説明

ガンマ線検出装置、及びガンマ線検出方法

【課題】燃料コンパクト中のウラン量決定のためガンマ線を正確に測定する。
【解決手段】ウランを含有する燃料コンパクト3から発生するガンマ線を検出し、燃料コンパクト3の中空部分に配置されてなる内部検出手段2と、燃料コンパクトの外部に配置されてなる外部検出手段5とを有するガンマ線検出装置1。ウランを含有する燃料コンパクト3の中空部分4に配置され、燃料コンパクト3から発生するガンマ線を検出する内部検出手段2により、中空部分4からのガンマ線を測定し、燃料コンパクト3の外部に配置され、燃料コンパクト3から発生するガンマ線を検出する外部検出手段5により、燃料コンパクト3の外表面側からのガンマ線を測定し、中空部分4からのガンマ線及び外表面側からのガンマ線から、燃料コンパクト3からのガンマ線全量を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガンマ線検出装置、及びガンマ線検出方法に関し、特に詳しくは、燃料コンパクト中のウラン量決定のためのガンマ線を正確に測定することができるガンマ線検出装置、及びガンマ線検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1〜5によると、高温ガス炉用燃料は、一般的に以下のような工程を経て製造される。まず、酸化ウランの粉末を硝酸に溶かして、硝酸ウラニル溶液とする。次に、この硝酸ウラニル溶液に純水及び増粘剤等を添加し、攪拌して硝酸ウラニル含有原液とする。調製された硝酸ウラニル含有原液は、所定の温度に冷却され、粘度を調製後、細径の滴下ノズルを用いてアンモニア水溶液に滴下される。
【0003】
このアンモニア水溶液に滴下された液滴は、アンモニア水溶液表面に達するまでの間に、アンモニアガスを吹きかけられる。このアンモニアガスによって、液滴表面がゲル化され、これにより、アンモニア水溶液表面到達時における変形が防止される。アンモニア水溶液中における硝酸ウラニルは、アンモニアと十分に反応し、重ウラン酸アンモニウム粒子(以下、「ADU粒子」と略する場合がある。)となる。
【0004】
この重ウラン酸アンモニウム粒子は、乾燥された後、大気中で焙焼され、二酸化ウランよりも酸素を多く含み、酸素/ウランのモル比が2を超える酸化ウラン、例えば、三酸化ウランとなり、さらに還元及び焼結されることにより、高密度のセラミックス状の二酸化ウラン粒子となる。この二酸化ウラン粒子を篩い分け、すなわち分級して、所定の粒子径を有する燃料核を得る。
【0005】
この燃料核20を流動床に装荷し、被覆ガスを熱分解させることにより被覆を施す。図4に示すように、被覆燃料粒子25の被覆層は、燃料核20の表面から第一層21、第二層22、第三層23、及び第四層24を被覆することにより形成されている。第一層21の低密度熱分解炭素の場合は、約1400℃でアセチレン(C)を熱分解して得られる。第二層22及び第四層24の高密度熱分解炭素の場合は、約1400℃でプロピレン(C)を熱分解して得られる。第三層23のSiCの場合は約1600℃でメチルトリクロロシラン(CHSiCl)を熱分解して得られる。
【0006】
一般的な燃料コンパクト26は、以上のようにして得られた被覆燃料粒子25を黒鉛粉末、粘結剤等からなる黒鉛マトリックス材中に分散させて、成型加工されてなる。
【0007】
燃料コンパクト26は、一般的に、中心部分が稠密であると、高温になり燃料として滴さないことから、中空部分を設けてある(図4参照)。さらに、黒鉛でできた筒状の黒鉛スリーブ27に燃料コンパクト26を一定数量入れ、上下に栓をした燃料棒28の形にされる(図5参照)。最終的に燃料棒は、六角柱型黒鉛ブロックの複数の挿入口に入れられる。六角柱型黒鉛ブロックを多数個、ハニカム配列に複数段重ねて炉心が構成されている。
【0008】
この高温ガス炉用燃料に含まれるウラン量を正確に測定することが、より高温で安定して原子炉を運転させるために重要であり、固体放射線検出器を用いた非破壊分析によりウランから放出されるガンマ線を測定してウラン量を算出する。
【0009】
ウラン量の検出効率を上げるために、検出器は、ブロック形状の中身をくりぬいたウェル型と呼ばれる検出器が使用される。図6に示されるように、ウェル型検出器33は、燃料コンパクト31を収納する。燃料コンパクト31は、中心部分が中空状に形成されてなる中空部32を有する。
【0010】
このウェル型検出器の材質は、NaI(TI)、HPGe、Ge(Li)等が用いられている。このなかでも、ウェル型検出器の材質としては、検出効率の高いシンチレーション検出器としてのNaI等が使用されることが多い。ウェル型検出器を使用して、燃料コンパクト中のウラン量を測定する場合には、ウェル型検出器のくりぬいた部分に測定対象物である燃料コンパクトを設置する。設置された燃料コンパクト中に含まれるウランから発生する特定の単一エネルギーを有するガンマ線、又は複数のエネルギーを有するガンマ線を測定し、測定したガンマ線からウラン量を算出することとなる。
【0011】
ここで、235U、238Uのウランから発生するガンマ線は、50〜400keVとエネルギーが低く、235Uの場合で最も放出率の高いガンマ線は、186keVのエネルギーを有するガンマ線であり、一般的に透過力が弱い。高温ガス炉用燃料に使用される中空型の燃料コンパクトの場合、代表例として、例えば、外径約25mm、内径約10mm、高さ約40mmの寸法を有している。したがって、上記したようなガンマ線の透過力の弱さに対して、燃料コンパクトの大きさが問題となる。
【0012】
ウラン原子から発生するガンマ線は、全方向に均等の確率で放出される。放出されたガンマ線は、検出器内で相互作用を起こすことにより測定される。しかしながら、燃料コンパクトを構成する物質及び空気等によって、ガンマ線が、光電効果、散乱効果、及びその他吸収を起こすことにより、所定のエネルギーを有するガンマ線が、検出器に到達しない場合がある。
【0013】
特に、燃料コンパクト中のウランは、ガンマ線に対して、非常に優れた遮蔽材となりうる。ここで、燃料コンパクト中には、5質量%から65質量%のウランが含まれている。この燃料コンパクト中に含まれるウラン自体が、燃料コンパクトから燃料コンパクトの中心部分に向かって放出されたガンマ線を妨害することにより、この放出されたガンマ線が検出器に到達できないことがある。そのため、検出効率、つまりウラン量の測定精度を悪くする原因となっていた。
【0014】
例えば、上記の寸法の燃料コンパクトの場合、燃料コンパクトの側面部分の表層から発生するガンマ線が、燃料コンパクトの中空部分を通過し、反対側の側面部分の表層を抜けて、燃料コンパクト中のウランに妨害されずに検出器に到達する割合は、平均で、約50%となる。
【0015】
【非特許文献1】S.Kato ”Fabrication of HTTR First Loading fuel”,IAEA-TECDOC-1210,187 (2001)
【非特許文献2】N.Kitamura ”Present status of initial core fuel fabrication for the HTTR” IAEA−TECDOC−988,373(1997)
【非特許文献3】林 君夫、”高温工学試験研究炉の設計方針、製作性及び総合的健全性評価”JAERI−M 89−162(1989)
【非特許文献4】湊 和生、”高温ガス炉燃料製造の高度技術の開発”JAERI−Reseach 98−070(1998)
【非特許文献5】長谷川正義、三島良績 監修「原子炉材料ハンドブック」昭和52年10月31日発行 221−247頁、日刊工業新聞社
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、このような従来の問題点を解消し、燃料コンパクト中のウラン量決定のためのガンマ線を正確に測定することができるガンマ線検出装置、及びガンマ線検出方法を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記課題を解決するための手段として、
請求項1は、ウランを含有する燃料コンパクトから発生するガンマ線を検出し、前記燃料コンパクトの中空部分に配置されてなる内部検出手段と、ウランを含有する燃料コンパクトから発生するガンマ線を検出し、前記燃料コンパクトの外部に配置されてなる外部検出手段とを有することを特徴とするガンマ線検出装置であり、
請求項2は、前記外部検出手段は、ウェル型検出器であり、
前記内部検出手段は、前記外部検出手段と一体に形成されてなる前記請求項1に記載のガンマ線検出装置であり、
請求項3は、前記外部検出手段は、ウェル型検出器であり、
前記内部検出手段は、前記外部検出手段とは分離して形成されてなる前記請求項1に記載のガンマ線検出装置であり、
請求項4は、ウランを含有する燃料コンパクトの中空部分に配置され、前記燃料コンパクトから発生するガンマ線を検出する内部検出手段により、前記中空部分からのガンマ線を測定し、前記燃料コンパクトの外部に配置され、前記燃料コンパクトから発生するガンマ線を検出する外部検出手段により、燃料コンパクトの外表面側からのガンマ線を測定し、前記中空部分からのガンマ線及び前記外表面側からのガンマ線から、前記燃料コンパクトからのガンマ線量を検出することを特徴とするガンマ線検出方法である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、燃料コンパクト中のウラン自体、又は空気等の妨害を少なくするので、燃料コンパクト中のウラン量決定のために、燃料コンパクト中のウランから発生するガンマ線を正確に測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係るガンマ線検出装置について説明する。ガンマ線検出装置は、ウランを含有する燃料コンパクトから発生するガンマ線を検出し、前記燃料コンパクトの中空部分に配置されてなる内部検出手段と、ウランを含有する燃料コンパクトから発生するガンマ線を検出し、前記燃料コンパクトの外部に配置されてなる外部検出手段とを有することを基本とする。
【0020】
図1に示されるように、本発明の一例としてのガンマ線検出装置1は、内部検出手段2と、外部検出手段5とを有する。この外部検出手段5は、ウェル型と一般に称されるところの、有底の桝型をした筒状体に形成される。外部検出手段5は、NaI(TI)、HPGe、Ge(Li)等で形成されることができる。このなかでも、外部検出手段5の材質としては、検出効率が高いという点で、NaI等の使用が好ましい。
【0021】
外部検出手段5の寸法については特に制限はないのであるが、通常、内法の縦が2〜10cmであり、内法の横が2〜10cmであり、内部高さが2〜10cmである。
【0022】
前記内部検出手段2は、前記外部検出手段5の内部であって、底面上に、燃料コンパクト3を立設した場合に、その燃料コンパクト3の中空部4内を貫通するように、立設配置される。この内部検出手段2の形状は、前記中空部4内を挿通可能であれば、特に制限がなく、通常は、円柱形をなす。この内部検出手段2の材質は、前記外部検出手段5と同じ材質である。
【0023】
前記外部検出手段5と前記内部検出手段2とは、互いに分離不可能に一体に成形又は組立られていてもよく、また、後述するが、互いに分離した状態であってもよい。
【0024】
前記外部検出手段5と前記内部検出手段2とは、互いに分離不可能に一体に組立られてなるガンマ線検出装置1として、例えば、以下の態様を挙げることができる。
【0025】
まず、図2に示されるように、(1)前記外部検出手段5の底部に形成された挿入孔5Aに、前記内部検出手段2を嵌合してなる態様を挙げることができる。
【0026】
また、(2)前記外部検出手段5の底部に形成された螺子穴に、前記内部検出手段2の下端部を螺合してなる態様を挙げることができる。
【0027】
さらに、(3)前記外部検出手段5の底部に前記前記内部検出手段2を接着剤等の接着手段により接着してなる態様を挙げることができる。
【0028】
一方、前記外部検出手段5と前記内部検出手段2とは、互いに分離した状態であるガンマ線検出装置1として、図3に示されるように、前記外部検出手段5と、外部検出手段5の底部に配置された燃料コンパクト3の中空部4内に、挿入される内部検出手段2と、前記内部検出手段2を支持可能に、かつ、上下動可能とする支持部材(図示せず。)とからなる装置を挙げることができる。
【0029】
ここで、上記ガンマ線検出装置1には、例えば、前記外部検出手段5及び内部検出手段2が発するりん光を光電変換する光電子増倍管(図示せず。)が設置される。この光電子増倍管から出力される電気信号により、ガンマ線量が算出される。
【0030】
以上の構成のガンマ線検出装置1の作用について以下に説明する。
【0031】
図1に示されるガンマ線検出装置1によれば、ウランを含有する燃料コンパクト3から発生するガンマ線を検出する内部検出手段2を前記燃料コンパクトの中空部4に配置し、前記内部検出手段2によりガンマ線を検出する。したがって、燃料コンパクト3中のウラン自体、又は空気等の妨害を少なくするので、燃料コンパクト3中のウランから発生するガンマ線を正確に測定することができる。その結果、燃料コンパクト3中のウラン量を正確に測定することができる。
【0032】
また、図1に示されるガンマ線検出装置1によれば、外部検出手段5から燃料コンパクト3の外表面側からのガンマ線を測定することができる。したがって、内部検出手段2により測定されたガンマ線と、外部検出手段5により測定されたガンマ線とを計算することにより燃料コンパクトから発生するガンマ線の全体量を検出することができる。
【0033】
一方、図3に示されるガンマ線検出装置1によれば、ウランを含有する燃料コンパクト3から発生するガンマ線を検出する内部検出手段2を前記燃料コンパクトの中空部4に配置し、前記内部検出手段2によりガンマ線を検出する。したがって、燃料コンパクト3中のウラン自体、又は空気等の妨害を少なくするので、燃料コンパクト3中のウランから発生するガンマ線を正確に測定することができる。その結果、燃料コンパクト3中のウラン量を正確に測定することができる。
【0034】
また、図3に示されるガンマ線検出装置1によれば、前記外部検出手段5と前記内部検出手段2とは、互いに分離した状態であることにより、外部検出手段5に燃料コンパクト3を配置した後、燃料コンパクト3の中空部4に、上方側から内部検出手段2を配置できるので、外部検出手段5に対する燃料コンパクト3の位置合わせが容易である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】図1においては、(A)は、本発明に係るガンマ線検出装置の鉛直方向の断面を示す概略図であり、(B)は、水平方向の断面を示す概略図である。
【図2】図2においては、(A)は、図1に示される外部検出手段への内部検出手段の取り付けの状態を示す鉛直方向の断面を示す概略図であり、(B)は、水平方向の断面を示す概略図である。
【図3】図3においては、(A)は、本発明に係るガンマ線検出装置の一変形例の鉛直方向の断面を示す概略図であり、(B)は、水平方向の断面を示す概略図である。
【図4】図4は、従来の被覆燃料粒子及び燃料コンパクトの一例を示す概略図である。
【図5】図5は、従来の燃料棒の一例を示す概略図である。
【図6】図6においては、(A)は、従来のガンマ線検出装置の鉛直方向の断面を示す概略図であり、(B)は、水平方向の断面を示す概略図である。
【符号の説明】
【0036】
1 ガンマ線検出装置
2 内部検出手段
3 燃料コンパクト
4 中空部
5 外部検出手段
5A 挿入孔
20 燃料核
21 第一層
22 第二層
23 第三層
24 第四層
25 被覆燃料粒子
26 燃料コンパクト
27 黒鉛スリーブ
28 燃料棒
31 燃料コンパクト
32 中空部
33 ウェル型検出器



【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウランを含有する燃料コンパクトから発生するガンマ線を検出し、前記燃料コンパクトの中空部分に配置されてなる内部検出手段と、ウランを含有する燃料コンパクトから発生するガンマ線を検出し、前記燃料コンパクトの外部に配置されてなる外部検出手段とを有することを特徴とするガンマ線検出装置。
【請求項2】
前記外部検出手段は、ウェル型検出器であり、
前記内部検出手段は、前記外部検出手段と一体に形成されてなる前記請求項1に記載のガンマ線検出装置。
【請求項3】
前記外部検出手段は、ウェル型検出器であり、
前記内部検出手段は、前記外部検出手段とは分離して形成されてなる前記請求項1に記載のガンマ線検出装置。
【請求項4】
ウランを含有する燃料コンパクトの中空部分に配置され、前記燃料コンパクトから発生するガンマ線を検出する内部検出手段により、前記中空部分からのガンマ線を測定し、
前記燃料コンパクトの外部に配置され、前記燃料コンパクトから発生するガンマ線を検出する外部検出手段により、燃料コンパクトの外表面側からのガンマ線を測定し、
前記中空部分からのガンマ線及び前記外表面側からのガンマ線から、前記燃料コンパクトからのガンマ線量を検出することを特徴とするガンマ線検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−349361(P2006−349361A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−172361(P2005−172361)
【出願日】平成17年6月13日(2005.6.13)
【出願人】(000165697)原子燃料工業株式会社 (278)
【Fターム(参考)】