ガラス基板搬送用トレイとガラス基板梱包体
【課題】収容したガラス基板2が振動等によりトレイ内で移動するのを確実に阻止できるとともに、発泡樹脂の粉塵が発生するのも確実に抑制することのできる発泡樹脂製のガラス基板搬送用トレイ10を提供する。
【解決手段】発泡樹脂製のガラス基板搬送用トレイ10には、底板11と4周の側壁12a〜12dとでガラス基板2を水平姿勢で収容できる収容空間13が形成されており、3つの側壁に沿うようにして収容したガラス基板2が接触しないよう底板上面11aには凹部14が形成されている。底板上面11aの4隅には、収容したガラス基板2の角部2a〜2dのみを側方から支持するための壁16を備えた入隅部18a〜18dが形成され、収容したガラス基板2の3つの側縁は側壁には接触しないようにされている。
【解決手段】発泡樹脂製のガラス基板搬送用トレイ10には、底板11と4周の側壁12a〜12dとでガラス基板2を水平姿勢で収容できる収容空間13が形成されており、3つの側壁に沿うようにして収容したガラス基板2が接触しないよう底板上面11aには凹部14が形成されている。底板上面11aの4隅には、収容したガラス基板2の角部2a〜2dのみを側方から支持するための壁16を備えた入隅部18a〜18dが形成され、収容したガラス基板2の3つの側縁は側壁には接触しないようにされている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス基板搬送用トレイとガラス基板梱包体にかかり、特にガラス基板を水平姿勢で梱包して搬送するのに好適なガラス基板搬送用トレイとガラス基板梱包体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体装置等を組み込むのに用いられるガラス基板は、大型化しかつ薄板化している。そのようなガラス基板は、搬送時の衝撃等により損傷を受けやすい。そのために、ガラス基板搬送用トレイとして、ガラス基板を垂直姿勢ではなく水平姿勢で収容できるものを用いて、ガラス基板を梱包し搬送することが行われる。
【0003】
その例として、特許文献1には、箱体の内部収納空間に、複数枚のガラス基板を各相互間に発泡樹脂シートを介装して水平姿勢で積層状に収納してなる単位梱包体を、外包囲体の内部に、上下に複数段に積み重ねて収納することが記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、ガラス基板を水平に収容するための複数の収納部がトレイの上面に形成されたポリオレフィン系樹脂発泡体からなるガラス基板搬送用トレイであって、トレイの収納部はガラス基板が収容される底面と底面を取り囲む側壁とを有し、底面における周縁には凹部を形成したガラス基板搬送用トレイが記載されている。
【0005】
【特許文献1】特開2005−75366号公報
【特許文献2】特開2002−353302号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
薄くかつ大型のガラス基板は、垂直姿勢よりも水平姿勢でトレイ内に収容した方が、搬送時の姿勢は安定する。しかし、特許文献1に記載のように複数枚のガラス基板を積層状に収納する場合には、ガラス基板相互間の接触面積が大きくなり、ガラス基板の間に発泡樹脂シートを介装したとしても、搬送時の振動や揺れによって、ガラス基板表面に傷が付きやすくなる。
【0007】
特許文献2に記載のものは、1つのガラス基板搬送用トレイに1枚のガラス基板を収容し、それを多段に段積みして梱包体としており、ガラス基板同士の接触は回避できる。また、底面における周縁には凹部を形成することにより、搬送中にガラス基板が振動したときにガラス基板の周縁がトレイ本体と接触するのを防止し、粉塵が発生するのを阻止している。また、このような凹部は、周縁領域が他の部材と接触するのを特に回避しなければならないような形態のガラス基板を収容し搬送する場合に、有効に機能する。しかし、トレイに収容されたガラス基板は、上下面のみで支持されており、周縁部は支持されていないので、搬送時の振動により水平方向に移動するのを完全には回避することができず、摩擦によりガラス基板表面に傷が付く恐れがあり、また、移動して側縁がトレイの側壁に衝接することにより、粉塵が発生する恐れもある。
【0008】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、収容したガラス基板が振動等によりトレイ内で移動するのを確実に阻止できるとともに、粉塵の発生も確実に抑制することのできる発泡樹脂製のガラス基板搬送用トレイおよびそれを用いたガラス基板梱包体を開示することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によるガラス基板搬送用トレイは、底板と4周の側壁とでガラス基板を水平姿勢で収容できる収容空間が形成されており、少なくとも1つの側壁に沿うようにして収容したガラス基板が接触しないように底板上面に凹部が形成されている発泡樹脂製のガラス基板搬送用トレイであって、前記底板上面の4隅には、収容したガラス基板の角部を側方から支持するための角部支持用壁部が形成されていることを特徴とする。
【0010】
上記のガラス基板搬送用トレイでは、収容したガラス基板の周縁の角部を4隅に形成した角部支持用壁部で側方から支持するようにしており、収容したガラス基板が水平方向に移動するのを確実に阻止できる。そのために、搬送中にガラス基板表面に傷が付くことはない。また、ガラス基板の周縁の角部以外の領域はトレイ本体に接することはないので、摩擦等により発泡樹脂の粉塵が発生するのも回避することができる。さらに、底板上面には、側壁に沿うようにして収容したガラス基板が接触しないようにした凹部が形成されており、周縁領域が他の部材と接触するのを特に回避しなければならない種類のガラス基板のための搬送用トレイとして、本発明によるガラス基板搬送用トレイは特に有効に用いることができる。
【0011】
本発明によるガラス基板搬送用トレイの他の態様では、前記底板上面の少なくとも1つの側壁には、収容したガラス基板の側縁を側方から支持するための側縁支持用壁部がさらに形成されている。この態様のトレイは、1つの側縁領域は他の部材と接触しても不都合がないような種類のガラス基板のための搬送用トレイとして好適であり、ガラス基板の側縁が側縁支持用壁部によって支持されることにより、さらに安定した姿勢でガラス基板を収容しかつ搬送することができる。
【0012】
本発明によるガラス基板搬送用トレイの他の態様では、前記角部支持用壁部および側縁支持用壁部の双方またはいずれか一方には、トレイ本体が損傷するのを保護するための保護シートが装着できるようにされている。保護シートの素材としては、非発泡あるいは極低発泡の樹脂フィルムやシートが例として挙げられる。保護シートの装着は、トレイ本体へ貼り付けるようにしてもよく、トレイ本体に凹溝を設けてそこに差し込むようにしてもよい。
【0013】
この態様では、ガラス基板が前記角部支持用壁部あるいは側縁支持用壁部に直接接することを回避できるので、わずかとはいえ発生する恐れのある発泡樹脂の粉塵を完全に阻止することができる。
【0014】
本発明によるガラス基板搬送用トレイの他の態様では、前記角部支持用壁部が形成される領域はトレイ本体から分離できるようにされており、分離された領域には交換部材が取り付けできるようになっている。この態様では、繰り返しの使用により、ガラス基板の角部との接触によって角部支持用壁部が損傷してしまったような場合に、その部分のみを新規な交換部材と交換することにより、ガラス基板搬送用トレイとして再度の使用が可能となる。それにより、廃棄物量を低減することができる。
【0015】
本発明によるガラス基板搬送用トレイの他の態様では、前記底板の下面には、ガラス基板搬送用トレイを段積みしたときに下位に位置するガラス基板搬送用トレイに収容したガラス基板の上面に接する高さの凸部が形成されている。この態様では、段積みしたときに収容されているガラス基板の上面を上位のガラス基板搬送用トレイの底板に形成した前記凸部で押さえることができるので、搬送時のガラス基板の姿勢は一層安定する。
【0016】
本発明は、また、上記したガラス基板搬送用トレイが少なくとも2段に段積みされ、その収容空間にガラス基板を収容してなるガラス基板梱包体をも開示する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、収容したガラス基板が振動等によりトレイ内で移動するのを確実に阻止できるとともに、発泡樹脂の粉塵が発生するのも確実に抑制することのできる発泡樹脂製のガラス基板搬送用トレイおよびそれを用いたガラス基板梱包体が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施の形態に基づき説明する。図1は本発明によるガラス基板梱包体を構成する各部材を分解して示す斜視図、図2は搬送状態にある本発明によるガラス基板梱包体の一例を示す図、図3はガラス基板の一例を示す図、図4は本発明によるガラス基板搬送用トレイの一例を上から見て示す斜視図、図5は図4に示すガラス基板搬送用トレイの平面図、図6はその底面図、図7は図4のa−a線による断面図と一部の拡大図、図8はガラス基板搬送用トレイにガラス基板を収容した状態を示す拡大図であり、図5のb−b線の断面図とガラス基板搬送用トレイを2段に段積みした状態を示す図、図9〜図11は本発明によるガラス基板搬送用トレイの第2の形態を示す斜視図である。
【0019】
[第1の形態]
本発明によるガラス基板梱包体1は、図1に示すように、後に詳細に説明する2つのガラス基板搬送用トレイ10、10と、下位のガラス基板搬送用トレイ10の収容空間内に収容されたガラス基板2とを少なくとも備える。図示のように、ガラス基板2に発泡ポリプロピレンシートあるいは発泡ポリエチレンシートのような帯電性と導電性のないフィルム3を積層した状態で収容してもよい。好ましくは、ガラス基板梱包体1はパレット4の上に置かれ、上から段ボール製の蓋5がかぶせられる。
【0020】
搬送に当たっては、ガラス基板搬送用トレイ10は2段以上に段積みされ、最上位のガラス基板搬送用トレイ10を除く他のガラス基板搬送用トレイ10の収容空間内に、図1に示したようにしてガラス基板2が収容される。図2に示すように、段積みされたガラス基板搬送用トレイ群6がパレット4の上に置かれ、その上に蓋5がかぶせられて、その全体がバンド7で締め付けられ、さらに外側全体がストレッチフィルム(不図示)で覆われる。
【0021】
この例で、ガラス基板2は、図3に示すように、4隅の角部2a〜2dを有し、角部2aと角部2bの間は直線状の側縁2eで接続しており、他の3つの側縁は、角部2a〜2dより外側に延出する凹凸領域2f〜2hとなっている。そして、この例で、前記3つの凹凸領域2f〜2hは他の部材(すなわち、ガラス基板搬送用トレイ10)に接触することを回避しなければならない領域であり、残りの直線状の側縁2eは接触が許される領域である。
【0022】
ガラス基板搬送用トレイ10は、発泡樹脂製であり、好ましくは、熱可塑性樹脂の発泡性粒子を型内成形することによって成形する。好ましくは、発泡性スチレン改質ポリオレフィン系樹脂粒子を用いることができる。スチレン改質ポリオレフィン系樹脂は、ポリオレフィン系樹脂粒子にスチレン系単量体を含浸重合させて得られたものであり、スチレン改質ポリオレフィン系樹脂の中でも、スチレン改質ポリエチレン樹脂が好ましく、例えば、スチレン成分の割合は40〜90重量%、好ましくは50〜85%、更に好ましくは55〜75重量%であり、発泡体の倍率は3〜60倍が好ましい。発泡性スチレン改質ポリオレフィン系樹脂粒子による成形品は、同じ発泡倍率の発泡ポリプロピレン系樹脂成形品に比べて強度があり、また収縮率が小さく寸法精度もよい。従って、寸法上のバラツキが少ない。さらに、発泡性ポリスチレン系樹脂成形品に比べて、摩擦等による粉塵が出難い長所がある。
【0023】
図示されるガラス基板搬送用トレイ10は全体が長方形状であり、底板11と底板11の4周から立ち上がる側壁12a〜12dを有し、4周の側壁12a〜12dと底板11の上面で囲まれる空間がガラス基板2の収容空間13となる。また、図7(a),(b)、特に図7(b)の拡大図に良く示すように、底板11の上面11aには、少なくとも1つの側壁に沿うようにして、凹部14が形成される。図示の例では、前記凹部14は、2つの短辺側の側壁12b,12dと1つの長辺側の側壁12cに沿うようにして3箇所に形成されている。なお、前記底板11の上面11aがガラス基板2の下面側の支持面となる。
【0024】
側壁12a〜12dの内側には、側壁頂部から所定距離下がった位置であって前記底板11の上面11aよりも高い位置に段差部15a〜15dが形成されており、段差部15の先端はほぼ垂直な壁16とされている。側壁12aの内側に形成される段差部15aには形成されないが、側壁12b,12c,12dの内側に形成される段差部15b〜15dは、それぞれの側壁側に入り込んだ領域を有しており、その領域が、前記した底板11の上面11aに形成した凹部14とされている。
【0025】
それにより、前記段差部15における4つの偶部には、内側への張り出し部17a〜17dが形成された形状となり、図4に示すように、前記凹部14が形成されていない側の側壁12aの両端には、その壁16と両端に形成される2つの張り出し部17a,17bの壁とによって、90度に折曲する入隅部18a,18bが形成される。また、凹部14が形成されている側の側壁12cの両端側に形成される2つの張り出し部17c,17dの頂部には、内側に90度に折曲する入隅部18c,18dが形成される。
【0026】
図示のガラス基板搬送用トレイ10では、側壁12a〜12dの4つのコーナー部は側壁のない切り欠き部19とされており、また、側壁に近接する領域には凹陥部21が形成されている。さらに、ガラス基板搬送用トレイ10の前記底板11の下面11bの内側領域には、図8(b)に示すように、同じ形状のガラス基板搬送用トレイ10を上下に段積みしたときに、下位に位置するガラス基板搬送用トレイ10に収容したガラス基板2の上面に接する高さの凸部22が形成されており、また、下面11bの周囲には、前記側壁12a〜12dの4つのコーナー部に形成した切り欠き部19に入り込む形状と大きさの凸部23が形成されている。
【0027】
次に、上記のガラス基板搬送用トレイ10にガラス基板2を収容した状態を説明する。図5は、ガラス基板2を収容したときのガラス基板搬送用トレイ10の平面図を示している。なお、図5では、ガラス基板2の外縁形状のみを仮想線で示し、その状態での図7(b)で拡大して示した領域を図8(a)に示している。
【0028】
図3に示したガラス基板2の大きさおよび形状は、収容時に、前記角部2aと角部2bが、ガラス基板搬送用トレイ10に形成した前記側壁12a側の入隅部18a,18bに隙間のない状態で入り込み、その姿勢で側縁2eは、前記側壁12a側の段差部15の壁16に接触し、また、角部2cと角部2dが、対向する側壁12c側の入隅部18c,18dに隙間のない状態で入り込み、その姿勢で前記凹凸領域2f〜2hの先端は対向する段差部15の壁16に接触しない、大きさと形状とされている。実際のガラス基板搬送用トレイ10を設計に当たっては、搬送しようとするガラス基板2の形状と大きさに合わせて、該ガラス基板が上記のような姿勢でトレイ内に収容されるように、設計する。
【0029】
上記のようであり、収容されたガラス基板2は、底板11の上面11aの4隅に形成した入隅部18a〜18dにおける垂直な壁16(この部分が、本発明でいう「角部支持用壁部」を構成する)によって、その角部2a〜2dが側方から支持された姿勢を取ることができる。また、この実施の形態では、ガラス基板2の1つの側縁2eも前記段差部15の垂直な壁16(この部分が、本発明でいう「側縁支持用壁部」を構成する)によって側方から支持されている。そのために、収容されたガラス基板2の収容姿勢は安定し、振動等によって水平方向に移動することはない。また、図8に示すように、凹凸領域2f〜2hの先端は壁16には接していないので、その領域から発泡樹脂の粉塵が生じることもない。さらに、凹凸領域2f〜2hが位置する部分では、底板11の上面11aに凹部14が形成されており、その部分がトレイと接することも回避される。
【0030】
なお、図示しないが、ガラス基板2の4つの側縁周辺領域のすべてがトレイと接することを禁止されているガラス基板2を収容し搬送する場合には、上記したガラス基板搬送用トレイ10における前記側壁12a側にも、側壁12b,12c,12dにおける段差部15b〜15dと同様に、側壁12a側に入り込んだ領域を形成し、その領域にも前記し凹部14を形成すればよい。
【0031】
図8(b)は、ガラス基板2を収容したガラス基板搬送用トレイ10aの上に、同じ形状のガラス基板搬送用トレイ10bを段積みしてガラス基板梱包体としたときの部分的拡大図である。下位のガラス基板搬送用トレイ10aに収容されたガラス基板2の上面は、上位のガラス基板搬送用トレイ10bの底板11の下面11bの内側領域に形成した凸部22の下面によって支持されており、ガラス基板2の収容姿勢はさらに安定する。また、図8(b)には図示されないが、上位のガラス基板搬送用トレイ10bの底板11の下面11bに形成した前記凸部23が、下位のガラス基板搬送用トレイ10aの側壁12a〜12dの4つのコーナー部に形成した切り欠き部19に入り込むことにより、上下のガラス基板搬送用トレイ10a,10bの係合姿勢も安定する。
【0032】
なお、ガラス基板搬送用トレイ10の底板11の上面11aにおける側壁12に近接する領域に形成した前記凹陥部21は、異なったサイズのガラス基板を収容し搬送するときに用いるものであり、使用に当たっては、特に図示しないが、収容しようとするガラス基板の形状、大きさに応じたアタッチメント部材を、前記凹陥部21に挿入して固定する。アタッチメント部材の素材は任意であるが、トレイ本体と同素材あるいは別素材の発泡樹脂体であることが望ましい。
【0033】
[他の実施の形態]
次に、本発明によるガラス基板搬送用トレイ10の他の実施の形態を図9〜図11を用いて説明する。図9(a)はガラス基板搬送用トレイ10の他の実施の形態を示す、前記した図4に相当する図である。このガラス基板搬送用トレイ10Aは、(1)前記した入隅部18a,18bの垂直な壁16、および側壁12aの内側に形成した段差部15aの垂直な壁16の一部に、非発泡あるいは極低発泡の樹脂フィルムやシートである保護シート30が貼り付けてある点、および、(2)前記した入隅部18c,18dを有する張り出し部17c,17dとされている領域が、トレイ10A本体から分離できるようにされており、分離された領域にはほぼ同じ形状の発泡樹脂製の交換部材40が取り付けできるようにされている点、の2点で、上記したガラス基板搬送用トレイ10と相違している。他の構成は同じであり、図9(a)において、ガラス基板搬送用トレイ10と同じ部材には同じ符号を付し、説明は省略する。
【0034】
前記(1)のように、壁16に保護シート30を貼り付けることにより、ガラス基板2の縁部がそれらの壁16に直接的に接触するのを回避できるので、わずかとはいえ発生する恐れのある発泡樹脂の粉塵を、より完全に阻止することができる。
【0035】
また、前記(2)のように、交換部材40を着脱できるようにすることにより、ガラス基板搬送用トレイ10Aを繰り返し使用することによって、ガラス基板2の角部2c,2dとの接触によって、交換部材40の入隅部18d(18c)の壁が損傷してしまったような場合に、新規な交換部材40と交換することによって、ガラス基板搬送用トレイ10Aとして再度適正に使用することが可能となる。なお、交換部材40の高さは、ガラス基板搬送用トレイ10Aに取り付けたときに、その上面42が前記段差部15と同じレベルとなるように設定する。
【0036】
図10は発泡樹脂製の交換部材40の好ましい形態を示しており、この交換部材40の発泡倍率は、ガラス基板搬送用トレイ10Aを構成する発泡樹脂の発泡倍率とは異なっている。また、ガラス基板搬送用トレイ10Aの側壁に対向する側壁面には突条41が形成されている。図11(a),(b)は、図10に示す交換部材40の使用態様の2つの例を示している。図11(a)は、収容するガラス基板2の大きさが下限値の場合であり、前記突条41はその先端がトレイ本体と接した状態となっている。図11(b)は、収容するガラス基板2の大きさが上限値の場合であり、前記突条41はその先端がトレイ本体内に食い込んでいる。このように、交換部材40とトレイ本体の発泡倍率を異ならせておくことにより、突起41の高さ分の寸法誤差を収容しようとするガラス基板2に許容することが可能となる。
【0037】
なお、図9に示すガラス基板搬送用トレイ10Aのように、前記(1)と(2)の構成の双方を1つのガラス基板搬送用トレイ10に備える必要はなく、いずれか一方の構成のみを備えるようにしても、ガラス基板搬送用トレイ10は所期の目的を達成することはできる。また、前記構成(1)において、壁16の全部に保護シート30を貼り付けるようにしてもよい。さらに、図9(b)に示すように、保護シート30を貼り付けることに代えて、比較して厚さの厚い保護シート31をトレイ本体に形成した凹溝32内に差し込んで、壁16に沿って固定するようにしてもよい。
【0038】
上記説明したガラス基板搬送用トレイおよびガラス基板梱包体は、いくつかの実施の形態であって、本発明はこれに限らない。例えば、前記凹部14は、4つの偶部に入隅部18a〜18dが確保されること、および収容するガラス基板2が底板11の上面11aによって裏面が安定的に支持されることを条件に、任意の面積の凹部14とすることができる。さらに、収容するガラス基板2の形状も、4隅に角部2a〜2dを有することを条件に他の形状は任意であり、それに合わせてトレイ本体の形状を設計すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明によるガラス基板梱包体を構成する各部材を分解して示す斜視図。
【図2】搬送状態にある本発明によるガラス基板梱包体の一例を示す図。
【図3】ガラス基板の一例を示す図。
【図4】本発明によるガラス基板搬送用トレイの一例を上から見て示す斜視図。
【図5】図4に示すガラス基板搬送用トレイの平面図。
【図6】図4に示すガラス基板搬送用トレイの底面図。
【図7】図4のa−a線による断面図(図7(a))と一部の拡大図(図7(b))。
【図8】ガラス基板搬送用トレイにガラス基板を収容した状態を示す拡大図であり、図8(a)は図5のb−b線の箇所での断面図、図8(b)はガラス基板搬送用トレイを2段に段積みした状態を示す図。
【図9】図9(a)は本発明によるガラス基板搬送用トレイの他の形態を示す斜視図であり、図3に相当する図、図9(b)はさらに他の形態のガラス基板搬送用トレイを図9(a)のb−b線の箇所で説明する図。
【図10】交換部材を説明する図。
【図11】交換部材の使用態様を説明するための図。
【符号の説明】
【0040】
1…本発明によるガラス基板梱包体、2…ガラス基板、2a〜2d…ガラス基板の4隅の角部、2e…直線状の側縁、2f〜2h…凹凸領域である側縁、3…フィルム、4…パレット、5…蓋、6…段積みされたガラス基板搬送用トレイ群、7…バンド、10、10A…ガラス基板搬送用トレイ、11…底板、11a…底板の上面、11b…底板の下面、12a〜12d…側壁、13…ガラス基板の収容空間、14…凹部、15a〜15d…段差部、16…段差部の先端の壁、17a〜17d…内側への張り出し部、18a〜18d…入隅部、19…切り欠き部、21…凹陥部、22、23…凸部、30…保護シート、31…比較して厚さの厚い保護シート、32…凹溝、40…交換部材、41…交換部材の突条、42…交換部材の上面
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス基板搬送用トレイとガラス基板梱包体にかかり、特にガラス基板を水平姿勢で梱包して搬送するのに好適なガラス基板搬送用トレイとガラス基板梱包体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体装置等を組み込むのに用いられるガラス基板は、大型化しかつ薄板化している。そのようなガラス基板は、搬送時の衝撃等により損傷を受けやすい。そのために、ガラス基板搬送用トレイとして、ガラス基板を垂直姿勢ではなく水平姿勢で収容できるものを用いて、ガラス基板を梱包し搬送することが行われる。
【0003】
その例として、特許文献1には、箱体の内部収納空間に、複数枚のガラス基板を各相互間に発泡樹脂シートを介装して水平姿勢で積層状に収納してなる単位梱包体を、外包囲体の内部に、上下に複数段に積み重ねて収納することが記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、ガラス基板を水平に収容するための複数の収納部がトレイの上面に形成されたポリオレフィン系樹脂発泡体からなるガラス基板搬送用トレイであって、トレイの収納部はガラス基板が収容される底面と底面を取り囲む側壁とを有し、底面における周縁には凹部を形成したガラス基板搬送用トレイが記載されている。
【0005】
【特許文献1】特開2005−75366号公報
【特許文献2】特開2002−353302号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
薄くかつ大型のガラス基板は、垂直姿勢よりも水平姿勢でトレイ内に収容した方が、搬送時の姿勢は安定する。しかし、特許文献1に記載のように複数枚のガラス基板を積層状に収納する場合には、ガラス基板相互間の接触面積が大きくなり、ガラス基板の間に発泡樹脂シートを介装したとしても、搬送時の振動や揺れによって、ガラス基板表面に傷が付きやすくなる。
【0007】
特許文献2に記載のものは、1つのガラス基板搬送用トレイに1枚のガラス基板を収容し、それを多段に段積みして梱包体としており、ガラス基板同士の接触は回避できる。また、底面における周縁には凹部を形成することにより、搬送中にガラス基板が振動したときにガラス基板の周縁がトレイ本体と接触するのを防止し、粉塵が発生するのを阻止している。また、このような凹部は、周縁領域が他の部材と接触するのを特に回避しなければならないような形態のガラス基板を収容し搬送する場合に、有効に機能する。しかし、トレイに収容されたガラス基板は、上下面のみで支持されており、周縁部は支持されていないので、搬送時の振動により水平方向に移動するのを完全には回避することができず、摩擦によりガラス基板表面に傷が付く恐れがあり、また、移動して側縁がトレイの側壁に衝接することにより、粉塵が発生する恐れもある。
【0008】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、収容したガラス基板が振動等によりトレイ内で移動するのを確実に阻止できるとともに、粉塵の発生も確実に抑制することのできる発泡樹脂製のガラス基板搬送用トレイおよびそれを用いたガラス基板梱包体を開示することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によるガラス基板搬送用トレイは、底板と4周の側壁とでガラス基板を水平姿勢で収容できる収容空間が形成されており、少なくとも1つの側壁に沿うようにして収容したガラス基板が接触しないように底板上面に凹部が形成されている発泡樹脂製のガラス基板搬送用トレイであって、前記底板上面の4隅には、収容したガラス基板の角部を側方から支持するための角部支持用壁部が形成されていることを特徴とする。
【0010】
上記のガラス基板搬送用トレイでは、収容したガラス基板の周縁の角部を4隅に形成した角部支持用壁部で側方から支持するようにしており、収容したガラス基板が水平方向に移動するのを確実に阻止できる。そのために、搬送中にガラス基板表面に傷が付くことはない。また、ガラス基板の周縁の角部以外の領域はトレイ本体に接することはないので、摩擦等により発泡樹脂の粉塵が発生するのも回避することができる。さらに、底板上面には、側壁に沿うようにして収容したガラス基板が接触しないようにした凹部が形成されており、周縁領域が他の部材と接触するのを特に回避しなければならない種類のガラス基板のための搬送用トレイとして、本発明によるガラス基板搬送用トレイは特に有効に用いることができる。
【0011】
本発明によるガラス基板搬送用トレイの他の態様では、前記底板上面の少なくとも1つの側壁には、収容したガラス基板の側縁を側方から支持するための側縁支持用壁部がさらに形成されている。この態様のトレイは、1つの側縁領域は他の部材と接触しても不都合がないような種類のガラス基板のための搬送用トレイとして好適であり、ガラス基板の側縁が側縁支持用壁部によって支持されることにより、さらに安定した姿勢でガラス基板を収容しかつ搬送することができる。
【0012】
本発明によるガラス基板搬送用トレイの他の態様では、前記角部支持用壁部および側縁支持用壁部の双方またはいずれか一方には、トレイ本体が損傷するのを保護するための保護シートが装着できるようにされている。保護シートの素材としては、非発泡あるいは極低発泡の樹脂フィルムやシートが例として挙げられる。保護シートの装着は、トレイ本体へ貼り付けるようにしてもよく、トレイ本体に凹溝を設けてそこに差し込むようにしてもよい。
【0013】
この態様では、ガラス基板が前記角部支持用壁部あるいは側縁支持用壁部に直接接することを回避できるので、わずかとはいえ発生する恐れのある発泡樹脂の粉塵を完全に阻止することができる。
【0014】
本発明によるガラス基板搬送用トレイの他の態様では、前記角部支持用壁部が形成される領域はトレイ本体から分離できるようにされており、分離された領域には交換部材が取り付けできるようになっている。この態様では、繰り返しの使用により、ガラス基板の角部との接触によって角部支持用壁部が損傷してしまったような場合に、その部分のみを新規な交換部材と交換することにより、ガラス基板搬送用トレイとして再度の使用が可能となる。それにより、廃棄物量を低減することができる。
【0015】
本発明によるガラス基板搬送用トレイの他の態様では、前記底板の下面には、ガラス基板搬送用トレイを段積みしたときに下位に位置するガラス基板搬送用トレイに収容したガラス基板の上面に接する高さの凸部が形成されている。この態様では、段積みしたときに収容されているガラス基板の上面を上位のガラス基板搬送用トレイの底板に形成した前記凸部で押さえることができるので、搬送時のガラス基板の姿勢は一層安定する。
【0016】
本発明は、また、上記したガラス基板搬送用トレイが少なくとも2段に段積みされ、その収容空間にガラス基板を収容してなるガラス基板梱包体をも開示する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、収容したガラス基板が振動等によりトレイ内で移動するのを確実に阻止できるとともに、発泡樹脂の粉塵が発生するのも確実に抑制することのできる発泡樹脂製のガラス基板搬送用トレイおよびそれを用いたガラス基板梱包体が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施の形態に基づき説明する。図1は本発明によるガラス基板梱包体を構成する各部材を分解して示す斜視図、図2は搬送状態にある本発明によるガラス基板梱包体の一例を示す図、図3はガラス基板の一例を示す図、図4は本発明によるガラス基板搬送用トレイの一例を上から見て示す斜視図、図5は図4に示すガラス基板搬送用トレイの平面図、図6はその底面図、図7は図4のa−a線による断面図と一部の拡大図、図8はガラス基板搬送用トレイにガラス基板を収容した状態を示す拡大図であり、図5のb−b線の断面図とガラス基板搬送用トレイを2段に段積みした状態を示す図、図9〜図11は本発明によるガラス基板搬送用トレイの第2の形態を示す斜視図である。
【0019】
[第1の形態]
本発明によるガラス基板梱包体1は、図1に示すように、後に詳細に説明する2つのガラス基板搬送用トレイ10、10と、下位のガラス基板搬送用トレイ10の収容空間内に収容されたガラス基板2とを少なくとも備える。図示のように、ガラス基板2に発泡ポリプロピレンシートあるいは発泡ポリエチレンシートのような帯電性と導電性のないフィルム3を積層した状態で収容してもよい。好ましくは、ガラス基板梱包体1はパレット4の上に置かれ、上から段ボール製の蓋5がかぶせられる。
【0020】
搬送に当たっては、ガラス基板搬送用トレイ10は2段以上に段積みされ、最上位のガラス基板搬送用トレイ10を除く他のガラス基板搬送用トレイ10の収容空間内に、図1に示したようにしてガラス基板2が収容される。図2に示すように、段積みされたガラス基板搬送用トレイ群6がパレット4の上に置かれ、その上に蓋5がかぶせられて、その全体がバンド7で締め付けられ、さらに外側全体がストレッチフィルム(不図示)で覆われる。
【0021】
この例で、ガラス基板2は、図3に示すように、4隅の角部2a〜2dを有し、角部2aと角部2bの間は直線状の側縁2eで接続しており、他の3つの側縁は、角部2a〜2dより外側に延出する凹凸領域2f〜2hとなっている。そして、この例で、前記3つの凹凸領域2f〜2hは他の部材(すなわち、ガラス基板搬送用トレイ10)に接触することを回避しなければならない領域であり、残りの直線状の側縁2eは接触が許される領域である。
【0022】
ガラス基板搬送用トレイ10は、発泡樹脂製であり、好ましくは、熱可塑性樹脂の発泡性粒子を型内成形することによって成形する。好ましくは、発泡性スチレン改質ポリオレフィン系樹脂粒子を用いることができる。スチレン改質ポリオレフィン系樹脂は、ポリオレフィン系樹脂粒子にスチレン系単量体を含浸重合させて得られたものであり、スチレン改質ポリオレフィン系樹脂の中でも、スチレン改質ポリエチレン樹脂が好ましく、例えば、スチレン成分の割合は40〜90重量%、好ましくは50〜85%、更に好ましくは55〜75重量%であり、発泡体の倍率は3〜60倍が好ましい。発泡性スチレン改質ポリオレフィン系樹脂粒子による成形品は、同じ発泡倍率の発泡ポリプロピレン系樹脂成形品に比べて強度があり、また収縮率が小さく寸法精度もよい。従って、寸法上のバラツキが少ない。さらに、発泡性ポリスチレン系樹脂成形品に比べて、摩擦等による粉塵が出難い長所がある。
【0023】
図示されるガラス基板搬送用トレイ10は全体が長方形状であり、底板11と底板11の4周から立ち上がる側壁12a〜12dを有し、4周の側壁12a〜12dと底板11の上面で囲まれる空間がガラス基板2の収容空間13となる。また、図7(a),(b)、特に図7(b)の拡大図に良く示すように、底板11の上面11aには、少なくとも1つの側壁に沿うようにして、凹部14が形成される。図示の例では、前記凹部14は、2つの短辺側の側壁12b,12dと1つの長辺側の側壁12cに沿うようにして3箇所に形成されている。なお、前記底板11の上面11aがガラス基板2の下面側の支持面となる。
【0024】
側壁12a〜12dの内側には、側壁頂部から所定距離下がった位置であって前記底板11の上面11aよりも高い位置に段差部15a〜15dが形成されており、段差部15の先端はほぼ垂直な壁16とされている。側壁12aの内側に形成される段差部15aには形成されないが、側壁12b,12c,12dの内側に形成される段差部15b〜15dは、それぞれの側壁側に入り込んだ領域を有しており、その領域が、前記した底板11の上面11aに形成した凹部14とされている。
【0025】
それにより、前記段差部15における4つの偶部には、内側への張り出し部17a〜17dが形成された形状となり、図4に示すように、前記凹部14が形成されていない側の側壁12aの両端には、その壁16と両端に形成される2つの張り出し部17a,17bの壁とによって、90度に折曲する入隅部18a,18bが形成される。また、凹部14が形成されている側の側壁12cの両端側に形成される2つの張り出し部17c,17dの頂部には、内側に90度に折曲する入隅部18c,18dが形成される。
【0026】
図示のガラス基板搬送用トレイ10では、側壁12a〜12dの4つのコーナー部は側壁のない切り欠き部19とされており、また、側壁に近接する領域には凹陥部21が形成されている。さらに、ガラス基板搬送用トレイ10の前記底板11の下面11bの内側領域には、図8(b)に示すように、同じ形状のガラス基板搬送用トレイ10を上下に段積みしたときに、下位に位置するガラス基板搬送用トレイ10に収容したガラス基板2の上面に接する高さの凸部22が形成されており、また、下面11bの周囲には、前記側壁12a〜12dの4つのコーナー部に形成した切り欠き部19に入り込む形状と大きさの凸部23が形成されている。
【0027】
次に、上記のガラス基板搬送用トレイ10にガラス基板2を収容した状態を説明する。図5は、ガラス基板2を収容したときのガラス基板搬送用トレイ10の平面図を示している。なお、図5では、ガラス基板2の外縁形状のみを仮想線で示し、その状態での図7(b)で拡大して示した領域を図8(a)に示している。
【0028】
図3に示したガラス基板2の大きさおよび形状は、収容時に、前記角部2aと角部2bが、ガラス基板搬送用トレイ10に形成した前記側壁12a側の入隅部18a,18bに隙間のない状態で入り込み、その姿勢で側縁2eは、前記側壁12a側の段差部15の壁16に接触し、また、角部2cと角部2dが、対向する側壁12c側の入隅部18c,18dに隙間のない状態で入り込み、その姿勢で前記凹凸領域2f〜2hの先端は対向する段差部15の壁16に接触しない、大きさと形状とされている。実際のガラス基板搬送用トレイ10を設計に当たっては、搬送しようとするガラス基板2の形状と大きさに合わせて、該ガラス基板が上記のような姿勢でトレイ内に収容されるように、設計する。
【0029】
上記のようであり、収容されたガラス基板2は、底板11の上面11aの4隅に形成した入隅部18a〜18dにおける垂直な壁16(この部分が、本発明でいう「角部支持用壁部」を構成する)によって、その角部2a〜2dが側方から支持された姿勢を取ることができる。また、この実施の形態では、ガラス基板2の1つの側縁2eも前記段差部15の垂直な壁16(この部分が、本発明でいう「側縁支持用壁部」を構成する)によって側方から支持されている。そのために、収容されたガラス基板2の収容姿勢は安定し、振動等によって水平方向に移動することはない。また、図8に示すように、凹凸領域2f〜2hの先端は壁16には接していないので、その領域から発泡樹脂の粉塵が生じることもない。さらに、凹凸領域2f〜2hが位置する部分では、底板11の上面11aに凹部14が形成されており、その部分がトレイと接することも回避される。
【0030】
なお、図示しないが、ガラス基板2の4つの側縁周辺領域のすべてがトレイと接することを禁止されているガラス基板2を収容し搬送する場合には、上記したガラス基板搬送用トレイ10における前記側壁12a側にも、側壁12b,12c,12dにおける段差部15b〜15dと同様に、側壁12a側に入り込んだ領域を形成し、その領域にも前記し凹部14を形成すればよい。
【0031】
図8(b)は、ガラス基板2を収容したガラス基板搬送用トレイ10aの上に、同じ形状のガラス基板搬送用トレイ10bを段積みしてガラス基板梱包体としたときの部分的拡大図である。下位のガラス基板搬送用トレイ10aに収容されたガラス基板2の上面は、上位のガラス基板搬送用トレイ10bの底板11の下面11bの内側領域に形成した凸部22の下面によって支持されており、ガラス基板2の収容姿勢はさらに安定する。また、図8(b)には図示されないが、上位のガラス基板搬送用トレイ10bの底板11の下面11bに形成した前記凸部23が、下位のガラス基板搬送用トレイ10aの側壁12a〜12dの4つのコーナー部に形成した切り欠き部19に入り込むことにより、上下のガラス基板搬送用トレイ10a,10bの係合姿勢も安定する。
【0032】
なお、ガラス基板搬送用トレイ10の底板11の上面11aにおける側壁12に近接する領域に形成した前記凹陥部21は、異なったサイズのガラス基板を収容し搬送するときに用いるものであり、使用に当たっては、特に図示しないが、収容しようとするガラス基板の形状、大きさに応じたアタッチメント部材を、前記凹陥部21に挿入して固定する。アタッチメント部材の素材は任意であるが、トレイ本体と同素材あるいは別素材の発泡樹脂体であることが望ましい。
【0033】
[他の実施の形態]
次に、本発明によるガラス基板搬送用トレイ10の他の実施の形態を図9〜図11を用いて説明する。図9(a)はガラス基板搬送用トレイ10の他の実施の形態を示す、前記した図4に相当する図である。このガラス基板搬送用トレイ10Aは、(1)前記した入隅部18a,18bの垂直な壁16、および側壁12aの内側に形成した段差部15aの垂直な壁16の一部に、非発泡あるいは極低発泡の樹脂フィルムやシートである保護シート30が貼り付けてある点、および、(2)前記した入隅部18c,18dを有する張り出し部17c,17dとされている領域が、トレイ10A本体から分離できるようにされており、分離された領域にはほぼ同じ形状の発泡樹脂製の交換部材40が取り付けできるようにされている点、の2点で、上記したガラス基板搬送用トレイ10と相違している。他の構成は同じであり、図9(a)において、ガラス基板搬送用トレイ10と同じ部材には同じ符号を付し、説明は省略する。
【0034】
前記(1)のように、壁16に保護シート30を貼り付けることにより、ガラス基板2の縁部がそれらの壁16に直接的に接触するのを回避できるので、わずかとはいえ発生する恐れのある発泡樹脂の粉塵を、より完全に阻止することができる。
【0035】
また、前記(2)のように、交換部材40を着脱できるようにすることにより、ガラス基板搬送用トレイ10Aを繰り返し使用することによって、ガラス基板2の角部2c,2dとの接触によって、交換部材40の入隅部18d(18c)の壁が損傷してしまったような場合に、新規な交換部材40と交換することによって、ガラス基板搬送用トレイ10Aとして再度適正に使用することが可能となる。なお、交換部材40の高さは、ガラス基板搬送用トレイ10Aに取り付けたときに、その上面42が前記段差部15と同じレベルとなるように設定する。
【0036】
図10は発泡樹脂製の交換部材40の好ましい形態を示しており、この交換部材40の発泡倍率は、ガラス基板搬送用トレイ10Aを構成する発泡樹脂の発泡倍率とは異なっている。また、ガラス基板搬送用トレイ10Aの側壁に対向する側壁面には突条41が形成されている。図11(a),(b)は、図10に示す交換部材40の使用態様の2つの例を示している。図11(a)は、収容するガラス基板2の大きさが下限値の場合であり、前記突条41はその先端がトレイ本体と接した状態となっている。図11(b)は、収容するガラス基板2の大きさが上限値の場合であり、前記突条41はその先端がトレイ本体内に食い込んでいる。このように、交換部材40とトレイ本体の発泡倍率を異ならせておくことにより、突起41の高さ分の寸法誤差を収容しようとするガラス基板2に許容することが可能となる。
【0037】
なお、図9に示すガラス基板搬送用トレイ10Aのように、前記(1)と(2)の構成の双方を1つのガラス基板搬送用トレイ10に備える必要はなく、いずれか一方の構成のみを備えるようにしても、ガラス基板搬送用トレイ10は所期の目的を達成することはできる。また、前記構成(1)において、壁16の全部に保護シート30を貼り付けるようにしてもよい。さらに、図9(b)に示すように、保護シート30を貼り付けることに代えて、比較して厚さの厚い保護シート31をトレイ本体に形成した凹溝32内に差し込んで、壁16に沿って固定するようにしてもよい。
【0038】
上記説明したガラス基板搬送用トレイおよびガラス基板梱包体は、いくつかの実施の形態であって、本発明はこれに限らない。例えば、前記凹部14は、4つの偶部に入隅部18a〜18dが確保されること、および収容するガラス基板2が底板11の上面11aによって裏面が安定的に支持されることを条件に、任意の面積の凹部14とすることができる。さらに、収容するガラス基板2の形状も、4隅に角部2a〜2dを有することを条件に他の形状は任意であり、それに合わせてトレイ本体の形状を設計すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明によるガラス基板梱包体を構成する各部材を分解して示す斜視図。
【図2】搬送状態にある本発明によるガラス基板梱包体の一例を示す図。
【図3】ガラス基板の一例を示す図。
【図4】本発明によるガラス基板搬送用トレイの一例を上から見て示す斜視図。
【図5】図4に示すガラス基板搬送用トレイの平面図。
【図6】図4に示すガラス基板搬送用トレイの底面図。
【図7】図4のa−a線による断面図(図7(a))と一部の拡大図(図7(b))。
【図8】ガラス基板搬送用トレイにガラス基板を収容した状態を示す拡大図であり、図8(a)は図5のb−b線の箇所での断面図、図8(b)はガラス基板搬送用トレイを2段に段積みした状態を示す図。
【図9】図9(a)は本発明によるガラス基板搬送用トレイの他の形態を示す斜視図であり、図3に相当する図、図9(b)はさらに他の形態のガラス基板搬送用トレイを図9(a)のb−b線の箇所で説明する図。
【図10】交換部材を説明する図。
【図11】交換部材の使用態様を説明するための図。
【符号の説明】
【0040】
1…本発明によるガラス基板梱包体、2…ガラス基板、2a〜2d…ガラス基板の4隅の角部、2e…直線状の側縁、2f〜2h…凹凸領域である側縁、3…フィルム、4…パレット、5…蓋、6…段積みされたガラス基板搬送用トレイ群、7…バンド、10、10A…ガラス基板搬送用トレイ、11…底板、11a…底板の上面、11b…底板の下面、12a〜12d…側壁、13…ガラス基板の収容空間、14…凹部、15a〜15d…段差部、16…段差部の先端の壁、17a〜17d…内側への張り出し部、18a〜18d…入隅部、19…切り欠き部、21…凹陥部、22、23…凸部、30…保護シート、31…比較して厚さの厚い保護シート、32…凹溝、40…交換部材、41…交換部材の突条、42…交換部材の上面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
底板と4周の側壁とでガラス基板を水平姿勢で収容できる収容空間が形成されており、少なくとも1つの側壁に沿うようにして収容したガラス基板が接触しないよう底板上面に凹部が形成されている発泡樹脂製のガラス基板搬送用トレイであって、
前記底板上面の4隅には、収容したガラス基板の角部を側方から支持するための角部支持用壁部が形成されていることを特徴とするガラス基板搬送用トレイ。
【請求項2】
前記底板上面の少なくとも1つの側壁には、収容したガラス基板の側縁を側方から支持するための側縁支持用壁部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のガラス基板搬送用トレイ。
【請求項3】
前記角部支持用壁部および側縁支持用壁部の双方またはいずれか一方には、トレイ本体が損傷するのを保護するための保護シートが装着できるようにされていることを特徴とする請求項1または2に記載のガラス基板搬送用トレイ。
【請求項4】
前記角部支持用壁部が形成される領域はトレイ本体から分離できるようにされており、分離された領域には交換部材が取り付けできるようになっていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のガラス基板搬送用トレイ。
【請求項5】
前記底板の下面には、ガラス基板搬送用トレイを段積みしたときに下位に位置するガラス基板搬送用トレイに収容したガラス基板の上面に接する高さの凸部が形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のガラス基板搬送用トレイ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のガラス基板搬送用トレイが少なくとも2段に段積みされ、その収容空間にガラス基板を収容してなるガラス基板梱包体。
【請求項1】
底板と4周の側壁とでガラス基板を水平姿勢で収容できる収容空間が形成されており、少なくとも1つの側壁に沿うようにして収容したガラス基板が接触しないよう底板上面に凹部が形成されている発泡樹脂製のガラス基板搬送用トレイであって、
前記底板上面の4隅には、収容したガラス基板の角部を側方から支持するための角部支持用壁部が形成されていることを特徴とするガラス基板搬送用トレイ。
【請求項2】
前記底板上面の少なくとも1つの側壁には、収容したガラス基板の側縁を側方から支持するための側縁支持用壁部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のガラス基板搬送用トレイ。
【請求項3】
前記角部支持用壁部および側縁支持用壁部の双方またはいずれか一方には、トレイ本体が損傷するのを保護するための保護シートが装着できるようにされていることを特徴とする請求項1または2に記載のガラス基板搬送用トレイ。
【請求項4】
前記角部支持用壁部が形成される領域はトレイ本体から分離できるようにされており、分離された領域には交換部材が取り付けできるようになっていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のガラス基板搬送用トレイ。
【請求項5】
前記底板の下面には、ガラス基板搬送用トレイを段積みしたときに下位に位置するガラス基板搬送用トレイに収容したガラス基板の上面に接する高さの凸部が形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のガラス基板搬送用トレイ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のガラス基板搬送用トレイが少なくとも2段に段積みされ、その収容空間にガラス基板を収容してなるガラス基板梱包体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−298421(P2009−298421A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−153116(P2008−153116)
【出願日】平成20年6月11日(2008.6.11)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月11日(2008.6.11)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】
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