説明

ガラス飛散防止発電フィルム

【課題】ガラス飛散防止機能を有する発電フィルム、これを利用した飛散防止機能を有する発電ガラス、さらに前記発電フィルムを利用した電力利用システムを提供する。
【解決手段】一対のプラスチックフィルムと、前記一対のプラスチックフィルム間に形成された電池部を含む有機太陽電池層と、前記太陽電池層に積層された粘着剤層とを含むガラス飛散防止発電フィルム、前記発電フィルムを利用した飛散防止発電ガラス、及び前記発電フィルムを利用した電力利用システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス飛散防止発電フィルム、飛散防止発電ガラス及び電力利用システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、色素増感型太陽電池又は有機薄膜太陽電池に代表されるような、比較的薄い有機太陽電池が開発されている。例えば特許文献1には、フィルムの間に電極層及び電解液を封入した、可撓性の色素増感型太陽電池が開示されている。また、表面にデザインを施した色素増感太陽電池が開発されている。例えば非特許文献1及び非特許文献2には、色素増感太陽電池をセード(かさ)として採用する照明器具が開示されている。かかる照明器具は、色素増感太陽電池が太陽光や部屋の明かりを受けて発電し、そのエネルギーで中央部に備えられたライトを灯すものである。
【0003】
これら太陽電池においては、起電力が小さいことが本格的実用化への大きな障壁となっているところ、最近では、意匠性や採光の目的で、壁面をガラス張りにした建物の他、ガラス製の屋根や天井を有する建造物が増加している。また、農業分野では、ガラス製の天井や壁面を有するガラスハウスが多数利用されている。したがって、このように、増加するガラス面を被着体とする太陽電池を用いてより大きな面積で発電することができれば、より大きな電力を得ることが可能である。
【0004】
一方で、このようなガラス製の建物等においては、地震や台風、あるいは人や農業機器の衝突によるガラスの破損が、大きなリスクとなっており、意匠性や採光の目的のみに注目してガラスの面積を増やすことは難しい。しかし、このような地震や災害等によるガラス破損時に、ガラスの飛散や落下を防止するための、ガラス飛散防止フィルムが利用されており、例えば特許文献2には、特定の物性を有するガラス飛散防止用二軸配向ポリエチレンナフタレートフィルムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−56627号公報
【特許文献2】特開昭62−97827号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】http://kaden.watch.impress.co.jp/cda/news/2008/12/11/3289.html
【非特許文献2】http://kaden.watch.impress.co.jp/cda/parts/image_for_link/64372-3289-1-1.html
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、ガラス飛散防止機能と発電機能を併せ持つことにより、より大きな面積の被着体に貼付してより大きな電力を得られるガラス飛散防止発電フィルム及びこれを用いた飛散防止発電ガラスを提供することである。さらに本発明の目的は、さらに意匠によるデザイン性を有することにより、適用可能な被着体をさらに拡大して、より大きな電力を得られるガラス飛散防止発電フィルム及びこれを用いた飛散防止発電ガラスを提供することである。またさらに、本発明の目的は、前記ガラス飛散防止発電フィルムを利用した電力利用システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明は一対のプラスチックフィルムと、
前記一対のプラスチックフィルム間に形成された電池部を含む有機太陽電池層と、
前記太陽電池層に積層された粘着剤層とを含むガラス飛散防止発電フィルムであって、
前記一対のプラスチックフィルムが、厚さ50μm以上の、ポリエチレンテレフタレートフィルムまたはポリエチレンナフタレートフィルムを含むガラス飛散防止発電フィルムを提供するものである。
【0009】
また本発明は、前記ガラス飛散防止発電フィルムと、ガラスとを積層した飛散防止発電ガラスを提供するものである。
【0010】
さらに本発明は、前記飛散防止発電フィルムと、前記ガラス飛散防止発電フィルムの有機太陽電池層に接続された電流電圧変換制御回路と、蓄電器と、前記有機太陽電池及び/又は前記蓄電器及び/又は電流電圧変換制御回路と接続された接続端子とを含み、前記接続端子を介して他の機器に電力を供給し及び/又は充電することが可能な電力利用システムを提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明のガラス飛散防止発電フィルムにより、建物を構成する、あるいは建物内に設置されたガラス製品に、発電機能とガラス飛散防止機能とを同時に付与することができる。さらに、有機太陽電池層が意匠を構成している場合は、ガラス製品に意匠性も付与することができるため、従来、意匠性の観点から太陽電池の設置を躊躇していた場所、例えば、意匠性を重視する建物の外壁のガラス、飲食店やホテル等の窓ガラス、あるいは室内のパーティション等にも、ガラス飛散防止発電フィルムを貼付することができる。その結果、発電フィルムの貼付面積を拡大することができ、より大きな電力を発電することができる。また、本発明の飛散防止発電ガラスにより、発電機能とガラス飛散防止機能とを同時に有するガラスを提供することができる。さらに、本発明の電力利用システムにより、ガラス飛散防止発電フィルムで発電した電力を充電してその場で利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一態様に係る色素増感型太陽電池を用いたガラス飛散防止発電フィルムの断面図である。
【図2】本発明の一態様に係る電力を出力するガラス飛散防止発電フィルム、ならびに当該フィルム外の蓄電部、インバーター等の電流電圧変換制御回路、および電力の入力、出力部等の接続端子を含む、電力供給/充電システムならびに接続された機器類を表わす図である。
【図3】本発明の一態様に係る有機太陽電池層の意匠を示す図である。
【図4】本発明の一態様に係る有機太陽電池層の意匠を示す図である。
【図5】本発明の一態様に係る有機太陽電池層の意匠を示す図である。
【図6】本発明の一態様に係る有機太陽電池層の意匠を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のガラス飛散防止発電フィルムは、有機太陽電池層と、これに積層された粘着剤層からなる。前記有機太陽電池層としては、一対のプラスチックフィルムで挟持された色素増感太陽電池又は有機薄膜太陽電池を使用することができる。
【0014】
有機太陽電池層として、色素増感太陽電池を使用する場合、有機太陽電池層の構造は、例えば、一対のプラスチックフィルムに挟持された、透明電極、金属酸化物、色素、電荷輸送層、及び対抗電極層とすることができる。具体的には例えば図1に示すように、プラスチックフィルム層1、透明電極層2、金属酸化物及び色素からなる光電極層3、電荷輸送層4、対向電極層5、及びプラスチックフィルム層7の順で構成することができる。
【0015】
前記一対のプラスチックフィルムは、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムまたはポリエチレンナフタレート(PEN)フィルムを含む。すなわち、一対のプラスチックフィルムのうち、少なくともいずれか一方が、PETフィルムまたはPENフィルムである。当該プラスチックフィルム基材は、引張り張力で約100N/25mm以上、伸び率で約60%以上の強度を有するものを使用することが、飛散防止の観点から好ましい。当該一対のプラスチックフィルムは互いに同じ素材であっても、異なる素材であっても良い。例えば、一対のうちいずれかがPETまたはPENフィルムであり、他方が他の素材のフィルムである場合、一対のうちいずれかがPETフィルムであり他方がPENフィルムである場合、一対のいずれもがPETフィルム、あるいはいずれもがPENフィルムである場合を挙げることができる。「他の素材のフィルム」としては、例えば、シンジオタクチックポリスチレン(SPS)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレート(PAr)、ポリスルホン(PSF)、ポリエステルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)、または透明ポリイミド(PI)等からなるフィルムを挙げることができる。
【0016】
これらプラスチックフィルム層の厚さは、ガラス飛散防止の観点から約50μm以上とする必要があるが、一対のプラスチックフィルムの厚さは互いに同じであっても異なっていても良い。厚さの上限は特に限定されないが約500μm以下、約200μm以下、または約100μm以下とすることができる。
【0017】
粘着剤層(例えば図1に示す粘着剤層6)とは反対側のプラスチックフィルム(例えば図1に示すプラスチックフィルム層1)表面は、必要に応じて、耐擦傷性向上などのために、耐擦傷性コーティングを施すことができる。或いはプラスチックフィルム表面に、保護フィルムを積層することができる。保護フィルムとしては、装飾フィルムやガラス飛散防止フィルムの分野で公知のプラスチックフィルムあるいは、コーティングを用いることができる。
【0018】
透明電極は、色素増感型太陽電池に通常用いられているものであればよく、特に限定されない。例えば、白金、金、銀、銅、アルミニウム、インジウムなどの金属、黒鉛、カーボブラック、グラッシーカーボン、カーボンナノチューブ、フラーレンなどの炭素又はTiO、SnO、ZnO、Nb、インジウム−スズ複合酸化物(ITO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、インジウム亜鉛酸化錫(IZO)、酸化スズ、酸化亜鉛、アンチモンをドープした酸化スズなどの導電性金属酸化物などを用いることができる。中でも、インジウム−スズ複合酸化物(ITO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、インジウム亜鉛酸化錫(IZO)、または酸化亜鉛を好ましいものとして用いることができる。
【0019】
本明細書中において、透明とは、太陽光あるいは人工照明光を透過すること、例えば約380nm〜約780nm波長の可視光領域における平均光線透過率が約5%以上であることを言う。
【0020】
透明電極の表面抵抗は、約150Ω/□以下、約10Ω/□以下、約5Ω/□以下とすることができる。透明電極層の厚さは、約10nm以上、約20nm以上、または約30nm以上とすることができ、約15000nm以下、約5000nm以下、約1000nm以下、または約500nm以下とすることができる。
【0021】
光電極層は、金属酸化物と色素を含む。
【0022】
金属酸化物は、色素増感太陽電池に通常用いられている半導体を用いることができ、特に限定されない。例えば、遷移金属の酸化物、すなわち、(元素の周期表の)第3主族と第4、第5および第6亜族の元素、すなわちチタン、ジルコニウム、ハフニウム、ストロンチウム、亜鉛、インジウム、イツトリウム、ランタン、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステンの酸化物、なおまた亜鉛、鉄、ニッケルまたは銀の酸化物、SrTiO、CaTiOのようなペロブスカイト、または第2および第3族の他の金属の酸化物、あるいはこれらの金属の混合酸化物または酸化物混合物などを用いたものを使用できる。
【0023】
金属酸化物は、約5nm以上、または約10nm以上、で約100nm以下、または約80nm以下の平均一次粒径を有する半導体粒子から構成することができる。そして約0.01μm以上、で約1μm以下の平均二次粒径を有する半導体粒子から構成することができる。そのほか粒径分布の異なる2種以上の粒子を混合したり、さらに粒径の大きな半導体粒子を光電極層に加えることができる。
【0024】
色素は、色素増感太陽電池に通常用いられているものであればよく、特に限定されない。例えば、シアニン系、メロシアニン系、オキソノール系、キサンテン系、スクワリリウム系、ポリメチン系、クマリン系、リボフラビン系、ペリレン系などの有機色素、Ru錯体や金属フタロシアニン誘導体、金属ポルフィリン誘導体、クロロフィル誘導体などの錯体系色素などや、「機能材料」、2003年6月号、第5〜18ページに記載されている合成色素と天然色素や、「ジャーナル・オブ・ケミカル・フィジックス(J.Chem.Phys.)」、B.第107巻、第597ページ(2003年)に記載されるクマリンを中心とする有機色素を使用することができる。
【0025】
電荷輸送層は、色素増感太陽電池に通常用いられているものであればよく、特に限定されない。例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート類、エチレングリコールモノアルキルエーテル、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル等のアルコール類、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の多価アルコール類、ジオキサン、エチレングリコールジアルキルエーテル等のエーテル類、γ‐ブチロラクトン等のラクトン類、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル類、ジメチルスルホキシド等のスルホキシドなどの有機溶媒;四フッ化ホウ素イオン、ジメチルイミダゾリウム等のヨウ化物イオン等のアルキルイミダゾリウムの塩、ピリジニウム塩、イミダゾリウム塩、トリアゾリウム塩等の不揮発性イオン性液体(常温溶融塩);ポリビニルカルバゾール、ポリピロール、ポリアセチレン等の芳香族アミン、オリゴチオフェン化合物またはポリマーなどの有機固体、およびNiO、CoO、FeO、CuI、CuSCN、CuInSe等の無機酸化物半導体といった正孔輸送材料等;ならびにこれらの混合物を用いることができる。さらに電荷輸送層は、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン等のポリマー、ポリマーの架橋反応を行って、液体をゲル化させたり、カーボンナノチューブや無機酸化物の超微粒子を混合して形成してもよい。
【0026】
電荷輸送層は、酸化還元剤として、Iとヨウ化物、Brと臭化物、金属錯体(例、フェロシアン酸塩−フェリシアン酸塩、フェロセン−フェリシニウムイオン)および硫黄化合物(例、ポリ硫化ナトリウム)を含むことができる。ヨウ化物の例は、金属ヨウ化物(例、LiI、NaI、KI)および第四級アンモニウム化合物のヨウ素塩(例、テトラアルキルアンモニウムヨーダイド、ピリジニウムヨーダイド、イミダゾリウムヨーダイド)を含む。臭化物の例は、金属臭化物(例、LiBr、NaBr、KBr)および第四級アンモニウム化合物の臭素塩(例、テトラアルキルアンモニウムブロマイド、ピリジニウムブロマイド)を含むことができる。
【0027】
対向電極層は、色素増感太陽電池に通常用いられているものを使用することができ、特に限定されない。対向電極層は、透明でも不透明でも良い。具体的には、例えば上記透明電極の説明において挙げた材料の1種以上を使用することができる。
【0028】
対向電極層の表面抵抗は、約150Ω/□以下、約10Ω/□以下、または約5Ω/□以下とすることができる。
【0029】
対向電極層の厚さは、約10nm以上、約20nm以上、または約30nm以上とすることができ、約15000nm以下、約5000nm以下、約1000nm以下、または約500nm以下とすることができる。
【0030】
有機太陽電池層として、有機薄膜太陽電池を使用する場合、有機太陽電池層の構造は、例えば、一対のプラスチックフィルムに挟持された、透明電極、有機混合層、及び対向電極層とすることができる。
【0031】
一対のプラスチックフィルムは、色素増感型太陽電池の場合と同様の素材及び厚さのものを使用することができる。
【0032】
粘着剤層とは反対側のプラスチックフィルム基材、すなわち被着体とは反対側のプラスチックフィルム基材の表面は、必要に応じて、耐擦傷性向上などのために、耐擦傷性コーティングを施すことができる。或いはさらに、保護フィルムを積層することができる。保護フィルムとしては、意匠フィルムの分野で公知のプラスチックフィルムあるいは、コーティングを用いることができる。
【0033】
透明電極及び対向電極層は、有機薄膜太陽電池に通常用いられているものを使用することができ、特に限定されない。例えば、上述の色素増感型太陽電池を使用した場合と同様のものを使用することができる。これら電極の表面抵抗及び厚さは、上述の色素増感型太陽電池を使用した場合と同様とすることができる。
【0034】
有機混合層は、光電変換作用および意匠性に問題を生じなければ、材料の選択や配合は特に限定されず、通常、有機薄膜太陽電池に用いられるものを広く使用できる。
【0035】
本発明の太陽電池意匠フィルムは、一方のプラスチックフィルム基材の表面に粘着剤層を有する。
【0036】
粘着剤としては、従来公知の粘着剤を使用することができ限定されない。このような粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、またはポリウレタン系粘着剤などを挙げることができる。中でも、耐候性の観点からアクリル系粘着剤を好ましいものとして挙げることができる。
【0037】
粘着剤層の厚さは特に限定されず、従来ガラス飛散防止フィルムで採用されている厚さとすることができる。具体的には例えば、約5μm〜約500μm、または約15μm〜約500μmとすることができる。
【0038】
また粘着剤層は、ガラス破損時にガラスが飛び散らないために充分な接着力/粘着力を有するものを用いることができる。具体的には、JIS A5759に示された方法で、4.0N/25mm以上の剥離力を有するものを用いることができる。
【0039】
本発明の有機太陽電池層は意匠を構成することができる。かかる意匠は、本発明のフィルムの意匠性および発電機能を損なわなければ、特に制限無く適用することができる。
【0040】
意匠は、例えば有機太陽電池層として色素増感型太陽電池を用いる場合は、透明電極上または対向電極層上に光電極層を印刷することにより形成できる。また、有機太陽電池として有機薄膜太陽電池を用いる場合は、透明電極上または対向電極層上に有機混合層を印刷することにより形成できる。
【0041】
印刷は、従来公知の方法、例えばグラビア印刷、シルクスクリーン印刷等のスクリーン印刷、インクジェット印刷、または吹き付け塗装等の方法により行うことができる。印刷に用いられる、塗布、乾燥等の条件もフィルムの意匠性および発電機能を損なわなければ特に制限が無く、一般的にこれらの印刷方法で使用される条件を使用することができる。
【0042】
意匠としては、例えば、図3〜図6に示すようなものを使用することができるがこれらに限定されない。図3は、二辺がaである二等辺三角形をそれぞれの三角形の間隔をbとして繰り返して施した意匠である。a、bの長さは、意匠上の観点または起電力の観点から選択することができ特に限定されない。例えば、aを約5mm〜約100mm、bを約1mm〜約5mmとすることができる。図4は、縦がcで横がdの長方形を、縦方向の間隔をe、横方向の間隔をfとして配列した意匠である。c、d、e、及びfの長さは意匠上の観点または起電力の観点から選択することができ特に限定されない。例えば、cを約1mm〜約500mm、dを約0.5mm〜約300mm、eを約0.5mm〜約300mm、fを約0.5mm〜約100mmとすることができる。さらに、長方形からなる一定数の繰り返しパターンを一つのグループとして、そのグループの繰り返しパターンを配列することもできる。この場合、各グループの間隔gは、意匠上の観点または起電力の観点から選択することができ特に限定されないが、例えば、約5mm〜約200mmとすることができる。図5は、縦方向の直径がiで、横方向の直径がjである楕円を配列した意匠である。楕円同士の横方向の間隔をk、縦方向の間隔をlとすることができる。i、j、k、及びlの長さは意匠上の観点または起電力の観点から選択することができ特に限定されない。例えば、iを約5mm〜約100mm、jを約2mm〜約80mm、kを約10mm〜約300mm、lを約10mm〜約100mmとすることができる。図6は、底辺をm、高さをnとする三角形を配列した意匠である。m及びnの長さは意匠上の観点または起電力の観点から選択することができ特に限定されない。例えば、mを約10mm〜約300mm、nを約10mm〜約300mmとすることができる。
【0043】
有機太陽電池層によって発電される電力を高電圧または高電流等の用途に応じた電力として利用するために、意匠を構成する個々の模様同士は、並列または直列で接続することができるが、必要に応じて、並列接続部分と直列接続部分を同時に含んでもよい。
【0044】
接続は、上記透明電極層等による回路パターンなどによって行うことができる。
【0045】
本発明のガラス飛散防止発電フィルム全体の厚さは特に限定されないが、例えば約50μm〜約2000μm以下とすることができる。
【0046】
本発明のガラス飛散防止発電フィルムは、従来公知の方法、あるいは上記方法により製造した有機太陽電池層に、公知の方法により粘着剤層を積層して製造することができ特に限定されない。具体的には例えば、市販の透明電極層付きプラスチックフィルムに、ラミネータあるいは印刷により光電極層を作成し、続いて集電極層を積層しながら、同時にラミネートして電解液を封止する。光電極層を作成する際、印刷により所望の意匠を形成することができる。さらに、集電極層にプラスチックスフィルム基材をラミネートして太陽電池意匠フィルムの太陽電池層を得ることができる。続いて、最外層のプラスチックフィルム基材の一方の表面に、粘着剤層を形成して太陽電池意匠フィルムを製造することができる。
【0047】
本発明の太陽電池意匠フィルムは、車両、建築物、交通標識、包装材料、窓ガラスまたは看板等、太陽光や照明光等の光が当たる部分に貼付して使用することができる。より具体的には、壁、屋根、ドア、建築物または自動車の窓ガラス、室内仕切りガラス、室内用パーティション、または天井などを挙げることができる。また、ガラスの代替として用いられる、例えばアクリル、ポリエステル、ポリカーボネート等の樹脂製の板に貼付して、ガラスに貼付した場合と同様に使用することができる。
【0048】
本発明の一態様では、前記ガラス飛散防止発電フィルムと、ガラスとを積層した飛散防止発電ガラスを提供することができる。前記ガラスとしては、通常用いられる表面がほぼ平滑なガラスであればよく限定されない。例えば、壁面、屋根、またはドアに用いられるガラス、建築物または自動車の窓ガラス、室内仕切りガラス、室内用パーティション、または天井に用いられるガラスを挙げることができる。また、本態様において、ガラスの代わりに、例えばアクリル、ポリエステル、ポリカーボネート等の樹脂製の板を用いることもできる。
【0049】
飛散防止発電ガラスは、前記ガラス飛散防止発電フィルムの粘着剤層と、ガラスとをラミネートすることにより製造することが可能である。
【0050】
飛散防止発電ガラスは、壁面、屋根、またはドアのガラスとして、建築物または自動車の窓ガラスとして、室内仕切りガラスとして、室内用パーティションとして、または天井に用いられるガラスとして、太陽光や照明光等の光が当たる部分に取り付けて使用することができる。
【0051】
本発明の一態様では、前記太陽電池意匠フィルムと、この太陽電池意匠フィルムの太陽電池に接続された電流電圧変換制御回路と、蓄電器と、前記太陽電池及び/又は前記蓄電器及び/又は電流電圧変換制御回路と接続された接続端子とを含み、前記接続端子を介して他の機器に電力を供給し及び/又は充電することが可能であるシステムを提供することができる。
【0052】
このシステムは、図2に示すように、電力を出力する太陽電池意匠フィルムとこのフィルム外の部分からなり、フィルム外の部分は、コンデンサ、鉛蓄電池、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池等の蓄電部、および直流交流を変換するコンバーター、電圧値、電流値等を変換するインバーター、コンデンサ等を含む電流電圧変換制御回路、および入力出力部等の接続端子を含むことができる。
【0053】
これらの電池類、コンデンサ、コンバーター、インバーター、接続端子等には、特に制限が無く、一般に電気回路において使用されているものを、得ようとする電圧値、電流値、出力値または、蓄電用途などに合せて、適宜組み合わせて使用できる。例えば、太陽電池意匠フィルムの光発電によって得られる電力を、キャパシタに蓄電することもでき、また昇圧もしくは降圧の回路をもつインバーター等の電圧制御回路を通して、一定の電圧で出力できる。得られる電力は、直流であることができ、さらに、コンバーターをシステムに加えることによって、交流として出力することもできる。電圧は、用途に応じて、10V以上、20V以上、50V以上、100V以上など任意の電圧を選択できる。さらに、システムには、必要に応じてデバイス類(例、整流器、ダイオード、スイッチ)、光の効率的な利用のための光センサなどを加えることができる。
【0054】
また、接続端子は、市販の100V家庭用コンセント、携帯電話用充電プラグ等、会社内、家庭内において、使用される広範な接続端子とすることができる。
【実施例】
【0055】
実施例1
ガラス飛散防止発電フィルムの製造
プラスチックフィルムと透明電極の積層体(ペクセルテクノロジーズ(株)社製PECP−IP)に、スリーエム社製シルクスクリーン印刷機を用いて、80mm×8mm×6列のパターン(長方形)を湿潤膜厚125μmでシルクスクリーン印刷した。インクは、TiOインク(ペクセルテクノロジーズ(株)社製PECC−K1)を用いた。30分間自然乾燥した後、さらに乾燥機で乾燥した(150℃で30分)。
【0056】
続いて、Ru錯体色素(ペクセルテクノロジーズ(株)社製PECD−07)0.357gを、t−ブチルアルコール:エチルアルコール:アセトニトリル=25:25:50の溶媒1000mlに溶かした色素吸着液中に、浸漬(40℃120分)して、TiOの表面に色素を吸着させた後、アセトニトリルで洗浄し自然乾燥した。
【0057】
印刷面に、上記印刷パターン(80mm×8mm×6列の長方形)と同じ形を事前に切り抜いておいたホットメルトフィルム(スリーエム社製TBF−615)を、印刷パターンと切り抜きの形が合わさるようにして重ね、ヒートシールラミネーターにより接着した。
【0058】
続いて、印刷パターンが露出しているホットメルトフィルムの切り抜き部分に電解液(電荷輸送層、ペクセルテクノロジーズ(株)社製PECE−K01)をピペッターを用いて流し込みながら、対向電極層付きプラスチックフィルム(ペクセルテクノロジーズ(株)社製 対極触媒付フィルムPECF−CAT)を、ヒートシールラミネーターで接着して有機太陽電池層を得た。
【0059】
粘着剤(ビッグテクノス(株)社製 AR−2327)100質量部に、イソホロンジイソシアネート系架橋剤(ビッグテクノス(株)社製NV315E)1.0質量部を加えて、カウレスミキサーで攪拌後、厚さ25μmの剥離処理PETフィルム(東レフィルム加工(株)社製 セラピール)にナイフコーターを用いて、乾燥後の厚さが25μmとなるようにコーティングし、粘着剤層を作成した。
【0060】
得られた粘着剤層の表面と、上記で得られた有機太陽電池層の対向電極層付きプラスチックフィルムとをラミネートしてガラス飛散防止発電フィルムを得た。
【0061】
実施例2
ガラス飛散防止発電フィルムの特性測定
実施例1と同じ方法で、アクティブエリアが0.28cmのガラス飛散防止発電フィルムを作製し、以下の測定装置により、光量AM1.5、1SUNの条件で、変換効率(η)、開放電圧(VOC)、短絡電流密度(JSC)、及び曲線因子(FF)を測定した。
使用装置:
ソーラーシミュレータ:ペクセルテクノロジーズ株式会社製PEC−L11
IVカーブアナライザー:ペクセルテクノロジーズ株式会社製PECK2400−N
使用測定ソフト:
Peccell I−V curve analyzer(ペクセルテクノロジーズ株式会社製)
変換効率(η)は3.18%、開放電圧(Voc)は0.77V、短絡電流密度(Jsc)は6.46mA/cm、曲線因子(FF)は0.63であった。
【0062】
実施例3
電力利用システムの評価
実施例1で得たガラス飛散防止発電フィルムを組み合わせてモジュールとし、平均50mW/cm太陽光に曝したところDC14V 0.7Aを出力できた。逆流防止用のダイオードを介して、鉛蓄電池(12V/7.2Ah)に接続した。11.74Vの鉛蓄電池が8時間の連続露光によって、13.52Vまでの充電を行った。この充電によって、10W相当の電力を蓄えたことになる。
【0063】
実施例4
ガラス飛散防止試験
1.ガラス破壊試験
実施例1において得られたガラス飛散防止発電フィルムを窓用板ガラス(旭硝子(株)社製フロート板ガラス5mm、100mm×100mm)に貼り付けて試験用サンプルとした。このサンプルを、室温(25℃)で24時間放置後、板ガラスが上になるように水平に配置し、サンプルのガラス側から金槌で叩いてサンプルを破壊した。目視上ガラスは破壊されていたが、太陽電池と粘着剤で保持されている部分のガラスは剥離することなく、被着されていることが確認された。
2.剥離強さ測定試験
実施例1において得られた粘着剤付き太陽電池意匠フィルムを板ガラス(旭硝子(株)社製フロート板ガラス)5mm×200mm×150mmに貼り付けた。室温(25℃)で24時間放置後、テンシロン型引っ張り試験機により、引っ張り速さ300mm/分により引き剥がして剥離粘着強さを測定した。この測定値から25mm幅あたりの剥離粘着強さを求めたところ4.4N/25mmであった。
【符号の説明】
【0064】
1 プラスチックフィルム層
2 透明電極層
3 光電極層
4 電荷輸送層
5 対向電極層
6 接着剤層
7 プラスチックフィルム層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のプラスチックフィルムと、
前記一対のプラスチックフィルム間に形成された電池部を含む有機太陽電池層と、
前記太陽電池層に積層された粘着剤層とを含むガラス飛散防止発電フィルムであって、
前記一対のプラスチックフィルムが、厚さ50μm以上の、ポリエチレンテレフタレートフィルムまたはポリエチレンナフタレートフィルムを含むガラス飛散防止発電フィルム。
【請求項2】
前記有機太陽電池層が、意匠を構成している請求項1に記載のガラス飛散防止発電フィルム。
【請求項3】
前記粘着剤層が、アクリル系粘着剤を含む請求項1または2に記載のガラス飛散防止発電フィルム。
【請求項4】
前記有機太陽電池層が、色素増感型太陽電池または有機薄膜太陽電池のいずれかである含む請求項1〜3のいずれか一項に記載のガラス飛散防止発電フィルム。
【請求項5】
前記有機太陽電池層が、色素増感型太陽電池である請求項1〜4のいずれか一項に記載のガラス飛散防止発電フィルム。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のガラス飛散防止発電フィルムと、ガラスとを積層した飛散防止発電ガラス。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のガラス飛散防止発電フィルムと、前記ガラス飛散防止発電フィルムの有機太陽電池層に接続された電流電圧変換制御回路と、蓄電器と、前記有機太陽電池及び/又は前記蓄電器及び/又は電流電圧変換制御回路と接続された接続端子とを含み、前記接続端子を介して他の機器に電力を供給し及び/又は充電することが可能な電力利用システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−49499(P2011−49499A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−198912(P2009−198912)
【出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】