説明

ガラス

【課題】Pb、Ge、Ga等の酸化物、もしくはフッ素などのハロゲン成分を含まずとも、または、Sn、Cuの酸化物を多量に含まずとも、耐水性に優れ、封着時またはその後の熱処理においても結晶化しにくく、低い封着温度および所望の膨張係数を実現でき、Tgが450℃以下の封着等に適したガラスを提供する。
【解決手段】 酸化物基準のモル%表示で、30%〜55%のP、10%〜40%のZnO、0.01%〜30%のAl、0%〜30%のRO(但し、RはLi、Na、K、Csから選ばれる一種以上)の各成分を含有し、酸化物基準のモル%で表されたAl/ Pの比の値が0.01以上1以下であることを特徴とするガラス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光発電装置や半導体発光素子、MEMS、ICセラミックスパッケージ,水晶振動子,画像表示装置等の各種部品の封着等に適用できるガラス組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品やガラス部品等を封着、接着または被覆(以下、「封着等」という)するためのガラス質の封着材には、封着等の後の気密性を維持するため、良好な化学的耐久性が求められる。また、封着等の作業を行う際、ガラス質の封着材が充分に軟化し流動する温度、すなわち封着温度まで加熱しなければならないため、たとえば、電子部品等を気密封着する場合、電子部品の回路や基板等に熱によるダメージを与えないように、封着材の封着温度は、より低温であることが望まれている。さらに、強固な接着力を持たせるためには、封着材と封着等される部品等を構成する材料との接着強度が強く、かつ、封着材とそれらの材料の熱膨張係数(α)ができるだけ近似していることが必要となる。各種電子部品等に使用される基板やディスプレイパネル等の被封着部品は、一般的なガラスよりも熱膨張係数が小さいことが多いため、封着材としてのガラスは、一般的なガラスよりも熱膨張係数を小さくすることが求められる。
また最近では、工程設計の要請から、封着の熱処理工程が温度や時間などを変更し、数回または多段階にわたることがある。この場合、後段の熱処理において封着ガラスが結晶化(失透)し、封着が完全になされない等の問題が生ずることがある。このため、結晶化しにくいことが要求される。
【0003】
ところで、ガラスの熱膨張係数を小さくするということは、ガラスの原子レベルの結合を強くすることであり、結合が強くなれば、ガラスの封着温度が上がってしまい、前記の封着材の封着温度を低下させることと相反することとなる。したがって、ガラス質の封着
材により、熱膨張係数が小さい材料を低温で、封着等するのは困難とされてきた。この困難を克服し、上記要求を満たすため、種々の低温軟化ガラス、すなわちガラス転移点(Tg)が低いガラスが封着材として開発されてきた。特に、従来、PbO−B系の低融点ガラスを用いた封着材は、ディスプレイパネルの封着や、ブラウン管のパネルとファンネルとの封着に広く一般に使用されてきた。しかし、鉛は環境等に対し好ましくない影響を与える成分であるため、PbO成分を含有するガラスの製造や廃棄物処理には、排水の水質検査や廃棄物の分別処理等が必要とされ、環境対策のために高いコストを要するので、鉛を含有しない封着材が望まれている。
【0004】
特許文献1ではでは、P−Sn−O−F系ガラスの開示がされているが、錫や銅を多く含む低融点ガラスは還元雰囲気中で製造する必要があり、製造コストが高くなる。また、加熱中に価数変化が起こりやすいため、封着作業の際に周囲の金属や酸素と反応してしまい、結晶化などが起こり、緻密な封着ができない要因となる。特に多段階で熱処理を行う封着には不向きである。
さらに、フッ素などのハロゲン元素は揮発性が高く、有害であるため、環境などに対して好ましくない。封着の際にも、ハロゲン元素の揮発による組成変動によって、封着材の物性が変化してしまい、劣化や周囲の金属を腐食する要因となる。
【0005】
特許文献2には、鉛を含有しない低融点ガラスとして、TeO−GeO−B系のガラスが開示されているが、このガラスは、モル%表記でTeOが40%以上含有することを必須としており、また微量成分ながらGeOやGaを含有している。これらの成分は単価が高く製造する上で不向きである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−48574号公報
【特許文献2】特開2007−96257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、Pb、Ge、Ga等の酸化物、もしくはフッ素などのハロゲン成分を含まずとも、または、Sn、Cuの酸化物を多量に含まずとも、耐水性に優れ、封着時またはその後の熱処理においても結晶化しにくく、低い封着温度および所望の膨張係数を実現でき、Tgが450℃以下の封着等に適したガラスを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は上記の課題に鑑み、鋭意研究を重ねた結果、P−ZnO系の組成に、特定量のRO成分(但し、RはLi、Na、K、Csから選ばれる一種以上)を導入し、さらに酸化物基準のモル%で表されたAlO3/Pの比の値を0.01以上1以下とすることによって、上記の課題を解決するガラスを見いだし、この発明を完成したものであり、その具体的な構成は以下の通りである。
【0009】
(構成1)
酸化物基準のモル%表示で、
30%〜55%のP
10%〜40%のZnO、
0.01%〜30%のAl
0%〜30%のRO(但し、RはLi、Na、K、Csから選ばれる一種以上)
の各成分を含有し、酸化物基準のモル%で表されたAl/ Pの比の値が0.01以上1以下であることを特徴とするガラス。
(構成2)
酸化物基準のモル%表示で、
0%〜15%のSiOおよび/または、
0%〜30%のAlおよび/または、
0%〜30%のBおよび/または、
0%〜20%のMgOおよび/または、
0%〜20%のCaOおよび/または、
0%〜20%のSrOおよび/または、
0%〜20%のBaOおよび/または、
0%〜30%のZrOおよび/または、
0%〜30%のTiO
の各成分を含有する構成1に記載のガラス。
(構成3)
酸化物基準のモル%表示で、
0%〜20%のBiおよび/または、
0%〜20%のTeOおよび/または、
0%〜20%のCuOおよび/または、
0%〜5%のLaおよび/または、
0%〜5%のYおよび/または、
0%〜5%のGdおよび/または、
0%〜10%のWOおよび/または、
0%〜10%のMoOおよび/または、
0%〜5%のNb
の各成分を含有する構成1または2に記載のガラス。
(構成4)
Tgが450℃以下および結晶化温度が500℃以上で、60分間に亘る沸騰水への浸漬後の質量減量率が0.60wt%より小さいことを特徴とする構成1〜3のいずれかに記載のガラス。
(構成5)
平均線熱膨張係数が30℃〜250℃において、150×10−7/℃以下であることを特徴とする構成1〜4のいずれかに記載のガラス。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、Pb、Ge、Ga等の酸化物、もしくはフッ素などのハロゲン成分を含まずとも、または、Sn、Cuの酸化物を多量に含まずとも、上記課題を解決するこおとができ、特に以下の効果を得ることができる。
【0011】
本発明によれば、Tgが450℃以下のガラスを得ることができる。
【0012】
本発明のガラスは30℃〜250℃における平均線膨張係数が150×10−7/℃以下であり、炭素鋼やステンレス鋼(SUS410)、硬質ガラスと熱膨張係数が近似している為、合金同士や合金とガラスを封着等するのに適している。
【0013】
本発明のガラスの結晶化温度は500℃以上であり、封着時やその後の熱処理工程においても結晶化しにくい。
【0014】
また、本発明によれば耐水性にすぐれ、60分間に亘る沸騰水への浸漬後の質量減量率が0.60wt%より小さいガラスを得ることができる。
【0015】
なお、上記試験は、次の要領で行う。測定対象のガラスを鉄乳鉢で、粒度425〜600μmに破砕し、比重の3〜4倍のグラム量を採取する。採取したガラス粉末中に混入している鉄粉を磁石で取り除き、ガラス粉末を50mlビーカーに移し入れ、メチルアルコールを加えて全量を約30mlとし、ガラス棒にて攪拌し、傾斜法によってガラス微粉を除去する。この洗浄を5回繰り返した後、吸引ろ過ポンプを用いて、ガラスろ過器(1Gフィルター)でろ過する。ろ過器中のガラス粉末を、乾燥機(110〜120℃)で60分間乾燥後、シリカゲルデシケーター中で放冷する。乾燥したガラス試料の質量を正確に秤量した後、比重ビンにとり、白金かごの中に入れる。白金かごを純水(pH6.5〜7.5)の入った石英ガラス製丸底フラスコに入れて、沸騰水浴中で60分間処理する。処理後に白金かごをメチルアルコールの入ったビーカーに移しいれ、洗浄する。洗浄後、秤量ビンに入れ、乾燥器(110〜120℃)で60分間乾燥する。乾燥後、シリカゲルデシケーターで60分間放冷した後、質量を測定する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施例5のDTAの測定結果である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明について説明する。
なお、本明細書中において「酸化物基準のモル%表示」とは、本発明のガラス構成成分の原料として使用される酸化物、複合塩、金属弗化物等が熔融時にすべて分解され酸化物へ変化すると仮定して、当該生成酸化物のモル%によってガラス中に含有される各成分を表記する方法である。
【0018】
成分はガラス骨格を形成する成分であり、必須成分である。P成分の含有量は30%未満ではガラス化が困難であり、また封止する際の加熱によって結晶化しやすくなる。この問題を克服するためにP成分の含有量は30%以上が好ましく、33%以上がより好ましく、35%以上が最も好ましい。
成分の含有量が55%を超えると化学的耐久性が悪くなり、また粘性も大きくなるために低温での封止が困難となる。この問題を克服するためにP成分の含有量は55%が好ましく、より好ましくは50%以下であり、最も好ましくは43%以下である。
【0019】
Al成分は、ガラス骨格を形成することができ、化学的耐久性を向上させ、また、ガラスを安定化するのに有効な成分であり、必須成分である。酸化物基準のモル%で表されたPに対するAlと成分の含有量の比(以下、「Al/P比」という)が0.01未満では化学的耐久性が著しく悪化し、例えばペースト状で使用する際に、溶媒にガラスの成分が溶出してしまい、封着ができなくなってしまう。さらに、封着後に周囲の物質と反応し劣化してしまう要因となる。従ってこの問題を克服するために、Al/P比は0.01以上が好ましく、より好ましくは0.02以上であり、最も好ましくは0.05以上である。
Al/P比が1より多いとガラス化しづらくなるとともに粘性が著しく高くなり、Tg(ガラス転移点)が高くなり、封着する際の作業温度が高くなる。Al/P比はより小さいほうが封着温度が低くなり工業的に有効であるが、同時に化学的耐久性が悪化してしまうため、好ましくは1以下であり、より好ましくは0.5以下であり、最も好ましくは0.3以下である。
【0020】
Al成分の含有量が30%よりも多いとガラスが失透してしまうとともに粘性が高くなってしまう。従ってこの問題を克服するために、Al成分の含有量は30%以下が好ましく、20%以下がより好ましく、12%以下が最も好ましい。一方、Al成分の含有量が0.01%未満であると、ガラス骨格が不安定になり、ガラス成分の溶出や化学的耐久性の悪化が著しくなる。この問題を克服するために、Al成分の含有量は0.01%以上が好ましく、1%以上がより好ましく、2.5%以上が最も好ましい。
【0021】
ZnO成分は溶融性および化学的耐久性を向上させる効果がある成分であり、必須成分である。ただし含有量が40%より多いとガラスが失透しやすくなる。その為、ZnO成分の含有量は40%以下が好ましく、37%以下がより好ましく、34%以下が最も好ましい。一方、ZnO成分の含有量が10%未満であると、ガラス化しづらくなるとともに粘性およびTgが高くなり、封着温度が高くなる。さらに、封着する際に結晶化してしまい気密な封着ができなくなる。この問題を克服するために、ZnO成分の含有量は10%以上が好ましく、20%以上がより好ましく、25%以上が最も好ましい。
【0022】
O(但し、RはLi、Na、K、Csから選ばれる一種以上)成分は、溶融性を向上させ、Tgを低くする成分であり、任意で含有させることのできる成分である。ただし、これらの成分の合計量が30%よりも多いと化学的耐久性が著しく悪くなり、また封止の際の熱処理によって結晶化しやすくなる。従ってこの問題を克服するために、これらの成分の合計量は30%以下が好ましく、27%以下がより好ましく、25%以下が最も好ましい。
【0023】
LiO成分は、溶融性を向上させ、Tgを低くする成分であり、任意で含有させることのできる成分である。ただし、含有量が30%よりも多いと化学的耐久性が著しく悪くなり、また封止の際の熱処理によって結晶化しやすくなる。従ってこの問題を克服するために、含有量は30%以下が好ましく、25%以下がより好ましく、15%以下が最も好ましい。
上述の通り、LiO成分は溶融性を向上させ、Tgを低くする成分であるが、溶出しやすく化学的耐久性を悪化させる成分である。そのため、KやBaなどイオン半径の大きい成分と混合させ、LiO成分の溶出を抑制したほうがよい(混合アルカリ効果)。したがって、KOまたは/およびBaOの含有量に対するLiOの含有量の比、(「LiO/(KO+BaO)比}という」が好ましくは30以下であり、より好ましくは10以下であり、最も好ましくは5以下である。
【0024】
NaO成分は、溶融性を向上させ、Tgを低くする成分であり、任意で含有させることのできる成分である。ただし、含有量が30%よりも多いと化学的耐久性が著しく悪くなり、また封止の際の熱処理によって結晶化しやすくなる。従ってこの問題を克服するために、含有量は30%以下が好ましく、25%以下がより好ましく、15%以下が最も好ましい。
【0025】
O成分は、溶融性を向上させ、Tgを低くする成分であり、任意で含有させることのできる成分である。ただし、含有量が30%よりも多いと化学的耐久性が著しく悪くなり、また封止の際の熱処理によって結晶化しやすくなる。従ってこの問題を克服するために、含有量は30%以下が好ましく、25%以下がより好ましく、15%以下が最も好ましい。
【0026】
CsO成分は、溶融性を向上させ、Tgを低くする成分であり、任意で含有させることのできる成分である。ただし、含有量が30%よりも多いと化学的耐久性が著しく悪くなり、また封止の際の熱処理によって結晶化しやすくなる。従ってこの問題を克服するために、含有量は30%以下が好ましく、25%以下がより好ましく、15%以下が最も好ましい。
【0027】
SiO成分はガラス骨格を形成することが可能な成分であり、ガラスを安定化させ、化学的耐久性を向上させる成分であるので、任意成分であるが、含有することが好ましい。
SiO成分の含有量が15%よりも多いとガラスが分相し、失透するとともに粘性が高くなる。従って、SiO成分の含有量は15%以下が好ましく、10%以下がより好ましく、6%以下が最も好ましい。
【0028】
成分はSiO成分と同様にガラス骨格を形成しうる成分であり、溶融性を向上させ、ガラスを安定化させる効果がある為、任意で含有できる成分である。しかし、この成分の含有量が30%を超えると化学的耐久性が悪化するとともに失透しやすくなる。従って、B成分の含有量の上限は30%以下とすることが好ましく、15%以下とすることがより好ましく、6%以下とすることが最も好ましい。
【0029】
SiO成分およびB成分は、上述の通りガラス骨格を形成しうる成分であり、ガラスを安定化させ化学的耐久性を向上させる成分であるため、任意で含有できる成分である。
しかし、これらの成分の含有量(SiO+B)の合計が30%を超えると分相し、失透しやすくなってしまう。そのため、これらの成分の含有量の合計は、好ましくは30%以下であり、より好ましくは15%以下であり、最も好ましくは5%以下である。
【0030】
MgO成分はガラスを安定にし、溶融性を向上させる成分であり、任意で含有することができる。ただし含有量が20%より多いと化学的耐久性が悪化するとともに、ガラスが失透しやすくなる。その為MgO成分の含有量は20%以下が好ましく、12%以下がより好ましく、8%以下が最も好ましい。
【0031】
CaO成分はガラスを安定にし、溶融性を向上させ、耐久性を向上させる成分であり、任意で含有することができる。ただし含有量が20%より多いと化学的耐久性が悪化するとともに、ガラスが失透しやすくなる。その為CaO成分の含有量は20%以下が好ましく、12%以下がより好ましく、8%以下が最も好ましい。
【0032】
SrO成分はガラスを安定にし、溶融性を向上させる成分であり、任意で含有することができる。ただし含有量が20%より多いと化学的耐久性が悪化するとともに、ガラスが失透しやすくなる。その為SrO成分の含有量は20%以下が好ましく、12%以下がより好ましく、8%以下が最も好ましい。
【0033】
BaO成分はガラスを安定にし、溶融性を向上させる成分であり、任意で含有することができる。ただし含有量が20%より多いと化学的耐久性が悪化するとともに、ガラスが失透しやすくなる。その為BaO成分の含有量は20%以下が好ましく、12%以下がより好ましく、8%以下が最も好ましい。
【0034】
TiO成分は耐久性を向上させる成分であり、任意で含有することができる。ただし含有量が30%より多いとガラスが失透しやすくなる。その為TiO成分の含有量は30%以下が好ましく、22%以下がより好ましく、15%以下が最も好ましい。
【0035】
ZrO成分は耐久性を向上させる成分であり、任意で含有することができる。ただし含有量が30%より多いと著しくガラスが失透しやすくなる。その為ZrO成分の含有量は30%以下が好ましく、22%以下がより好ましく、10%以下が最も好ましい。
【0036】
Bi成分はガラスを安定にし、溶融性を向上させる成分であり、任意で含有することができる。ただし含有量が20%より多いと化学的耐久性が悪化するとともに、ガラスが失透しやすくなる。その為Bi成分の含有量は20%以下が好ましく、12%以下がより好ましく、8%以下が最も好ましい。
【0037】
TeO成分はガラスを安定にし、溶融性を向上させる成分であり、任意で含有することができる。ただし含有量が20%より多いと化学的耐久性が悪化するとともに、ガラスが失透しやすくなる。その為TeO成分の含有量は20%以下が好ましく、12%以下がより好ましく、8%以下が最も好ましい。
【0038】
CuO成分はガラスを安定にし、溶融性を向上させる成分であり、任意で含有することができる。ただし含有量が20%より多いと化学的耐久性が悪化するとともに、ガラスが失透しやすくなる。その為CuO成分の含有量は20%以下が好ましく、12%以下がより好ましく、8%以下が最も好ましい。
【0039】
La成分は耐久性を向上させる成分であり、任意で含有することができる。ただし含有量が5%より多いと著しくガラスが失透しやすくなる。その為La成分の含有量は5%以下が好ましく、3%以下がより好ましく、1%以下が最も好ましい。
【0040】
成分は耐久性を向上させる成分であり、任意で含有することができる。ただし含有量が5%より多いと著しくガラスが失透しやすくなる。その為Y成分の含有量は5%以下が好ましく、3%以下がより好ましく、1%以下が最も好ましい。
【0041】
Gd成分は耐久性を向上させる成分であり、任意で含有することができる。ただし含有量が5%より多いと著しくガラスが失透しやすくなる。その為Gd成分の含有量は5%以下が好ましく、3%以下がより好ましく、1%以下が最も好ましい。
【0042】
WO成分は融解性を向上させる成分であり、任意で含有することができる。ただし含有量が10%より多いと著しくガラスが失透しやすくなる。その為WO成分の含有量は10%以下が好ましく、8%以下がより好ましく、5%以下が最も好ましい。
【0043】
MoO成分は融解性を向上させる成分であり、任意で含有することができる。ただし含有量が10%より多いと著しくガラスが失透しやすくなる。その為MoO成分の含有量は10%以下が好ましく、8%以下がより好ましく、5%以下が最も好ましい。
【0044】
Nb成分は耐久性を向上させる成分であり、任意で含有することができる。ただし含有量が5%より多いと著しくガラスが失透しやすくなる。その為Nb成分の含有量は5%以下が好ましく、3%以下がより好ましく、1%以下が最も好ましい。
【0045】
SnO成分はガラスを安定にし、溶融性を向上させる成分であり、任意で含有することができる。ただし含有量が20%より多いと化学的耐久性が悪化するとともに、ガラスが失透しやすくなる。その為SnO成分の含有量は20%以下が好ましく、12%以下がより好ましく、8%以下が最も好ましい。
【0046】
Tgが450℃を超えるガラスは封着温度が高くなってしまい電子部品等を破損させる要因となる。そのため、Tgは450℃以下が好ましく、420℃以下がより好ましく、400℃以下が最も好ましい。
【0047】
結晶化温度(Tx)が500℃よりも低いと封着作業中に結晶化してしまい気密な封着ができなくなる。そのため、Txは500以上が好ましく、550℃以上がより好ましく、600℃以上が最も好ましい。
【0048】
60分間に亘る沸騰水への浸漬後の質量減量率が0.60wt%以上である場合、例えばペースト状にした際にガラスが溶出してしまい封着ができなくなる。また、封着後周囲の物質と反応したり、空気中の水蒸気と反応したりすることにより劣化してしまう。そのため、60分間に亘る沸騰水への浸漬後の質量変化量が0.60wt%よりも小さいことが好ましく、0.25wt%より小さいことがより好ましく、0.1wt%より小さいことが最も好ましい。
【0049】
平均線熱膨張係数が30℃〜250℃において、150×10−7/℃を越えると炭素鋼や硬質ガラスとの熱膨張差が大きくなってしまい、破損や気密封止ができない要因となる。そのため、平均線熱膨張係数が30℃〜250℃において、150×10−7/℃以下が好ましく、140×10−7/℃以下がより好ましく、130×10−7/℃以下が最も好ましい。
【実施例】
【0050】
以下、本発明に係るガラスについて、具体的な実施例を挙げて説明する。
【0051】
[ガラスの作製]
ガラスが酸化物基準のモル%で表わされた表1〜2に示す組成比となるように、珪砂、硼酸、第二リン酸アンモニウム、酸化アルミニウム、メタリン酸アルミニウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、第一リン酸ソーダ、炭酸カリウム、リン酸二水素カリウム、酸化亜鉛、メタリン酸亜鉛、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、炭酸ストロンチウム、硝酸ストロンチウム、炭酸バリウム、硝酸バリウム、メタリン酸バリウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、二酸化テルル、酸化銅、酸化ビスマス、酸化タングステン、酸化錫、酸化ランタン、酸化鉄、酸化イットリウム、酸化ガドリニウム、酸化モリブデン、酸化ニオブ、亜砒酸、五酸化アンチモン等のガラス原料バッチを調製した。ガラス原料バッチはアルミナるつぼ、石英るつぼ、または白金坩堝へ充填し、電気炉により1000℃〜1400℃の温度で1〜4時間加熱溶融した。溶融したガラスを板状に成型し徐冷した。
【0052】
[ガラスの測定]
作製したガラスについて、ガラス転移点(Tg)、結晶化温度(Tx)、30℃〜250℃における平均線熱膨張係数、ガラスの化学的耐久性(耐水性及び耐酸性)および粘度の測定を行った。その結果を表1〜3に示す。
【0053】
(ガラス転移点)
ガラス転移点(Tg)および結晶化温度(Tx)については、示差熱分析装置(DTA) で昇温速度を10℃/分にして測定した。結晶化ピークが明確に観察されなかったサンプルに関しては、“―”で表記し、結晶化しづらいガラスと評価した。
【0054】
(熱膨張係数)
作製したガラスについてJOGIS(日本光学硝子工業会規格)16−2003「光学ガラスの常温付近の平均線膨張係数の測定方法」に則り、温度範囲を30℃から250℃の範囲に換えて平均線膨張係数を測定した。測定した平均線膨張係数(α)の値を表1〜3に示す。
【0055】
(化学的耐久性)
化学的耐久性(耐水性及び耐酸性)については、日本光学硝子工業会規格「光学ガラスの化学的耐久性の測定方法」JOGIS06−1999に準じて測定した。
【0056】
(耐水性の測定)
ガラスを鉄乳鉢で、粒度425〜600μmに破砕し、比重の3〜4倍のグラム量を採取する。採取したガラス粉末中に混入している鉄粉を磁石で取り除き、ガラス粉末を50mlビーカーに移し入れ、メチルアルコールを加えて全量を約30mlとし、ガラス棒にて攪拌し、傾斜法によってガラス微粉を除去する。この洗浄を5回繰り返した後、吸引ろ過ポンプを用いて、ガラスろ過器(1Gフィルター)でろ過する。ろ過期中のガラス粉末を、乾燥機(110〜120℃)で60分間乾燥後、シリカゲルデシケーター中で放冷する。乾燥したガラス試料の質量を正確に秤量した後、比重ビンにとり、白金かごの中に入れる。白金かごを純水(pH6.5〜7.5)の入った石英ガラス製丸底フラスコに入れて、沸騰水浴中で60分間処理した。処理後に白金かごをメチルアルコールの入ったビーカーに移しいれ、洗浄する。洗浄後、秤量ビンに入れ、乾燥器(110〜120℃)で60分間乾燥する。乾燥後、シリカゲルデシケーターで60分間放冷した後、質量を測定し、ガラス試料の減量率(wt%)を算出して、減量率(wt%)が0.05未満の場合をクラス1、減量率が0.05〜0.10未満の場合をクラス2、減量率が0.10〜0.25未満の場合をクラス3、減量率が0.25〜0.60未満の場合をクラス4、減量率が0.60〜1.10未満の場合をクラス5、減量率が1.10以上の場合をクラス6としたものであり、クラスの数が小さいほど、ガラスの耐水性が優れていることを意味する。
【0057】
(耐酸性の測定)
ガラスを鉄乳鉢で、粒度425〜600μmに破砕し、比重の3〜4倍のグラム量を採取する。採取したガラス粉末中に混入している鉄粉を磁石で取り除き、ガラス粉末を50mlビーカーに移し入れ、メチルアルコールを加えて全量を約30mlとし、ガラス棒にて攪拌し、傾斜法によってガラス微粉を除去する。この洗浄を5回繰り返した後、吸引ろ過ポンプを用いて、ガラスろ過器(1Gフィルター)でろ過する。ろ過期中のガラス粉末を、乾燥機(110〜120℃)で60分間乾燥後、シリカゲルデシケーター中で放冷する。乾燥したガラス試料の質量を正確に秤量した後、比重ビンにとり、白金かごの中に入れる。白金かごを0.01N硝酸水溶液の入った石英ガラス製丸底フラスコに入れて、沸騰液浴中で60分間処理した。処理後に白金かごをメチルアルコールの入ったビーカーに移しいれ、洗浄する。洗浄後、秤量ビンに入れ、乾燥器(110〜120℃)で60分間乾燥する。乾燥後、シリカゲルデシケーターで60分間放冷した後、質量を測定し、ガラス試料の減量率(wt%)を算出して、減量率(wt%)が0.20未満の場合をクラス1、減量率が0.20〜0.36未満の場合をクラス2、減量率が0.35〜0.65未満の場合をクラス3、減量率が0.65〜1.20未満の場合をクラス4、減量率が1.20〜2.20未満の場合をクラス5、減量率が2.20以上の場合をクラス6としたものであり、クラスの数が小さいほど、ガラスの耐酸性が優れていることを意味する。
【0058】
(粘度の測定)
精密切断機および円小径穴あけ機を用いてφ7mm×7mmtのガラスサンプルとする。硝子平行板粘度測定装置を用いてlogη=5〜9poiseにおける粘度測定を行った。測定したlogη=5のときの温度を表1〜3に記載した。



































【0059】
【表1】























【0060】
【表2】












【0061】
【表3】

【0062】
表1〜3に示すとおり、本発明の実施例の低融点ガラスは、30〜250℃の温度範囲において、107〜138×10−7/℃の範囲の熱膨張係数(α)を有しており、表3に示した比較例と比べて、一段と小さく、ステンレス鋼や硬質ガラスの熱膨張係数(約85〜107×10−7/℃)に近似または同等の熱膨張係数を有している。また、耐水性も、1級〜4級と低い。したがって、半導体発光素子や太陽光発電装置のように小さい熱膨張係数を有し、かつ、低温で封着することが望ましい電子部品等の封着等に用いるのに好適である。
【0063】
また、実施例5のDTA測定結果を図1に示す。測定結果から本実施例のTgは340℃と認められる。従来の封着用ガラスはTgから60℃〜150℃高温の領域に結晶化ピークが現れるが、本実施例のガラスは明確な結晶化ピークが観察されなかった。すなわち、本発明のガラスは結晶化しにくいガラスと言える。
【0064】
以上、説明したように本発明にかかるガラスは、低いガラス転移点(Tg)を有し、電子部品等を低温で、封着等することができ、化学的に安定で接着強度および化学的耐久性が優れている。また、フッ素成分を含有する必要がないことから、電子部品等の封着等に使用しても、その品質に悪影響を及ぼすことがないため、電子部品等の信頼性を高めることができる。さらに、鉛を含有しないため環境対策等にコストを要しない利点がある。また、本発明にかかるガラスは、上記効果に加えて、低い封着温度を維持しつつ、半導体発光素子や太陽光発電装置のように小さい熱膨張係数を有する材料を低温で、電子部品の回路や基板等に熱によるダメージを与えることなく、封着等することが可能であり、接着強度および機械的強度をより高める効果も奏する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化物基準のモル%表示で、
30%〜55%のP
10%〜40%のZnO、
0.01%〜30%のAl
0%〜30%のRO(但し、RはLi、Na、K、Csから選ばれる一種以上)
の各成分を含有し、酸化物基準のモル%で表されたAl/ Pの比の値が0.01以上1以下であることを特徴とするガラス。
【請求項2】
酸化物基準のモル%表示で、
0%〜15%のSiOおよび/または、
0%〜30%のAlおよび/または、
0%〜30%のBおよび/または、
0%〜20%のMgOおよび/または、
0%〜20%のCaOおよび/または、
0%〜20%のSrOおよび/または、
0%〜20%のBaOおよび/または、
0%〜30%のZrOおよび/または、
0%〜30%のTiO
の各成分を含有する請求項1に記載のガラス。
【請求項3】
酸化物基準のモル%表示で、
0%〜20%のBiおよび/または、
0%〜20%のTeOおよび/または、
0%〜20%のCuOおよび/または、
0%〜5%のLaおよび/または、
0%〜5%のYおよび/または、
0%〜5%のGdおよび/または、
0%〜10%のWOおよび/または、
0%〜10%のMoOおよび/または、
0%〜5%のNb
の各成分を含有する請求項1または2に記載のガラス。
【請求項4】
Tgが450℃以下および結晶化温度が500℃以上で、60分間に亘る沸騰水への浸漬後の質量減量率が0.60wt%より小さいことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のガラス。
【請求項5】
平均線熱膨張係数が30℃〜250℃において、150×10−7/℃以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のガラス。












【図1】
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【公開番号】特開2012−72040(P2012−72040A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−220261(P2010−220261)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000128784)株式会社オハラ (539)
【Fターム(参考)】