説明

ガラス製キートップ、キートップへのマーキング方法及びこれを利用したキーユニットの製造方法

課題 文字・記号等が、耐久性を備える状態でマーキングされたガラスキー、及びそのようなガラスキーを作成するためのマーキング方法を提供する。課題解決手段 文字・記号等がキートップの表面又は内部のガラス媒質中にマーキングがされているガラスキー、及び波長が概略1100nm以下の赤外線域、可視光域又は紫外線域に属するレーザ光を、透明ガラス製のキートップ表面及び又は内部の上部位置、中間位置、下部位置その他の所望の位置に合焦させつつ間歇照射して、ガラス媒質に多数の微細なクラックの集合を形成し、これにより文字・記号等を表すようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、携帯電話機、携帯情報端末装置(PDA)等モバイル機器用キーユニット中の各キーに文字・記号等をマーキングする方法、該マーキング方法によって形成された文字・記号等を有するキートップ及び当該マーキング方法を利用するキーユニットの製造方法に関する。
【背景技術】
キーユニットは、携帯電話機や携帯情報端末装置(PDA)等モバイル機器を構成する部品の一種であって、多数のスイッチ操作用キー(押釦)を一枚のシート面に集合・配列したものである。1個のキーは、硬質樹脂等からなるキートップとシリコーンゴム等の柔軟なゴム又は熱可塑性エラストマー製のキーパッドから成る。該キーパッドの表面にはキートップが取り付けられ、また、キーパッドの、キートップが取り付けられた側の面とは反対側の面(裏面)にはスイッチ押圧突起(いわゆる「押し子」)が形成されている。キーとキーの間はキーパッドにより連結される。このように構成されるキーユニットの下面にスイッチ要素を備えた回路基板を配置すれば、各キーに対応する位置にキースイッチが形成される。
キートップにはそれぞれのキーの機能を表す文字・記号等が描かれる。このように、キーに文字・記号等を描く工程を「マーキング」と呼ぶ。これら各キーは対象モバイル機器中最も目立つ位置に配置されるから、そのデザインや配置には特別な注意が払われる。特に耐久性と高級感は重要な要素である。従来、透明なガラス製のキートップが携帯電話機等モバイル機器に用いられた例は無いが、上記のような観点から、今後、重要な候補になりうると思われる。
しかしながら、透明ガラス製のキートップ(以下、「ガラスキー」という)に関しては、解決しなければならない問題点がある。それはガラスキーにおけるマーキングの困難性である。勿論、ガラスキーの表面に文字・記号等を印刷又は塗装によって形成することが考えられるが、硬質で平滑なガラスの表面に印刷された文字・記号等に耐摩耗性を付与することは容易でない。
上記の問題点をレーザマーキングにより解決しようとした例が存在する(例えば、特許文献1参照)。これは、ガラスの表面に炭酸ガスレーザを照射し、被照射部位の急激な温度変化によりガラス表面に微小なクラックを生じさせて削り取ることで、文字等を刻印するものである。
【特許文献1】 特開平10−291840号公報
特許文献1の対象は、本発明が対象とするガラスキーではない。
【発明の開示】
本願発明が解決しようとする課題は、文字・記号等が、耐久性を備える態様でマーキングされたガラスキーを提供すること、及び、そのようなガラスキーを作成するためのマーキング方法を提案することである。
上記の、文字・記号等が耐久性を備えた態様でマーキングされたガラスキーを提供するという課題は、請求項1記載の発明により解決することができる。すなわち、文字・記号等がキートップの表面及び又は内部のガラス媒質中にマーキングされているガラスキーである。
請求項1の発明に係るガラスキーでは、文字・記号等が、ガラス媒質に直接刻印された状態及び又は外部からの接触や摩擦から遮断された状態となっている。したがって、完全な耐摩耗性が得られる。しかも、ガラス媒質の内部に文字・記号等をマーキングした場合では、これらの文字・記号等はガラス鼓質中に浮かんでいる状態でレンズ効果を伴って視られるから、斬新な視覚効果が得られる。また、微小クラックが手垢等で汚れて非衛生的になることもない。
上記課題中のマーキング方法に関しては、請求項3に記載の発明により解決することができる。すなわち、波長が概略1100nm以下の近赤外線域、可視光域又は紫外線域に属するレーザ光を、透明ガラス製のキートップの表面又は内部の表面近傍位置などの上部位置、中間位置、下部位置その他の所望の位置に合焦させつつ間歇照射して、ガラス媒質の表面又は内部の表面近傍位置などの上部位置、中間位置、下部位置その他の位置に多数の微細なクラックの平面的又は立体的集合を形成し、これにより文字・記号等を表す方法である。
上記マーキング方法において、波長が概略1100nm以下であるレーザ光を採用する主な理由は次の2つである。第1には、レーザ光のエネルギーは振幅同一ならば短波長ほど相対的に高いこと。第2には、短波長の近赤外線〜可視光〜紫外線はレンズ集光により30μm以下のスポット径を容易に得られるので、ガラス媒質への微細なクラックの生成に適することである。例えば、赤外域であって10.6μm程度とYAGレーザと比べても波長が長い炭酸ガスレーザを用いる場合では、スポット径を十分に絞れないためガラス媒質にクラックを生成できなかったり、無理に注入パワーを大きくすると温度上昇のためガラスキー自体が割れたりして満足な加工ができないということがあった。
マーキングに際して、レーザ光はガラス媒質中の文字・記号等をマーキングすべき所望の位置に合焦される。焦点へ光エネルギーがパルス状に送り込まれると、小さな点に急激な温度変化が生じて微細なクラックが発生する。クラックは光を乱反射するので微細な輝点として観察される。焦点は、コンピュータ制御された反射鏡システム(ガルバノスキャナー)を有する光学系により、文字・記号等のデザインに従って平面的又は立体的に動かされ、その軌跡に当該文字・記号等を表現する微細なクラックの(つまり、輝点の)集合が形成される。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明で用いるレーザ照射装置の構成を概略的に示す図である。
図2は、2倍波YAGレーザの構成を説明する概念図である。
図3は、本発明におけるキーユニット(文字・記号等のマーキング前)を示す平面図である。
図4は、本発明におけるキーユニット(文字・記号等のマーキング後)を示す平面図である。
図5は、本発明におけるキーユニットの変形例(文字・記号等のマーキング後)を示す平面図である。
図6は、キートップの内部の中層にレーザ光を照射してマーキングを行った時の状態を拡大して示す縦断面図である。
図7は、キートップの内部の上層にレーザ光を照射してマーキングを行った時の状態を拡大して示す縦断面図である。
図8は、キートップの内部の下層にレーザ光を照射してマーキングを行った時の状態を拡大して示す縦断面図である。
図9は、キートップの表面にレーザ光を照射してマーキングを行った時の状態を拡大して示す縦断面図である。
図10は、本発明キーユニットの製造方法における製造工程の流れを示すブロック図である。
【発明を実施するための最良の形態】
(第1実施形態)
上記レーザ光として、Nd:YAGレーザ(ネオジムイオンをドープしたイットリウム・アルミニウム・ガーネット固体レーザ)の波長1064nmの基本波を半波長変換した532nmの光を利用するというものである。この半波長変換は、Nd:YAGレーザの第2高調波を取り出すことで実現される。そのように構成されたレーザ装置は「2倍波YAGレーザ」と称され、発生する波長532nmのレーザ光が緑色を呈するので「グリーンレーザ」と呼ばれる。
なお、Nd:YAGレーザを半波長変換せずに、波長1064nmの基本波のままで用いることも可能である。この場合、加工に必要なパワーを得るために、光学系でレーザのスポット径を30μm以下に絞り込むことが必要である。
(第2実施形態)
上記レーザ光として、Nd:YAGレーザの第3高調波を取り出すことで得られる波長355nmの近紫外線を利用するというものである。この第3高調波を取り出すNd:YAGレーザは「3倍波YAGレーザ」と称される。
(第3実施形態)
レーザ装置はYAGレーザに限定されない。加工に必要なパワーが得られれば、ガラスレーザやYVOレーザなどの固体レーザ、エキシマレーザ、半導体レーザ等であっても良い。また、YAGレーザの場合の高調波も第2、第3高調波に限られない。能率上問題がなければ、第4高調波以上を用いても良い。
【実施例】
以下に、本発明の一実施例について添付図面を参照して説明する。
参照符号10はキーユニット、11はキーパッド、12はキートップ、14はレーザビーム、15は文字・記号等、16は微細なクラックを示す。
最初に、本発明において使用するレーザ照射装置について説明する。図1及び図2は、本発明で用いるレーザ照射装置1の構成を説明する概念図である。レーザ照射装置1は、データ入力手段2、制御手段3、レーザ発振手段4、複数のミラーやレンズを含む光学系5などによって構成される。
データ入力手段2は、文字・記号等のパターンに関するデータ(立体データ)の入力や、入力されたデータの記憶などを行うものであり、入力されるデータは、例えば、コンピュータによって作成されたCADデータなどの形式で入力される。制御手段3は、上記データ入力手段2から入力されたデータにより、レーザ発振手段4や光学系5の動作を制御して実際の加工に用いるための立体加工データを生成する。
レーザ発振手段4は、この実施例においては、例えば、レーザ光としてNd:YAGレーザの波長1064nmの基本波を半波長変換した、波長532nmの光を発振するものである。この半波長変換は、Nd:YAGレーザの第2高調波を取り出すことで実現される。そのように構成されたレーザは「2倍波YAGレーザ」と称される。波長532nmのレーザ光は緑色を呈するので「グリーンレーザ」とも呼ばれる。図2は、2倍波YAGレーザにおけるレーザ発振手段4の構成の一例を示す概念図である。
また、上記レーザ光として、Nd:YAGレーザの第3高調波を取り出すことで得られる波長355nmの近紫外線を利用することも可能である。この第3高調波を取り出すNd:YAGレーザは「3倍波YAGレーザ」と称され、この場合のレーザ発振手段4の構成も基本的には図2に示すものとほぼ同様である。
光学系5は、図1に示すように、レーザ光の照射方向を制御する、それぞれ異なる方向に回動する2つのミラー(ガルバノスキャナー)5a、5bと、レーザ光を集光させるレンズ(Fθレンズ)5cなどによって構成される。
以上に説明したような構造を有するレーザ照射装置1は、入力されたデータから生成された加工データに基づき、光学系などの動作の制御によるレーザ光のビームスポットの立体的位置(X、Y、Z各軸上の位置)と、レーザ光照射のオン−オフのタイミングや出力などの制御を関連させ、キートップへの文字・記号等のマーキングを全自動で行う。
次に、本願発明ガラス製キートップを用いたキーユニットについて説明する。図3乃至図9において参照符号10はキーユニット、11は透光性を有し、シリコーンゴムや熱可塑性エラストマーなどの柔軟な材質から成るキーパッド、12は透明(有色透明又は無色透明)ガラス製キートップ、13は上記キーパッド11とキートップ12間の透光性接着剤、14はレーザビーム、15はキートップ11にマーキングされた文字・記号等、16はレーザビームの照射によってキートップ12の表面又は内部に生じた微細なクラック、17はドームスイツチ、18はプリント基板を示す。
キーユニット10は、図3及び図4に概略的に示すように、キーパッド11と、該キーパッド11上に配設された多数のキートップ12、12、…とによって構成される。キーパッド11とキートップ12、12、…とは通常、透明接着剤13によって接着されている。
図3は文字・記号等15、15、…のマーキング前のキーユニット10を示し、図4は文字・記号等(一例として、アラビア文字によるものを示す。)15、15、…のマーキング後のキーユニット10を示すものである。なお、キートップ12、12、…の中で、キーユニット10の上部中央に位置する外形が最も大きいもの12Aは、いわゆる多方向キーとして用いられるものである。
キーパッド11の一方の面、すなわち、キートップ12、12、…が配設された側の面とは反対側の面には、図6乃至図9に示すように、各キートップの位置に合わせてスイッチ押圧突起(押し子)11a、11a、…が一体に形成されている。
各キートップ12は、無色透明又は有色透明のガラスから所望の形状に射出成形や圧縮成形などによって形成されている。キートップ12を形成するガラス材料は材質的には特に限定されるわけではないが、成形加工が容易であるという点から、600℃以下のガラス転移温度を有するいわゆる低融点ガラス(ガラス組成がPbO−SiO−BあるいはPbO−PSnFなどに代表されるもの)を使用することが望ましい。
以上のような構成を有するキーユニット10の下面にスイッチ要素であるドームスイッチ(メタルドーム)17、17、…及び該ドームスイッチ17、17、…と接触する図示しない接点を有するプリント基板18が配置され、各キーに対応する位置にキースイッチが形成される。
図6乃至図9は、レーザ照射装置1による文字・記号等15、15、…のマーキング後のキーユニット10の一部を拡大縦断面にて示すものである。図6はキートップ12の厚み方向における中間部分(中層)に、図7はキートップ12の最上層(表面12a近く)に、また、図8はキートップ11の最下層(裏面12b近く)に、図9はキートップ12表面12aに、それぞれ多数の微細なクラック16、16、…を形成して文字・記号等15のマーキングを行った例である。多数の微細なクラック16、16、…は、キートップの厚み方向に数段にわたって形成され、この立体的な集合によって文字・記号等15が構成される。なお、図9に示す文字・記号等15をキートップ12の表面12aに形成した場合では、微細なクラック16、16、…の集合によって、表面12aに文字・記号等15の形状に微細な凹凸が形成された状態となるか、又は、表面12aにすりガラス状、すなわち、シボ加工にされた状態の溝ができて文字・記号等15の形状に削り取られることになる。
本実施例においてはレーザビーム14として使用したのは前記したグリーンレーザ(波長532nm)である。先ず、文字・記号等15のマーキングを形成すべきキートップ12内の領域(表面、上層、中層又は下層)における最下段にレーザビーム14の焦点を合わせ、レーザビーム14のスポット径を30μm以下に絞り、描くべき文字・記号等の立体加工データに基づいて、その位置における文字・記号等15の平面形状に沿って、例えば、文字・記号等15の平面形状内で螺旋を描くように走査しつつ照射した。最下段の平面に沿った照射が完了したならば、焦点位置をわずかに上方に移動させ、上記と同様にして照射を行う。
かくして、レーザービーム14の焦点位置を上方に移動させて所定の段数分の照射を繰り返して、目的とする文字・記号等15を表現する微細なクラック(つまり、輝点)16、16、…の立体的集合が形成される。これを側方から見ると、図6乃至図8に示すように、文字・記号等15、15、…がキートップ12、12、…のガラス媒質中に浮かんだ状態となるようにガラス内部の上部位置、中間位置、下部位置その他の所望する位置に形成するか又は、図9に示すように、表面12aに文字・記号等15の形状に微細な凹凸が形成された状態となるか、若しくは、表面12aにすりガラス状、すなわち、シボ加工にされた状態で削り取られた溝ができ、図4に示すように、キーユニット10の上方(キートップ12の表面側)から平面的に見ると、キートップ12、12、…で文字・記号等15、15、…となる。
したがって、各キートップ12においては、上記微細なクラック16、16、…の立体的集合によって光が散乱され、文字・記号等15が輝点の立体的集合として明瞭に認識できるようになる。
なお、キーユニット10は、必ずしも全てのキーにおいてキートップ12A、12、12、…をガラス製とする必要はない。例えば、数字などの入力を行うキー(いわゆるテンキー)のみにガラス製のキートップ12、12、…を用い、多方向キーを含む他のキーのキートップ12A、12、12、…を、例えば、PC(ポリカーボネート)などの合成樹脂製のキートップの表面に印刷又は塗装による複数の層を形成し、この複数の層にレーザビームで文字・記号等15、15、…をマーキングするようにされたものを用いるようにしてもよい。この場合、キートップの材質が異なっていても、文字・記号等15、15、…のマーキングに使用する手段が基本的に同じなので、レーザ照射装置1の側でキートップ12A、12、12、…の種類に応じて自動的に出力調整等の制御を行うことによって、同一工程で全てのキートップ12A、12、12、…にマーキングすることも可能である。
最後に、本発明キーユニット10の製造方法について説明する。
すなわち、図9に示すように、キーパッド11及びキートップ12、12、…を別々に射出成形又は圧縮成形等の適宜な成形方法によって形成(工程S1、工程S2)する。そして、キートップ12、12、…を透光性接着剤13等を用いて接合する(工程S4)この工程S4が終わった時点でキーユニット10の製造工程は一旦中断される。なお、キーユニット10に、ガラス製以外のキートップ、例えば、表面の印刷又は塗装による層にレーザ光で文字・記号等をマーキングするようにされたキートップが混在する場合、これらキートップは工程S3で表面などに印刷又は塗装が行われる。
そして、キーユニット10の仕向け地が決定され、使用言語に依存した文字・記号等が確定すると、キーユニット10の各キートップに対する文字・記号等がレーザ照射装置1を用いてマーキングされる(工程S5)。このキートップ12、12、…へのマーキングの終了後、キーユニット10は、単独で又は所定のモバイル機器に組み込まれた状態で出荷される。
なお、携帯電話などにおいては、通常、各キートップ12、12、…にマーキングされる文字・記号等15、15、…には、数字などの言語に依存しない文字(基本文字)15a、15a、…と、言語に依存する文字(言語依存文字)とが混在している。したがって、ガラス製のキートップ12の場合であっても、図5に示す変形例のように、工程S3で上記基本文字15aのみをあらかじめ、キーパッド11に接着される側の面である裏面12bに印刷や塗装などで形成しておくことも可能である。この場合、工程S5では言語依存文字15bのみがマーキングされることになる。
上記実施例のキーユニット10においては、キートップ12、12、…が全てガラス製であり、これにレーザビームによってマーキングするものとして説明したが、本発明はこれに限定されるわけではなく、少なくとも1個のキートップ12がガラス製で上記マーキング方法によって文字・記号等の15が形成されるものであれば良い。
また、上記文字・記号等15の形成位置、キートップ12の表面、上層、中層、下層のどの部分に形成するかは、キートップ12の厚み方向におけるレーザビーム14の焦点位置をずらせるだけで対応できるので、ひとつのキーユニット10内で、文字・記号等15の形成位置が異なるもの、例えば、キーの機能などによって変えたものを混在させてもよい。
【発明の効果】
請求項1に記載の発明に係るガラス製キートップでは、文字・記号等がガラス媒質の表面に直接彫りこまれた状態、又は、ガラス媒質の内部の表面近傍などの上部位置、中間位置、下部位置その他の所望する位置に形成されてガラス媒質中に浮かんだ状態となっている。したがって、完全な耐摩耗性が得られると共に、特に後者の場合では手垢等が着きやすいという非衛生的な状態とも無縁である。しかも、文字・記号等が内部に形成されている場合では、ガラス媒質中に浮かんでいる状態でレンズ効果を伴って視られるから、斬新な視覚効果が得られる。
請求項2に記載のガラス製キートップでは、ガラスを破損させたりすることなく、効率的に生産された耐磨耗性の高いガラス製キートップを得ることができる。
請求項3に記載のマーキング方法では、文字・記号等がガラス媒質の表面に直接彫りこまれた状態、又は、内部に形成されてガラス媒質中に浮かんだ状態でマーキングできるので、完全な耐磨耗性を有する文字・記号等のマーキングを得ることができる。
請求項5に記載のキーユニットの製造方法では、無印に仕上げられたガラスキーに、事後的に必要な文字・記号等を単一工程でマーキングできるので、完全な耐磨耗性を有し、しかも、従来に無い装飾性に優れた新たなキーユニットの製造方法を構築することができると共に、この新たな製造方法により、仕向地等の決定から製品出荷までの時間を大幅に短縮して、ユーザーサービスを向上することができる。
請求項4及び請求項6に記載の発明によれば、ガラスキーに文字・記号等のレーザマーキングを行う際に、ビームスポット径を絞り込んで照射点における光エネルギーの密度を上げ、照射点以外の部分の温度を許容温度以下に保ちながら、速やかに微細クラックを形成してマーキングを行うことができる。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯電話機等のキーユニットに用いる透明なガラス製キートップであって、文字・記号等が、ガラス媒質表面に形成された微細なクラックの集合によって形成するか、及び又はガラス媒質の内部である上部位置、中間位置、下部位置その他の所望する位置に形成された微細なクラックの集合によってマーキングされていることを特徴とするキートップ。
【請求項2】
文字・記号等が、波長が概略1100nm以下の近赤外線域、可視光域又は紫外線域に属するレーザ光を、キートップ表面又は内部の所望の位置に合焦させつつ間歇照射して、ガラス媒質に多数の微細なクラックの集合を形成することによりマーキングされたものであることを特徴とする請求項1に記載のキートップ。
【請求項3】
透明ガラス製キートップにレーザ光を照射して、その表面又は内部に文字・記号等をマーキングするキートップへのマーキング方法であって、波長が概略1100nm以下の近赤外線域、可視光域又は紫外線域に属するレーザ光を、キートップ表面又は内部の所望の位置に合焦させつつ間歇照射して、ガラス媒質中に多数の微細なクラックの集合を形成し、これにより文字・記号等を表す
ことを特徴とするキートップへのマーキング方法。
【請求項4】
Nd(ネオジウム)イオンがドープされてなる固体レーザの、第2乃至第4高調波のうちのいずれかを前記レーザ光として用いることを特徴とする請求項3に記載したキートップへのマーキング方法。
【請求項5】
マーキング実施前の透明ガラス製キートップをキーユニットに組み込み、当該キーユニットへのマーキング以外の工程を全て終了した状態で一旦その製造を中断し、当該キーユニットに必要な文字・記号等の内容が確定するのを待って、波長が概略1100nm以下の近赤外線域、可視光域又は紫外線域に属するレーザ光を、キートップ内部の所望の位置に合焦させつつ間歇照射して、ガラス媒質の表面又は内部に多数の微細なクラックの集合を形成し、これにより文字・記号等を表すマーキングを行ってキーユニットを完成させることを特徴とするキーユニットの製造方法。
【請求項6】
Nd(ネオジウム)イオンがドープされてなる固体レーザの、第2乃至第4高調波のうちのいずれかを前記レーザ光として用いることを特徴とする請求項5に記載のキーユニットの製造方法。

【国際公開番号】WO2004/068328
【国際公開日】平成16年8月12日(2004.8.12)
【発行日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−567569(P2004−567569)
【国際出願番号】PCT/JP2003/015175
【国際出願日】平成15年11月27日(2003.11.27)
【出願人】(390001487)サンアロー株式会社 (58)
【Fターム(参考)】