説明

ガラス基板の移積装置及び移載方法

【課題】 スペーサをガラス基板から分離させる際に、ガラス基板の表面と摺接させることなく確実に分離し、分離・搬送動作中のスペーサの皺やたるみの発生や、摺接によるガラス基板への傷の発生を防止することができるガラス基板の移載装置を、簡易な構成でコンパクト・安価に提供する。
【解決手段】 基板搬送手段10と、スペーサ分離搬送手段20,30,40とを備え、スペーサ分離搬送手段20,30,40は、基板搬送手段10がガラス基板Gを吸着する際には、スペーサSの一辺を固定すると共に、スペーサSを分離搬送する際には、該固定辺を中心とした円軌道を描くようにスペーサSを回転させて、該スペーサSを次のガラス基板Gの表面と摺接させずに該ガラス基板Gと分離して搬送することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス基板とスペーサとが交互に積層された状態から、ガラス基板を所定の場所に移載するガラス基板の移載装置に関し、特に、ガラス基板とスペーサとが斜めに立てかけられた状態からガラス基板及びスペーサをそれぞれ所定の場所に移載するガラス基板の移載装置に関する。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】特開平6−255772号公報
【特許文献2】実開平6−14155号公報
【特許文献3】特開平7−61597号公報
【0003】
近年は、ガラス基板の用途の拡大(例えば、大型液晶パネル用や、大サイズのPDPパネル用等)に伴い、その基板サイズが大型化(例えば、第5世代サイズ:1100mm×1300mm、第7世代サイズ:1870mm×2200mm)してきている。
【0004】
そして、このようなガラス基板を搬入・搬出する際には、積層されたガラス基板の間に合紙等のスペーサを挿入して、該ガラス基板を保護している。また、大型化したガラス基板を搬入・搬出する際には、スペースの有効活用等の観点から、積層されたガラス基板及びスペーサを、台車に立て掛けた状態、すなわち、ガラス基板及びスペーサを所定の角度で立設させた状態で流通する方式がとられている。
【0005】
このように傾斜積層された大型のガラス基板を、加工ラインに移載する際には、互いに密着したガラス基板とスペーサとを分離させて移載する必要があるが、ガラス基板をスペーサから分離させる際、あるいは、スペーサをガラス基板から分離させる際に、スペーサがガラス基板に付着し易く、分離作業に時間がかかり人手での作業性に問題を生じていた。
【0006】
また、かかるガラス基板は、その厚さが薄く(例えば、0.5mm〜0.7mm程度)、傷や割れ等が生じやすいため、基板サイズの大型化と相俟って、人手での作業が困難となってきており、また、ガラス基板を加工ラインに供給する時間間隔(処理タクト)も年々、短縮化が求められてきており、こうした観点からも人手での作業が困難となってきている。
【0007】
そこで、こうしたガラス基板及びスペーサを分離して搬送し、所定の加工ラインに供給するための移載装置が種々提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0008】
ここで、特許文献1には、ガラス基板を吸着して移送するための吸着機構を有するガラス基板移送用ハンドと、合紙等のスペーサを吸着するためのスペーサ吸着ノズルと、スペーサをエアーブローによりガラス基板から剥離させるための吹き付けノズルと開閉式チャックとを有するスペーサ取得機構とを備え、吸着機構とスペーサ取得機構とを交互に動作させることにより、ガラス基板をスペーサから分離して移送するガラス基板の移送装置が開示されている。
【0009】
また、特許文献2には、アームの先端に取り付けられたフレームの一辺から遠近動可能で前方へ突出する圧接部材と、該圧接部材に着脱自在でその前方へ突出する押圧部材と、前後動自在でスペーサと当接して吸着する吸着部材を設け、ガラス基板の下端あるいは側端から突出するスペーサの端部を固定して、ガラス基板とスペーサとを分離して搬送するガラス基板の移載装置が開示されている。
【0010】
さらに、特許文献3には、パレット上のガラス基板を吸着する吸着盤及びスペーサを吸着する吸着パッドを個別に上下動、突出入するようにし、さらに吸着盤のストロークを二段直進状にすることにより吸着支持したガラス基板とスペーサとの隙間を規制し、スペーサの下縁を吸着した吸着パッドの首振り回動によりスペーサを所定の場所に落下させて移載するガラス基板の移載装置が開示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記特許文献に開示された先行技術においては、いずれも次のような問題点を有していた。
【0012】
例えば、特許文献1に開示された先行技術においては、傾斜積層されたガラス基板へのアプローチが困難であると共に、移載用ハンドにガラス基板の吸着機構及びスペーサ取得機構が一体化されているため、ガラス基板の分離搬送とスペーサの分離搬送とを併行して行うことができず、高速化が困難であるという問題を生じていた。
【0013】
また、特許文献2に開示された先行技術においては,ガラス基板の一辺からはみ出したスペーサの端部を、押圧部材により押圧して一旦固定し、該固定部を吸着部材により吸着してスペーサの分離を行うものであり、スペーサの分離動作中に該スペーサが後面のガラス基板表面に静電力等により付着し易いという問題を生じていた。
【0014】
さらに、特許文献3に開示された先行技術においては、ガラス基板の周縁から、はみ出さないように配置されたスペーサに対しても吸着可能な構成を採用しているが、特許文献2に開示された先行技術と同様に、スペーサの端部を押圧部材により押圧して一旦固定し、該固定部を吸着部材により吸着してスペーサの分離を行うものであり、分離動作中にスペーサが後面のガラス基板表面に付着し易いという同様な問題を有していた。
【0015】
こうしたスペーサの分離動作中に、該スペーサが後面のガラス基板の表面に付着し易いという傾向は、特に、近年の大型化され、かつ、傾斜積層されたガラス基板からスペーサを分離させる際に顕著に現われる。すなわち、このように傾斜積層されたガラス基板から合紙等のスペーサを分離させる際に、スペーサの一端部等を吸着してガラス基板から分離させる場合には、大型化されたスペーサの自由端がその自重により撓んだり落下したりし、あるいは、静電力等により、その分離・搬送動作の途中で基板表面に付着し易くなってきている。
【0016】
また、このような付着状態から、先行技術に開示されたような吸着手段により、スペーサをさらに引っ張って、ガラス基板の表面から分離させようとすると、吸着手段がスペーサから脱落してスペーサの安定した分離が行われないといった問題や、スペーサに皺やたるみが発生し、これにより、一層スペーサがガラス基板に接触して付着し易くなり、該スペーサが分離し難くなるといった問題や、スペーサ自体を破損するといった問題を生じていた。
【0017】
さらには、スペーサが次のガラス基板の表面に付着した状態から、より強力な吸引力等により、引き剥がそうとすると、スペーサがガラス基板と摺接して、スペーサに付着した塵埃等によりガラス基板の表面を擦りつけ、その表面を傷つけてしまうといった問題が生じていた。
【0018】
そして、このようなガラス基板表面の傷は、高精度・高密度な加工が施されるその後の加工工程に重大な影響を及ぼし、品質欠陥等が発生する要因となるので、スペーサの分離の際に傷ついたガラス基板の表面を研磨するための研磨工程が別途必要になるといった虞も生じていた。
【0019】
また、ある程度の表面加工が施されたガラス基板を、一旦、台車に搬入して、別の加工ラインに供給する場合もあり、このような表面処理が施されたガラス基板を加工ラインに移載する際に、その表面を傷つけてしまうことは、加工処理のやり直しや、ひいては、ガラス基板の廃棄に至るといった虞が生じ、生産性や歩留まりが低下するといった問題を生じていた。
【0020】
そこで、本発明は、上述のような従来技術の問題点に鑑みて、傾斜積層されたガラス基板及びスペーサの分離搬送を併行して行い、作業の高速化を実現すると共に、スペーサをガラス基板から分離させる際に、ガラス基板の表面と摺接させることなく確実に分離し、分離・搬送動作中のスペーサの皺やたるみの発生や、摺接によるガラス基板への傷の発生を防止することができるガラス基板の移載装置を、簡易な構成でコンパクト・安価に提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記目的を達成するために、本発明のガラス基板の移載装置は、ガラス基板とスペーサとが交互に積層され、所定の傾斜角度で傾斜配置された状態から、ガラス基板及びスペーサのそれぞれを所定の場所へ移載するガラス基板の移載装置において、所定の位置に配された最前部のガラス基板を吸着して、該ガラス基板を所定の場所に移載する基板搬送手段と、前記最前部のガラス基板の後面に配されたスペーサを吸着して、次のガラス基板表面から分離し所定の場所に移載するスペーサ分離搬送手段とを備え、前記スペーサ分離搬送手段は、前記基板搬送手段が前記ガラス基板を吸着する際には、前記スペーサの一辺を固定すると共に、前記スペーサを分離搬送する際には、該固定辺を中心とした円軌道を描くようにスペーサを回転させて、該スペーサを次のガラス基板の表面と摺接させずに該ガラス基板と分離して搬送することを特徴とするものである。
【0022】
ここで、スペーサとは、いわゆる合紙等の紙材に限定されるものではなく、例えば、ポリプロピレン等で形成された樹脂製のシート材をも含むものとする。
【0023】
このように構成した本発明のガラス基板の移載装置は、ガラス基板とスペーサとが交互に積層され、所定の傾斜角度で傾斜配置された状態から、ガラス基板及びスペーサのそれぞれを所定の場所へ移載するガラス基板の移載装置において、基板搬送手段と、スペーサ分離搬送手段とを備え、スペーサ分離搬送手段は、基板搬送手段がガラス基板を吸着する際には、スペーサの一辺を固定すると共に、スペーサを分離搬送する際には、該固定辺を中心とした円軌道を描くようにスペーサを回転させて、該スペーサを次のガラス基板の表面と摺接させずに該ガラス基板と分離して搬送するので、ガラス基板の分離搬送とスペーサの分離搬送との並行作業を可能とし、作業の高速化を実現することができる。また、スペーサをガラス基板から分離する際に、スペーサが次のガラス基板へ付着することを防止すると共に、スペーサの分離・搬送動作中にスペーサがガラス基板の表面に擦り付けられることによる基板表面の傷の発生を防止し、かつ、スペーサの分離・搬送動作中のスペーサの皺等の発生を防止して、その再利用を容易にするガラス基板の移載装置を簡易な構成で、コンパクト・安価に提供することができる。
【0024】
また、前記スペーサ分離搬送手段は、前記スペーサの上辺部を前記次のガラス基板の上端部に押さえ付けて固定するスペーサ押さえローラと、前記ガラス基板の所定の傾斜角度よりも緩やかな傾斜角度で配設された傾斜ガイドレールに沿って移動可能に形成され、前記スペーサの両側辺を把持するサイドチャックと、前記スペーサの下辺部を吸着保持して搬送するスペーサ保持手段とを備え、前記スペーサは、前記スペーサ押さえローラにより固定されたスペーサの上辺部を中心に、前記スペーサ保持手段により前記傾斜ガイドレールと略平行となるまで回転されて、前記サイドチャックにより前記上辺部近傍を把持されてもよい。
【0025】
ここで、本明細書中における傾斜角度とは、水平面からの傾斜角度をいうものとする。すなわち、鉛直面に近づくほど傾斜角度は急となり、水平面に近づくほど傾斜角度は緩やかになるものとする。
【0026】
このように構成した場合には、スペーサ分離搬送手段が、スペーサの上辺部を次のガラス基板の上端部に押さえ付けて固定するスペーサ押さえローラと、ガラス基板の所定の傾斜角度よりも緩やかな傾斜角度で配設された傾斜ガイドレールに沿って移動可能に形成され、スペーサの両側辺を把持するサイドチャックと、スペーサの下辺部を吸着保持して搬送するスペーサ保持手段とを備え、サイドチャックでスペーサを把持する際には、スペーサが、スペーサ押さえローラにより固定されたスペーサの上辺部を中心に、スペーサ保持手段により傾斜ガイドレールと略平行となるまで回転されて、サイドチャックにより上辺部近傍を把持されるので、サイドチャックの把持姿勢を調整することなく、スペーサの側辺に直線的にアプローチすることができ、サイドチャックの自由度削減による機構の簡素化及び制御の簡素化を図ることが可能となり、これにより、小型化・コストダウンに寄与することができる。また、スペーサに所定の円軌道を描かせることにより、スペーサの下辺部の吸着が脱落することを防止し、併せて、スペーサの上辺部と下辺部とを保持することにより、分離・搬送動作中におけるスペーサのたるみや皺の発生を防止して、ガラス基板への付着・摺接を防止することができる。
【0027】
さらに、前記スペーサ保持手段は、前記スペーサの表面を吸着して前記傾斜ガイドレールと略平行となるまで円軌道を描かせるように回転させて次の基板表面から分離する、スペーサの幅方向に亘って配設された複数の吸着パッドを備え、前記スペーサを該複数の吸着パッドにより吸着分離する際には、前記スペーサの幅方向両端部に対応する吸着パッドから中央部に対応する吸着パッドに向かって、順次、吸着して分離してもよい。
【0028】
このように構成した場合には、スペーサ保持手段が、スペーサの表面を吸着して傾斜ガイドレールと略平行となるまで円軌道を描かせるように回転させて次の基板表面から分離する、スペーサの幅方向に亘って配設された複数の吸着パッドを備え、スペーサを該複数の吸着パッドにより吸着分離する際には、スペーサの幅方向両端部に対応する吸着パッドから中央部に対応する吸着パッドに向かって、順次、吸着して分離するので、幅方向全域に亘って一斉に吸着して分離する場合に比し、より少ない吸引力でスムーズにスペーサとガラス基板との分離を行うことができる。
【0029】
さらにまた、前記スペーサ保持手段は、前記スペーサが、前記傾斜ガイドレールと略平行となった時点で、前記スペーサの下辺部両端近傍を把持するロウアーチャックをさらに備えてもよい。
【0030】
このように構成した場合には、スペーサ保持手段は、前記スペーサが、前記傾斜ガイドレールと略平行となった時点で、前記スペーサの下辺部両端近傍を把持するロウアーチャックをさらに備えるので、サイドチャック及びロウアーチャックによりスペーサの四隅端部を確実に把持して、該スペーサに対して常に一定の張力を加えることができ、スペーサ搬送中の皺やたるみの発生を防止し、スペーサ搬送中におけるガラス基板への付着及び付着摺接によるガラス基板の傷の発生をより確実に防止することができる。併せて、スペーサの状態をより良好に維持して、その再利用をより一層容易とすることができる。
【0031】
さらにまた、前記基板搬送手段と、前記スペーサ保持手段とは、前記ガラス基板の所定の搬送場所を介して上下に配設されていると共に、各々水平移動可能に形成されており、前記基板搬送手段が吸着分離したガラス基板を所定の移載場所に向かって水平方向に移動しつつ前記ガラス基板の姿勢を略水平にした際に、前記スペーサ保持手段は、スペーサに向かって水平方向に移動して前記スペーサの分離を行ってもよい。
【0032】
このように構成した場合には、基板搬送手段と、スペーサ保持手段とは、ガラス基板の所定の搬送場所を介して上下に配設されていると共に、各々水平移動可能に形成されており、基板搬送手段が吸着分離したガラス基板を所定の移載場所に向かって水平方向に移動しつつガラス基板の姿勢を略水平にした際に、スペーサ保持手段は、スペーサに向かって水平方向に移動してスペーサの分離を行うので、基板搬送手段とスペーサ保持手段との移動空間を上下に分離でき、それぞれの分離搬送手段を互いに干渉させることなく、より簡易な駆動制御にて並行作業を容易に実現することができ、これにより、一層の装置のコンパクト化、作業の高速化に寄与することが可能となる。
【0033】
以上において、前記スペーサ分離搬送手段が、前記スペーサを回転させて、次のガラス基板から分離させた際に、該分離によって形成されるスペーサと次のガラス基板との間の空間に、スペーサの帯電極性と逆極性に帯電させたイオン化空気流を吹き付ける除電手段をさらに備えてもよい。
【0034】
このように構成した場合には、スペーサ分離搬送手段が、スペーサを回転させて、次のガラス基板から分離させた際に、該分離によって形成されるスペーサと次のガラス基板との間の空間に、スペーサの帯電極性と逆極性に帯電させたイオン化空気流を吹き付ける除電手段をさらに備えるので、ガラス基板間で帯電されたスペーサを除電し、静電気力によるスペーサと次のガラス基板との付着を防止することができ、これにより、スペーサとガラス基板との分離をより効果的に確実に行うことができる。
【0035】
また、前記ガラス基板及びスペーサは、その最前部のガラス基板が、常に、所定の位置となるように所定のタイミングで移動してもよい。
【0036】
このように構成した場合には、ガラス基板及びスペーサは、その最前部のガラス基板が、常に、所定の位置となるように所定のタイミングで移動するので、常に、一定の位置でガラス基板及びスペーサの取り出し分離が行われるので、簡易な搬送制御で、安定性・確実性の高いガラス基板及びスペーサの分離搬送が可能となる。
【0037】
本発明に係るガラス基板の移載方法は、ガラス基板とスペーサとが交互に積層され、所定の傾斜角度で傾斜配置された状態から、ガラス基板及びスペーサのそれぞれを所定の場所へ移載するガラス基板の移載方法において、前記積層されたガラス基板のうち、最前部のガラス基板を吸着する際には、後面に配されたスペーサの一辺を固定し、該ガラス基板をスペーサから分離して所定の場所に移載し、前記ガラス基板が傾斜配置された状態から所定の場所に移載される間に、前記スペーサの固定辺を中心として該スペーサを一定の回転半径を維持するように回転させて、スペーサの四隅近傍を保持した後、該スペーサの一辺の固定を解除して、スペーサを次のガラス基板の表面と摺接させずに該ガラス基板と分離して搬送することを特徴とするものである。
【0038】
このような本発明に係るガラス基板の移載方法によれば、ガラス基板の分離搬送作業と、スペーサの分離搬送作業とを併行して行い、作業の高速化を実現すると共に、スペーサをガラス基板から分離させる際に、スペーサの固定辺を中心として該スペーサを一定の回転半径を維持するように回転させて分離し、その後、スペーサの四隅近傍を保持した後、該スペーサの一辺の固定を解除して、スペーサを次のガラス基板の表面と摺接させずに該ガラス基板と分離して搬送するので、スペーサの分離及び搬送動作中における該スペーサのガラス基板への付着や摺接を防止してガラス基板への傷の発生を確実に防止し、かつ、スペーサの皺やたるみの発生を防止して、その再利用を容易にするガラス基板の移載方法を提供することができる。
【発明の効果】
【0039】
本発明によれば、簡易な構成で、傾斜積層されたガラス基板及びスペーサの分離搬送の併行作業が可能となり、作業の高速化に寄与すると共に、スペーサをガラス基板から分離させる際に、ガラス基板の表面と摺接させることなく確実に分離し、分離・搬送動作中のスペーサの皺やたるみの発生や、摺接によるガラス基板への傷の発生を防止することができるガラス基板の移載装置を、コンパクト・安価に実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
[全体構成]
【0041】
まず、本発明に係るガラス基板の移載装置の概要について、図1を参照して説明する。図1は、本発明に係るガラス基板の移載装置の一実施の形態を示す概略構成図である。
【0042】
本発明に係るガラス基板の移載装置は、図1に示されるように、台車Dに収容され所定の傾斜角度で立設されたガラス基板G及びスペーサSが交互に積層された状態から、所定の取り出し位置より、ガラス基板G及びスペーサSのそれぞれを取り出し、各ガラス基板G及びスペーサSのそれぞれを所定の位置に搬送するものである。また、ガラス基板Gを分離搬送する際には、後面のスペーサSの付着を防止すると共に、スペーサSを分離搬送する際には、後面のガラス基板Gの表面を摺接することなく(ガラス基板Gの表面を擦り付けることなく)、スペーサSをガラス基板Gから分離して搬送集積することを可能とするものである。
【0043】
なお、本実施の形態において、スペーサSは、傾斜立設されたガラス基板G間の上端部からさらに上方にはみ出すように配設されている。
【0044】
図1に示されるように、本発明に係るガラス基板の移載装置1は、方形の枠体であるフレーム3を備え、このフレーム3の長手方向一端部には、不図示の搬送用コンベアと連接可能に、その表面に搬送ローラが配設された、ガラス基板Gの所定の移載場所である水平な基板ステージGSが形成されている。一方、フレーム3の他端部(基板ステージGSと反対側の端部)には、所定の傾斜角度(例えば、80°〜85°)で配置されたガラス基板G及びスペーサSが収容された台車Dが台車移動ユニットDD上に配設されている。この台車移動ユニットDDは、所定のピッチで傾斜積層されたガラス基板G及びスペーサSを収容した台車Dを、その最前部に積載されたガラス基板Gが、常に一定の位置となるように、ガラス基板G及びスペーサSの移載が完了した時点で、台車Dごと所定のピッチだけ移動させるものであり、オペレータによりセットされた台車Dを傾斜面DSに沿って、台車Dごと移動させる不図示の移動機構を備えている。
【0045】
このような台車移動ユニットDDを用いることにより、ガラス基板G及びスペーサSの取り出しが、常に、所定の位置で行われるので、後述するガラス基板搬送手段及びスペーサ分離搬送手段の構成及び制御を簡素化することができ、かつ、安定した分離搬送作業の実現が可能となる。
【0046】
さらに、積層されたガラス基板G及びスペーサSと基板ステージGSとの間には、フレーム3の下面の長手方向中央部にスペーサ収納ストッカSSが設けられている。
【0047】
また、フレーム3の長手方向に延在する上部長手フレーム3a,3aには、その上面部に不図示のガイドレールがそれぞれ形成されており、この上部長手フレーム3a,3aの上部には、ガイドレールに沿って長手方向に水平移動可能に形成された可動フレーム5が上部長手フレーム3a,3aに亘って幅方向(長手方向と直交する方向)に配設されている。そして、この可動フレーム5の幅方向略中央部には、所定の位置に配置されたガラス基板Gを吸着して基板ステージGSに搬送するガラス基板搬送ユニット10が懸装されている。
【0048】
一方、基板ステージGSの下方空間には、積層されたガラス基板G間に介在するスペーサSを吸着分離して搬送するスペーサ搬送ユニット30が収容されており、このスペーサ搬送ユニット30は、ガラス基板搬送ユニット10と同様に、他端部に配置されたスペーサSに近接可能なように、不図示のガイドレールに沿って水平移動可能に形成されている。
【0049】
また、所定の位置に配設された最前部のガラス基板Gの上方には、該ガラス基板Gの後面に配置されたスペーサSの上辺部を固定するスペーサ押さえユニット20が幅方向に延在するように配設されている。
【0050】
さらに、このスペーサ押さえユニット20の幅方向両端部近傍には、傾斜立設された傾斜フレームに沿って摺動自在に形成され、スペーサSの側辺を把持して搬送するサイドチャックを有するサイドチャックユニット40が配設されている。
【0051】
なお、符号50は、各構成ユニットの制御を行うコントローラユニットである。
【0052】
このように構成した本実施の形態に係る移載装置1においては、ガラス基板搬送ユニット10が基板搬送手段に対応し、スペーサ押さえユニット20、スペーサ搬送ユニット30、サイドチャックユニット40にてスペーサ分離搬送手段が構成されている。
【0053】
次に、上述した本発明に係るガラス基板の移載装置の主要部の構成について、図面を参照してさらに説明する。
[ガラス基板搬送ユニット10]
【0054】
まず、ガラス基板の吸着分離を行うガラス基板搬送ユニット10の構成について、図2を参照して説明する。
【0055】
本発明に係るガラス基板搬送ユニット10は、図2に示されるように、フレーム3の長手方向に移動可能に形成された可動フレーム5と、この可動フレーム5の幅方向略中央部に懸装された、例えば、シリンダから構成される上下方向に伸縮する伸縮部101と、この伸縮部101の先端にガラス基板Gと対向する方向に回転自在に形成された回転軸103と、この回転軸103を介してガラス基板Gと対向可能に配設された板状の基板吸着面105とを備えている。そして、この基板吸着面105には、複数の基板吸着パッド107,107・・が設けられており、この基板吸着パッド107,107・・をガラス基板Gに圧接させて不図示の負圧源により吸引することにより、ガラス基板Gの吸着分離を行うようになっている。
【0056】
このように構成した本発明に係るガラス基板搬送ユニット10においては、傾斜積層されたガラス基板Gを吸着して、所定の基板ステージGS上に水平姿勢で搬送すると共に、加工処理が完了したガラス基板Gを搬送コンベア上から搬出し、台車D上に順次傾斜積層することも可能となっている。
[スペーサ押さえユニット20]
【0057】
次に、本発明に係るスペーサ押さえユニット20の構成について、図3を参照して説明する。
【0058】
図3に示されるように、本発明に係るスペーサ押さえユニット20は、所定の位置に配設された最前部のガラス基板Gの上方に、幅方向に延在するように配設されており、回転軸201と、この回転軸201の両端部に連結された逆Z字状の回転支持部材203,203と、回転支持部材203,203のガラス基板G側先端部203d,203d間に取り付けられたローラ軸204と、このローラ軸204に取り付けられた複数の押さえローラ205,205・・とを備えている。そして、回転支持部材203,203の他端部203u,203uは、それぞれ駆動シリンダ207に接続されており、この駆動シリンダ207を伸縮駆動することにより、回転支持部材203,203が回転軸201回りに回転され、先端の複数の押さえローラ205,205・・が、ガラス基板Gの上方からはみでたスペーサSの上辺部に対して接離可能に移動するようになっている。具体的には、回転支持部材203を、例えば、図中、時計回り方向に回転させることにより、スペーサSの上辺部が複数の押さえローラ205,205・・により、後面のガラス基板Gの上端部に押さえつけられて固定され、回転支持部材203を、図中、反時計回り方向に回転させることにより、当該固定が解除されるようになっており、簡易な構成でスペーサSの上辺部の固定・解除が行えるようになっている。
[スペーサ搬送ユニット30]
【0059】
次に、本発明に係るスペーサ保持手段であるスペーサ搬送ユニット30の構成について、図4を参照して説明する。図4は、スペーサ搬送ユニット30のケーシング内部の構成を示す模式的断面図である。
【0060】
本発明に係るスペーサ搬送ユニット30は、基板ステージGSの下方空間内に収容可能であり、図4に示されるように、この基板ステージGS下方から、ガラス基板Gの所定の取り出し位置に水平移動可能なケーシング301を備えている。そして、このケーシング301は、その内側面301Sに形成されたガイド部303,303に沿って移動可能に形成された、幅方向に亘って延在するロール部材305と、このロール部材305の両端部に接続された屈曲アーム307,307と、屈曲アーム307,307の先端部に、幅方向に延在するように配設された吸着支持部材309と、この吸着支持部材309に沿って、幅方向に配設された複数のスペーサ吸着パッド310とを備えている。
【0061】
ここで、屈曲アーム307,307の先端に設けられた複数の吸着パッド310,310・・は、スペーサSの幅方向略全域に対応するように配置されており、その配置数は任意に設定することができる。また、ガイド部303,303は、ロール部材305が、このガイド部303,303に沿って移動した際、屈曲アーム307,307の先端に設けられた複数の吸着パッド310,310・・が、複数の押さえローラ205,205・・によって固定されたスペーサSの固定辺を中心とした円軌道を描くように形成されている。さらに、屈曲アーム307の屈曲角度は、当該屈曲アーム307が、スペーサSにアプローチした際、その先端部がスペーサSの表面と対向する(スペーサSの表面と吸着パッド310,310・・の吸着面とが密着する)ように設定されている。
【0062】
さらに、ケーシング301の下方先端縁の幅方向両端部近傍には、後述する傾斜フレーム401の傾斜方向と同方向に伸縮する伸縮軸313を備え、スペーサSの下辺部を把持するハンド状の開閉可能なロウアーチャック315,315が配設されている。
【0063】
このように構成された本発明のスペーサ搬送ユニット30においては、複数の吸着パッド310,310・・によりスペーサSの下辺部を吸着し、押さえローラ205,205・・により固定されたスペーサSの上部固定辺を中心とした円軌道を描くように、スペーサSを回転させた後、ロウアーチャック315,315により、スペーサSの下辺部を把持し、後述するサイドチャックユニット40と共に、スペーサSを所定のスペーサ収納ストッカSS内に収容するようになっている。
【0064】
また、スペーサSに円軌道を描かせる際には、ケーシング301内に形成された所定のガイド部303によってその軌道を描かせるので、スペーサSの先端の空間上の軌跡を演算等により求めて制御する場合に比し、簡易な構成及び制御で所定の軌跡を実現することができる。
[サイドチャックユニット40]
【0065】
次に、本発明に係るサイドチャックユニット40の構成について、図5を参照して説明する。図5は、サイドチャックユニット40は、スペーサアプローチ方向から見た模式的構成図である。
【0066】
本発明に係るサイドチャックユニット40は、図5に示されるように、所定の位置に配置された最前部のガラス基板Gの幅方向両端部近傍に配設された傾斜フレーム401,401と、この傾斜フレーム401,401に沿って摺動自在に形成され、スペーサSの側辺を把持するサイドチャック405,405とを備えている。
【0067】
傾斜フレーム401,401は、最前部のガラス基板Gの上部後方側(台車D側)から下部前方側(基板ステージGS側)に向かって傾斜配置(図1参照)されており、この傾斜フレーム401,401の上面側には、傾斜フレーム401,401の傾斜に沿った傾斜ガイドレール403,403がそれぞれ形成されている。ここで、傾斜フレーム401,401は、ガラス基板Gの所定の傾斜角度(例えば、80°〜85°)よりも緩やかな傾斜角度(例えば、60°〜75°)で傾斜配置されている。さらに、この傾斜フレーム401,401の内側のそれぞれには、傾斜ガイドレール403,403に沿って摺動自在であると共に、幅方向に伸縮可能な伸縮軸404,404を有し、スペーサSの側辺を把持するハンド状の開閉可能なサイドチャック405,405が配設されている。
【0068】
このように構成された本発明のサイドチャックユニット40においては、傾斜フレーム401,401に摺動自在に取り付けられたサイドチャック405,405の把持姿勢を変更することなく、前述したスペーサ搬送ユニット30の吸着パッド310,310・・によるスペーサSの所定の回転動作と相俟って、スペーサSの側辺に対して直線的にアプローチするだけでスペーサSを把持固定できるので、サイドチャック405,405の姿勢を変更するための回転軸等の自由度を付加することなく、必要最小限の自由度構成でコンパクトに安価にスペーサSの側辺を把持するサイドチャックユニット40を実現することができる。
【0069】
次に、上述のように構成された本発明に係るガラス基板の移載装置1の動作について、図6〜図8を参照して説明する。ここで、図6は、ガラス基板Gの分離搬送動作を中心に示す模式図であり、図7は、スペーサSの分離搬送動作を中心に示す模式図であり、図8は、スペーサSの分離動作を示す拡大図である。
【0070】
まず、ガラス基板Gの分離動作について、図6A,図6Bを参照して説明する。
【0071】
オペレータが、所定のピッチで交互に傾斜積層されたガラス基板G及びスペーサSを収容した台車Dを、台車移動ユニットDDの所定の位置にセットすると、コントローラユニット50からの指示により、ガラス基板G及びスペーサSが積層された台車Dは、図6Aに示されるように、傾斜面DSに沿って矢印a方向に移動し、その最前部に搭載されたガラス基板Gが所定の位置となった時点で停止する。なお、この所定の位置を検出するためのセンサとしては、例えば、光センサや、リミットスイッチ等の既存の位置検出スイッチを用いることができる。また、本実施の形態においては、台車Dに交互に傾斜積層されたガラス基板G及びスペーサSの最前部側(基板ステージGS側)がガラス基板Gとなり、最後部側(台車D側)がスペーサSとなるようにセットされている。
【0072】
次に、オペレータからの作業開始指示に基づき、コントローラユニット50を介して、作業開始指令が、移載装置1に出力され、この指令に基づき、ガラス基板搬送ユニット10が、基板ステージGS上の待機位置(図中、破線で示された位置)から台車D側に、可動フレーム5により矢印b方向に水平移動しつつ、伸縮部101及び回転軸103により、基板吸着面105が、最前部のガラス基板Gの表面と平行に対向するように、その姿勢を制御する。そして、基板吸着面105の複数の吸着パッド107,107・・が、所定の位置に配置された最前部のガラス基板Gの表面と圧接するような所定の位置で停止する。
【0073】
この時、スペーサ押さえユニット20は、回転支持部材203,203が、最前部のガラス基板Gの後面のスペーサSを次のガラス基板Gの上端部に押さえつけるように回転し、先端の押さえローラ205,205・・により、スペーサSの上辺部を固定し、最前部のガラス基板Gの吸着分離に備えている。なお、傾斜積層されたガラス基板G及びスペーサSの最後部のスペーサSをスペーサ押さえユニット20により固定する際は、次のガラス基板Gが存在しないので、台車Dの上端部に押さえつける。
【0074】
次に、ガラス基板搬送ユニット10は、不図示の負圧源に接続された複数の吸着パッド107,107・・により、ガラス基板Gを吸引し、ガラス基板Gの吸着分離を開始する。この際、ガラス基板搬送ユニット10は、図6Bに示されるように、吸着されたガラス基板Gの上辺部が、下辺部に比し、先にスペーサSから分離するように、基板吸着面105の姿勢を変化させる(回転軸103により、ガラス基板Gの傾斜方向と反対方向に基板吸着面105を回転させる)。そして、ガラス基板Gの上辺部がスペーサSと分離した時点で、該分離空間に対して、押さえローラ205近傍に配設された不図示の噴射ノズルにより、ガラス基板Gの上方から下方に向かってエアーFを吹き付ける。
【0075】
これにより、ガラス基板搬送ユニット10に吸着されたガラス基板Gの裏面に、スペーサSが引き摺られることなく、確実に、ガラス基板GをスペーサSから分離することができる。
【0076】
次に、図7A〜図7C,図8を参照して、スペーサSの分離搬送動作について説明する。
【0077】
図7Aに示されるように、ガラス基板搬送ユニット10は、スペーサSから吸着分離したガラス基板Gの姿勢を水平に変更しつつ、可動フレーム5により台車D側から基板ステージGS側へ矢印c方向に沿って水平移動し、基板ステージGS上にて吸着パッド107,107・・による吸引を解除してガラス基板Gの移載を完了する。
【0078】
一方、ガラス基板搬送ユニット10がガラス基板Gの姿勢を略水平にした時点で、基板ステージGSの下方に配置されたスペーサ搬送ユニット30は、台車D側に向かって水平移動し、所定の位置で停止した後、ロール部材305が、ガイド部303,303に沿ってスペーサS側に移動し、屈曲アーム307の先端に設けられた吸着パッド310,310・・がスペーサSの表面を圧接する所定の位置で停止する(図4参照)。
【0079】
このように、ガラス基板搬送ユニット10とスペーサ搬送ユニット30とを、基板ステージGSを介して上下に分離配置し、ガラス基板搬送ユニット10により吸着搬送されるガラス基板Gの姿勢が略水平となった時点で、スペーサ搬送ユニット30が矢印d方向に沿って水平移動し、スペーサSにアプローチすることにより、ガラス基板搬送ユニット10の移動空間と、スペーサ搬送ユニット30の移動空間とが上下に分離され、それぞれのユニット10,30の移動範囲を互いに干渉させることなく、ガラス基板Gの分離搬送とスペーサSの分離搬送との併行作業を各ユニット10,30の簡易な駆動制御で行うことができ、これにより、一層の作業の高速化(処理タクトの短縮化)及び装置のコンパクト化が可能となる。
【0080】
その後、スペーサ搬送ユニット30は、図7Bに示されるように、吸着パッド310,310・・により、スペーサSの吸引を開始すると共に、吸着保持したスペーサSを、スペーサ押さえユニット20の押さえローラ205,205・・により固定されたスペーサSの固定辺を中心として、矢印e方向に沿った円軌道を描くように回転させる。
【0081】
このスペーサSの分離動作について図8を参照してさらに説明する。
【0082】
図8に拡大して示されるように、スペーサ搬送ユニット30は、吸着パッド310,310・・により、スペーサSの吸着を開始した後、屈曲アーム307が取り付けられたロール部材305を、ガイド部303,303に沿って基板ステージGS側に移動させて(図4参照)、スペーサSの下辺部の吸着パッド310,310・・による吸着位置と押さえローラ205,205・・による固定位置とのスペーサ長手方向に沿った距離を回転半径とし、スペーサSをこの一定の回転半径を維持したまま矢印e方向に沿って回転させる。すなわち、スペーサSの押さえローラ205により固定された上部固定辺と対向する下部対向辺を吸着パッド310,310・・により吸着し、この下部対向辺が該上部固定辺を中心とした円軌道を描くように回転させる。
【0083】
なお、吸着パッド310,310・・により、スペーサSの吸着を行う際には、スペーサSの幅方向両端部に対応する吸着パッドから、中央部に対応する吸着パッドに沿った順序で、順次吸引を行うと共に、スペーサSの下辺部が次のガラス基板Gと分離し始めた時点で、スペーサSの所定の取り出し位置下方近傍に配置された除電器320により、イオン化空気流IFをスペーサSの下方から上方に向かって吹き付ける。ここで、除電器320は、イオン化された空気流IFを吹き付ける噴射ノズルであり、例えば、ガラス基板G間に介在するスペーサSが静電気によりマイナスに帯電されている場合には、これと逆極性のプラスにイオン化された空気流IFを吹き付けるものである。
【0084】
このようにスペーサSの幅方向両端部に対応する吸着パッド310から順次吸引を開始することにより、幅方向全域に亘って全吸着パッド310,310・・により同時に吸引を行う場合に比し、より小さな吸引力でスムーズにスペーサSの分離を行うことができる。
【0085】
また、このような分離動作により形成された下方空間に、イオン化空気流IFを噴射することにより、除去する際に後面のガラス基板Gの表面に付着し易い、ガラス基板G間で帯電されたスペーサSの除電を行い、静電気力による次のガラス基板Gの表面へのスペーサSの付着をより確実に防止し、スペーサSのスムーズな分離を促進することができる。
【0086】
さらに、所定の円軌道を描くようにスペーサSを回転させることにより、分離動作中のスペーサSの表面と、吸着パッド310,310・・が取り付けられた屈曲アーム307,307・・の先端部との角度を、略垂直に維持することができ、これにより、常に、吸着パッド310,310・・の吸着面とスペーサSの表面とを密着状態に維持し、分離動作中の吸着パッド310,310・・がスペーサSから脱落することを防止すると共に、スペーサSにたるみや皺が発生することがなく、分離動作中のスペーサSのガラス基板Gへの付着を防止し、安定した分離動作を行うことが可能となる。
【0087】
次に、スペーサ搬送ユニット30により、スペーサSがサイドチャックユニット40の傾斜フレーム401,401の傾斜角度と略平行となる位置まで回転した時点で、サイドチャックユニット40のサイドチャック405,405及びスペーサ搬送ユニット30のロウアーチャック315,315が、スペーサSの上端部両側辺及び下辺部両端をそれぞれ把持すると共に、スペーサ押さえユニット20が、スペーサSの上辺の固定を解除するように抑えローラ205,205・・を回転させる。
【0088】
なお、サイドチャック405,405及びロウアーチャック315,315によるスペーサSの把持位置は、スペーサSの自由端の自重等による撓みや垂れ下がりを防止するという観点から、その四隅近傍であることが好ましい。
【0089】
このようにスペーサSが、傾斜フレーム401,401と略平行となった時点で、サイドチャック405,405及びロウアーチャック315,315で、スペーサSを把持することにより、サイドチャック405,405及びロウアーチャック315,315のそれぞれが、スペーサSに直線的にアプローチすることができ、これにより、各々の把持機構に関して、その把持姿勢を変更するための自由度(例えば、回転軸等)を付加的に設けることなく、より簡易な構成及び制御によりスペーサSの分離搬送が可能となり、装置のコンパクト化・コストダウンに寄与することができる。併せて、搬送中のスペーサS全体には、四隅を把持したサイドチャック405,405及びロウアーチャック315,315により、常に、一定のテンションが付与されるので、搬送動作中におけるスペーサSのたるみや皺の発生等を防止し、スペーサSの搬送動作中における基板表面への付着や、付着摺接に伴う基板表面への傷の発生の防止、さらには、スペーサSの再利用をより一層容易に実現することが可能となる。
【0090】
なお、スペーサSを保持搬送するという観点からは、サイドチャック405,405と、吸着パッド310,310・・とによりスペーサSの保持搬送が可能となるが、より確実にスペーサSのたるみや皺の発生を防止し、スペーサSの付着摺接に伴う次のガラス基板G表面への傷の発生を防止するという観点から、上述のように、スペーサSを回転させて、次のガラス基板Gの表面から分離させた時点で、該スペーサSの四隅近傍をサイドチャック405,405及びロウアーチャック315,315により、把持することが好ましい。
【0091】
次に、サイドチャック405,405及びロウアーチャック315,315により把持されたスペーサSは、サイドチャック405,405が傾斜ガイドレール403,403に沿って、上方から下方に移動すると共に、吸着パッド310,310・・及びロウアーチャック315,315が、ケーシング301と共に、矢印f方向に沿ってスペーサ収納ストッカSS上の所定の位置に水平移動(図7C参照)することにより、スペーサSを、次のガラス基板Gの表面と摺接させることなく、所定のストッカSS上に搬送し、サイドチャック405,405及びロウアーチャック315,315による把持及び吸着パッド310,310・・による吸着を解放することにより、スペーサSが所定のストッカSS内に収容される。
【0092】
以上の手順を繰り返すことにより、ガラス基板Gの分離搬送とスペーサSの分離搬送との併行作業を、簡易な構成及び制御にて実現することができ、これにより、作業の高速化(処理タクトの短縮化)、コンパクト化及びコストダウンに寄与するガラス基板の移載装置を実現することができる。
【0093】
また、台車D上に交互に傾斜積層されたガラス基板G及びスペーサSのそれぞれを、確実に分離搬送することができると共に、スペーサSを分離する際に、次のガラス基板Gの表面と摺接することがないので、微細な加工処理のための表面精度が要求されるガラス基板Gの表面への傷の発生を確実に防止することができる。
【0094】
さらに、分離搬送中のスペーサSに皺やたるみを発生させることがなく、スペーサSをスペーサ収納ストッカSS内にきれいに積載収納することができるので、スペーサSの再利用が容易となる。
【0095】
なお、本発明に係るガラス基板の移載装置1は、台車D上に傾斜積層されたガラス基板G及びスペーサSをそれぞれ所定の場所に分離搬送するのみならず、加工ライン上で所定の加工処理が施され水平配置されたガラス基板Gを、同様な装置構成を用いて台車D上に傾斜積層する(以下、アンローディング作業ともいう)ことも可能となる。
【0096】
次に、このようなアンローディング作業を行う場合の作業手順について、以下に説明する。
【0097】
この場合は、上述した台車D上からガラス基板G及びスペーサSを移載する作業(以下、ローディング作業ともいう)と、基本的に逆の作業を行うものであり、加工処理を終えたガラス基板の最終ステージが、ローディング作業の際の基板ステージGSに該当し、ローディング作業の場合と同様な移載装置を用いることができる。また、この際のスペーサ収納ストッカSSは、先に分離回収したスペーサ収納ストッカSSに、従来公知の、例えば、ローラ対を用いた切り出し装置を付設することにより、そのまま用いることができる。なお、ローディング作業と同様な手順については、簡単のためその説明を省略する。
【0098】
本移載装置1を用いたアンローディング作業の場合には、まず、スペーサ収納ストッカSSに付設された従来公知の切り出し装置により、ストッカSS上に積層されたスペーサSを一枚ずつ切り出して、その排出側に配置された傾斜ガイドレール403,403と同様な傾斜を有するガイド部材上にその先端を突出させる。
【0099】
これにより、切り出されたスペーサSの先端は、傾斜フレーム401,401と同様な傾斜角度となり、傾斜ガイドレール403,403の下端部で待機していたサイドチャック405,405により、スペーサSの先端部側辺を把持する。
【0100】
そして、このサイドチャック405,405により、スペーサSを傾斜ガイドレール403,403に沿って、所定の位置(スペーサSが、台車Dの上端部を越えて、押さえローラ205,205・・により押し付け固定が可能となるような位置)まで引き上げて、押さえローラ205,205・・により、台車Dの上端部に押さえつけて固定する。
【0101】
その後、吸着パッド310,310・・を、台車Dの表面(スペーサSと対向する傾斜面)に向かって回転させて、スペーサSを台車Dに押し付けてセットする。
【0102】
次に、最終ステージ上のガラス基板Gをガラス基板搬送ユニット10で、吸着搬送し、所定の搬出位置にセットされた台車D上に先に配置したスペーサSを介して傾斜配置する。
【0103】
なお、簡易的には、吸着パッド310,310・・による回転押し付け動作を省略して、ガラス基板Gの移載動作により、スペーサSの押し付けを行うようにしてもよい。
【0104】
このような動作を繰り返すことにより、加工処理を終えたガラス基板G及びスペーサSが台車D上に交互に傾斜積層される。
【0105】
また、加工処理の程度によってガラス基板Gの表面を吸着することが好ましくない場合には、ガラス基板搬送ユニット10の構成を変更して、ガラス基板Gの裏側から吸着するように構成すれば、同様の手順でアンローディング作業を行うことができる。
【0106】
なお、本実施の形態においては、スペーサSをガラス基板Gから分離する際に、スペーサSの上辺部を固定辺として下辺部を保持して回転させたが、本発明は、このような上辺部の固定辺に限定されるものではなく、例えば、装置構成及び駆動制御は複雑となるものの、下辺部を固定辺として、上辺部を回転させてもよいし、一側辺を固定辺として、他側辺を回転させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】本発明に係るガラス基板の移載装置を示す模式的構成図である。
【図2】本発明に係るガラス基板搬送ユニットを示す概略構成図である。
【図3】本発明に係るスペーサ押さえユニットを示す概略構成図である。
【図4】本発明に係るスペーサ搬送ユニットの内部構造を模式的に示す断面図である。
【図5】本発明に係るサイドチャックユニットを示す概略構成図である。
【図6A】本発明に係る移載装置によるガラス基板の分離搬送動作を示す模式図である。
【図6B】本発明に係る移載装置によるガラス基板の分離搬送動作を示す模式図である。
【図7A】本発明に係る移載装置によるスペーサの分離搬送動作を示す模式図である。
【図7B】本発明に係る移載装置によるスペーサの分離搬送動作を示す模式図である。
【図7C】本発明に係る移載装置によるスペーサの分離搬送動作を示す模式図である。
【図8】本発明に係る移載装置によるスペーサの分離動作を示す拡大図である
【符号の説明】
【0108】
1:移載装置、3:フレーム、5:可動フレーム、10:ガラス基板搬送ユニット、101:伸縮部、103:回転軸、105:基板吸着面、107:基板吸着パッド、20:スペーサ押さえユニット、201:回転軸、203:回転支持部材、204:ローラ軸、205:ローラ、207:駆動シリンダ、30:スペーサ搬送ユニット、301:ケーシング、301S:内側面、303:ガイド部、305:ロール部材、307:屈曲アーム、309:吸着支持部材、310:スペーサ吸着パッド、313:伸縮軸、315:ロウアーチャック、320:除電器、40:サイドチャックユニット、401:傾斜フレーム、403:傾斜ガイドレール、404:伸縮軸、405:サイドチャック、50:コントローラユニット、D:台車、DD:台車移動ユニット、DS:傾斜面、G:ガラス基板、GS:基板ステージ、IF:イオン化空気流、S:スペーサ、SS:スペーサ収納ストッカ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基板とスペーサとが交互に積層され、所定の傾斜角度で傾斜配置された状態から、ガラス基板及びスペーサのそれぞれを所定の場所へ移載するガラス基板の移載装置において、
所定の位置に配された最前部のガラス基板を吸着して、該ガラス基板を所定の場所に移載する基板搬送手段と、
前記最前部のガラス基板の後面に配されたスペーサを吸着して、次のガラス基板表面から分離し所定の場所に移載するスペーサ分離搬送手段と
を備え、
前記スペーサ分離搬送手段は、前記基板搬送手段が前記ガラス基板を吸着する際には、前記スペーサの一辺を固定すると共に、前記スペーサを分離搬送する際には、該固定辺を中心とした円軌道を描くようにスペーサを回転させて、該スペーサを次のガラス基板の表面と摺接させずに該ガラス基板と分離して搬送することを特徴とするガラス基板の移載装置。
【請求項2】
前記スペーサ分離搬送手段は、前記スペーサの上辺部を前記次のガラス基板の上端部に押さえ付けて固定するスペーサ押さえローラと、前記ガラス基板の所定の傾斜角度よりも緩やかな傾斜角度で配設された傾斜ガイドレールに沿って移動可能に形成され、前記スペーサの両側辺を把持するサイドチャックと、前記スペーサの下辺部を吸着保持して搬送するスペーサ保持手段とを備え、
前記スペーサは、前記スペーサ押さえローラにより固定されたスペーサの上辺部を中心に、前記スペーサ保持手段により前記傾斜ガイドレールと略平行となるまで回転されて、前記サイドチャックにより前記上辺部近傍を把持されることを特徴とする請求項1に記載のガラス基板の移載装置。
【請求項3】
前記スペーサ保持手段は、前記スペーサの表面を吸着して前記傾斜ガイドレールと略平行となるまで円軌道を描かせるように回転させて次の基板表面から分離する、スペーサの幅方向に亘って配設された複数の吸着パッドを備え、
前記スペーサを該複数の吸着パッドにより吸着分離する際には、前記スペーサの幅方向両端部に対応する吸着パッドから中央部に対応する吸着パッドに向かって、順次、吸着して分離することを特徴とする請求項2に記載にガラス基板の移載装置。
【請求項4】
前記スペーサ保持手段は、前記スペーサが、前記傾斜ガイドレールと略平行となった時点で、前記スペーサの下辺部両端近傍を把持するロウアーチャックをさらに備えることを特徴とする請求項2又は3に記載のガラス基板の移載装置。
【請求項5】
前記基板搬送手段と、前記スペーサ保持手段とは、前記ガラス基板の所定の搬送場所を介して上下に配設されていると共に、各々水平移動可能に形成されており、前記基板搬送手段が吸着分離したガラス基板を所定の移載場所に向かって水平方向に移動しつつ前記ガラス基板の姿勢を略水平にした際に、前記スペーサ保持手段は、スペーサに向かって水平方向に移動して前記スペーサの分離を行うことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のガラス基板の移載装置。
【請求項6】
前記スペーサ分離搬送手段が、前記スペーサを回転させて、次のガラス基板から分離させた際に、該分離によって形成されるスペーサと次のガラス基板との間の空間に、スペーサの帯電極性と逆極性に帯電させたイオン化空気流を吹き付ける除電手段をさらに備えることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載のガラス基板の移載装置。
【請求項7】
前記ガラス基板及びスペーサは、その最前部のガラス基板が、常に、所定の位置となるように所定のタイミングで移動することを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載のガラス基板の移載装置。
【請求項8】
ガラス基板とスペーサとが交互に積層され、所定の傾斜角度で傾斜配置された状態から、ガラス基板及びスペーサのそれぞれを所定の場所へ移載するガラス基板の移載方法において、
前記積層されたガラス基板のうち、最前部のガラス基板を吸着する際には、後面に配されたスペーサの一辺を固定し、該ガラス基板をスペーサから分離して所定の場所に移載し、
前記ガラス基板が傾斜配置された状態から所定の場所に移載される間に、前記スペーサの固定辺を中心として該スペーサを一定の回転半径を維持するように回転させて、スペーサの四隅近傍を保持した後、該スペーサの一辺の固定を解除して、スペーサを次のガラス基板の表面と摺接させずに該ガラス基板と分離して搬送することを特徴とするガラス基板の移載方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−298507(P2006−298507A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−118299(P2005−118299)
【出願日】平成17年4月15日(2005.4.15)
【出願人】(000217594)田辺工業株式会社 (2)
【出願人】(391061510)株式会社藤森技術研究所 (20)
【Fターム(参考)】