説明

キシリトールトローチ並びその使用方法

ポリオール分子を含む低速液化トローチについて開示している。これは付着トローチでよく、好適には歯、歯茎または頬にアカシアゴムで付着するか、あるいはロリポップ形態またはおしゃぶり形態である。利用者は特に虫歯、歯肉炎、歯周病、内耳炎、副鼻腔炎、口臭および口腔から血液内に入るストレプトコッカスミュータン症状を防止し口腔内環境を向上させるため、このトローチを一日の終わりと、各食事後に1個ずつ、少なくとも1日4個使用するように指示される。ポリオール分子は好適にはキシリトールである。トローチは、片面が丸形であり、他面が平坦である2層錠剤プレス機によって、好適には接着のため平坦側にアカシアゴムを用いて製造される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は米国仮特許願60/808035(2006年5月23日出願)、60/879846(2007年1月11日出願)並び60/887595(2007年2月22日出願)の優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
口腔ケア研究者は口内へのキシリトール分子の頻繁な投与により特定バクテリアの増殖が抑えられて虫歯、歯肉炎、歯周病、口臭および内耳炎が低減することを確認している。このバクテリアはスクロース、グルコース、フルクトースおよび糖類のごとき炭水化物分子上で繁殖するが、バクテリアがキシリトール分子を摂取すると繁殖が停止し、人体組織への接着を停止する。口内へのキシリトール分子の投与は歯の再石灰化を促し、唾液による刺激によってプラークおよび口臭の減少のごとき他の利点をも提供する。
【0003】
これらの理由によりキシリトールを豊富に含んだチューインガム、ロゼンジおよびロリポップが開発された。これら製品はキシリトールの放出が継続されるかぎりガムやキャンディを口内に長く保持するようにとの指示と共に消費者に販売されるが、この保持時間は典型的にはガムの場合で5分以内であり、ロゼンジやロリポップの場合では15分以内である。
【0004】
ミント、ロゼンジおよびロリポップは技術的には「トローチ」に分類される。口内または喉内の病症治療のため、人々はこの何世紀もの間、局所適用のために口内に薬剤を含有する組成物を保持してきた。中世以来そのような組成物の名前はラテン語およびその前のギリシャ語から“トローチ”と呼称されている。現代のトローチの1形態は咳ドロップである。これは高温粘性の砂糖ベースのキャンディをシート上または型内に“ドロップ(落下)”させ、冷却してトローチを形成させることからドロップと命名された。別な現代のトローチは“ロゼンジ”である。これはトランプのダイヤモンド形状であるためにロゼンジ(菱形)と命名された。トローチは十分に大きいため口内で居所が感知でき、それを舌で移動させることができる。すなわち少なくとも2寸法が約5ミリよりも大きい。キシリトールトローチは急速に液化し、口内での付着性は乏しい。
【0005】
口内でキシリトールをゆっくりと放出させるため、人によってはチューインガム形態を好んだり、ロゼンジまたはロリポップ形態のトローチを好む。トローチが液化してキシリトールまたは類似するポリオールを放出する間に歯等の口内の1箇所に付着した状態で残る付着性トローチ等の別形態のものも必要とされている。さらに長い時間、口腔内の液体内にキシリトールまたはポリオールの必要治療量を維持させるために液化速度を減速させることも必要とされている。
【0006】
マーク・フリードマンの米国特許6139861は口内の1箇所にトローチを接着させる方法を開示する。この方法はフリードマンが“粘膜付着分解性錠剤”と呼称する2形態の付着トローチの提供を含む。これら錠剤はポリマーであるカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ポリアクリル酸およびカルボポール−934を使用して形成される。付着トローチの別形態は可撓性物体であり、一般的には“口内パッチ”と呼称されるものである。その例には2002年11月5日出願の米国特許願10/287843で開示されている同一発明者による付着溶解性口内パッチ、並びに同一発明者による2007年3月7日出願のPCT/US2007/005947「不浸透性中央部を備えた多層医療パッチ」で開示されている多層パッチが含まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許6139861
【特許文献2】2002年11月5日出願の米国特許願10/28784
【特許文献3】2007年3月7日出願のPCT/US2007/005947「不浸透性中央部を備えた多層医療パッチ」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
【課題を解決するための手段】
【0009】
その1特徴によれば本発明は唾液内での液化速度を遅くした主として固体であるポリオール分子(特にキシリトール)の組成物を提供する。この組成物は実質的に純粋(純度98%以上)キシリトールまたは風味剤が添加されたキシリトールよりも大幅に長く時間をかけて液化する。この組成物は水と接触すると膨張する親水性ゴム類の分子と混合された結晶ポリオール分子を含んで成る。それらの水分子との結合並びに膨張によってゴム分子は水とポリオール分子とが接触することを妨害し、液化速度を遅くする。親水性ゴム類の分子は、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロースゴム類、カルボポール、ポリビニル酸およびポリアクリル酸等の親水性合成ゴム類、キサンタンゴム、コニャックゴム、タラゴム、ゲランゴム、ローカストビーンゴム、アカシアゴム、アルギン酸塩、カラギーナン、アガーおよびペクチン等の親水性天然植物ゴム類、またはゼラチン等の親水性プロテインゴム類でよい。キシリトールの代用としてのポリオール分子は室温で固体である、例えばエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、マルチトール、イソマルトおよびラクチトールであるどのようなポリオールであってもよい。
【0010】
この組成物はポリオールを溶かし、親水性ゴムを溶けたポリオール内に溶解させ、ポリオール分子が結晶化するまで組成物を冷却することで成型できる。あるいはポリオール結晶の粉末とゴムとを錠剤プレス機によって錠剤にプレス成型し、粉末粒状物サイズのポリオール結晶を組成物に含ませ、親水性ゴムの分子をその粒状物内で混合状態とし、あるいは粒状物表面にコーティングし、または粉末粒状物サイズの粒状物自体内に凝集させることができる。この組成物はトローチ形態に成型できる。このトローチ形態にはロリポップまたは“おしゃぶり”形態とするようにハンドル部を取り付けることもできる。1実施例では口内でのトローチの液化時間は平均で25分以上である。一方、チューインガム等の口内に保持される他の製品に添加される場合にポリオール分子の低速放出を達成するには組成物を他の食品、特に少水量の食品内に混合するのに適した粒状体に成型し、粒状体を食品内に溶解させない。チューインガムの実施形態はキシリトールの微粒状体を2.5%から6%のカルボキシメチルセルロース(CMC)(キシリトールに対する重量比)でコーティングし、ガムが噛まれるまでCMCを非水化状態に保つように粒状体を少量の水でチューインガムと一体化させることで製造できる。
【0011】
別特徴では本発明は付着トローチを提供する。この付着トローチは少なくとも2寸法が少なくとも5ミリであり、口内に保持されると、同時的に複数の箇所に分散されることなく1体物として残り、長時間にわたりポリオール分子を放出する。このトローチを可撓性とすることもできる。この場合にはトローチはパッチと呼称される。あるいはトローチを成型された固化粉末付着錠剤とすることもできる。1実施例ではトローチは50から90乾燥重量%の固体ポリオール分子と、口内で付着する10から50乾燥重量%の付着性分子とで製造できる。1実施例においてはこのポリオール分子はキシリトールである。あるいはポリオール分子はエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、マルチトール、イソマルトあるいはラクチトールでもよい。
【0012】
この付着分子はアカシアゴムでよい。あるいはゼラチン、アルギン酸塩、スターチ、ペクチン、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニル酸、ポリアクリル酸あるいはカルボポールでよい。
【0013】
トローチは前述のごとき水分と接触すると膨張する親水性ゴムの分子と混合されたポリオール分子の組成物を含むことができる。このトローチを2層構造とすることができる。すなわち少なくとも75乾燥重量%の固体ポリオール分子の第1層と、少なくとも30乾燥重量%の付着分子を含む第2層とで構成することができる。
【0014】
別特徴では本発明は接着剤としてアカシアゴム(アカゴムアラビック)を使用する付着トローチを提供する。このトローチは5ミリ以上の幅と、その幅よりも薄い厚みの平坦形状を有している。このトローチの1面は少なくとも50乾燥重量%のアカシアゴムを含む。このアカシアゴムは歯と歯茎に対して非常によく付着する。
【0015】
アカシアゴムが提供された面を含むトローチ部分は錠剤プレス機で粉末をプレス加工して錠剤化することで成型することができる。トローチの残部分は別層をアカシアゴム層に接着させて成型できる。1好適実施例においてはこのトローチは2層錠剤であり、第1面を含む第1層は少なくとも80%のアカシアゴムを含む。あるいはアカシアゴム面は、アカシアゴムを溶剤でペースト状に混成し、このペーストで小塊を形成し、溶剤のほとんどを除去して平坦形状を成型することで提供できる。この溶剤は水でよい。
【0016】
別の特徴では本発明は、丸形2層構造の口腔付着錠剤の製造方法を提供する。この方法は押し型と上下パンチとを有した2層錠剤プレス機を、下方パンチを丸形錠剤面が成型されるように皿形とし、上方パンチを実質的に平面となるように設計することを含む。プレス機を利用し、口腔内接着剤とすることを意図しない顆粒状材料を押し型内に注入し、その顆粒状材料を上方パンチで押し固め、その押し型に口腔内付着顆粒状材料を加え、その後に2つのパンチ間で顆粒状材料を押し固め、口腔内付着面が実質的に平坦であり、他面が丸形である錠剤を成型することができる。
【0017】
この皿形は球体の一部とすることができる。この皿形は中央部分が実質的に平坦であり、盛り上がった縁部で囲まれて皿形状を提供する下方パンチの1面でも製造できる。
【0018】
別特徴では本発明は、唾液に曝露されると平均で実質的に純粋(純度98%以上)キシリトールのトローチよりもキシリトール分子をゆっくりと放出する結晶キシリトールを含むトローチを提供し、このトローチの利用者に対してトローチを口内で含んで、トローチ内のキシリトールが溶け終わるまでそれを保持するように指示することで口腔・鼻腔内のバクテリア症状に対処する方法を提供する。この1実施例では、典型的な日中の唾液量状態におけるトローチの液化時間は平均で25分以上である。対処対象であるバクテリア症状とは口臭、内耳炎、歯肉炎、虫歯、プラーク、副鼻腔炎または口腔から血液内に入るストレプトコッカスミュータン症状である。
【0019】
別な特徴によれば本発明は結晶キシリトールを含む溶解物質を提供し、その使用者に対してその物質を口内に含み、物質内のキシリトールが溶け終わるまでそれを口内に保持するように指示することで副鼻腔炎を治療する方法を提供する。この物質はチューインガムあるいはトローチでよい。口内で唾液に曝露されるとこのトローチは純粋キシリトールと同速度または平均で純粋キシリトールよりもキシリトール分子をゆっくりと放出するであろう。好適には、典型的な日中の唾液量においてトローチの液化時間は平均で25分以上である。
【0020】
別特徴では本発明は結晶キシリトールを含む溶解物質を提供し、その使用者に対してその物質を口内に含み、物質内のキシリトールが溶け終わるまでそれを口内に保持するように指示することで循環器疾患を治療する方法を提供する。この物質はチューインガムあるいはトローチでよい。口内で唾液に曝露されるとこのトローチは純粋キシリトールと同速度または平均で純粋キシリトールよりもキシリトール分子をゆっくりと放出するであろう。好適には、典型的な日中の唾液量においてトローチの液化時間は平均で25分以上である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1は錠剤プレス機で製造された2層付着トローチの側面図または断面図である。
【0022】
図2はペーストの小塊を接着材料層上に堆積させて製造した2層付着トローチの側面図または断面図である。
【0023】
図3はロリポップ形態のトローチを図示する。
【0024】
図4は“おしゃぶり”形態のトローチを図示する。
【発明を実施するための形態】
【0025】
唾液内での液化速度が減速した主として固体のポリオール分子、特にキシリトールの組成物は、ポリオール分子を、水との接触で膨張する相当量の親水性ゴム分子と混合することで製造される。この親水性ゴム分子は、カルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロースゴム類、カボポール、ポリビニル酸およびポリアクリル酸のごとき親水性合成ゴム類、キサンタンゴム、コニャックゴム、タラゴム、ゲランゴム、ローカストビーンゴム、アカシアゴム、アルギン酸塩、カラギーナン、アガーおよびペクチンのごとき親水性天然植物ゴム類、またはゼラチンのごとき親水性プロテインでよい。キシリトールトローチの場合には約3.4%の低粘性CMCが好適である。キシリトールの代用としてのポリオール分子は、エリスリトール、ソルビトール、マンニトール、マルチトール、イソマルトおよびラクチトールのごとき室温で固体であるいかなるポリオールでもよい。
【0026】
1実施例においてはこの組成物は、ポリオールを溶かし、親水性ゴムを溶けたポリオール内に溶解させ、その小塊をシート上に滴下し、または型内に入れ、その後にポリオール分子が結晶化するまで冷却することで成型される。キシリトールは水の沸点程度で溶解する。水と、塩またはポリプロピレングリコール等の沸点上昇添加剤との複式ボイラの利用が効果的であり、過熱を防止する。
【0027】
この溶けたポリオールを利用する実施例の場合、5%から9%のキサンタンゴムが好適である。厚みの少なくとも2倍の幅を有した0.8グラムの小塊は口内で70分間維持できた。コニャックゴムと共に利用されたキサンタンも同様に好適である。これらのゴムは高温の液体キシリトール内で非常にゆっくりと溶解する。磁気式撹拌ホットプレートでは1時間で溶解の均衡を達成することができる。高粘性カルボキシメチルセルロース(TICゴム由来のCMC15000)では効果を得るのに2.4%を必要とするだけであった。1好適実施例では3.4%の低粘性カルボキシメチルセルロース(TICゴム由来のCMC15)および96.6%のキシリトールを含んでいる。
【0028】
ゼラチン、カラギーナンおよびローカストビーンゴムが利用できるが、溶けたキシリトール内で十分に溶解させるのが困難である。ゼラチンは撹拌状態で2時間を要する。
【0029】
あるいは、この組成物はポリオール結晶とゴムとを錠剤プレス機により錠剤状に成型して製造することができる。50から350ミクロンのキシリトール粒状体が好適である。この粒状体は圧縮バインダとして2%を超えないカルボキシルメチルセルロース(CMC)で顆粒化されているダニスコ・キシリタブ200のごとき物質でゴムの外側をコーティングすることで顆粒化することができるであろう。しかし、これでは好適な液化速度の低速化を達成するのに十分なCMCではない。TICゴム由来の少なくとも1.2%の粉末CMC15を加えることが効果的である。圧縮バインダとしてキシリトール粒状体上にどれくらいの量のCMCが存在するか、および粒状体上のCMCと追加された粉末CMCとの両方の粘性により決定される2.1%から3.5%を加えるのが好適である。約4.5ミリ厚の0.7グラムトローチは口内にて47分で溶け終えた。これは1.2%加えたCMC15の最低目標である25分のほぼ2倍である。2.5%加えたCMC15では液化速度は90分であった。3.3%加えたCMC15では液化速度は120分であった。0.5グラムの3.4%の低粘性CMCトローチでは唾液量によって変動するが40分から120分で液化した。
【0030】
あるいは、ダニスコ・キシリタブ300のごとき純粋キシリトールの粒状体はゴム粉末と混合されて圧縮される。試験により、3%のキサンタンゴムと0.5%の高粘性CMCが添加されたコニャックゴム、10%のアルギン酸塩ゴム、30%のゼラチン、8%のゼラチンが添加された8%のアルギン酸塩、11%のアカシアゴム、11%のペクチン、14%のグアゴム、並びに12%のローカストビーンゴムが効果的であることが確認された。
【0031】
この組成物は図1と図2で示すような単純形態のトローチ、図3で示すようなハンドル部を有したロリポップ型トローチ、または図4で示すような“おしゃぶり”型トローチに成型できる。このようなロリポップまたは“おしゃぶり”型トローチは、トローチの吸引事故を回避するために6歳未満の子供用とすることができる。この適した製造方法は、捏ねながら加熱してゆっくりと流動する高粘性の熱いペーストを用意し、押し型を利用してスチックの上で固まるように冷却する通常のロリポップ製造方法でよい。
【0032】
あるいはチューインガム等の口内に保持される他の製品に添加される場合にポリオール分子の低速放出を達成するには組成物を他の食品、特に少水量の食品内に混合するのに適した粒状体に成型し、粒状体を食品内に溶解させない。適切な製造方法は錠剤プレス加工用の粒状体に成型するための一般的な顆粒化方法であるが、低速溶解を達成するためにはより多くのゴムを混入する。チューインガムの実施形態はキシリトールの微粒状体を2.5%から6%のカルボキシメチルセルロース(CMC)(キシリトールに対する重量比)でコーティングし、ガムが噛まれるまでCMCを非水化状態に保つように粒状体を少量の水でチューインガムと一体化させることで製造できる。
【0033】
付着トローチの実施態様では、口内に保持されると溶解して長時間にわたりポリオール分子を放出し、口内でミントを噛まなくてもポリオール分子を放出することができる。これは睡眠時にも利用できる。好適実施例では液化に25分以上かかる寸法および構造となっている。
【0034】
好適実施例ではトローチは50から90乾燥重量%の固体ポリオール分子(特にキシリトール)を含んでいる。さらに多くのトローチを使用しなければならないためこれ以下の量は不適切である。付着性と一体性、並びに低速放出のための成分が少なくとも10重量%が必要であることからこれ以上の量では実用的ではない。これらの理由から一体化分子並びに口内で付着させる付着分子を10から50乾燥重量%使用することが必要である。
【0035】
付着分子はアカシアゴムを含むことができる。アカシアゴムは付着には好ましい場所である歯および歯肉に非常に良好に付着し、さほど速く液化せず口内に不快感を残すこともない。付着性を有するよう設計された表面には良好な付着性を提供するため80%および100%のアカシアゴムが適している。あるいは付着分子はゼラチン、アルギン酸塩、スターチ、ペクチン、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニル酸、ポリアクリル酸あるいはカルボポールのうちの1種以上を含んでいる。
【0036】
この付着層を非常に薄くすることもできる。直径約11.5ミリで4ミリから5ミリ厚の好適寸法のトローチでの試験では、約99%アカシアゴム層の好適厚は約1/2ミリであった。これは2層錠剤プレス機によって、あるいはアカシアゴムのペーストを型内に堆積させるか、または押し出し法と型抜き法とを組み合わせて製造できる。
【0037】
トローチは、約20%から50%のポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニル酸、ポリアクリル酸およびカルボポールの合成物のごとき高付着性分子等による均質組成物として製造することもできる。あるいは2層構造とすることもでき、第1層に少なくとも75乾燥重量%の固体ポリオール分子を含ませ、第2層に少なくとも30乾燥重量%の付着分子を含ませる。必要なゴム量を最小とし、放出されるポリオール量に対する寸法を最小とするには2層構造のトローチが好ましい。
【0038】
トローチの好適実施態様は2層錠剤プレス機で製造されるものであり、総重量の85%から95%を約90%から97%のポリオールを含んだポリオール層に使用し、重量の5%から15%を30%から99%の付着ゴムを含んだ付着層に使用する。前述のように、プレス粉末の丸形2層構造キシリトールトローチは直径12ミリで4ミリから5ミリ厚であり、1層は1/2ミリの99%アカシアゴム層であり、キシリトールは3.4%のCMCゴムを含み、良好な付着性を有し、最低目標である25分のほぼ2倍である約40分から90分で溶ける。
【0039】
典型的な錠剤プレス機で2層構造の錠剤を製造する場合、第1粉末を下方パンチ上の押し型内に入れ、その後に上方パンチが粉末を押し固め、上方パンチ面の形状を有する表面を形成し、その後に第2層の粉末を追加して上方パンチで再度押し固める。錠剤に丸形の上方面と、付着層が均一厚である平坦な下方付着面とを提供するためには、第1面が平坦であり第2面が皿形状である異なる上方パンチを使用しなければならないが、これは典型的な錠剤プレス機では不可能である。
【0040】
典型的な2層構造プレス機で丸形2層構造口腔内付着錠剤を製造する方法のために、丸形錠剤面を形成すべく皿形状の下方パンチと実質的に平坦な上方パンチとを有するようにプレス機を設計する。このプレス機では先ず口腔内接着剤とすることを意図しない顆粒状材料を押し型内に注入し、その顆粒状材料を上方パンチで押し固め、その押し型に口腔内付着顆粒状材料を加え、その後に2つのパンチ間で顆粒状材料を押し固め、口腔内付着面が実質的に平坦であり、他面が丸形である錠剤を成型することができる。
【0041】
この皿形は球体の一部とすることができる。この皿形は中央部分が実質的に平坦であり、盛り上がった縁部で囲まれて皿形状を提供する下方パンチの1面で製造できる。直径12ミリのトローチの場合、皿形の適したサイズは1.5ミリから3ミリであり好適には2.1ミリであり、錠剤全体の厚みは4ミリから5ミリである。
【0042】
口腔・鼻腔内のバクテリア症状への対処
前述の組成物およびトローチは口腔・鼻腔内のバクテリア症状に対処するために使用できる。口内で唾液に曝露されたとき、平均で純粋キシリトールのトローチよりもキシリトール分子をゆっくりと放出する結晶キシリトールを含んだトローチが消費者に供給される。利用者はトローチを口内で含んで、トローチ内のキシリトールが溶け終わるまでそれを保持するように指示される。1実施例では口内でのトローチの液化時間は平均で25分以上である。毎日、キシリトールを放出させるトローチを口内に含む時間が増えるほど、効果が臨界点に達するまではより好適である。前述のトローチを一日の終わりと、各食事後に1個ずつ、少なくとも1日4個、1日につき合計2時間以上使用することが現在のところ望ましいと考えられる。さらに効果の高い使用方法を決定するにはさらなる研究が必要である。
【0043】
対処対象であるバクテリア症状とは口臭、内耳炎、歯肉炎、虫歯、プラーク、または副鼻腔炎である。副鼻腔炎に対処するには純粋キシリトールのトローチまたはキシリトールのチューインガムを使用する方法が効果的である。すなわち、十分な量のキシリトールが放出されればさらにゆっくりと液化させる必要はない。利用者はトローチを、昼夜を問わず好適には各食事後に少なくとも一日4回、口内後方の歯や隣接する歯茎に付着させる。歯の舌側に付着させると頬側に付着させたときよりも速く溶解する。あるいは頬に付着させてもよい。
【0044】
血液内のストレプトコッカスミュータンは動脈および心臓弁に存在するプラークの重要な要因であることが知られている。血液がまだストレプトコッカスミュータンに感染していない人にとっては、口腔内のストレプトコッカスミュータンを抑制するに十分な量のキシリトールを毎日使用することで後に生じる循環器疾患のリスクを減少させることができるであろう。
【0045】
本発明の特定の実施例について説明したが、本発明の範囲は前述の説明によって限定されず、添付の「請求の範囲」によってのみ限定される。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
唾液内での液化速度を遅くした主として固体であるポリオール分子の組成物であって、水と接触すると膨張する親水性ゴムの分子と混合された結晶ポリオール分子を含んで成ることを特徴とする組成物。
【請求項2】
親水性ゴムの分子は混合物の少なくとも2%含まれることを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項3】
親水性ゴムの分子は低粘性であり、混合物の少なくとも3.2%含まれることを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項4】
親水性ゴムの分子は、セルロースゴム、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニル酸、ポリアクリル酸、カルボポール、キサンタンゴム、コニャックゴム、タラゴム、ゲランゴム、ローカストビーンゴム、アカシアゴム、アルギン酸塩、カラギーナン、アガー、ペクチンおよびゼラチンのうち1種以上を含むことを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項5】
ポリオール分子はキシリトールであることを特徴とする請求項1から4記載の組成物。
【請求項6】
少なくとも90%のキシリトール分子を含むことを特徴とする請求項1から5記載の組成物。
【請求項7】
ポリオール分子はエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、マルチトール、イソマルトおよびラクチトールのうち1種以上を含むことを特徴とする請求項1から4記載の組成物。
【請求項8】
ポリオールを溶かし、該溶けたポリオール内に親水性ゴムを溶解させ、前記ポリオール分子が結晶化するまで冷却することで成型されることを特徴とする請求項1から7記載の組成物。
【請求項9】
ポリオール結晶は粉末粒状物であり、親水性ゴムの分子は前記粒状物内に混合されるか、または前記粒状物表面にコーティングされることを特徴とする1から7記載の組成物。
【請求項10】
粒状物を錠剤プレス機によって錠剤にプレス成型することを特徴とする請求項9記載の組成物。
【請求項11】
トローチ形態に成型されることを特徴とする請求項1から10記載の組成物。
【請求項12】
トローチは唾液に溶解しないハンドル部を有するロリポップ形態またはおしゃぶり形態であることを特徴とする請求項11記載の組成物。
【請求項13】
口内でのトローチの液化時間は平均で25分以上であることを特徴とする請求項11または12記載の組成物。
【請求項14】
付着トローチであって、2寸法が少なくとも5ミリであり、口内に保持されると同時的に複数の箇所に分散されることなく1体物として残り、長時間にわたりポリオール分子を放出するものであり、
本付着トローチは、
(a)50から90乾燥重量%の固体ポリオール分子と
(b)口内で付着する10から50乾燥重量%の付着性分子と、
を含むことを特徴とする付着トローチ。
【請求項15】
ポリオール分子はキシリトールであることを特徴とする請求項14記載のトローチ。
【請求項16】
ポリオール分子はエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、マルチトール、イソマルトおよびラクチトールのうち1種以上を含むことを特徴とする請求項14記載のトローチ。
【請求項17】
付着分子はアカシアゴムを含むことを特徴とする請求項14から16記載のトローチ。
【請求項18】
付着分子はゼラチン、アルギン酸塩、スターチ、ペクチン、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニル酸、ポリアクリル酸およびカルボポールのうち1種以上を含むことを特徴とする請求項14から16記載のトローチ。
【請求項19】
請求項1から10記載の組成物をさらに含むことを特徴とする請求項14から18記載のトローチ。
【請求項20】
トローチは2層構造であり、少なくとも75乾燥重量%の固体ポリオール分子を含む第1層と、少なくとも30乾燥重量%の付着分子を含む第2層とで構成されることを特徴とする請求項14から19記載のトローチ。
【請求項21】
付着トローチであって、口内に保持されると、同時的に複数の箇所に分散されることなく1体物として残って溶解するものであり、
本付着トローチは、
(a)5ミリ以上の幅と、その幅よりも薄い厚みの平坦形状を含み、
(b)その第1面は少なくとも50乾燥重量%のアカシアゴム
を含むことを特徴とする付着トローチ。
【請求項22】
第1面は粉末を錠剤プレス機によって錠剤にプレス成型することで成型されることを特徴とする請求項21記載のトローチ。
【請求項23】
錠剤は2層錠剤であり、第1面を含む第1層は少なくとも80%のアカシアゴムを含むことを特徴とする請求項22記載のトローチ。
【請求項24】
少なくとも第1面はアカシアゴムを溶剤でペースト状に混成し、該ペーストで小塊を形成し、前記溶剤のほとんどを除去して平坦形状を成型して製造することを特徴とする請求項21記載のトローチ。
【請求項25】
溶剤は水であることを特徴とする請求項24記載のトローチ。
【請求項26】
請求項1から10記載の組成物をさらに含むことを特徴とする請求項21から25記載のトローチ。
【請求項27】
丸形2層構造の口腔内付着錠剤の製造方法であって、
(a)押し型と上下パンチとを有した2層錠剤プレス機を、前記下方パンチを丸形錠剤面が成型されるように皿形とし、前記上方パンチを実質的に平坦錠剤面が成型されるべく実質的に平面となるように設計するステップと、
(b)前記プレス機を利用し、口腔内接着剤とすることを意図しない顆粒状材料を前記押し型内に注入し、該顆粒状材料を前記上方パンチで押し固め、前記押し型に口腔内付着顆粒状材料を加え、その後に前記2つのパンチ間で前記顆粒状材料を押し固め、口腔内付着面が実質的に平坦であり、他面が丸形である錠剤を成型するステップと、
を含むことを特徴とする製造方法。
【請求項28】
皿形の深さは少なくとも1.5ミリであることを特徴とする請求項27記載の製造方法。
【請求項29】
皿形は球体の一部であることを特徴とする請求項27または28記載の製造方法。
【請求項30】
下方パンチの中央部分は実質的に平坦であり、盛り上がった縁部で囲まれて皿形状を提供していることを特徴とする請求項27または28記載の製造方法。
【請求項31】
2層錠剤は請求項1から7記載の組成物を含んでいることを特徴とする請求項27から30記載の製造方法。
【請求項32】
口腔・鼻腔内のバクテリア症状に対処する方法であって、
(a)唾液に曝露されると平均で純度98%以上のキシリトールのトローチよりもキシリトール分子をゆっくりと放出する結晶キシリトールを含むトローチを提供するステップと、
(b)前記トローチの利用者に対して該トローチを口内で含んで、該トローチ内のキシリトールが溶け終わるまでそれを保持するように指示するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項33】
口内でのトローチの液化時間は平均で25分以上であることを特徴とする請求項32記載の方法。
【請求項34】
トローチは請求項1から31に記載の成分をさらに含んでいることを特徴とする請求項32と33記載の方法。
【請求項35】
対処対象であるバクテリア症状は口臭を含むことを特徴とする請求項32から34記載の方法。
【請求項36】
対処対象であるバクテリア症状は内耳炎を含むことを特徴とする請求項32から34記載の方法。
【請求項37】
対処対象であるバクテリア症状は歯肉炎を含むことを特徴とする請求項32から34記載の方法。
【請求項38】
対処対象であるバクテリア症状は虫歯を含むことを特徴とする請求項32から34記載の方法。
【請求項39】
対処対象であるバクテリア症状はプラークを含むことを特徴とする請求項32から34記載の方法。
【請求項40】
対処対象であるバクテリア症状は副鼻腔を含むことを特徴とする請求項32から34記載の方法。
【請求項41】
対処対象であるバクテリア症状は口腔から血液内に入るストレプトコッカスミュータン症状を含むことを特徴とする請求項32から34記載の方法。
【請求項42】
副鼻腔炎を治療する方法であって、
(a)結晶キシリトールを含む口内溶解物質を提供するステップと、
(b)副鼻腔炎のリスクを減少させるため、前記物質内のキシリトールが溶け終わるまでそれを口内に保持するように指示するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項43】
物質は、唾液に曝露されると平均で純度98%以上のキシリトールのトローチよりもキシリトール分子をゆっくりと放出するトローチであることを特徴とする請求項42記載の方法。
【請求項44】
トローチの液化時間は平均で25分以上であることを特徴とする請求項43記載の方法。
【請求項45】
トローチは請求項1から31記載の成分をさらに含んでいることを特徴とする請求項43と44記載の方法。
【請求項46】
物質はチューインガムを含むことを特徴とする請求項42記載の方法。
【請求項47】
循環器疾患を治療する方法であって、
(a)結晶キシリトールを含む口内溶解物質を提供するステップと、
(b)循環器疾患のリスクを減少させるため、前記物質内のキシリトールが溶け終わるまでそれを口内に保持するように指示するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項48】
物質は、唾液に曝露されると平均で純度98%以上のキシリトールのトローチよりもキシリトール分子をゆっくりと放出するトローチであることを特徴とする請求項47記載の方法。
【請求項49】
トローチの液化時間は平均で25分以上であることを特徴とする請求項48記載の方法。
【請求項50】
トローチは請求項1から34に記載の成分をさらに含んでいることを特徴とする請求項48と49記載の方法。
【請求項51】
物質はチューインガムを含むことを特徴とする請求項47記載の方法。

【公表番号】特表2009−538301(P2009−538301A)
【公表日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−512019(P2009−512019)
【出願日】平成19年5月4日(2007.5.4)
【国際出願番号】PCT/US2007/010967
【国際公開番号】WO2007/139661
【国際公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【出願人】(508303612)
【Fターム(参考)】