説明

ガリウムドープ石英ガラス製の光学フィルタ材料、フィルタ部品及びUV線源を用いて照射する方法

本発明は、低ドーパント濃度で、254nmの動作放射線に対する少なくとも80%/cmの可能な限り高いスペクトル透過率、およそ250nm未満の波長範囲における可能な限り低い透過率及び230nm〜250nmの波長範囲内の端波長λCを示すドープ石英ガラス製の光学フィルタ材料に関する。250nm未満の波長範囲において吸収帯の極大を有し、したがって端波長λCを決定するガリウム化合物を含むドーピングによりこの目的が達成されることが見出された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、254nmの波長の動作UV線に対して少なくとも80%/cmのスペクトル透過率を示し且つ230nm〜250nmの波長範囲に端波長λCを有するドープ石英ガラス製の光学フィルタ材料に関する。
【0002】
さらに、本発明は、254nm前後の波長の動作放射線を放出すると共に、該動作放射線に対して少なくとも80%/cmのスペクトル透過率を示し且つ230nm〜250nmの波長範囲に端波長λCを有するドープ石英ガラスのフィルタ材料を通過するUV線源を用いて表面、液体又は気体に照射する方法に関する。
【0003】
さらに、本発明は、該フィルタ材料からなる光学部品にも関する。
【背景技術】
【0004】
純粋な石英ガラスは、UVC〜VUVの範囲より上及びその中の波長範囲のUV線に対して透過性であるため、UV光源のためのランプ材料として好ましく使用される。このようなランプは多くの場合、動作UV線だけでなく、オゾンの形成を引き起こして健康に有害であることがあるか又は近くの部品、特にプラスチック製の部品の経年劣化を誘発することがあるより短波の紫外線の一部を放出する。
【0005】
この観点で、食品、表面及び特に液体を滅菌するためにUV線を使用する用途によりさらなる課題が提示されている。ここでは、滅菌対象の素材中に存在する硝酸塩からの有害な亜硝酸塩の光分解性形成を促進する短波UV線が使用されている。波長が(約270nmから開始して)減少すると、窒化物の形成はおよそ線形的に増大する。水の滅菌のためには、254nmの波長の動作放射線を有する水銀ランプが使用されることが多く、このようなランプは185nm前後のUVC〜VUV波長範囲における輝線も示す。適切な動作放射線より短いUV波長範囲は、窒化物の形成を特にもたらしやすい。
【0006】
したがって発光スペクトルにおけるUV線の望ましくない部分は、出来る限り除去しなければならない。UV線を吸収する物質を石英ガラスにドープすることにより、250nm未満のUV線に対する阻止帯(Sperrbereich)を伴うフィルタ効果を作り出すことができる。石英ガラス中のドーパントとして約200nmに吸収極大を有する吸収帯を生成する二酸化チタンが、この意味で好適な物質であることが判明している。155重量ppmのチタン含有量(及び0.5cmの被照射層厚)では、このフィルタ材料の内部透過率は254nmの動作波長に対して約90%であり、端波長は235nm前後である(図1の曲線9により示されるように)。端波長λCは、阻止帯と透過帯との間のスペクトルの純粋な透過係数が最大値の半分である波長に対応する。
【0007】
しかしながら、Tiドープ石英ガラスの吸収は254nmの動作波長まで大幅に減少し、その結果、一方ではこの波長範囲における顕著な吸収を達成するために高濃度の二酸化チタンが必要とされ、他方ではより長波側に向かう吸収端の明確な平坦化が生じ、この平坦化は動作波長の範囲における透過率を低減させる。
【0008】
さらに、高いドーパント濃度は、石英ガラス特性の望ましくない変化をもたらすことがある。つまり、高いドーパント濃度は、石英ガラスの粘度及び熱膨張係数を特に変化させ、その結晶化傾向を増大させ、UV線に対する放射線耐性を低減させる(このことは、UVランプ用の石英ガラスにおいて何にもまして特に不都合である)ことがある。この理由は、UV線による損傷により、UV透過率の漸次的な減少(経年劣化)、及びひいては減少し再現不可能なUVC発光がもたされることである。
【0009】
特許文献1は、50%〜62%のSiO2部分を有する多成分ガラスからなるフィルタ材料を開示している。その組成に関して以下の範囲が特定されている:SiO2:50〜62;K2O:10〜25;Na2O:0〜14;Al23:0〜2;B23:3〜5;ZnO:13.5〜37;F:0〜1;TiO2:0〜7;In23:0〜2;Ga23:0〜2;SO3:0〜1;SeO2:0〜1;C:0〜1。この範囲の組成の種々のガラスが、324nmが最短の波長として示されるそれらの端波長に基づき特徴づけられている。
【0010】
既知のフィルタ材料は、遠紫外の波長範囲全体にわたる紫外線に対して不透性であり、したがってこの波長範囲の動作UV線による使用には適さない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許出願公開第2003/0114292号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、254nmの動作放射線に対して出来る限り最大の透過性を示し、低ドーパント濃度では約250nm未満の波長範囲において出来る限り最小の透過性を示すドープ石英ガラス製のフィルタ材料を示すことが本発明の目的である。
【0013】
さらに、可能な限り一定のUVC発光を伴う254nm前後の波長のUV線を用いて表面、液体又は気体の効果的な照射を確実に行い、その場合に同時にオゾン形成を可能な限り低く抑える方法を示すことが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
フィルタ材料に関して、前述の種類の特徴から始まるこの目的は、250nm未満の波長範囲に吸収帯の極大を有するガリウム化合物を含むドーピングにより端波長λCの位置が決定される本発明により達成される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】従来技術による酸化チタンドープ石英ガラスと比較した本発明による光学フィルタ材料の透過曲線を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
酸化ガリウムをドープした石英ガラスがUV線を吸収し、215nm前後の波長でのUV吸収が相対的又は絶対的な極大を示すことが見出された。したがって、この吸収極大は、酸化チタンをドープした既知の石英ガラスより254nmの動作波長に近い。結果として、酸化チタンをドープした石英ガラスと比較して酸化ガリウムをドープした石英ガラスの透過曲線は、より長波側に向かう吸収帯のより急勾配の側面(steilere Flanke)を示し、その結果、250nm前後の波長での吸収は比較的低く、254nmの低圧水銀放電ランプの動作波長で高い透過性を達成することができる。
【0017】
したがって、ガリウム化合物は、端波長λCの位置を規定する。このことは、石英ガラスにガリウム化合物をドープしなかった場合、λCに関して異なる波長が得られるであろうことを意味する。端波長は230nm〜250nmの範囲にあり、好ましくは235nm〜245nmである。端波長に関するデータは、0.5cmの材料の被照射層厚に関するものである。
【0018】
酸化ガリウムのUV吸収は、同じドーパント濃度では150nm〜250nmの波長範囲の少なくとも一部分において酸化チタンのUV吸収より高い。したがって、比較的低いドーパント濃度で、この波長範囲において高い吸収が得られる。
【0019】
本発明による光学フィルタ材料は、通常は部品として又は部品上の層として存在する。部品は例えば、管(Rohr)、プレート、ディスク又はレンズである。
【0020】
また、酸化ガリウム(Ga23)と化学的に類似する他のガリウム化合物、例えばハロゲン化ガリウム又は窒化ガリウム(GaN)が上で説明したUV吸収効果を有することが期待されなければならない。しかしながら好ましくは、ガリウム化合物は酸化ガリウムである。
【0021】
酸化ガリウムは熱的に及び化学的に安定であり、石英ガラス中に泡を形成しにくい。
【0022】
1重量ppm〜1000重量ppmの範囲の、好ましくは50重量ppm〜500重量ppmの範囲のガリウム化合物の濃度(非ドープ石英ガラスを基準とするGa濃度)が、特に適切であることが判明した。
【0023】
吸収は、ガリウム化合物の濃度、及びフィルタ材料の被照射層厚に依存する。層厚が小さい場合、例えば蒸着又はスパッタリングにより適用され、マイクロメーター範囲の厚みを有する層の場合には、いずれかの顕著な吸収を達成するために比較的高濃度のガリウム化合物が必要とされ、層厚が大きい場合には低濃度のガリウム化合物が必要とされる。
【0024】
215nm前後の波長範囲の短波UV線のほぼ完全な吸収を達成すべき場合、層厚が約0.5mm〜5mmの範囲にある(ランプの用途における管形状又はプレート形状の部品に特有であるような)ときには上で言及した範囲の濃度が好ましい。1重量ppm未満のGa濃度では、特に200nm未満の波長でUV吸収が比較的低く、1000重量ppmを超えるGa濃度では、254nmの動作波長の範囲において顕著な吸収が認められ得る。50重量ppm〜500重量ppmの濃度範囲は、付加的なドーパントを全く用いなくても150nm〜約240nmの波長範囲にほぼ一定の高い吸収を達成することもできる特に適切な妥協点である。ここでは、石英ガラスの化学的特性及び熱的特性並びにそのUV線耐性に対してわずかな影響しか有しない低ドーパント濃度に関心が持たれる。
【0025】
他方、約195nmの波長では、石英ガラス中の酸化ガリウムは近傍の波長範囲と比較して透過率のわずかな増大を示す。この波長範囲におけるわずかに透過性のウインドウをも閉じるために、ドーピングがさらにチタン化合物、好ましくは酸化チタンの形態のチタン化合物を含むと有利であることが判明した。
【0026】
酸化チタンは、約215nm未満の波長のUV線に対して特に高い吸収を示すが、動作波長の範囲においても透過性に対する影響を有する。酸化ガリウムとの共ドーピング(Co-Dotierung)により、比較的小量の酸化チタンが、短波範囲における酸化ガリウムの相対的な吸収極小を補うのに十分である。したがって全体的に見ると、比較的低濃度の酸化ガリウム及び酸化チタンの両方が短波UV線の完全な吸収のために必要とされ、その結果、動作波長の範囲における透過率は高い状態が維持され、ドーピングにより石英ガラスの他の特性が顕著に損なわれることもない。
【0027】
これに関して、チタン化合物の濃度(非ドープ石英ガラスを基準とするTiO2濃度)が1重量ppm〜50重量ppmの範囲にある、好ましくは20重量ppm未満である本発明によるフィルタ材料の実施の形態が特に好ましい。
【0028】
ドーピングによる石英ガラスの化学的特性及び物理的特性、例えば粘度、熱膨張係数及び化学的耐性の障害を最小化するために、その濃度を可能な限り低く維持する。これは、前述の範囲における付加的な二酸化チタンドーピングにより促される。
【0029】
これに関連して、ドーピングが酸化ガリウム(Ga23)及び酸化チタン(TiO2)を含み、Ga:Tiのモル比が10〜100の範囲にあると特に有用であることが判明した。
【0030】
より多量の酸化ガリウムを含む酸化ガリウム及び酸化チタンから構成される混合ドーピングがここでは意図される。酸化ガリウム量は150nm〜約240nmの波長範囲における吸収に本質的に寄与し、酸化チタン量は195nm前後の波長での透過率をさらに低減させる。これは、低ドーパント濃度で、短波UV波長範囲においてほぼ一定に高い吸収を伴う石英ガラスをもたらす。低ドーパント濃度が、フィルタ材料のUV線耐性に対して特に有利な効果を有する。
【0031】
石英ガラスの製造のための天然のSiO2出発材料は、ppm範囲の或る特定の量のTiO2を含有することが多い。このような出発材料を使用すると、酸化ガリウム及び酸化チタンからなる好適な混合ドーピングを、付加的な酸化チタンのドーピングを全く行わなくても得ることができる。
【0032】
好ましくは、フィルタ材料の石英ガラスは、合成的に製造された石英ガラスである。
【0033】
合成的に製造された石英ガラスは、動作波長の範囲における高い透過率及び高いUV線耐性により区別される。このことはとりわけ、例えば電気的に溶融した石英ガラスの場合に還元溶融条件(reduzierenden Schmelzbedingungen)下で生じ得るような酸素欠乏欠陥の含有量が低いことに起因し得る。
【0034】
これに関連して、フィルタ材料のSiO2含有量が少なくとも99.9重量%であると有利であることが判明している。
【0035】
特に石英ガラスが合成的に製造したSiO2からなる場合、フィルタ材料中の多量のSiO2により、動作UV線に対する高い透過性及び特に高いUV線耐性が確保される。
【0036】
しかしながら、合成的に製造された石英ガラスは、石英ガラスの熱的変形耐性を低減させる高いヒドロキシル基含有量を示すことが多い。この欠点を軽減するために、本発明によるフィルタ材料は、石英ガラスが、10重量ppm未満の、好ましくは1重量ppm未満のヒドロキシル基含有量を有することを特徴とすることが好ましい。
【0037】
本発明によるフィルタ材料は、短波UV部分を低減させることにより、オゾンの形成を回避する。該材料は、UV放電ランプ用のランプ材料の製造のために、例えば外周ランプ(Lampen)用の灯管(lampenrohr)又は被覆管(Huellrohr zur Umhuellung)として特に適切である。しかしながら、該材料は、例えばマイクロリソグラフィ用露光デバイスのためのレンズ材料としても適切である。
【0038】
放射方法に関して、前述の種類の放射方法から始まる上記目的は、250nm未満の波長範囲に吸収帯の極大を有するガリウム化合物を含むドーピングにより端波長λCの位置が決定されるフィルタ材料を使用する本発明により達成される。
【0039】
酸化ガリウムをドープした石英ガラスは、254nmの動作波長での吸収に対していかなる効果をもほとんど及ぼすことなく215nm前後の波長で顕著かつ急激な吸収を示し、したがって254nmの動作波長で低圧水銀放電ランプを用いた効率的なUV放射を可能とする。
【0040】
本発明による方法は、食料品、空気及び工業製品への効率的な照射を可能とし、ガラスの高い放射線耐性により254nm前後の波長の動作UV線の実質的な一定時間の放射を確保する。
【0041】
端波長λCの位置は、ここではガリウム化合物により規定される。このことは、ドーピングを行わない場合、λCに関して異なる波長がもたらされるであろうことを意味する。
【0042】
ガリウム化合物の濃度(非ドープ石英ガラスを基準とするGa濃度)は、1重量ppm〜1000重量ppmの範囲、好ましくは50重量ppm〜500重量ppmの範囲にある。これは、石英ガラスの化学的特性及び熱的特性並びにそのUV線耐性に対してわずかな影響しか有しない比較的低いドーパント濃度である。
【0043】
好ましくは、本発明による方法を、本発明によるフィルタ材料を使用して実施することができる。したがって本方法の有利な構成は、本発明のフィルタ材料に関する下位請求項からも得られる。この観点で、フィルタ材料に関する好ましい実施の形態に関する上記説明を参照する。
【0044】
光学フィルタ部品に関して、上で示した目的は、該部品が本発明によるフィルタ材料からなり、254nmの波長の動作UV線に対して少なくとも80%/cmのスペクトル透過率及び230nm〜250nmの波長範囲の端波長λCを有する本発明により達成される。
【0045】
本発明によるフィルタ材料は、一方では254nm前後の波長範囲における効率的な照射を可能とし、他方では250nm未満の波長を有するUV線を実質的に吸収するスペクトル透過率を特徴とする。これは、端波長λCの位置、及びガリウムを石英ガラスにドープすることから得られる吸収側面の急勾配(Steilheit)を通じて達成される。この観点で、本発明によるフィルタ部品に等しく適用可能である本発明によるフィルタ材料に関する上記説明を参照する。
【0046】
光学フィルタ部品は、例えば管、プレート又はレンズとして存在する。部品の典型的な層厚は、1mm〜5mmの範囲にある。
【0047】
ここで本発明を、以下の実施形態及び図面を参照してより詳細に説明する。
【実施例】
【0048】
本発明による光学フィルタ材料は、ドープ石英ガラスの製造に使用される標準的な方法を用いて製造することができる。例としてはスリップ法、ゾルゲル法、又は気化可能な出発化合物、例えばGaCl3を使用するCVD法が言及される。この観点で、化学的に類似のドーパントAl23を石英ガラスにドープするのに使用される方法も参照する。本発明による光学フィルタ材料を製造する他の好ましい例を以下で説明する。
【0049】
<例1>
合成的に製造した球形の高密度SiO2粒子からなる市販のSiO2顆粒を出発材料として使用する。SiO2粒子は、約30μm(D50値)に粒度分布の比較的狭い極大、及び2μm前後の範囲に第2極大を有する多峰性の粒度分布を有する。出発材料を、高温(約1050℃)での熱塩素化(Heisschlorieren)により精製する。
【0050】
10kgのこれらのSiO2顆粒を壁(Wandung)と石英ガラスからなる粉砕体(Mahlkoerpern)とを有するボールミルを用いて10gのGa23(1000重量ppmのGa23、このGa濃度は非ドープ石英ガラスを基準とするものである)と均質に混合する。さらにSiO2顆粒をこの基礎混合物に添加し、その後、再度の均質化の後に、以下の公称(nominalen)ドーパント濃度(重量ppm単位のGa、非ドープ石英ガラスを基準とするGa濃度):0.1/1.0/10/100/618を有する粉末混合物を得る。
【0051】
毎回、粉末混合物を、中空の円筒形黒鉛鋳型中に入れ、ガス圧焼結により焼結炉中でガラス化する。初めに黒鉛鋳型をゆっくりと1100℃まで加熱する。加熱及び最初の3時間のこの温度での保持時間を含む9時間続く第1段階の間、焼結炉中の真空(5mbar未満)を維持し、不活性気体パージプロセスにより中断する。その後の第2段階の間、12barの窒素の超過圧力を生成し、炉の雰囲気の気体交換により中断し、計12時間維持し、その後、炉の温度を真空下1550℃まで増大させる。この温度で粉末混合物を真空下で2.5時間焼結し、その後1700℃の温度まで加熱し、このプロセスにおいてガラス化して1重量ppm未満のヒドロキシル基含有量を有する透明な石英ガラスのブロックとする。この製造方法により、石英ガラスは無水素雰囲気中、わずかな還元条件下で溶融する。
【0052】
これにより、190nm〜350nmの波長範囲における透過率測定に供するGa含有石英ガラスのブロックが得られる。これらの測定の結果を図1に示し、以下でさらに説明する。
【0053】
<例2>
11.1gの金属ガリウムをHNO3溶液に溶解する。100kgの精製SiO2顆粒(例1に記載されるような)をGa含有HNO3溶液と均質に混合する。溶媒を除去することにより、SiO2顆粒を均一に包含するガリウム含有固体を得る。その後の酸化により、111重量ppmのガリウムの重量分率(非ドープ石英ガラスを基準とするGa濃度)に対応する量の酸化ガリウムを得る。さらに、40重量ppm及び102重量ppmの公称ドーパント濃度のガリウムを有するドープ石英ガラス顆粒を対応する方法で製造する。
【0054】
毎回、ドープSiO2顆粒を、純粋なアルゴン雰囲気中2000℃を超える温度での電気アーク回転法において融合し、それにより150mmの内径を有する石英ガラスの中空の円筒を製造する。機械的処理後、標準的な工具不要の(werkzeugfreien)引抜プロセスにより伸長させて灯管とするいわゆる母管を得る。得られた管は、111重量ppmの公称Ga含有量を有する石英ガラスからなる。このようにしてドープした石英ガラスは、さらに以下で図1を参照してより詳細に説明される透過曲線を示し、例えばハライドランプ(Halogengluehlampen)及び放電ランプに適する。この製造方法では、石英ガラスは無水素雰囲気中、わずかな還元条件下でも溶融する。
【0055】
<例3>
10gの金属ガリウム及び0.5gの金属チタンをHNO3に溶解する。100kgの精製SiO2顆粒(例2に記載されるような)を、Ga及びTiを含有するHNO3溶液と均質に混合する。溶媒を除去することにより、SiO2顆粒を均一に包含するガリウム及びチタンを含有する化合物を得る。その後の酸化により、100重量ppmのガリウム及び5重量ppmのチタンにおよそ対応する重量部(毎回、非ドープ石英ガラスを基準とするGa濃度)を有する酸化ガリウム及び酸化チタンを得る。酸化ガリウム及び酸化チタンをドープした石英ガラスを、例2に記載される方法に基づきコーティングしたSiO2顆粒から製造する。
【0056】
図1は、その製造を例1及び例2との関連で記載したドープ石英ガラスの透過曲線1〜透過曲線8を示す。図表は、190nm〜350nmの波長範囲にわたる5mmの試料の厚みでの透過率の測定値(単位:%)を示す。付随する表は、組成、製造方法、及びそれぞれの端波長を示す。
【0057】
さらに比較のために、155重量ppm(非ドープ石英ガラスを基準とする)の酸化チタンをドープした市販の石英ガラスの透過曲線9をプロットする。
【0058】
酸化ガリウムをドープすることにより215nm前後の波長に極大「M」を有する吸収がもたらされることが明らかである。ドーパント濃度を増大させると、吸収極大は大きくなる。10重量ppmのガリウム濃度(曲線3)で、吸収極大の領域において所定の試料の厚みで透過率はもはや測定されない。
【0059】
40重量ppmから102重量ppmまでの範囲のガリウム濃度(曲線4〜曲線7)では、透過率ゼロの範囲が、200nm〜約235nmの波長まで拡大する。より長波側に向かう吸収極大の側面が比較的急勾配であることは注目に値する。とにかく、該側面は、曲線9による酸化チタンドープ石英ガラスの場合における吸収極大の対応する側面より明らかに急勾配である。短波範囲では、これらのドーパント濃度の場合において200nm未満の波長で小さい透過ウインドウが依然として得られる。
【0060】
透過曲線8により示されるように、618重量ppmのGa濃度(非ドープ石英ガラスを基準とする)の場合には200nm未満の波長で透過ウインドウが閉じる。したがって、完全に阻止される波長範囲を、酸化ガリウム濃度をさらに増大させることにより拡大することができるが、618重量ppmまで増加させたGa濃度は、吸収極大の側面の平坦化、ひいては動作波長「A」の範囲における透過率の低減ももたらす。試料3〜試料7による好ましい石英ガラスドーピングプロセスでは、85%を超えるスペクトル透過率が、254nmの動作波長の範囲において達成される。
【0061】
試料5の組成を有する石英ガラスを、10Wの公称出力(425mAの公称ランプ電流で)、20cmのラジエータ長、及びひいては約0.5W/cmの出力密度を有する低圧水銀ランプのバルブを製造するために使用する。バルブは、電気接続をらせん電極へと導くピンチ(Quetschungen)によりその端で閉じられるドープ石英ガラスの管からなる。
【0062】
飲料水を滅菌するために、その周りに滅菌対象の飲料水が流れる密閉被覆管中に該バルブを挿入する。
【0063】
低圧水銀ランプは、184nm前後の発光極大及び254nmでのさらなる極大を有するUVC線を放出する。Gaドープ石英ガラスは、該ランプの発光スペクトルに関して、UVC線の短波部分に対するエッジフィルタとして働く。254nmの波長でのスペクトル透過率は87%であり、230nmでは0%である。端波長λCは約242nmである。
【0064】
したがってオゾン形成は比較的低い。低ドーパント濃度のために、石英ガラスは高いUV線耐性を示し、その結果、動作中に重大な経年劣化は起こらない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
254nmの波長の動作UV線に対して少なくとも80%/cmのスペクトル透過率を示し且つ230nm〜250nmの波長範囲に端波長λCを有するドープ石英ガラス製の光学フィルタ材料であって、前記端波長λCが、250nm未満の波長範囲に吸収帯の極大を有するガリウム化合物を含むドーピングにより決定されることを特徴とする光学フィルタ材料。
【請求項2】
前記ガリウム化合物がGa23であることを特徴とする請求項1に記載のフィルタ材料。
【請求項3】
前記ガリウム化合物の濃度(非ドープ石英ガラスを基準とするGa濃度)が1重量ppm〜1000重量ppmの範囲にあることを特徴とする請求項1又は2に記載のフィルタ材料。
【請求項4】
前記ガリウム化合物の濃度(非ドープ石英ガラスを基準とするGa濃度)が50重量ppm〜500重量ppmの範囲にあることを特徴とする請求項3に記載のフィルタ材料。
【請求項5】
ドーパントが、チタン化合物、好ましくはTiO2の形態のチタン化合物を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のフィルタ材料。
【請求項6】
前記チタン化合物の濃度(非ドープ石英ガラスを基準とするTi濃度)が1重量ppm〜50重量ppmの範囲にあることを特徴とする請求項5に記載のフィルタ材料。
【請求項7】
前記チタン化合物の濃度(非ドープ石英ガラスを基準とするTi濃度)が20重量ppm未満であることを特徴とする請求項6に記載のフィルタ材料。
【請求項8】
ドーピングが酸化ガリウム(Ga23)及び酸化チタン(TiO2)を含み、Ga:Tiのモル比が10〜100の範囲にあることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のフィルタ材料。
【請求項9】
前記石英ガラスが合成的に製造したシリカであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載のフィルタ材料。
【請求項10】
SiO2含有量が少なくとも99.9%であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載のフィルタ材料。
【請求項11】
前記石英ガラスが、10重量ppm未満の、好ましくは1重量ppm未満のヒドロキシル基含有量を有することを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載のフィルタ材料。
【請求項12】
254nm前後の波長の動作放射線を放出すると共に、該動作放射線に対して少なくとも80%/cmのスペクトル透過率を示し且つ230nm〜250nmの波長範囲に端波長λCを有するドープ石英ガラスのフィルタ材料を通過するUV線源を用いて表面、液体又は気体に照射する方法であって、250nm未満の波長範囲に吸収帯の極大を有するガリウム化合物を含むドーピングにより前記端波長λCの位置が決定されるフィルタ材料を使用することを特徴とする照射方法。
【請求項13】
請求項1〜11のいずれか一項に記載のフィルタ材料から作製された光学フィルタ部品であって、254nmの波長の動作UV線に対して少なくとも80%/cmのスペクトル透過率を示し且つ230nm〜250nmの波長範囲に端波長λCを有することを特徴とする光学フィルタ部品。

【図1】
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【公表番号】特表2012−522274(P2012−522274A)
【公表日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−502546(P2012−502546)
【出願日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際出願番号】PCT/EP2010/053076
【国際公開番号】WO2010/112311
【国際公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(599089712)ヘレウス・クアルツグラース・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング・ウント・コンパニー・コマンディット・ゲゼルシャフト (21)
【氏名又は名称原語表記】Heraeus Quarzglas GmbH & Co. KG
【出願人】(000190138)信越石英株式会社 (183)
【Fターム(参考)】