説明

ガンマカメラ

【課題】被検体の体軸方向へ移動する検出器モジュールを体表面に精度よく接近させることにより良質な画像データを収集する。
【解決手段】被検体150の体軸方向における広範囲な領域から放射されたγ線を検出部2に設けられた検出器モジュール21によって検出し、得られた検出信号に基づいて画像データを生成する際、検出器移動機構部4は、被検体150の体軸方向に所定間隔で配置した複数からなる前記検出器モジュール21を体軸方向へ所定速度で移動させると共に、距離計測部が計測する検出器モジュール21と体表面との距離計測結果に基づいて検出器モジュール21の各々を被検体150の体表面方向へ移動させる。そして、体表面から所望距離Δhに配置した検出器モジュール21によって検出されるγ線に基づいて空間分解能及びコントラスト分解能に優れた画像データを生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射性同位元素によって標識された薬剤を投与した被検体から放射されるγ線を2次元的に検出することにより、被検体内における放射性同位元素の分布を画像化するガンマカメラに関する。
【背景技術】
【0002】
X線診断装置、MRI装置、X線CT装置及び核医学イメージング装置などを用いた医用画像診断は、コンピュータ技術の発展に伴って急速な進歩を遂げ、今日の医療において必要不可欠なものとなっている。
【0003】
上述のX線診断装置やX線CT装置は、臓器や腫瘍等の輪郭を描出することによって診断を行なう、所謂形態学診断を目的としているのに対し、核医学イメージング装置は、生体組織に選択的に取り込まれた同位元素又はその標識化合物から放射されるγ線を体外にて計測し、その線量分布を画像化することにより被検体に対する機能診断を可能としている。
【0004】
この核医学イメージング装置として、ガンマカメラ、シングルフォトンエミッションCT装置(SPECT装置)、ポジトロンエミッションCT装置(PET装置)等が臨床の場で使用されている。
【0005】
ガンマカメラは、被検体内から放射されるγ線を、この被検体に対向させて配置した検出部の検出器モジュールによって検出することにより、この検出器モジュールに投影された放射性同位元素の分布を2次元画像データとして収集する装置であり、検出器モジュールの前面に設けられたコリメータによってγ線の入射方向を特定している。そして、被検体の全身検査が可能なホールボディ用のガンマカメラでは、体軸方向の幅(縦幅)が約40cm、体軸方向に直交する横幅が約50cmの有効視野幅を有する検出器モジュールを当該被検体の体軸方向へ相対的に移動させることにより画像データの収集を行なっている。この場合、検出部が搭載された架台部を固定した状態で被検者を載置した天板を体軸方向へ移動させる方法、あるいは、被検者が載置された天板を固定した状態で検出部を搭載した架台部を体軸方向へ移動させる方法の何れかによって体軸方向に広範囲な領域に対し画像データの収集が行なわれる。
【0006】
このようなホールボディ用のガンマカメラに備えられた検出器モジュールを用いて当該被検体の体内から放射されるγ線を検出し画像データを生成する場合、検出器モジュールを被検者の体表面に接近させる程空間分解能やコントラスト分解能に優れた画像データを生成することができる。このため、近年のガンマカメラは、検出器モジュールと体表面との距離を計測する非接触センサを備え、検出器モジュールを被検体の体軸方向へ移動させる際に非接触センサの計測結果に基づいて前記検出器モジュールを体表面に対して自動的に近接させる機能を有している(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−295425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述の特許文献1に記載された方法によれば、凹凸の無い体表面に対しては検出器モジュールを容易に接近させることができるため空間分解能やコントラスト分解能に優れた画像データの収集が可能となり、又、検出器モジュールと体表面との干渉(接触)を確実に防止することができる。
【0009】
しかしながら、従来のガンマカメラが備える検出器モジュールの縦幅は上述のように比較的大きく、この検出器モジュールに最も近接する体表面の凸部によって検出器モジュールの体表面方向における位置が決定される。このため、額、鼻、腹部、膝、爪先等のように局所的な凸部を有する体表面に対し検出器モジュールを近接させる場合、凸部に隣接した凹部に対する近接が不可能となる。
【0010】
又、上述した従来のガンマカメラでは、単一の検出器モジュールを体軸方向へ移動させて広範囲な画像データを収集しているため、例えば、身長が150cm乃至200cmの被検体を15分乃至20分で検査するためには10cm/min乃至15cm/minの速度で検出器モジュールを移動させなくてはならない。このように体軸方向に対する検出器モジュールの移動速度は高速となるため、検出器モジュールと体表面との距離を精度よく計測することが困難となり、従って、検出器モジュールを体表面に対して十分接近させることができない。
【0011】
即ち、従来のホールボディ用のガンマカメラでは、上述の理由により空間分解能及びコントラス分解能に優れた画像データを効率よく収集することが困難であるという問題点を有していた。
【0012】
本発明は、上述の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、被検体の体内から放射されるγ線を検出する検出器モジュールを前記被検体の体軸方向へ移動させることによって広範囲な画像データを収集する際、検出器モジュールを前記被検体の体表面に対し確実に近接させることが可能なガンマカメラを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、請求項1に係る本発明のガンマカメラは、放射性同位元素が投与された被検体から放射されるγ線を検出し、その検出結果に基づいて画像データを生成するガンマカメラにおいて、前記被検体の体軸方向に所定間隔で配置され、前記被検体から放射されるγ線を検出して電気的な検出信号へ変換する複数の検出器モジュールを有する検出手段と、前記検出器モジュールを前記被検体の体軸方向及び体表面方向へ移動させる検出器移動手段と、前記検出器移動手段に対して駆動信号を供給する移動機構駆動手段と、前記検出信号に基づいて画像データを生成する画像データ生成手段とを備えたことを特徴としている。
【0014】
又、請求項6に係る本発明のガンマカメラは、放射性同位元素が投与された被検体から放射されるγ線を検出し、その検出結果に基づいて画像データを生成するガンマカメラにおいて、前記被検体の体軸方向に所定間隔で配置され、前記被検体から放射されるγ線を検出して電気的な検出信号へ変換する複数の検出器モジュールを有する検出手段と、前記検出器モジュールを前記被検体の体表面方向へ移動させる検出器移動手段と、前記被検体が載置された天板を前記体軸方向へ移動させる天板移動手段と、前記検出器移動手段及び前記天板移動手段に対して駆動信号を供給する移動機構駆動手段と、前記検出信号に基づいて画像データを生成する画像データ生成手段とを備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、被検体の体内から放射されるγ線を検出する検出器モジュールを前記被検体の体軸方向へ移動させることによって広範囲な画像データを収集する際、検出器モジュールを前記被検体の体表面に対し確実に近接させることが可能となる。このため、空間分解能やコントラスト分解能に優れた画像データを効率よく収集することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施例におけるガンマカメラの全体構成を示すブロック図。
【図2】同実施例のガンマカメラが備える検出器モジュールの具体的な構成を示す図。
【図3】同実施例のガンマカメラが備える距離計測部の具体的な構成を示す図。
【図4】同実施例のガンマカメラが備える検出器移動機構部の具体的な構成を示すブロック図。
【図5】同実施例における検出器モジュールの移動を説明するための図。
【図6】同実施例における検出器モジュールの体軸方向における初期位置と移動速度を示す図。
【図7】同実施例のガンマカメラが備える移動機構駆動部の具体的な構成を示す図。
【図8】同実施例のガンマカメラが備える信号演算部の検出位置算出部及びエネルギー算出部を説明するための図。
【図9】同実施例における画像データの収集手順を示すフローチャート。
【図10】本発明の第2の実施例におけるガンマカメラの全体構成を示すブロック図。
【図11】同実施例における検出器モジュールの移動方法を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図面を参照して本発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0018】
本発明の第1の実施例におけるガンマカメラは、被検体の体軸方向における広範囲な領域から放射されたγ線を検出器モジュールによって検出し、得られた検出信号に基づいて画像データを生成する際、前記被検体の体軸方向に所定間隔Δdで配置した複数からなる検出器モジュールを体軸方向へ所定速度Voで移動させると共に、検出器モジュールと体表面との距離計測結果に基づいて前記検出器モジュールの各々を体表面方向へ移動させる。そして、体表面からの距離がΔhの位置に設定された前記検出器モジュールによって検出されるγ線に基づいて空間分解能及びコントラスト分解能に優れた画像データを生成する。
【0019】
(装置の構成)
本発明の第1の実施例におけるガンマカメラの構成につき図1乃至図8を用いて説明する。尚、図1は、本実施例におけるガンマカメラの全体構成を示すブロック図であり、図4及び図7は、このガンマカメラが備える検出器移動機構部及び移動機構駆動部の具体的な構成を示すブロック図である。
【0020】
図1に示すガンマカメラ100は、被検体150の体軸方向(y方向)に所定間隔で配列され、放射性同位元素(RI)が投与された被検体150から放射されるγ線を検出して電気的な検出信号へ変換する複数個の検出器モジュールを有する検出部2と、前記検出器モジュールから被検体150の体表面までの距離を計測する複数個の非接触センサを有する距離計測部3と、前記検出器モジュールを体軸方向及び体表面方向(z方向)へ移動させる検出器移動機構部4と、検出部2、距離計測部3及び検出器移動機構部4を被検体150の周囲に保持する架台部5と、被検体150を載置した天板61を保持し被検体150の体軸方向へ移動させる寝台部6と、前記検出器モジュールを体軸方向及び体表面方向へ移動させるために検出器移動機構部4に対して駆動信号を供給する移動機構駆動部7を備え、更に、検出部2から供給される検出信号に基づいて検出部2にて検出されたγ線の検出強度(エネルギー)と検出位置を算出し、これらの算出結果に基づいて所定方向から放射されたγ線を計数する信号演算部8と、得られたγ線の計数結果と検出位置に基づいて画像データを生成する画像データ生成部10と、生成された画像データを表示する表示部11と、被検体情報の入力、検出信号収集条件及び画像データ生成条件の設定、更には、各種コマンド信号の入力等を行なう入力部12と、上述の各ユニットを統括的に制御するシステム制御部13を備えている。
【0021】
検出部2は、被検体150の体軸方向に所定間隔Δdで配列された図示しない複数個(N個)の検出器モジュール21−1乃至21−Nを備え、これらの検出器モジュール21−1乃至21−Nは、被検体150の体内から放射されたγ線を一旦可視光に変換した後電気的な検出信号に変換する。このとき、放射性同位元素(RI)が投与され天板61に載置された被検体150は、検出器モジュール21−1乃至21−Nの下方近傍に配置される。
【0022】
図2は、検出器モジュール21の具体的な構成を示したものであり、この検出器モジュール21の前面には、y方向(体軸方向)にMa1、y方向と直交するx方向にMa2の孔を有しγ線の入射方向を限定すると共に視野範囲を規定するコリメータ211と、被検体150からコリメータ211を介して入射するγ線を可視光に変換するシンチレータ212と、y方向にMb1個、x方向にMb2個配設され前記可視光を電気的な検出信号に変換すると共に変換した微弱な検出信号を増幅する光電子増倍管213を有している。
【0023】
コリメータ211には、z軸方向に平行な孔をもつパラレルホール型や大きな臓器を縮小して画像化するためのコンバージング型、更には、小さな臓器を拡大して画像化するためのダイバージング型等がある。又、静的測定に適した高分解能コリメータや短時間の動的測定に適した高感度コリメータ等もあり、診断目的や診断対象部位等により好適なコリメータが選択される。
【0024】
一方、シンチレータ212は、被検体150の体内に投与された放射性同位元素(RI)から放射されるγ線に基づいて数μ秒以下の持続時間を有する蛍光を発生し、通常、ビスマスジャーマネイド(BGO:(BiGe12))、タリウム活性化ヨウ化ナトリウム(NaI(Tl))、フッ化バリウム(BaF)等の材料によって構成されている。
【0025】
光電子増倍管213は、例えば、数百個からなる光子を10〜1010個の電子に増幅し、増倍管の出力段である陽極にその電子を収集して電気信号に変換するものであり図示しない光電陰極と電子増倍器を備えている。前記光電陰極には、その波長特性がシンチレータ212の発光波長に略均しい多アルカリ物質、あるいは酸素やセシウムで活性化したバイアルカリ物質が用いられる。一方、前記電子増倍器は、2次電子放出現象に基づき、電子の伝搬経路に沿って配置された多段の電極と増幅された電子を収集する陽極とから構成されている。
【0026】
尚、図2に示した検出器モジュール21では、説明を簡単にするためにコリメータ211のy方向に対する孔数Ma1を6、x方向に対する孔数Ma2を8とし、光電子増倍管213のy方向に対する個数Mb1を3、x方向に対する個数MB2を8とした場合について示しているがこれらに限定されない。
【0027】
次に、図1に示した距離計測部3の具体的な構成につき図3を用いて説明する。この距離計測部3には、上述の検出器2が備えた検出器モジュール21−1乃至21−Nに対応したN個の非接触センサ31−1乃至31−Nが設けられ、検出器モジュール21−1乃至21−Nの下端部(体表面側端部)と被検体150の体表面との距離を検出する機能を有している。図3は、発光ダイオード(LED)等を用いた発光素子32とフォトトランジスタ等を用いた受光素子33によって構成される非接触センサ31の具体例を示したものであり、発光素子32及び受光素子33は、対向させた状態で検出器モジュール21の体表面側端部に取り付けられる。そして、発光素子32から発生した光は、被検体150の体表面が接近する空間を介して受光素子33に供給され、受光素子33において電気的な受信信号に変換されて移動機構駆動部7が備える後述の近接状態判定部72へ供給される。
【0028】
この場合、図3に示すように検出器モジュール21が被検体150の体表面に接近する際の受光素子32における受光量を計測することにより体表面に対する検出器モジュール21の接近が検出され、この計測結果に基づいて移動機構駆動部7を制御することにより、体表面から距離Δhだけ離れた位置に検出器モジュール21を配置することが可能となる。
【0029】
次に、図1に示した検出器移動機構部4の具体的な構成につき図4のブロック図を用いて説明する。この検出器移動機構部4は、検出部2が有する上述の検出器モジュール21−1乃至21−Nの各々に対応するNチャンネルの移動機構ユニット41−1乃至41−Nを備え、移動機構ユニット41−1乃至41−Nの各々には、体軸方向移動機構42、体表面方向移動機構43及び体軸方向位置検出部44が設けられている。
【0030】
体軸方向移動機構42−1乃至42−Nは、体軸方向に対して所定間隔Δdで配列された検出器モジュール21−1乃至21−Nを移動機構駆動部7から供給される体軸方向移動用駆動信号に基づいて前記体軸方向へ所定速度Voで移動させ、体表面方向移動機構43−1乃至43−Nは、上述の検出器モジュール21−1乃至21−Nを移動機構駆動部7から供給される体表面方向移動用駆動信号に基づいて体表面方向へ移動させる。一方、体軸方向位置検出部44−1乃至44−Nは、図示しないエンコーダ等の位置センサを備え、体軸方向へ所定速度Voで移動する検出器モジュール21−1乃至21−Nの位置を逐次検出する。
【0031】
次に、被検体150の体表面に沿って体軸方向へ移動する検出器モジュール21−1乃至21−Nにつき図5を用いて説明する。既に述べたように、体軸方向に対し所定間隔Δdで配置された検出器モジュール21−1乃至21−Nは、検出器移動機構部4の移動機構ユニット41−1乃至41−Nに設けられた体軸方向移動機構42−1乃至42−N及び体表面方向移動機構43−1乃至43−Nに接続されている。そして、検出器モジュール21−1乃至21−Nの各々は、移動機構駆動部7から供給される体軸方向移動用駆動信号及び体表面方向移動用駆動信号に従って体軸方向へ所定速度Voで移動すると共に体表面から距離Δhだけ離れた位置まで接近することにより、体表面に近接した状態で体軸方向へ移動することが可能となる。
【0032】
一方、図6は、被検体150の体表面に沿って所定速度Voで体軸方向(y方向)へ移動する検出器モジュール21−1乃至21−Nの初期位置を示したものであり、本実施例では、検出器モジュール21−1乃至21−Nの各々を、体軸方向に隣接する検出器モジュールまでの距離Δdを移動させることによって被検体150の広範囲な領域に対する検査が行なわれる。従って、この検査に要する時間Tx(Tx=Δd/Vo)は、単一の検出器モジュールを用いた従来のガンマカメラによる検査と比較して略1/N倍に短縮される。又、従来のガンマカメラが有する上述の検出器モジュールと比較して体軸方向の幅(縦幅)が小さい検出器モジュール21−1乃至21−Nを体軸方向に配列することにより顕著な凹凸が存在する体表面に対しても検出器モジュール21−1乃至21−Nを接近させることが容易となり、従って、良質な検出信号を収集することが可能となる。
【0033】
図1へ戻って、架台部5は、検出部2、距離計測部3及び検出器移動機構部4を被検体150の周囲に保持し、更に、これらの各ユニットを体軸方向に平行な回転軸を中心として所望の方向へ回動させる機能や被検体150の体表面に対して接近/離反させる機能を有している。一方、寝台部6は、その上部に体軸方向へのスライドが自在な天板61を有し、被検体150が載置された天板61を体軸方向へ移動させることにより検出部2を被検体150の好適な部位に設定する。
【0034】
次に、移動機構駆動部7の具体的な構成につき図7のブロック図を用いて説明する。移動機構駆動部7は、図7に示すように体軸方向移動用駆動信号発生部71、近接状態判定部72及び体表面方向移動用駆動信号発生部73を備え、体軸方向移動用駆動信号発生部71は、入力部12からシステム制御部13を介して供給される検出器モジュール21−1乃至21−Nの移動速度Vo及び配列間隔Δdの情報と移動指示信号に基づいて持続時間Tx(Tx=Δd/Vo)の体軸方向移動用駆動信号を生成し検出器移動機構部4の移動機構ユニット41−1乃至S41−Nに設けられた体軸方向移動機構42−1乃至42−Nへ供給する。
【0035】
一方、近接状態判定部72は、距離計測部3における非接触センサ31−1乃至31−Nの受光素子33から供給される受信信号と予め設定された閾値αとを比較し、その比較結果に基づいて被検体150の体表面に対する検出器モジュール21−1乃至21−Nの近接状態を判定する。具体的には、前記受信信号の振幅が閾値αより大きい場合、検出器モジュール21−1乃至21−Nの先端部と体表面との距離(以下では、モジュール−体表間距離と呼ぶ。)は所定の距離Δhより大きく、前記受信信号の振幅が閾値αより小さい場合、モジュール−体表間距離は距離Δhより小さいと判定する。又、前記受信信号の振幅と閾値αが等しい場合、モジュール−体表間距離は距離Δhに等しいと判定する。
【0036】
体表面方向移動用駆動信号発生部73は、近接状態判定部72から供給される判定結果を受信する。そして、近接状態判定部72によってモジュール−体表間距離は距離Δhより大きいと判定された場合、検出器モジュール21−1乃至21−Nを体表面方向へ接近させるための体表面方向移動用駆動信号を生成して検出器移動機構部4に設けられた体表面方向移動機構43−1乃至43−Nへ供給する。
【0037】
一方、モジュール−体表間距離は距離Δhに等しいと判定された場合、体表面方向移動機構43−1乃至43−Nに対する体表面方向移動用駆動信号の供給を停止することにより検出器モジュール21−1乃至21−Nを所定の距離Δhに停止させる。更に、検出器モジュール21−1乃至21−Nの体軸方向に対する移動に伴ってモジュール−体表間距離は距離Δhより小さくなったと判定された場合、検出器モジュール21−1乃至21−Nを体表面から離反させるための体表面方向移動用駆動信号を生成して体表面方向移動機構43−1乃至43−Nへ供給する。
【0038】
再び図1へ戻って、信号演算部8は、上述の検出器モジュール21−1乃至21−Nの各々が備えたM3個(M3=Mb1×Mb2)の光電子増倍管213から供給されるM3チャンネルの検出信号に基づいて検出器モジュール21−1乃至21−Nにおけるγ線の検出位置を算出する検出位置算出部81と、前記M3チャンネルの検出信号を加算合成してγ線の検出強度(エネルギー)を算出するエネルギー算出部82と、各々の検出位置にて検出されたγ線のエネルギーとカウント数に基づき所望の核種から放射された所定範囲のエネルギーを有するγ線のカウント数を算出するエネルギー分析部83とを備えている。
【0039】
次に、信号演算部8の検出位置算出部81及びエネルギー算出部82につき図8を用いて説明する。但し、図8(a)及び図8(b)は、x方向に対してMa2=21の孔を有するコリメータ211及びMb2=7の光電子増倍管213がシンチレータ212を介して接続された検出器モジュール21と光電子増倍管213に接続された検出位置算出部81及びエネルギー算出部82を示している。
【0040】
そして、図8(a)に示すように図示しない被検体150の体内から放射されたγ線がコリメータ211におけるx=0の孔を介してシンチレータ212に入射した場合、シンチレータ212のx=0から発生した可視光は、x=0、x=±1、x=±2の光電子増倍管213において電気的な検出信号に変換され信号演算部8の検出位置算出部81及びエネルギー算出部82に供給される。
【0041】
この場合、光電子増倍管213から出力される検出信号の振幅はシンチレータ212を伝搬する可視光の伝搬長に依存し、伝搬長が長いほど振幅は小さくなる。従って、x=0の光電子増倍管213による検出信号の振幅をa0、x=±1及びx=±2の光電子増倍管213による検出信号の振幅を夫々a1及びa2とすれば、a0>a1>a2となる。
【0042】
次いで、エネルギー算出部82は、光電子増倍管213から供給される上述の検出信号を次式(1)に基づいて加算合成することによりγ線のエネルギーSgを算出する。
【数1】

【0043】
一方、x=−3乃至x=3に対応した重み付け関数が、例えば、図8に示すように[−3、−2、−1,0,1,2、3]に設定された検出位置算出部81は、
光電子増倍管213から供給される上述の検出信号を次式(2)に基づいて演算処理することによりγ線の検出位置Xd(Xd=0)を算出する。
【数2】

【0044】
一方、図8(b)に示すように被検体150の体内から放射されたγ線がコリメータ211におけるx=1の孔を介してシンチレータ212に入射した場合、シンチレータ212のx=1から発生した可視光は、x=−1乃至x=3の光電子増倍管213において電気的な検出信号に変換され信号演算部8の検出位置算出部81及びエネルギー算出部82に供給される。
【0045】
次いで、エネルギー算出部82は、光電子増倍管213から供給される上述の検出信号を既出の式(1)に基づいて加算合成することによりγ線のエネルギーSgを算出し、検出位置算出部81は、光電子増倍管213から供給される上述の検出信号を次式(3)に基づいて演算処理することによりγ線の検出位置Xd(Xd=1)を算出する。
【数3】

【0046】
以上述べたように、隣接する複数の光電子増倍管213から得られた検出信号に基づいてγ線のエネルギーと検出位置を正確に算出することが可能となる。尚、上述の説明では、x方向に配設された検出器モジュール21のシンチレータ212及び光電子増倍管213を用いてx方向におけるγ線のエネルギー及び検出位置を算出する場合について述べたが、同様にして、体軸方向(y方向)に配設されたシンチレータ212及び光電子増倍管213によって得られる検出信号に基づいてy方向に対するγ線のエネルギーや検出位置を算出することができる。
【0047】
次に、図1の画像データ生成部10は、信号演算部8のエネルギー分析部83から供給される当該γ線のカウント数と検出位置算出部81から供給される前記γ線の検出位置に基づいて画像データを生成する。一方、表示部11は、図示しない表示データ生成部、データ変換部及びモニタを備え、前記表示データ生成部は、画像データ生成部10によって生成された画像データに被検体情報等の付帯情報を付加して表示データを生成する。一方、前記データ変換部は、表示データ生成部にて生成された表示データに対し表示フォーマット変換とD/A変換を行なって前記モニタに表示する。
【0048】
入力部12は、キーボード、トラックボール、ジョイスティック、マウス等の入力デバイスや表示パネルを備えたインタラクティブなインターフェースであり、被検体情報の入力、検出信号収集条件及び画像データ生成条件の設定、検出器モジュール21−1乃至21−Nの配列間隔Δd及び移動速度Voの設定、モジュール−体表間距離Δhの設定、近接状態判定における閾値αの設定、更には、各種コマンド信号の入力等を行なう。
【0049】
システム制御部13は、図示しないCPUと記憶回路を備え、入力部12から供給された入力情報や設定情報を前記記憶回路に一旦保存した後、これらの情報に基づいて上述の各ユニットを統括的に制御し、体軸方向に所定間隔Δdで配設された複数個の検出器モジュール21−1乃至21−Nを用いて画像データの収集を行なう。
【0050】
(画像データの収集手順)
次に、本実施例における画像データの収集手順につき図9のフローチャートを用いて説明する。
【0051】
画像データの収集に先立ってガンマカメラ100の操作者は、被検体150に対し99mTc,67Ga等のγ線放出核種で標識された化合物を放射性同位元素(RI)として投与し(図9のステップS1)、投与から所定時間が経過したならば被検体150を寝台部6に設けられた天板61に載置する(図9のステップS2)。
【0052】
次いで、操作者は、入力部12において被検体情報の入力、検出信号収集条件及び画像データ生成条件の設定、検出器モジュール21−1乃至21−Nの配列間隔Δd及び移動速度Voの設定、モジュール−体表間距離Δhの設定、近接状態判定における閾値αの設定等を行なった後、検出部2を被検体150の検査に好適な位置へ移動する。このとき、入力部12にて入力あるいは設定された上述の情報はシステム制御部13の記憶回路に保存される(図9のステップS3)。
【0053】
上述の初期設定が終了したならば、操作者は、入力部12にて検査開始コマンドを入力し(図9のステップS4)、このコマンド信号がシステム制御部13に供給されることにより画像データの収集が開始される。
【0054】
被検体150に対する画像データの収集に際し、移動機構駆動部7の体軸方向移動用駆動信号発生部71は、システム制御部13から供給された検出器モジュール21−1乃至21−Nの移動速度Vo及び配列間隔Δdの情報と移動指示信号に基づいて持続時間Tx(Tx=Δd/Vo)の体軸方向移動用駆動信号を生成し検出器移動機構部4の移動機構ユニット41−1乃至S41−Nに設けられた体軸方向移動機構42−1乃至42−Nへ供給する。そして、この体軸方向移動用駆動信号を受信した体軸方向移動機構42−1乃至42−Nは、検出部2に設けられた検出器モジュール21−1乃至21−Nを速度Voで体軸方向へ順次移動させる(図9のステップS5)。
【0055】
同様にして、移動機構駆動部7の体表面方向移動用駆動信号発生部73は、システム制御部13から供給された移動指示信号に基づいて体表面方向移動用駆動信号を生成し、上述の移動機構ユニット41−1乃至S41−Nに設けられた体表面方向移動機構43−1乃至43−Nへ供給する。そして、この体表面方向移動用駆動信号を受信した体表面方向移動機構43−1乃至43−Nは、検出部2に設けられた検出器モジュール21−1乃至21−Nを所定速度で体表面方向へ移動させる(図9のステップS6)。
【0056】
このとき、移動機構駆動部7の近接状態判定部72は、距離計測部3に設けられた非接触センサ31−1乃至31−Nの受光素子33から供給される受信信号に基づいて被検体150の体表面に対する検出器モジュール21−1乃至21−Nの近接状態を判定する(図9のステップS7)。そして、モジュール−体表間距離が所望距離Δhに等しいと判定した場合、その判定結果を受信した体表面方向移動用駆動信号発生部73は、体表面方向移動機構43−1乃至43−Nに対する体表面方向移動用駆動信号の供給を停止することにより、体表面方向に移動している検出器モジュール21−1乃至21−Nを体表面から距離Δhだけ離れた位置に停止させる(図9のステップS8)。
【0057】
検出器モジュール21−1乃至21−Nの体表面方向に対する移動が停止したならば、検出器モジュール21−1乃至21−Nの各々は、被検体150から放射されたγ線を電気的な検出信号に変換する。次いで、信号演算部8の検出位置算出部81は、検出器モジュール21−1乃至21−Nから供給された前記検出信号を演算処理してγ線の検出位置を算出し、エネルギー算出部82は、前記検出信号を加算処理してγ線のエネルギーを算出する。そして、エネルギー分析部83は、各々の検出位置にて検出されたγ線のエネルギーとカウント数に基づき所望の核種から検出モジュール21−1乃至21−Nに直接入射したγ線のカウント数を算出する(図9のステップS9)。
【0058】
以下同様の手順により、検出器モジュール21−1乃至21−Nを体軸方向へ速度Voで移動させた状態で検出器モジュール21−1乃至21−Nの体表面方向に対する移動及び停止とγ線の検出位置及びカウント数の算出を繰り返して行なう(図9のステップS5乃至S9)。
【0059】
そして、体軸方向の配列間隔Δdに対する検出器モジュール21−1乃至21−Nの移動が終了したならば、移動機構駆動部7の体軸方向移動用駆動信号発生部71は、システム制御部13から供給された指示信号に従って検出器移動機構部4の移動機構ユニット41−1乃至S41−Nに対する体軸方向移動用駆動信号の供給を停止することにより検出器モジュール21−1乃至21−Nの体軸方向に対する移動を停止させる(図9のステップS10)。一方、画像データ生成部10は、信号演算部8から供給された当該γ線のカウント数と検出位置に基づいて画像データを生成し、表示部11のモニタに表示する(図9のステップS11)。
【実施例2】
【0060】
次に、本発明の第2の実施例につき図10及び図11を用いて説明する。上述の第1の実施例では、被検体150の体軸方向に対し同一性能を有する検出器モジュール21−1乃至21−Nを等間隔Δdで配列し、これら検出器モジュールの各々を前記体軸方向へ等しい速度Voで移動させるガンマカメラ100について述べたが、以下に述べる本実施例のガンマカメラでは、被検体の体軸方向に配置した複数からなる検出器モジュールを体軸方向へ移動させて被検体の広範囲な領域から放射されるγ線を検出する際、体軸方向に対して予め設定された精査領域及び非精査領域に配置される検出器モジュールの前記体軸方向に対する配列間隔及び移動速度を夫々異なるように設定することにより検査時間の短縮と精査領域における画像データの改善を実現する。
【0061】
(装置の構成)
本発明の第2の実施例におけるガンマカメラの構成につき図10及び図11を用いて説明する。但し、図10は、本実施例におけるガンマカメラの全体構成を示すブロック図であり、図11は、被検体150に対して設定された精査領域及び非精査領域と、これらの領域に配置された検出器モジュール21−1乃至21−Nの体軸方向に対する配列間隔及び移動速度を説明するための図である。尚、図10において、図1に示したガンマカメラ100のユニットと略同一の構成及び機能を有するユニットは同一の符号を付加し詳細な説明は省略する。
【0062】
即ち、図10に示すガンマカメラ200は、放射性同位元素(RI)が投与された被検体150から放射されるγ線を検出して電気的な検出信号へ変換する複数個の検出器モジュール21−1乃至21−Nが被検体150の体軸方向(y方向)に設けられた検出部2aと、検出器モジュール21−1乃至21−Nから被検体150の体表面までの距離を計測する複数個の非接触センサを有する距離計測部3と、検出器モジュール21−1乃至21−Nを初期位置へ移動させ、更に、これらの検出器モジュール21−1乃至21−Nを所定速度で体軸方向(y方向)及び体表面方向(z方向)へ移動させる検出器移動機構部4aと、検出部2a、距離計測部3及び検出器移動機構部4aを被検体150の周囲に保持する架台部5と、被検体150を載置した天板61を保持し被検体150の体軸方向へ移動させる寝台部6と、検出器モジュール21−1乃至21−Nを予め設定された初期位置へ移動させ、更に、これらを体軸方向及び体表面方向へ所定速度で移動させるために検出器移動機構部4aに対して駆動信号を供給する移動機構駆動部7aを備え、更に、検出部2aから供給される検出信号に基づいて検出部2aにおいて検出されたγ線の検出強度(エネルギー)と検出位置を算出し、これらの算出結果に基づいて所定方向から放射されたγ線を計数する信号演算部8と、得られたγ線のカウント数を検出モジュールの移動速度に基づいて補正するカウント数補正部9と、補正されたγ線のカウント数と検出位置の算出結果に基づいて画像データを生成する画像データ生成部10と、生成された画像データを表示する表示部11と、被検体情報の入力、検出信号収集条件及び画像データ生成条件の設定、更には、各種コマンド信号の入力等を行なう入力部12aと、上述の各ユニットを統括的に制御するシステム制御部13を備えている。
【0063】
検出部2aは、被検体150の体軸方向に配列された図2と同様の構造を有する複数個(N個)の検出器モジュール21−1乃至21−Nを備え、被検体150の体内から放射されたγ線は検出器モジュール21−1乃至21−Nによって一旦可視光に変換された後電気的な検出信号に変換される。このとき、天板61に載置された被検体150は、検出器モジュール21−1乃至21−Nの下方近傍に配置され、放射性同位元素(RI)が投与された被検体150から放射されるγ線の検出が行なわれる。
【0064】
検出器移動機構部4aは、検出部2aが有する上述の検出器モジュール21−1乃至21−Nの各々に対応するNチャンネルの移動機構ユニットを備え、移動機構ユニットの各々には、図示しない体軸方向移動機構、体表面方向移動機構及び体軸方向位置検出部が設けられている。
【0065】
そして、前記体軸方向移動機構は、先ず、入力部12aからシステム制御部13を介して供給される精査領域及び非精査領域の情報とこれらの領域の体軸方向における検出器モジュール21−1乃至21−Nの配列間隔の情報に基づいて移動機構駆動部7aが供給する体軸方向移動用駆動信号に従い、検出器モジュール21−1乃至21−Nを被検体150の精査領域及び非精査領域に初期設定する。この場合、精査領域における検出器モジュールは間隔Δd1で体軸方向に配列され、非精査領域における検出器モジュールは間隔Δd2(Δd2>Δd1)で体軸方向に配列される。
【0066】
次いで、前記体軸方向移動機構は、入力部12aからシステム制御部13を介して供給される精査領域及び非精査領域の体軸方向における検出器モジュール21−1乃至21−Nの移動速度の情報に基づいて移動機構駆動部7aが供給する体軸方向移動用駆動信号に従い、精査領域及び非精査領域に初期設定された上述の検出器モジュール21−1乃至21−Nを所定速度で体軸方向へ移動させる。
【0067】
一方、前記体表面方向移動機構は、検出器モジュール21−1乃至21−Nを移動機構駆動部7aから供給される体表面方向移動用駆動信号に従って被検体150の体表面方向(z方向)へ所定速度で移動させ、前記体軸方向位置検出部は、体軸方向へ移動する検出器モジュール21−1乃至21−Nの位置を逐次検出する。
【0068】
次に、被検体150の精査領域及び非精査領域において体軸方向及び体表面方向へ移動する複数の検出器モジュール21−1乃至21−Nにつき図11を用いて説明する。
【0069】
図11(a)は、例えば、腫瘍の原発巣が胸部に存在する場合等においてガンマカメラ200の操作者が検査に先立って設定する被検体150の精査領域及び非精査領域とこれらの領域に配置された検出器モジュール21−1乃至21−Nの体軸方向に対する配列間隔及び移動速度を示したものであり、既に述べたように、精査領域においてΔd1間隔で配置された検出器モジュールは体軸方向へ速度V1で移動し、非精査領域においてΔd2(d2>d1)間隔で配置された検出器モジュールは体軸方向へ速度V2(V2>V1)で移動する。このとき、Δd1/V1=Δd2/V2となるように夫々の領域における検出器モジュールの移動速度を設定することにより間隔Δd1及び間隔Δd2における検査を同一時間内で終了させることができ、検査効率を更に改善することができる。
【0070】
一方、図11(b)は、被検体150の体表面に沿って体軸方向へ移動する精査領域及び非精査領域の検出器モジュール21−1乃至21−Nを示したものであり、図5に示した第1の実施例と同様にして、検出器モジュール21−1乃至21−Nは、検出器移動機構部4aの図示しない移動機構ユニットに設けられた体軸方向移動機構及び体表面方向移動機構に接続されている。そして、前記体軸方向移動機構及び体表面方向移動機構は、移動機構駆動部7aから供給される体軸方向移動用駆動信号及び体表面方向移動用駆動信号に従い、検出器モジュール21−1乃至21−Nを体表面から距離Δhだけ離れた位置に接近させた状態で体軸方向へ速度V1あるいは速度V2で移動させる。
【0071】
図10へ戻って、移動機構駆動部7aは、図示しない体軸方向移動用駆動信号発生部、近接状態判定部及び体表面方向移動用駆動信号発生部を備え、前記体軸方向移動用駆動信号発生部は、先ず、システム制御部13から供給される被検体150の精査領域及び非精査領域とこれらの領域の体軸方向における検出器モジュールの配列間隔Δd1及びΔd2の情報に基づいて検出器モジュール21−1乃至21−Nを夫々の領域に初期配置するための体軸方向移動用駆動信号を検出器移動機構部4aの移動機構ユニットに設けられた体軸方向移動機構へ供給する。次いで、システム制御部13から供給される精査領域及び非精査領域の体軸方向における検出器モジュールの移動速度V1及びV2の情報に基づき、上述の精査領域及び非精査領域に初期配置された検出器モジュール21−1乃至21−Nを速度V1及び速度V2で体軸方向へ移動させるための体軸方向移動用駆動信号を前記体軸方向移動機構へ供給する。
【0072】
一方、前記近接状態判定部は、距離計測部3における非接触センサの受光素子から供給される受信信号と予め設定された閾値αとを比較し、この比較結果に基づいて被検体150の体表面に対する検出器モジュール21−1乃至21−Nの近接状態を判定し、前記体表面方向移動用駆動信号発生部は、前記近接状態判定部から供給される判定結果を受信し、モジュール−体表間距離が距離Δhと異なる場合には、検出器モジュール21−1乃至21−Nを体表面方向へ移動させるための体表面方向移動用駆動信号を生成して検出器移動機構部4aの体表面方向移動機構へ供給する。一方、モジュール−体表間距離が距離Δhと等しい場合には、前記体表面方向移動機構に対する体表面方向移動用駆動信号の供給を停止する。
【0073】
次に、カウント数補正部9は、信号演算部8のエネルギー分析部83から供給されるγ線のカウント数をシステム制御部13から供給される精査領域及び非精査領域の移動速度V1及び移動速度V2で正規化することによって補正する。一般に、被検体150から検出されるγ線のカウント数は検出器モジュール21−1乃至21−Nの移動速度に依存し、移動速度が遅い精査領域のカウント数は移動速度が速い非精査領域のカウント数より多くなるため、本実施例のように検出器モジュール21−1乃至21−Nの移動速度が異なる場合には移動速度による正規化が必要となる。尚、上述のカウント数補正は、画像データ生成部10にて生成された画像データに対しソフトウェアによる後処理で実施してもよい。
【0074】
入力部12aは、キーボード、トラックボール、ジョイスティック、マウス等の入力デバイスや表示パネルあるいは各種スイッチを備えたインタラクティブなインターフェースであり、被検体情報の入力、検出信号収集条件及び画像データ生成条件の設定、被検体150に対する精査領域及び非精査領域の設定、精査領域の体軸方向に対する検出器モジュールの配列間隔Δd1及び移動速度V1の設定、非精査領域の体軸方向に対する検出器モジュールの配列間隔Δd2及び移動速度V2の設定、閾値αの設定、更には、各種コマンド信号の入力等を行なう。
【0075】
以上述べた本発明の第1の実施例及び第2の実施例によれば、被検体の体内から放射されるγ線を検出する検出器モジュールを前記被検体の体軸方向へ移動させることによって広範囲な画像データを収集する際、検出器モジュールを前記被検体の体表面に対して所望の距離に近接させることが可能となる。このため、空間分解能やコントラスト分解能に優れた画像データを効率よく収集することができる。
【0076】
即ち、上述の実施例では、従来のガンマカメラが有する検出器モジュールと比較して体軸方向の幅(縦幅)が小さい検出器モジュールを体軸方向に複数個配列しているため、顕著な凹凸が存在する体表面に対しても検出器モジュールを正確に近接させることが容易となり、従って、空間分解能及びコントラスト分解能に優れた画像データの生成を可能とする良質な検出信号を収集することができる。
【0077】
特に、従来のガンマカメラの検査時間と等しくなるように上述の実施例における検出器モジュールの体軸方向に対する移動速度を設定した場合、各々の検出器モジュールの移動速度は略1/Nに減速させることが可能となるため、体表面に対して高い精度で近接させることができる。又、検出器モジュールの移動速度を遅くすることにより被検体に与える心理的負担(恐怖心)を軽減することができる。
【0078】
一方、上述の実施例における検出器モジュールの体軸方向に対する移動速度を従来の検出器モジュールの移動速度と等しくなるように設定した場合、検査に要する時間は従来の検査時間の略1/Nに短縮されるため、検査効率を大幅に改善することができる。
【0079】
更に、上述の第2の実施例によれば、被検体の精査領域に配置された検出器モジュールの体軸方向に対する配列間隔及び移動速度を非精査領域に配置された検出器モジュールの体軸方向に対する配列間隔及び移動速度より小さく設定することにより精査領域にて収集される画像データの分解能を更に改善することが可能となり、しかも、精査領域における検査と非精査領域における検査を同時に実施することができるため検査効率は更に改善される。
【0080】
又、第2の実施例では、移動速度によるカウント数の正規化が行なわれ、この統計的な処理によってノイズ成分等が排除されるため、移動速度が遅い精査領域においてはより良質な画像データを得ることができる。
【0081】
以上、本発明の実施例について述べてきたが、本発明は上述の実施例に限定されるものでは無く、変形して実施することが可能である。例えば、上述の第1の実施例及び第2の実施例では、装置の初期設定において、検出信号収集条件及び画像データ生成条件の設定、精査領域及び非精査領域の設定、精査領域及び非精査領域における検出器モジュールの配列間隔及び移動速度の設定、閾値αの設定等を行なう場合について述べたが、各種検査に好適な上述の情報を含む複数の検査プロトコルをシステム制御部13の記憶回路等に予め保管し、検査に先立って入力部12(12a)から入力される被検体情報(例えば、被検体の身長)や検査対象部位あるいは疾患名、更には、検査時間等の情報に基づいて前記複数の検査プロトコルの中から選択された検査プロトコルを用いて当該被検体の検査を実行してもよい。このような検査プロトコルの適用により装置の初期設定を短時間で行なうことが可能となる。
【0082】
又、上述の第1の実施例及び第2の実施例では、シンチレータ212及び光電子増倍管213を備えた検出器モジュール21−1乃至21−Nによって当該被検体150から放射されるγ線を検出する場合について述べたが、高純度ゲルマニューム(HPGe)、リチウムドリフト型シリコン(Si(Li))、テルルカドミウム(CdTe)等の半導体や位置検出型光電子増倍管を用いたピクセル型検出器であってもよい。ピクセル型検出器を用いることにより、検出器モジュールの周囲に設けられるデッドスペースを小さくすることができるため小型の検出器モジュールが可能となり、従って、体表面に対する検出器モジュールの近接が容易となる。
【0083】
更に、発光素子32及び受光素子33を備えた非接触センサ31を用いて検出器モジュール21−1乃至21−Nと体表面との距離を検出する場合について述べたが、これに限定されるものではなく、例えば、静電容量計測や磁気計測、あるいは超音波計測が可能な非接触センサを用いて上述の検出を行なっても構わない。
【0084】
一方、上述の第1の実施例では、検出器モジュール21−1乃至21−Nの各々に対応した体軸方向移動機構42−1乃至42−Nを設ける場合について述べたが、これらの検出器モジュールを体軸方向に対して同一速度で移動する場合には、共通の体軸方向移動機構を用いてもよく、又、天板61を体軸方向へ移動させてもよい。これらの方法により装置の構成を簡単にすることができる。尚、天板61を移動させる場合、体軸方向移動機構42−1乃至42−Nの代わりに天板移動機構部(図示せず)が寝台部6に設けられる。
【0085】
又、上述の第2の実施例では、同一性能を有する検出器モジュール21−1乃至21−Nを用いて精査領域及び非精査領域の検査を行なう場合について述べたが、夫々の検査に好適な性能を有する検出器モジュールを用いてこれらの領域における検査を行なってもよい。例えば、高分解能コリメータが装着された検出器モジュールを用いて精査領域の検査を行ない、高感度コリメータが装着された検出器モジュールを用いて非精査領域の検査を行なうことによって良好な画像データを収集することができる。このとき、カウント数補正部9では、検出器モジュールのコリメータ感度と移動速度に基づいてカウント数の正規化が行なわれる。尚、第2の実施例では、被検体150の体軸方向を精査領域及び非精査領域からなる2種類の領域に分割する場合について述べたが、3種類以上の領域に分割しても構わない。
【符号の説明】
【0086】
2、2a…検出部
21…検出器モジュール
211…コリメータ
212…シンチレータ
213…光電子増倍管
3…距離計測部
31…非接触センサ
32…発光素子
33…受光素子
4、4a…検出器移動機構部
41…移動機構ユニット
42…体軸方向移動機構
43…体表面方向移動機構
44…体軸方向位置検出部
5…架台部
6…寝台部
61…天板
7、7a…移動機構駆動部
71…体軸方向移動用駆動信号発生部
72…近接状態判定部
73…体表面方向移動用駆動信号発生部
8…信号演算部
81…検出位置算出部
82…エネルギー算出部
83…エネルギー分析部
9…カウント数補正部
10…画像データ生成部
11…表示部
12、12a…入力部
13…システム制御部
100…ガンマカメラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射性同位元素が投与された被検体から放射されるγ線を検出し、その検出結果に基づいて画像データを生成するガンマカメラにおいて、
前記被検体の体軸方向に所定間隔で配置され、前記被検体から放射されるγ線を検出して電気的な検出信号へ変換する複数の検出器モジュールを有する検出手段と、
前記検出器モジュールを前記被検体の体軸方向及び体表面方向へ移動させる検出器移動手段と、
前記検出器移動手段に対して駆動信号を供給する移動機構駆動手段と、
前記検出信号に基づいて画像データを生成する画像データ生成手段とを
備えたことを特徴とするガンマカメラ。
【請求項2】
前記検出器移動手段は、前記体軸方向に対し等間隔で配置された複数からなる前記検出モジュールの各々を前記体軸方向へ同一速度で移動させることを特徴とする請求項1記載のガンマカメラ。
【請求項3】
前記被検体に対して精査領域及び非精査領域を設定する領域設定手段を備え、前記検出器移動手段は、前記精査領域に配置された検出器モジュールを前記体軸方向に対し第1の速度で移動させ、前記非精査領域に配置された検出器モジュールを前記体軸方向に対し前記第1の速度より速い第2の速度で移動させることを特徴とする請求項1記載のガンマカメラ。
【請求項4】
前記検出手段は、前記精査領域に配置された検出器モジュールを前記体軸方向に対し第1の間隔で配置し、前記非精査領域に配置された検出器モジュールを前記体軸方向に対し前記第1の間隔より広い第2の間隔で配置することを特徴とする請求項3記載のガンマカメラ。
【請求項5】
前記精査領域に配置された検出器モジュールは高分解能コリメータを備え、前記非精査領域に配置された検出器モジュールは高感度コリメータを備えることを特徴とする請求項3記載のガンマカメラ。
【請求項6】
放射性同位元素が投与された被検体から放射されるγ線を検出し、その検出結果に基づいて画像データを生成するガンマカメラにおいて、
前記被検体の体軸方向に所定間隔で配置され、前記被検体から放射されるγ線を検出して電気的な検出信号へ変換する複数の検出器モジュールを有する検出手段と、
前記検出器モジュールを前記被検体の体表面方向へ移動させる検出器移動手段と、
前記被検体が載置された天板を前記体軸方向へ移動させる天板移動手段と、
前記検出器移動手段及び前記天板移動手段に対して駆動信号を供給する移動機構駆動手段と、
前記検出信号に基づいて画像データを生成する画像データ生成手段とを
備えたことを特徴とするガンマカメラ。
【請求項7】
前記検出器モジュールと前記被検体の体表面との距離を計測する距離計測手段を備え、前記移動機構駆動手段は、前記検出器モジュールを前記体表面から所定距離だけ離れた位置へ移動させるための駆動信号を前記距離計測手段の計測結果に基づいて生成することを特徴とする請求項1又は請求項6に記載したガンマカメラ。
【請求項8】
前記距離計測手段は、光計測、静電容量計測、磁気計測あるいは超音波計測の何れかが可能な非接触センサを有していることを特徴とする請求項7記載のガンマカメラ。
【請求項9】
前記検出信号に基づいてγ線の検出位置及びカウント数を算出する信号演算手段を備え、前記画像データ生成手段は、前記検出位置及び前記カウント数に基づいて前記画像データを生成することを特徴とする請求項1又は請求項6に記載したガンマカメラ。
【請求項10】
カウント数補正手段を備え、前記カウント数補正手段は、前記検出器モジュールが有するコリメータの性能及び移動速度の少なくとも何れかに基づいて前記信号演算手段が算出した前記ガンマ線のカウント数を補正することを特徴とする請求項9記載のガンマカメラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−164485(P2010−164485A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−8047(P2009−8047)
【出願日】平成21年1月16日(2009.1.16)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】