説明

ガンマ−デルタT細胞レセプター

本発明は、導入ジスルフィド鎖間結合を有するガンマ-デルタT細胞レセプター(γδTCR)を提供する。このタンパク質、及びこのタンパク質を表面に発現する細胞は、提示されるTCRリガンドにより細胞集団を識別する方法及び疾患治療において有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導入ジスルフィド鎖間結合を有するガンマ-デルタT細胞レセプター(γδTCR)に関する。このタンパク質及びこのタンパク質を表面に発現する細胞は、提示されるγδTCRリガンドにより細胞集団を区別する方法及び疾患治療において有用である。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
可溶性γδTCR
米国特許第5,601,822号は、TCRγ鎖又はTCRδ鎖のフラグメントを少なくとも含んでなる可溶性ポリペプチド及び該ポリペプチドを認識する抗体を開示する。また、γδT細胞からγδTCRを単離する方法も開示する。
【0003】
米国特許第5,185,250号は、γδTCRをコードするDNAの同定方法及び単離方法並びに細胞にγδTCRの産生を引き起こすためのクローニング方法における該DNAの使用を開示している。また、γδTCRを認識する抗体を作製する方法も開示する。
【0004】
米国特許公開第2003/0175212号は、可溶性γδTCRの作製及びリステリア症の治療におけるその使用を詳述している。これら可溶性γδTCRは、High Five昆虫細胞においてバキュロウイルス系を用いて作製された。γδTCRは、TCR鎖の細胞外部分のみが分泌されるように切断された。TCR鎖は、好ましくは、天然型ジスルフィド鎖間結合を含んでいた。
【0005】
WO 99/60120には、天然型リガンドを認識できるように正確に折り畳まれ、経時的に安定であり、合理的な量で作製することができる可溶性TCRが記載されている。このTCRは、一対のC末端二量体化ペプチド(例えばロイシンジッパー)により、それぞれTCRβ鎖又はδ鎖の細胞外ドメインと二量体化したTCRα鎖又はγ鎖の細胞外ドメインを含んでなる。TCRを作製するこの戦略は一般に全てのTCRに適用可能である。
【0006】
αβTCR及びγδTCRの三次構造は或る程度類似し、αTCR鎖はδTCR鎖と最もよく似ており、βTCR鎖はγTCR鎖と最もよく似ている。例えば、γTCR鎖の定常領域は、βTCR鎖の定常領域と同様に、非対合のシステイン残基を含有する。しかし、αβTCR及びγδTCRの三次構造は相当の差異をしめす。例えば、図1に示すように、それぞれβ及びαの定常ドメインと比較したときγ及びδのTCR定常ドメインの三次構造には相当の差異がある。また、β可変領域と比較したγ可変領域の三次構造にも相当の差異がある。δTCR可変ドメインの結晶構造分析により、このドメインのフレームワーク構造は、TCR Vα又はVβドメインのフレームワーク構造より、可変イムノグロブリン重鎖ドメイン(VH)のフレームワーク構造によく似ていることが明らかにされた(Kabelitzら(2000) Int Arch Allergy Immunol 2000 122 1-7)。
【0007】
WO 03/020763は、天然型TCR中に存在しない定常ドメイン残基同士間におけるジスルフィド鎖間結合の存在により特徴付けられる可溶性αβ二量体TCR(dTCR)の作製方法に関する。これは、前記ジスルフィド結合を導入することができるdTCR中の具体的位置を開示している。天然型TCR中に存在しないジスルフィド結合の導入に好ましい1つの部位は、TRAC*01のエキソン1のThr 48及びTRBC1*01又はTRBC2*01のエキソン1のSer 57から置換されたシステイン残基同士の間である(IMGT命名法は(LeFrancら(2001) The T Cell Receptors Factsbook, Academic Pressに記載のとおり)。WO 2004/033685は、WO 03/020763と同様な導入ジスルフィド鎖間結合を含有し、TCRの一方のC末端と他方のTCR鎖のN末端との間にペプチドリンカー配列を更に含んでなる単鎖αβTCR(scTCR)に関する。
【0008】
Guillaumeら(2003)(Nature Immunology 4: 657-663)は、構築物のC末端に付着させたアミノ酸間に導入ジスルフィド鎖間結合を含有する可溶性JM22 TCRの構築を詳述する。この特別な構築物は、天然型ジスルフィド鎖間結合の位置に対して1アミノ酸N末端側で切断したJM22 TCRの細胞外部分から誘導された。C末端定常ドメイン伸長部(extension)がこのTCRのα鎖及びβ鎖の両方に付加された。これら伸長部は、天然型の位置に対して、α鎖中で3アミノ酸、β鎖中で6アミノ酸ほど下流への鎖間形成性システイン残基位置の移動を引き起こした。WO 2004048410は、このようなTCR構築物を更に詳細している。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
αβTCRとγδTCRとの間の上記の構造的不同性を考慮すると、驚くべきことに、可溶性γδTCRが新規のジスルフィド鎖間結合の導入により安定化できることが見出された。本発明のγδTCRは、それぞれWO 04/033685及びWO 03/020763に記載される単鎖TCR(scTCR)又はへテロ二量体TCR(dTCR)と類似する形態で提供されるか、又はジスルフィド鎖間ジスルフィド結合を含有する導入C末端定常ドメイン伸長部を含んでなる形態で提供される。
【0010】
(発明の簡単な説明)
本発明は、TCRγ鎖の全て又は一部とTCRδ鎖の全て又は一部とを含んでなるγδTCRを初めて利用可能にする。ここで、TCR鎖は天然型γδTCR中に存在しないジスルフィド結合により連結されている。
【0011】
(発明の詳細な説明)
本発明は、TCRγ鎖の全て又は一部とCRδ鎖の全て又は一部とを含んでなり、該TCR鎖は天然型γδTCR中に存在しないジスルフィド結合により連結されている、γδTCRを提供する。
【0012】
本明細書中で開示されるγδTCRは、とりわけ標的化成分(targeting moiety)として、有用である。証拠は、それらが、リン酸化された小さな非ペプチド性化合物(例えば、メバロネート代謝経路の構成要素であるイソペンテニルピロリン酸(IPP))を含むがこれに限定されないリガンドを標的することを示唆している(Goberら(2003) J Exp Med 197 (2) 163-168)。2つの更なる研究(Katoら(2003) J. Immunol 170 3608-3613及びGreenら(2004) Clin Exp Immunol (2004) 136 472-482)は、IPPがヒト細胞の表面に提示されると、ヒトVγ9Vδ2T細胞のみがIPPに応答することを証明している。Greenら(2004)(Clin Exp Immunol (2004) 136 472-482)は、9つの異なるヒト細胞株(β2-ミクログロブリンやMHCクラスI発現を欠損しているものを含む)が、Vγ9Vδ2T細胞に対してIPPを提示できることを証明した。しかし、IPP提示複合体の同一性は理解されないままである。Goberら(2003)(J Exp Med 197 (2) 163-168)及びGreenら(2004)(Clin Exp Immunol (2004) 136 472-482)中の結果もまた、或るアミノビスホスホネート(nBP)(例えば、リセドロネート、ゾレドロネート及びパミドロネート)によるVγ9Vδ2T細胞の活性化についてのもっともらしい説明を提供している。これらnBPは、γδTCRの推定リガンドであると考えられた。しかし、今や、これらは、メバロネート代謝経路に関与する酵素(ファルネシルピロリン酸(FPP)合成酵素)を阻害することによりγδT細胞応答を促進している可能性が高いようである。この酵素の阻害は、前述のように現在γδTCRリガンドであると考えられているIPPの蓄積(built-up)を導く。
【0013】
ヒドロキシ-メチルグルタリル-CoAレダクターゼ(メバロネート代謝経路中の律速酵素)の発現は、少なくとも幾つかの血液学的悪性疾患(Harwoodら(1991) J. Lipid Res 32 1237-1252)及び哺乳動物ガン腫細胞(Asslanら、Biochem Biophys Res Comm (1999) 260 699-706)においてアップレギュレートされる。このことがこれら細胞中のIPPの蓄積を導き、次いでIPPの蓄積は、それら細胞をVγ9Vδ2T細胞により攻撃され易くする。Goberら(2003)(J Exp Med 197 (2) 163-168)は、Vγ9Vδ2T細胞により攻撃され易い細胞として、非ホジキンB細胞リンパ腫株Daudi、B細胞リンパ腫RPMI-8233、T細胞リンパ腫MOLT-4及び赤白血病株K562を列挙している。
【0014】
γδT細胞は、組織化されたリンパ様組織中並びに皮膚関連及び腸関連リンパ系中に存在する(上皮に対する特別な向性はない)(Goberら(2003) J Exp Med 197 (2) 163-168)。生じるヒトγδT細胞の亜集団は、身体中での位置(例えば胃内、脳内、血液中など)に依存して可変遺伝子使用頻度(variable gene usage)が変化する。例えば、Vγ3Vδ1を提示するγδT細胞は胃において優勢な亜集団である。異なるγδT細胞(したがって異なるγδTCR)のこの組織特異性により、これらは治療薬及び診断薬の組織特異的送達に有用となる。更に、この組織特異的γδT細胞により認識されるリガンドもまた、非TCRベースの標的化剤(targeting agent)(例えば抗体ベースの標的化剤)の有用な潜在的標的である。
【0015】
更なる観点によれば、本発明は、(i)膜貫通ドメインを除くTCRγ鎖の全て又は一部と(ii)膜貫通ドメインを除くTCRδ鎖の全て又は一部とを含んでなる可溶性T細胞レセプター(sTCR)を提供する。ここで、(i)及び(ii)は各々、TCR鎖の機能的可変ドメインと定常ドメインの少なくとも一部とを含んでなり、天然型TCR中に存在しないジスルフィド結合により連結されている。
【0016】
本発明のγδTCRは、単鎖TCR(scTCR)又はへテロ二量体TCR(dTCR)のいずれかの形態であり得る。詳細には、
適切な可溶性γδTCRは、膜貫通ドメインを除くTCRγ鎖の全て又は一部と膜貫通ドメインを除くTCRδ鎖の全て又は一部とを含んでなり、ここで、各TCR鎖は、TCR鎖の機能的可変ドメインと定常ドメインの少なくとも一部とを含んでなり、天然型TCR中に存在しない定常ドメイン残基同士間のジスルフィド結合により連結されている。
【0017】
本発明の1つの具体的実施形態では、このγδTCRはTCR鎖の細胞外定常Igドメインの全てを含んでなる。
本発明の別の具体的実施形態において、このγδTCRはTCR鎖の細胞外ドメインの全てを含んでなる。
【0018】
γδTCRは、天然型TCR中に存在しない定常ドメイン残基同士間にジスルフィド連結を有することによって特徴付けられる。
本発明の1つの観点では、この共有結合性ジスルフィド結合は、γ鎖の定常ドメインのイムノグロブリン領域の残基をδ鎖の定常ドメインのイムノグロブリン領域の残基に連結する。
【0019】
γδTCRにおいて、天然型TCR中に存在する鎖間ジスルフィド結合がない、本発明の別の観点が提供される。可溶性γδTCRにおいて、天然型γ及びδTCR鎖が、天然型鎖間ジスルフィド結合を形成するシステイン残基が除去されるようにC末端で切断されている提供される、この観点の具体的実施形態が提供される。代替の実施形態では、天然型鎖間ジスルフィド結合を形成するシステイン残基が別の残基に置換されている。別の具体的実施形態では、天然型鎖間ジスルフィド結合を形成するシステイン残基はセリン又はアラニンに置換されている。
【0020】
γδTCRにおいて、天然型TCR中に存在しないジスルフィド結合が、β炭素原子が天然型TCR構造中で0.6nm未満離れている残基から置換されたシステイン残基同士間にある、本発明の別の観点が提供される。
LeFrancら(2001)(T cell Receptor Factsbook, Academic Press)に記載されるImmunoGeneTics(IMGT)命名法が、本出願を通じて、TCR鎖中の特定のアミノ酸残基の位置を示すために使用される。
【0021】
γδTCRにおいて、天然型TCR中に存在しないジスルフィド結合が、TRGC1又はTRGC2(2x)又はTRGC2(3x)のエキソン1のGly 60及びTRDCのエキソン1のAla 47から置換されたシステイン残基同士間にある、本発明の具体的実施形態が提供される。
【0022】
γδTCRにおいて、天然型TCR中に存在しないジスルフィド結合が、TRGC1のエキソン1の残基60及びTRDCのエキソン1の残基47から置換されたシステイン残基同士間にある、本発明の具体的実施形態が提供される。
【0023】
γδTCRにおいて、天然型TCR中に存在しないジスルフィド結合が、TRGVの残基49及びTRDJのモチーフFGXG(配列番号:1)(式中、Xは置換されるべき残基を指す)中に位置する残基から置換されたシステイン残基同士間にある、本発明の具体的実施形態が提供される。
【0024】
γδTCRにおいて、天然型TCR中に存在しないジスルフィド結合が、TRGV9のVal 49及びTRDJのモチーフFGXG(配列番号:1)(式中、Xは置換されるべき残基を指す)中に位置する残基から置換されたシステイン残基同士間にある、本発明の具体的実施形態が提供される。
【0025】
γδTCRにおいて、天然型TCR中に存在しないジスルフィド結合が、TRGVの残基49及びTRDJ1のモチーフFGXG(配列番号:1)(式中、Xは置換されるべき残基を指す)中に位置する残基から置換されたシステイン残基同士間にある、本発明の具体的実施形態が提供される。
【0026】
γδTCRにおいて、天然型TCR中に存在しないジスルフィド結合が、TRGJの以下のモチーフ:FX1X2G(配列番号:2)(式中、X2は置換されるべき残基を指す)中に位置する残基及びTRDVの残基49から置換されたシステイン残基同士間にある、本発明の具体的実施形態が提供される。
【0027】
γδTCRにおいて、天然型TCR中に存在しないジスルフィド結合が、TRGJPの以下のモチーフ:FX1X2G(配列番号:2)(式中、X2は置換されるべき残基を指す)中に位置する残基及びTRDVの残基49から置換されたシステイン残基同士間にある、本発明の具体的実施形態が提供される。
【0028】
γδTCRにおいて、天然型TCR中に存在しないジスルフィド結合が、TRGJの以下のモチーフ:FX1X2G(配列番号:2)(式中、X2は置換されるべき残基を指す)中に位置する残基及びTRDV2のThr 49から置換されたシステイン残基同士間にある、本発明の具体的実施形態が提供される。
【0029】
γδTCRにおいて、天然型TCR中に存在しないジスルフィド結合が、TRGJの以下のモチーフ:FX1X2G(配列番号:2)(式中、X2は置換されるべき残基を指す)中に位置する残基及びTRDV1のGlu 49から置換されたシステイン残基同士間にある、本発明の具体的実施形態が提供される。
【0030】
γδTCRにおいて、天然型TCR中に存在しないジスルフィド結合が、TRGJの以下のモチーフ:FX1X2G(配列番号:2)(式中、X2は置換されるべき残基を指す)中に位置する残基及びTRDV3のSer 49から置換されたシステイン残基同士間にある、本発明の具体的実施形態が提供される。
【0031】
更なる実施形態は、(i)及び(ii)がTCRのC末端で融合したペプチド配列中に存在するシステイン残基同士間のジスルフィド結合により連結されているへテロ二量体γδTCRによって提供される。
【0032】
scTCR形態において、ペプチド性リンカー配列が第1のTCR鎖のC末端を第2のTCR鎖のN末端に連結している、別の実施形態が提供される。このリンカーは、式-PGGG-(SGGGG)5-P-(配列番号:3)又は-PGGG-(SGGGG)6-P-(配列番号:4)(式中、Pはプロリンであり、Gはグリシンであり、Sはセリンである)を有し得る。
【0033】
本発明の具体的実施形態において、TCRのC末端で融合したペプチド配列は、容易に相互作用し、第1のペプチド配列中のアミノ酸と第2のペプチド中のアミノ酸との間に共有結合を形成して、TCRγ鎖及びTCRδ鎖を一緒に連結している。
本発明のγδTCRが可溶性である本発明の別の観点が提供される。
【0034】
可溶性γδTCRが、膜貫通ドメインを除くTCRγ鎖の全て又は一部と膜貫通ドメインを除くTCRδ鎖の全て又は一部とを含んでなり、各TCR鎖は各々、第2のTCRの定常ドメインの全て又は一部に融合した第1のTCRの機能的可変ドメインを含んでなり、第1及び第2のTCRは同じ種に由来する、本発明の更なる観点が提供される。
本発明の可溶性γδTCRが検出可能な標識を更に含んでなる、更なる観点が提供される。
【0035】
上記の非天然型ジスルフィド結合に加えて、本発明のγδTCRは、天然型TCR中のジスルフィド結合により連結される残基に対応する残基同士間のジスルフィド結合を含み得る。
本発明の可溶性γδTCRは、好ましくは、天然型TCRの膜貫通配列及び/又は細胞質配列に対応する配列を含有しない。
【0036】
多価複合体
本発明の1つの観点は、複数のγδTCRを含んでなる多価R複合体を提供する。この観点の1つの実施形態は、ポリアルキレングリコールポリマー又はペプチド性配列を含んでなるリンカー基を介して互いに結合した2つ又は3つ又は4つの結合可溶性γδTCRにより提供される。好ましくは複合体は水溶性であり、したがってリンカー基はそれ相応に選択されるべきである。更に、リンカー基は、形成される複合体の構造的多様性が最小限化するように、可溶性γδTCR上の規定位置に付着可能であることが好ましい。この観点の1つの実施形態は、ポリマー鎖又はペプチド性リンカー配列が、各可溶性γδTCRの該可溶性γδTCRの可変領域配列中に位置しないアミノ酸残基同士間に伸びている本発明の多価複合体により提供される。
【0037】
本発明の複合体は医学用であり得るので、リンカー成分は医薬的適合性、例えば免疫原性に関して当然に注意して選択されるべきである。
上記の望まれる基準を満たすリンカー成分の例は、当該分野、例えば抗体フラグメントの連結の分野で公知である。
【0038】
本発明の多価複合体の製造における使用に好ましい2つのクラスのリンカーが存在する。可溶性γδTCRがポリアルキレングリコール鎖により連結されている本発明の多価複合体はこの観点の1つの実施形態を提供する。
【0039】
第1は、親水性ポリマー、例えばポリアルキレングリコールである。このクラスの最も一般に使用されるものは、ポリエチレングリコール又はPEG(この構造を下記に示す)をベースにする:
HOCH2CH2O(CH2CH2O)n-CH2CH2OH
(式中、nは2より大きい)。しかし、他の適切な(任意に置換されていてもよい)ポリアルキレングリコール(ポリプロピレングリコールを含む)及びエチレングリコールとプロピレングリコールとのコポリマーをベースにするものもある。
【0040】
このようなポリマーは、治療剤、特にポリペプチド治療剤又はタンパク質治療剤を処理するか又はこれに接合するかして、該治療剤のPKプロフィールに有益な変化(例えば、減少した腎クリアランス、向上した血漿半減期、減少した免疫原性及び向上した溶解性)を達成するために使用され得る。PEG−治療剤接合体のPKプロフィールのこのような改善は、PEG分子が該治療剤の周囲に、免疫系との反応を立体的に障害し、タンパク質分解性分解を減少させる「殻」を形成することに起因すると考えられる(Caseyら(2000) Tumor Targeting 4 235-244)。使用する親水性ポリマーのサイズは、具体的には、TCR複合体の意図する治療用途に基づいて選択し得る。したがって、例えば、製品が、例えば腫瘍治療における使用のために、循環中を出て組織に浸潤するよう意図される場合、5KDaのオーダーの低分子量ポリマーを使用することが有利であり得る。医薬製剤におけるPEG及び類似分子の使用を詳述する多くの総説論文及び本が存在する。例えば、Harris (1992) Polyethylene Glycol Chemistry - Biotechnical and Biomedical Applications, Plenum, New York, NY.、又はHarris & Zalipsky (1997) Chemistry and Biological Applications of Polyethylene Glycol ACS Books,Washington,D.C.を参照。
【0041】
使用するポリマーは、直鎖状又は分枝状の構造を有することができる。分枝状PEG分子又はその誘導体は、グリセロール及びグリセロールオリゴマー、ペンタエリスリトール、ソルビトール並びにリジンを含む分枝成分の付加により誘導することができる。
【0042】
通常、ポリマーは、該ポリマーが可溶性γδTCR中の標的部位へ連結することが可能となるように、その構造中、例えば一方又は両方の端部及び/又は主鎖からの分枝上に、化学反応性の基を有する。下記に示すように、この化学反応性の基は親水性ポリマーに直接結合させてもよいし、又は親水性ポリマーと反応性化学成分との間にスペーサ基/成分が存在していてもよい:
反応性化学成分−親水性ポリマー−反応性化学成分
反応性化学成分−スペーサ−親水性ポリマー−スペーサ−反応性化学成分
【0043】
上記で概説したタイプの構築物の形成に使用するスペーサは、非反応性の化学的に安定な鎖である任意の有機成分であり得る。このようなスペーサには、以下が含まれるがそれらに限定されない:
-(CH2)n- (式中、n=2〜5)
-(CH2)3NHCO(CH2)2
【0044】
二価アルキレンスペーサ基がポリアルキレングリコール鎖と可溶性γδTCRへの結合点との間に位置する本発明の多価複合体は、この観点の更なる実施形態を提供する。
ポリアルキレングリコール鎖が少なくとも2つのポリエチレングリコール反復単位を含んでなる本発明の多価複合体は、この観点の更なる実施形態を提供する。
【0045】
本発明における使用に有用であり得る反応性化学成分に直接か又はスペーサを介して連結する親水性ポリマーの商業的供給業者は多く存在する。これら供給業者としては、Nektar Therapeutics (CA、米国)、NOF Corporation (日本)、Sunbio (韓国)及びEnzon Pharmaceuticals (NJ、米国)が挙げられる。
【0046】
本発明における使用に有用であり得る反応性化学成分に直接か又はスペーサを介して連結する市販の親水性ポリマーには、以下のものが含まれるがそれらに限定されない。
【表1】

【0047】
種々のカップリング化学成分を使用して、ポリマー分子をタンパク質治療薬やペプチド治療薬とカップリングすることができる。最も適切なカップリング化学成分の選択は、所望するカップリング部位に大きく依存する。例えば、以下のカップリング化学成分が、PEG分子の1又はそれ以上の末端に付着されるために使用されてきた(出典:Nektar Molecular Engineering Catalogue 2003):
【0048】
N−マレイミド
ビニルスルホン
炭酸ベンゾトリアゾール
スクシンイミジルプロピオネート
スクシンイミジルブタノエート(succinimidyl butanoate)
チオエステル
アセトアルデヒド
アクリラート
ビオチン
一級アミン
【0049】
上記のように、非PEGベースのポリマーもまた、本発明の可溶性γδTCRを多量化するために適切なリンカーを提供する。例えば、脂肪族鎖により連結されたマレイミド末端を含有する成分、例えばBMH及びBMOE(Pierce,製品番号22330及び22323)が使用できる。
【0050】
ペプチド性リンカーが他方の好ましいクラスのリンカー基である。これらリンカーは、アミノ酸の鎖から構成され、単純なリンカー又は可溶性γδTCRを付着させることができる多量体化ドメインを作製するために機能する。ビオチン/ストレプトアビジン系は、以前に、インビトロ結合研究用の可溶性TCRの四量体(WO/99/60119を参照)を作製するために使用された。しかし、ストレプトアビジンは微生物由来のポリペプチドであり、よって治療剤における使用に理想的には適していない。
【0051】
可溶性γδTCRがヒト多量体化ドメインに由来するペプチド性リンカーにより連結されている本発明の多価複合体は、この観点の更なる実施形態を提供する。
【0052】
多価複合体の作製に使用できる多量体化ドメインを含有する多くのヒトタンパク質が存在する。例えば、p53の四量体化ドメインは、単量体scFvフラグメントと比較して、増大した血清残存率及び有意に減少した解離速度を示すscFv抗体フラグメント四量体を作製するために利用されている(Willudaら(2001) J. Biol. Chem. 276 (17) 14385-14392)。ヘモグロビンもまた、この種の適用におそらく使用できる四量体化ドメインを有する。
【0053】
少なくとも一方が本発明の可溶性γδTCRである少なくとも2つの可溶性γδTCRを含んでなる多価複合体はこの観点の別の実施形態を提供する。
【0054】
本発明のγδTCRの用途
本発明の1つの観点は、
(i)本発明の可溶性γδTCR若しくはその多価複合体、又は表面に少なくとも1つの本発明のγδTCRを発現する細胞を提供し;
(ii)可溶性γδTCR若しくはその多価γδTCR複合体又は表面に少なくとも1つの本発明のγδTCRを発現する細胞を、多様な細胞の集団と接触させ;
(iii)可溶性γδTCR若しくはその多価γδTCR複合体又は表面に少なくとも1つの本発明のγδTCRを発現する細胞とTCRリガンド複合体を提示する細胞との結合を検出する
ことを含んでなるγδTCRリガンド複合体を提示する細胞を同定する方法を提供する。
【0055】
可溶性γδTCR及び/又は多様な細胞の集団が所定の疾患又は障害を患っている対象から得られる、この観点の具体的実施形態が提供される。
【0056】
また、可能性のある標的細胞を、可溶性γδTCR若しくはその多価複合体、又は表面に少なくとも1つの本発明のγδTCRを発現する細胞と、可溶性γδTCR若しくはその多価複合体、又は表面に少なくとも1つの本発明のγδTCRを発現する細胞の標的細胞への付着を可能にする条件下で接触させることを含んでなり、可溶性γδTCR若しくはその多価複合体、又は表面に少なくとも1つの本発明のγδTCRを発現する細胞が、所定のγδTCRリガンドに特異的である、本発明のγδTCRを標的細胞に送達するための方法が提供される。この観点の具体的実施形態では、可溶性Vγ9Vδ2TCR若しくはその多価複合体、又はVγ9Vδ2TCRを発現する本発明の細胞がガン細胞を標的するために使用される。
【0057】
本発明の可溶性γδTCR(又はその多価複合体)は、択一的又は追加的に、例えば細胞殺傷に使用するための毒性部分又は免疫刺激物質(例えばインターロイキン又はサイトカイン)であり得る治療剤と結合(例えば、共有結合的連結又は別の連結)していてもよい。本発明の多価可溶性γδTCR複合体は、非多量体の野生型又は高親和性T細胞レセプターへテロ二量体と比べて、TCRリガンドに関して増強した結合能力を有し得る。したがって、本発明に従う多価可溶性γδTCR複合体は、特定の抗原を提示する細胞をインビトロ又はインビボで追跡又は標的するために特に有用であり、またそのような用途を有する更なる可溶性γδTCR複合体の作製のための中間体としても有用である。したがって、可溶性γδTCR又はその多価複合体は、インビボでの使用のために医薬的に許容され得る製剤で提供され得る。
【0058】
本発明はまた、可能性のある標的細胞を本発明に従う可溶性γδTCR又はその多価複合体と、標的細胞への可溶性γδTCR又はその多価複合体の付着を可能にする条件下で接触させることを含んでなり、可溶性γδTCR又はその多価複合体がTCRリガンドに特異的であって治療剤と結合されている、標的細胞に治療剤を送達するための方法を提供する。
【0059】
より詳細には、本発明の可溶性γδTCR又はその多価複合体を使用して、特定の抗原を提示する細胞の位置に治療剤を送達することができる。このことは、多くの状況で、特に腫瘍に対して有用である。治療剤は、その効果を局所的にではあるが、治療剤が結合する細胞上に限らずに発揮するように送達され得る。したがって、1つの特定の戦略として、腫瘍抗原に特異的な可溶性γδTCR又はその多価複合体に連結した抗腫瘍分子が考案される。この観点の具体的実施形態では、可溶性Vγ9Vδ2TCR又はその多価複合体が、ガン細胞に治療剤を送達するために使用される。
【0060】
多くの治療剤、例えば放射活性化合物、酵素(例えばパーフォリン)又は化学療法剤(例えばシスプラチン)がこの用途に用いられ得る。確実に所望の位置で毒性効果が発揮されるために、毒素は、それがゆっくりと放出されるように、ストレプトアビジンに連結したリポソーム内にあり得る。このことにより、体内での輸送の間の損傷効果が防止され、TCRと該当の抗原提示細胞との結合後に毒素が最大効果を有することが確実になる。
【0061】
他の適切な治療剤には、
・小分子細胞毒性物質、すなわち、哺乳動物細胞を殺傷する能力を有する、分子量700ダルトン未満の化合物。このような化合物はまた、細胞毒性効果を有することができる毒性金属を含有し得る。さらに、これら小分子細胞毒性物質にはまた、プロドラッグ、すなわち、生理学的条件下で崩壊又は変換して細胞毒性物質を放出する化合物が含まれると理解される。このような物質の例には、シスプラチン、メイタンシン(maytansine)誘導体、ラケルマイシン(rachelmycin)、カリケアマイシン(calicheamicin)、ドセタキセル、エトポシド、ゲムシタビン、イホスファミド、イリノテカン、メルファラン、ミトキサントロン、ソルフィマーソディウムホトフィリンII(sorfimer sodiumphotofrin II)、テモゾロマイド(temozolmide)、トポテカン、トリメトレキサート(trimetreate)、グルクロナート、オーリスタチンE(auristatin E)、ビンクリスチン及びドキソルビシンが含まれる;
【0062】
・ペプチド細胞毒素、すなわち、哺乳動物細胞を殺傷する能力を有するタンパク質又はそのフラグメント。例には、リシン、ジフテリア毒素、シュードモナス細菌外毒素A、DNAアーゼ及びRNAアーゼが含まれる;
・放射性核種、すなわち、1以上のα粒子若しくはβ粒子又はγ線の同時放射を伴って崩壊する元素の不安定同位体。例には、ヨウ素131、レニウム186、インジウム111、イットリウム90、ビスマス210及び213、アクチニウム225及びアスタチン213が含まれる;キレート化剤が、高親和性TCR又はその多量体へのこれら放射性核種の結合を促進するために使用されてもよい;
・プロドラッグ、例えば抗体を指向する酵素プロドラッグ;
【0063】
・免疫調節性剤(Immuno-mouratory agent)、すなわち、免疫応答を調節する成分。例として、IL-1、IL-1α、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-10、IL-11、IL-12、IL-13、IL-15、IL-21、TGF-β、リンホトキシン、TNFα、「抗T細胞抗体」(例えば、抗CD3抗体又は抗CD4抗体又は抗CD8抗体又は抗CD25抗体又は抗CD28抗体)、抗CD45RA抗体、抗CD45RB抗体、抗CD44抗体、抗Thy 1.2抗体、抗リンパ球グロブリン、抗αβTCR抗体、抗Vβ8抗体、抗CD16抗体、CTLA-4-Ig、抗B7.2抗体、抗CD40L抗体、抗ICAM-1抗体、ICAM-1、抗Mac抗体、抗LFA-1抗体、抗IFN-γ抗体 IFN-γ、IFN-γR/IgG1融合体、抗IL-2R抗体、IL-2R抗体、IL-2 ジフテリアトキシンタンパク質、抗IL-12抗体、IL-12アンタゴニスト(p40)、抗IL-1抗体、IL-1アンタゴニスト、グルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)、抗GAD抗体、ウイルス性のタンパク質及びペプチド、細菌性のタンパク質又はペプチド、A-ガラクトシルセラミド、カルシトニン、ニコチンアミド、抗酸化剤(ビタミンE、プロブコールアナログ、プロブコール+デフラザコート(deflazacoert)又はアミノグアニジン)、抗炎症剤(ペントキシフィリン(Pentoxifylline)又はロリプラム)、免疫調節剤(Immunomodulator)(リノマイド(Linomide)、Ling-zhi-8、D-グルカン、多機能プロテイン14(Multi-functional protein 14)、シアメクソン(Ciamexon)、コレラ毒B、バナデート又はビタミンD3アナログ、小分子CD80阻害剤、アンドロゲン、IGF-I、免疫応答力操作(Immunomanipulation)(天然抗体)、狼瘡イディオタイプ(Lupus idiotype)、リポ多糖)、スルファチド、ハチ毒、漢方薬、シリカ、ガングリオシド、抗アシアロGM-1抗体、ヒアルロニダーゼ、コンカナバリンA、抗クラスI MHC抗体又は抗クラスII MHC抗体、シクロスポリン、FK-506、アザチオプリン、ラパマイシン又はデオキシスペルグアリン、或いは前記のものの機能的変形体又はフラグメントが挙げられる。
【0064】
詳細には、本発明の可溶性γδTCR又は多価複合体は、特定の抗原を提示する細胞の位置までスーパー抗原を送達するために使用することができる。このことは、多くの状況で、例えば腫瘍に対して又は感染性疾患の部位で有用である。スーパー抗原は、その効果を局所的にではあるが、スーパー抗原が結合する細胞上に限らずに発揮するように送達することができる。
【0065】
このように、1つの特定の戦略は、腫瘍抗原に特異的である、本発明に従う可溶性γδTCR又は多価複合体を使用する。ガン治療には、腫瘍又は転移の近傍への局在化が治療剤の効果を増強する。或いは、本発明の可溶性γδTCR又は多価複合体は、感染性疾患に関連する特定の抗原を提示する細胞の位置まで治療剤を送達するために使用することができる。
【0066】
本発明の更なる実施形態は、本発明の可溶性γδTCR若しくはその多価複合体又は表面に少なくとも1つの本発明のγδTCRを発現する細胞を医薬的に許容され得るキャリアと共に含んでなる医薬組成物により提供される。
【0067】
本発明はまた、ガンを患っている対象に、有効量の本発明の可溶性γδTCR若しくは多価複合体又は表面に少なくとも1つの本発明のγδTCRを発現する細胞を投与することを含んでなるガンの治療方法を提供する。関連する実施形態では、本発明は、ガンの治療用組成物の製造における本発明の可溶性γδTCR若しくはその多価複合体又は表面に少なくとも1つの本発明のγδTCRを発現する細胞の使用を提供する。Vγ9Vδ2TCRは、このようなガンに関連する方法及び組成物における使用に好ましいγδTCRである。
【0068】
本発明はまた、自己免疫疾患、臓器拒絶又はGVHDを患っている対象に、有効量の本発明の可溶性γδTCR若しくはその多価複合体又は表面に少なくとも1つの本発明のγδTCRを発現する細胞を投与することを含んでなる自己免疫疾患、臓器拒絶又はGVHDの治療方法を提供する。関連する実施形態では、本発明は、自己免疫疾患、臓器拒絶又はGVHDの治療用組成物の製造における本発明の可溶性γδTCR若しくはその多価複合体又は表面に少なくとも1つの本発明のγδTCRを発現する細胞の使用を提供する。
【0069】
本発明はまた、感染性疾患を患っている対象に、有効量の本発明の可溶性γδTCR若しくはその多価複合体又は表面に少なくとも1つの本発明のγδTCRを発現する細胞を投与することを含んでなる感染性疾患の治療方法を提供する。関連する実施形態では、本発明は、感染性疾患の治療用組成物の製造における本発明の可溶性γδTCR若しくはその多価複合体又は表面に少なくとも1つの本発明のγδTCRを発現する細胞の使用を提供する。
【0070】
本発明の組成物及び方法により治療されるガンには、白血病、頭部及び頸部、肺、胸部、結腸、子宮頸部、肝臓、膵臓、卵巣、前立腺、結腸、肝臓、膀胱、食道、胃、黒色腫及び精巣が挙げられるがこれらに限定されない。
【0071】
本発明の組成物及び方法により治療される感染性疾患は、細胞内感染性生物により引き起こされるものである。本明細書中で使用する用語「細胞内感染性生物」は、ヒト細胞に侵入し得る任意の生物を包含すると理解される。このような生物は、直接に疾患を引き起こしてもよいし、変化した細胞機能を導いてもよい。これら生物は以下のもののいずれかであることができる:
細菌、真菌、ウイルス、原生動物及びマイコバクテリア。
【0072】
これら疾患及び該疾患を引き起こす細胞内感染性生物の例としては、リステリア菌(Listeria monocytogenes)により引き起こされるリステリア症、ペスト菌(Yersinia pestis)細菌により引き起こされる腺ペスト及びHTLV-1ウイルスにより引き起こされるT細胞白血病が挙げられるがこれらに限定されない。
【0073】
本発明の方法が有益であり得る自己免疫疾患には、
急性散在性脳炎
副腎不全
アレルギー性脈管炎及び肉芽腫症
アミロイドーシス
【0074】
強直性脊椎炎
喘息
自己免疫性アディソン病
自己免疫性脱毛症
自己免疫性慢性活動性肝炎
【0075】
自己免疫性溶血性貧血
自己免疫性好中球減少症
自己免疫性血小板減少性紫斑病
ベーチェット病
小脳変性
【0076】
慢性活動性肝炎
慢性炎症性脱髄性多発根神経障害
単クローン性高ガンマグロブリン血症を伴う慢性ニューロパシー
古典的結節性多発性動脈炎
先天性副腎過形成
【0077】
寒冷症
疱疹状皮膚炎
糖尿病
イートン‐ランバート筋無力症症候群
脳脊髄炎
【0078】
後天性表皮水疱症
結節性紅斑
グルテン過敏性腸症
グッドパスチャー症候群
ギヤン‐バレー症候群
【0079】
橋本甲状腺炎
甲状腺機能亢進
特発性ヘモクロマトーシス
特発性膜性糸球体腎炎
中枢神経系の孤立性脈管炎(isolated vasculitis)
【0080】
川崎病
微少変化腎疾患
雑多の脈管炎
混合結合組織病
伝導ブロックを伴う多病巣性運動神経障害(multifocal motor neuropathy)
【0081】
多発性硬化症
重症筋無力症
眼球クローヌス-筋クローヌス症候群
類天疱瘡
天疱瘡
【0082】
悪性貧血
多発性筋炎/皮膚筋炎
感染後関節炎
原発性胆汁性硬化症
乾癬
【0083】
反応性関節炎
ライター病
網膜症
慢性関節リウマチ
硬化性胆管炎
【0084】
シェーグレン症候群
スティッフマン症候群
亜急性甲状腺炎
全身性エリテマトーデス
全身性壊死性脈管炎
【0085】
全身性硬化症(強皮症)
高安動脈炎
側頭動脈炎
閉塞性血栓性血管炎
I型及びII型自己免疫性多内分泌腺症候群
【0086】
潰瘍性結腸炎
ブドウ膜炎
ヴェーゲナー肉芽腫症
が挙げられる。
【0087】
本発明による治療用可溶性γδTCR若しくは多価複合体、又は表面に少なくとも1つの本発明のγδTCRを発現する細胞は、通常、医薬的に許容されるキャリアを標準的には含む滅菌医薬組成物の一部として供給される。この医薬組成物は、(それを患者に投与する望ましい方法に依存して)任意の適切な剤形であり得る。医薬組成物は単位剤形で提供されてもよく、一般には密封された容器中で提供される。医薬組成物はキットの一部として提供されてもよい。このようなキットは、標準的には(必ずしも要しないが)、使用指示書を含む。キットは複数の単位剤形を含み得る。
【0088】
医薬組成物は、任意の適切な経路、例えば、非経口経路、経皮経路、又は吸入を介する経路、好ましくは非経口経路(皮下経路、筋肉内経路、又は最も好ましい静脈内経路を含む)による投与に適合され得る。このような組成物は、薬学分野で公知の任意の方法により、例えば滅菌条件下で活性成分をキャリア又は賦形剤と混合することにより製造され得る。
【0089】
本発明の物質の投薬量は、治療すべき疾患又は障害、治療すべき個体の年齢及び症状などに依存して広範囲に変わることがある。医師が、使用すべき適切な投薬量を最終的に決定する。
【0090】
遺伝子クローニング技術は、本発明の可溶性γδTCRを、好ましくは実質的に純粋な形態で提供するために使用され得る。これら技術は、例えば、J. SambrookらMolecular Cloning 2nd Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)に開示されている。したがって、更なる観点では、本発明は、本発明の可溶性TCRの鎖をコードする配列、又はその相補配列を含んでなる核酸分子を提供する。このような核酸配列は、T細胞クローンから単離されたTCRコード核酸に適切な変異(挿入、欠失又は置換による)を行うことにより、又は公表されたγδTCR DNA配列のデノボ合成により得てもよい。
【0091】
核酸分子は単離形態又は組換え形態であり得る。核酸分子はベクター中に組み込まれてもよく、ベクターは宿主細胞中に組み込まれてもよい。このようなベクター及び適切な宿主もまた本発明の更なる観点を構成する。
【0092】
本発明はまた、このような宿主細胞をTCR鎖の発現を引き起こす条件下でインキュベートし、次いでポリペプチドを精製することを含んでなる可溶性γTCR鎖又はδTCR鎖を得るための方法を提供する。
本発明の可溶性γδTCRは、細菌(例えばE. coli)中での封入体としての発現、及び続くインビトロでのリフォールディングにより得てもよい。
【0093】
可溶性γδTCR鎖のリフォールディングは、適切なリフォールディング条件下でインビトロで行なってもよい。特定の実施形態では、正確なコンホメーションを有するTCRは、可溶化剤(例えばグアニジン)を含んでなるリフォールディング緩衝液中で可溶化したTCR鎖をリフォールディングすることにより達成される。有利には、グアニジンは、少なくとも0.1M又は少なくとも1M又は少なくとも2.5M、又は約6Mの濃度で存在し得る。使用し得る代替の可溶化剤は、0.1M〜8M、好ましくは少なくとも1M又は少なくとも2.5Mの濃度の尿素である。リフォールディングの前に、好ましくは、システイン残基の完全な還元を確実にするために還元剤を使用する。
【0094】
当業者に公知のように、得られるリフォールディングしたタンパク質の収率を最適化するために、利用するリフォールディング方法を変え得る。例えば、必要に応じて、更なる変性剤(例えばDTT及びグアニジン)を使用してもよい。択一的に又は追加的に、異なる変性剤及び還元剤を、リフォールディング工程の前に使用してもよい(例えば、尿素、β-メルカプトエタノール)。択一的に又は追加的に、リフォールディングの間にレドックスカップル(例えば、シスタミン/システアミンレドックスカップル、DTT又はβ-メルカプトエタノール/大気酸素、並びに還元型及び酸化型のシステイン)を使用してもよい。
【0095】
折り畳み効率はまた、リフォールディング混合物に他の或るタンパク質成分(例えばシャペロンタンパク質)を添加することにより増大させ得る。向上したリフォールディングは、タンパク質をミニ-シャペロンが固相化されたカラムに通すことにより達成されている(Altamiranoら(1999) Nature Biotechnology 17: 187-191; Altamiranoら(1997) Proc Natl Acad Sci USA 94 (8): 3576-8)。
【0096】
或いは、本発明の可溶性TCRは、真核細胞系(例えば昆虫細胞)中での発現により取得され得る。
可溶性TCRの精製は、多くの異なる手段により達成され得る。代替の態様のイオン交換を用いてもよく、他の態様のタンパク質精製(例えば、ゲル濾過クロマトグラフィー又はアフィニティークロマトグラフィー)を使用してもよい。
【0097】
追加の観点
本発明の可溶性γδTCR又は多価複合体は、実質的に純粋な形態で、又は精製若しくは単離された調製物として提供されてもよい。例えば、本発明の可溶性γδTCR又は多価複合体は、他のタンパク質を実質的に含まない形態で提供されてもよい。
【0098】
本発明の各観点の好ましい特徴は、その他の観点の各々についても、必要な変更を加えてではあるが同様である。本明細書中で言及する先行技術文献は、法が許す最大限度で本明細書に組み込まれる。
【実施例】
【0099】
(実施例)
本発明を以下の実施例で更に説明するが、以下の実施例は本発明の範囲を如何なる様式でも制限しない。
【0100】
以下に、添付図面について言及する。
図1は、可溶性ジスルフィド連結αβTCR及び可溶性γδTCRの構造の比較を提供する。
図2a及び2bは、TRGC1エキソン1残基60とTRDCエキソン1残基47との間に導入ジスルフィド鎖間結合が組み込まれるように変異させた可溶性W γδTCRの可溶性TCRγ鎖及びδ鎖それぞれのDNA配列を詳述する。
【0101】
図3は、pGMT7プラスミドのDNA配列を詳述する。
図4a及び4bは、それぞれ図2a及び2bのDNA配列によりコードされるTCRγ鎖及びδ鎖のアミノ酸配列を詳述する。導入システイン残基は影付きで示す。
図5a及び5bは、TRGV9残基49とTRDJ1のモチーフFGXG(配列番号:1)(式中、Xは置換されるべき残基を指す)中に位置する残基との間に導入ジスルフィド鎖間結合が組み込まれるように変異させた可溶性W γδTCRのそれぞれ可溶性TCRγ鎖及びδ鎖のDNA配列を詳述する。
【0102】
図6a及び6bはそれぞれ、図5a及び5bのDNA配列によりコードされるアミノ酸配列を詳述する。導入システイン残基は影付きで示す。
図7a及び7bはそれぞれ、TRGJP残基13とTRDV1残基49との間に導入ジスルフィド鎖間結合が組み込まれるように変異させた可溶性W γδTCRの可溶性TCRγ鎖及びδ鎖のDNA配列を詳述する。
【0103】
図8a及び8bはそれぞれ、図7a及び7bのDNA配列によりコードされるアミノ酸配列を詳述する。導入システイン残基は影付きで示す。
図9a及び9bはそれぞれ、TRGC1エキソン1残基60とTRDCエキソン1残基47との間に導入ジスルフィド鎖間結合が導入されるように変異させた可溶性B γδTCRの可溶性TCRγ鎖及びδ鎖のDNA配列を詳述する。
【0104】
図10a及び10bは、図9a及び9bのDNA配列によりコードされるアミノ酸配列を詳述する。導入システイン残基は影付きで示す。
図11a及び11bはそれぞれ、TRGV9残基49とTRDJ1のモチーフFGXG(配列番号:1)(式中、Xは置換されるべき残基を指す)中に位置する残基との間に導入ジスルフィド鎖間結合が組み込まれるように変異させた可溶性B γδTCRの可溶性TCRγ鎖及びδ鎖のDNA配列を詳述する。
【0105】
図12a及び12bはそれぞれ、図11a及び11bのDNA配列によりコードされるアミノ酸配列を詳述する。導入システイン残基は影付きで示す。
図13a及び13bはそれぞれ、TRGJP残基13とTRDV2残基49との間に導入ジスルフィド鎖間結合が組み込まれるように変異させた可溶性B γδTCRの可溶性TCRγ鎖及びδ鎖のDNA配列を詳述する。
【0106】
図14a及び14bはそれぞれ、図13a及び13bのDNA配列によりコードされるアミノ酸配列を詳述する。導入システイン残基は影付きで示す。
図15は、図4a及び4bに詳述するアミノ酸配列を含んでなるγδTCRについて観察されたバンドとαβTCRについて観察されたバンドを比較するSDS-PAGEゲルである。ゲルは、還元TCRサンプル「R」及び非還元TCRサンプル「NR」で泳動した。
図16は、pGMT7ベクターのプラスミドマップを提供する。
【0107】
実施例1 − 導入ジスルフィド鎖間結合を含有する可溶性γδTCRをコードするDNAの作製
以下の実施例で改変γδTCRのベースとして使用したγδTCRは、以前に記載されている(Greenら(2004) Clin Exp Immunol (2004) 136 472-482)。この論文に記載されているこれらγδTCRのTCR鎖をコードする配列は、以下のアクセション番号でEMBL Nucleotide Sequence Databaseに記載されている:
【0108】
「BγδTCR」 γ鎖:アクセション番号−AJ583012
δ鎖:アクセション番号−AJ583013
「WγδTCR」 γ鎖:アクセション番号−AJ583014
δ鎖:アクセション番号−AJ583915
【0109】
それぞれ図2a及び2bに詳述する可溶性TCRγ鎖及びδ鎖をコードするDNA配列を含んでなる合成遺伝子を合成した。このW γδTCRは、TRGC1エキソン1残基60とTRDCエキソン1残基47との間に導入ジスルフィド鎖間結合を含有する。
【0110】
適切なDNAサービスを提供する多くの会社、例えばGeneart(ドイツ)が存在する。
次いで、可溶性TCRγ鎖及びδ鎖をコードする上記合成遺伝子を、pGMT7プラスミド中に別々にサブクローニングした。図3はpGMT7プラスミドのDNA配列を詳述し、図16はこのベクターのプラスミドマップを提供する。
【0111】
図4a及び4bはそれぞれ、図2a及び2bのDNA配列によりコードされるTCRγ鎖及びδ鎖のアミノ酸配列を詳述する。
同じ技術が、他の可溶性γδTCR(例えば以下のもの)をコードするDNAを作製するために使用することができる。
【0112】
図5a及び5bはそれぞれ、TRGV9 残基49とTRDJ1のモチーフFGXG(配列番号:1)(式中、Xは置換されるべき残基を指す)中に位置する残基との間に導入ジスルフィド鎖間結合が組み込まれるように変異させた可溶性W γδTCRの可溶性TCRγ鎖及びδ鎖のDNA配列を詳述する。
図6a及び6bはそれぞれ、図5a及び5bのDNA配列によりコードされるアミノ酸配列を詳述する。
【0113】
図7a及び7bはそれぞれ、TRGJP残基13とTRDV1残基49との間に導入ジスルフィド鎖間結合が組み込まれるように変異させた可溶性W γδTCRの可溶性TCRγ鎖及びδ鎖のDNA配列を詳述する。
図8a及び8bはそれぞれ、図7a及び7bのDNA配列によりコードされるアミノ酸配列を詳述する。
【0114】
図9a及び9bはそれぞれ、TRGC1エキソン1残基60とTRDCエキソン1残基47との間に導入ジスルフィド鎖間結合が組み込まれるように変異させた可溶性B γδTCRの可溶性TCRγ鎖及びδ鎖のDNA配列を詳述する。
図10a及び10bはそれぞれ、図9a及び9bのDNA配列によりコードされるアミノ酸配列を詳述する。
【0115】
図11a及び11bはそれぞれ、TRGV9残基49とTRDJ1のモチーフFGXG(配列番号:1)(式中、Xは置換されるべき残基を指す)中に位置する残基との間に導入ジスルフィド鎖間結合が組み込まれるように変異させた可溶性B γδTCRの可溶性TCRγ鎖及びδ鎖のDNA配列を詳述する。
図12a及び12bはそれぞれ、図11a及び11bのDNA配列によりコードされるアミノ酸配列を詳述する。
【0116】
図13a及び13bはそれぞれ、TRGJP残基13とTRDV2残基49との間に導入ジスルフィド鎖間結合が組み込まれるように変異させた可溶性B γδTCRの可溶性TCRγ鎖及びδ鎖のDNA配列を詳述する。
図14a及び14bはそれぞれ、図13a及び13bのDNA配列によりコードされるアミノ酸配列を詳述する。
【0117】
図15は、図4a及び4bに詳述するアミノ酸配列を含んでなるγδTCRについて観察されたバンドとαβTCRについて観察されたバンドを比較するSDS-PAGEゲルである。ゲルは、還元TCRサンプル「R」及び非還元TCRサンプル「NR」で泳動した。
【0118】
実施例2 − 可溶性γδTCRの発現、リフォールディング及び精製
それぞれ図1a及び1bによりコードされる可溶性TCRγ鎖及びδ鎖を含有するpGMT7(図3はpGMT7プラスミドのDNA配列を詳述し、図16はこのベクターのプラスミドマップを提供する)発現プラスミドを、別々にE.coli株BL21pLysSに形質転換し、1つのアンピシリン耐性コロニーを、TYP(アンピシリン100μg/ml)培地中で37℃にて0.4のOD600まで増殖させた後、0.5mMのIPTGでタンパク質発現を誘導した。誘導の3時間後に細胞をBeckman J-6B中での4000rpmにて30分間の遠心分離により採集した。細胞ペレットを、50mMのTris-HCl、25%(w/v)のスクロース、1mMのNaEDTA、0.1%(w/v)のNaAzide、10mMのDTTを含有する緩衝液(pH8.0)中に再懸濁した。一晩の凍結−解凍工程の後、再懸濁細胞を、Milsonix XL2020ソニケータ中での標準の12mm径プローブを使用する1分間のバーストで合計約10分間の超音波処理に付した。封入体ペレットを、Beckman J2-21遠心機における13000rpmにて30分間の遠心分離により回収した。次いで、3回の界面活性剤での洗浄を行い、細胞残渣及び膜成分を除去した。各回、封入体ペレットをTriton緩衝液(50mMのTris-HCl、0.5%のTriton-X100、200mMのNaCl、10mMのNaEDTA、0.1%(w/v)のNaAzide、2mMのDTT、pH8.0)中でホモジナイズした後、Beckman J2-21における13000rpmにて15分間の遠心分離によりペレット化した。次いで、以下の緩衝液中での同様な洗浄により界面活性剤及び塩を除去した:50mMのTris-HCl、1mMのNaEDTA、0.1%(w/v)のNaAzide、2mMのDTT、pH8.0。最後に、封入体を30mgずつ小分けし、−70℃にて凍結させた。封入体タンパク質の収率を、6Mグアニジン-HClで可溶化し、Bradford色素結合アッセイ(PerBio)で測定することにより定量した。
【0119】
可溶性TCRγ鎖及びδ鎖の変性:30mgの可溶化TCRγ鎖封入体及び30mgの可溶化TCRδ鎖封入体を凍結ストックから解凍した。封入体を、6Mグアニジン溶液中5mg/mlの最終濃度に希釈し、DTT(2Mストック)を10mMの最終濃度まで添加した。混合物を37℃にて30分間インキュベートした。
【0120】
可溶性TCRγ鎖及びδ鎖のリフォールディング:250mlのリフォールディング緩衝液を5℃±3℃にて勢いよく撹拌した。レドックスカップルを約5分間加えた(2-メルカプトエチルアミン及びシスタミンをそれぞれ6.6mM及び3.7mMの最終濃度まで)後、変性TCRγ鎖及びδ鎖を添加した。次いで、可溶性γδTCRを、5℃±3℃にて撹拌しながら、約1時間±15分間リフォールディングさせた。
【0121】
リフォールディングした可溶性γδTCRの透析:リフォールディングした可溶性γδTCRを、Spectrapor 1メンブレン(Spectrum;製品番号132670)において、10Lの10mM Tris(pH8.1)に対して、5℃±3℃にて18〜20時間透析した。その後、透析緩衝液を新鮮な10mM Tris(pH8.1)(10L)に交換し、透析を5℃±3℃にて更に20〜22時間続けた。
【0122】
図15は、図4a及び4bに詳述するアミノ酸配列を含んでなるリフォールディングしたγδTCRについて観察されたバンドとαβTCRについて観察されたバンドを比較するSDS-PAGEゲルである。ゲルは、還元TCRサンプル「R」及び非還元TCRサンプル「NR」で泳動した。
【0123】
実施例3 − γδTCRリガンドを提示する細胞を決定するためのインビトロ細胞アッセイ
末梢血単核細胞(PBMC)を静脈血サンプルからLymphoprepを用いて単離する。PBMCを洗浄し、直ぐに使用する。新たに単離したPBMCを10%自家ヒト血清/RPMI(Gibco BRL)中で2回洗浄する。最後に、細胞をRPMI培地中に再懸濁する。
【0124】
次いで、RPMI培地中の5×106のこれらPBMCに、製造業者の指示に従って(ビオチン化)可溶性γδTCRでコートした磁性ビーズ(Dynal Biotech, Norway)を加える。次いで、培養物を37℃、5%CO2にて30分間インキュベートする。このインキュベート期間の間に、γδTCRリガンドを提示する細胞は、ビーズに接着する。次いで、これら接着細胞を培養物の残りから磁力で分離する。
【0125】
上記方法は、所定のγδTCRにより認識されるリガンドを提示する、疾患を有する対象及び疾患を有さない対象に由来する細胞集団を定量できる簡便な手段を提供する。更に、単離された細胞集団は、提示された特定のγδTCRリガンドを同定するために使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】図1は可溶性ジスルフィド連結αβTCR及び可溶性γδTCRの構造の比較を提供する。
【図2】図2a及び2bは、TRGC1エキソン1残基60とTRDCエキソン1残基47との間に導入ジスルフィド鎖間結合が組み込まれるように変異させた可溶性W γδTCRの可溶性TCRγ鎖及びδ鎖それぞれのDNA配列を詳述する。
【図3−1】図3はpGMT7プラスミドのDNA配列を詳述する。
【図3−2】図3はpGMT7プラスミドのDNA配列を詳述する(図3−1の続き)。
【図4】図4a及び4bは、それぞれ図2a及び2bのDNA配列によりコードされるTCRγ鎖及びδ鎖のアミノ酸配列を詳述する。導入システイン残基は影付きで示す。
【図5】図5a及び5bは、TRGV9残基49とTRDJ1のモチーフFGXG(配列番号:1)(式中、Xは置換されるべき残基を指す)中に位置する残基との間に導入ジスルフィド鎖間結合が組み込まれるように変異させた可溶性W γδTCRのそれぞれ可溶性TCRγ鎖及びδ鎖のDNA配列を詳述する。
【図6】図6a及び6bはそれぞれ、図5a及び5bのDNA配列によりコードされるアミノ酸配列を詳述する。導入システイン残基は影付きで示す。
【図7】図7a及び7bはそれぞれ、TRGJP残基13とTRDV1残基49との間に導入ジスルフィド鎖間結合が組み込まれるように変異させた可溶性W γδTCRの可溶性TCRγ鎖及びδ鎖のDNA配列を詳述する。
【図8】図8a及び8bはそれぞれ、図7a及び7bのDNA配列によりコードされるアミノ酸配列を詳述する。導入システイン残基は影付きで示す。
【図9】図9a及び9bはそれぞれ、TRGC1エキソン1残基60とTRDCエキソン1残基47との間に導入ジスルフィド鎖間結合が導入されるように変異させた可溶性B γδTCRの可溶性TCRγ鎖及びδ鎖のDNA配列を詳述する。
【図10】図10a及び10bは、図9a及び9bのDNA配列によりコードされるアミノ酸配列を詳述する。導入システイン残基は影付きで示す。
【図11】図11a及び11bはそれぞれ、TRGV9残基49とTRDJ1のモチーフFGXG(配列番号:1)(式中、Xは置換されるべき残基を指す)中に位置する残基との間に導入ジスルフィド鎖間結合が組み込まれるように変異させた可溶性B γδTCRの可溶性TCRγ鎖及びδ鎖のDNA配列を詳述する。
【図12】図12a及び12bはそれぞれ、図11a及び11bのDNA配列によりコードされるアミノ酸配列を詳述する。導入システイン残基は影付きで示す。
【図13】図13a及び13bはそれぞれ、TRGJP残基13とTRDV2残基49との間に導入ジスルフィド鎖間結合が組み込まれるように変異させた可溶性B γδTCRの可溶性TCRγ鎖及びδ鎖のDNA配列を詳述する。
【図14】図14a及び14bはそれぞれ、図13a及び13bのDNA配列によりコードされるアミノ酸配列を詳述する。導入システイン残基は影付きで示す。
【図15】図15は、図4a及び4bに詳述するアミノ酸配列を含んでなるγδTCRについて観察されたバンドとαβTCRについて観察されたバンドを比較するSDS-PAGEゲルである。ゲルは、還元TCRサンプル「R」及び非還元TCRサンプル「NR」で泳動した。
【図16】図16はpGMT7ベクターのプラスミドマップを提供する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)TCRγ鎖の全て又は一部と(ii)TCRδ鎖の全て又は一部とを含んでなり、ここで(i)及び(ii)は天然型γδTCR中に存在しないジスルフィド結合により連結されている、γδT細胞レセプター(TCR)。
【請求項2】
ジスルフィド結合が、(i)TRGC1又はTRGC2(2x)又はTRGC2(3x)のエキソン1の残基60及びTRDCのエキソン1の残基47から置換したシステイン残基同士間にあるか;又は
TRGVの残基49及びTRDJのモチーフFGXG(配列番号:1)(式中、Xは置換されるべき残基を示す)中に位置する残基から置換したシステイン残基同士間にあるか;又は
TRGJの以下のモチーフ:FX1X2G(配列番号:2)(式中、X2は置換されるべき残基を示す)中に位置する残基及びTRDVの残基49から置換したシステイン残基同士間にあるか、
或いは(ii)へテロ二量体γδTCRの場合においてのみ、該TCRのC末端で融合したペプチド配列中に存在するシステイン残基同士間にある、請求項1に記載のTCR。
【請求項3】
へテロ二量体TCR(dTCR)である請求項1又は2に記載のTCR。
【請求項4】
単鎖TCR(scTCR)である請求項1〜3のいずれか1項に記載のTCR。
【請求項5】
ジスルフィド結合がTRGC1エキソン1残基60及びTRDCエキソン1残基47から置換したシステイン残基同士間にある請求項1〜4のいずれか1項に記載のTCR。
【請求項6】
可溶性であり、TCR膜貫通ドメインを欠いている請求項1〜5のいずれか1項に記載のTCR。
【請求項7】
TCR鎖の一方又は両方がC末端又はN末端で或る成分で誘導体化されているか又は或る成分と融合している請求項6に記載の可溶性γδTCR。
【請求項8】
検出可能な標識を含んでなる請求項6に記載の可溶性TCR。
【請求項9】
治療剤と結合した請求項6に記載の可溶性TCR。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の可溶性TCRを複数含んでなる多価TCR複合体。
【請求項11】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のTCRを少なくとも1つ表面に発現する細胞。
【請求項12】
(i)請求項1〜9のいずれか1項に記載のTCR又は請求項10に記載のその多価複合体又は請求項11に記載の細胞を提供し;
(ii)TCR又はその多価複合体又は請求項11に記載の細胞を多様な細胞の集団と接触させ;
(iii)TCR又はその多価TCR複合体又は請求項11に記載の細胞とTCRリガンド複合体を提示する細胞との結合を検出することを含んでなる、TCR-リガンド複合体を提示する細胞を同定する方法。
【請求項13】
請求項1〜9のいずれか1項に記載のTCR及び/又は請求項10に記載の多価TCR複合体及び/又は請求項11に記載の細胞を医薬的に許容され得るキャリアと共に含んでなる医薬製剤。
【請求項14】
ガンを患っている対象に、請求項9に記載の治療剤と結合したTCR及び/又は請求項10に記載のその多価複合体及び/又は請求項11に記載の細胞の有効量を投与することを含んでなるガンの治療方法。
【請求項15】
治療剤と結合したVγ9Vδ2TCR及び/又はその多価複合体及び/又はVγ9Vδ2TCRを発現する請求項11に記載の細胞を投与することを含んでなる請求項14に記載の方法。
【請求項16】
ガンの治療用組成物の製造における請求項9に記載の治療剤と結合したTCR及び/又は請求項10に記載のその多価複合体及び/又は請求項11に記載の細胞の使用。
【請求項17】
ガンの治療用組成物の製造における請求項9に記載の治療剤と結合したVγ9Vδ2TCR及び/又は請求項10に記載のその多価複合体及び/又はVγ9Vδ2TCRを発現する請求項11に記載の細胞の使用。
【請求項18】
請求項1〜9のいずれか1項に記載のTCRの(i)又は(ii)をコードする配列又はその相補配列を含んでなる核酸分子。
【請求項19】
請求項18に記載の核酸分子を含んでなるベクター。
【請求項20】
請求項21に記載のベクターを含んでなる宿主細胞。
【請求項21】
請求項20に記載の宿主細胞を、ペプチドの発現を引き起こす条件下でインキュベートし、次いでポリペプチドを精製することを含んでなる請求項1〜9のいずれか1項に記載の(i)又は(ii)を取得する方法。
【請求項22】
(i)及び(ii)を適切なリフォールディング条件下で混合することを更に含んでなる請求項21に記載の方法。

【図2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図16】
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【図1】
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【図15】
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【公表番号】特表2008−520223(P2008−520223A)
【公表日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−542079(P2007−542079)
【出願日】平成17年10月31日(2005.10.31)
【国際出願番号】PCT/GB2005/004198
【国際公開番号】WO2006/056733
【国際公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【出願人】(505121578)メディジーン リミテッド (17)
【氏名又は名称原語表記】MEDIGENE LIMITED
【Fターム(参考)】