc、Ti、V、Zn、Puのようなアクチニド、硫黄、またはそれらの塩、または2つまたは多数のそれらの元素、陽イオン、および/または塩の混合物から選択される、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項5】
前記少なくとも一つの化学種が、ランタニド元素またはアクチニド元素である、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項6】
酸化還元対が、Fe、Cr、V、S、Sb、Ti、As、Ce、Znを含む群から選択された元素の酸化還元対である、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項7】
前記少なくとも一つの化学種に従い製造されたガラス原料における酸化還元対の酸化還元比を調整する少なくとも一つの化合物が、ガラス原料またはその前駆体に投入される、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項8】
酸化還元対がFe2+/Fe3+であり、この対の酸化還元比を調整する化合物がグラファイトである、請求項7に記載のプロセス。
【請求項9】
生ガラス原料がホウケイ酸塩である、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項10】
生ガラス原料が、重量で20%から80%のSiO、重量で0%から25%のB、重量で0%から20%のFe、重量で0%から25%のNaO、重量で0%から20%のAl、重量で0%から15%のCaO、重量で0%から10%のLiO、重量で0%から20%のZnO、重量で0%から15%のZrOを含む、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項11】
ステップ(a)において十分な温度が1000℃〜1600℃である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項12】
製造される閉じ込めガラス原料が、たとえばガラスビーズ形態等の粒状形態である、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項13】
ガラス原料がホウケイ酸塩であり、ステップ(b)における加熱が1100℃〜1400℃で行われる、請求項2に記載のプロセス。
【請求項14】
ガラス原料が、閉じ込められるすべてのまたは部分的な前記材料の投入に続いて投入される、請求項2に記載のプロセス。
【請求項15】
加熱が、ガラス固化加熱炉において行われる、請求項2に記載のプロセス。
【請求項16】
ガラス固化される材料とガラス原料とが、前記材料の閉じ込めのための混合を目的として、ガラス固化加熱炉の異なる二つのポイントにおいて投入される、請求項2に記載のプロセス。
【請求項17】
前記材料が、核廃棄物である、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項18】
前記材料が、家庭ごみの焼却から得られる廃棄物である、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項19】
請求項1のプロセスにより得られる酸化還元ガラス原料。
【請求項20】
前記ガラス原料が、少なくとも一つの酸化還元対を含むホウケイ酸ガラス原料である、請求項19に記載の酸化還元ガラス原料。

【公表番号】特表2009−501121(P2009−501121A)
【公表日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−520868(P2008−520868)
【出願日】平成18年7月11日(2006.7.11)
【国際出願番号】PCT/EP2006/064101
【国際公開番号】WO2007/009914
【国際公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願人】(590000514)コミツサリア タ レネルジー アトミーク (429)
【Fターム(参考)】