説明

ガラス微粒子堆積体及びガラス母材の製造方法

【課題】生成されたガラス微粒子の出発ロッドやガラス微粒子堆積体への付着効率を向上させることができるガラス微粒子堆積体及びガラス母材の製造方法を提供する。
【解決手段】ガラス微粒子堆積体の製造方法は、温調ブース24からクラッド用バーナー18までのガス供給配管25の少なくとも一部を該バーナー側の温度が高くなり5℃/m以上の温度勾配になるように温度制御する。この温度勾配は、好ましくは15℃/m以上、更に好ましくは25℃/m以上になるように温度制御する。具体的には、温調ブース24からクラッド用バーナー18までのガス供給配管25の外周に発熱体であるテープヒータ26を巻き付けて、このテープヒータ26を温度制御することで、所定の温度勾配に管理する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、VAD法(気相軸付け法)、OVD法(外付け法)、MMD法(多バーナー多層付け法)などによりガラス微粒子を出発ロッドに堆積させてガラス微粒子堆積体を製造するガラス微粒子堆積体の製造方法及びこのガラス微粒子堆積体を加熱して透明化するガラス母材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のガラス母材の製造方法としては、OVD法やVAD法等によりガラス微粒子堆積体を作製する堆積工程と、このガラス微粒子堆積体を加熱して透明なガラス体を作製する透明化工程とを含む製造方法が知られている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0003】
特許文献1の製造方法は、ガラス原料を加熱し気化させてガラス原料ガスを減圧下で配管によりガラス微粒子形成用バーナーまで導くことで、例えば、配管の温度を55℃として、耐熱温度70℃程度の塩化ビニル系の材料からなる配管の使用を可能とするものである。
【0004】
特許文献2の製造方法は、ガラス微粒子堆積の開始に先立って所定時間だけガラス原料ガスを廃棄した後にガラス微粒子の堆積を開始し、その原料ガス廃棄量、配管の容積、配管内の圧力および配管の温度が所定の関係を満たすようにすることで、気泡や白濁の発生の回避を図るものである。配管温度は、82℃または85℃とされている。
【0005】
特許文献3の製造方法は、ガラス微粒子堆積体の表面に発生する凹凸を抑制する手段として、原料ガスを供給する原料ガス発生装置からバーナーまでの導管をヒータおよび断熱材を用いて全長にわたって90℃以上に保持することが記載されているが、導管の温度勾配に関する記載はない。
【0006】
また、特許文献4には、原料収率を挙げる手段として、バーナー火炎の先端に設置するフードの内周にガスを導入し、火炎の広がりを抑える手法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−161555号公報
【特許文献2】特開2006−342031号公報
【特許文献3】特開2003−165737号公報
【特許文献4】特開平7−144927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1〜4に記載のガラス母材の製造方法では、生成されたガラス微粒子を出発ロッドやガラス微粒子堆積体に効率良く付着させることが難しかった。すなわち、ガラス原料ガス供給量に対するガラス微粒子堆積量の割合には限界があった。
【0009】
本発明の目的は、生成されたガラス微粒子の出発ロッドやガラス微粒子堆積体への付着効率を向上させることができるガラス微粒子堆積体及びガラス母材の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決することができる本発明に係るガラス微粒子堆積体の製造方法は、原料容器内に容れられた液体のガラス原料を加熱し気化させてガラス原料ガスとし、該ガラス原料ガスを前記原料容器から配管によりガラス微粒子生成用バーナーまで導き、該ガラス微粒子生成用バーナーから前記ガラス原料ガスを噴出させ、該ガラス原料ガスの火炎分解反応(熱分解反応、火炎加水分解反応、熱酸化反応など)により生成したガラス微粒子を反応容器内の出発ロッドに堆積させてガラス微粒子堆積体を作製する堆積工程を含むガラス微粒子堆積体の製造方法において、前記堆積工程における前記原料容器から前記ガラス微粒子生成用バーナーまでの前記配管の少なくとも一部を、発熱体により該バーナー側が高温となり5℃/m以上の温度勾配になるように温度制御することを特徴としている。
【0011】
また、本発明に係るガラス微粒子堆積体の製造方法は、前記堆積工程において、前記原料容器から前記ガラス微粒子生成用バーナーまでの前記配管の少なくとも一部を、発熱体により該バーナー側が高温となり15℃/m以上の温度勾配になるように温度制御することを特徴としている。
【0012】
また、本発明に係るガラス微粒子堆積体の製造方法は、前記堆積工程において、前記原料容器から前記ガラス微粒子生成用バーナーまでの前記配管の少なくとも一部を、発熱体により該バーナー側が高温となり25℃/m以上の温度勾配になるように温度制御することを特徴としている。
【0013】
また、本発明に係るガラス微粒子堆積体の製造方法は、前記発熱体がテープヒータであることを特徴としている。
【0014】
また、本発明に係るガラス母材の製造方法は、上記ガラス微粒子堆積体の製造方法によりガラス微粒子堆積体を製造し、前記堆積工程で作製した前記ガラス微粒子堆積体を加熱して透明化する透明化工程を経てガラス母材を製造することを特徴としている。
【0015】
また、本発明に係るガラス母材の製造方法は、前記堆積工程においてOVD法、VAD法またはMMD法によりガラス微粒子堆積体を製造し、前記透明化工程を経てガラス母材を製造することを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るガラス微粒子堆積体及びガラス母材の製造方法によれば、原料容器からガラス微粒子生成用バーナーまでの配管の少なくとも一部を、発熱体によりバーナー側が高温となり5℃/m以上の温度勾配になるように温度制御するので、配管内の原料ガスの体積は原料容器からバーナー側に進むにつれて膨張し、原料ガスの流速が加速する。これにより、バーナー火炎内で生成されるガラス微粒子の慣性力が増加し、ガラス微粒子の直進性が促進され、ガラス微粒子が火炎内のガスの流れから離脱し易くなる。よって、出発ロッドやガラス微粒子堆積体へのガラス微粒子の付着効率を向上させることができ、原料収率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係るガラス微粒子堆積体の製造方法を説明する製造装置の構成図である。
【図2】図1におけるガス供給配管に温度勾配を持たせる際の一例を示す概略図である。
【図3】ガラス微粒子がガラス微粒子堆積体に堆積する際の挙動を説明する模式図である。
【図4】ガス供給配管内の長手方向の一部における原料ガスの温度変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態であるガラス微粒子堆積体及びガラス母材の製造方法について図面を参照して説明する。なお、以下ではVAD法を例に説明するが、本発明は、VAD法には限定されない。OVD法やMMD法などの他のガラス微粒子堆積体の製造方法に対しても、適用できる。
【0019】
図1に示すように、本実施形態のガラス微粒子堆積体の製造方法を実施する製造装置10は、VAD法によりガラス微粒子の堆積を行うものであり、反応容器11の上方から内部に支持棒12を吊り下げ、支持棒12の下端に出発ロッド13を取り付けている。反応容器11の側面には、排気管21が取り付けられている。
【0020】
支持棒12は、上端部を昇降回転装置15により把持されており、昇降回転装置15によって回転と共に昇降する。昇降回転装置15は、ガラス微粒子堆積体14の外径が均一となるように制御装置16によって上昇速度を制御される。出発ロッド13にガラス微粒子20が堆積して、ガラス微粒子堆積体14が形成される。また、出発ロッド13やガラス微粒子堆積体14に付着しなかった反応容器11内のガラス微粒子20は排気管21を通じて排気される。
【0021】
反応容器11の内部下方には、ガラス微粒子生成用バーナーであるクラッド用バーナー18が配置されており、ガス供給装置によりクラッド用バーナー18へ原料ガス及び火炎形成用ガスを供給する。このクラッド用バーナー18は、例えば8重管などの多重管バーナーである。なお、図1中において、火炎形成用ガスを供給するガス供給装置は省略している。
【0022】
クラッド用バーナー18には、原料ガスとしてSiCl、火炎形成ガスとしてH、O、バーナーシールガスとしてNなどを投入する。このクラッド用バーナー18により形成される酸水素火炎内で、火炎加水分解反応によりガラス微粒子20を生成し、ガラス微粒子20を出発ロッド13に堆積させて、所定外径のガラス微粒子堆積体14を作製する。
【0023】
ガス供給装置19は、液体原料28を貯留する原料容器22、原料ガスの供給流量を制御するMFC23、原料ガスをクラッド用バーナー18へ導くガス供給配管25、原料容器22及びMFC23及びガス供給配管25の一部を所定温度以上に保つ温調ブース24からなる。
【0024】
原料容器22内の液体原料28は、温調ブース24内で沸点以上の温度に制御され、原料容器22内で気化し、MFC23によりクラッド用バーナー18へ供給される原料ガスの供給量が制御される。なお、MFC23による原料ガス供給量の制御は、制御装置16からの指令値に基づき行われる。
【0025】
本実施形態のガラス微粒子堆積体の製造方法は、原料容器22からクラッド用バーナー18までのガス供給配管25の少なくとも一部を該バーナー側の温度が高くなり5℃/m以上の温度勾配になるように温度制御する。
【0026】
温度勾配は、好ましくは15℃/m以上、更に好ましくは25℃/m以上になるように原料容器22からクラッド用バーナー18までのガス供給配管25の少なくとも一部を該バーナー側の温度が高くなるように温度制御する。
【0027】
ガス供給配管25の材質については、ガス供給配管25を200℃未満の温度で保持する場合は、ガス供給配管25の材質はフッ素樹脂(テフロン(登録商標))などでもよいが、200℃以上の温度で保持する場合は、ガス供給配管25の材質は耐熱性に優れたSUS等の金属性のものが好ましい。また、温調ブース24からクラッド用バーナー18までのガス供給配管25の外周には発熱体であるテープヒータ26が巻き付けられている。テープヒータ26は、金属発熱体やカーボン製繊維状面発熱体の極細撚線を保護材で覆ったフレキシブルなヒータである。このテープヒータ26が通電されることでガス供給配管25が加熱される。
【0028】
なお、テープヒータ26の外周には、断熱材である断熱テープ27が巻回されている方が好ましい。断熱テープ27が巻回されていると消費電力を低く抑えることができる。
【0029】
ガス供給配管の温度制御の一例を説明する。
図2に示すように、温調ブース24からクラッド用バーナー18までのガス供給配管25の外周には、3種のテープヒータ26A,26B,26Cが巻回されている。即ち、クラッド用バーナー18側に第1のテープヒータ26Aを巻回し、その横に隣接するように第2のテープヒータ26Bを巻回し、温調ブース24側に第3のテープヒータ26Cを巻回している。なお、便宜上、温調ブース24とクラッド用バーナー18の間のガス供給配管25の長さを1mとする。
【0030】
例えば、ガス供給配管25の両端と真ん中の外周部に熱電対を設置して、それぞれの温度をテープヒータ26A,26B,26Cで調整する。この時配管の片端(温調ブース24側)に設置した熱電対の温度を第3のテープヒータ26Cにより120℃に、真ん中に設置した熱電対の温度を第2のテープヒータ26Bにより140℃に、配管の片端(バーナー18側)に設置した熱電対の温度を第1のテープヒータ26Aにより160℃とすると、40℃/mの温度勾配で温度制御していることになる。
【0031】
上述したように温調ブース24からクラッド用バーナー18までのガス供給配管25をバーナー側が高温となり5℃/m以上の温度勾配になるように温度制御すると、ガス供給配管25内の原料ガスの体積は温調ブース24からクラッド用バーナー18に進むにつれて膨張し、原料ガスの流速が加速する。なお、上述の3種のテープヒータ26A,26B,26Cによる構成は、本発明を実現するための一例であり、別の構成でも本発明を実現することは可能である。例えば、テープヒータ26Bの一部を140℃になるように制御し、その他のテープヒータ(26A,26C)をテープヒータ26Bと同じ電力で制御しても、効果を得ることはできる。なお、ガス供給配管25の少なくとも一部を5℃/m以上に制御すれば良いが、配管の全体を5℃/m以上に制御しても良い。また、便宜上温調ブース24とクラッド用バーナー18の間のガス供給配管25の長さを1mとしたが、ガス供給配管25の長さは適宜調整が可能である。
【0032】
これにより、バーナー火炎内で生成されるガラス微粒子20の慣性力が増加し、ガラス微粒子20の直進性が促進され、ガラス微粒子20が火炎内のガスの流れから離脱し易くなり、出発ロッド13やガラス微粒子堆積体14へのガラス微粒子20の付着効率を向上させることができる。
【0033】
また、ガス供給配管25内を流れる原料ガスのレイノルズ数(Re数)は、2000以上、好ましくは4000以上、更に好ましくは8000以上となるように配管径を設計する。これにより、ガス供給配管25内での原料ガスの流れが乱流化され、原料ガスはガス供給配管25内で効率的に加熱されて温度が上昇し易くなる。ガス供給配管25の全長を140℃一定値に加熱した場合のガス供給配管25内を流れる原料ガスの温度を図4に示す。図4からRe数が高くなる程、ガス供給配管25内を流れる原料ガスは加熱され易くなることが分かる。但し、本発明ではガス供給配管25の温度を原料容器22からクラッド用バーナー18へ向かうにつれて、高くなるように制御するため、ガス供給配管25内を流れる原料ガス温度がクラッド用バーナー18側で飽和することはない。
【0034】
ガラス微粒子堆積体14の製造手順を説明する。
(堆積工程)
図1に示すように、支持棒12を昇降回転装置15に取り付け、支持棒12の下端に取り付けられている出発ロッド13を反応容器11内に納める。
次に、昇降回転装置15によって出発ロッド13を回転させながら、クラッド用バーナー18によって形成される酸水素火炎内において原料ガスを火炎加水分解反応によりガラス微粒子20に化学変化させ、該ガラス微粒子20を出発ロッド13に堆積させる。
【0035】
このとき、ガス供給配管25の外周に巻き付けられたテープヒータ26に通電することで、ガス供給配管25の温度が、温調ブース24からクラッド用バーナー18に向かって5℃/m以上の傾きで高くなるように温度制御している。
【0036】
(透明化工程)
次に、得られるガラス微粒子堆積体14を不活性ガスと塩素ガスの混合雰囲気中で1100℃に加熱した後、He雰囲気中にて1550℃に加熱して透明ガラス化を行う。このようなガラス母材の製造を繰り返し行う。
【0037】
堆積工程における火炎ガス流の中でのガラス微粒子20の挙動について簡単に説明する。図3に示すように、クラッド用バーナー18で形成される、SiCl等の原料ガスを含んだ火炎ガス流Gは、ガラス微粒子堆積体14に当ってその方向が急激にガラス微粒子堆積体14の外周方向に曲がることになる。
【0038】
一方、火炎ガス流Gに沿って流れるガラス微粒子はその流速が速い程、ストークス数が高くなるため、ガラス微粒子の慣性力は大きくなり、ガラス微粒子の直進性が向上する。火炎ガス流Gがガラス微粒子堆積体14に当って、その流れる方向がガラス微粒子堆積体14の外周方向に急変すると、慣性力の大きいガラス微粒子20Aは直進性が高いため、そのままガラス微粒子堆積体14に衝突する。しかし、慣性力の小さいガラス微粒子20Bは火炎ガス流Gに沿って流れるため、ガラス微粒子堆積体14の外周方向に流れ去る。従って、如何にしてガラス微粒子20の慣性力を高めるかが肝要となる。
【0039】
本発明では、ガス供給配管25の少なくとも一部に温度勾配を付けて、ガス供給配管25内を流れる原料ガスの流速をガス供給配管25の下流側に向けて加速させ、バーナー火炎内におけるガラス微粒子20の慣性力を増加させる。これにより、ガラス微粒子が火炎ガスの流れから離脱し易くなり、出発ロッド13やガラス微粒子堆積体14へのガラス微粒子20の付着効率を向上させることができる。
【実施例】
【0040】
次に、本発明のガラス母材の製造方法の一実施例を説明する。
実施例、比較例とも、下記のような材料を使用してガラス母材を製造する。
・出発ロッド;直径25mm、長さ1000mmの石英ガラス
・クラッド用バーナーへの投入ガス;原料ガス…SiCl(1〜7SLM)、火炎形成ガス…H(100〜150SLM)、O(100〜150SLM)、バーナーシールガス…N(20〜30SLM)
【0041】
VAD法によりガラス微粒子の堆積を行う。得られるガラス微粒子堆積体を不活性ガスと塩素ガスとの混合雰囲気中で1100℃に加熱した後、He雰囲気中にて1550℃に加熱して透明ガラス化を行う。
【0042】
ガス供給配管の外周温度を配管の長手方向に沿った3点で測定し、その測定点間の最小温度勾配;T(℃/m)、ガラス微粒子の原料収率;X(%)を評価する。なお、ガラス微粒子の原料収率Xは、投入するSiClガスが100%SiOに化学反応する場合のSiO質量に対し、実際に出発ロッド及びガラス微粒子堆積体に堆積するガラス微粒子の質量比とする。
【0043】
具体的には、実施例は、温調ブースからクラッド用バーナーまでのガス供給配管を、発熱体によりバーナー側を高温とし、最小温度勾配Tを5℃/mから40℃/mまで段階的に管理して、各温度勾配における原料収率を算出する。これに対して比較例では、温度勾配を管理せず、最小温度勾配Tが5℃/m未満になる場合の原料収率を算出する。
その結果、表1に示すような結果を得る。
【0044】
【表1】

【0045】
表1から明らかなように、最小温度勾配Tを5℃/m以上としている実施例1〜5では、原料収率Xが32%以上となる。また、実施例5の最小温度勾配Tが40℃/mの場合は、バーナーに投入される直前の原料ガス温度は270℃、つまり原料ガス温度が原料ガスであるSiClの標準沸点より212.4℃高くなり、この時、原料収率Xは40%まで向上する。これに対して比較例1,2では、最小温度勾配Tを5℃/m未満としているので、原料収率Xが27%以下と低く、比較例2の最小温度勾配Tが3℃/mの場合では、原料収率Xが24%であり、投入するSiClガスの約4分の1しか、ガラス微粒子として付着しないことが分かる。
【0046】
なお、本発明のガラス母材の製造方法は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良等が自在である。例えば、本実施形態では、堆積工程においてVAD法によりガラス微粒子堆積体を製造する場合を一例に説明したが、その他OVD法やMMD法などの火炎分解反応を利用する全てのガラス母材の製造方法に有効である。
【0047】
また、本実施形態では原料ガスとして、SiClのみを使用したが、SiClとGeClを使用するコアガラス合成の場合も原料収率を向上させる効果がある。また、SiCl以外の原料ガスでも同様の効果がある。なお、原料容器とバーナーを結ぶガス供給配管の温度は原料ガスの沸点以上の温度、例えば100℃以上の温度で管理すればよい。
その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置場所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【符号の説明】
【0048】
10…製造装置、11…反応容器、12…支持棒、13…出発ロッド、14…ガラス微粒子堆積体、15…昇降回転装置、16…制御装置、18…クラッド用バーナー、19…ガス供給装置、20…ガラス微粒子、22…原料容器、23…MFC、24…温調ブース、25…ガス供給配管、26…テープヒータ(発熱体)、27…断熱テープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料容器内に容れられた液体のガラス原料を加熱し気化させてガラス原料ガスとし、
該ガラス原料ガスを前記原料容器から配管によりガラス微粒子生成用バーナーまで導き、
該ガラス微粒子生成用バーナーから前記ガラス原料ガスを噴出させ、
該ガラス原料ガスの火炎分解反応により生成したガラス微粒子を反応容器内の出発ロッドに堆積させてガラス微粒子堆積体を作製する堆積工程を含むガラス微粒子堆積体の製造方法において、
前記堆積工程における前記原料容器から前記ガラス微粒子生成用バーナーまでの前記配管の少なくとも一部を、発熱体により該バーナー側が高温となり5℃/m以上の温度勾配になるように温度制御することを特徴とするガラス微粒子堆積体の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のガラス微粒子堆積体の製造方法において、
前記堆積工程における前記原料容器から前記ガラス微粒子生成用バーナーまでの前記配管の少なくとも一部を、発熱体により該バーナー側が高温となり15℃/m以上の温度勾配になるように温度制御することを特徴とするガラス微粒子堆積体の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載のガラス微粒子堆積体の製造方法において、
前記堆積工程における前記原料容器から前記ガラス微粒子生成用バーナーまでの前記配管の少なくとも一部を、発熱体により該バーナー側が高温となり25℃/m以上の温度勾配になるように温度制御することを特徴とするガラス微粒子堆積体の製造方法。
【請求項4】
請求項1から3の何れか一項に記載のガラス微粒子堆積体の製造方法において、
前記発熱体がテープヒータであることを特徴とするガラス微粒子堆積体の製造方法。
【請求項5】
請求項1から4の何れか一項に記載のガラス微粒子堆積体の製造方法によりガラス微粒子堆積体を製造し、
前記堆積工程で作製した前記ガラス微粒子堆積体を加熱して透明化する透明化工程を経てガラス母材を製造することを特徴とするガラス母材の製造方法。
【請求項6】
前記堆積工程においてOVD法、VAD法またはMMD法によりガラス微粒子堆積体を製造し、前記透明化工程を経てガラス母材を製造することを特徴とする請求項5に記載のガラス母材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−82601(P2013−82601A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−8158(P2012−8158)
【出願日】平成24年1月18日(2012.1.18)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】