説明

ガラス用コーティング剤

【課題】本発明の目的は、ガラスカレットとして再利用する際にも、着色することが極めて少ないガラス用コーティング剤を提供することである。
【解決手段】本発明は、シラノール基を有する水系ポリウレタンの固形分100重量部に対し、メラミン系硬化剤10〜30重量部および平均粒径が10〜100nmのシリカ微粒子40〜100重量部を配合したガラス用コーティング剤を提供する。また、本発明は、前記ガラス用コーティング剤を被覆したガラスビンを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス用コーティング剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、着色又は破壊防止や傷付き防止を目的としてガラスびんにウレタン樹脂をコーティングすることが広く行われている。例えば、繰り返して使用される牛乳びんやビールびんなどのリターナブルびんは、繰り返し使用する間に強度が低下し、また外観品質が劣化するなどの不具合を生じることがあり、ガラスびんの外表面全体にウレタン樹脂のコーティング膜を形成することが行われている(特許文献1および2)。
しかしながら、上記のようなウレタン樹脂のコーティングを施したガラスびんは、カレットとして再利用する際に、有機物由来の炭素原子が着色の原因となり、リサイクル性が損なわれるという問題があった。
【0003】
【特許文献1】特開平10−139487号公報
【特許文献2】実開平5−84632号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明の目的は、ガラスカレットとして再利用する際にも、着色することが極めて少ないガラス用コーティング剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、シラノール基を有する水系ポリウレタンの固形分100重量部に対し、メラミン系硬化剤10〜30重量部および平均粒径が10〜100nmのシリカ微粒子40〜100重量部を配合したガラス用コーティング剤を提供する。
また、本発明は、前記ガラス用コーティング剤を被覆したガラスビンを提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明のガラス用コーティング剤で使用するシラノール基を有する水系ポリウレタンとしては、分子内に少なくとも1個のシラノール基を含有するポリウレタン樹脂であり、水相中に溶解しているもの、又は微粒子状に分散しているコロイド分散系のもの(エマルジョン)をいう。
シラノール基含有ポリウレタン樹脂中のシラノール基は、加水分解性ケイ素基が水相中で加水分解されて生成したものである。シラノール基はウレタン結合により前記シラノール基含有ポリウレタン樹脂に導入されており、1 分子内に少なくとも1 個のウレタン結合を形成させる官能基と加水分解性ケイ素基とを含有する化合物とを反応させることにより形成される。このシラノール基含有ポリウレタン樹脂中に含まれるシラノール基の存在(結合)部位は特に限定されず、該ポリウレタン樹脂の両端、何れか一方端あるいは中間部分の何れかの部位に存在(結合)していてもよい。
また、シラノール基含有ポリウレタン樹脂中に、親水性基が導入されたものが好ましく、該親水性基としては、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、スルホネート基等が挙げられるが、それらの中でもカルボキシル基、スルホン酸基が導入されていることが、該樹脂の水相中での安定性の点から好ましい。
【0007】
本発明のガラス用コーティング剤で使用するメラミン系硬化剤としては、メラミンとホルムアルデヒドの重縮合から得られるアミノ樹脂であり、その反応性基の種類によって完全アルキル基型、メチロール基型、イミノ基型などがある。本発明においては、比較的低温で硬化することや酸触媒を必要としない点から、メチロール基型又はイミノ基型が好ましい。
メラミン系硬化剤の配合量は、シラノール基を有する水系ポリウレタンの固形分100重量部に対して、10〜30重量部であり、好ましくは10〜25重量部であり、より好ましくは15〜25重量部である。
【0008】
本発明のガラス用コーティング剤で使用するシリカ微粒子としては、平均粒径が10〜100nmの範囲内であれば、特に制限はなく、例えば乾式法により製造されるヒュームドシリカや湿式法により製造される湿式シリカ等がある。
平均粒径の好ましい範囲は、10〜80nmであり、より好ましくは10〜50nmである。なお、本明細書において「平均粒径」とは、未凝集状態の一次粒子の平均粒径を指し、電子顕微鏡写真から測定した粒子径の算術平均値として求めている。
シリカ微粒子の配合量は、シラノール基を有する水系ポリウレタンの固形分100重量部に対して、40〜100重量部であり、好ましくは50〜90重量部であり、より好ましくは60〜80重量部である。
【0009】
本発明のガラス用コーティング剤には、さらにフロスト剤として、有機ポリマー微粒子を配合することができる。有機ポリマー微粒子は、特定の樹脂に限定されるものではなく、透明性を有するものであってもよく、また透明性を有しないものであってもよく、例えばアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、シリコーン樹脂、ポリカーボネート樹脂、フエノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ナイロン樹脂、フッ素樹脂などが挙げられる。目的とするフロスト調の質感、外観、程度により1種又は数種類を組合せても良い。
有機ポリマー微粒子の配合量は、シラノール基を有する水系ポリウレタンの固形分100重量部に対して、5〜40重量部であり、好ましくは10〜40重量部であり、より好ましくは20〜40重量部である。また、有機ポリマー微粒子の平均粒径は、1〜15μmの範囲が好ましく、より好ましくは5〜15μmであり、さらに好ましくは5〜10μmである。
【0010】
本発明のガラス用コーティング剤には、さらに既知の滑剤、消泡剤、レベリング剤、着色剤等を配合しても良い。
【0011】
本発明のガラス用コーティング剤の残部は水である。本発明のガラス用コーティング剤において、固形分濃度は、好ましくは10〜50重量%であり、より好ましくは10〜40重量%であり、さらに好ましくは20〜40重量%である。
【0012】
本発明のガラス用コーティング剤は、当業者に公知の方法を用いてガラスびんに適用してもよい。また、本発明のコーティング液はガラスびんの外面及び内面の両方に適用できる。本発明のコーティング液を適用するガラスびんは、公知の任意のガラス素材に対しても適用することができる。具体的なガラス素材としては、ソーダガラス、ホウケイ酸ガラス、石英ガラス、鉛ガラスなどが挙げられる。
【実施例】
【0013】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
(塗膜外観)
塗膜の割れ、剥離等の欠陥を目視にて評価した。
(透明性)
スライドグラスの片面の塗膜を完全に剥離した後、全光線透過率及び曇りの指標であるヘイズ値を測定した。
装置:スガ試験機株式会社製 SMカラーコンピューター(SM―5)
(アルカリ耐性評価)
60℃に加温した2.5%水酸化ナトリウム水溶液に15分間浸漬した後の塗膜の外観及び密着性を目視評価した。
(密着性評価)
JIS K5400 6.15碁盤目試験(碁盤目テープ法)に従い評価した。
評点 10点:剥離無し
8点:剥離面積約5%以下
6点:剥離面積約5〜15%
4点:剥離面積約15〜35%
2点:剥離面積約35〜65%
0点:剥離面積約65%以上
【0014】
(実施例1)
シラノール基を有する水系ポリウレタン(アニオン型ポリカーボネート系ポリウレタンエマルション(三井化学ポリウレタン社製タケラックWS−4000))の固形分100重量部に対し、メラミン系硬化剤(イミノ基型メチル化メラミン樹脂(日本サイテック社製サイメル327))20重量部およびシリカ微粒子(平均粒径30nm(日本アエロジル社製ヒュームドシリカAE50))50重量部を配合し、さらにイオン交換水を所定量加え、固形分濃度を30重量%とした後十分撹拌混合してガラス用コーティング剤を得た。このコーティング剤をスライドグラスにディッピング法にて硬化塗膜厚15μmとなるように塗装し、160℃設定の電気オーブンで15分間乾燥硬化させて試験片を得た。
【0015】
(実施例2)
メラミン系硬化剤の配合量を15重量部とした以外は実施例1と同様にして試験片を得た。
【0016】
(実施例3)
メラミン系硬化剤の配合量を25重量部とした以外は実施例1と同様にして試験片を得た。
【0017】
(実施例4)
平均粒径が12nmのシリカ微粒子を配合した以外は実施例1と同様にして試験片を得た。
【0018】
(実施例5)
平均粒径が80nmのシリカ微粒子を配合した以外は実施例1と同様にして試験片を得た。
【0019】
(実施例6)
シリカ微粒子の配合量を80重量部とした以外は実施例1と同様にして試験片を得た。
【0020】
(実施例7)
さらに、有機ポリマー微粒子(架橋ポリスチレン樹脂:平均粒径8μm(積水化成品工業社製テクポリマーSBX−8))を30重量部配合して、フロスト感を付与した以外は実施例1と同様にして試験片を得た。
【0021】
(比較例1)
メラミン系硬化剤の配合量を40重量部とした以外は実施例1と同様にして試験片を得た。
【0022】
(比較例2)
平均粒径が500nmのシリカ微粒子を配合した以外は実施例1と同様にして試験片を得た。
【0023】
(比較例3)
シリカ微粒子の配合量を120重量部とした以外は実施例1と同様にして試験片を得た。
【0024】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
シラノール基を有する水系ポリウレタンの固形分100重量部に対し、メラミン系硬化剤10〜30重量部および平均粒径が10〜100nmのシリカ微粒子40〜100重量部を配合したガラス用コーティング剤。
【請求項2】
さらに、フロスト剤として有機ポリマー微粒子を5〜40重量部配合した請求項1に記載のガラス用コーティング剤。
【請求項3】
有機ポリマー微粒子の平均粒径が1〜15μmである、請求項2に記載のガラス用コーティング剤。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のガラス用コーティング剤を被覆したガラスビン。

【公開番号】特開2009−167056(P2009−167056A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−7139(P2008−7139)
【出願日】平成20年1月16日(2008.1.16)
【出願人】(000003768)東洋製罐株式会社 (1,150)
【Fターム(参考)】